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特開2024-140914ハニカム構造体、電気加熱型担体及び排ガス浄化装置
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  • 特開-ハニカム構造体、電気加熱型担体及び排ガス浄化装置 図1
  • 特開-ハニカム構造体、電気加熱型担体及び排ガス浄化装置 図2A
  • 特開-ハニカム構造体、電気加熱型担体及び排ガス浄化装置 図2B
  • 特開-ハニカム構造体、電気加熱型担体及び排ガス浄化装置 図2C
  • 特開-ハニカム構造体、電気加熱型担体及び排ガス浄化装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140914
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ハニカム構造体、電気加熱型担体及び排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/57 20240101AFI20241003BHJP
   B01J 35/50 20240101ALI20241003BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20241003BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01J35/04 301A
B01J35/02 G ZAB
C04B38/06 E
C04B35/577
B01D53/94 300
F01N3/24 L
F01N3/28 301P
F01N3/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052281
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鏡 魁登
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091BA02
3G091CA03
3G091GA10
3G091GA16
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
4D148BA03Y
4D148BA08Y
4D148BA11Y
4D148BA15Y
4D148BA19Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33Y
4D148BA41Y
4D148BB02
4D148CC43
4D148CC53
4D148CC55
4D148DA03
4D148DA20
4D148EA02
4G169AA01
4G169AA11
4G169BB15B
4G169BD05B
4G169DA06
4G169EA19
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169ED03
4G169ED06
4G169EE03
4G169FB05
4G169FB23
4G169FB30
4G169FB67
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中央部と外周部における排ガスの流量差を緩和することのできるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】導電性の柱状ハニカム構造部と一対の電極層112a、112bとを備える柱状ハニカム構造体110であって、セル115の延びる方向の垂直断面において、径方向に座標軸を取り、重心Oの座標値を0、外周壁の外表面の座標値を1.0Rとしたとき、0~0.7R(中央部)における第一端面116から第二端面までのセルの延びる方向のハニカム構造部の平均長さR1と、0.7R~1.0R(外周部)におけるハニカム構造部の平均長さR2とが、0.5≦R2/R1<1.0を満たし、平均長さR1は、前記中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向のハニカム構造部の長さの最大値の99%以上の長さを有し、中央部に位置する複数のセル及び外周部に位置する複数のセルは共に流体の流路を形成している、柱状ハニカム構造体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第一端面から第二端面まで流体の流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有する導電性の柱状ハニカム構造部と、
前記外周壁の外表面に設けられて前記セルの延びる方向に帯状に延び、前記ハニカム構造部の中心軸を挟んで対向するように設けられた一対の電極層と、
を備え、
前記セルの延びる方向に垂直な断面において、径方向に座標軸を取り、重心Oの座標値を0、前記外周壁の外表面の座標値を1.0Rとしたとき、座標値が0~0.7Rの範囲にある中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の前記ハニカム構造部の平均長さR1と、座標値が0.7R~1.0Rの範囲にある外周部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の前記ハニカム構造部の平均長さR2とが、0.5≦R2/R1<1.0を満たし、
平均長さR1は、前記中央部における第一端面から第二端面までの前記セルの延びる方向のハニカム構造部の長さの最大値の99%以上の長さを有し、
前記中央部に位置する前記複数のセル及び前記外周部に位置する前記複数のセルは共に流体の流路を形成している、
柱状ハニカム構造体。
【請求項2】
0.7≦R2/R1<1.0である請求項1に記載の柱状ハニカム構造体。
【請求項3】
前記中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の前記ハニカム構造部の長さの最大値と最小値の差が1mm以下である請求項1又は2に記載の柱状ハニカム構造体。
【請求項4】
前記中央部における開口率と前記外周部における開口率が同一である請求項1又は2に記載の柱状ハニカム構造体。
【請求項5】
前記中央部における開口率が、前記外周部における開口率の0.7~0.95倍である請求項1又は2に記載の柱状ハニカム構造体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の柱状ハニカム構造体と、
前記一対の電極層のそれぞれの外表面に接合された電極端子と、
を備える電気加熱型担体。
【請求項7】
請求項6に記載の電気加熱型担体と、
前記電気加熱型担体を収容する金属管であって、前記電気加熱型担体の前記外周壁のみと嵌合する金属管と、
を備える排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハニカム構造体に関する。また、本発明はハニカム構造体を備える電気加熱型担体に関する。また、本発明は電気加熱型担体を備える排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コージェライトや炭化珪素を材料とするハニカム構造体に触媒を担持したものが、自動車エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に用いられている。ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒を所定の温度まで昇温する必要があるが、エンジン始動時には、触媒温度が低いため、排ガスが十分に浄化されないという問題が従来生じていた。そこで、導電性セラミックス製のハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、ハニカム構造体に担持された触媒をエンジン始動前又はエンジン始動時に活性温度まで昇温する電気加熱触媒(EHC)と呼ばれるシステムが開発されてきた。
【0003】
EHCは一般に、外周壁、及び、外周壁の内側に配設され、第一端面から第二端面まで流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁を有する導電性のハニカム構造部と、ハニカム構造部の外周壁に配設された一対の電極層とを備える。EHCでは、一対の電極層に端子を接続して電圧を印加することで通電すると、導電抵抗体であるハニカム構造部内を電気が流れることによるジュール熱で発熱する。
【0004】
EHCにおいては、外周部よりも中央部に多くの排ガスが流れやすい。このため、排ガスが流れるとEHC内で温度分布に偏りが生じ、熱膨張差が広がることでクラックが生じる場合があった。このため、EHCにおいては、ハニカム構造部内での温度分布を均一化して、高温部と低温部との温度差による熱応力でクラックが発生するのを防止することが望まれている。
【0005】
このような背景の下、特許文献1においては、中央部の開口率を外周部の開口率の0.70~0.95倍にすることが提案されている。これによって、中央部の電気抵抗率が外周部の電気抵抗率より低くなり、ハニカム構造体に電圧を印加したときに中央部に多くの電流が流れ、中央部が従来よりも早く発熱するようになるとされている。
【0006】
また、特許文献2においては、温度分布の均一化を狙った発明ではないが、ハニカム構造体の軸方向長さを短くしながらも、金属ケースによってハニカム構造体を確実に把持するために、外周部の外周面における軸方向長さが中央部の軸方向長さよりも短く、外周部の端面がハニカム構造体を把持するための把持用端面を構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/151823号
【特許文献2】国際公開第2021/181758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1において提案されているように、中央部の開口率を外周部の開口率の0.70~0.95倍にすることで、中央部の開口率が外周部の開口率と同じ場合に比べ、外周部に排ガスが流れやすくなる。このため、ハニカム構造体の中央部と外周部における排ガスの流量差が緩和され、温度分布の偏りが緩和されることで、熱応力によるクラックの発生を抑制する効果が得られる。しかしながら、特許文献1に記載の発明が実現できる排ガス分布の均一化には限界があり、ハニカム構造体の耐熱衝撃性の更なる改善が望まれている。
【0009】
特許文献2に記載の発明では、外周部の外周面における軸方向長さが中央部の軸方向長さよりも短いが、外周部の端面がハニカム構造体を把持するための把持用端面を構成することから、外周部には排ガスは流れない。このため、ハニカム構造体の中央部と外周部における排ガスの流量差を緩和する効果は得られない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、従来とは異なる手法で中央部と外周部における排ガスの流量差を緩和することのできるハニカム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、排ガスがハニカム構造体の外周部へ流れやすくなるよう、流体の流路を形成する外周部のセル長さを短縮することが有利であることを見出した。本発明は当該知見に基づいて完成したものであり、以下に例示される。
[態様1]
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第一端面から第二端面まで流体の流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有する導電性の柱状ハニカム構造部と、
前記外周壁の外表面に設けられて前記セルの延びる方向に帯状に延び、前記ハニカム構造部の中心軸を挟んで対向するように設けられた一対の電極層と、
を備え、
前記セルの延びる方向に垂直な断面において、径方向に座標軸を取り、重心Oの座標値を0、前記外周壁の外表面の座標値を1.0Rとしたとき、座標値が0~0.7Rの範囲にある中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の前記ハニカム構造部の平均長さR1と、座標値が0.7R~1.0Rの範囲にある外周部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の前記ハニカム構造部の平均長さR2とが、0.5≦R2/R1<1.0を満たし、
平均長さR1は、前記中央部における第一端面から第二端面までの前記セルの延びる方向のハニカム構造部の長さの最大値の99%以上の長さを有し、
前記中央部に位置する前記複数のセル及び前記外周部に位置する前記複数のセルは共に流体の流路を形成している、
柱状ハニカム構造体。
[態様2]
0.7≦R2/R1<1.0である態様1に記載の柱状ハニカム構造体。
[態様3]
前記中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の前記ハニカム構造部の長さの最大値と最小値の差が1mm以下である態様1又は2に記載の柱状ハニカム構造体。
[態様4]
前記中央部における開口率と前記外周部における開口率が同一である態様1~3の何れかに記載の柱状ハニカム構造体。
[態様5]
前記中央部における開口率が、前記外周部における開口率の0.7~0.95倍である態様1~3の何れかに記載の柱状ハニカム構造体。
[態様6]
態様1~5の何れかに記載の柱状ハニカム構造体と、
前記一対の電極層のそれぞれの外表面に接合された電極端子と、
を備える電気加熱型担体。
[態様7]
態様6に記載の電気加熱型担体と、
前記電気加熱型担体を収容する金属管であって、前記電気加熱型担体の前記外周壁のみと嵌合する金属管と、
を備える排ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、ハニカム構造部の外周部のセル長さを中央部よりも短くすることで、相対的に外周部は低圧損となる。これにより外周部への排ガス流れが促進されるので、中央部と外周部における排ガスの流量差を緩和することができる。その結果、加熱時の温度分布の偏りが緩和され、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上することが可能となる。従来知られている他の手法と組み合わせることで耐熱衝撃性の更なる向上も期待できる。また、このハニカム構造体に電極端子を接合して電気加熱型担体を作製することができる。電気加熱型担体は、例えば排ガス浄化装置の触媒担体として好適に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る電気加熱型担体を第一端面から観察したときの模式図である。
図2A】ハニカム構造部の一例を、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時の模式的な断面図である。
図2B】ハニカム構造部の別の一例を、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時の模式的な断面図である。
図2C】ハニカム構造部の更に別の一例を、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時の模式的な断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1.電気加熱型担体)
図1は、本発明の一実施形態に係る電気加熱型担体100を第一端面116から観察したときの模式図である。図2A図2Cは、ハニカム構造部の幾つかの例の模式的な断面図である。
【0016】
電気加熱型担体100は、ハニカム構造体110及び電極端子130a、130bを備える。電気加熱型担体100に触媒を担持することにより、電気加熱型担体100を触媒体として使用することができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はそれ以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒から選択される二種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、ハニカム構造体に触媒を担持する公知の方法を採用することができる。
【0017】
(1-1.ハニカム構造体)
一実施形態において、ハニカム構造体110は、
外周壁114と、外周壁114の内側に配設され、第一端面116から第二端面118まで流路を形成する複数のセル115を区画形成する隔壁113とを有するハニカム構造部、
外周壁114の外表面に設けられ、セル115の延びる方向に帯状に延びる第一電極層112a、及び
外周壁114の外表面に設けられ、セル115の延びる方向に帯状に延びる第二電極層112bであって、ハニカム構造部の中心軸Oを挟んで第一電極層112aと対向するように設けられた第二電極層112b、
を備える。
【0018】
<ハニカム構造部>
ハニカム構造部は、電極層112a、112bよりも体積抵抗率は高いものの導電性を有する。ハニカム構造部の体積抵抗率は、通電してジュール熱により発熱可能である限り特に制限はなく、印加する電圧に応じて適宜設定すればよいが、例えば、四端子法によって25℃で測定したときに、0.001~100Ω・cmとすることができる。60Vより大きい高電圧用には2~100Ω・cmとすることができ、典型的には5~100Ω・cmとすることができる。また、48V等の60V以下の低電圧用には0.001~2Ω・cmとすることができ、典型的には0.001~1Ω・cmとすることができ、より典型的には0.01~1Ω・cmとすることができる。
【0019】
ハニカム構造部の外形は特に限定されず、例えば端面が円形状、オーバル形状、楕円形状、レーストラック形状及び長円形状等のラウンド形状の柱体、端面が三角形状及び四角形状等の多角形状の柱体、並びに、端面がその他の異形形状を有する柱体とすることができる。図1のハニカム構造部は、端面形状が円形状である。
【0020】
ハニカム構造部の高さ(一方の端面から他方の端面までの長さ)は特に制限はなく、用途や要求性能に応じて適宜設定すればよい。ハニカム構造部の高さと各端面の最大径(ハニカム構造体の各端面の重心を通る径のうち、最大長さを指す)の関係についても特に制限はない。従って、ハニカム構造部の高さが各端面の最大径よりも長くてもよいし、ハニカム構造部の高さが各端面の最大径よりも短くてもよい。
【0021】
但し、第一端面116から第二端面までのセルの延びる方向の長さ(セル長さ)は、中央部よりも外周部のほうが短いことが中央部と外周部における排ガスの流量差を緩和する上では有利である。セル長さが中央部よりも外周部のほうが短いことで、相対的に外周部は低圧損となるので、外周部への排ガス流れが促進されるからである。その結果、加熱時の温度分布の偏りが緩和され、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上することが可能となる。
【0022】
具体的には、セルの延びる方向に垂直な断面において、径方向に座標軸を取り、重心Oの座標値を0、前記外周壁の外表面の座標値を1.0Rとしたとき、座標値が0~0.7Rの範囲にある中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の前記ハニカム構造部の平均長さR1と、座標値が0.7R~1.0Rの範囲にある外周部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の前記ハニカム構造部の平均長さR2とが、0.5≦R2/R1<1.0を満たすことが好ましい。
【0023】
R2/R1は、小さい方が中央部と外周部における排ガスの流量差を緩和する効果が高くなる。従って、R2/R1は0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更により好ましい。但し、R2/R1が小さ過ぎると金属管と嵌合可能な外周壁の面積が小さくなってキャニング保持性が低下することから、R2/R1は0.7以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.80以上であることが更により好ましい。よって、例えば、0.7≦R2/R1<1.0を満たすことが好ましく、0.75≦R2/R1≦0.95を満たすことがより好ましく、0.80≦R2/R1≦0.90を満たすことが更により好ましい。
【0024】
平均長さR1は、例えば、ハニカム構造部の中央部の体積(セル及び気孔も体積に含める)を、中央部のセルの延びる方向に垂直な断面積で除することで求めることができる。
平均長さR2は、例えば、ハニカム構造部の外周部の体積(セル及び気孔も体積に含める)を、外周部のセルの延びる方向に垂直な断面積で除することで求めることができる。
【0025】
R2/R1が上記条件を満たせば、中央部及び外周部の形状には特段の制限はない。例えば、ハニカム構造部の外周部は、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時、第一端面116及び第二端面118に近づくにつれてそれぞれ縮径するテーパー部を有することができる。テーパー部の輪郭は図2Aに示すように直線状でもよいし、図2Bに示すように曲線状でもよい。テーパー部は外周部にのみ設けてもよいし、テーパー部の一部が中央部に到達してもよい。また、図3に示すように、ハニカム構造部の外周部は、ステップ状に縮径してもよい。また、ステップ状に縮径する箇所が中央部にあってもよい。その他の形状であってもよい。
【0026】
中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向のハニカム構造部の長さ(セル長さ)も一定である必要はなく、変動し得る。しかしながら、中央部においてはセル長さを変動させる意義は少ない。むしろ、中央部にもセル長さの短縮部が存在すると耐熱衝撃性に対して逆効果になり得る。このため、平均長さR1は、中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向のハニカム構造部の長さの最大値の99%以上の長さを有することが好ましく、同一長さを有することがより好ましい。典型的な実施形態によれば、中央部におけるセル長さの最大値と最小値の差は1mm以下とすることができる。
【0027】
ハニカム構造部の形状は、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時、中心軸O(重心)を対称軸として線対称であることが好ましい。更に、ハニカム構造部の形状は、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時、中心軸O(重心)上の点であって、第一端面116から第二端面118までのセルの延びる方向の長さを二等分する点(中点M)を通り、中心軸O(重心)に直交する線分Lを対称軸として線対称であることが好ましい。
【0028】
中央部に位置する複数のセル及び外周部に位置する複数のセルは、共に流体の流路を形成する必要があるため、金属管によって塞いだりすべきではない。従って、金属管内にハニカム構造体を収容する際、金属管は外周壁のみと嵌合することが好ましい。なお、金属管が外周壁と嵌合するというのは、金属管の内表面が外周壁の外表面に直接嵌合すること、及び金属管の内表面が外周壁の外表面に電極層、マットなど他の部材を介して間接的に嵌合することを含む概念である。
【0029】
また、ハニカム構造部の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、一つの端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0030】
セル115の延びる方向に垂直な断面におけるセルの開口形状に制限はなく、例えば多角形状とするこができる、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体110に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。これらのセルは円弧状の角部を有していても多角形状のセルとみなす。
【0031】
セル115は第一端面116から第二端面118まで貫通していてもよい。また、セル115は、第一端面116が目封止されており第二端面118が開口を有する第1セルと、第一端面116が開口を有し第二端面118が目封止されている第2セルとが隔壁113を挟んで交互に隣接配置されていてもよい。
【0032】
外周壁114及び隔壁113の材質は、通電してジュール熱により発熱可能である限り特に材質に制限はなく、セラミックス(とりわけ導電性セラミックス)等を単独で又は組み合わせて使用可能である。外周壁114及び隔壁113の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスの一種又は二種以上を使用することができる。また、炭化珪素-珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、外周壁114及び隔壁113の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とすることが好ましく、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素であることが更に好ましい。外周壁114及び隔壁113の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、外周壁114及び隔壁113がそれぞれ、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の80質量%以上含有していることを意味し、90質量%以上含有していることが好ましい。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。外周壁114及び隔壁113の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、外周壁114及び隔壁113がそれぞれ、炭化珪素(合計質量)を、全体の80質量%以上含有していることを意味し、90質量%以上含有していることが好ましい。
【0033】
外周壁114及び隔壁113が、珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合、外周壁114及び隔壁113に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、外周壁114及び隔壁113に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、外周壁114及び隔壁113に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率はそれぞれ、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。10質量%以上であると、外周壁114及び隔壁113の強度が十分に維持される。40質量%以下であると、焼成時に形状を保持しやすくなる。
【0034】
ハニカム構造部の隔壁113は、Si含浸SiCの形態等のように緻密質でもよいが、多孔質とすることが好ましい。隔壁113の気孔率が30%以上であると、焼成時の変形をより抑制しやすくなる。また、隔壁113の気孔率が60%以下であるとハニカム構造部の強度が十分に維持される。従って、隔壁113の気孔率は例えば30%以上であることが好ましく、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。なお、緻密質というのは気孔率が5%以下のことを指す。
【0035】
セル115を区画形成する隔壁113の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。隔壁113の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造部の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁113の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造部を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本明細書において、隔壁113の厚みは、セル115の延びる方向に垂直な断面において、隣接するセル115の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁113を通過する部分の長さとして定義される。
【0036】
ハニカム構造部に外周壁114を設けることは、ハニカム構造部の構造強度を確保し、また、セル115を流れる流体が外周壁114から漏洩するのを抑制する観点で有用である。この点で、外周壁114の厚みは好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上であり、更により好ましくは0.2mm以上である。但し、外周壁114を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁113との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁114の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。従って、外周壁114の厚みは例えば0.1~1.0mmであることが好ましく、0.15~0.7mmであることがより好ましく、0.2~0.5mmであることが更により好ましい。ここで、外周壁114の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁114の箇所をセル115の延びる方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁114の外表面の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
好ましい。
【0037】
一実施形態において、ハニカム構造部は中央部における開口率と外周部における開口率を同一とすることができる。上述したように、ハニカム構造部は、外周部のセル長さが中央部よりも短いことで、外周部への排ガス流れが促進されるので、中央部と外周部における排ガスの流量差を緩和することができる。また、セル長さは比較的自由度が高いので、流量差の緩和効果の大小も調整しやすい。従って、従来提案されているような、中央部と外周部の間で開口率に差を設ける構造を採用しなくても、流量差に関する所望の緩和効果を得ることができる。なお、ここでいう「同一」とは、実質同一を含む概念であり、例えば、中央部における開口率が、外周部における開口率の0.95倍を超え、1.05倍未満である場合は、同一とみなされる。
【0038】
また、一実施形態において、ハニカム構造部は中央部の開口率が外周部の開口率よりも小さくてもよい。例えば、中央部における開口率を外周部における開口率の0.7~0.95倍とすることができる。外周部のセル長さが短くなり過ぎると、例えばキャニング保持性が低下するといった中央部と外周部の間の流量差の緩和効果以外の問題が生じる。このため、外周部のセル長さを中央部よりも短くし、且つ、中央部の開口率を外周部の開口率よりも小さくすることで、キャニング保持性と耐熱衝撃性を高い次元で両立することも可能になる。
【0039】
本明細書において、中央部の開口率は、セルの延びる方向に垂直な断面において、中央部内のセル開口面積の合計を、中央部内の隔壁面積とセル開口面積のそれぞれの面積の合計で割って得られた値(セル開口面積合計/(セル開口面積合計+隔壁面積合計))を百分率で表した値である。また、本明細書において、外周部の開口率は、セルの延びる方向に垂直な断面において、外周部内のセル開口面積の合計を、外周部内の隔壁面積(外周壁は除く)とセル開口面積のそれぞれの面積の合計で割って得られた値(セル開口面積合計/(セル開口面積合計+隔壁面積合計))を百分率で表した値である。
【0040】
ハニカム構造部の開口率を外周部と中央部の間で変化させる方法としては、例えば、後述するハニカム成形体を押出成形により作製する工程において、開口率が外周領域と中央領域の間で変化するような構造をもつ口金を使用する方法が挙げられる。
【0041】
外周部及び中央部の開口率は、限定的ではないが、例えば、50~80%とすることができ、55~75%とすることが好ましく、60~70%とすることがより好ましい。外周部及び中央部の開口率をこのような範囲にすることにより、ハニカム構造部に排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。
【0042】
ハニカム構造部は、セル115の延びる方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、ハニカム構造部に排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であるとハニカム構造体110を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁114よりも内周側のハニカム構造部の一つの端面の面積でセル数を除して得られる値である。
【0043】
セル115の延びる方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体110に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。構造強度及び加熱均一性を両立させやすいという観点からは、六角形が特に好ましい。
【0044】
セル115は第一端面116から第二端面118まで貫通していてもよい。その際、セル115は、第一端面116及び第二端面118の両方が開口していてもよい。また、第一端面116が目封止されており第二端面118が開口を有する第1セルと、第一端面116が開口を有し第二端面118が目封止されている第2セルとが隔壁113を挟んで交互に隣接配置されていてもよい。
【0045】
<電極層>
外周壁114の外表面には、第一電極層112a及びこれにハニカム構造部の中心軸Oを挟んで対向する第二電極層112bを設けることができる。外周壁114よりも体積抵抗率の低い電極層112a、112bが配設されることで、電流がハニカム構造体110の周方向及びセル115の延びる方向に広がりやすくなるので、ハニカム構造体110の均一発熱性を高めることが可能となる。図1を参照すると、セル115の延びる方向に垂直な断面において、一対の電極層112a、112bのそれぞれの周方向中心からハニカム構造体110の中心軸O(重心)まで延ばした二つの線分のなす角度θ(0°≦θ≦180°)は、150°≦θ≦180°であることが好ましく、160°≦θ≦180°であることがより好ましく、170°≦θ≦180°であることが更により好ましく、180°であることが最も好ましい。
【0046】
一対の電極層112a、112bの形成領域に特段の制約はないが、ハニカム構造体110の均一発熱性を高めるという観点からは、一対の電極層112a、112bはそれぞれ、外周壁114の外表面上でハニカム構造体110の周方向及びセル115の延びる方向に帯状に延設されていることが好ましい。具体的には、セル115の延びる方向に垂直な断面において、各電極層112a、112bの周方向の両側端と中心軸O(重心)とを結ぶ2本の線分が作る中心角αは、電流を周方向に広げて均一発熱性を高めるという観点から、30°以上であることが好ましく、40°以上であることがより好ましく、60°以上であることが更により好ましい(図1参照)。但し、中心角αを大きくし過ぎると、ハニカム構造体110の内部を通過する電流が少なくなり、外周壁114付近を通過する電流が多くなる。そこで、当該中心角αは、ハニカム構造体110の均一発熱性の観点から、140°以下であることが好ましく、130°以下であることがより好ましく、120°以下であることが更により好ましい。また、電極層112a、112bはそれぞれ、ハニカム構造体110の両端面間の長さの80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びていることが望ましい。電極層112a、112bは単層で構成されていてもよく、複数層が積層された積層構造を有することもできる。
【0047】
電極層112a、112bの厚みは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができる。電極層112a、112bの厚みが0.01mm以上であると、電気抵抗が適切に制御され、より均一に発熱することができる。電極層112a、112bの厚みが5mm以下であると、キャニング保持性に破損する恐れが低減される。電極層112a、112bの厚みは、厚みを測定しようとする電極層112a、112bの箇所をセル115の延びる方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における電極層112a、112bの外表面の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0048】
電極層112a、112bの体積抵抗率を隔壁113及び外周壁114の体積抵抗率より低くすることにより、電極層112a、112bに優先的に電気が流れやすくなり、通電時に電気がハニカム構造体110の周方向及びセル115の延びる方向に広がりやすくなる。電極層112a、112bの体積抵抗率は、隔壁113及び外周壁114の体積抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/30以下であることがより好ましく、1/50以下であることが更により好ましい。但し、両者の体積抵抗率の差が大きくなりすぎると対向する電極層112a、112bの端部間に電流が集中してハニカム構造体110の発熱が偏ることから、電極層112a、112bの体積抵抗率は、隔壁113及び外周壁114の体積抵抗率の1/350以上であることが好ましく、1/250以上であることがより好ましく、1/150以上であることが更により好ましい。従って、電極層112a、112bの体積抵抗率は、例えば、隔壁113及び外周壁114の体積抵抗率の1/350~1/10であることが好ましく、1/250~1/30であることがより好ましく、1/150~1/50であることが更により好ましい。ここでの電極層、隔壁及び外周壁の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0049】
電極層112a、112bの材質は、限定的ではないが、金属とセラミックス(とりわけ導電性セラミックス)との複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)の他、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属とセラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。電極層112a、112bの材質としては、上記の各種金属及びセラミックスの中でも、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と珪素と炭化珪素の複合材とすることが、隔壁及び外周壁と同時に焼成できるので製造工程の簡素化に資するという理由により好ましい。
【0050】
(1-2.電極端子)
電極端子130a、130bは、一対の電極層112a、112bのそれぞれの外表面に直接又は間接的に接合することができる。電極端子130a、130bを介してハニカム構造体110に電圧を印加すると通電してジュール熱によりハニカム構造体110を発熱させることが可能である。このため、ハニカム構造体110はヒーターとしても好適に用いることができる。これにより、ハニカム構造体110の均一発熱性を向上させることが可能となる。印加する電圧は12~900Vが好ましく、48~600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0051】
電極端子130a、130bと電極層112a、112bは直接接合してもよいが、電極層112a、112bと電極端子130a、130bの間の熱膨張差を緩和して電極端子130a、130bの接合信頼性を向上する目的で、一層又は二層以上の下地層120を介して接合してもよい。従って、好ましい実施形態において、ハニカム構造体110は外周壁114上に、ハニカム構造体110の中心軸Oを挟んで対向するように配設された第一電極層112a及び第二電極層112bを有しており、各電極層112a、112bには下地層120を介して、一つ又は複数の電極端子130a、130bが接合される。
【0052】
熱膨張率は電極端子130a、130b→(下地層120)→電極層112a、112b→外周壁114の順に段階的に小さくすることが、接合信頼性を向上する観点で好ましい。なお、ここでの「熱膨張率」は、25℃から800℃まで変化させたときのJIS R1618:2002に従って測定される線膨張係数を意味する。
【0053】
電極端子130a、130bの材質としては、金属であれば特段の制約はなく、単体金属及び合金等を採用することもできるが、耐食性、体積抵抗率及び線膨張率の観点から例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金がより好ましい。また、金属の他、セラミックスを使用してもよい。セラミックスを使用する場合は、導電性セラミックスを使用することが好ましい。更には、金属とセラミックス(とりわけ導電性セラミックス)との複合材(サーメット)を使用することも可能である。電極端子130a、130bの数、形状及び大きさは、特に限定されず、ハニカム構造体110の大きさや通電性能等に応じて、適宜設計することができる。四端子法により25℃で測定したときの電極端子130a、130bの体積抵抗率は、限定的ではないが、電極層112a、112bの体積抵抗率と同じであるかそれ未満であることが好ましい。
【0054】
下地層120の材質は、限定的ではないが、金属とセラミックス(とりわけ導電性セラミックス)との複合材(サーメット)を使用することができる。下地層120の熱膨張率は、例えば、金属とセラミックスの配合比を調整することで制御可能である。
【0055】
下地層120は、限定的ではないが、Ni基合金、Fe基合金、Ti基合金、Co基合金、珪素、及びCrから選択される一種又は二種以上の金属を含有することが好ましい。
【0056】
下地層120は、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア、ガラス及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、並びに、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスから選択される一種又は二種以上のセラミックスを含有することが好ましい。
【0057】
下地層120の厚みは、特に制限はないが、クラック抑制の観点からは0.1~1.5mmであることが好ましく、0.3~0.5mmであることがより好ましい。下地層120の厚みは、厚みを測定しようとする下地層120をセルの延びる方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における下地層120の外表面の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0058】
電極端子130a、130bと電極層112a、112b又は下地層120の接合方法には、特に制限はないが、例えば、溶射、溶接及びロウ付が挙げられる。
【0059】
(2.排ガス浄化装置)
本発明の一実施形態に係る電気加熱型担体は、排ガス浄化装置に用いることができる。図3を参照すると、排ガス浄化装置200は、電気加熱型担体100と、電気加熱型担体100を収容する金属管220とを有する。この排ガス浄化装置において、金属管220は、電気加熱型担体の外周壁114のみと嵌合している。このため、金属管220はハニカム構造部の第一端面及び第二端面とは縮径部も含めて嵌合しておらず、中央部及び外周部のセル115は、何れも金属管220の内面によって塞がれておらず、排ガスの流路として機能することが可能である。また、外周部のセル長さが中央部に比べて短縮されているので、排ガスがハニカム構造体の外周部へ流れやすくなる。その結果、加熱時の温度分布の偏りが緩和され、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上することが可能となる。
【0060】
電気加熱型担体100の電極端子130a、130bには給電のための電線240を接続することができる。金属管220を構成する金属としては限定的ではないが、クロム系ステンレス鋼を始めとする各種ステンレス鋼等を挙げることができる。これらの金属を使用することで、高い耐熱性と耐腐食性を有する排ガス浄化装置となる。
【0061】
排ガス浄化装置200において、電気加熱型担体100は、自動車排ガス等の流体の流路の途中に設置することができる。電気加熱型担体100は、例えば、セルの延びる方向と金属管220の延びる方向が一致する位置関係で金属管220内に押し込んで嵌合させる押し込みキャニングによって、金属管220内に固定することができる。金属管220と電気加熱型担体100の間には保持材(マット)260を配設することが好ましい。保持材(マット)260を構成する素材は限定的ではないが、アルミナファイバー、ムライトファイバー、アルミナ-シリカを主成分とするセラミックスファイバー等のセラミックスが挙げられる。
【0062】
(3.製造方法)
次に、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体を製造する方法について例示的に説明する。ハニカム構造体は、ハニカム成形体を作製する工程1と、外周壁の外表面に、前記ハニカム成形体の中心軸を挟んでセルの延びる方向に帯状に延びるように一対の電極層形成ペーストを塗布し、電極層形成ペースト付きハニカム成形体を作製する工程2と、電極層形成ペースト付きハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製する工程3と、ハニカム焼成体の外周部のセル長さを中央部よりも短くする加工を行う工程4と、を含む製造方法により製造可能である。
【0063】
(工程1)
工程1は、ハニカム構造体の前駆体であるハニカム成形体を作製する工程である。ハニカム成形体の作製は、公知のハニカム構造体の製造方法におけるハニカム成形体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、珪素粉末(珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と珪素粉末の質量との合計に対して、珪素粉末の質量が10~40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3~50μmが好ましく、3~40μmがより好ましい。珪素粉末における珪素粒子の平均粒子径は、2~35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、珪素粒子は、珪素粉末を構成する珪素の微粒子である。なお、これは、ハニカム構造体の材質を、珪素-炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造体の材質を炭化珪素とする場合には、珪素は添加しない。
【0064】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0~10.0質量部であることが好ましい。
【0065】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0066】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5~10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0067】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20~60質量部であることが好ましい。
【0068】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形して、外周壁及び隔壁を有する柱状のハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。ハニカム成形体のセルの延びる方向の長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両端部を切断して所望の長さとすることができる。乾燥後のハニカム成形体をハニカム乾燥体と呼ぶ。
【0069】
工程1の変形例として、ハニカム成形体を一旦焼成してもよい。すなわち、この変形例では、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製し、当該ハニカム焼成体に対して工程2を実施する。
【0070】
(工程2)
工程2は、ハニカム成形体の外周壁の外表面に電極層形成ペーストを塗布して、電極層形成ペースト付きハニカム成形体を得る工程である。電極層形成ペーストは、電極層の要求特性に応じて配合した原料粉(金属粉末、及び、セラミックス粉末等)に各種添加剤を適宜添加して混練することで形成することができる。原料粉の平均粒子径は、限定的ではないが、例えば、5~50μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。原料粉の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0071】
次に、得られた電極層形成ペーストを、ハニカム成形体(典型的にはハニカム乾燥体)の側面の所要箇所に塗布し、電極層形成ペースト付きハニカム成形体を得る。電極層形成ペーストを調合する方法、及び電極層形成ペーストをハニカム成形体に塗布する方法については、公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができるが、電極層を外周壁及び隔壁に比べて低い体積抵抗率にするために、外周壁及び隔壁よりも金属の含有比率を高めたり、原料粉中の金属粒子の粒径を小さくしたりすることができる。塗布後、電極層形成ペーストを乾燥させることが好ましい。また、電極層形成ペーストによってセル、特に外周部のセルが閉塞しないように留意すべきである。
【0072】
(工程3)
工程3は、電極層形成ペースト付きハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得る工程である。焼成前に、バインダ等を除去するため、脱脂を行ってもよい。脱脂及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件としては、ハニカム構造体の材質にもよるが、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。
【0073】
(工程4)
工程4は、ハニカム焼成体の外周部のセル長さを中央部よりも短くする加工を行う工程である。先述した通り、R2/R1が所定の条件を満たす限り、中央部及び外周部の形状に特段の制限はない。加工方法にも特段の制限はないが、例えば、切断や研磨が挙げられる。
【0074】
このようにして得られたハニカム構造体の電極層に電極端子を接合することで、電気加熱型担体を製造可能である。接合方法としては、特に制限はないが、例えば、溶射、溶接及びロウ付が挙げられる。電極層と電極端子との接合性を向上させる点から、溶射等の方法により下地層を形成してもよい。
【0075】
電気加熱型担体には用途に応じて適切な触媒を担持してもよい。ハニカム構造体に触媒を担持させる方法としては、例示的には、触媒スラリーを、従来公知の吸引法等によりセル内に導入し、隔壁の表面や細孔に付着させた後、高温処理を施して、触媒スラリーに含まれる触媒を隔壁に焼き付けて、担持する方法が挙げられる。
【実施例0076】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0077】
<比較例1>
(1.円柱状の坏土の作製)
炭化珪素(SiC)粉末と珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合してセラミックス原料を調製した。そして、セラミックス原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部とした。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部とした。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。炭化珪素粉末、珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0078】
(2.ハニカム乾燥体の作製)
得られた円柱状の坏土を所定の口金構造を有する押出成形機を用いて成形し、セルの延びる方向に垂直な断面における各セル形状が六角形である円柱状のハニカム成形体を得た。このハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断して、ハニカム乾燥体を作製した。
【0079】
(3.電極層形成ペーストの調製)
珪素(Si)粉末、炭化珪素(SiC)粉末、メチルセルロース、グリセリン、及び水を、自転公転攪拌機で混合して、電極層形成ペーストを調製した。Si粉末、及びSiC粉末は体積比で、Si粉末:SiC粉末=40:60となるように配合した。また、Si粉末、及びSiC粉末の合計を100質量部としたときに、メチルセルロースは0.5質量部であり、グリセリンは10質量部であり、水は38質量部であった。珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素粉末の平均粒子径は35μmであった。これらの平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0080】
(4.電極層形成ペーストの塗布)
上記の電極層形成ペーストを上記のハニカム乾燥体の外周壁の外表面上に中心軸を挟んで対向するように、曲面印刷機によって二箇所塗布した。各塗布部は、ハニカム乾燥体の外周壁のセルの延びる方向の全長に亘って帯状に形成した(角度θ=180°、中心角α=127°)。次に、ハニカム乾燥体に塗布した電極層形成ペーストを乾燥させて、電極層付きハニカム乾燥体を得た。乾燥温度は、70℃とした。
【0081】
(5.焼成)
電極層形成ペースト付きハニカム乾燥体を、550℃で3時間、大気雰囲気下で脱脂した。次に、脱脂した電極層形成ペースト付きハニカム乾燥体を1450℃で2時間、大気雰囲気下で焼成し、円柱状のハニカム構造体を得た。なお、ハニカム構造体は下記の試験に必要な数を作製した。
【0082】
(6.ハニカム構造体の仕様)
【0083】
上記の製造条件で得られたハニカム構造体は、端面が直径80mm(電極層を除く)の円形であり、高さ(セルの延びる方向における長さ)が65mmであった。セル密度は93セル/cm2であり、外周壁の厚みは0.3mmであり、隔壁の厚みは0.14mmであり、隔壁の気孔率は45%であった。電極層の厚みは0.23mmであった。中央部における開口率と外周部における開口率は同一であり、73%であった。
【0084】
上記の製造条件で得られたハニカム構造体について、セルの延びる方向に垂直な断面において、径方向に座標軸を取り、重心Oの座標値を0、前記外周壁の外表面の座標値を1.0Rとしたとき、座標値が0~0.7Rの範囲にある中央部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向のハニカム構造部の平均長さR1と、座標値が0.7R~1.0Rの範囲にある外周部における第一端面から第二端面までのセルの延びる方向のハニカム構造部の平均長さR2を測定した。R2/R1と共に結果を表1に示す。
平均長さR1は、ハニカム構造部の中央部の体積(セル及び気孔も体積に含める)を、中央部のセルの延びる方向に垂直な断面積で除することで求めた。
平均長さR2は、ハニカム構造部の外周部の体積(セル及び気孔も体積に含める)を、外周部のセルの延びる方向に垂直な断面積で除することで求めた。
【0085】
<実施例1>
比較例1と同じハニカム構造体を得た後、ハニカム構造体に対して、研磨により、外周部のセル長さを中央部よりも短くする外形加工を行った。外形加工後のハニカム構造体は、図2Cに示すような断面形状を有しており、0.7R~1.0Rの領域において、セル長さを50%短縮した。また、ハニカム構造部の形状は、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時、中心軸Oを対称軸として線対称となる形状とし、更に、中心軸O上の点であって、第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の長さを二等分する点(中点M)を通り、中心軸Oに直交する線分Lを対称軸として線対称となる形状とした。このように外形加工したハニカム構造体を下記の試験に必要な数だけ作製した。
【0086】
上記の製造条件で得られたハニカム構造体について、比較例1と同様に、R1及びR2を測定し、R2/R1を求めた。結果を表1に示す。
【0087】
<実施例2>
比較例1と同じハニカム構造体を得た後、ハニカム構造体に対して、研磨により、外周部のセル長さを中央部よりも短くする外形加工を行った。外形加工後のハニカム構造体は、図2Cに示すような断面形状を有しており、0.7R~1.0Rの領域において、セル長さを約15%短縮した。また、ハニカム構造部の形状は、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時、中心軸Oを対称軸として線対称となる形状とし、更に、中心軸O上の点であって、第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の長さを二等分する点(中点M)を通り、中心軸Oに直交する線分Lを対称軸として線対称となる形状とした。このように外形加工したハニカム構造体を下記の試験に必要な数だけ作製した。
【0088】
上記の製造条件で得られたハニカム構造体について、比較例1と同様に、R1及びR2を測定し、R2/R1を求めた。結果を表1に示す。
【0089】
<実施例3>
比較例1と同じハニカム構造体を得た後、ハニカム構造体に対して、研磨により、外周部のセル長さを中央部よりも短くする外形加工を行った。外形加工後のハニカム乾燥体は、図2Cに示すような断面形状を有しており、0.85R~1.0Rの領域において、セル長さを約15%短縮した。また、ハニカム構造部の形状は、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時、中心軸Oを対称軸として線対称となる形状とし、更に、中心軸O上の点であって、第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の長さを二等分する点(中点M)を通り、中心軸Oに直交する線分Lを対称軸として線対称となる形状とした。このように外形加工したハニカム構造体を下記の試験に必要な数だけ作製した。
【0090】
上記の製造条件で得られたハニカム構造体について、比較例1と同様に、R1及びR2を測定し、R2/R1を求めた。結果を表1に示す。
【0091】
<比較例2>
比較例1と同じハニカム構造体を得た後、ハニカム構造体に対して、研磨により、外周部のセル長さを中央部よりも短くする外形加工を行った。外形加工後のハニカム構造体は、図2Cに示すような断面形状を有しており、0.7R~1.0Rの領域において、セル長さを約85%短縮した。また、ハニカム構造部の形状は、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時、中心軸Oを対称軸として線対称となる形状とし、更に、中心軸O上の点であって、第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の長さを二等分する点(中点M)を通り、中心軸Oに直交する線分Lを対称軸として線対称となる形状とした。このように外形加工したハニカム構造体を下記の試験に必要な数だけ作製した。
【0092】
上記の製造条件で得られたハニカム構造体について、比較例1と同様に、R1及びR2を測定し、R2/R1を求めた。結果を表1に示す。
【0093】
<比較例3>
比較例1と同じハニカム構造体を得た後、ハニカム構造体に対して、研磨により、外周部のセル長さを中央部よりも短くする外形加工を行った。外形加工後のハニカム構造体は、図2Cに示すような断面形状を有しており、0.25R~1.0Rの領域において、セル長さを約15%短縮した。また、ハニカム構造部の形状は、中心軸Oを通り、セルの延びる方向に平行な断面で観察した時、中心軸Oを対称軸として線対称となる形状とし、更に、中心軸O上の点であって、第一端面から第二端面までのセルの延びる方向の長さを二等分する点(中点M)を通り、中心軸Oに直交する線分Lを対称軸として線対称となる形状とした。このように外形加工したハニカム構造体を下記の試験に必要な数だけ作製した。
【0094】
上記の製造条件で得られたハニカム構造体について、比較例1と同様に、R1及びR2を測定し、R2/R1を求めた。結果を表1に示す。
【0095】
<耐熱衝撃性>
各試験番号に係るハニカム構造体に対して耐熱衝撃性試験を実施し、クラック発生温度を求めた。耐熱衝撃性試験は以下の手順で行った。
プロパンガスバーナー試験機の内径88mmの円筒状の金属ケースに、アルミナマットを挟んでハニカム構造体を収納(キャニング)した。この際、金属ケースは、ハニカム構造体の外周壁のみと嵌合させた。そして、金属ケース内に、プロパンガスバーナーにより加熱されたガス(燃焼ガス)を供給し、ガスがハニカム構造体内を通過するようにした金属ケースに流入する加熱ガスの温度条件(入口ガス温度条件)を以下のように設定した。
【0096】
まず、5分間で指定温度まで昇温し、指定温度で10分間保持し、その後、5分間で100℃まで冷却し、100℃で10分間保持する。このような昇温、保持、冷却、保持の一連の操作を「昇温、冷却操作」と称する。その後、室温に冷却してハニカム構造体のクラックを顕微鏡により確認する。指定温度を800℃から50℃ずつ上昇させながら上記「昇温、冷却操作」を繰り返す。指定温度は、ハニカム構造体にクラックが発生するまで50℃ずつ上昇させる。結果を表1に示す。
【0097】
<キャニング保持性>
各試験番号に係るハニカム構造体に対してキャニング保持性を評価するための試験を行った。キャニング保持性を評価するための試験は以下の手順で行った。
ハニカム構造体を内径88mmの金属ケースにアルミナマットを挟んで収納した。この際、金属ケースは、ハニカム構造体の外周壁のみと嵌合させた。次いで、振動機をバーナーに取り付けた装置(社内製造)を用いて加熱振動試験を実施した。キャニング保持性は、振動機によって振動を加えながら、ハニカム構造体及び金属ケースの加熱及び冷却を繰り返し実施した後、金属ケース内でハニカム構造体に位置ずれが生じているか否かに基づいて評価した。
具体的には、金属ケース内に、プロパンガスバーナーにより加熱されたガス(燃焼ガス)を供給し、ガスがハニカム構造体内を通過するようにすることで、入口ガス温度条件で900℃への加熱を5分間行った後、5分間で100℃まで冷却した。この加熱及び冷却を16時間行った後に、ハニカム構造体の位置ずれを調査した。振動条件は40G、150Hzとした。バーナーによりハニカム構造体に流入させるガスの流量は2Nm3/minとした。
ハニカム構造体の位置ずれの状態に応じて以下のように評価を行った。結果を表1に示す。
×:位置ずれがセルの延びる方向で4mm以上である。
△:位置ずれがセルの延びる方向で2mm以上4mm未満である。
〇:位置ずれがセルの延びる方向で2mm未満である。
【0098】
【表1】
【0099】
<考察>
比較例1は中央部及び外周部におけるセル長さが同じ従来例である。この比較例1のクラック発生温度は800℃であった。これに対して、外周部におけるセル長さを短くした実施例1~3はクラック発生温度が上昇し、耐熱衝撃性が向上したことが確認された。また、R2/R1がより適切であった実施例2及び3は、キャニング保持性にも優れていた。
【符号の説明】
【0100】
100 :電気加熱型担体
110 :ハニカム構造体
112a :第一電極層
112b :第二電極層
113 :隔壁
114 :外周壁
115 :セル
116 :第一端面
118 :第二端面
120 :下地層
130a :電極端子
130b :電極端子
200 :排ガス浄化装置
220 :金属管
240 :電線
図1
図2A
図2B
図2C
図3