(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140938
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/02 20060101AFI20241003BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20241003BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N29/02 501
H03H9/25 A
H03H9/25 Z
H03H9/145 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052315
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】添田 将
【テーマコード(参考)】
2G047
5J097
【Fターム(参考)】
2G047EA21
2G047GA09
5J097AA25
5J097BB05
5J097DD14
5J097EE05
5J097EE08
5J097FF04
5J097HA03
5J097HA04
5J097HB09
5J097JJ06
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】十分な耐環境性を持つ弾性波センサを提供すること。
【解決手段】実施形態のセンサ装置は、弾性波が内部を伝搬する1つ以上の圧電体の層と、圧電体の層を伝搬する弾性波を送波、受波又は反射するために電気信号との変換を担う電極と、弾性波を反射するためのリフレクタと、物理量を検出する感応部からなるセンサ部と、センサ部の電気信号に基づき、無線通信を行うアンテナ部と、アンテナ部及びセンサ部を保護する保護部と、を有し、電極と、圧電体の層と、保護部とは、それぞれが順に内包する構造であり、保護部の材料が耐食材料かつ耐熱材料からなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波が内部を伝搬する1つ以上の圧電体の層と、
前記圧電体の層を伝搬する弾性波を送波、受波又は反射するために電気信号との変換を担う電極と、
弾性波を反射するためのリフレクタと、
物理量を検出する感応部からなるセンサ部と、
前記センサ部の電気信号に基づき、無線通信を行うアンテナ部と、
前記アンテナ部及び前記センサ部を保護する保護部と、
を有し、
前記電極と、前記圧電体の層と、前記保護部とは、それぞれが順に内包する構造であり、
前記保護部の材料が耐食材料かつ耐熱材料からなる
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
弾性波が内部を伝搬する前記圧電体の層と、前記圧電体の層の境界面と接する材質中の弾性波伝搬速度において、1.4倍以上の差があることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記保護部における封止は、中間層を介さない前記保護部の材料同士の直接接合による
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記保護部で囲われた前記センサ部又は前記アンテナ部の内部が真空で封止されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記保護部は上部及び下部を含み、
前記保護部の上部と前記圧電体の層の間には、弾性波が内部を伝搬する際に、前記圧電体の層の歪みによる前記圧電体の層の変形が前記保護部で妨げられない程度の隙間が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記保護部の材料がサファイア又はアルミナであり、
前記圧電体の層の材料がAlN、GaN又はZnOである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記電極と前記リフレクタの間に、前記保護部と前記圧電体の層からなる前記感応部が設けられ、
前記感応部における前記保護部の下部の形状は凹であり、
前記感応部における前記圧電体の層及び前記保護部はダイアフラムとして動作し、
少なくともダイアフラムの直上に、前記感応部における前記保護部の上部との隙間を持つ構造
であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記電極と前記リフレクタの間に、前記保護部と前記圧電体の層からなる前記感応部が設けられ、
前記保護部は上部、中部及び下部を含み、
前記感応部における前記保護部の中部の形状は慣性マスであり、
前記保護部は、前記感応部における前記保護部の中部を保護する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記電極と前記リフレクタの間に、前記保護部と前記圧電体の層からなる前記感応部が設けられ、
前記保護部は上部、中部及び下部を含み、
前記感応部における前記保護部の中部と前記圧電体の層にて片持ち梁を構成し、前記保護部の下部は、前記片持ち梁を保護する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記電極と前記リフレクタの間に、前記保護部と前記圧電体の層からなる前記感応部が設けられ、
前記保護部は上部、中部及び下部を含み、
前記感応部における中間の前記保護部と前記圧電体の層にて片持ち梁を構成し、
前記片持ち梁部の上面ないし下面に線膨張率の異なる薄膜が配置される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エネルギー、鉱業、航空宇宙といった産業において、厳しい環境における計測への要求が存在している。厳しい環境における計測方式として、表面弾性波を用いる方式(例えば、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1を参照。)が知られている。表面弾性波を含む弾性波を用いた方式(以下、弾性波式)は、計測原理がシンプルでかつ無線通信との親和性が良いという特徴を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-129185号公報
【特許文献2】特開2009-42229号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】F. Bartoli, Thierry Aubert, Mohammed Moutaouekkil, Jeremy Streque, Philippe Pigeat, S. Zhgoon, A. Talbi, Sami Hage-Ali, Hamid M ’Jahed, Omar Elmazria, "AlN/GaN/Sapphire heterostructure for high-temperature packageless acoustic wave devices", Sensors and Actuators A Physical pp9-16 283(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
弾性波式で用いられる弾性波センサの構造として、表面に櫛歯型の金属電極が露出する第1のタイプ、弾性波が伝搬する経路上に装荷膜を成膜する第2のタイプ、及び電極とは逆面を使用する第3のタイプの3つが知られている。
【0006】
第1のタイプと第2のタイプについては、センサを過酷環境に設置した場合に露出した場合に、露出した電極や装荷膜の耐食性が確保できない場合がある。また、第3のタイプについては、圧電体の耐食性確保に加えてこの逆面の保護という問題がある。
【0007】
このように、従来の弾性波センサには、弾性波が伝搬する片面における耐環境性が十分でないという問題がある。なお、ここでの耐環境性は、耐熱性及び耐食性等を含む。
【0008】
本願はこのような課題を解決するためのものであり、十分な耐環境性を持つ弾性波センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に係るセンサ装置は、弾性波が内部を伝搬する1つ以上の圧電体の層と、前記圧電体の層を伝搬する弾性波を送波、受波又は反射するために電気信号との変換を担う電極と、弾性波を反射するためのリフレクタと、物理量を検出する感応部からなるセンサ部と、前記センサ部の電気信号に基づき、無線通信を行うアンテナ部と、前記アンテナ部及び前記センサ部を保護する保護部と、を有し、前記電極と、前記圧電体の層と、前記保護部とは、それぞれが順に内包する構造であり、前記保護部の材料が耐食材料かつ耐熱材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述した保護膜により露出を防ぐことで、上述した保護膜により露出を防ぐことで、センサの全ての面をセンサの周囲の媒体に曝すことが可能になり、十分な耐環境性を持つ弾性波センサを提供できる。なお、ここでいう媒体とは、ガスや液体、電磁波等を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るセンサ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、センサとセンシング装置の送受信を説明する図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面において直接接合を行った場合の断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
【
図15】
図15は、第3の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【
図16】
図16は、第4の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。
【
図17】
図17は、第4の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
【
図18】
図18は、第4の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
【
図19】
図19は、第4の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【
図20】
図20は、第4の実施形態に係るセンサ装置において片持ち梁の先端に慣性マスを設けた場合のC-C´断面図である。
【
図21】
図21は、第5の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。
【
図22】
図22は、第5の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
【
図23】
図23は、第5の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
【
図24】
図24は、第5の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
まず、
図1を用いて、第1の実施形態のセンサ装置の構成を説明する。
図1は、第1の実施形態に係るセンサ装置の斜視図である。第1の実施形態のセンサ装置は、弾性波式の計測を行うための装置である。センサ装置は、弾性波デバイスと呼ばれる場合がある。
【0014】
図1に示すように、センサ装置1は、アンテナ部11、センサ部12、及び保護部13を有する。
【0015】
アンテナ部11は、センサ部12において弾性波を励起させるための電力を受信する。また、センサ部12は、弾性波のエネルギーを電力に変換し、その電力をアンテナ部11に送信する。これにより、アンテナ部11は、パッシブ(バッテリーレス)な通信を実現することができる。
【0016】
なお、アンテナ部11は、いわゆるパワー半導体による電源マネジメント回路を搭載し、無線給電機能またはエナジーハーベスト機能を利用することで、有電源による通信を行ってもよい。その際、アンテナ部11には、同様にSiC等のパワー半導体を用いてもよい。また、アンテナ部11がセンサ部12と同じ高さになるように、保護部13の内部には隙間が設けられてもよい。
【0017】
図2は、センサとセンシング装置の送受信を説明する図である。
図2に示すように、センシング装置31は、電波により電力をセンサ装置1に給電する。また、センシング装置31は、パッシブ型のセンサであるセンサ部12から出力された信号を受信する。
【0018】
センシング装置31から給電された電力により、センサ部12から弾性波が励起される。センサ装置1に備えられたリフレクタにより反射した弾性波は、センサ部12により電力として取り出され、アンテナ部11により電波へと変換され、センシング装置31に送られる。センシング装置31のアンテナ部32は、アンテナ部11から送られた電波を受信する。
【0019】
図3は、第1の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。
図3は、
図1に示すセンサ装置1を上方から透視した透視図である。
【0020】
図3に示すように、センサ部12は、リフレクタ121、電極122及び感応部14を有する。また、センサ部12は、図示しない圧電体の層を有する。圧電体の層は、
図4等に示される。
【0021】
センサ部12は、弾性波を伝搬させ、弾性波に応じて電気信号を発生させる。なお弾性波は、表面弾性波、又は表面ではなく内部を伝搬する弾性波を含む。
【0022】
圧電体は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、逆に機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0023】
アンテナ部11によって受信された電力は、電極122を通じて圧電体により機械エネルギーに変換され弾性波を励振させる。さらに、リフレクタ121により反射された弾性波は、圧電体により機械エネルギーから電気エネルギーに変換され、電極122を通じてアンテナ部11より電力を発信し、無線通信を行う。
【0024】
電極122の形状は、すだれ状(又はくし形)である。電極122は、弾性波が内部を伝搬する1つ以上の圧電体の層に接している。
【0025】
リフレクタ121は、電極122により励振された弾性波を反射し、弾性波を長時間伝搬させる。リフレクタ121は2か所に設けられる。2つのリフレクタ121により、電極から励起された弾性波は互いに反対の方向への伝搬する2つの弾性波となり、各々のリフレクタ121により反射し電極122に戻ってくる。弾性波が電極122を通過するたびにアンテナ部11より電波が発せられる。
【0026】
センサ部12は、2つの弾性波を用いて物理量をセンシングしてもよいし、2つの弾性波のうち一方の弾性波を物理量のセンシングに用い、他方の弾性波を参照信号として用いてもよい。
【0027】
感応部14は、検出したい物理量に対する、伝搬する弾性波の速度の変化を大きくする。
図3に示すように、感応部14は、電極122とリフレクタ121の間の領域に配置される。ただし、感応部14はリフレクタ121を含んでいてもよい。また、感応部14は、保護部13と圧電体の層から構成される。
【0028】
感応部14の形状は、検出する物理量により変化する。このため、
図3に示すように、保護部13は、感応部14を支えるための部分を有する場合がある。
【0029】
第1の実施形態の感応部14の構成については
図4等を用いて後に説明する。また、第2の実施例から第5の実施例においては、測定を行う対象の物理量に応じて形状等が変化する感応部の詳細について説明する。
【0030】
以下、センサ装置1の断面図を用いて、センサ装置1の構造ならびに材質等について詳細に説明する。
【0031】
図4は、第1の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
図4の第1の層124及び第2の層125は、圧電体の層である。また、感応部14によって検出された物理量は、弾性波として第1の層124及び第2の層125の少なくとも一方の内部を伝搬する。なお、第1の実施形態の感応部14は、特にひずみ、応力及び力の検出に適している。
【0032】
図5は、第1の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
図5に示すように、第1の層124と第2の層125は、電極122を挟むように配置される。
【0033】
図6は、第1の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
図6に示すように、保護部13により、センサ部12は外部に対して露出しないように保護されている。
【0034】
センサ装置1の製造プロセスにおいては、複数の層を重ね加工(接合)することで保護部13が形成される。
図4から
図6に示す保護部13の点線は、層の接合面を示す。保護部13は、接合面により、上部131及び下部133に分けられる。また、保護部13は、2つの接合面により、上部131、中部132及び下部133に分けられる場合がある。
【0035】
図4から
図6の断面図において明らかなように、第1の層124と第2の層125は、電極122を挟むように配置される。また、センサ部12及びアンテナ部11は、保護部13によって保護される。すなわち、電極122及びリフレクタ121と、圧電体の層と、保護部13とは、それぞれが順に内包する構造である。また、保護部13は、アンテナ部11及びセンサ部12を封止する構造である。
【0036】
保護部13は、アンテナ部11及びセンサ部12の下の面だけではなく、上下左右前後の全ての面を覆う。これにより、センサ装置1を構成する各部のうち、保護部13のみがセンサ装置1の外部に露出する。例えば、アンテナ部11及びセンサ部12はセンサ装置1の外部に露出しない。
【0037】
また、
図4から
図6の断面図において明らかなように、保護部13の上部131(
図3の手前側、
図4から
図6の上側)と圧電体である第1の層124の間には、弾性波が内部を伝搬する際に、圧電体の歪みによる圧電体の変形が保護部13で妨げられない程度の隙間が設けられていてもよい。
【0038】
センサ装置1は、弾性波の伝搬路である圧電体の層の周りを保護部13が取り囲む構造となっている。そのため、弾性波が伝搬路である圧電体のみを伝搬し周囲に伝搬しないようにする必要がある。すなわち、弾性波が伝搬路である圧電体を伝搬し、さらにはリフレクタ121により反射を繰り返し伝搬距離が伸びたとしても、周囲に伝搬しないようにする必要がある。
【0039】
そのために、弾性体が伝搬する圧電体の層とそれに隣接する層との弾性波の伝搬速度にある程度の差がある必要がある。
【0040】
例えば、弾性波が内部を伝搬する圧電体の層と保護部13は、それらの材質中の弾性波伝搬速度において、1.4倍以上の差があることが求められる場合がある。
【0041】
この場合、弾性波が内部を伝搬する圧電体のうち、弾性波が伝搬する圧電体(例えば、材料はGaN)と保護部13との弾性波の伝搬速度は、第1の層124の1.4倍程度である。
【0042】
あるいは、弾性波が内部を伝搬する圧電体が複数の層から構成される場合、主に弾性波が伝搬する圧電体の層と、伝搬が少ない圧電体の層の間の弾性波伝搬速度において、1.4倍以上の差があることが求められる場合がある。この場合、弾性波が内部を伝搬する圧電体のうち、主に弾性波が伝搬する圧電体(例えば、材料はGaN)と伝搬が少ない圧電体(例えば、材料はAlN)との弾性波の伝搬速度は、第1の層124の1.4倍程度である。
【0043】
これらより、弾性波の伝搬速度にある程度の差が必要となる前記圧電体(例えば、材料はGaN)の層に隣接する層は、保護膜あるいは他の圧電体の層である。あるいは、圧電体の層に隣接するとは、圧電体の層の境界面と接するということでもあり、前記圧電体(例えば、材料はGaN)の層の上面や下面を指す。
【0044】
図7は、第1の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面において直接接合を行った場合の断面図である。センサ装置1の製造プロセスにおいては複数の層を重ね加工することを行うが、層同士を接合する際には接着層を介さず直接層同士を接合してもよい。すなわち、保護部13は、センサ部12またはアンテナ部11を覆う際に、真空封止を行ってもよい。
【0045】
ここで、圧電体の層並びに保護部13の材料の詳細を説明する。
図4から
図6の断面図において示すように、圧電体の層は複数の層(第1の層124及び第2の層125)からなっている。また、保護部13は2つの層(上部131及び下部133)からなっている。
【0046】
第1の層124aの材料は、例えばAlN(窒化アルミニウム)である。また、第2の層125aの材料は、例えばGaN(窒化ガリウム)である。例えば、第1の層124aは、AlNによって一定の耐食性は確保できるが、保護部13aによりさらに耐食性が向上する。あるいは第2の層の材料はZnO(酸化亜鉛)であってもよい。
【0047】
あるいは、圧電体の層は第2の層125だけで構成され、第1の層124がなくてもよい。その場合、第2の層125の材料は、例えばGaN(窒化ガリウム)である。
【0048】
さらには、圧電体の層は第2の層125だけで構成され、第1の層124がなくてもよい。その場合、第2の層125の材料は、例えばGaN(窒化ガリウム)である。そして、保護部13がGaN(窒化ガリウム)を囲むような構造であってもよい。
【0049】
なお、圧電体である第1の層124及び第2の層125に一定の耐熱性を持たせてもよい。その場合、第1の層124及び第2の層125の材料は、LiNbO3(1150℃)、La3Ga5SiO14(1470℃)、GaPO4(930℃)、AlN(1040℃)等の耐熱材料であってよい。ただし、かっこ内の温度はキュリー点、又は相転移がない場合の融点である。
【0050】
次に保護部13の材料について説明する。保護部13がないと仮定すると、第1の層124及び第2の層125に露出部分が生じる。このため、第1の層124及び第2の層125を構成する材料によっては、センサ装置1の耐食性及び耐熱性が低下する場合がある。保護部13は、このような露出部分を保護することで、センサ装置1の耐食性及び耐熱性を向上させる。
【0051】
保護部13は耐食性を有する耐食材料により構成される。また、保護部13を構成する耐食材料は、例えばサファイアである。サファイアは、耐食性と耐熱性の両方を有する。
【0052】
保護部13の材料は、サファイア以外のものであってもよい。例えば、保護部13の材料は、700℃の水蒸気に対する耐食性、及び800℃の大気における耐熱性を有することが望ましい。保護部13の材料は、サファイア及びルビーのような酸化アルミニウム(アルミナ)の他、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化シリコンのような無機化合物であってもよい。また、保護部13の材料は、前述の無機化合物を組み合わせた繊維強化セラミックス等の材料であってもよい。
【0053】
さらに、保護部13を構成する材料のうち、アンテナ部11の付近の材料は、誘電損失の小さいサファイア及び窒化アルミニウム等のセラミックスが望ましい。また、アンテナ部11の付近の材料は、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)等の焼結性セラミックスであってもよい。
【0054】
また、アンテナ部11は、例えば、保護部13によって閉じられた空間内部の表面に、薄膜等の金属でアンテナを形成して配置したものであってもよい。この場合、アンテナは、金属であってもよいし、導電性セラミックのスクリーン印刷等によって形成されたものであってもよい。
【0055】
これまで述べてきた保護部13によりセンシングを行える対象について述べる。保護部13は、センサ部12及びアンテナ部11を封止するため、センサ部12及びアンテナ部11は密封され、外気にほとんど接することがない。これにより、センサ装置1は、例えば気体(水素、水蒸気等)の濃度測定といった特定のセンシングが難しくなる。一方で、センサ装置1は、加速度、力、回転、姿勢といった、気体との直接的な接触を必要としない物理量のセンシングを、耐食性及び耐熱性を保持したまま行うことができる。なお、センサ装置1は、気体に関する物理量のうち、気体(大気等)の圧力についてはセンシングを行うことができる。
【0056】
これまで説明してきたように、保護部13により、センサ装置1の全ての面をセンサの周囲の媒体に曝すことが可能になり、第1の実施形態によれば、十分な耐環境性(耐食性、耐熱性)を持つ弾性波センサを提供することができる。
【0057】
[第2の実施形態]
ここでは、第2の実施形態として、圧力及び気圧(高度)等のセンシングに適したセンサ装置1aの構成を説明する。
【0058】
なお、第1の実施形態では、各構成要素の符号を数字で表していた。これに対し、第2の実施形態以降の各実施形態では、各構成要素の符号を数字とアルファベットで表している。以降の実施形態において、第1の実施形態の構成要素と符号の数字部分が共通する構成要素については、適宜説明を省略する。例えば、アンテナ部11aについては、アンテナ部11aと同様の構成及び機能を持つため、説明を省略する。
【0059】
図8は、第2の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。
図8に示すように、感応部14aの領域は、電極122aとリフレクタ121aの間のうち、電極122aとリフレクタ121aを含まない。また、感応部14aの領域は、センサ部12aの幅を少なくとも含む。
【0060】
図9は、第2の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
図10は、第2の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
図11は、第2の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【0061】
図9から
図11に示す第1の層124a及び第2の層125aは、圧電体の層である。また、感応部14aによって検出された物理量は、弾性波として第1の層124a及び第2の層125aの内部、あるいは第1の層124aのみ、あるいは第2の層125aのみの内部を伝搬する。
【0062】
保護部13aにより、センサ部12aは外部に対して露出しないように保護されている。保護部13aを2層とし、保護部13aの下部133aは、センサ部12a、アンテナ部11a及び保護部13aの上部131aの土台となっている。感応部14aにおける保護部13aの下部133aの形状は凹である。保護部13aの一部はセンサ部12aを支え、かつ保護性能が維持できる程度に残すようにしている。その結果、感応部14aにおける圧電体の層および保護部13aの下部133aは、ダイアフラムとして動作する。
【0063】
なお、ここでいう保護性能が維持できるとは、保護部13の材料が、700℃の水蒸気に対する耐食性、及び800℃の大気における耐熱性を有することを指す。
【0064】
また、少なくともダイアフラムの直上に、感応部14aにおける保護部13aの上部131aとの間に隙間が設けられる。このことにより、保護部13aがダイアフラムの振動に影響しない。
【0065】
[第3の実施形態]
第3の実施形態として、加速度に適したセンサ装置1bの構成を説明する。
図12は、第3の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。
図12に示すように、感応部14bの領域は、電極122bとリフレクタ121bの間のうち、電極122bとリフレクタ121bを含まない。また、感応部14bの領域は、センサ部12bの幅を少なくとも含む。
【0066】
図13は、第3の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
図14は、第3の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
図15は、第3の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【0067】
図13及び
図14に示すように、保護部13bは、上部131b、中部132b、下部133bの3層を含む。保護部13bに記した点線は層の境界である。保護部13bの下部133bは、センサ部12b、アンテナ部11b、保護部13bの中部132ならびに保護部13bの上部131bの土台となっている。
【0068】
感応部14bにおける保護部13bの中部132bの形状は慣性マスである。保護部13bの中部132bの一部はセンサ部12bを支え、かつ全ての面を計測媒体に曝すことができる程度に残すようにしている。その結果、感応部14bにおける圧電体の層および保護部13bの中部132bは、慣性マス141bとして動作する。
【0069】
また、少なくとも慣性マス141bの直上に、感応部14bにおける保護部13bの上部131bとの間に隙間が設けられる。このことにより、保護部13bが慣性マス141bの振動に影響しない。
【0070】
[第4の実施形態]
第4の実施形態として、加速度に適したセンサ装置1cの、第3の実施形態とは異なる構成を説明する。
図16は、第4の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。また、感応部14cの領域は、センサ部12cの幅を少なくとも含む。
【0071】
図17は、第4の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
図18は、第4の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
図19は、第4の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【0072】
図17及び
図18に示すように、保護部13cは、上部131c、中部132c、下部133cの3層を含む。保護部13cに記した点線は層の境界である。保護部13cの下部133cは、センサ部12c、アンテナ部11c、保護部13cの中部132cならびに保護部13cの上部131cの土台となっている。
【0073】
図19に示すように、感応部14cにおける保護部13cの中部132cとリフレクタ121cと圧電体の層にて片持ち梁142cを構成する。保護部13cの中部132cの一部はセンサ部12cを支える程度に残すようにしている。その結果、感応部14cにおける圧電体の層とリフレクタ121c及び保護部13cの中部132cは片持ち梁142cとして動作する。感応部14cのマス部においては、第1の層124c、第2の層125cを含む部分が凸部を構成する。このため、第4の実施形態では、第3の実施形態と比べて高精度に加速度を感知することが可能である。
【0074】
図20は、第4の実施形態に係るセンサ装置において片持ち梁142cの先端に慣性マス141cを設けた場合のC-C´断面図である。
【0075】
図20に示すように、保護部13cの中部132cからなる片持ち梁142cの先端に慣性マス141cを設けることで、慣性力が増す。これにより、重りとなる慣性マス141cがない場合と比べてより感度が向上し、より小さな加速度を検出可能となる。
【0076】
保護部13cの下部133cは、感応部14cの片持ち梁142cを保護する。また、少なくとも片持ち梁142cの直上に、感応部14cにおける保護部13cの上部131cとの間に隙間が設けられる。このことにより、保護部13cが片持ち梁142cの振動に影響しない。
【0077】
[第5の実施形態]
第5の実施形態として、温度計測に適したセンサ装置1dの構成を説明する。
図21は、第5の実施形態に係るセンサ装置の平面図である。また、感応部14dの領域は、センサ部12dの幅を少なくとも含む。
【0078】
図22は、第5の実施形態に係るセンサ装置のA-A´断面図である。
図23は、第5の実施形態に係るセンサ装置のB-B´断面図である。
図24は、第5の実施形態に係るセンサ装置のC-C´断面図である。
【0079】
図22及び
図23に示すように、保護部13dは、上部131d、中部132d、下部133dの3層を含む。保護部13dに記した点線は層の境界である。保護部13dの下部133dは、センサ部12d、アンテナ部11d、保護部13dの中部132dならびに保護部13dの上部131dの土台となっている。
【0080】
図24に示すように、感応部14dにおける保護部13dの中部132dとリフレクタ121dと圧電体の層にて片持ち梁142dを構成する。保護部13dの中部132dの一部はセンサ部12dを支える程度に残すようにしている。その結果、感応部14dにおける圧電体の層とリフレクタ121d及び保護部13dの中部132dは片持ち梁142dとして動作する。感応部14dのマス部においては、第1の層124d、第2の層125dを含む部分が凸部を構成する。
【0081】
さらには、片持ち梁142dの上面には薄膜143dが成膜されている。また、片持ち梁142dの下面には薄膜144dが成膜されている。薄膜143dと薄膜144dの膨張率は互いに異なる。また、薄膜143dと薄膜144dのいずれかのみが成膜されていてもよいし、両方が成膜されていてもよい。
【0082】
薄膜143dの線膨張率は、例えば4×10-6/K以下である。また、薄膜144dの線膨張率は、例えば8×10-6/K以上である。線膨張率が異なる薄膜により温度の変化に対し上下面の変形の程度が異なることから片持ち梁142dの形状にそりが入り、温度に対する変化を検知することが可能となる。
【0083】
さて、これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、実施形態の構成や詳細は、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で実施することができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
1、1a、1b、1c、1d センサ装置
11、11a、11b、11c、11d アンテナ部
12、12a、12b、12c、12d センサ部
13、13a、13b、13c、13d 保護部
14、14a、14b、14c、14d 感応部
121、121a、121b、121c、121d リフレクタ
122、122a、122b、122c、122d 電極
124、124a、124b、124c、124d 第1の層
125、125a、125b、125c、125d 第2の層
131、131a、131b、131c、131d 上部
132b、132c、132d 中部
133、133a、133b、133c、133d 下部
141b、141c、141d 慣性マス
142c、142d 片持ち梁
143d、144d 薄膜