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  • 特開-電動制動装置 図1
  • 特開-電動制動装置 図2
  • 特開-電動制動装置 図3
  • 特開-電動制動装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140922
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60T13/138 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052294
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】榊原 優一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賢人
(72)【発明者】
【氏名】宮下 茉侑
【テーマコード(参考)】
3D048
【Fターム(参考)】
3D048BB52
3D048BB53
3D048CC54
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH59
(57)【要約】
【課題】制動部を複数備える電動制動装置に対する防水・防塵対策において、部品点数を削減し、組み付け時間を減少させる。
【解決手段】電動制動装置(1)は、複数の電気モータ(11)のハウジング(50)から露出する部分を覆う1つのカバー(30)と、ハウジング(50)とカバー(30)との間をシールするシール部(40)とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に制動力を付与する制動部を複数備え、複数の前記制動部が、共通のハウジングに設けられたそれぞれ異なるシリンダ内のピストンを駆動する電気モータをそれぞれに有し、複数の前記電気モータの少なくとも一部は前記ハウジング外に露出し、前記ピストンが直線運動することで、前記車輪とともに回転する回転体に前記ピストンと連動する摩擦材を押し付ける電動制動装置において、
複数の前記電気モータの前記ハウジングから露出する部分を覆う共通のカバーと、
前記ハウジングと前記カバーとの間をシールするシール部と、
を備える電動制動装置。
【請求項2】
前記カバーは、複数の前記電気モータの複数の配線を該カバーの外部と接続するための共通の接続部を含む、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記複数の電気モータは、円柱形状をしており、かつ、該電気モータの径方向に並んで配置されており、
前記複数の電気モータの間の隙間に配置され前記複数の電気モータと前記ハウジングとに接触し、前記電気モータで発生した熱を前記ハウジングに伝達する伝達部を備えている請求項1または請求項2に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータケースの外被の全体とギヤケースの外被の1/3程度とを覆うようにゴムカバーが被せられた防水型の小型モータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-32951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制動部を複数備える電動制動装置では、制動部の数が増えるほど、モータとシリンダとの間のシール箇所が多くなるため、部品点数が増加してしまうことや、それらの部品を組付けるための時間が増加してしまうことが考えられる。
本開示の一態様は、制動部を複数備える電動制動装置に対する防水・防塵対策における、部品点数の削減および組み付け時間の減少を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る電動制動装置は、車両の車輪に制動力を付与する制動部を複数備え、複数の前記制動部が、共通のハウジングに設けられたそれぞれ異なるシリンダ内のピストンを駆動する電気モータをそれぞれに有し、複数の前記電気モータの少なくとも一部は前記ハウジング外に露出し、前記ピストンが直線運動することで、前記車輪とともに回転する回転体に前記シリンダと連動する摩擦材を押し付ける電動制動装置において、複数の前記電気モータの前記ハウジングから露出する部分を覆う共通のカバーと、前記ハウジングと前記カバーとの間をシールするシール部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示では、複数の電気モータを共通のカバーで覆い、複数のシリンダが構成されたハウジングとカバーとの間をシールするようにしている。そのため、共通のカバーとハウジングとの間をシールすることで複数の制動部の防水・防塵対策ができる。したがって、本開示は、部品点数の削減および組み付け時間の減少に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態1に係る電動制動装置を模式的に示す概略図である。
図2】本開示の実施形態1に係る制動部を模式的に示す概略側面図である。
図3】(a)は本開示の実施形態2に係る電動制動装置を模式的に示す概略図である。(b)は(a)のA-A面視図である。(c)は(a)のB-B面視図である。
図4】本開示の変形例に係る電動制動装置のカバーと配線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1について、詳細に説明する。図1は、本開示の実施形態1に係る電動制動装置を模式的に示す概略図である。図1に示す電動制動装置1は、2つの制動部10と、伝達部20と、カバー30と、ハウジング50と、ケース60とを備えている。以下、図1の矢印で示されるように、電動制動装置1のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を定義する。
【0009】
電動制動装置1では、2つの制動部10がZ軸方向に並べて配置されている。2つの制動部10は、それぞれ電気モータ11および配電部13を有している。
電気モータ11は、円柱形状をしている。電気モータ11が円柱形状をしているとは、そのモータハウジングが円柱形状である場合だけでなく、物理的、電気的または熱的に外部に接続するために外形が円柱形状でなくなったモータハウジングに収容されているモータが略円柱形状である場合を含む。図1では、電動制動装置1は、電気モータ11の軸方向がX軸方向に平行になるように配置されており、2つの電気モータ11はそれらの径方向のうちZ軸方向に並んで配置されている。
【0010】
電気モータ11の一方の端面11Aには、配電部13が設けられている。配電部13は、例えば、コネクタ、端子台等で構成されている。配電部13は、配線14により、ケース60に電気的に接続されている。配線14は、例えば、バスバー、ハーネス等で構成されている。ケース60は、その一部がハウジング50と接触している。ケース60には、電気モータ11を駆動するための電気回路等が収容されている。
【0011】
伝達部20は、鉄等の熱伝導部材で構成されている。伝達部20は、例えば、X軸方向に延在する複数の鉄板が、2つの電気モータ11の側面の間の隙間を埋めるように、Y軸方向に積まれることにより構成されている。伝達部20は、少なくとも2つの電気モータ11の側面とハウジング50とに接触しており、2つの制動部10にて生じた熱がハウジング50へ伝えられる。伝達部20は、2つの電気モータ11の側面の間の隙間に設けられているため、電動制動装置1の体格を大きくすることなく、放熱量を大きくすることができる。伝達部20には、放熱グリス等の流体を含んでもよく、2つの電気モータ11の側面と鉄板との密着性を向上させてもよい。
【0012】
ハウジング50は、電気モータ11の端面11Aと対向する端面11B側に設けられており、電気モータ11の軸方向の延長線上に位置している。ハウジング50には、2つの制動部10の各々に設けられたシリンダ(図1には不図示)が設けられている。
【0013】
カバー30は、例えば、非導電性の樹脂で形成されている。カバー30は、2つの制動部10のうちハウジング50から露出する部分と、伝達部20とを1つで覆っている。カバー30は、接続部31を1つ含んでいる。接続部31は、複数の電気モータ11の配線14を、カバー30の外部、例えば、ケース60と接続するために設けられている。接続部31は、2つの電気モータ11の配線14の両方を1つで覆っている。カバー30の接続部31は、ケース60の端面60Aに当接している。
【0014】
図2は、本開示の実施形態1に係る制動部を模式的に示す概略側面図である。制動部10は、電気モータ11と、ギヤボックス12と、配電部13と、配線14と、シリンダ15と、シリンダ15内に配置される直動変換機構およびピストンと、図示しないホイールシリンダ、図示しない摩擦材とを有している。
【0015】
電気モータ11は、端面11Aに対向する端面11Bがギヤボックス12と対向している。電気モータ11は、端面11Bに不図示の出力軸が設けられており、ギヤボックス12に連結されている。
【0016】
シリンダ15は、図1のハウジング50に設けられており、ピストンを含んでいる。電気モータ11が回転運動することで、ギヤボックス12内のギヤに回転運動が伝達され、ねじ機構などで構成される直動変換機構によりギヤの回転運動を直線運動に変換することで、ピストンを直線運動させる。シリンダ15内でピストンがX軸方向に直線運動することにより、シリンダ15内のフルードが図示しないホイールシリンダに送り込まれ、ホイールシリンダ内に送り込まれたフルードが図示しないホイールシリンダ内のピストンおよび摩擦材を直線運動させる。これにより、摩擦材が回転体に押し付けられる。回転体は、例えば、車両の車輪と共に回転するディスクロータである。上記の通り、ピストンの直線運動と連動する摩擦材が回転体に押し付けられることにより、車両の車輪に制動力が付与される。
【0017】
電動制動装置1のカバー30は、開口32がハウジング50の端面50Aに当接している。電動制動装置1は、カバー30の開口32がハウジング50の端面50Aに当接する位置の近傍において、1つのカバー30と1つのハウジング50との間をシールするシール部40を備えている。シール部40は、例えば、Oリング等のゴムパッキン、液状ガスケット等で構成されている。シール部40を1つ設けることにより、複数の制動部10の防水対策および防塵対策を行うことができる。
【0018】
図2では、配線14は、L字形のバスバー14Lであって、カバー30の成形時に接続部31に挿入されている。バスバー14Lは、その一端がケース60に挿入され、ケース60の電気回路に接続されている。バスバー14Lの他端は、カバー30の内側に配置されており、カバー30に電気モータ11がX軸方向に沿って挿入されると、配電部13に接続される。ケース60の電気回路は、バスバー14Lを介して、電気モータ11を駆動する。
【0019】
〔実施形態2〕
図3は、本開示の実施形態2に係る電動制動装置を模式的に示す概略図である。図3の(a)に示す電動制動装置2では、電気モータ11とハウジング50との位置関係が実施形態1と異なっている。実施形態1では、電気モータ11の軸方向の延長線上にハウジング50が配置されていた。一方、実施形態2に係る電動制動装置2では、2つの電気モータ11の軸方向をX軸方向とし、2つの電気モータ11が並置されている方向をZ軸方向としたとき、ハウジング50が電気モータ11とY軸方向に並んで配置されている。ギヤボックス12は、Y軸方向に延在し、電気モータ11の端面11Bおよびハウジング50の端面50Aと対向している。
【0020】
カバー30は、電気モータ11の端面11Aと対向する面33に、接続部31が設けられている。カバー30は、ハウジング50の端面50Aと当接する開口32を有している。カバー30の開口32と、ハウジング50の端面50Aとの間には、シール部40としてシール面を有している。
【0021】
図3の(b)は、(a)のA-A面視図である。図3の(c)は、(a)のB-B面視図である。
図3の(b)に示すように、2つの電気モータ11は、Z軸方向に並んで配置されている。ハウジング50は、2つの電気モータ11の側面と対向するように、配置されている。ハウジング50には、2つの電気モータ11の各々に対応するシリンダ15が1つずつ設けられている。
【0022】
図3の(c)に示すとおり、伝達部20は、Z軸方向に沿って2つの電気モータ11の側面に当接する幅を有し、X軸方向に沿って延伸し、金属で構成されたギヤボックス12に接触している。このようにすることで、伝達部20は、ギヤボックス12を介して電気モータ11の側面とハウジング50とを熱的に接続している。そのため、ギヤボックスは伝達部の一部とみなすことができる上、ギヤボックス12の熱容量が十分に大きければギヤボックス12をハウジングとみなすこともできる。電気モータ11で発生した熱は、伝達部20を介して、ハウジング50へ伝達される。
【0023】
(変形例)
上記実施形態では、電動制動装置1および2は、制動部10を2つ備えるものとした。
しかし、本開示に係る電動制動装置1および2に備える制動部10の数は、2つに限られず、例えば、制動部10を3つ以上備えることにしてもよい。本開示に係る電動制動装置1および2に3つ以上の制動部10を備える場合、各制動部10の電気モータ11は、径方向に並んで配置することにすればよく、複数の電気モータ11の隙間にそれぞれ伝達部20を設けることにすればよい。
【0024】
上記実施形態では、電動制動装置1および2は、制動部10の電気モータ11およびギヤボックス12は、ハウジング50の外に配置されていた。
しかし、ギヤボックス12と、電気モータ11の一部は、ハウジング50の内側に配置されることにしてもよい。カバー30は、複数の制動部10の各々に有する電気モータ11およびギヤボックス12のうち、ハウジング50の外に露出している部分を覆うことにすればよい。
【0025】
カバー30の形状は、上記実施形態で示した形状だけに限定されない。例えば、複数の電気モータ11の間に梁、リブ等を設けてカバー30の剛性を向上させることにしてもよい。カバー30の梁やリブは、熱伝導率の高い材質で構成してもよく、伝達部20の一部として機能させることにしてもよい。
また、カバー30は、防水対策・防塵対策の性能が損なわれない範囲で呼吸穴を有することにしてもよい。カバー30に呼吸穴を設けることにより、カバー30の内側の空気が膨張または収縮することによるカバー30の耐久性の低下を防ぐことができる。
【0026】
図3では、伝達部20およびギヤボックス12を介して電気モータ11とハウジング50とを熱的に接続していたがその形態に限られない。例えば、カバー30の形状を変更し図3(b)の伝達部20とハウジング50との間のカバー30を無くすことで、伝達部20とハウジング50とを直接接触させることができる。
図3(b)の伝達部20とハウジング50との間のカバー30を無くす更なる変形例として、電動制動装置2は、電気モータ11の側面形状に合わせてハウジング50に切削加工を施し、電気モータ11の側面をハウジング50に直接接触させることにしてもよい。
【0027】
配線14の形状および固定方法は、上記実施形態で示した形状だけに限定されない。例えば、図4に示す配線14は、Z字形のバスバー14Zであり、その一端がY軸方向に接続部31に挿入された状態でカバー30に固定されている。バスバー14Zは、カバー30の内部で2度屈曲しており、もう一端が電気モータ11の配電部13に接続される。
【0028】
上記実施形態では、ケース60は、その一部がハウジング50に接触しているものとした。しかし、ケース60は、図4に示すように、Y軸方向に延伸させ、ハウジング50と接触しない構成としてもよい。
図3では、電気モータ11をカバー30に収容し、電気回路をケース60に収容しているが、この構成に限られない。電気回路をカバー30内に配置する構成とし、ケース60を削除してもよい。
【0029】
〔まとめ〕
本開示の一態様に係る電動制動装置は、複数の電気モータのハウジングから露出する部分を覆う共通のカバーと、ハウジングとカバーとの間をシールするシール部と、を備えている。
制動部を複数備える電動制動装置では、制動部の数が増えるほど、モータとシリンダとの間のシール箇所が多くなるため、部品点数が増加してしまうことや、それらの部品を組付けるための時間が増加してしまうことが考えられる。そこで、本開示では、複数の電気モータを共通のカバーで覆い、複数のシリンダが構成されたハウジングとカバーとの間をシールするようにしている。そのため、共通のカバーとハウジングとの間をシールすることで複数の制動部の防水・防塵対策ができる。したがって、本開示は、部品点数の削減および組み付け時間の減少に寄与する。
【0030】
本開示の一態様では、カバーは、複数の電気モータの複数の配線を該カバーの外部と接続するための共通の接続部を含む。
電気モータを駆動させるために、電気モータの配線をカバーの外部と接続する構造が考えられる。ここで、カバーは、カバー内の複数の電気モータの複数の配線をカバー外部と接続するための共通の接続部を含むため、接続部とカバー外部との接続においてシール箇所を減らすことができる。そのため、部品点数の削減および組み付け時間の減少に寄与する。
【0031】
本開示の一態様に係る電動制動装置では、前記複数の電気モータは、円柱形状をしており、かつ、該電気モータの径方向に並んで配置されており、前記複数の電気モータの間の隙間に配置され前記複数の電気モータと前記ハウジングとに接触し、前記電気モータで発生した熱を前記ハウジングに伝達する伝達部を備えている。
本開示では、複数の電気モータが共通のカバー内に存在するため、カバー内の温度が上昇し、複数の電気モータが高温になることが課題である。また、円柱形状の複数の電気モータを、電気モータの径方向に並べると電気モータ間に隙間が必ず生じる。この隙間に電気モータの熱を伝達可能である伝達部を設け、伝達部が複数の電気モータおよびハウジングに接触するように構成することで、電動制動装置の体格を大きくすることなく、電気モータの熱対策を行うことができる。
上記実施形態では、ピストンがフルードを介して摩擦材を回転体に押し当てて制動力を発生させる制動装置であったがこれに限られない。ピストンが直接摩擦材を直線運動させて回転体に押し当てる機械式の制動装置であっても本開示を適応可能である。
【0032】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1、2 電動制動装置
10 制動部
11 電気モータ
14 配線
15 シリンダ
20 伝達部
30 カバー
31 接続部
40 シール部
50 ハウジング
図1
図2
図3
図4