(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140912
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】生体音聴診装置
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B7/04 U
A61B7/04 J
A61B7/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052279
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水野 智啓
(57)【要約】
【課題】筐体に対するセンサの押し込み量が所定の押し込み量に達する際に、センサがノイズを拾うことを極力防止すること。
【解決手段】センサ(32)は筐体(12)に対して押し込み可能であって、ダイヤフラム(20)にセンサ(32)が設けられている。生体音聴診装置(10)は、筐体(12)に対するセンサ(32)の押し込み量が第1押し込み量に達したことを非接触で検出する非接触式の第1検出部(50)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、
被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有した筐体と、
前記筐体の前記開口部側に設けられたダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムに設けられ、前記筐体に対して押し込み可能であって、被聴診者の生体音を検出するセンサと、
前記筐体に対する前記センサの押し込み量が、前記センサから出力された電気信号に基づく生体音データの記録を開始するときの第1押し込み量に達したことを非接触で検出する非接触式の第1検出部と、を備える生体音聴診装置。
【請求項2】
前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達したこと検出していない状態から、前記第1押し込み量に達したことを検出している状態に、前記第1検出部が切り替わると、
前記生体音データの記録処理を行う処理部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達したこと検出している状態から、前記第1押し込み量に達したことを検出していない状態に、前記第1検出部が切り替わると、前記生体音データの記録処理を停止することを特徴とする請求項2に記載の生体音聴診装置。
【請求項4】
前記第1検出部は、
第1光経路の遮光を検出する第1フォトインタラプタと、
前記筐体に対する前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達すると、前記第1光経路を遮光する第1遮光部と、を有する請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項5】
前記筐体に対する前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量よりも少ない第2押し込み量に達したことを非接触で検出する非接触式の第2検出部を更に備える請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項6】
前記センサの押し込み量が前記第2押し込み量に達したこと検出していない状態から、前記第2押し込み量に達したことを検出している状態に、前記第2検出部が切り替わり、続いて、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達したこと検出していない状態から、前記第1押し込み量に達したことを検出している状態に、前記第1検出部が切り替わると、前記生体音データの記録処理を行う処理部を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の生体音聴診装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達したこと検出している状態から、前記第1押し込み量に達したことを検出していない状態に、前記第1検出部が切り替わり、続いて、前記センサの押し込み量が前記第2押し込み量に達したこと検出している状態から、前記第2押し込み量に達したことを検出していない状態に、前記第2検出部が切り替わると、前記生体音データの記録処理を停止する請求項6に記載の生体音聴診装置。
【請求項8】
前記第2検出部は、
第2光経路の遮光を検出する第2フォトインタラプタと、
前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量よりも少ない第2押し込み量に達すると、前記第2光経路を遮光する第2遮光部と、を有する請求項5に記載の生体音聴診装置。
【請求項9】
前記センサは、被聴診者の生体音に対応する振動を検出する振動センサであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の生体音聴診装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被聴診者の生体音を聴診するための電子聴診装置等の生体音聴診装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体音聴診装置について種々の開発がなされており、生体音聴診装置の先行技術として特許文献1に示すものがある。先行技術に係る生体音聴診装置(特許文献1では振動検出装置と称される)は、筐体(特許文献1では上部ケースと称される)を備えており、筐体は、被聴診者の皮膚に接触する側に開口部を有している。筐体の開口部側には、被聴診者の皮膚に接触する筒状の接触部材が設けられている。接触部材は、生体音聴診装置の高さ方向に弾性変形可能であって、筐体に対して押し込み可能になっている。接触部材内には、被聴診者の生体音を検出するセンサ(特許文献1では振動検出素子と称される)がセンサホルダ(特許文献1では収容部材と称される)を介して設けられている。センサは、接触部材と一体的に生体音聴診装置の高さ方向に移動可能であって、筐体に対して押し込み可能になっている。
【0003】
先行技術に係る生体音聴診装置は、筐体に対するセンサの押し込み量(接触部材の押し込み量)が所定の押し込み量に達したことを機械的に検出する機械式のスイッチを備えている。スイッチは、筐体内に配置した基板に設けられた固定接点を有しており、固定接点は、一対の端子としての機能を有している。機械式のスイッチは、センサホルダに設けられかつ固定接点に対向する可動接点を有しており、可動接点は、導電性部材としての機能を有している。そして、センサの押し込み量が所定の押し込み量に達すると、導電性部材としての可動接点が一対の端子としての固定接点に接触し、一対の端子の短絡によってセンサが動作状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、先行技術に係る生体音聴診装置において、センサの押し込み量が所定の押し込み量に達するまでは、センサが動作状態になってなく、空気伝播音をノイズとして拾うことはない。一方、センサの押し込み量が所定の押し込み量に達する際に、可動接点と固定接点との接触音、摩擦音等、機械式のスイッチの動作音が発生し、センサがスイッチの動作音をノイズとして拾うことがある。このような場合には、生体音聴診装置を用いて被聴診音の生体音を良好に行うことができなくなる。
【0006】
なお、センサの押し込み量が所定の押し込み量に達したことを圧力式のスイッチによって検出する場合においても、センサが圧力式のスイッチ自体の動作音をノイズとして拾うことがあり、同様の問題が生じる。
【0007】
そこで、筐体に対するセンサの押し込み量が所定の押し込み量に達する際に、センサが検出部の動作音をノイズとして拾うこと防止することで、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る生体音聴診装置は、被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有した筐体と、前記筐体の前記開口部側に設けられたダイヤフラムと、前記ダイヤフラムに設けられ、前記筐体に対して押し込み可能であって、被聴診者の生体音を検出するセンサと、前記筐体に対する前記センサの押し込み量が、前記センサから出力された電気信号に基づく生体音データの記録を開始するときの第1押し込み量に達したことを非接触で検出する非接触式の第1検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、筐体に対するセンサの押し込み量が所定の押し込み量に達する際に、センサが検出部の動作音をノイズとして拾うことを防止することで、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の模式的な縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の模試的な図である。
【
図3】
図2におけるIII部から見た模式的な図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の模式的な斜視図である。
【
図5】
図1におけるV-V線に沿った模式的な図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の一部の模式的な拡大縦断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の一部の模式的な拡大縦断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る電子聴診装置のブロック図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の動作を示すタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、高さ方向とは、電子聴診装置(生体音聴診装置)の高さ方向のことである。図面中、「HD」は高さ方向、「HDa」は高さ方向の一方側、「HDb」は高さ方向の他方側をそれぞれ指している。
【0012】
図1から
図9を参照して、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の模式的な縦断面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の模試的な図である。
図3は、
図2におけるIII部から見た模式的な図である。
図4は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の模式的な斜視図である。
図5は、
図1におけるV-V線に沿った模式的な図である。
図6及び
図7は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の一部の模式的な拡大縦断面図である。
図6は、第1検出部50が受光状態にありかつ第2検出部56が受光状態にある様子を示している。
図7は、第1検出部50が遮光状態にありかつ第2検出部56が遮光状態にある様子を示している。
図8は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10のブロック図である。
図9は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の動作を示すタイムチャート図である。
【0013】
(電子聴診装置10の概要)
図1から
図4に示すように、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10は、被聴診者Pの例えば心音、肺音等の生体音を聴診するための生体音聴診装置の1つである。そして、実施形態1に係る電子聴診装置10の具体的な構成は、次の通りである。
【0014】
(筐体12)
図1から
図4に示すように、電子聴診装置10は、筐体12を備えており、筐体12は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。筐体12は、外筒14と、外筒14の内側に配置された内筒16と、外筒14と内筒16との間に連結するように設けられた複数の連結リブ18とを有している。筐体12は、被聴診者Pの皮膚Pdに対向する側に、円形の第1開口部12aを有している。筐体12は、被聴診者Pの皮膚Pdに対向する側の反対側に、円形の第2開口部12bを有している。筐体12の外表面である外筒14の外表面14eには、鏡面処理が施されている。
【0015】
(ダイヤフラム20、突起部22、逃がし溝22g)
図1から
図4に示すように、電子聴診装置10は、筐体12の第1開口部12a側に設けられた筒状のダイヤフラム20を備えている。ダイヤフラム20は、例えばシリコーンゴム等の軟質樹脂により構成されている。ダイヤフラム20は、その周縁側に被聴診者Pの皮膚Pdに接触する環状の突起部22を有しており、突起部22は、高さ方向の一方側に突出している。突起部22には、被聴診者Pの皮膚Pdとダイヤフラム20との間の空気を逃がすための複数の逃げ溝22gが形成されており、複数の逃げ溝22gは、放射状に配置されている。
【0016】
(防振ダンパ部24、周壁部26、収容部28)
図1、
図3から
図7に示すように、ダイヤフラム20は、突起部22の内側に形成された環状の防振ダンパ部24を有しており、防振ダンパ部24は、筐体12側からの振動(振動音)を減衰させる減衰機能を有している。防振ダンパ部24は、突起部22を被聴診者Pの皮膚Pdに接触させた状態において、被聴診者Pの皮膚Pdに対して非接触になっている。(
図7参照)また、ダイヤフラム20は、突起部22の外周縁から立ち上がる環状の周壁部26を有しており、周壁部26の周縁部には、内フランジ26fが径方向内側に突出して形成されている。
【0017】
ダイヤフラム20は、防振ダンパ部24の内側に形成された筒状の収容部28を有しており、収容部28は、被聴診者Pの皮膚Pdに接触する(
図6及び
図7参照)。収容部28は、被聴診者Pの皮膚Pdに接触した状態で、高さ方向へ移動可能であって、筐体12に対して押し込み可能になっている。収容部28は、突起部22が被聴診者Pの皮膚Pdに接触する前において、突起部22に対して高さ方向の一方側に突出している。
【0018】
ここで、一般的には、防振ダンパ部24のバネ定数が小さいほど、筐体12から防振ダンパ部24を介して収容部28に伝わる振動をより減衰させることができる。一方、防振ダンパ部24のバネ定数が過度に小さいと、収容部28が被聴診者Pの皮膚Pfに接触する前において、筐体12に対する収容部28の位置を保持できなくなる等の不都合が生じる。そのため、一例として、収容部28の最大変位量(突起部22の突出量)を2mm、収容部28に働く質量を1.5g、電子聴診装置10の取扱に伴う加速度を5Gと設定した場合に、収容部28のへ変位量が最大変位量の30%を超えないように、防振ダンパ部24のバネ定数は120N/m以上に設定されることが望ましい。
【0019】
(ダンパホルダ30)
図1、
図5から
図7に示すように、電子聴診装置10は、筐体12の第1開口部12a側に設けられかつダイヤフラム20の周壁部26を内側から保持するダンパホルダ30を備えている。ダンパホルダ30は、筐体12の外筒14と協働してダイヤフラム20の周壁部26を挟持する。ダンパホルダ30は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。ダンパホルダ30の平面視形状は、円形状になっており、ダンパホルダ30には、ダイヤフラム20の収容部28を挿通させるための切欠部30nが形成されている。ダンパホルダ30の外周面には、ダイヤフラム20の周壁部26の内フランジ26fを嵌入させるための周溝30gが形成されている。
【0020】
(振動センサ32)
図1、
図5から
図7に示すように、電子聴診装置10は、収容部28内に設けられかつ被聴診者Pの例えば心音、肺音等の生体音に対応する振動を検出する振動センサ32を備えており、振動センサ32は、被聴診者Pの生体音に対応する電気信号を出力する。振動センサ32は、ダイヤフラム20の収容部28に内側に設けられており、換言すれば、ダイヤフラム20の裏面側の中央部に設けられている。振動センサ32は、被聴診者Pの生体音を検出するセンサであり、被聴診者Pの生体音に対応する振動を検出する加速度センサである。振動センサ32は、被聴診者Pの生体音の周波数帯である例えば50Hz~2000Hzの振動を検出することができ、電子聴診装置10を用いて被聴診者Pの生体音の聴診を良好に行うことができる。振動センサ32は、ダイヤフラム20の収容部28と一体的に高さ方向に移動可能であって、筐体12に対して押し込み可能になっている。
【0021】
(基板34、処理ユニット36)
図1、
図5から
図7に示すように、電子聴診装置10は、ダンパホルダ30に立設された基板34を備えており、基板34は、筐体12内に配置されている。電子聴診装置10は、基板34に実装された処理ユニット36を備えており、処理ユニット36は、振動センサ32から出力された電気信号の処理等を行う。
【0022】
(処理ユニット36、処理回路38、送信回路44、メモリ46、バッテリー48)
図8に示すように、処理ユニット36は、振動センサ32から出力された電気信号の増幅処理を行ったり、AD変換処理を行ったりする処理部としての処理回路38を有しており、処理回路38は、AD変換処理された生体音データを出力する。生体音データは、振動センサ32から出力された電気信号に基づくデジタルデータである。
【0023】
処理ユニット36は、処理回路38から出力された生体音データをイヤフォン40及び解析装置42に有線又は無線によって送信するための送信部としての送信回路44を有している。イヤフォン40は、電子聴診装置10の構成要素の1つであって、送信回路44から送信された生体音データに対応する音声を出力する。解析装置42は、電子聴診装置10の構成要素の1つであって、送信回路44から送信された生体音データを解析したり、生体音データを波形として表示したりする。
【0024】
処理ユニット36は、処理回路38から出力された生体音データを記録する記録部としてのメモリ46を有している。処理ユニット36は、処理回路38及び送信回路44等に電力を供給するバッテリー48を有している。
【0025】
(非接触式の第1検出部50、第1フォトインタラプタ52、第1遮光板54)
図5から
図7に示すように、電子聴診装置10は、筐体に対する振動センサ32の押し込み量が第1押し込み量に達したことを非接触で検出する非接触式の第1検出部50を備えており、第1検出部50は、光学スイッチである。ここで、第1押し込み量とは、生体音データの記録を開始するときの振動センサ32の押し込み量のことである。ダイヤフラム20の突起部22が被聴診者Pの皮膚Pdに接触すると、振動センサ32の押し込み量が第1押し込み量に達する。なお、ダイヤフラム20の突起部22が被聴診者Pの皮膚Pdに接触する直前に、振動センサ32の押し込み量が第1押し込み量に達してもよい。
【0026】
非接触式の第1検出部50は、基板34の一側部近傍に設けられた第1フォトインタラプタ52を有している。第1フォトインタラプタ52は、測定光を発光する発光部52aと、発光部52aから発光された測定光を受光する受光部52bとを有している。第1フォトインタラプタ52は、発光部52aから発光された測定光の経路である第1光経路FPの遮光を検出する。また、非接触式の第1検出部50は、振動センサ32の一側部側に立設された第1遮光部としての第1遮光板54を有している。第1遮光板54は、筐体12に対する振動センサ32の押し込み量が第1押し込み量に達すると、第1光経路FPを遮光する。
【0027】
非接触式の第1検出部50は、受光状態と遮光状態とに切り替わる。第1検出部50の受光状態とは、第1フォトインタラプタ52の受光部52bが測定光を受光している状態、換言すれば、振動センサ32の押し込み量が第1押し込み量に達したことを検出していない状態のことである。また、第1検出部50の遮光状態とは、第1フォトインタラプタ52が第1遮光板54による第1光経路FPの遮光を検出している状態、換言すれば、振動センサ32の押し込み量が第1押し込み量に達したことを検出している状態のことである。
【0028】
(非接触式の第2検出部56、第2フォトインタラプタ58、第2遮光板60)
図5から
図7に示すように、電子聴診装置10は、筐体に対する振動センサ32の押し込み量が第2押し込み量に達したことを非接触で検出する非接触式の第2検出部56を備えており、第2検出部56は、光学スイッチである。ここで、第2押し込み量とは、第1押し込み量よりも少ない押し込み量であって、生体音データの記録を開始する直前の振動センサ32の押し込み量のことである。
【0029】
非接触式の第2検出部56は、基板34の他側部近傍に設けられた第2フォトインタラプタ58を有している。第2フォトインタラプタ58は、測定光MLを発光する発光部58aと、発光部58aから発光された測定光MLを受光する受光部58bとを有している。第2フォトインタラプタ58は、発光部58aから発光された測定光の経路である第2光経路SPの遮光を検出する。第2光経路SPは、第1光経路FPとは異なる光経路である。また、非接触式の第2検出部56は、振動センサ32の他側部側に立設された第2遮光部としての第2遮光板60を有している。第2遮光板60は、筐体12に対する振動センサ32の押し込み量が第2押し込み量に達すると、第2光経路SPを遮光する。
【0030】
第2フォトインタラプタ58の高さ位置は、第1フォトインタラプタ52の高さ位置と同じ高さ位置に設定されている。第2遮光板60の先端の高さ位置は、第1遮光板54の先端の高さ位置よりも例えば0.3mmだけ高く設定されている。なお、第2フォトインタラプタ58の高さ位置を第1フォトインタラプタ52の高さ位置よりも例えば0.3mmだけ低く設定した場合には、第2遮光板60の先端の高さ位置を第1遮光板54の先端の高さ位置を同じ高さ位置に設定してもよい。
【0031】
非接触式の第2検出部56は、受光状態と遮光状態とに切り替わる。第2検出部56の受光状態とは、第2フォトインタラプタ58の受光部58bが測定光を受光している状態、換言すれば、第2検出部56が振動センサ32の押し込み量が第2押し込み量に達したこと検出していない状態のことである。また、第2検出部56の遮光状態とは、第2フォトインタラプタ58が第2遮光板60による第2光経路SPの遮光を検出している状態、換言すれば、振動センサ32の押し込み量が第2押し込み量に達したこと検出している状態のことである。
【0032】
(処理回路38及び2つのフォトインタラプタ50,54の動作)
図8及び
図9に示すように、処理回路38は、第2検出部56が受光状態から遮光状態に切り替わり、続いて、第1検出部50が受光状態から遮光状態に切り替わると、メモリ46に対して生体音データの記録処理を行う。処理回路38は、第1検出部50が遮光状態から受光状態に切り替わり、続いて、第2検出部56が遮光状態から受光状態に切り替わると、メモリ46に対する生体音データの記録処理を停止する。なお、処理回路38は、第1検出部50が遮光状態から受光状態に切り替わるだけで、メモリ46に対する生体音データの記録処理を停止してもよい。
【0033】
(その他の態様)
電子聴診装置10は、その構成要素から第2検出部56を省略してもよい。この場合には、処理回路38は、第1検出部50が受光状態から遮光状態に切り替わると、メモリ46に対して生体音データの記録処理を行う。処理回路38は、第1検出部50が遮光状態から受光状態に切り替わると、メモリ46に対する生体音データの記録処理を停止する。
【0034】
処理回路38がメモリ46に対する生体音データの記録処理及びその停止を行う代わりに、解析装置42の処理回路(不図示)が解析装置42のメモリ(不図示)に対する生体音データの記録処理及びその停止を行ってもよい。
【0035】
非接触式の第1検出部50として、第1フォトインタラプタ52と第1遮光板54とを有した光学スイッチを用いる代わりに、磁気スイッチ又は静電容量スイッチを用いてもよい。また、非接触式の第2検出部56として、第2フォトインタラプタ58と第2遮光板60とを有した光学スイッチを用いる代わりに、磁気スイッチ又は静電容量スイッチを用いてもよい。
【0036】
(作用効果)
続いて、本発明の実施形態の作用効果について説明する。
【0037】
電子聴診装置10においては、前述のように、第1フォトインタラプタ52は、発光部52aから発光された測定光の経路である第1光経路FPの遮光を検出する。第1遮光板54は、振動センサ32の押し込み量が第1押し込み量に達すると、第1光経路FPを遮光する。そのため、第1フォトインタラプタ52と第1遮光板54とを有した第1検出部50は、振動センサ32の押し込み量が所定の押し込み量として第1押し込み量に達したことを非接触でかつ無負荷な状態で検出することができる。これにより、振動センサ32の押し込み量が第1押し込み量に達する際に、振動センサ32が第1検出部50の動作音をノイズとして拾うことを防止することができる。
【0038】
また、前述のように、第2フォトインタラプタ58は、発光部58aから発光された測定光の経路である第2光経路SPの遮光を検出する。第2遮光板60は、筐体12に対する振動センサ32の押し込み量が第2押し込み量に達すると、第2光経路SPを遮光する。そのため、第2フォトインタラプタ58と第2遮光板60とを有した第2検出部56は、振動センサ32の押し込み量が所定の押し込み量として第2押し込み量に達したことを非接触でかつ無負荷な状態で検出することができる。これにより、振動センサ32の押し込み量が第2押し込み量に達する際に、振動センサ32が第2検出部56の動作音をノイズとして拾うことを極力防止することができる。
【0039】
ダイヤフラム20の突起部22に複数の逃げ溝22gが形成されている場合には、被聴診者Pの皮膚Pdとダイヤフラム20との間に空気溜まりが生じ難くなり、ダイヤフラム20の防振ダンパ部24による減衰機能を十分に発揮させることができる。これにより、聴診者(不図示)が筐体12を摘まむ際に、聴診者の指等と筐体12の外筒14の外表面14eとの接触音及び摩擦音を低減することができる。特に、筐体12の外筒14の外表面14eに鏡面処理が施されている場合には、聴診者の指等と筐体12の外筒14の外表面14eとの接触音及び摩擦音を十分に低減することができる。
【0040】
従って、本発明の実施形態によれば、電子聴診装置10を用いて被聴診者Pの例えば心音、肺音等の生体音の聴診を良好に行うことができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「すべての人に健康と福祉を」を達成することができる。
【0041】
また、電子聴診装置10においては、前述のように、処理回路38は、第2検出部56が受光状態から遮光状態に切り替わり、続いて、第1検出部50が受光状態から遮光状態に切り替わると、メモリ46に対して生体音データの記録処理を行う。そのため、振動センサ32の押し込み量が所定の押し込み量として第1押し込み量に達する前において、処理回路38による生体音データの記録処理を省略することができる。これにより、バッテリー48から無駄な電力が処理回路38に供給されることを抑えることができる。
【0042】
特に、前述のように、処理回路38は、第1検出部50が遮光状態から受光状態に切り替わり、続いて、第2検出部56が遮光状態から受光状態に切り替わると、メモリ46に対する生体音データの記録処理を停止する。これにより、バッテリー48から無駄な電力が処理回路38に供給されることをより抑えることができる。
【0043】
従って、本発明の実施形態によれば、電子聴診装置10の省電力化を図ることができる。
【0044】
更に、電子聴診装置10が2つの検出部(第1検出部50と第2検出部56)を備えることにより、処理ユニット36(電子聴診装置10)は、振動センサ32の移動方向が筐体12に対する押し込み方向であるか否かについて監視することができる。これにより、本発明の実施形態によれば、処理回路38による生体音データの記録処理及びその停止を適切に行うことができる。具体的には、例えば、ダイヤフラム20の突起部22が被聴診者Pの皮膚Pdに対して斜めに触れた状態等の不適切な状態で、生体音データの録音が開始されることがなくなり、正確な生体音データを記録することができる。
【0045】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る生体音聴診装置は、被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有した筐体と、前記筐体の前記開口部側に設けられたダイヤフラムと、前記ダイヤフラムに設けられ、前記筐体に対して押し込み可能であって、被聴診者の生体音を検出するセンサと、前記筐体に対する前記センサの押し込み量が、前記センサから出力された電気信号に基づく生体音データの記録を開始するときの第1押し込み量に達したことを非接触で検出する非接触式の第1検出部と、を備える。
【0046】
前記の構成によれば、前記第1検出部は、前記センサの押し込み量が所定の押し込み量として前記第1押し込み量に達したことを非接触で検出することができる。これにより、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達する際に、前記センサが前記第1検出部の動作音をノイズとして拾うことを防止することができる。その結果、前記生体音聴診装置を用いて被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができる。
【0047】
本発明の態様2に係る生体音聴診装置は、前記態様1において、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達したこと検出していない状態から、前記第1押し込み量に達したことを検出している状態に、前記第1検出部が切り替わると、前記生体音データの記録処理を行う処理部を更に備えてもよい。
【0048】
前記の構成によれば、前記センサの押し込み量が所定の押し込み量として前記第1押し込み量に達する前において、前記生体音データの記録処理を省略することができる。これにより、無駄な電力が前記処理部に供給されることを抑えて、前記生体音聴診装置の省電力化を図ることができる。
【0049】
本発明の態様3に係る生体音聴診装置は、前記態様2において、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達したこと検出している状態から、前記第1押し込み量に達したことを検出していない状態に、前記第1検出部が切り替わると、前記生体音データの記録処理を停止してもよい。
【0050】
前記の構成によれば、無駄な電力が前記処理部に供給されることをより抑えて、前記生体音聴診装置の省電力化をより図ることができる。
【0051】
本発明の態様4に係る生体音聴診装置は、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記第1検出部は、第1光経路の遮光を検出する第1フォトインタラプタと、前記筐体に対する前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達すると、前記第1光経路を遮光する第1遮光部と、を有してもよい。
【0052】
前記の構成によれば、前記第1フォトインタラプタと前記第1遮光部とを有した前記第1検出部は、前記センサの押し込み量が所定の押し込み量として前記第1押し込み量に達したことを非接触で検出することができる。
【0053】
本発明の態様5に係る生体音聴診装置は、前記態様1において、前記筐体に対する前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量よりも少ない第2押し込み量に達したことを非接触で検出する非接触式の第2検出部を更に備えてもよい。
【0054】
前記の構成によれば、前記第2検出部は、前記センサの押し込み量が所定の押し込み量として前記第2押し込み量に達したことを非接触で検出することができる。これにより、前記センサの押し込み量が前記第2押し込み量に達する際に、前記センサが前記第2検出部の動作音をノイズとして拾うことを防止することができる。その結果、前記生体音聴診装置を用いて被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができる。
【0055】
本発明の態様6に係る生体音聴診装置は、前記態様5において、前記センサの押し込み量が前記第2押し込み量に達したこと検出していない状態から、前記第2押し込み量に達したことを検出している状態に、前記第2検出部が切り替わり、続いて、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達したこと検出していない状態から、前記第1押し込み量に達したことを検出している状態に、前記第1検出部が切り替わると、前記生体音データの記録処理を行う処理部を更に備えてもよい。
【0056】
前記の構成によれば、前記センサの押し込み量が所定の押し込み量として前記第1押し込み量に達する前において、前記生体音データの記録処理を省略することができる。これにより、無駄な電力が前記処理部に供給されることを抑えて、前記生体音聴診装置の省電力化を図ることができる。
【0057】
本発明の態様7に係る生体音聴診装置は、前記態様6において、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量に達したこと検出している状態から、前記第1押し込み量に達したことを検出していない状態に、前記第1検出部が切り替わり、続いて、前記センサの押し込み量が前記第2押し込み量に達したこと検出している状態から、前記第2押し込み量に達したことを検出していない状態に、前記第2検出部が切り替わると、前記生体音データの記録処理を停止してもよい。
【0058】
前記の構成によれば、無駄な電力が前記処理部に供給されることをより抑えて、前記生体音聴診装置の省電力化をより図ることができる。
【0059】
本発明の態様8に係る生体音聴診装置は、前記態様5から7のいずれかにおいて、前記第2検出部は、第2光経路の遮光を検出する第2フォトインタラプタと、前記センサの押し込み量が前記第1押し込み量よりも少ない第2押し込み量に達すると、前記第2光経路を遮光する第2遮光部と、を有してもよい。
【0060】
前記の構成によれば、前記第2フォトインタラプタと前記第2遮光部とを有した前記第2検出部は、前記センサの押し込み量が所定の押し込み量として前記第2押し込み量に達したことを非接触で検出することができる。
【0061】
本発明の態様9に係る生体音聴診装置は、前記態様1から8のいずれかにおいて、前記センサは、被聴診者の生体音に対応する振動を検出する振動センサであってもよい。
【0062】
前記の構成によれば、前記振動センサは、被聴診者の生体音の周波数帯である例えば50Hz~2000Hzの振動を検出することができ、前記生体音聴診装置を用いて被聴診者の聴診を良好に行うことができる。
【0063】
〔付記事項〕
本発明は前述した実施形態の説明に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10 電子聴診装置(生体音聴診装置)
12 筐体
12a 第1開口部(開口部)
12b 第2開口部
14 外筒
14e 外表面
16 内筒
18 連結リブ
20 ダイヤフラム
22 突起部
22 逃がし溝
24 防振ダンパ部
26 周壁部
26f 内フランジ
28 収容部
30 ダンパホルダ
30n 切欠部
30g 周溝
32 振動センサ(センサ)
34 基板
36 処理ユニット
38 処理回路(処理部)
40 イヤフォン
42 解析装置
44 送信回路(送信部)
46 メモリ(記録部)
48 バッテリー
50 第1検出部
52 第1フォトインタラプタ
52a 発光部
52b 受光部
FP 第1光経路
54 第1遮蔽板(第1遮光部)
56 第2検出部
58 第2フォトインタラプタ
58a 発光部
58b 受光部
SP 第2光経路
60 第2遮光板(第2遮光部)
P 被聴診者
Pd 皮膚