(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140913
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】生体音聴診装置
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B7/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052280
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水野 智啓
(57)【要約】
【課題】生体音聴診装置の取扱性を高めつつ、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うこと。
【解決手段】トップケース(12)の開口部(12a)側に環状のダンパホルダ(14)が設けられ、ダンパホルダ(14)に設けられた防振ダンパ(16)は、被聴診者(P)の皮膚(Pf)に貼り付け可能な底壁部(18)と、少なくとも一部が高さ方向に撓み変形可能に構成された周壁部(20)と、ダンパホルダ(14)に保持される環状の取付壁部(22)とを有し、底壁部(18)の裏面側に振動センサ(36)が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被聴診者の皮膚に貼り付けた状態で、被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、
被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有したトップケースと、
前記トップケースの開口部側に設けられた環状のダンパホルダと、
前記ダンパホルダに設けられ、被聴診者の皮膚に貼り付け可能な底壁部と、該底壁部の周縁から立ち上がりかつ少なくとも一部が高さ方向に撓み変形可能に構成された周壁部と、該周壁部の周縁から延びかつ前記ダンパホルダに保持される環状の取付壁部とを有する防振ダンパと、
前記防振ダンパの前記底壁部の裏面側に設けられ、被聴診者の生体音を検出するセンサと、を備えることを特徴とする生体音聴診装置。
【請求項2】
前記防振ダンパの前記周壁部の少なくとも一部の断面形状は、矩形状又は波形状であることを特徴とする請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項3】
前記トップケースの内側に設けられ、前記防振ダンパの前記取付壁部を内側から支持する支持フレームを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項4】
前記トップケースの内側に環状の取付溝が形成され、
前記防振ダンパの前記取付壁部が前記トップケースの前記取付溝に圧入又は嵌入していることを特徴とする請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項5】
前記防振ダンパは、前記底壁部の裏面に形成された環状又は枠状の収容部を有し、
前記センサは、前記防振ダンパの前記収容部の内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項6】
前記センサは、被聴診者の生体音に対応する振動を検出する振動センサであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の生体音聴診装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被聴診者の皮膚に貼り付けた状態で、被聴診者の生体音を聴診するための電子聴診器等の生体音聴診装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体音聴診装置について種々の開発がなされており、生体音聴診装置の先行技術として特許文献1に示すものがある。先行技術に係る生体音聴診装置(特許文献1では生体センサと称される)は、被聴診者の生体音を検出するセンサ(特許文献1ではセンサ本体と称される)と、センサを保護するカバーと、カバーの周縁部に設けられた防振ゴムとを備えている。センサは、被聴診者の皮膚に貼り付け可能である。カバーは、センサと分離してあり、防振ゴムを介して被聴診者の皮膚に貼り付け可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カバー及びセンサを被聴診者の皮膚に貼り付けた状態で、被聴診者の生体音を聴診する際に、被聴診者の呼吸又は体動等によって衣服又は寝具等がカバーに接触すると、ノイズの原因となる衣服等の接触音及び摩擦音が生じる。一方、カバーの周縁部に防振ゴムが設けられているものの、防止ゴムの厚みが薄いため、防止ゴムの高さ方向の撓み変形量(ストローク量)が小さく、衣服等の接触音及び摩擦音を十分に減衰させることができない。その結果、センサに検出される被聴診者の生体音にノイズが含まれ、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができなくなる。
【0005】
また、カバーがセンサと分離しているため、センサだけでなく、カバーを被聴診者の皮膚に貼り付ける必要があり、生体音聴診装置の取扱性が悪化する。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、生体音聴診装置の取扱性を高めつつ、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る生体音聴診装置は、被聴診者の皮膚に貼り付けた状態で、被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有したトップケースと、前記トップケースの開口部側に設けられた環状のダンパホルダと、前記ダンパホルダに設けられ、被聴診者の皮膚に貼り付け可能な底壁部と、該底壁部の周縁から立ち上がりかつ少なくとも一部が高さ方向に撓み変形可能に構成された周壁部と、該周壁部の周縁から延びかつ前記ダンパホルダに保持される環状の取付壁部とを有する防振ダンパと、前記防振ダンパの前記底壁部の裏面側に設けられ、被聴診者の生体音を検出するセンサと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、生体音聴診装置の取扱性を高めつつ、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る電子聴診装置の模式的な正断面図である。
【
図2】実施形態1に係る電子聴診装置の模式的な正面図である。
【
図3】実施形態1に係る電子聴診装置の模式的な側面図である。
【
図4】実施形態1に係る電子聴診装置の模式的な平面図である。
【
図5】実施形態2に係る電子聴診装置の模式的な正断面図である。
【
図6】実施形態2に係る電子聴診装置の模式的な正面図である。
【
図7】実施形態2に係る電子聴診装置の模式的な側面図である。
【
図8】実施形態2に係る電子聴診装置の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態1及び実施形態2について図面を参照して説明する。本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、高さ方向とは、電子聴診装置(生体音聴診装置)の高さ方向のことであり、長さ方向とは、電子聴診装置(生体音聴診装置)の長さ方向のことであり、幅方向とは、電子聴診装置(生体音聴診装置)の幅方向のことである。図面中、「HD」は高さ方向、「HDa」は高さ方向の一方側である上方向、「HDb」は高さ方向の他方側である下方向、「LD」は長さ方向、「WD」は幅方向をそれぞれ指している。
【0011】
〔実施形態1〕
図1から
図4を参照して、実施形態1に係る電子聴診装置10について説明する。
図1は、実施形態1に係る電子聴診装置10の模式的な正断面図である。
図2は、実施形態1に係る電子聴診装置10の模式的な正面図である。
図3は、実施形態1に係る電子聴診装置10の模式的な側面図である。
図4は、実施形態1に係る電子聴診装置10の模式的な平面図である。
【0012】
(電子聴診装置10の概要)
図1から
図4に示すように、実施形態1に係る電子聴診装置10は、被聴診者Pの皮膚Pfに貼り付けた状態で、被聴診者Pの例えば心音、肺音等の生体音を聴診するための生体音聴診装置の1つである。そして、実施形態1に係る電子聴診装置10の具体的な構成は、次の通りである。
【0013】
(トップケース12)
図1から
図4に示すように、電子聴診装置10は、ドーム状のトップケース12を備えている。トップケース12は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。トップケース12は、被聴診者Pの皮膚Pfに対向する側に、円形の開口部12aを有している。トップケース12の平面視形状は、円形に近似した形状になっている(
図4参照)。トップケース12の外表面12eには、鏡面処理が施されている。トップケース12の内表面12iの中央部には、環状又は枠状のリブ部12rが形成されている。トップケース12の内表面12iにおけるリブ部12rの外側には、複数の支持片12sが形成されている。各支持片12sは、下方向に向かって延びており、各支持片12sには、係止孔12hが形成されている。
【0014】
(ダンパホルダ14)
図1に示すように、電子聴診装置10は、トップケース12の開口部12a側に圧入又は嵌入して設けられた環状のダンパホルダ14を備えている。ダンパホルダ14は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。ダンパホルダ14の下縁部には、環状の内フランジ部14fが径方向内側に突出して形成されており、ダンパホルダ14の部分断面形状は、L字状になっている。
【0015】
(防振ダンパ16、底壁部18、周壁部20、取付壁部22、摘み部24、収容部26)
図1から
図3に示すように、電子聴診装置10は、ダンパホルダ14に設けられかつトップケース12からの振動を減衰させるための筒状の防振ダンパ16を備えている。防振ダンパ16は、例えばシリコーンゴム等の軟質樹脂により構成されている。防振ダンパ16は、被聴診者Pの皮膚Pfに例えば両面粘着テープによって貼り付け可能な底壁部18と、底壁部18の周縁から立ち上がる周壁部20とを有している。周壁部20の少なくとも一部の断面形状は、矩形状になっており、周壁部20の少なくとも一部は、高さ方向に撓み変形可能に構成されている。
【0016】
防振ダンパ16は、周壁部20の周縁から上方向に延びかつダンパホルダ14に保持される環状の取付壁部22を有しており、取付壁部22の内側面には、周溝22gが形成されている。また、防振ダンパ16は、底壁部18の周縁の一部に形成された摘み部24と、底壁部18の裏面の中央部に形成された環状又は枠状の収容部26とを有している。
【0017】
(支持フレーム28、フレーム中央部30、フレーム外輪部32、収容部34)
図1に示すように、電子聴診装置10は、トップケース12の内側に設けられかつ防振ダンパ16の取付壁部22を内側から支持する支持フレーム28を備えている。支持フレーム28は、ダンパホルダ14と協働して防振ダンパ16の取付壁部22を挟持する。支持フレーム28は、ダンパホルダ14に複数の止めネジ(不図示)に固定されている。支持フレーム28は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。
【0018】
支持フレーム28は、その中央部に位置するフレーム中央部30と、フレーム中央部30を囲むように連結したフレーム外輪部32とを有している。フレーム外輪部32は、複数の連結部材(不図示)によってフレーム中央部30に一体的に連結されている。フレーム中央部30の外周面には、複数の突起30bが径方向外側に突出して形成されており、各突起30bは、トップケース12の支持片12sの係止孔12hに係止可能になっている。フレーム外輪部32の外周面には、環状の外フランジ部32fが径方向外側に突出して形成されており、外フランジ部32fは、防振ダンパ16の取付壁部22の周溝22gに嵌合又は圧入するようになっている。支持フレーム28は、フレーム中央部30の上面に形成された環状又は枠状の収容部34を有しており、収容部34は、トップケース12のリブ部12rに嵌合している。前述のように、支持フレーム28は、フレーム中央部30、フレーム外輪部32、及び収容部34を有しており、フレーム中央部30、フレーム外輪部32、及び収容部34は、一体化されている。
【0019】
(振動センサ36、回路基板、ノイズキャンセル用の振動センサ38)
図1に示すように、電子聴診装置10は、被聴診者Pの例えば心音、肺音等の生体音に対応する振動を検出する振動センサ36を備えており、振動センサ36は、被聴診者Pの生体音に対応する電気信号を出力する。振動センサ36は、被聴診者Pの生体音を検出するセンサであり、被聴診者Pの生体音に対応する振動を検出する加速度センサである。振動センサ36は、被聴診者Pの生体音の周波数帯である例えば50Hz~2000Hzの振動を検出することができ、電子聴診装置10を用いて被聴診者Pの生体音の聴診を良好に行うことができる。振動センサ36は、防振ダンパ16の収容部26の内側に配置されており、換言すれば、防振ダンパ16の底壁部18の裏面側に設けられている。振動センサ36は、トップケース12に対して高さ方向に離隔している。
【0020】
電子聴診装置10は、トップケース12の内側に設けられた回路基板(不図示)を備えている。回路基板には、振動センサ36から出力された電気信号の増幅処理を行ったり、AD変換処理を行ったりする処理回路(不図示)が実装されている。回路基板には、AD変換処理された生体音データを解析装置(不図示)に有線又は無線によって送信するための送信回路(不図示)が実装されている。回路基板には、処理回路及び送信回路に電力を供給するバッテリー(不図示)が実装されている。解析装置は、送信された生体音データの解析を行ったり、生体音データを波形として表示したりする。なお、電子聴診装置10が回路基板を備える代わりに、解析装置等の外部装置が回路基板を備えてもよい。この場合には、振動センサ36と外部装置の回路基板が有線によって接続される。
【0021】
電子聴診装置10は、トップケース12からのノイズに対応する振動を検出するノイズキャンセル用の振動センサ38を備えてもよい。この場合に、ノイズキャンセル用の振動センサ38は、支持フレーム28の収容部34の内側に配置される。処理回路は、ノイズキャンセル用の振動センサ38から出力された電気信号に基づいて、ノイズキャンセル処理を行う。
【0022】
(作用効果)
続いて、実施形態1の作用効果について説明する。
【0023】
電子聴診装置10においては、前述のように、防振ダンパ16の周壁部20の少なくとも一部の断面形状が矩形状になっており、防振ダンパ16の周壁部20の少なくとも一部が高さ方向に撓み変形可能に構成されている。そのため、防振ダンパ16の底壁部18を被聴診者Pの皮膚Pfに貼り付けた状態で、被聴診者Pの生体音を聴診する際に、被聴診者Pの呼吸又は体動等によって衣服又は寝具等がトップケース12に接触しても、衣服等の接触音及び摩擦音を十分に減衰させることができる。特に、トップケース12の外表面12eに鏡面処理が施されているため、衣類等の接触音及び摩擦音を十分に抑制することができる。これにより、振動センサ36に検出される振動にノイズが含まれ難くなり、被聴診者Pの生体音の聴診を良好に行うことができる。
【0024】
電子聴診装置10においては、前述のように、トップケース12の開口部側にダンパホルダ14が設けられ、ダンパホルダ14に防振ダンパ16が設けられている。そのため、防振ダンパ16がトップケース12にダンパホルダ14を介して取付けられ、トップケース12と一体構造になる。これにより、防振ダンパ16の底壁部18を被聴診者Pの皮膚Pfに貼り付けるだけで、トップケース12を被聴診者Pの皮膚Pfに貼り付ける必要がなくなり、電子聴診装置10の取扱性を高めることができる。
【0025】
つまり、実施形態1によれば、電子聴診装置10の取扱性を高めつつ、被聴診者Pの生体音の聴診を良好に行うことができる。
【0026】
また、電子聴診装置10においては、前述のように、トップケース12の内側に、防振ダンパ16の取付壁部22を内側から支持する支持フレーム28が設けられている。そのため、防振ダンパ16の取付壁部22が支持フレーム28とダンパホルダ14の協働により挟持される。これにより、実施形態1によれば、トップケース12に対する防振ダンパ16の取付状態を安定させることができる。
【0027】
〔実施形態2〕
実施形態1において、周壁部の少なくとも一部の断面形状は、矩形状になっており、周壁部の少なくとも一部は、高さ方向に撓み変形可能に構成されている。しかしながら、周壁部の形状はこれに限定されず、周壁部の少なくとも一部が高さ方向に撓み変形可能に構成されていればよい。高さ方向に撓み変形可能に構成された周壁部の断面形状としては、例えば、少なくとも一つの折り返しを有するような形状であってよく、そのような形状としては、矩形状以外に例えば波形状がある。以下、周壁部の断面形状が波形状になっている実施形態2を説明する。
【0028】
図5から
図8を参照して、実施形態2に係る電子聴診装置40について説明する。
図5は、実施形態2に係る電子聴診装置40の模式的な正断面図である。
図6は、実施形態2に係る電子聴診装置40の模式的な正面図である。
図7は、実施形態2に係る電子聴診装置40の模式的な側面図である。
図8は、実施形態2に係る電子聴診装置40の模式的な平面図である。
【0029】
(電子聴診装置40の概要)
図5から
図8に示すように、実施形態2に係る電子聴診装置40は、被聴診者Pの皮膚Pfに貼り付けた状態で、被聴診者Pの例えば心音、肺音等の生体音を聴診するための生体音聴診装置の1つである。そして、実施形態2に係る電子聴診装置40の具体的な構成は、次の通りである。
【0030】
(トップケース42、収容部44)
図5から
図8に示すように、電子聴診装置40は、ドーム状のトップケース42を備えている。トップケース42は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。トップケース42は、被聴診者Pの皮膚Pfに対向する側に、円形の開口部42aを有している。トップケース42の平面視形状は、円形に近似した形状になっている(
図8参照)。トップケース42の外表面42eには、鏡面処理が施されている。また、トップケース42の内側には、環状の取付溝42gがトップケース42の開口部42a側の周縁部に沿って形成されている。トップケース42は、その内表面42iの中央部に形成された環状又は枠状の収容部44を有している。
【0031】
(ダンパホルダ46)
図5に示すように、電子聴診装置40は、トップケース42の開口部42a側に圧入又は嵌入して設けられた環状のダンパホルダ46を備えている。ダンパホルダ46は、トップケース42の開口部42a側に複数の止めネジ(不図示)によって固定されている。ダンパホルダ46は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。ダンパホルダ46の下縁部には、環状の面取り部46cが形成されている。
【0032】
(防振ダンパ48、底壁部50、周壁部52、取付壁部54、摘み部56、収容部58)
図5から
図7に示すように、電子聴診装置40は、ダンパホルダ46に設けられかつトップケース42からの振動を減衰させるための筒状の防振ダンパ48を備えている。防振ダンパ48は、例えばシリコーンゴム等の軟質樹脂により構成されている。防振ダンパ48は、被聴診者Pの皮膚Pfに例えば両面粘着テープによって貼り付け可能な底壁部50と、底壁部50の周縁から立ち上がる周壁部52とを有している。周壁部52の断面形状は、波形状になっており、周壁部52は、高さ方向に撓み変形可能に構成されている。
【0033】
防振ダンパ48は、周壁部52の周縁から上方向に延びかつダンパホルダ46に保持される環状の取付壁部54を有しており、取付壁部54は、トップケース42の取付溝42gに圧入又は嵌入している。取付壁部54は、ダンパホルダ46とトップケース42によって挟持される。また、防振ダンパ48は、底壁部50の周縁の一部に形成された摘み部56と、底壁部50の裏面の中央部に形成された環状又は枠状の収容部58とを有している。
【0034】
(振動センサ60、回路基板、ノイズキャンセル用の振動センサ62)
図5に示すように、電子聴診装置40は、被聴診者Pの例えば心音、肺音等の生体音に対応する振動を検出する振動センサ60を備えており、振動センサ60は、被聴診者Pの生体音に対応する電気信号を出力する。振動センサ60は、被聴診者Pの生体音を検出するセンサであり、被聴診者Pの生体音に対応する振動を検出する加速度センサである。振動センサ60は、被聴診者Pの生体音の周波数帯である例えば50Hz~2000Hzの振動を検出することができ、電子聴診装置40を用いて被聴診者Pの生体音の聴診を良好に行うことができる。振動センサ60は、防振ダンパ48の収容部58の内側に配置されており、換言すれば、防振ダンパ48の底壁部50の裏面側に設けられている。振動センサ60は、トップケース42に対して高さ方向に離隔している。
【0035】
電子聴診装置40は、トップケース42の内側に設けられた回路基板(不図示)を備えている。回路基板には、振動センサ60から出力された電気信号の増幅処理を行ったり、AD変換処理を行ったりする処理回路(不図示)が実装されている。回路基板には、AD変換処理された生体音データを解析装置(不図示)に有線又は無線によって送信するための送信回路(不図示)が実装されている。回路基板には、処理回路及び送信回路に電力を供給するバッテリー(不図示)が実装されている。解析装置は、送信された生体音データの解析を行ったり、生体音データを波形として表示したりする。なお、電子聴診装置40が回路基板を備える代わりに、解析装置等の外部装置が回路基板を備えてもよい。この場合には、振動センサ60と外部装置の回路基板が有線によって接続される。
【0036】
電子聴診装置40は、トップケース42からのノイズに対応する振動を検出するノイズキャンセル用の振動センサ62を備えてもよい。この場合に、ノイズキャンセル用の振動センサ62は、トップケース42の収容部44の内側に配置される。処理回路は、ノイズキャンセル用の振動センサ62から出力された電気信号に基づいて、ノイズキャンセル処理を行う。
【0037】
(作用効果)
続いて、実施形態2の作用効果について説明する。
【0038】
電子聴診装置40においては、前述のように、防振ダンパ48の周壁部52の断面形状が波形状になっており、防振ダンパ48の周壁部52が高さ方向に撓み変形可能に構成されている。そのため、防振ダンパ48の底壁部50を被聴診者Pの皮膚Pfに貼り付けた状態で、被聴診者Pの生体音を聴診する際に、被聴診者Pの呼吸又は体動等によって衣服又は寝具等がトップケース42に接触しても、衣服等の接触音及び摩擦音を十分に減衰させることができる。特に、トップケース42の外表面42eに鏡面処理が施されているため、衣類等の接触音及び摩擦音を十分に抑制することができる。これにより、振動センサ60に検出される振動にノイズが含まれ難くなり、被聴診者Pの生体音の聴診を良好に行うことができる。その結果、持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「すべての人に健康と福祉を」を達成することができる。
【0039】
電子聴診装置40においては、前述のように、トップケース42の開口部側にダンパホルダ46が設けられ、ダンパホルダ46に防振ダンパ48が設けられている。そのため、防振ダンパ48がトップケース42にダンパホルダ46を介して取付けられ、トップケース42と一体構造になる。これにより、防振ダンパ48の底壁部50を被聴診者Pの皮膚Pfに貼り付けるだけで、トップケース42を被聴診者Pの皮膚Pfに貼り付ける必要がなくなり、電子聴診装置40の取扱性を高めることができる。
【0040】
つまり、実施形態2によれば、電子聴診装置40の取扱性を高めつつ、被聴診者Pの生体音の聴診を良好に行うことができる。
【0041】
また、電子聴診装置40においては、前述のように、防振ダンパ48の取付壁部54がトップケース42の取付溝42gに圧入又は嵌入する。これにより、実施形態2によれば、トップケース42に対する防振ダンパ48の取付状態を安定させることができる。
【0042】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る生体音聴診装置は、被聴診者の皮膚に貼り付けた状態で、被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有したトップケースと、前記トップケースの開口部側に設けられた環状のダンパホルダと、前記ダンパホルダに設けられ、被聴診者の皮膚に貼り付け可能な底壁部と、該底壁部の周縁から立ち上がりかつ少なくとも一部が高さ方向に撓み変形可能に構成された周壁部と、該周壁部の周縁から延びかつ前記ダンパホルダに保持される環状の取付壁部とを有する防振ダンパと、前記防振ダンパの前記底壁部の裏面側に設けられ、被聴診者の生体音を検出するセンサと、を備える。
【0043】
前記の構成によれば、前記防振ダンパの前記周壁部の少なくとも一部が高さ方向に撓み変形可能に構成されている。そのため、前記防振ダンパの前記底壁部を被聴診者の皮膚に貼り付けた状態で、被聴診者の生体音を聴診する際に、被聴診者の呼吸又は体動等によって衣服又は寝具等が前記トップケースに接触しても、衣服等の接触音及び摩擦音を十分に減衰させることができる。これにより、前記センサに検出される被聴診者の生体音にノイズが含まれ難くなり、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができる。
【0044】
前記トップケースの開口部側に前記ダンパホルダが設けられ、前記ダンパホルダに前記防振ダンパが設けられている。そのため、前記防振ダンパが前記トップケースに前記ダンパホルダを介して取付けられ、前記トップケースと一体構造になる。これにより、前記防振ダンパの前記底壁部を被聴診者の皮膚に貼り付けるだけで、前記トップケースを被聴診者の皮膚に貼り付ける必要がなくなり、前記生体音聴診装置の取扱性を高めることができる。
【0045】
本発明の態様2に係る生体音聴診装置は、前記態様1において、前記防振ダンパの前記周壁部の少なくとも一部の断面形状は、矩形状又は波形状であってもよい。
【0046】
前記の構成によれば、前記防振ダンパの前記周壁部の少なくとも一部が高さ方向に撓み変形可能になる。
【0047】
本発明の態様3に係る生体音聴診装置は、前記態様1又は2において、前記トップケースの内側に設けられ、前記防振ダンパの前記取付壁部を内側から支持する支持フレームを更に備えてもよい。
【0048】
前記の構成によれば、前記防振ダンパの前記取付壁部が前記支持フレームと前記ダンパホルダの協働により挟持される。これにより、前記トップケースに対する前記防振ダンパの取付状態を安定させることができる。
【0049】
本発明の態様4に係る生体音聴診装置は、前記態様1又は2において、前記トップケースの内側に環状の取付溝が形成され、前記防振ダンパの前記取付壁部が前記トップケースの前記取付溝に圧入又は嵌入してもよい。
【0050】
前記の構成によれば、前記防振ダンパの前記取付壁部が前記トップケースの前記取付溝に圧入又は嵌入する。これにより、前記トップケースに対する前記防振ダンパの取付状態を安定させることができる。
【0051】
本発明の態様5に係る生体音聴診装置は、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記防振ダンパは、前記底壁部の裏面に形成された環状の収容部を有し、前記センサは、前記防振ダンパの前記収容部の内側に配置されてもよい。
【0052】
前記の構成によれば、前記センサは、前記防振ダンパの前記底壁部の裏面側に設けられる。
【0053】
本発明の態様6に係る生体音聴診装置は、前記態様1から5のいずれかにおいて、前記センサは、被聴診者の生体音に対応する振動を検出する振動センサであってもよい。
【0054】
前記の構成によれば、前記振動センサは、被聴診者の生体音の周波数帯である例えば50Hz~2000Hzの振動を検出することができ、前記生体音聴診装置を用いて被聴診者の聴診を良好に行うことができる。
【0055】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10 電子聴診装置(生体音聴診装置)
12 トップケース
12a 開口部
12e 外表面
12i 内表面
12r リブ部
12s 支持片
12h 係止孔
14 ダンパホルダ
14f 内フランジ部
16 防振ダンパ
18 底壁部
20 周壁部
22 取付壁部
24 摘み部
26 収容部
28 支持フレーム
30 フレーム中央部
30b 突起
32 フレーム外輪部
32f 外フランジ部
34 収容部
36 振動センサ(センサ)
38 ノイズキャンセル用の振動センサ
40 電子聴診装置(生体音聴診装置)
42 トップケース
42a 開口部
42e 外表面
42i 内表面
42g 取付溝
44 収容部
46 ダンパホルダ
48 防振ダンパ
50 底壁部
52 周壁部
54 取付壁部
56 摘み部
58 収容部
60 振動センサ(センサ)
62 ノイズキャンセル用の振動センサ
P 被聴診者
Pf 皮膚