(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140964
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】表面検査方法および表面検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/94 20060101AFI20241003BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N21/94
G01N21/27 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052361
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】592010519
【氏名又は名称】北川グレステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 秀毅
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G051AB01
2G051AB03
2G051BA10
2G051CA02
2G051CA07
2G051CB01
2G051CB05
2G051CC12
2G051DA08
2G051EB01
2G051EC01
2G051EC04
2G059AA05
2G059BB16
2G059EE02
2G059EE11
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH02
2G059JJ07
2G059KK02
2G059KK03
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】表面検査方法の性能を向上させる。
【解決手段】制御部と記憶部とを備えた表面検査装置1を用いて、被検査物W1の被検査面SFにおける異物を検査する表面検査方法であって、(a)被検査物W1の被検査面SFに複数の波長の光を照射する工程、(b)複数の波長の光のそれぞれについて、異物からの反射光3を検出することで、複数の波長毎に反射強度を検出する工程、(c)制御部が、複数の波長のうちの2つの波長の光の反射強度同士の間での第1変化割合の値を、記憶部に予め記憶された値であって、基準とする材料の当該2つの波長の光の反射強度同士の間での第2変化割合の値と比較することで、基準とする材料と異物の材料との一致・不一致を判定する工程、を有する、表面検査方法を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と記憶部とを備えた表面検査装置を用いて、被検査物の被検査面における異物を検査する表面検査方法であって、
(a)前記被検査物の前記被検査面に複数の波長の光を照射する工程、
(b)前記複数の波長の光のそれぞれについて、前記異物からの反射光を検出することで、前記複数の波長毎に反射強度を検出する工程、
(c)前記制御部が、前記複数の波長のうちの2つの波長の光の反射強度同士の間での第1変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、基準とする材料の前記2つの波長の光の反射強度同士の間での第2変化割合の値と比較することで、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を判定する工程、
を有する、表面検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の表面検査方法において、
前記(c)工程では、前記第1変化割合の値が、前記第2変化割合の値を中心とする一致範囲に含まれる場合に一致であると判定し、前記第1変化割合の値が、前記一致範囲に含まれない場合に不一致であると判定する、表面検査方法。
【請求項3】
制御部と記憶部とを備えた表面検査装置を用いて、被検査物の被検査面における異物を検査する表面検査方法であって、
(a)前記被検査物の前記被検査面に複数の波長の光を照射する工程、
(b)前記複数の波長の光のそれぞれについて、前記異物からの反射光を検出することで、前記複数の波長毎に反射率を検出する工程、
(c)前記制御部が、前記複数の波長のうちの2つの波長の光の反射率同士の間での回帰直線の傾きと、前記記憶部に予め記憶された値であって、前記基準とする材料の前記2つの波長の光の反射率同士の間での回帰直線の傾きとの一致率を求め、前記一致率から、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を判定する工程、
を有する、表面検査方法。
【請求項4】
被検査物の被検査面における異物を検査する表面検査装置であって、
前記被検査面に複数の波長の光を照射する光源と、
前記複数の波長の光が照射された前記異物からの反射光を検出する光検出器と、
前記光検出器に接続された制御部と、
前記制御部に接続された記憶部と、
を有し、
前記制御部は、前記光検出器が検出した反射光から、前記複数の波長のそれぞれに対応する反射強度を算出し、前記複数の波長のうちの2つの波長の光の反射強度同士の間での第1変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、基準とする材料の前記2つの波長の光の反射強度同士の間での第2変化割合の値と比較することで、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を判定する、表面検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の表面検査装置において、
前記制御部は、前記第1変化割合の値が、前記第2変化割合の値を中心とする一致範囲に含まれる場合に一致であると判定し、前記第1変化割合の値が、前記一致範囲に含まれない場合に不一致であると判定する、表面検査装置。
【請求項6】
請求項4記載の表面検査装置において、
前記光源から照射された前記複数の波長の光の前記被検査面に対する照射位置を相対的に走査移動する走査機をさらに有する、表面検査装置。
【請求項7】
請求項6記載の表面検査装置において、
前記制御部は、前記走査機からの位置情報に基づいて前記異物の前記被検査面における位置を表示する、表面検査装置。
【請求項8】
被検査物の被検査面における異物を検査する表面検査装置であって、
前記被検査面に複数の波長の光を照射する光源と、
前記複数の波長の光が照射された前記異物からの反射光を検出する光検出器と、
前記光検出器に接続された制御部と、
前記制御部に接続された記憶部と、
を有し、
前記制御部は、前記複数の波長のうちの2つの波長の光の反射率同士の間での回帰直線の傾きと、前記記憶部に予め記憶された値であって、前記基準とする材料の前記2つの波長の光の反射率同士の間での回帰直線の傾きとの一致率を求め、前記一致率から、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を判定する、表面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査方法および表面検査装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク基板などを被検査物として、これの表面にレーザ光を照射して表面を検査する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1(特開2020-204579号公報)は、半導体ウェハの表面にレーザ光を照射し、表面からの反射光に基づいて異物の有無を判定し、異物が金属であるか非金属であるかを判定する表面検査方法を開示している。
【0004】
特許文献2(特開2022-39137号公報)は、半導体ウェハの表面にレーザ光を照射し、表面からの散乱光に基づいて、凹凸欠陥が存在するか否かを検出する凹凸欠陥の検出方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-204579号公報
【特許文献2】特開2022-39137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハードディスク基板の表面に異物が付着するなどの欠陥が生じる場合は、異物の材料を特定することが、異物発生の原因解明および製造過程の見直しに寄与し、製造における歩留まりの向上、および、製品の信頼性向上に繋がる。このため、特許文献1のように異物が金属であるか非金属であるかのみを判定するのではなく、さらに詳しく材料を判定できる技術が求められている。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
一実施の形態である表面検査方法は、制御部と記憶部とを備えた表面検査装置を用いて、被検査物の被検査面における異物を検査する表面検査方法であって、(a)前記被検査物の前記被検査面に複数の波長の光を照射する工程、(b)前記複数の波長の光のそれぞれについて、前記異物からの反射光を検出することで、前記複数の波長毎に反射強度を検出する工程、(c)前記制御部が、前記複数の波長のうちの2つの波長の光の反射強度同士の間での第1変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、基準とする材料の前記2つの波長の光の反射強度同士の間での第2変化割合の値と比較することで、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を判定する工程、を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、表面検査方法の性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る表面検査装置を示す概略図である。
【
図2】実施の形態1に係る信号処理システムを示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る表面検査方法を示すフローである。
【
図4】実施の形態1において、基準とする材料の波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図5】実施の形態1において、基準とする材料の波長と反射強度を示す表である。
【
図6】実施の形態1において、基準とする材料の波域における反射強度の変化割合を示す表である。
【
図7】実施の形態1において、比較対象の材料の波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図8】実施の形態1において、比較対象の材料の波長と反射強度を示す表である。
【
図9】実施の形態1において、比較対象の材料の波域における反射強度の変化割合を示す表である。
【
図10】実施の形態1において、閾値を±3とした場合の、変化割合の基準値(c)と比較値(d)とを比較・判定した結果を示す表である。
【
図11】実施の形態1において、閾値を±4とした場合の、変化割合の基準値(c)と比較値(d)とを比較・判定した結果を示す表である。
【
図12】ニッケルにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図13】アルミニウムにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図14】鉄における波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図15】酸化マグネシウムにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図16】カーボングラファイトにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図17】酸化鉄における波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図18】シリコンにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図19】PETにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図20】PMMAにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図21】実施の形態1の変形例1に係る表面検査装置を示す概略図である。
【
図22】実施の形態1の変形例2に係る表面検査装置の光の走査方法を示す模式図である。
【
図23】実施の形態2において、波長間出力の回帰直線の傾き係数を求める式である。
【
図24】酸化シリコンにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図25】ニッケルにおける波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図26】銅における波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図27】酸化シリコン、ニッケルおよび銅のそれぞれの各波長における反射率を示す表である。
【
図28】酸化シリコン、ニッケルおよび銅のそれぞれの各波長における傾き係数を示す表である。
【
図29】実施の形態2において、各材料同士の間での傾き係数の一致率と、一致・不一致の判定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
ここでは、被検査物に異なる波長の光を2以上照射して反射光を受光して反射強度(散乱強度)を検知し、予め装置に記憶された所定の材料の反射強度と比較することで、被検査物の表面に存在する物質の材料を判別することについて説明する。なお、ここでいう材料とは、特定の物質の種類若しくは組成のいずれか一方またはそれら両方を指す。
【0014】
(実施の形態1)
<表面検査装置の構造>
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。一実施の形態である異物検出用の表面検査装置1は、
図1に示されるように、例えば、ニッケル(Ni)製のサブストレート、つまりニッケル基板を被検査物W1とし、その金属製の表面つまり被検査面SFにおけるめっきの剥がれ若しくは凹凸形状の欠陥、または、被検査面SF上の付着物を検出するために使用される。また、表面検査装置1は、異物の材料を判定することに使用される。本願でいう材料は、物質の組成も含む。被検査物W1は、例えばハードディスクまたは半導体ウェハ、ガラス基板などであり、本実施の形態では被検査物W1の表面および表面上の付着物のみでなく、当該表面を構成する膜の中の異物を検査することも可能である。また、ガラスの表面若しくは内部の異物も検査できる。つまり、透明または半透明な被検査物W1の内部の異物を検査可能である。さらに、被検査物W1の表面が変質した箇所、つまり局所的に異質な組成なども検査できる。本願では、被検査面SFにおけるめっき剥がれおよび凹凸形状欠陥、被検査面SF上の付着物、被検査面SFの下に埋め込まれた物体、並びに、被検査面SFの部分的な変質箇所などを、まとめて異物と呼ぶ。
【0015】
表面検査装置1は、支持台11に配置される移動ステージ12を有し、移動ステージ12は、
図1の左右方向(X軸方向)に移動自在に支持台11上に配置されている。移動ステージ12は、水平面に沿ってX軸方向に移動自在である。Y軸方向およびX軸方向は、平面視において互いに垂直に交差する方向である。移動ステージ12には回転モータ13が装着され、回転モータ13により回転駆動される回転軸14には、被検査物W1を保持するチャック15が設けられている。被検査物W1である円板形状のニッケル基板の中央部には貫通孔が設けられており、チャック15は貫通孔の内周面に係合する図示しないコレットを備えている。
【0016】
表面検査装置1は光源16を有し、光源16は被検査面SFの斜め上方に配置され、被検査面SFに向けて光を照射する。光源16には、複数の短波長レーザ光を照射可能なレーザ発振器、複数の短波長LED光を照射可能なLED(Light Emitting Diode)、または、高輝度白色光源を用いることができる。これらの光源は、いずれにしても、複数の波長の光を同時に同じ方向へ照射可能なものである。ここでは、光源16から照射される光は、少なくとも3波長の光を照射するレーザ光であるものとして説明を行う。レーザ光の光路上にはフォーカスレンズ(集光レンズ)17が配置され、光源16から照射されたレーザ光はフォーカスレンズ17により被検査面SFで集光されてビームスポットを形成する。ここではレーザ光をフォーカスレンズ17により集光し、極力1塊の物質をターゲットとする。照射範囲の大きい光で同時に複数個の物質を対象とすると、様々な組成の異物からの反射光が混ざるので、異物の材料の判別が困難となり、検査精度が低下する虞があるためである。また、照射範囲が大きいと、反射強度または検出感度が低下し、かつ異物が存在する位置の正確な把握も困難となる。レーザ光は、例えば、400nm、480nmおよび560nmの3種類の波長のレーザ光を含んでいる。
【0017】
被検査面SFからの反射光3を集光するために、被検査面SFに対向して集光部材としての集光レンズ18a、18bが配置されている。集光レンズ18a、18bに代えて集光ミラーなども集光部材とすることもできる。集光レンズ18a、18bを順に通って集光された反射光3は、受光系の光軸に配置されたハーフミラー19Cにより2つの光路に分けられる。一方の光路の反射光3は、光検出器(受光部)2Cに入射し、他方の光路の反射光3はハーフミラー19Bに入射する。ハーフミラー19Bに入射した反射光3は、光軸に配置されたハーフミラー19Bにより2つの光路に分けられる。一方の光路の反射光3は、光検出器(受光部)2Bに入射し、他方の光路の反射光3は光検出器(受光部)2Aに入射する。
【0018】
ハーフミラー19Cには、例えば、単一の波長Cの光のみを45度反射するプリズムが用いられる。ハーフミラー19Bには、例えば、単一の波長Bの光のみを45度反射するプリズムが用いられる。ハーフミラー19Cと光検出器2Cとの間には、正反射光を遮蔽する板4Cが配置されている。ハーフミラー19Bと光検出器2Bとの間には、正反射光を遮蔽する板4Bが配置されている。ハーフミラー19Bと光検出器2Aとの間には、正反射光を遮蔽する板4Aが配置されている。3つの光検出器2A、2Bおよび2Cでは、同時に検知を行うことで、より正確な比較を行うことができる。
【0019】
ハーフミラー19Bと光検出器2Aとの間には、所望の波長以外波長の光が光検出器2Aに入射するのを遮断するために光学フィルター23が配置されている。光学フィルター23、単一波長Aの光のみを透過する。ハーフミラー19Bと光検出器2Bとの間、または、ハーフミラー19Cと光検出器2Cとの間に、同様に光学フィルターを配置してもよい。例えば、光検出器2Aは反射光3のうち波長400nmの光を受光し、光検出器2Bは反射光3のうち波長480nmの光を受光し、光検出器2Cは反射光3のうち波長560nmの光を受光する。これらの3つの波長の光のそれぞれは、光検出器2A、2Bおよび2Cのいずれが検知してもよい。
【0020】
光検出器2A、2Bおよび2Cには、光の強度に応じて信号電圧に変換することができる機器が使用できる。光検出器2A、2Bおよび2Cとしては、例えばPMT(Photomultiplier Tube、光電子増倍管)系、APD(Avalanche Photodiode)系、またはPD(Photodiode)系を用いることができる。ここでは光検出器2A、2Bおよび2CにCCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのカメラ素子は使用しない。
【0021】
レーザ光は被検査面SFの所定の照射位置に向けて照射される。一方、被検査物W1は回転モータ13により高速で回転駆動されるとともに、移動ステージ12により被検査物W1の外周面の法線方向(径方向。ここではX軸方向)に沿って移動される。このように、被検査物W1を走査移動することにより、レーザ光は被検査面SFをスパイラルスキャンする。ただし、被検査物を固定支持し、レーザ光を被検査面に対して走査移動させるようにしてもよい。つまり、レーザ光の被検査面SFに対する照射位置の走査移動は相対的であればよい。移動ステージ12と回転モータ13は、レーザ光(光源16から照射された複数の波長の光)の被検査面に対する照射位置を相対的に走査移動する走査機を構成している。
【0022】
図2は、本実施の形態の比較判定処理部39を含む信号処理システムを示すブロック図である。信号処理システムは、
図1を用いて説明した光検出器2A、2Bおよび2Cと、信号処理回路(信号処理部)31とを有している。光検出器2Aの出力信号は、I/V変換器32により電圧信号に変換され、増幅器33により増幅された後に、A/D変換器34によりデジタル信号に変換されて、信号処理回路31に送られる。同様に、光検出器2B、2Cのそれぞれの出力信号は、I/V変換器32、増幅器33およびA/D変換器34を順に介して信号処理回路31に送られる。
【0023】
表面検査装置1は、走査時における回転モータ13または回転軸14の回転角度を検出するための回転エンコーダである走査用エンコーダ35とを有し、それぞれのエンコーダ信号は信号処理回路31に送られる。信号処理回路31は、異物の反射光3を光検出器2A、2Bおよび2Cのそれぞれが受光して出力した検出信号に基づいて、異物が存在しているか否かを演算する。
【0024】
本願でいう反射光は、正反射光若しくは散乱光(拡散反射光)のいずれか一方、または両方を含むものである。異物が存在しない正常な被検査物W1の表面を検査した場合、散乱光はほぼ発生せず、正反射光のみが光検出器に届く。
図1に示す形態のように、板4A、4Bおよび4Cなどにより正反射光を検出器に届く前に遮る場合、正反射光からはスペクトルを得ることができない。つまり、反射光からスペクトルが得られない場合は異常がないと判断できる。異物が存在する場合、反射光は散乱光を含む。ただ、正反射光であっても反射物による光の吸収が起これば波長スペクトルの違いは生じるため、板4A、4Bおよび4Cなどの遮蔽物がなければ正反射光からスペクトルを得られる。
図21を用いて後述する変形例1のように回折格子を用いる場合は、正反射光も回折格子で反射されるため、正反射光のスペクトルを得られる。
【0025】
信号処理システムは、例えばPC(Personal Computer)からなる比較判定処理部39を有している。比較判定処理部39は、基準反射強度、制御プログラム、演算式およびマップデータなどが格納される記憶部(メモリ)30と、制御信号を演算する制御部(プロセッサ)などを有する。当該制御部は、比較判定部29、マッピング部37および欠陥個数判定部38を有している。つまり、比較判定処理部39は、比較判定部29、記憶部30、マッピング部37および欠陥個数判定部38により構成されている。比較判定部29は信号処理回路31、記憶部30およびマッピング部37に接続され、マッピング部37は欠陥個数判定部38に接続されている。
【0026】
比較判定部29は、反射光3から光検出器2A~2Cにより検出された検出信号である反射強度と、記憶部30に予め記憶された基準反射強度とを比較し、被検査面SFの異物の有無および異物の材料を判定する。また、比較判定部29により異物が存在することが判定された場合、比較判定部29は、異物の検出信号と、回転エンコーダである走査用エンコーダ35から信号処理回路31を介して得られたエンコーダ信号とに基づいて、異物の被検査面SFにおける位置信号のデータを演算する。当該位置信号のデータおよび検出信号のデータは、マッピング部37に送られ、異物の被検査面SFにおけるマップが作られる。異物の位置はマッピング部37に設けられたディスプレイに表示される。位置信号のデータ(位置情報)と検出信号のデータとに基づいて、最終的に欠陥として判定された異物は、被検査面SFにおける位置を、欠陥個数判定部38に設けられた総合マップのディスプレイに表示される。マッピング部37および欠陥個数判定部38は、比較判定処理部39のソフトウェアにより構成されている。
【0027】
<表面検査装置を用いた表面検査方法>
次に、上述した表面検査装置1による表面検査方法について、
図3のフローを参照しつつ、
図4~
図11を用いて説明する。
図3は判定手順のアルゴリズムを示すフローである。
【0028】
ここでは、表面検査を開始する前に、検査前準備を行う。すなわち、基準とする材料(物質または組成)の反射強度データを、比較用の基準値として、
図2に示す記憶部30に登録する(
図3のステップS21)。基準とする材料は、後の検査工程(
図3のステップS1以後)で検査する被検査物W1の、異物が存在しない場合の表面の材料であってもよく、被検査面SF上における存在が推測される付着物などの異物の材料であってもよい。
【0029】
ステップS21では、
図4に示すように3種類の波長における反射率から反射強度を算出し、その反射強度の値から変化割合を算出し、当該変化割合を記憶する。
図4は、基準とする材料(例えばニッケル(Ni))における反射率のグラフであり、横軸は、基準とする材料に照射する光の波長を示し、縦軸は反射率を示している。
【0030】
ただし、
図4のグラフは実測して得られたものではなく、ステップS21において、基準とする材料に光を照射しなくとも
図4のグラフは得られる。つまり、光波が物質に当たると、所定の波長の光は吸収され易く、他の所定の波長の光は反射され易い。つまり、物質によって反射光の色(スペクトル)が違う。反射光を波長毎に分けると、
図4に示すようなグラフ、つまりスペクトルパターンが得られる。物質の反射率(R)は、物質固有の誘電率によって説明され、屈折率(n)と消衰係数(k)から求められる。消衰係数kは物質中での光のエネルギーの損失を表しており、物質による光の吸収率に関係している。このように、
図4に示すグラフは、実測ではなく算出により得られたものである。
【0031】
ここでは、
図4において丸で囲んだ3箇所、すなわち、400nm、480nmおよび560nmのそれぞれの波長の光を、基準とする材料からなる被照射物に照射した場合の3つの反射率に対し、10を掛けた値を反射強度として記憶する。つまり、
図5に示すように、400nm、480nmおよび560nmのそれぞれの波長の光を照射した場合の反射光の3つの反射率×10の値(反射強度)がそれぞれ得られる。つまり、反射強度は反射率に比例する。このような反射強度の算出は比較判定部29が行う。比較判定部29が算出を行わず、予め反射強度の値を記憶部30に記憶させてもよい。なお、反射率の最大値は1である。また、
図4のようにグラフの横軸が波長であり縦軸が反射率である点は、この後の説明で用いるいずれのグラフにおいても同様である。なお、ここでは反射率に10を掛けた値を反射強度としているが、10で無くとも反射強度が整数であればよいので、100または1000などを掛けてもよい。検出した値を整数化することで、比較判定部29による数値の扱いが容易となる。
【0032】
続いて、比較判定部29は、各波長間における信号強度(反射強度)の変化割合を算出する。つまり、複数の波長のうちの2つの波長の光の反射強度同士の間での変化割合の値を算出する。ここでは、3つの反射強度(出力)のうち、最も短い波長での出力と中間の波長での出力との間の変化割合を算出し、さらに、中間の波長での出力と最も長い波長での出力との間の変化割合を算出する。短波長側出力÷長波長側出力×100の式により、
図6に示すように、波長400nmおよび波長480nmの間での反射強度の変化割合として、例えば86.065が算出される。同様に、波長480nmおよび波長560nmの間での反射強度の変化割合として、例えば89.994が算出される。当該式は、記憶部30に記憶されている。ステップS21では、この2つの変化割合が基準反射強度登録値(基準値c)として記憶される。
【0033】
なお、
図4のように波長が大きくなるにつれて反射率が大きくなるグラフでは変化割合は正の値となり、逆に波長が大きくなるにつれて反射率が小さくなるグラフでは変化割合は負の値となる。以上により、検査前準備が完了する。また、上記のように比較判定部29が反射強度の算出および反射強度の変化割合の算出などの演算を行わず、そのような演算は外部のコンピュータで行い、その演算結果(所定の波長間での反射強度の変化割合の値)を記憶部30に記憶させてもよい。
【0034】
次に、被検査物の検査について説明する。
【0035】
ここでは、被検査物W1を表面検査装置1に載置して検査を行う。被検査物W1は、その被検査面SFに異物の存在の疑いがあるもの、または、異物の存在が確認されているものである。表面検査装置1が起動されると、信号処理システムは、検査条件などの初期設定が行われる。これにより、移動ステージ12および光源16などの機器は駆動可能な状態に設定される。表面検査装置1に設けられた図示しない操作盤のスタートスイッチがステップS1において使用者により操作されると、回転モータ13と移動ステージ12が駆動されるとともに光源16が点灯され、少なくとも3種類の波長の光を含む光(ここではレーザ光)が被検査面SFに向けて照射される。これにより、走査移動工程が実行されて、レーザ光の被検査面に対する照射位置が走査移動され、被検査面SFにおける3波長(波長A~C)のそれぞれの反射率および被検査面SFにおけるレーザ光の照射位置データが信号処理回路31に読み込まれる(
図3のステップS2)。
【0036】
被検査面SFに異物が存在していると、ステップS2において、光検出器2A、2Bおよび2Cは、異物(比較物質)からの散乱光(反射光3)を受光する。つまり、互いに異なる波長の光を光検出器2A、2Bおよび2Cのそれぞれで検出する。光検出器2A、2Bおよび2Cのそれぞれで検出された検出信号は、
図2に示すI/V変換器32により電圧信号に変換され、増幅器33により増幅された後に、A/D変換器34によりデジタル信号に変換されて、信号処理回路31に送られる。このようにして、光検出器から送られた信号を検出する。その後、それらのデジタル信号は、波長A反射強度、波長B反射強度および波長C反射強度のデータとして比較判定部29に送られる。これらの反射強度のデータは、記憶部30に記憶されてもよい。
【0037】
例として、ステップS2では、光検出器2A、2Bおよび2Cで反射光3を受光することで、
図7に示すように3種類の波長における反射率を測定する。
図7は、比較物質の材料における反射率のグラフである。
図7において丸で囲んだ3箇所、すなわち、400nm、480nmおよび560nmのそれぞれの波長の光を被検査物W1に照射した場合の、各波長毎の反射率を測定(検出)する。この3つの波長は、ステップS21で検出した光の3つの波長のそれぞれと同じとする必要がある。
図8に示すように、400nm、480nmおよび560nmのそれぞれの波長の光を照射した結果、3つの反射率×10の値がそれぞれ得られる。このような反射強度の算出は比較判定部29が行う。
【0038】
次に、比較判定部29は、各波長間における信号強度(反射強度)の変化割合を算出する(
図3のステップS3)。つまり、複数の波長のうちの2つの波長の光の反射強度同士の間での変化割合の値を算出する。ここでは、3つの反射強度(出力)のうち、最も短い波長での出力と中間の波長での出力との間の変化割合を算出し、さらに、中間の波長での出力と最も長い波長での出力との間の変化割合を算出する。短波長側出力÷長波長側出力×100の式により、
図9に示すように、400nmと480nmとの間での反射強度の変化割合として、例えば81.972が算出される。同様に、480nmと560nmとの間での反射強度の変化割合として、例えば93.336が算出される。ステップS3では、この2つの変化割合が比較反射強度値(比較値d)として演算により算出される。
【0039】
次に、比較判定部29は、同じ波長域における基準値cと比較値dとを比較演算し、一致または不一致の判定を行う(
図3のステップS4)。すなわち、基準値cを基準として増減させる幅として閾値を設けて、比較値dが一致範囲内の値であるか否かを判定する。つまり、比較値dである変化割合の値が、基準値cである変化割合の値を中心とする所定の一致範囲内である場合(一致範囲に含まれる場合)に一致であると判定し、比較値dである変化割合の値が、当該一致範囲外である場合(一致範囲に含まれない場合)に不一致であると判定する。
【0040】
図10に示すように、400nmと480nmとの間の波長域における基準値cは86.065であり、閾値が±3に設定されている場合には、異物(比較物質)が基準とする材料と一致するとみなされる反射強度の変化割合の一致範囲は、83.065以上、89.065以下である。閾値(ここでは±3)は記憶部30に記憶されている。閾値は使用者の操作によって変更可能である。比較値dは81.972であり、当該一致範囲の範囲外である。したがって、比較判定部29は、異物は基準とする材料(ここではニッケル)と一致しない旨を判定する。つまり、異物は基準とする材料とは異なる材料(基準とする材料とは似ていない材料)により構成されている。
【0041】
図10に示すように、ここでは上記と同様に、480nmと560nmとの間の波長域における基準値cと比較値dとを比較演算している。この波長域でも、判定結果は不一致となっている。
【0042】
閾値は、被検査物W1の使用目的、または、存在が推定される異物の材料と基準とする材料との性質の類似性、存在が許容される異物の種類など、様々な要素によって決められる。
図11には他の例として、閾値を±4に設定した場合の比較判定結果が記載されている。ここでは、400nmと480nmとの間の波長域の判定結果は不一致となっているのに対し、480nmと560nmとの間の波長域では、比較値dが一致範囲内の値となっているため、判定結果は一致となっている。しかし、複数の波長域のそれぞれの判定結果のうち、1つでも不一致の判定がなされている場合は、総合判定は不一致となる。よって、
図11の場合でも、被検査面SFに存在する異物は基準とする材料とは異なる材料(基準とする材料とは似ていない材料)により構成されるものと判断される。
【0043】
複数の波長域のそれぞれの判定結果の全てにおいて一致の判定がなされている場合、総合判定は一致となる。よって、被検査面SFに存在する異物は基準とする材料と同じ材料、または似ている材料であると判定される。
【0044】
被検査物W1に欠陥がない場合における被検査面SFの材料が基準とする材料と同じならば、検査の結果、基準とする材料と被検査面SFの材料とが総合的に一致と判断される場合には、被検査物W1は良品と判定することができる。言い換えれば、被検査面は基準とする材料と同じ材料からなると判定できる。逆に、検査の結果、基準とする材料と被検査面SFの材料とが総合的に不一致と判断される場合には、被検査物W1は不良品と判定することができる。言い換えれば、被検査面に基準とする材料とは異質な材料が存在すると判定できる。
【0045】
また、基準とする材料が、存在が予測できる付着物の材料であるならば、検査の結果、基準とする材料と被検査面SFの材料とが総合的に一致と判断される場合には、被検査物W1は不良品と判定することができる。言い換えれば、被検査面に基予測された異物が存在すると判定できる。逆に、検査の結果、基準とする材料と被検査面SFの材料とが総合的に不一致と判断される場合には、被検査物W1は良品である可能性がある。言い換えれば、被検査面に基予測された異物は存在しないと判定できる。
【0046】
正確には、異物や材料の組成が基準と異なる可能性があると判定したとしても、その判定だけで良品/不良品と判定するとは限らない。例えば、反射強度が予め設けられた信号閾値よりも低いものは良品とする場合、または、被検査面SFの全体の欠陥の個数に応じて良品/不良品とする場合などがあり、良品/不良品の判定基準は適宜変更され得る。つまり、被検査物W1を良品/不良品とするか否かは、1つの判別・判定結果だけで判断可能であるとは限らない。本実施の形態の表面検査装置は、基準とする材料が存在しているか否かの可能性を判別するものであり、これにより示された可能性を、良品/不良品を判定するための要素の1つとすることができる。
【0047】
次に、被検査面SFにおける異物の位置情報(上記エンコーダ信号、
図3のステップS9の走査位置データ)が信号処理回路31に読み込まれ、比較判定部29は異物の欠陥位置データを演算し、その結果を記憶部30に記憶する(
図3のステップS5)。また、当該欠陥位置データから、マッピング部37は異物の被検査面SFにおけるマップを作成する(
図3のステップS6)。
【0048】
次に、欠陥個数判定部38は、上記マップの画像を参照し、異物の数から良・不良の判定を行う(
図3のステップS7)。つまり、異物の数が基準値より少なければ被検査物W1は良品であると判定し、基準値より多ければ被検査物W1は不良品であると判定する。以上により、1枚の被検査物W1に対する検査を終了する(
図3のステップS8)。
【0049】
検査対象の例として、被検査物W1はアルミニウム(Al)からなり、その表面上の異物の材料はニッケル(Ni)であることが考えられる。他の例として、被検査物W1は銅(Cu)からなり、その表面上の異物の材料はアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)または鉄(Fe)などであることが考えられる。
【0050】
本実施の形態では、光源16にレーザ発振器を用いた場合、例えば直径が0.6μm程度の異物であっても検出し、材料の違いを判別することができる。また、検査機構と各種条件によっては、直径が0.3μm以下の異物であっても検査可能である。判定の精度を高めるため、異物に照射する光は照射範囲を絞り、これにより異物以外を照射しないようにすることが望ましい。
【0051】
分光による分析器または検査機器としては、数mmから数(十)cmの広い視野を有するため、視野内に複数の異なる材料の異物が存在するとそれらのスペクトルが重なる、または混ざるなどの理由により、一点あたりの判別精度が悪くなる。また一点に当たる光の強度が低下(単位面積あたりの光エネルギーが低下)する。加えて、位置分解能も曖昧になり、小さな異物の分析には向いていない。一方で、小さな金属系異物の分析においては、SEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)、または、プラズマなどのスパーク発光と分光とを組み合わせた分析装置などが用いられている。しかし、これらはいずれも広い検査対象の全面を走査することは困難であり、また、分析箇所に何らかのダメージを与えるため、生産ラインで用いるには不向きである。
【0052】
本実施の形態の表面検査装置1は、非破壊で素早くリアルタイムで被検査物W1を検査することができる。また、広い検査対象の全面を走査しながら検査できる。よって、表面検査装置1は、例えば被検査物W1が生産されているライン工程に設けられ使用されることが可能である。
【0053】
<本実施の形態の効果>
所定の材料からなる基板などの表面に異物が生じる場合、異物の種類(材料)を特定することで、製造過程の見直し(フィードバック)が容易となり、製造における歩留まりの向上、および、製品の信頼性向上が実現できる。異物の種類としては、めっきの破れ、または、表面上の付着物などが考えられる。ここで、物質によって所定の波長の光の反射強度(反射率)が異なることを利用して、反射強度を基準値と比較して物質の判別を行うことが考えられる。つまり、例えば単波長の光を照射し、反射光の強弱(反射強度の大小)により被検査物の表面の異物の検出を行うことが考えられる。
【0054】
この場合、例えばめっきの破れが大きい場合には強い反射光(大きい反射強度)を検知し、当該破れが小さい場合には弱い反射光(小さい反射強度)を検知する。また、被検査物の表面上に特定の材料からなる付着物が存在するとき、付着物が大きい場合には強い反射光(大きい反射強度)を検知し、付着物が小さい場合には弱い反射光(小さい反射強度)を検知する。つまり、反射強度は異物の材料の違いのみでなく、大きさの違いによっても数値が変動する。このため、測定した反射強度のみを、予め記憶部に記憶された反射強度と比較して判別を行おうとしても、物質の判別を正確に行うことは困難である。また、検出した反射光からは、欠陥が異物(異なる材料からなる物)によるものなのか、めっきの破れによるものなのかを判断することが難しい。
【0055】
また、異物(例えば付着物)を構成しているのは単元素のみに限らず、複数種類の元素が複合した状態で存在していることが多い。
【0056】
これに対し、本実施の形態では、所定の材料の反射強度の変化割合を予め記憶し、この変化割合と、被検査物の反射強度の変化割合とを比較して、被検査物の材料を判別する。ここでは、3種類の波長の光を被検査物の表面に照射し、2つの波長間における反射強度の変化割合を2つ算出し、それらの変化割合と、予め記憶された当該2つの波長間における反射強度の基準の変化割合2つのそれぞれとを比較している。より具体的には、所定の波長域の基準の変化割合に±の閾値を設けた範囲(一致範囲)内に、被検査物の変化割合の値が入っているか否かで、材料の一致・不一致を判定する。被検査物の変化割合の値が閾値以内であれば、被検査物の表面の材料は基準の材料と同物質とみなし、閾値外であれば、異なる物質とみなす。
【0057】
異物の大小に起因して反射光の反射強度が大きくても小さくても、反射強度の変化割合に影響はない。つまり、反射強度の変化割合は材料が同じであれば異物の大きさに関わらず一定である。本実施の形態では、反射強度の変化割合を登録された基準の変化割合と比べる。このため、異物の大小に関わらず、上記のように単波長の光を照射し、反射光の強弱により被検査物の表面の異物の検出を行う場合に比べて精度よく異物の材料を判定できる。すなわち、表面検査装置および表面検査方法の性能を向上できる。
【0058】
本実施の形態の検査は、金属、非金属、合金、有機物、酸化・還元物、有機物などには限らず、また、特定の種類の元素を同定するものではなく、予め区別したい材料の波長毎の反射強度のパターン(変化割合)を記録(登録)し、そのパターンと一致するものと一致しないものとを分けて判定するものである。このため、区別したい材料の反射強度のパターンを検査前に登録する必要がある(
図3のステップS21)。
【0059】
登録する反射強度のパターンは1つとは限らず、特異的な反射強度を示す材料であれば複数の登録も可能である。また、所定の基準とする材料と一致するか否かを検査するとき、検査時に照射・測定する光の波長の種類は限定する必要はない。つまり、照射・測定する光は、上記のような400nm、480nmおよび560nmとせず、例えば450nm、520nmおよび600nmのように、適宜変更可能である。例えば、LEDなどの白色光を照射した場合であっても、検出器側で2つ以上の波長を選択して比較判定しても、同じ効果が得られる。すなわち、入射波長を限定しなくとも、受光器側で受ける光の波長を選択してもよい。
【0060】
製造現場で使用されている物質が特定できていれば、異物として混入し得ない材料も特定できる。このため、全ての材料のスペクトルと比較する必要はなく、そのような膨大な種類のスペクトルをデータベースに記憶する必要もない。すなわち、異物として付着し得る材料は、表面検査をする前からある程度予測可能である。その場合、異物の材料を特定し易くなる。予め存在する異物の材料がある程度予測可能な場合、光検出器で検出する光の波長は、基準とする材料の反射強度のパターンが特徴的な範囲に設定することが最も効果的である。また、予め存在する異物の材料がある程度予測可能な場合には、光検出器で検出する光の波長を、当該材料の反射強度のパターンが特徴的な範囲に設定することも効果的である。
【0061】
異物の種類が判別または予測できている場合でもそうでない場合でも、異物が確実に存在することが判明している場合に、異物に対し照射・測定を行い、不良と判断されるスペクトルを記憶することで、次の検査からは、不良(欠陥あり)と判断できる材料(データベース)として活用できる。この場合、異物を構成しているのが単元素のみでなく複数種類の元素が複合した状態であっても、データベースを活用して欠陥の検知ができる。固有の反射率(反射強度のパターン)が仕分け条件に適するならば、複数種類の物質を同時に区別することもできる。
【0062】
図12~
図20に、各材料の反射強度のパターン(スペクトル)の例を示す。
図12には、ニッケル(Ni)のパターンを示す。
図13には、アルミニウム(Al)のパターンを示す。
図14には、鉄(Fe)のパターンを示す。
図15には、酸化マグネシウム(MgO)のパターンを示す。
図16には、カーボングラファイトのパターンを示す。
図17には、酸化鉄(Fe
2O
3)のパターンを示す。
図18には、シリコン(Si)のパターンを示す。
図19には、PET(ポリエチレンテレフタラート)のパターンを示す。
図20には、PMMA(Poly Methyl Methacrylate、アクリル樹脂)のパターンを示す。
図12~
図20の各図の横軸の波長の範囲は同じである。各図の縦軸の反射率の値は同じではないが、1目盛りの幅(数値範囲)は揃えてある。
【0063】
図12~
図20に示すように、反射強度のパターンは材料によって異なる。金属と有機物とでは反射強度のパターンの傾きが大きく異なるため、判別が容易である。「金属ではない」という判定は、特に容易である。ただし、
図19および
図20のような類似した反射率の傾向を示す材料同士の場合は、判別は困難である。
【0064】
異物がめっきの破れであって、検出された異物の材料が、被検査物W1の表面のめっきの下地の材料と一致すると判定された場合、被検査物W1の表面にめっき破れの欠陥が存在すると推定できる。
【0065】
本実施の形態において光検出器で受光する反射光の波長は複数、つまり2つ以上であればよく、2つよりも3つまたは4つと増やすことで判別の精度も高くなる。光検出器で受光する反射光の波長を2つとする場合、例えば
図1に示す光検出器2C、板4Cおよびハーフミラー19Cは不要である。このとき、
図4および
図5で比較のために用いる反射率および反射強度、
図7および
図8で測定および算出により得る反射率および反射強度は、それぞれ2つのみとなる。したがって、基準とする反射強度の変化割合と、
図3のステップS3で算出する反射強度の変化割合(
図6および
図9参照)は、1つのみとなる。反射強度のパターンの傾き(変化割合)が局所的に互いに類似する材料もあるため、光検出器で受光する反射光の波長は3つ以上であることが特に好ましい。
【0066】
光検出器で受光する反射光の波長を4つとする場合、例えば
図1に示す光検出器2C、板4Cおよびハーフミラー19Cと同様の構成の検出機構を設ける。新たに設けるハーフミラーは、例えばハーフミラー19Cと集光レンズ18bとの間に配置する。このとき、
図4および
図5で比較のために用いる反射率および反射強度、
図7および
図8で測定および算出により得る反射率および反射強度は、それぞれ4つとなる。したがって、基準とする反射強度の変化割合と、
図3のステップS3で算出する反射強度の変化割合(
図6および
図9参照)は、3つとなる。
【0067】
<変形例1>
図1では、反射光の分光手段として、ハーフミラー(例えばプリズム)を用いることを示した。これに対し、反射光の分光手段としては、
図21に示すように、回折格子40を用いてもよい。すなわち、照射されて被検査面SFで反射した反射光3は、集光レンズ18a、18bを順に通って集光され、受光系の光軸に配置された回折格子40の表面で反射される際、波長毎に異なる光路に分けられる。こうして分光された各波長の光を、光検出器2A、2Bおよび2Cがそれぞれ検出する。なお、
図21では、被検査物W1の下の構造(移動ステージ12など)の図示を省略している。
【0068】
<変形例2>
図1を用いて説明した表面検査装置1は、被検査物W1を回転させて、レーザ光を被検査面SFに照射し、移動ステージ12をX軸方向に移動させるスパイラルスキャンものである。これに対し、被検査物W1を回転させずに、例えばレーザ光を被検査面SF上で直線状または円弧状に走査し、かつ、移動ステージ12をX軸方向に移動させることで、被検査面SFを検査してもよい。
【0069】
図22に、レーザ光を被検査面SF上でY軸方向において直線状に走査し、かつ、移動ステージ12をX軸方向に移動させることで、被検査面SFを検査する本変形例の態様を模式図として示す。
図22に示すように、レーザ光の照射範囲L1は、平面視においてX軸方向に延在する線状の範囲である。レーザ光を走査する際には、レーザ光の照射範囲L1をY軸方向において直線状に走査した後、移動ステージ12をX軸方向に移動させ、他の領域においてレーザ光の照射範囲L1をY軸方向において再度直線状に走査させる。これにより、被検査面SFを走査することができる。被検査面SFを広範囲に検査するために折返しが必要な場合は、さらに移動ステージ12をY軸方向に移動させてもよい。
【0070】
ここで用いるレーザ光の走査方式は、所謂ラインレーザではなく、レーザ光が特定の距離を線状に移動する走査方式である。このY軸方向におけるレーザ光の走査は、例えばミラーを用い、ミラーの角度を変更して行うことができる。レーザ光の走査方式は、ラスター式またはプログレッシブ式のいずれでもよい。
【0071】
ここでは、レーザ光をY方向に走査させ、移動ステージ12をX軸方向に移動させることについて説明したが、走査ユニットをX軸とY軸の両方向に移動させ、ステージは移動させなくてもよい。つまり、被検査物W1を固定してレーザ走査ラインが移動(Y軸方向)と折返し(X軸方向)を行ってもよい。また、レーザ光の照射位置自体は動かさず、被検査物W1を載せた移動ステージ12のX軸とY軸の両方向において移動させて検査を行ってもよい。
【0072】
本変形例のように、移動ステージ12が被検査物W1を回転させない場合、
図2の走査用エンコーダ35は、レーザビーム走査用のリニアエンコーダとなる。ここでは、走査用エンコーダ35は走査時における移動ステージ12の移動距離を検出し、信号処理回路31にエンコーダ信号を送る。
【0073】
(実施の形態2)
<表面検査装置の構造およびこれを用いた表面検査方法>
予め登録しておいた基準とする材料の波長間の散乱強度の回帰直線の傾きに対して、新たな検査によって得られた材料の最初に登録された同じ波長間の散乱強度の回帰直線の傾きとの一致率を比較して同じ物質か或いは異なる物質かの可能性を示して判定する方法または装置を用いてもよい。本実施の形態は、上記実施の形態1のように、反射強度の変化割合を比較するのではなく、各波長間出力値の回帰直線の傾きにより一致率を求めてその一致率に閾値を設けて一致・不一致を判定するものである。本実施の形態でいう反射率は、反射強度であってもよい。
【0074】
本実施の形態の表面検査装置の構成は、
図1および
図2を用いて説明したものと同様である。上記実施の形態1と異なり、反射強度の算出(反射率×10)は行わず、
図23に示す式(1)を用いて傾き係数(傾き)bを求める。ここで、bは波長間出力の回帰直線の傾き係数、xは波長、yは反射率(反射強度、出力)である。回帰直線を引くとき、y=bx+aの式を得ることができる。aは切片である。
【0075】
本実施の形態における表面検査工程では、3種類の波長の光を含む光を光源16から照射し、被検査面SFで反射した反射光3を分光して光検出器2A、2Bおよび2Cにてそれぞれ受光する点は、上記実施の形態1と同じである。
【0076】
ここで、
図24、
図25および
図26に、酸化シリコン(SiO
2)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)のそれぞれについて、波長と反射率との関係をグラフで示す。本実施の形態では、これらのグラフに示す3つの波長のそれぞれ(各図の丸で囲んだ値)における反射率を測定する。つまり、例として400nm、480nmおよび560nmの3種類の波長の光の反射率を測定する。その測定結果を、
図27に示す。ただし、基準とする材料については測定する必要はない。
図27は、酸化シリコン、ニッケルおよび銅のそれぞれの各波長における反射率を示す表である。ここで示す各波長の値は一例であり、これに限られない。
【0077】
次に、比較判定部29は、式(1)を用いて、各波長間における出力(反射率)の回帰直線の傾き係数bを算出する。つまり、3つの反射率のうち、最も短い波長での出力と中間の波長での出力との間の傾き係数bを算出し、さらに、中間の波長での出力と最も長い波長での出力との間の傾き係数bを算出する。
図28に示すように、例えば酸化シリコンの波長400nmおよび波長480nmの間での反射率の傾き係数は、-0.0000145である。また、酸化シリコンの波長480nmおよび波長560nmの間での反射率の傾き係数は、-0.0000083である。ニッケルおよび銅についても同様に傾き係数bの算出を行う。なお、
図25のように波長が大きくなるにつれて反射率が大きくなるグラフでは傾き係数bは正の値となり、逆に波長が大きくなるにつれて反射率が小さくなるグラフでは傾き係数bは負の値となる。
【0078】
図28には、酸化シリコン、ニッケルおよび銅のそれぞれの各波長における傾き係数bを示している。このうち、基準とする材料の傾き係数bは、検査開始前から予め記憶部30に記憶されているものである。
【0079】
次に、2つの材料同士の間での各波長範囲における一致率を算出する。基準とする材料の傾き係数をb1、比較する材料(検査対象の材料)の傾き係数をb2とすると、一致率は次の式(2)で求められる。
【0080】
一致率=(|b2-b1|)/|b1| ・・・・(2)
図29に、各材料同士の間での傾き係数の一致率と、一致・不一致の判定結果とを表で示す。
図29に示すように、例えば、基準とする材料である酸化シリコンと、比較対象の材料であるニッケルとの間において、波長480nmおよび波長560nmの間の波長域における傾き係数の一致率は、-86666.73%が算出されている。一致率の値は100%に近い程一致の程度が高い。基準とする材料の回帰直線の傾きと比較対象の材料の回帰直線の傾きとが正と負で逆の傾きを有するときは、一致率が負の値となる。ここでは一致率が負の値となっているため、波長480nmおよび波長560nmの間の波長域における比較結果(波長別比較の判定)は不一致となっている。
【0081】
また、基準とする材料である酸化シリコンと、比較対象の材料であるニッケルとの間において、波長400nmおよび波長480nmの間の波長域における傾き係数の一致率は、-6984.42%が算出されている。一致率が負の値となっているため、波長400nmおよび波長480nmの間の波長域における比較結果(波長別比較の判定)は不一致となっている。
【0082】
波長480nmおよび波長560nmの間の波長域の比較結果と、波長400nmおよび波長480nmの間の波長域の比較結果のうち、少なくとも1つが不一致となっているため、総合判定は不一致となる。
【0083】
上記と同様にして、
図29には、酸化シリコンと銅の比較結果、ニッケルと銅の比較結果をそれぞれ示している。なお、
図29の表では酸化シリコン、ニッケルおよび銅のうち2つの材料を比べた場合について記載しているが、その2つの材料のうちいずれが基準とする材料であってもよい。
【0084】
ニッケルおよび銅のうち2つの材料を比べた場合において、一方の波長域では一致率が48%であり他方の波長域では一致率が90%となっている。この場合、総合判定の一致率は、各波長域における一致率のうち、小さい値の一致率となる。よって、ここでの総合判定は、48%の一致という結論となる。
【0085】
次に、基準とする材料と比較対象の材料とが同じ材料であるか、または異なる材料であるかを最終的に判定する。ここでは、
図29に示す表の総合判定の一致率の値が、例えば60%以上であれば、基準とする材料と比較対象の材料とが同一の材料、または似ている材料であると判定する。ニッケルおよび銅のうち2つの材料は総合判定の一致率が48%であり、これは60%以上ではないから、基準とする材料と比較対象の材料とは異なる材料であると最終的に判定できる。この60%という基準値は、適宜変更可能である。
【0086】
このように、本実施の形態では、基準とする材料について、複数の波長間における反射率の回帰直線の傾き係数を記憶部30に記憶(登録)する。そして、検査工程において、被検査物W1の表面に当該複数の波長の光を照射し、複数の波長の反射光を受光し、それらの波長間における反射率の回帰直線の傾き係数を、比較判定部29において式(1)により算出する。その後、比較判定部29は、予め記憶されていた傾き係数と、検査により得られた傾き係数との一致率を式(2)により算出し、各波長域における一致率の判定と、各波長域の一致率を総合した一致率の判定とを行う。続いて、総合判定の一致率が基準値以上であれば、基準とする材料と比較対象の材料とが同じ材料である、または似ている材料であると判定し、総合判定の一致率が基準値未満であれば、基準とする材料と比較対象の材料とが異なる材料であると判定する。
【0087】
<実施の形態の効果>
本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、異物の大小に起因して反射光の反射強度が大きくても小さくても、反射率の変化割合に影響はない。よって、異物の大小に関わらず、精度よく異物の材料を判定できる。すなわち、表面検査装置および表面検査方法の性能を向上できる。
【0088】
本実施の形態の検査は、金属、非金属、合金、有機物、酸化・還元物、有機物などには限らず、また、特定の種類の元素を同定するものではなく、予め区別したい材料の波長毎の反射率の回帰直線の傾き係数を記録(登録)し、そのパターンと一致するものと一致しないものとを分けて判定するものである。このため、区別したい材料の反射率の回帰直線の傾き係数を検査前に登録する必要がある。予め存在する異物の材料がある程度予測可能な場合には、光検出器で検出する光の波長を、当該材料の反射強度のパターンが特徴的な範囲に設定することも効果的である。
【0089】
本実施の形態において光検出器で受光する反射光の波長は複数、つまり2つ以上であればよく、2つよりも3つまたは4つと増やすことで判別の精度も高くなる。反射率の回帰直線の傾きが局所的に互いに類似する材料もあるため、光検出器で受光する反射光の波長は3つ以上であることが特に好ましい。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0091】
その他、実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
【0092】
(付記1)制御部と記憶部とを備えた表面検査装置を用いて、被検査物の被検査面における異物を検査する表面検査方法であって、
(a)前記被検査物の前記被検査面に複数の波長の光を照射する工程、
(b)前記複数の波長の光のそれぞれについて、前記異物からの反射光を検出することで、前記複数の波長毎に反射強度を検出する工程、
(c)前記制御部が、前記複数の波長のうちの2つの波長の光の反射強度同士の間での第1変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、基準とする材料の前記2つの波長の光の反射強度同士の間での第2変化割合の値と比較することで、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を判定する工程、
を有し、
前記複数の波長の数は、3以上であり、
前記(c)工程は、
(c1)前記2つの波長の光の反射強度同士の間での前記第1変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、基準とする材料の前記2つの波長の光の反射強度同士の間での前記第2変化割合の値と比較する工程、
(c2)前記複数の波長のうち、前記2つの波長とは異なる組合せである他の2つの波長の光の反射強度同士の間での第3変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、前記基準とする材料の前記他の2つの波長の光の反射強度同士の間での第4変化割合の値と比較する工程、
を有し、
(c3)前記(c1)工程および前記(c2)工程のそれぞれの比較結果から、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を総合的に判定する、表面検査方法。
【0093】
(付記2)被検査物の被検査面における異物を検査する表面検査装置であって、
前記被検査面に複数の波長の光を照射する光源と、
前記複数の波長の光が照射された前記異物からの反射光を検出する光検出器と、
前記光検出器に接続された制御部と、
前記制御部に接続された記憶部と、
を有し、
前記制御部は、前記光検出器が検出した反射光から、前記複数の波長のそれぞれに対応する反射強度を算出し、前記複数の波長のうちの2つの波長の光の反射強度同士の間での第1変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、基準とする材料の前記2つの波長の光の反射強度同士の間での第2変化割合の値と比較することで、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を判定し、
前記複数の波長の数は、3以上であり、
前記制御部は、前記2つの波長の光の反射強度同士の間での前記第1変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、前記基準とする材料の前記2つの波長の光の反射強度同士の間での前記第2変化割合の値と比較し、前記複数の波長のうち、前記2つの波長とは異なる組合せである他の2つの波長の光の反射強度同士の間での第3変化割合の値を、前記記憶部に予め記憶された値であって、前記基準とする材料の前記他の2つの波長の光の反射強度同士の間での第4変化割合の値と比較し、これらにより得られた2つの比較結果から、前記基準とする材料と前記異物の材料との一致・不一致を総合的に判定する、表面検査装置。
【符号の説明】
【0094】
1 表面検査装置
2A、2B、2C 光検出器
3 反射光
4A、4B、4C 板
11 支持台
12 移動ステージ
13 回転モータ
15 チャック
16 光源
17 フォーカスレンズ
18a、18b 集光レンズ
19B、19C ハーフミラー
23 光学フィルター
29 比較判定部
30 記憶部
31 信号処理回路
32 I/V変換器
33 増幅器
34 A/D変換器
35 走査用エンコーダ
37 マッピング部
38 欠陥個数判定部
39 比較判定処理部
40 回折格子
SF 被検査面
W1 被検査物