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特開2024-14094ハンドタオル及びハンドタオルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014094
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ハンドタオル及びハンドタオルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/26 20120101AFI20240125BHJP
   D04H 1/498 20120101ALI20240125BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
D04H1/26
D04H1/498
A47K10/16 C
A47K10/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116685
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 生弥
【テーマコード(参考)】
2D135
4L047
【Fターム(参考)】
2D135AA03
2D135AA17
2D135AB06
2D135AB10
2D135AD01
2D135BA01
2D135BA02
2D135DA02
2D135DA03
2D135DA06
2D135DA08
2D135DA23
4L047AA08
4L047AA13
4L047AA14
4L047AA17
4L047AA19
4L047AA21
4L047AA23
4L047AB06
4L047BA04
4L047CA02
4L047CB01
4L047CB07
4L047CC03
(57)【要約】
【課題】湿潤時に破れにくく、吸水性が良好で触感が柔らかく、かつ、さらさら感を改善した、木材パルプと合成繊維からなる複合型不織布製ハンドタオル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】合成繊維上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、坪量が50.0g/m以上75.0g/m以下であり、パルプ繊維ウェブの含有割合が70重量%以上90重量%以下である、複合型不織布のハンドタオルであって、DMDTとDCDTとの積の平方根GMTが10.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であり、WMDTとWCDTとの積の平方根GMTが8.0N/25mm以上22.0N/25mm以下であり、吸水量(T.W.A.)が280g/m以上、吸水速度が3.0秒以下、クレム吸水度が100mm以上である、ハンドタオル及びその製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、坪量が50.0g/m以上75.0g/m以下であり、前記パルプ繊維ウェブの含有割合が70重量%以上90重量%以下である、複合型不織布のハンドタオルであって、
JIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが10.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であり、
JIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDTと湿潤時のCD方向の引張強度WCDTとの積の平方根GMTが8.0N/25mm以上22.0N/25mm以下であり、
吸水量(T.W.A.)が280g/m以上、吸水速度が3.0秒以下、クレム吸水度が100mm以上であることを特徴とする、ハンドタオル。
【請求項2】
前記合成繊維のJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが8.0N/25mm以上16.0N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のハンドタオル。
【請求項3】
前記合成繊維の坪量が8.0g/m以上15.0g/m以下であり、前記パルプ繊維ウェブの坪量が37.0g/m以上60.0g/m以下であることを特徴とする、請求項1に記載のハンドタオル。
【請求項4】
ハンドタオルが二つ折りにされた状態で、ポップアップ形式で取り出せるように容器に収容されることを特徴とする、請求項1に記載のハンドタオル。
【請求項5】
前記合成繊維は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレンから選択される一種類以上の合成繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載のハンドタオル。
【請求項6】
前記パルプ繊維ウェブは、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含み、
前記NBKPと前記LBKPの含有割合が50:50以上100:0以下であることを特徴とする、請求項1に記載のハンドタオル。
【請求項7】
請求項1に記載のハンドタオルの製造方法であって、前記複合型不織布は前記合成繊維と前記パルプ繊維ウェブを水流交絡により一体化することで製造することを特徴とする、ハンドタオルの製造方法。
【請求項8】
前記水流交絡における最大水圧が120bar以上180bar以下であることを特徴とする、請求項7に記載のハンドタオルの製造方法。
【請求項9】
前記水流交絡は3段以上10段以下で行い、
初段は水圧が5bar以上20bar以下の条件で交絡し、
2段目以降の交絡では段階的に水圧を上げていくことを特徴とする、請求項7に記載のハンドタオルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型不織布のハンドタオル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生意識の高まりから、使い捨てハンドタオルの需要が増加している。
【0003】
一般的な使い捨てハンドタオルは紙製(基本的に木材パルプ100%であるが、古紙等を含んでもよい)であり、企業のオフィス、ホテル、公衆トイレ、一般家庭等で幅広く利用されている。
【0004】
また、ハンドタオルとしては、紙製以外にも布製、不織布製のハンドタオルもよく知られている。
【0005】
ハンドタオルに用いられる高吸収性の不織布の先行技術文献として、例えば特許文献1には、坪量が1m当たり100g~267gの付加された結合剤を含まない高吸収性の不織布であって、基本的に、繊維の乾燥重量を基準として、50~75重量%の木材パルプと50~25重量%のステープル合成繊維とから成り、これらが1つのウェットレイドウェブにおいて互いに一様に混合され、圧密で高吸収性の布を形成するに足るエネルギーの下に水力絡合されている高吸収性の不織布が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2-145841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トイレで手を水で洗った後に紙製ハンドタオルで手の水分を拭う時、十分に水を吸いとることができないことがある。また、水に濡れた後、耐久強度が低く破れてしまうことが多い。一度に数枚ハンドタオルを使うことも考えられるが、コストが高くなり経済的ではない。
布製ハンドタオルであれば、吸水性と触感の柔らかさ(使用感)を同時に満たすことができるが、洗って再利用する方法では洗剤や柔軟剤等のコストや手間がかかる。布製ハンドタオルを洗わずに何度か使用するのは非衛生的であり、使い捨てる場合は1枚のコストが高い。
【0008】
他の解決方法としては、紙製ハンドタオルの目付(坪量)を高くすることで、吸水性、強度を改善することが考えられるが、柔軟性が低く、触感が硬くなって、使用感が低下する。
【0009】
また、目付(坪量)を高くしても、水分を拭き取った際、ハンドタオル表面のさらさら感の状態が悪いと、使用者は拭き取りができていないと感じ、更にハンドタオルを追加して使用していることが認められた。このさらさら感の悪化した状態で、長時間ゴミ箱の中に滞在することは衛生的にも好ましくない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、湿潤時に破れにくく、吸水性が良好で触感が柔らかく、かつ、さらさら感を改善した、木材パルプと合成繊維からなる複合型不織布製ハンドタオル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討を行い、合成繊維上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、坪量及びパルプ繊維ウェブの含有割合がそれぞれ所定の数値範囲内である複合型不織布のハンドタオルにおいて、乾燥時のMD方向とCD方向のそれぞれの引張強度の積の平方根GMT、湿潤時のMD方向とCD方向のそれぞれの引張強度の積の平方根GMT、吸水量、吸水速度及びクレム吸水度のそれぞれの数値範囲を所定の範囲内とすることで、湿潤時に破れにくく、吸水性が良好で触感が柔らかく、かつ、さらさら感を改善した、木材パルプと合成繊維からなる複合型不織布製ハンドタオルとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様は、合成繊維上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、坪量が50.0g/m以上75.0g/m以下であり、前記パルプ繊維ウェブの含有割合が70重量%以上90重量%以下である、複合型不織布のハンドタオルであって、JIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが10.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であり、JIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDTと湿潤時のCD方向の引張強度WCDTとの積の平方根GMTが8.0N/25mm以上22.0N/25mm以下であり、吸水量(T.W.A.)が280g/m以上、吸水速度が3.0秒以下、クレム吸水度が100mm以上であることを特徴とする、ハンドタオルである。
【0013】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のハンドタオルであって、前記合成繊維のJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが8.0N/25mm以上16.0N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のハンドタオルであって、前記合成繊維の坪量が8.0g/m以上15.0g/m以下であり、前記パルプ繊維ウェブの坪量が37.0g/m以上60.0g/m以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のハンドタオルであって、ハンドタオルが二つ折りにされた状態で、ポップアップ形式で取り出せるように容器に収容されることを特徴とするものである。
【0016】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のハンドタオルであって、前記合成繊維は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレンから選択される一種類以上の合成繊維を含むことを特徴とするものである。
【0017】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載のハンドタオルであって、前記パルプ繊維ウェブは、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含み、前記NBKPと前記LBKPの含有割合が50:50以上100:0以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載のハンドタオルの製造方法であって、前記複合型不織布は前記合成繊維と前記パルプ繊維ウェブを水流交絡により一体化することで製造することを特徴とするものである。
【0019】
(8)本発明の第8の態様は、(7)に記載のハンドタオルの製造方法であって、前記水流交絡における最大水圧が120bar以上180bar以下であることを特徴とするものである。
【0020】
(9)本発明の第9の態様は、(7)に記載のハンドタオルの製造方法であって、前記水流交絡は3段以上10段以下で行い、初段は水圧が5bar以上20bar以下の条件で交絡し、2段目以降の交絡では段階的に水圧を上げていくことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、湿潤時に破れにくく、吸水性が良好で触感が柔らかく、かつ、さらさら感を改善した、木材パルプと合成繊維からなる複合型不織布製ハンドタオル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0023】
また、ハンドタオルにおけるMD方向とは、ハンドタオルを抄紙した際の流れ方向(Machine Direction)であり、CD方向とは、MD方向に垂直な方向(Cross Direction)である。
【0024】
<ハンドタオル>
本実施形態に係るハンドタオルは、合成繊維上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、複合型不織布のハンドタオルである。
ハンドタオルが複合型不織布であることにより、吸水性が良好であっても、後述するGMT及び吸水に関する各パラメータをそれぞれ所定の範囲とすることで、湿潤時に破れにくく、触感が柔らかく感じられるハンドタオルとすることができる。また、ハンドタオルが複合型不織布である、すなわち、原材料がパルプ繊維+合成繊維であるため、坪量の大きい紙製ハンドタオルと比較してさらさら感が改善されている。
なお、複合型不織布の製造におけるパルプ供給方式は、湿式、カード解繊方式等問わないが、パルプシートをハンマーミルで粉砕してフラッフパルプとして合成繊維上に積載する、エアレイド方式が好ましい。複合型不織布(ハンドタオル)の製造方法の詳細に関しては後述する。
【0025】
複合型不織布に用いる合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレンから選択される一種類以上の合成繊維を含むことが好ましいが、中でもポリプロピレンを含むことがより好ましい。
また、パルプ繊維ウェブに用いるパルプ繊維は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維(木材パルプ)を用いることができるが、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。
【0026】
(ハンドタオルの物性)
ハンドタオル(複合型不織布)の坪量は50.0g/m以上75.0g/m以下であり、55.0g/m以上65.0g/m以下であることが好ましい。坪量を上記の数値範囲内とすることで、湿潤時に破れにくく、吸水性が良好なハンドタオルとすることができる。
また、ハンドタオルにおける、(複合型不織布に含まれる)パルプ繊維の坪量が37.0g/m以上60.0g/m以下であることが好ましく、40.0g/m以上55.0g/m以下であることがより好ましい。また、(複合型不織布に含まれる)合成繊維の坪量は、8.0g/m以上15.0g/m以下であることが好ましく、10.0g/m以上13.0g/m以下であることがより好ましい。
上述した各坪量は、JIS P 8124に準拠して測定されるが、合成繊維及びパルプ繊維の坪量は、後述する水流交絡した後に個別に測定することが困難であるため、例えば、以下の方法で測定する。
【0027】
まず、0.1M酢酸水溶液と0.1M酢酸ナトリウム水溶液を調製する。約830gの0.1M酢酸水溶液と約160gの0.1M酢酸ナトリウム水溶液を混合してpHが4となるようにし、これを酢酸緩衝液とする。この酢酸緩衝液にセルラーゼオノズカp1500(ヤクルト薬品工業株式会社製)を添加量が1重量%となるように添加する。
セルラーゼオノズカp1500を添加した酢酸緩衝液50mlと、ハンドタオルの0.5gとをバイアル瓶に入れて、しっかりと蓋をする。次に、180rpm、40℃の条件で24時間振とうした後、バイアル瓶から合成繊維を採取し、合成繊維の質量を測定する。(合成繊維及びパルプ繊維を含む)ハンドタオルの質量(0.5g)と採取した合成繊維の質量から、下記式により、合成繊維及びパルプ繊維のそれぞれの坪量を算出する。
合成繊維の坪量=
ハンドタオルの坪量×(合成繊維の質量/ハンドタオルの質量)
パルプ繊維の坪量=
ハンドタオルの坪量×[(ハンドタオルの質量-合成繊維の質量)/ハンドタオルの質量]
【0028】
なお、本実施形態に係るハンドタオルにおけるパルプ繊維ウェブの含有割合は70重量%以上90重量%以下であり、75重量%以上85重量%以下であることが好ましい。含有割合が上記の数値範囲内であることにより、吸水性が良好で触感が柔らかいハンドタオルとすることができる。
【0029】
また、本実施形態に係るハンドタオルのJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが10.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であることが好ましく、10.0N/25mm以上20.0N/25mm以下であることがより好ましい。GMTが上記数値内であることにより、湿潤時に破れにくく、触感が柔らかいハンドタオルとすることができる。
【0030】
なお、本実施形態に係るハンドタオルのJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTは8N/25mm以上40N/25mm以下であることが好ましく、10N/25mm以上30N/25mm以下であることがより好ましい。また、ハンドタオルのJIS P 8113に基づく乾燥時のCD方向の引張強度DCDTが4N/25mm以上25N/25mm以下であることが好ましく、7N/25mm以上15N/25mm以下であることがより好ましい。乾燥時の各々の方向の引張強度がいずれも上記の数値範囲内であることにより、湿潤時に破れにくく、触感が柔らかいハンドタオルとすることができる。なお、乾燥時の各々の方向の引張強度は、いずれもJIS P 8113に準拠して測定することができ、それらの積の平方根としてGMTを算出する。
【0031】
さらに、本実施形態に係るハンドタオルのJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDTと湿潤時のCD方向の引張強度WCDTとの積の平方根GMTが8.0N/25mm以上22.0N/25mm以下であることが好ましく、8.0N/25mm以上19.0N/25mm以下であることがより好ましい。GMTが上記数値内であることにより、湿潤時に破れにくく、触感が柔らかいハンドタオルとすることができる。
【0032】
なお、本実施形態に係るハンドタオルのJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDTは7N/25mm以上34N/25mm以下であることが好ましく、9N/25mm以上26N/25mm以下であることがより好ましい。またJIS P 8113に基づく湿潤時のCD方向の引張強度WCDTが4N/25mm以上21N/25mm以下であることが好ましく、6N/25mm以上12N/25mm以下であることがより好ましい。湿潤時の各々の方向の引張強度がいずれも上記の数値範囲内であることにより、湿潤時に破れにくく、触感が柔らかいハンドタオルとすることができる。なお、湿潤時の各々の方向の引張強度は、いずれもJIS P 8135に準拠して測定することができ、それらの積の平方根としてGMTを算出する。
【0033】
そして、本実施形態に係るハンドタオルに含まれる合成繊維のJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが8.0N/25mm以上16.0N/25mm以下であることが好ましく、8.0N/25mm以上13.0N/25mm以下であることがより好ましい。合成繊維のGMTが上記数値内であることにより、より湿潤時に破れにくく、触感が柔らかいハンドタオルとすることができる。
合成繊維の各方向の引張強度は、パルプ繊維ウェブを積層する前の段階の合成繊維の不織布を用いて、ハンドタオルと同様に測定する。
【0034】
また、本実施形態に係るハンドタオルの吸水量(T.W.A.)が280g/m以上であり、350g/m以上であることが好ましい。吸水量が280g/m以上であることにより、吸水性が良好で、かつ、さらさら感に優れるハンドタオルとすることができる。
ハンドタオルの吸水量(T.W.A.:Total Water Absorbance)は、ハンドタオル(複合型不織布)を76mm×76mmの正方形に切断して試料を作製し、試料の乾燥重量を測定する。次に、この試料を蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態の容器中で、試料の1つの角部を上側の頂部とし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態で吊るし、30分放置して水切り後の重量を測定する。最後に、得られた測定値から、試料1mあたりの保水量=吸水量(g/m)を求める。
【0035】
さらに、本実施形態に係るハンドタオルの吸水速度が3.0秒以下であり、1.5秒以下であることが好ましい。吸水速度が3.0秒以下であることにより、吸水性が良好で、かつ、さらさら感に優れるハンドタオルとすることができる。
ハンドタオルの吸水速度は点滴吸水度とも呼ばれ、JIS L 1907に規定される滴下法に準拠し、0.1mLの水滴が試験片の表面に達した時から、試験片の鏡面反射が消えるまでの時間(秒)を測定する。
【0036】
そして、本実施形態に係るハンドタオルのクレム吸水度が100mm以上であり、115mm以上であることが好ましい。クレム吸水度が100mm以上であることにより、吸水性が良好で、かつ、さらさら感に優れるハンドタオルとすることができる。
ハンドタオルのクレム吸水度は、JIS P 8141「紙及び板紙-吸水度試験方法-クレム法」に準拠して測定することができる。
【0037】
(ハンドタオルの製造方法)
本実施形態に係るハンドタオル(複合型不織布)の製造方法として、合成繊維と、その上に積層したパルプ繊維ウェブとを一体化する方式は、水流交絡が好ましい。水流交絡による水圧により、複合型不織布の紙厚や吸水性、ふんわり感、柔らか感等を適宜調整する事ができる。水流交絡による一体化の工程に関しては、例えば、特許第6758116号公報に詳細に記載されている。
【0038】
このとき、水流交絡における最大水圧が120bar以上180bar以下であることが好ましい。また、水流交絡は3段以上10段以下で行い、初段は水圧が5bar以上20bar以下の条件で交絡し、2段目以降の交絡では段階的に水圧を上げていくことが好ましい。水流交絡における各条件を上記のように設定することで、湿潤時に破れにくく、吸水性が良好で触感が柔らかく、かつ、さらさら感を改善したハンドタオルを製造することができる。
なお、水流交絡における水流を放出するノズルの穴直径φは0.06mm以上0.15mm以下であることが好ましく、ノズルの間隔は0.4mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0039】
その後、脱水、乾燥の処理を施して一体化した複合型不織布を得た後、ハンドタオルとして所望の寸法に切断する。
上記の製造方法により製造されるハンドタオルの長手方向の寸法は200mm以上250mm以下であることが好ましく、215mm以上235mm以下であることがより好ましい。幅方向の寸法は100mm以上250mm以下であることが好ましく、170mm以上230mm以下であることがより好ましい。また、ハンドタオルの厚みは特に限定されないが、300μm以上700μm以下であることが好ましく、400μm以上600μm以下であることがより好ましい。
なお、ハンドタオルに加工する前の複合型不織布には、上述したGMT、吸水量、吸水速度、クレム吸水度等が数値範囲内となるように、エンボスやカレンダー処理を施してもよい。
【0040】
(加工方式、包装形態)
本実施形態に係るハンドタオルの加工方式としては、ハンドタオルが二つ折りにされた状態で、ポップアップ形式で取り出せるように容器に収容されることが好ましい。また、ハンドタオルを収容する容器や包装形態は、カートン、フィルム包装(ガゼット包装、ピロー包装等)等、どのような容器や形態でも構わない。
【0041】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、湿潤時に破れにくく、吸水性が良好で触感が柔らかく、かつ、さらさら感を改善した、木材パルプと合成繊維からなる複合型不織布製ハンドタオルを提供することができる。
【実施例0042】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0043】
表1及び表2に示す各条件において、実施例1~9及び比較例1~6のそれぞれのハンドタオルを作製し、以下の評価を行った。なお、比較例1~3のハンドタオルは複合型不織布ではなく、クレープ紙から作製した。また、下記の評価以外の各パラメータは、上述した基準又は測定方法に従って行った。
【0044】
1.使用感(拭き取りやすさ)
使用者が手を濡らした後、その水分をハンドタオルで拭き取った時の拭き取りやすさを5段階で評価した。評価はハンドタオルの使用において柔軟性、吸水能力ともに問題なく、拭き心地が良いものを基準の「3」とし、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0045】
2.吸水性能
使用者が手を濡らした後、その水分をハンドタオルで拭き取った時、完全に手の水分を拭き取れたかを5段階で評価した。評価はハンドタオルの使用において吸水能力(吸水速度、吸水量)が問題ないものを基準の「3」とし、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0046】
3.破れにくさ
使用者が手を濡らした後、その水分をハンドタオルで拭き取った時、拭き取ったハンドタオルの破れにくさを5段階で評価した。評価はハンドタオルの使用において破れにくさが問題ないものを基準の「3」とし、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0047】
4.ゴワゴワ感(柔らかさ、柔軟性)
使用者がハンドタオルを手に取った時の触感を5段階で評価した。評価はハンドタオルが柔らかさや柔軟性があり、ゴワゴワ感に問題がないものを基準の「3」とし、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0048】
5.乾燥度(表面のさらさら感)
100mm×100mmのハンドタオルに2.0mLの水を均等に垂らし、その後に手に取った時の触感を5段階で評価した。評価はハンドタオルの表面が、水が垂れるほど濡れておらず少ししっとりしているものを基準の「3」とし、これより水気が少ないものを「4」、更に水気が少ないものを「5」、これより水気が多いものを「2」、更に水気が多いものを「1」とした。
【0049】
表1に、各実施例の条件及び評価結果を示し、表2に、各比較例の条件及び評価結果を示す。なお、各評価が3以上である場合は製品として可である。
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
以上より、本実施例によれば湿潤時に破れにくく、吸水性が良好で触感が柔らかく、かつ、さらさら感を改善した、木材パルプと合成繊維からなる複合型不織布製ハンドタオルが得られることが確認された。