(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140943
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20241003BHJP
B23K 37/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02K15/04 E
B23K37/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052324
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 宗央
(72)【発明者】
【氏名】五百川 達
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP15
5H615SS16
(57)【要約】
【課題】、溶接の品質を向上させながら、溶接工程全体の作業時間を短くする。
【解決手段】溶接装置は、円周に沿って所定間隔毎に配列された複数の内側対象部分と、複数の内側対象部分に一対一に対応し、それぞれが対応する内側対象部分における放射方向の外周側に配置される複数の外側対象部分とを有するワークにおける、複数の内側対象部分と複数の外側対象部分との対応する部分同士を溶接する溶接装置であって、複数の内側対象部分における内周側に配置されるリング状の電極である内側クランプ部と、複数の外側対象部分における外周側に配置されるリング状の電極である外側クランプ部と、を備え、複数の内側対象部分のうちの第1内側対象部分と、複数の外側対象部分のうち第1内側対象部分に対応する第1外側対象部分とを、内側クランプ部と外側クランプ部とにより放射方向に挟み込んでクランプした状態で溶接する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周に沿って所定間隔毎に配列された複数の内側対象部分と、前記複数の内側対象部分に一対一に対応し、それぞれが対応する内側対象部分における放射方向の外周側に配置される複数の外側対象部分とを有するワークにおける、前記複数の内側対象部分と前記複数の外側対象部分との対応する部分同士を溶接する溶接装置であって、
前記複数の内側対象部分における内周側に配置されるリング状の電極である内側クランプ部と、
前記複数の外側対象部分における外周側に配置されるリング状の電極である外側クランプ部と、
を備え、
前記複数の内側対象部分のうちの第1内側対象部分と、前記複数の外側対象部分のうち前記第1内側対象部分に対応する第1外側対象部分とを、前記内側クランプ部と前記外側クランプ部とにより前記放射方向に挟み込んでクランプした状態で溶接する
溶接装置。
【請求項2】
前記内側クランプ部の外周側には、前記内側対象部分に対応する形状に窪んだ複数の第1凹部が、前記複数の内側対象部分の配列間隔毎に形成され、
前記外側クランプ部の内周側には、前記外側対象部分に対応する形状に窪んだ複数の第2凹部が、前記複数の外側対象部分の配列間隔毎に形成され、
前記内側クランプ部および前記外側クランプ部は、前記複数の第1凹部のうちの何れか1つの第1凹部に前記第1内側対象部分が嵌め込まれ、前記複数の第2凹部のうち何れか1つの第2凹部に前記第1外側対象部分が嵌め込まれた状態で、前記第1内側対象部分と前記第1外側対象部分とをクランプする
請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記内側クランプ部および前記外側クランプ部の少なくとも一方は、回転可能であり、
前記第1内側対象部分と前記第1外側対象部分との溶接が完了した後に、
前記内側クランプ部および前記外側クランプ部のうちの一方を回転させ他方を固定することにより、前記内側クランプ部および前記外側クランプ部のうちの一方を、前記複数の内側対象部分のうちの第2内側対象部分と、前記複数の外側対象部分のうち前記第2内側対象部分に対応する第2外側対象部分とを前記内側クランプ部と前記外側クランプ部とにより前記放射方向に挟み込む位置に移動させ、
前記第2内側対象部分と前記第2外側対象部分とを前記内側クランプ部と前記外側クランプ部とにより前記放射方向に挟み込んでクランプした状態で溶接する
請求項1に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ/ジェネレータを備えるハイブリッド車両が知られている。モータ/ジェネレータのステータを構成するコイルは、それぞれがコイルの一部分となる複数のU字型のコイルセグメントを円環状に整列させ、円環状に整列された複数のコイルセグメントを溶接により接続することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータ/ジェネレータのステータは、大量のコイルセグメントを接続しなければならない。このため、モータ/ジェネレータのステータを製造する場合、溶接個所が非常に多くなってしまっていた。このため、モータ/ジェネレータのステータの製造において、効率良く短時間で作業が行われることが求められていた。
【0005】
また、従来、6ターンのコイルを含むステータを製造する場合、例えば、放射方向に並んだ3か所の溶接個所を同時に溶接して、溶接工程におけるトータルの作業時間を短くしていた。また、従来、8ターンのコイルを含むステータを製造する場合、放射方向に並んだ4か所を同時に溶接して、溶接工程におけるトータルの作業時間を短くしていた。しかしながら、複数個所を同時に溶接した場合、個々の溶接個所の品質が悪くなる可能性があった。
【0006】
また、特許文献1には、2つのワークを一対のL字型のクランプ電極で挟み込み、保持しながらアーク溶接をする溶接装置が記載されている。しかしながら、このような構成の溶接装置は、モータ/ジェネレータのステータのように溶接個所が非常に多いワークの場合、クランプ電極による溶接個所の位置決めおよび挟み込みだけで相当な工数がかかってしまう。このため、作業効率を向上させるには、設備の数を増やすしかなく、設備設置場所の確保やコストの増大の恐れがあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業効率を向上させる溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る溶接装置は、円周に沿って所定間隔毎に配列された複数の内側対象部分と、前記複数の内側対象部分に一対一に対応し、それぞれが対応する内側対象部分における放射方向の外周側に配置される複数の外側対象部分とを有するワークにおける、前記複数の内側対象部分と前記複数の外側対象部分との対応する部分同士を溶接する溶接装置であって、前記複数の内側対象部分における内周側に配置されるリング状の電極である内側クランプ部と、前記複数の外側対象部分における外周側に配置されるリング状の電極である外側クランプ部と、を備え、前記複数の内側対象部分のうちの第1内側対象部分と、前記複数の外側対象部分のうち前記第1内側対象部分に対応する第1外側対象部分とを、前記内側クランプ部と前記外側クランプ部とにより前記放射方向に挟み込んでクランプした状態で溶接する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、実施形態に係る溶接装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、ワーク、内側クランプ部および外側クランプ部を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態における溶接工程の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、ステータの組み立ての流れを示す図である。
【
図6】
図6は、ステータにおける複数のコイルセグメントの端部を示す図である。
【
図7】
図7は、第1ターンにおける内側クランプ部および外側クランプ部を、複数のコイルセグメントの端部側から見た示す図である。
【
図8】
図8は、第2ターンにおける内側クランプ部および外側クランプ部の第1例を、複数のコイルセグメントの端部側から見た示す図である。
【
図9】
図9は、第2ターンにおける内側クランプ部および外側クランプ部の第1例を、コイルセグメントの側面側から見た示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る溶接装置による、第2ターンにおける溶接工程の流れを示す図である。
【
図11】
図11は、第2ターンにおける内側クランプ部および外側クランプ部の第2例を、コイルセグメントの側面側から見た示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る溶接装置10について説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る溶接装置10による溶接対象となるワーク20を示す図である。
【0013】
ワーク20は、複数の内側対象部分22と、複数の外側対象部分24とを含む。複数の内側対象部分22のそれぞれ、および、複数の外側対象部分24のそれぞれは、例えばモータ/ジェネレータのステータを構成するコイルの一部分であって、棒状の形状の金属における端部である。なお、
図1には、棒状における、端部側から見たワーク20が示されている。
【0014】
複数の内側対象部分22は、円周に沿って所定間隔毎に配列される。
【0015】
複数の外側対象部分24は、複数の内側対象部分22に一対一に対応する。複数の外側対象部分24は、複数の内側対象部分22が配置される円周と同一の中心を有し、複数の内側対象部分22が配置される円周より直径が大きい円周に沿って、所定間隔毎に配列される。複数の外側対象部分24のそれぞれは、対応する内側対象部分22に対して、中心から外側に向かう放射方向の外側に配置される。
【0016】
溶接装置10は、このようなワーク20における、複数の内側対象部分22と複数の外側対象部分24との、放射方向に隣接した対応する部分同士を溶接する。
【0017】
図2は、実施形態に係る溶接装置10を、第1内側対象部分22-1および第1外側対象部分24-1とともに示す図である。
図3は、ワーク20、内側クランプ部32および外側クランプ部34を示す図である。
【0018】
溶接装置10は、内側クランプ部32と、外側クランプ部34と、溶接トーチ36と、制御部38とを備える。
【0019】
内側クランプ部32は、リング状の電極である。内側クランプ部32は、溶接時に電流が流れる。内側クランプ部32は、外周が、複数の内側対象部分22が配列される円周より直径が小さい。内側クランプ部32は、複数の内側対象部分22が配列される円周における内周側に配置される。
【0020】
内側クランプ部32は、
図3の矢印Aに示すように、回転可能である。さらに、内側クランプ部32は、回転することにより、複数の内側対象部分22の内周側の面を結ぶ円周に対して、外周の一部分が接する状態で移動可能である。そして、内側クランプ部32は、回転することにより、
図3の矢印Bに示すように、複数の内側対象部分22の内周側の面を結ぶ円周に対して外周の一部分が接する状態で、複数の内側対象部分22の内周側の面を結ぶ円周に沿って移動する。
【0021】
なお、内側クランプ部32は、中心軸の方向が、複数の内側対象部分22が配列される円周の中心軸に対して、平行ではなく、所定の角度を有していてもよい。すなわち、内側クランプ部32は、複数の内側対象部分22が配列される円周に接する部分の高さと、複数の内側対象部分22が配列される円周に接する部分の反対側の部分の高さとが、異なっている。なお、内側クランプ部32は、中心軸の方向が、複数の内側対象部分22が配列される円周の中心軸に対して所定の角度を有している場合、
図2中における形状が、楕円形となる。
【0022】
外側クランプ部34は、リング状の電極である。外側クランプ部34は、溶接時に電流が流れる。外側クランプ部34は、内周が、複数の外側対象部分24の外周面を結ぶ円周より若干大きい。外側クランプ部34は、内周面が、複数の外側対象部分24における外周側の面を結ぶ円周に接する位置に配置される。
【0023】
溶接トーチ36は、溶接時において、溶接対象となる一組の内側対象部分22と外側対象部分24に対してガスを噴出する。
【0024】
制御部38は、外側クランプ部34および内側クランプ部32の配置および移動の制御をする。また、制御部38は、溶接時において、ガスの流量および電流量等を制御する。
【0025】
図4は、第1実施形態に係る溶接装置10による溶接の手順を示す図である。
【0026】
まず、制御部38は、外側クランプ部34を複数の外側対象部分24に対して固定する。そして、制御部38は、
図4のAに示すように、内側クランプ部32を回転させることにより移動させて、内側クランプ部32における外周面の一部分を、複数の内側対象部分22のうちの溶接対象となる第1内側対象部分22-1における内周側に接する位置に移動させる。これにより、第1内側対象部分22-1は、放射方向の外側に向けて押される。すなわち、第1内側対象部分22-1は、複数の外側対象部分24のうちの第1内側対象部分22-1に対応する第1外側対象部分24-1に向かう方向へと押し充てられる。この結果、内側クランプ部32および外側クランプ部34は、第1内側対象部分22-1と第1外側対象部分24-1とを、放射方向に挟み込んでクランプすることができる。
【0027】
そして、
図4のBに示すように、制御部38は、第1内側対象部分22-1と第1外側対象部分24-1とを内側クランプ部32と外側クランプ部34とにより放射方向に挟み込んでクランプした状態で、溶接トーチ36からガスを放出させて、第1内側対象部分22-1と第1外側対象部分24-1とを溶接する。
【0028】
第1内側対象部分22-1と第1外側対象部分24-1との溶接が完了した後、制御部38は、外側クランプ部34を固定し、内側クランプ部32を回転させることにより移動させて、第1内側対象部分22-1と第1外側対象部分24-1とアンクランプする。
【0029】
さらに、第1内側対象部分22-1と第1外側対象部分24-1とアンクランプした後、制御部38は、内側クランプ部32を続けて回転させることにより移動させて、
図4のCに示すように、内側クランプ部32における外周面の一部分を、複数の内側対象部分22のうちの、次の溶接対象となる第2内側対象部分22-2における内周側に接する位置に移動させる。これにより、第2内側対象部分22-2は、放射方向の外側に向けて押される。すなわち、第2内側対象部分22-2は、複数の外側対象部分24のうちの第2内側対象部分22-2に対応する第2外側対象部分24-2に向かう方向へと押し充てられる。この結果、内側クランプ部32および外側クランプ部34は、第2内側対象部分22-2と第2外側対象部分24-2とを、放射方向に挟み込んでクランプすることができる。
【0030】
そして、
図4のDに示すように、制御部38は、第2内側対象部分22-2と第2外側対象部分24-2とを内側クランプ部32と外側クランプ部34とにより放射方向に挟み込んでクランプした状態で、溶接トーチ36からガスを放出させて、第2内側対象部分22-2と第2外側対象部分24-2とを溶接する。
【0031】
制御部38は、以後、以上の処理を繰り返すことにより、複数の内側対象部分22と複数の外側対象部分24との対応する部分同士を一組ずつ順番に溶接する。
【0032】
このように、第1実施形態に係る溶接装置10は、外側クランプ部34を固定し、内側クランプ部32を回転させて移動させながら、溶接位置の特定、溶接個所のクランプおよびアンクランプを行う。これにより、第1実施形態に係る溶接装置10は、溶接位置の特定、溶接個所のクランプおよびアンクランプを、容易に、精度良く且つ短時間で行うことができる。さらに、第1実施形態に係る溶接装置10は、複数の内側対象部分22と複数の外側対象部分24との対応する部分同士を一組ずつ溶接するので、溶接の品質を向上させることができる。
【0033】
以上のように、第1実施形態に係る溶接装置10によれば、溶接位置の特定、溶接個所のクランプおよびアンクランプ等の非溶接作業を容易に且つ精度良く行い、溶接の品質を向上させながら、溶接工程の全体の処理時間を短くすることができる。これにより、第1実施形態に係る溶接装置10によれば、作業効率を向上させることができる。
【0034】
なお、内側クランプ部32の外周側には、内側対象部分22に対応する形状に窪んだ複数の第1凹部42が、複数の内側対象部分22の配列間隔毎に形成されていてもよい。また、外側クランプ部34の内周側には、外側対象部分24に対応する形状に窪んだ複数の第2凹部44が、複数の外側対象部分24の配列間隔毎に形成されていてもよい。そして、この場合、内側クランプ部32および外側クランプ部34は、複数の第1凹部42のうちの何れか1つの第1凹部42に、溶接対象となる第1内側対象部分22-1が嵌め込まれ、複数の第2凹部44のうち何れか1つの第2凹部44に、溶接対象となる第1外側対象部分24-1が嵌め込まれた状態で、第1内側対象部分22-1と第1外側対象部分24-1とをクランプする。これにより、溶接装置10は、第1内側対象部分22-1と第1外側対象部分24-1とを確実に固定して溶接し、溶接品質を向上させることができる。
【0035】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る溶接装置10について説明する。第2実施形態に係る溶接装置10は、溶接対象となるワーク20として、モータ/ジェネレータのステータ50を溶接する。なお、第2実施形態に係る溶接装置10は、第1実施形態に係る溶接装置10とほぼ同一の構成および機能を有するので、同一の機能および構成を有する構成要素については同一の符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0036】
図5は、ステータ50の組み立て工程を示す図である。ステータ50は、複数のU字状のコイルセグメント52を含む。複数のコイルセグメント52は、
図5に示すように円環状に配列して組み合わされることにより、円環状に整列されたコイルセグメント群54を構成する。
【0037】
ステータ50は、円環の直径が異なる複数のコイルセグメント群54を組み合わせることにより構成される。例えば、
図5の例において、ステータ50は、円環の直径が最も小さい第1コイルセグメント群54-1と、円環の直径が2番目に小さい第2コイルセグメント群54-2と、円環の直径が最も大きい第3コイルセグメント群54-3とを組み合わせることにより構成される。
【0038】
図6は、コイルセグメント52が溶接により接続されていない状態のステータ50における複数のコイルセグメント52の端部60を示す図である。
【0039】
コイルセグメント52が溶接により接続されていない場合、複数のコイルセグメント52の端部60は、ステータ50の中心から外側に向かう放射方向に配列される。さらに、コイルセグメント52が溶接により接続されていない場合、コイルセグメント52の端部60側から見て、複数のコイルセグメント52の端部60は、中心がステータ50の中心と一致する複数の円周に沿って、所定角度毎に配列される。
【0040】
図6の例においては、ステータ50は、中心から外側に向かう放射方向に、6個の端部60が並んでいる。すなわち、
図6の例おいて、ステータ50は、中心が同一で直径が異なる6個の円周に沿って、所定間隔毎に複数の端部60が配列される。
【0041】
ステータ50は、放射方向に並んだ隣接する2個の端部60が溶接により接続される。溶接により接続された2個の端部60は、接続部62を形成する。
図6の例においては、ステータ50は、中心から外側に向かう放射方向に並んだ3個の接続部62が形成される。
【0042】
ここで、第2実施形態に係る溶接装置10は、溶接により接続される2個の端部60のうち、内周側に位置する端部60を内側対象部分22とし、外側側に位置する端部60を外側対象部分24とし、内側対象部分22と外側対象部分24と溶接をする。
【0043】
溶接装置10は、同一円周上に配列される複数の接続部62をセットして、1回の溶接工程を行う。
図6の例においては、最も内側の円周を形成する複数の接続部62を溶接により形成する工程を第1ターンの溶接工程とし、2番目の円周を形成する複数の接続部62を溶接により形成する工程を第2ターンの溶接工程とし、最も外側の円周を形成する複数の接続部62を溶接により形成する工程を第3ターンの溶接工程とする。
【0044】
溶接装置10は、ターン毎に、内側クランプ部32および外側クランプ部34を入れ替えながら溶接をして、各ターンにおける複数の接続部62を形成する。
【0045】
図7は、第1ターンにおいて用いられる内側クランプ部32および外側クランプ部34を、端部側から見たステータ50とともに示す図である。
【0046】
第1ターンの溶接工程において、溶接装置10は、第1実施形態と同様の構成の内側クランプ部32および外側クランプ部34を用いる。そして、第1ターンの溶接工程において、溶接装置10は、第1実施形態と同様に、外側クランプ部34を固定し、内側クランプ部32をA方向に回転させてB方向に移動させることにより、複数の内側対象部分22と複数の外側対象部分24との対応する部分同士を一組ずつ順番に溶接し、複数の接続部62を形成する。
【0047】
なお、第2実施形態においても、内側クランプ部32は、中心軸の方向が、複数の内側対象部分22が配列される円周の中心軸に対して、平行ではなく、所定の角度を有していてもよい。すなわち、内側クランプ部32は、複数の内側対象部分22が配列される円周に接する部分の高さと、複数の内側対象部分22が配列される円周に接する部分の反対側の部分の高さとが、異なっていてもよい。
【0048】
図8は、第2ターンにおいて用いられる内側クランプ部32および外側クランプ部34の第1例を、端部側から見たステータ50とともに示す図である。
図9は、側面側から見た、第2ターンにおいて用いられる内側クランプ部32および外側クランプ部34の第1例を、ステータ50とともに示す図である。
【0049】
第2ターンにおいて、内側クランプ部32は、リング状の電極である。第2ターンにおいて、内側クランプ部32は、外周が、第2ターンの溶接対象となる複数の内側対象部分22の内周面を結ぶ円周より若干小さい。第2ターンにおいて、内側クランプ部32は、外周面が、第2ターンの溶接対象となる複数の外側対象部分24における内周側の面を結ぶ円周に接する位置に配置される。
【0050】
なお、第2ターンにおいて、内側クランプ部32は、第1ターンに用いた外側クランプ部34と同一部材であってもよい。すなわち、第1ターンに続いて第2ターンの溶接をする場合、溶接装置10は、第1ターンに用いた外側クランプ部34を、第2ターンの内側クランプ部32として流用してもよい。
【0051】
外側クランプ部34は、リング状の電極である。外側クランプ部34は、複数の外側対象部分24が配列される円周における外周側に配置される。
【0052】
ただし、外側クランプ部34は、
図9に示されるように、ステータ50に機械的に干渉しないように、中心軸(x)の方向が、複数の外側対象部分24が配列された円周の中心軸に平行な方向(y)に対して、所定の角度(φ)となるように配置される。外側クランプ部34は、複数の外側対象部分24の外周側の面を結ぶ円周に対して外周の一部分が接するように配置される。外側クランプ部34は、複数の外側対象部分24の外周側の面を結ぶ円周と接する部分が、複数の外側対象部分24と同一の高さとなる。外側クランプ部34は、複数の外側対象部分24の外周側の面と接する部分に対して中心を挟んで反対の部分が、複数の外側対象部分24より高い位置となるように、傾斜して配置される。
【0053】
また、外側クランプ部34は、
図8の矢印Aに示すように、回転可能である。さらに、外側クランプ部34は、回転することにより、複数の外側対象部分24の外周側の面を結ぶ円周に対して、外周の一部分が接する状態で移動可能である。そして、外側クランプ部34は、回転することにより、
図8の矢印Bに示すように、複数の外側対象部分24の外周側の面を結ぶ円周に対して外周の一部分が接する状態で、複数の外側対象部分24の外周側の面を結ぶ円周に沿って移動する。
【0054】
図10は、第2実施形態に係る溶接装置10による、第2ターンにおける溶接工程の流れを示す図である。
【0055】
第2ターンにおいて、制御部38は、内側クランプ部32を複数の内側対象部分22に対して固定する。そして、制御部38は、
図10のAに示すように、外側クランプ部34を回転させることにより移動させて、外側クランプ部34における内周面の一部分を、複数の外側対象部分24のうちの溶接対象となる第1外側対象部分24-1における外周側に接する位置に移動させる。これにより、第1外側対象部分24-1は、複数の内側対象部分22のうちの第1外側対象部分24-1に対応する第1内側対象部分22-1に向かう方向へと押し充てられる。この結果、内側クランプ部32および外側クランプ部34は、第1外側対象部分24-1と第1内側対象部分22-1とを、放射方向に挟み込んでクランプすることができる。
【0056】
そして、
図10のBに示すように、制御部38は、第1外側対象部分24-1と第1内側対象部分22-1とを外側クランプ部34と内側クランプ部32とにより放射方向に挟み込んでクランプした状態で、溶接トーチ36からガスを放出させて、第1外側対象部分24-1と第1内側対象部分22-1とを溶接する。
【0057】
第1外側対象部分24-1と第1内側対象部分22-1との溶接が完了した後、制御部38は、内側クランプ部32を固定し、外側クランプ部34を回転させることにより移動させて、第1外側対象部分24-1と第1内側対象部分22-1とアンクランプする。
【0058】
さらに、第1外側対象部分24-1と第1内側対象部分22-1とアンクランプした後、制御部38は、外側クランプ部34を続けて回転させることにより移動させて、
図10のCに示すように、外側クランプ部34における内周面の一部分を、複数の外側対象部分24のうちの、次の溶接対象となる第2外側対象部分24-2における外周側に接する位置に移動させる。これにより、第2外側対象部分24-2は、放射方向の内側に向けて押される。すなわち、第2外側対象部分24-2は、複数の内側対象部分22のうちの第2外側対象部分24-2に対応する第2内側対象部分22-2に向かう方向へと押し充てられる。この結果、外側クランプ部34および内側クランプ部32は、第2外側対象部分24-2と第2内側対象部分22-2とを、放射方向に挟み込んでクランプすることができる。
【0059】
そして、
図10のDに示すように、制御部38は、第2外側対象部分24-2と第2内側対象部分22-2とを外側クランプ部34と内側クランプ部32とにより放射方向に挟み込んでクランプした状態で、溶接トーチ36からガスを放出させて、第2外側対象部分24-2と第2内側対象部分22-2とを溶接する。
【0060】
制御部38は、以後、以上の処理を繰り返すことにより、第2ターンにおいて、複数の外側対象部分24と複数の内側対象部分22との対応する部分同士を一組ずつ順番に溶接する。
【0061】
なお、第2実施形態に係る溶接装置10は、第3ターン以降においても、サイズは異なるが同一の形状の内側クランプ部32および外側クランプ部34を用いて、同様に溶接を実行する。
【0062】
図11は、第2ターンにおける内側クランプ部32および外側クランプ部34の第2例を、コイルセグメント52の側面側から見た示す図である。
【0063】
第2実施形態に係る溶接装置10は、第2ターンにおいて、
図8および
図9の構成に代えて、
図11に示すような構成の、第2例に係る構成の内側クランプ部32および外側クランプ部34を用いてもよい。
【0064】
第2ターンにおいて、第2例に係る外側クランプ部34は、第1実施形態に係る外側クランプ部34と同様の形状である。ただし、第2ターンにおいて、第2例に係る外側クランプ部34は、内周面が、複数の外側対象部分24における外周側の面を結ぶ円周に接する位置に配置される。
【0065】
第2ターンにおいて、第2例に係る内側クランプ部32は、複数の内側対象部分22が配列される円周における内周側に配置される。ただし、第2例に係る内側クランプ部32は、
図11に示されるように、ステータ50に機械的に干渉しないように、中心軸(x)の方向が、複数の内側対象部分22が配列された円周の中心軸に平行な方向(y)に対して、所定の角度(-φ)となるように配置される。
【0066】
また、内側クランプ部32は、回転可能である。さらに、内側クランプ部32は、回転することにより、複数の内側対象部分22の内周側の面を結ぶ円周に対して、外周の一部分が接する状態で移動可能である。そして、内側クランプ部32は、回転することにより、複数の内側対象部分22の内周側の面を結ぶ円周に対して外周の一部分が接する状態で、複数の内側対象部分22の内周側の面を結ぶ円周に沿って移動する。
【0067】
なお、第2実施形態に係る溶接装置10は、第3ターン以降においても、サイズは異なるが、第2例と同一の形状の内側クランプ部32および外側クランプ部34を用いて、同様に溶接を実行してもよい。また、第2実施形態に係る溶接装置10は、第1ターンにおいても、第2例と同一の形状の内側クランプ部32および外側クランプ部34を用いて、同様に溶接を実行してもよい。
【0068】
以上のように、第2実施形態に係る溶接装置10は、内側クランプ部32または外側クランプ部34の何れか一方を回転して移動させ、他方固定することにより、ステータ50に対する溶接位置の特定、溶接個所のクランプおよびアンクランプを行う。これにより、第2実施形態に係る溶接装置10は、溶接位置の特定、溶接個所のクランプおよびアンクランプを、容易に、精度良く且つ短時間で行うことができる。さらに、第2実施形態に係る溶接装置10は、複数の内側対象部分22と複数の外側対象部分24との対応する部分同士を一組ずつ溶接するので、溶接の品質を向上させることができる。
【0069】
以上のように、第2実施形態に係る溶接装置10によれば、ステータ50に対する溶接位置の特定、溶接個所のクランプおよびアンクランプ等の非溶接作業を容易に且つ精度良く行い、溶接の品質を向上させながら、溶接工程の全体の処理時間を短くすることができる。これにより、第2実施形態に係る溶接装置10によれば、作業効率を向上させることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
10 溶接装置、20 ワーク、22 内側対象部分、24 外側対象部分、32 内側クランプ部、34 外側クランプ部、36 溶接トーチ、38 制御部、42 第1凹部、44 第2凹部、50 ステータ、52 コイルセグメント、54 コイルセグメント群、60 端部、62 接続部