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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140965
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】レーザ加工方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/388 20140101AFI20241003BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20241003BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
B23K26/388
B23K26/16
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052363
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 雄大
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD15
4E168CB04
4E168DA23
4E168EA15
4E168FC01
4E168FC04
4E168HA01
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】レーザ加工技術に関して、加工対象物がフィラーを含有した樹脂材などである場合でも、言い換えると、加工穴内に不要な残留物が生じる場合でも、トレパニング加工による穴あけ加工の精度や効率を向上できる技術を提供する。
【解決手段】レーザ加工方法は、被加工物の面に対しレーザ光を照射することで、加工種類としてトレパニング加工を含む穴あけ加工を行う機能を有するレーザ加工装置によるレーザ加工方法であって、穴あけ加工を制御する制御装置による制御に基づいて、レーザ照射系によって被加工物の面に対しレーザ光を照射して加工穴を形成する加工ステップと、照射されたレーザ光による加工結果として加工穴内に発生した、フィラーを含む残留物を、制御装置による制御に基づいて、清掃装置によって清掃する清掃ステップ(S13,S23,SN3)と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の面に対しレーザ光を照射することで、加工種類としてトレパニング加工を含む穴あけ加工を行う機能を有するレーザ加工装置によるレーザ加工方法であって、
前記穴あけ加工を制御する制御装置による制御に基づいて、レーザ照射系によって前記被加工物の面に対し前記レーザ光を照射して加工穴を形成する加工ステップと、
照射された前記レーザ光による加工結果として前記加工穴内に発生した、フィラーを含む残留物を、前記制御装置による制御に基づいて、清掃装置によって清掃する清掃ステップと、
を有する、レーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ加工方法において、
前記加工ステップによる前記穴あけ加工は、前記被加工物の面に対する深さ方向において前記レーザ光の焦点を設定し、前記被加工物の面における面方向において前記レーザ光を走査することで、リング状または円形の前記加工穴を形成する第1の加工を、前記深さ方向において必要な数で段階的に繰り返すことで、目的の前記加工穴を形成するトレパニング加工を含み、
前記清掃ステップは、前記加工穴の段階ごとに、前記第1の加工の後のタイミングで行われる、
レーザ加工方法。
【請求項3】
請求項1記載のレーザ加工方法において、
前記清掃ステップは、前記清掃装置が、エアブロー装置によって前記加工穴にエアを吹き付けて、前記エアの吹き付けによって舞い上がった前記フィラーを含む残留物を、集塵装置によって集塵するステップを有する、
レーザ加工方法。
【請求項4】
請求項2記載のレーザ加工方法において、
前記制御装置が、前記深さ方向の前記第1の加工の段階に応じて、前記清掃ステップでの前記清掃装置による清掃の実行有無、回数、時間、および強さのうち少なくとも1つのパラメータ値を変えるように制御する、
レーザ加工方法。
【請求項5】
被加工物の面に対しレーザ光を照射することで、加工種類としてトレパニング加工を含む穴あけ加工を行う機能を有するレーザ加工装置であって、
前記穴あけ加工を制御する制御装置と、
前記制御装置による制御に基づいて、前記被加工物の面に対し前記レーザ光を照射して加工穴を形成するレーザ照射系と、
前記レーザ照射系によって照射された前記レーザ光による加工結果として前記加工穴内に発生した、フィラーを含む残留物を、前記制御装置による制御に基づいて、清掃する清掃装置と、
を備える、レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工技術に関し、特に、炭酸ガスレーザなどのレーザ(言い換えるとレーザ光)を用いて基板などの被加工物(言い換えると加工対象物)に穴あけ加工をする場合に好適なレーザ加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスレーザなどのレーザを用いて、基板などの被加工物の面に対し、トレパニング加工などの穴あけ加工を行う技術がある。トレパニング加工は、被加工物の面に対し、リング状(言い換えると円周状)に削る加工を行うことで、リング状または円形状の加工穴を形成する、穴あけ加工の一種である。この加工穴は、非貫通の止め穴であってもよいし、貫通穴であってもよい。
【0003】
従来のレーザ加工装置およびレーザ加工方法においては、レーザ発振器からのレーザ光を基板に照射して、トレパニング加工での穴あけ加工を行う場合がある。この際に、レーザ加工装置は、基板の面に対し、面方向(X,Y方向と記載する場合がある)での位置決め、および深さ方向(Z方向と記載する場合がある)でのレーザ光の焦点位置を設定する。そして、レーザ加工装置は、レーザ光を面方向に走査しながら照射することで、リング状に削る加工を行う。
【0004】
先行技術例としては、特開2007-237242号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、「レーザ加工装置はプリント基板上の所定の加工位置に対して位置決め動作を行うスキャナと、1つのビアホールの外形を描くトレパニング動作を行うスキャナとを別々に設ける」旨や、「パンチ加工とトレパニング加工の双方において、加工スループットと穴形状の向上を図る」旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2007-237242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレーザ加工方法および装置では、トレパニング加工の対象物である基板は、特に、電子部品に使用されている基板における、フィラーが含有された樹脂材料(言い換えるとフィラー入り樹脂材)である場合がある。トレパニング加工による深穴などの穴あけ加工の際、この基板であるフィラー入り樹脂材に、紫外線(UV)レーザなどのレーザ光が照射される。すると、UVレーザによって樹脂が溶融・蒸発・除去されて、加工穴の内部にフィラーが残留する場合がある。この加工穴の内部に残留するフィラーは、トレパニング加工に影響する。詳しくは、加工穴の径や深さ、フィラーの大きさや材質などに応じて、トレパニング加工に及ぼす影響が異なる。例えば、この加工穴内のフィラーが、レーザ光を屈折させることで、トレパニング加工の進行を阻害し得る。その結果、トレパニング加工の精度や効率が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本開示の目的は、上記レーザ加工技術に関して、加工対象物がフィラーを含有した樹脂材などである場合でも、言い換えると、加工穴内に不要な残留物が生じる場合でも、トレパニング加工による穴あけ加工の精度や効率を向上できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のうち代表的な実施の形態は以下に示す構成を有する。実施の形態のレーザ加工方法は、被加工物の面に対しレーザ光を照射することで、加工種類としてトレパニング加工を含む穴あけ加工を行う機能を有するレーザ加工装置によるレーザ加工方法であって、
前記穴あけ加工を制御する制御装置による制御に基づいて、レーザ照射系によって前記被加工物の面に対し前記レーザ光を照射して加工穴を形成する加工ステップと、照射された前記レーザ光による加工結果として前記加工穴内に発生した、フィラーを含む残留物を、前記制御装置による制御に基づいて、清掃装置によって清掃する清掃ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のうち代表的な実施の形態によれば、上記レーザ加工技術に関して、加工対象物がフィラーを含有した樹脂材などである場合でも、トレパニング加工による穴あけ加工の精度や効率を向上できる。上記した以外の課題、構成および効果等については、発明を実施するための形態において示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1のレーザ加工装置の構成を示す図。
図2】実施の形態1のレーザ加工装置における、清掃装置の構成例を示す図。
図3】実施の形態1の変形例における、清掃装置の構成例を示す図。
図4】実施の形態1のレーザ加工方法における、加工穴およびトレパニング加工の構成例を示す図。
図5】実施の形態1のレーザ加工方法における、標準動作の場合(言い換えると清掃を行わない場合)の動作フローを示す図。
図6】実施の形態1のレーザ加工方法における、改善動作の場合(言い換えると清掃を行う場合)の動作フローを示す図。
図7】課題に関する、加工穴の内部にフィラーが残留する場合を示す説明図。
図8】実施の形態2のレーザ加工方法における、基板の面における複数の加工穴の例を示す図。
図9】実施の形態2のレーザ加工方法における、基板の面における複数の加工穴に対するレーザ加工の段階を示す図。
図10】実施の形態2のレーザ加工装置における、清掃装置の構成例を示す図。
図11】実施の形態2の変形例における、清掃装置の構成例を示す図。
図12】実施の形態3のレーザ加工方法および装置における、動作フローおよび制御例を示す図。
図13】各実施の形態で、他の加工穴の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、範囲等を表していない場合があるが、限定する意図はない。
【0012】
説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPU/MPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。
【0013】
プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えばメモリカードやディスクでもよい。プログラムは、複数のモジュールから構成されてもよい。コンピュータシステムは、複数台の装置によって構成されてもよい。コンピュータシステムは、クライアント・サーバシステム、クラウドコンピューティングシステム、IoTシステム等で構成されてもよい。各種のデータや情報は、例えばテーブルやリスト等の構造で構成されるが、これに限定されない。識別情報、識別子、ID、名前、番号等の表現は互いに置換可能である。
【0014】
<実施の形態1>
図1図7を用いて、実施の形態1のレーザ加工方法および装置について説明する。
【0015】
図1は、実施の形態1のレーザ加工装置の構成を示す。図1において、実施の形態1のレーザ加工装置であるレーザ加工装置100は、制御装置10、レーザ照射系20、清掃装置30、およびテーブル40などを備える。図1では、テーブル40上の基板1を横(Y軸方向)から見た場合の模式図を示している。
【0016】
テーブル40は、被加工物である基板1が載置される装置であり、言い換えるとステージ装置である。制御装置10は、テーブル40の移動を駆動制御する。テーブル40は、制御装置10からの制御に基づいて、例えば少なくとも図示のX,Y軸方向である水平方向に移動可能な機構であるが、これに限定されず、Z軸方向である鉛直方向の移動や回転移動が可能な機構でもよい。テーブル40の移動により、レーザ照射系20や清掃装置30に対する基板1の加工対象位置の位置決めが可能である。
【0017】
テーブル40の上面には、吸着治具41が搭載されている。吸着治具41の主面には複数の吸着孔42が設けられている。吸着治具41は、吸着治具41の上面に載置される基板1を吸着することで保持する治具である。なお、変形例では、テーブル40は、作業者が手動で移動できる機構としてもよい。
【0018】
基板1は、電子部品などを構成するための基板である。実施の形態1では、基板1の主な材質(言い換えると構成要素)は、フィラー入り樹脂材であり、フィラーと樹脂とを含有している。
【0019】
制御装置10は、レーザ加工装置100の各部および全体を制御するコントローラである。制御装置10は、例えばプログラマブル・ロジック・コントローラ、マイコン基板、あるいはPCやサーバなどのコンピュータシステムで構成でき、詳細を限定しない。制御装置10は、レーザ照射系20、テーブル40、および清掃装置30等の各構成要素の動作等を駆動制御する。例えば、制御装置10は、清掃装置30に制御信号を供給し、清掃装置30は、その制御信号に従って動作する。なお、制御装置10とは別に、図示しない駆動回路、電源回路などが設けられてもよい。構成要素間の通信は有線でも無線でもよい。
【0020】
レーザ照射系20は、テーブル40上の基板1に対しレーザ光11を照射するための公知の機構であり、詳細を限定しない。レーザ照射系20は、図1の構成例では、吹き出しで機能ブロックとして示すように、少なくとも、レーザ発振器21、ガルバノスキャナ22、および集光レンズ23を有する。レーザ発振器21は、レーザ光を発振する。ガルバノスキャナ22は、レーザ光をX,Y軸方向に走査する。集光レンズ23は、走査されたレーザ光を、基板1の主面(図示ではX-Y面)に対し垂直であるレーザ光11として照射する。
【0021】
清掃装置30は、新規の構成要素であり、基板1の後述の加工穴に発生するフィラー等の塵(言い換えると、ごみ、不要物、残留物)を清掃するための装置である。実施の形態1では、清掃装置30は、エアブロー装置31と集塵装置32とを有して構成されている。エアブロー装置31は、図示のZ方向(言い換えると鉛直方向、深さ方向)での下方向にエアを噴出する。集塵装置32は、そのエアによって舞い上がった塵を、吸い込みによって集塵する。実施の形態1では、清掃装置30は、レーザ加工装置100における所定の位置に固定して設置されている。清掃装置30の位置は、レーザ照射系20によるレーザ光11の照射を阻害しない位置である。
【0022】
なお、変形例では、清掃装置30は、作業者が手動で移動できる機構としてもよい。また、変形例では、清掃装置30は、制御装置10による制御に基づいて自動的に移動される機構としてもよい。
【0023】
図1のレーザ加工装置100は、図示のような機構を用いて、基板1の面に対し、トレパニング加工を行う機能を有する装置であり、特に、トレパニング加工に伴って発生するフィラー等の塵を清掃する清掃装置30を有する装置やシステムである。実施の形態1のレーザ加工方法は、レーザ加工装置100を用いてトレパニング加工を行う方法であり、特に、トレパニング加工に伴って発生するフィラー等の塵を清掃するステップを有する方法である。
【0024】
なお、制御装置10には、実施の形態1でのレーザ加工方法を実現するためのコンピュータプログラムがインストールされてもよいし、同様のプログラムが専用回路として実装されてもよい。そのコンピュータプログラムは、外部の記憶媒体やサーバなどから提供されてもよい。制御装置10は、プロセッサによってメモリ上のそのコンピュータプログラムに従った処理を実行することで、機能を実現してもよい。
【0025】
[加工穴および清掃装置]
図2は、基板1の加工面3での1つの加工穴2に対する、清掃装置30の配置例を示す斜視図である。図1のレーザ加工装置100は、清掃の際には、テーブル40の移動を制御することで、清掃装置30の直下に、清掃対象の加工穴2が配置される状態になるように、位置付けをする。
【0026】
図2での加工穴2は、円形状の開口を有する止め穴(言い換えると非貫通穴)の例を示している。図2での加工穴2は、3次元では円柱形状の空間である。加工面3は、図1の基板1の上面の一部であり、模式で図示している。トレパニング加工のレーザ光11によって、このような加工穴2が形成される。
【0027】
図2では、清掃装置30の一構成例を示しており、詳細を限定しない。本例では、清掃装置30は、外観が概略的に円柱形状を有し、中心軸に円柱形状のエアブロー装置31を有し、エアブロー装置31の周りにリング形状の集塵装置32を有する。加工穴2の中心位置に対応する中心軸を一点鎖線で示す。清掃装置30は、加工穴2の中心軸に対応する位置に、エアブロー装置31の中心軸が配置されるように、位置付けられる。
【0028】
清掃時には、矢印で示すように、エアブロー装置31の下面からエアがZ方向の下に噴出される。そのエアは、加工穴2の内部に吹き付けられる。加工穴2の内部にフィラー等の塵が存在する場合、そのエアによってフィラー等の塵が飛ばされ、加工穴2の内部の外周付近を経て、加工穴2の外側・上側に舞い上がるように出る。そのフィラー等の塵は、矢印で示すように、リング状の集塵装置32の下面の吸気によって集塵される。
【0029】
実施の形態1のレーザ加工装置は、単一の加工穴2ごとにトレパニング加工を可能とするレーザ照射系20と、単一の加工穴2ごとに清掃を可能とする清掃装置30とを備えており、実施の形態1のレーザ加工方法(後述の図6)は、それに対応する清掃ステップを有している。清掃装置30は、図2の例のように、単一の加工穴2に対応させて、1つ以上のエアブロー装置31と、1つ以上の集塵装置32とを備えている。
【0030】
図3は、実施の形態1の変形例として、清掃装置30の別の構成例を同様に示している。図3の構成例では、清掃装置30は、外観が概略的に直方体形状を有する。この清掃装置30は、例えばX軸方向で中心付近にエアブロー装置31を有し、エアブロー装置31に対しX軸方向で左右の両側に集塵装置32を有する。なお、清掃装置30を回転させれば、Y軸方向などにも同様に配置可能である。この清掃装置30は、同様の加工穴2の中心軸に対応する位置にエアブロー装置31が配置されるように、位置付けがされる。
【0031】
清掃時には、矢印で示すように、X軸方向で中心付近のエアブロー装置31の下面からエアがZ方向の下に噴出される。そのエアは、加工穴2の内部に吹き付けられる。加工穴2の内部にフィラー等の塵が存在する場合、そのエアによってフィラー等の塵が飛ばされ、加工穴2の内部の外周付近を経て、加工穴2の外側・上側に舞い上がるように出る。そのフィラー等の塵は、矢印で示すように、X軸方向で左右の両側の集塵装置32の下面の吸気によって集塵される。
【0032】
[穴あけ加工-トレパニング加工]
図4は、実施の形態1における穴あけ加工としてトレパニング加工、および対象の加工穴2の構成例を示す説明図である。
【0033】
図4の(A)は、基板1の加工面3に1つの加工穴2(図2と同様)を形成する場合における、左側にX-Y平面図、右側にX-Z断面図を示している。X-Y平面図において、加工面3での加工穴2の開口は円形状であり、加工の中心位置の点を点2Pで示し、直径をφDで示す。また、小さい円で示すスポット4は、レーザ光11の照射によるスポット(言い換えるとレーザ加工穴)である。スポット4の直径をφdで示す(φD>φd)。X-Z断面図において、トレパニング加工の最初時には、加工穴2の外周付近からリング状に削られる。そのため、(A)の状態では、加工面3の近くにレーザ光11の焦点がスポット4として設定されている。X-Z断面図では、加工面3である上面の深さ方向・高さ方向の位置をZ0で示し、基板1のZ方向の厚さを1Hで示し、加工穴2のZ方向の深さを2Hで示している(1H>2H)。(A)の状態は、トレパニング加工におけるZ方向での第1段階の加工の最初時の状態を示している。
【0034】
図4の(B)は、続いて、トレパニング加工におけるZ方向での第1段階の加工における途中の状態を示している。左側のX-Y平面図において、加工穴2の外周付近を外周方向(Cで示す)にある程度まで削り進んだ状態を示している。右側のX-Z断面図において、加工穴段階5は、加工穴2のZ方向での段階的な加工のうちの一部の段階の領域を示している。第1段階の加工穴段階5の深さ位置(概略的にレーザ光11の焦点位置と対応する)をZ1で示している。加工穴段階5のZ方向の深さを5Hで示している。
【0035】
図4の(C)は、続いて、トレパニング加工におけるZ方向での複数の段階の加工を示している。レーザ加工装置100は、図示のように、Z方向での加工穴段階5ごとの段階的な加工を、レーザ光11の焦点位置を変えながら、同様に繰り返すことで、深穴としての加工穴2を形成する。左側のX-Y平面図において、加工穴2の外周付近のリング状の加工が1回終了すると、レーザ加工装置100は、スポット4の位置を径方向(Rで示す)で移動し、異なる径でのリング状の加工を同様に行う。このようなリング状の加工を必要な数で繰り返すことで、例えば円形状の加工穴段階5の領域が削られる。右側のX-Z断面図において、例えば4段階の加工が繰り返し実行された場合を示している。第4段階の加工穴段階5の深さ位置がZ4である。同様に、目標の加工穴2の深さ2Hに対応した深さ位置(ZNで示す)まで、段階的な加工が繰り返し実行される。
【0036】
図4で、基板1の厚さ(1H)は、一例では1mmである。それに対し、レーザ光11の焦点に基づいた、1段階の加工穴段階5のトレパニング加工の深さ(5H)は、一例では0.1mm程度である。目的の加工穴2の深さ(2H)は、一例では0.7mm程度である。そのため、本例では、深さ方向(Z方向)において複数(N)の段階のトレパニング加工によって、加工穴2が形成される。
【0037】
本実施例では、図4のように、加工穴2は、深さ方向で止め穴、すなわち基板1の裏側の面までは貫通していない凹部とし、平面視での開口の形状を円形状としている。これに限定されず、実施の形態のレーザ加工方法および装置は、加工穴2が貫通穴である場合や、平面視でリング形状の場合にも、同様に適用可能である。
【0038】
なお、加工穴2の形状を、中心の芯(言い換えると円柱部分)を残したリング形状(言い換えると円筒形状)とする場合には、径方向Rで外周から芯の径の範囲までを削る加工とすればよい。
【0039】
[フロー:標準動作]
図5は、実施の形態1のレーザ加工装置において、従来技術と同様のトレパニング加工の標準動作を行う場合のフローを示す。言い換えると、図5は、実施の形態1に対する比較例の動作フローを示す。図5のフローは、1つの加工穴2をトレパニング加工する場合であり、図4のように深さ方向で多段階のトレパニング加工をする場合であり、ステップS1~SNを有する。ステップS1はZ方向での第1段階の加工、ステップS2は第2段階の加工であり、図示を省略するが段階の数に応じた加工が同様に繰り返され、ステップSNは最終の第N段階の加工である。
【0040】
ステップS1は、ステップS11とステップS12とを有して構成される。ステップS11は、レーザ照射系20(図1)のレーザ光11の位置決めおよび焦点の設定である。ステップS11では、制御装置10(図1)による制御に基づいて、テーブル40(図1)の移動によって、レーザ照射系20によるレーザ光11を対象の加工穴2の位置に対し照射するための、X,Y軸方向の位置決めがされる。また、ステップS11では、レーザ照射系20によるレーザ光11のスポット4(図4)のZ方向での焦点位置が設定される。最初の第1段階であれば、スポット4の焦点位置は、図4に示したように、例えば深さ位置Z1の付近とされる。
【0041】
ステップS12は、第1段階のトレパニング加工であり、図4での深さ位置Z1の加工穴段階5(51)の加工に相当する。
【0042】
同様に、ステップS2は、ステップS21とステップS22とで構成される。ステップS21は、第2段階のレーザ光11の焦点の設定である。ステップS22は、第2段階の加工穴段階5(52)のトレパニング加工である。
【0043】
同様に、ステップSNは、ステップSN1とステップSN2とで構成される。ステップSN1は、第N段階のレーザ光11の焦点の設定である。ステップSN2は、第N段階の加工穴段階5(5N)のトレパニング加工である。
【0044】
上記図5のフローでは、基本として、加工穴段階5ごとの位置決めおよび焦点の設定のステップと、加工穴段階5ごとのトレパニング加工のステップとを、1つのセットとして設けている。焦点の設定は、言い換えると、加工穴段階5に対するレーザ光11の焦点位置の変更などである。深さ方向の段階ごとに、このセットが必要な数で繰り返し設けられる。なお、1つの加工穴2に対する水平方向での位置決めは、第1段階のステップS1で行えば、その後の段階のステップでは省略できる。また、各段階でのレーザ光11の走査の仕方は、図4に示した例のように同じとするが、これに限定されない。例えば、各段階でX,Y軸方向の走査を異ならせることで、加工面積や形状を異ならせることも可能である。
【0045】
[フィラーの課題]
図7は、フィラーの課題に関する補足説明図である。図7は、図4と同様に基板1のX-Z断面図において、加工穴2をトレパニング加工する途中、レーザ光11の照射によって基板1の樹脂材が溶融・蒸発・除去されて、加工穴2の内部にフィラー1Fが残留する場合を模式で図示している。フィラー1Fの物質を丸印で図示している。例えば、第2段階の加工穴段階5(52)までの加工によって、発生したフィラー1Fが、加工穴段階5(52)の内部の底面や側面に付着する。この加工穴2の内部に残留するフィラー1Fは、以降の段階のトレパニング加工に影響する。その結果、加工穴2のトレパニング加工の精度や効率に影響する。
【0046】
そこで、実施の形態1のレーザ加工装置は、図1の清掃装置30を設け、実施の形態1のレーザ加工方法は、以下の図6のように清掃ステップを有する。これにより、加工穴2の内部に残存するフィラー1Fが清掃される。
【0047】
[フロー:改善動作]
図6は、実施の形態1のレーザ加工方法および装置における、図5に対する改善動作としての、トレパニング加工の動作フローを示す。図6のフローは、1つの加工穴2をトレパニング加工する場合であり、図4のように深さ方向で多段階のトレパニング加工をする場合であり、ステップS1~SNを有する。ステップS1はZ方向での第1段階の加工、ステップS2は第2段階の加工であり、図示を省略するが段階の数に応じた加工が同様に繰り返され、ステップSNは最終の第N段階の加工である。図6のフローは、図5のフローに対し主な異なる構成点としては、各段階のステップのセットの中に、清掃ステップが追加されている。
【0048】
図6の改善動作のフローでは、位置決めおよび焦点の設定のステップと、トレパニング加工のステップとの次に、清掃ステップを追加し、これらの3種類のステップを1つのセットとして設けている。
【0049】
ステップS1は、前述と同様のステップS11、ステップS12に加え、ステップS13として清掃ステップを有する。ステップS11では、レーザ照射系20に対する対象の加工穴2の位置決め、および焦点の設定が行われる。ステップS12では、加工穴2の第1段階の加工穴段階5(51)のトレパニング加工が行われる。ステップS13では、レーザ加工装置100は、制御装置10による清掃装置30の制御に基づいて、第1段階までの加工が終了した加工穴2(対応する加工穴段階5)の内部を清掃する。清掃の詳細は例えば前述の図2の通りであり、図2での加工穴2を、図4図7のような第1段階の加工穴段階51に置き換えて捉えればよい。
【0050】
清掃ステップでは、例えばテーブル40の移動の制御によって、清掃装置30のエアブロー装置31のX,Y軸方向の位置に対し、直下に、対象の加工穴2のX,Y軸方向の位置、例えば図4での中心点2Pが来るように、位置決めがされる。清掃ステップでは、清掃装置30のエアブロー装置31から、加工穴2の中心に対し、エアが下に吹き付けられる。そのエアにより、加工穴2の内部にフィラー1Fがある場合のそのフィラー1Fが飛ばされて、加工穴2の外周側面付近を経由して上方へ舞い上がる。集塵装置32は、加工穴2の開口から上側へ出るそのフィラー1Fを塵として吸い込むようにして集塵する。
【0051】
同様に、ステップS2は、前述と同様のステップS21、ステップS22に加え、ステップS23として清掃ステップを有する。ステップS21では、レーザ照射系20に対する対象の加工穴2の位置決め、および焦点の設定が同様に行われる。ステップS22では第2段階のトレパニング加工が同様に行われる。ステップS23では、レーザ加工装置100は、制御装置10による清掃装置30の制御に基づいて、第2段階までの加工が終了した加工穴2(対応する加工穴段階5)の内部を清掃する。清掃の詳細は例えば前述の図2の通りであり、図2での加工穴2を、図4図7のような第2段階の加工穴段階52に置き換えて捉えればよい。
【0052】
同様に、ステップSNは、前述と同様のステップSN1、ステップSN2に加え、ステップSN3として清掃ステップを有する。ステップSN3では、レーザ加工装置100は、制御装置10による清掃装置30の制御に基づいて、第N段階までの加工が終了した加工穴2(対応する加工穴段階5)の内部を清掃する。清掃の詳細は例えば前述の図2の通りであり、図2での加工穴2を、図4図7のような第N段階の加工穴段階5Nに置き換えて捉えればよい。
【0053】
上述のように、ステップSNまでの各段階のステップでは、セットとして、位置決めおよび焦点位置の設定、加工穴段階5のトレパニング加工、および清掃を有する。言い換えると、本実施例の方法は、レーザ光によるトレパニング加工と清掃とを交互に繰り返す方法である。なお、各段階の清掃ステップでは、その段階に対応する深さ位置の加工穴段階5を主な清掃対象とするが、その加工穴段階5までに至る他の加工穴段階5の部分についても同時に清掃されることとなる。
【0054】
なお、基板1に複数の加工穴2を形成する場合には、例えば加工穴2ごとに上記と同様の動作フローとすることで実現できる。
【0055】
[実施の形態1の効果等]
上記実施の形態1のレーザ加工方法および装置によれば、清掃のステップおよび機構を備えることで、加工対象物がフィラーを含有した樹脂材などである場合でも、言い換えると、加工穴内に不要な残留物が生じる場合でも、トレパニング加工による穴あけ加工の精度や効率を向上できる。
【0056】
特に、本実施例のように、加工穴2が止め穴である場合(図4図7)に、その止め穴の内部に、フィラー1F、言い換えると加工による残留物、が残留しやすい。これにより、加工への影響があり、トレパニング加工の精度や効率を低下させるおそれがある。そのため、本実施例では、清掃装置30および清掃ステップを用いることで、加工穴2である止め穴の内部からフィラー1Fを外部へ出すように集塵することができる。これにより、残留物による加工への影響を小さくし、トレパニング加工の精度や効率を向上できる。
【0057】
なお、加工穴2が貫通穴である場合、加工時の残留物であるフィラーは、その貫通穴の反対の開口から外部に出やすく、言い換えると下方に落ちやすい。よって、その場合は、止め穴の場合よりも、加工への影響が小さいといえる。しかしながら、貫通穴の場合でも、基板1の裏側に貫通するまでの加工途中の段階では、加工穴2の内部にフィラーが残留しやすい。また、貫通後でも、貫通穴の側面にフィラーが付着する場合がある。そのため、貫通穴の場合でも、フィラーによる加工への影響がある。したがって、貫通穴の場合でも、本実施例を同様に適用すれば、トレパニング加工の精度や効率を向上できる。
【0058】
上記清掃ステップに関する形態は、図6のフローの構成に限定されない。例えば、深さ方向での複数の段階のうち、すべての段階で清掃ステップを行う形態でもよいが、一部の段階のみで行う形態としてもよい。例えば、深さ方向で最後(N)の段階に近付くほど、フィラー1Fが溜まりやすい。そのため、少なくとも最後(N)の段階の加工後に清掃ステップを行う形態とすればよい。
【0059】
なお、リング形状の加工穴2とする場合には、清掃装置30による清掃ステップでは、加工穴2の芯に対しエアを吹き付ける構成としてもよいが、他の構成としては、芯以外の箇所(凹部)にエアを吹き付ける構成としてもよい。
【0060】
本実施例では、フィラー入り樹脂材である基板1をレーザ加工した場合に、樹脂部分が溶融・気化し、フィラーのみが残るものとした。これに限らず、他の実施例では、被加工物を、レーザ加工後にフィラー以外の物質が残留するものとしてよい。他の実施例では、トレパニング加工後の清掃ステップで、その残留物を対象に清掃するものとすればよい。
【0061】
なお、実施の形態のレーザ加工装置および方法は、制御装置10による制御に基づいて基本的に全自動で動作する構成であるが、一部に人の作業を介在させるようにしてもよい。作業の例は、テーブル40および基板1を動かす作業などである。その場合でも、清掃ステップでは清掃装置30が清掃を自動的に実行できるので、人の作業の手間を最低限にすることができる。
【0062】
<実施の形態2>
図8以降を用いて、実施の形態2のレーザ加工方法および装置について説明する。実施の形態2等の基本的な構成は、実施の形態1と同様・共通の部分を有し、以下では、実施の形態2等における実施の形態1とは異なる構成部分について主に説明する。
【0063】
実施の形態2は、実施の形態1での清掃の機構をベースとして、基板1の面に複数の加工穴2を形成する場合の効率を高めるための構成を示す。実施の形態2のレーザ加工装置は、基板1の面においてライン状に配列された複数の加工穴2に対し、まとめてトレパニング加工を実行可能とする清掃装置30(例えば図10)を備え、実施の形態2のレーザ加工方法は、それに対応する清掃ステップを有する。
【0064】
[基板の加工穴の構成]
図8は、実施の形態2で、加工対象の一例とする、基板1のX-Y平面(上面)における複数の加工穴2の構成例を示す。本例では、基板1は、X-Y平面(上面)において、複数の加工穴2が、X方向およびY方向のそれぞれにライン状に配列されるように形成される。図8の例では、基板1のY方向の幅(長さ)を1Yとして示す。その幅1Yの範囲内に、複数の加工穴2、例えば5個の加工穴2が、1つのライン801(言い換えるとライン領域)として形成される。
【0065】
実施の形態2では、このような1つのライン801における複数の加工穴5をまとめて、同時にトレパニング加工でき、かつ同時に清掃できるように、以下のような機構およびステップを有する。X方向での複数のライン801については、ライン801ごとの加工を同様に繰り返せばよい。
【0066】
[レーザ照射系の構成]
まず、複数の加工穴2を同時にトレパニング加工するためのレーザ照射系20(図1)などの構成については、公知技術を適用できる。そのため、以下では簡単な説明のみとする。
【0067】
図9は、図8の基板1の1つのライン801に沿ったY-Z断面図で、ライン801の複数(ここではmとする)の加工穴2を対象として、まとめてトレパニング加工を行う場合の模式説明図である。レーザ照射系20(図1)は、加工面3における複数(m)の加工穴2の領域に対し、同時に複数のレーザ光11を走査しながら照射するための機構を有する。本例での複数の加工穴2は、同一形状の止め穴であり、図4と同様に、複数(N)の段階のトレパニング加工によって形成される。
【0068】
まず、図9の(A)に示すように、複数(m)の加工穴2の未形成の領域に対し、深さ方向で第1段階のトレパニング加工が同時に行われる。これにより、それぞれの加工穴2の領域には、第1段階の加工穴段階51が形成される。
【0069】
次に、図9の(B)に示すように、複数(m)の加工穴2の未形成の領域に対し、深さ方向で第2段階のトレパニング加工が同時に行われる。これにより、それぞれの加工穴2の領域には、第2段階の加工穴段階52が形成される。
【0070】
同様に、図9の(C)に示すように、所望の深さまでの第N段階までのトレパニング加工が繰り返して行われる。
【0071】
また、上記構成例に限らずに、1つのライン801内における複数の加工穴2のトレパニング加工を、加工穴2ごとに順次に行う構成としてもよい。
【0072】
なお、上記構成例は、ライン801の複数段階の加工を行う場合であるが、これに限らずに、基板1のX-Y平面内の複数のライン801を、深さ方向の段階ごとにまとめて加工を行うことも可能である。例えば、図8での1つのライン801(例えばX方向で最も左)を第1段階まで加工した後、テーブル40の移動により、1つ隣のライン801に移動し、そのライン801を第1段階まで加工し、同様に、X方向でライン801ごとに加工を繰り返すことで、すべての加工穴2の第1段階の加工を終了する。次に、最初のライン801に戻り、第2段階の加工を開始する。以降同様である。
【0073】
[清掃装置の構成例(1)]
図10は、実施の形態2での清掃装置30の構成例を示す斜視図である。図10では、基板1のX-Y平面における図8のライン801の領域を加工面3として、ライン801内に複数(例えば5個)の加工穴2を形成する場合に、対象のライン801の上側に、ライン状の清掃装置30が配置された状態を示している。このライン状の清掃装置30は、Y方向に延在して長い形状であり、図8の基板1の1つのライン801およびY方向の幅(1Y)よりも長い形状である。このライン状の清掃装置30は、図8で例えばライン801aが清掃の対象である場合には、そのライン801aに対応した領域802に配置される。
【0074】
図10で、清掃装置30は、例えば直方体形状の筐体300内に、前述の図2で例示したような1つの加工穴2に対応した清掃装置30(言い換えると清掃ユニット30a)が、Y方向に、複数個(例えば5個)、配列されている。複数の清掃ユニット30aの数や配置は、複数の加工穴2の形成の数や間隔などを考慮して設計されている。
【0075】
清掃ステップの時には、対象のライン801の領域に対し上側に、ライン状の清掃装置30が来るように位置付けがされる。例えば、図9で第1段階の加工が終了したライン801が、テーブル40の移動により、清掃装置30の下側に配置された状態にされる。図10のような状態で、清掃装置30は、同時に、それぞれの清掃ユニット30aのエアブロー装置31から下方のそれぞれの加工穴2に対しエアを吹き付ける。これにより、それぞれの加工穴2から舞い上がったエアおよび塵は、それぞれの集塵装置32によって集塵される。このように、ライン801ごとに同時に複数の加工穴2(対応する加工穴段階5)を清掃可能である。
【0076】
[清掃装置の構成例(2)]
図11は、実施の形態2の変形例での、清掃装置30の構成例を示す。この清掃装置30は、図10と同様にライン状であるが、異なる構成点として、ライン状のエアブロー装置31(言い換えるとエアブローユニット31a)およびライン状の集塵装置32(言い換えると集塵ユニット32a)を備える。
【0077】
図11の清掃装置30は、筐体300内に、清掃ユニット30aとして、Y方向に延在するライン状のエアブローユニット31aと、そのエアブローユニット31aに対しX方向で左右の両側に配置されている2つのライン状の集塵ユニット32aとを備える。
【0078】
清掃時には、対象のライン801の加工済みの加工穴段階5の上側に清掃装置30が配置された状態にされる。図11のような状態で、清掃装置30は、同時に、清掃ユニット30aのライン状のエアブローユニット31aから下方の複数の加工穴2(対応する加工穴段階5)に対しエアを吹き付ける。これにより、それぞれの加工穴2から舞い上がったエアおよび塵は、左右のライン状の集塵ユニット32aによって集塵される。このように、ライン801ごとに同時に複数の加工穴2(対応する加工穴段階5)を清掃可能である。
【0079】
図10または図11の構成に基づいて、同様に、テーブル40の移動により、対象のライン801を変えて、ライン801ごとに清掃が可能である。実施の形態2でのライン状の清掃装置30は、固定位置に配置された構成としてもよいが、変形例では、ライン状の清掃装置30を例えばX方向に移動可能な機構を設けてもよい。
【0080】
上記実施の形態2によれば、複数の加工穴2をまとめて清掃可能であり、実施の形態1の効果に加え、効率が向上する。
【0081】
<実施の形態3>
図12を用いて、実施の形態3のレーザ加工方法および装置について説明する。実施の形態3は、実施の形態1に対し異なる構成点として、図6のフローをベースとしつつ、制御装置10(図1)が、深さ方向(Z方向)での加工の段階や位置に応じて、清掃ステップ(ステップS13,S23,……,SN3)のパラメータ値を変えるように制御する。
【0082】
清掃ステップのパラメータ値は、清掃の実行有無や、回数や持続時間、エアブローの強度、集塵の強さ等が挙げられる。それらのパラメータ値の少なくとも1つを制御するものとする。
【0083】
例えば、図7において、深さ方向(Z方向)で上側、すなわち基板1の上面に近い方にある加工穴段階5では、レーザ加工に伴うフィラー1Fが溜まりにくく、下側、すなわち基板1の裏面に近い方の加工穴段階5になるほど、レーザ加工に伴うフィラー1Fが溜まりやすくなる。
【0084】
そこで、実施の形態3での制御装置10は、深さ方向で下側の加工穴段階5になるほど、言い換えるとNに近付くほど、清掃の度合いを大きくするように、各清掃ステップのパラメータ値を変えるように制御する。具体的には、制御装置10は、下側の加工穴段階5になるほど、清掃ステップでの清掃を実行有りにし、標準的な清掃の単位での清掃の回数を増やす、または清掃の時間を長くし、あるいは、エアブローの吹き付けの強さを強くし、集塵の吸気の強さを強くする。
【0085】
図12は、実施の形態3での制御装置30による改善動作のフローにおいて、清掃ステップのパラメータ値の変更の制御の一例を示している。第1段階の加工穴段階5のステップS1では、清掃ステップであるステップS13で、制御装置10は、清掃実行無しとする。
【0086】
次に、第2段階の加工穴段階5のステップS2では、清掃ステップであるステップS23で、制御装置10は、清掃実行有りとし、予め設定された標準的な清掃の単位での清掃の回数を1回として清掃を実行する。予め設定された標準的な清掃の単位は、例えば、所定の時間T秒での清掃であり、エアブローの強さをA1、集塵の強さをB1とする。
【0087】
次に、第3段階の加工穴段階5のステップS3では、清掃ステップであるステップS33で、制御装置10は、清掃実行有りとし、予め設定された標準的な清掃の単位での清掃の回数を2回として清掃を実行する。この場合、2回の清掃で、清掃時間がT×2秒となる。また、本例では、ステップS33で、エアブローの強さをより強くしてA2(A2>A1)とし、集塵の強さをより強くしてB2(B2>B1)とする。
【0088】
同様に、制御装置10は、深さ方向で段階が進むにつれて、例えば清掃の回数を多く、または時間を長くし、エアブローや集塵の強さをより強くするように、清掃ステップのパラメータ値を制御する。最後の第N段階、本例では第4段階の加工穴段階5のステップS4では、清掃ステップであるステップS43で、制御装置10は、清掃実行有りとし、予め設定された標準的な清掃の単位での清掃の回数を3回として清掃を実行する。この場合、3回の清掃で、清掃時間がT×3秒となる。また、本例では、ステップS43で、エアブローの強さをより強くしてA3(A3>A2)とし、集塵の強さをより強くしてB3(B3>B2)とする。
【0089】
他の実施例としては、段階ごとに、清掃実行有無のみを制御してもよいし、清掃の回数や時間のみを制御してもよいし、清掃の詳細であるエアブローや集塵の強さのみを制御するようにしてもよい。
【0090】
上記実施の形態3によれば、加工穴2の深さ方向の段階に応じて清掃の度合いを変えるように制御することで、清掃の精度や効率を高めることができ、加工穴2内のフィラーをより好適に清掃・除去することができる。
【0091】
[他の加工穴の例]
図13は、各実施の形態に関する補足説明図として、加工穴2がリング形状の貫通穴である場合、および清掃装置30との配置関係を示している。左側には平面視での加工穴2bを示しており、この加工穴2bは、リング形状であり、中心部に非加工の芯2cを有する。右側には、X-Z断面図で、その加工穴2bに対し、上側に、清掃装置30が配置された状態を示している。この清掃装置30は、加工穴2bの中心軸に合わせて配置されている。エアブロー装置31から下方に噴き出したエアは、芯2cに対し吹き付けられた後、外周方向に流れて、凹部である加工穴2b(対応する加工穴段階5)の中に吹き付けられる。これにより、凹部の中から上側に舞い上がったエアおよび塵は、集塵装置32によって吸気される。このように、リング形状の加工穴2bの場合にも、清掃による前述と同様の効果が得られる。
【0092】
また、本例では、加工穴2bは貫通穴であるため、最後(N)の段階の加工が終了すると、芯2cの部分は下方に抜け落ちることとなる。これにより、トレパニング加工完了後の加工穴2bは、開口が円形状となる。加工穴2bの外周側面にフィラーが付着していたとしても、清掃によって除去可能である。
【0093】
以上、本開示の実施の形態について具体的に説明したが、前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。各実施の形態は、必須構成要素を除き、構成要素の追加・削除・置換などが可能である。特に限定しない場合、各構成要素は、単数でも複数でもよい。各実施の形態や変形例を組み合わせた形態も可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…基板(被加工物、フィラー入り樹脂材)、2…加工穴、3…加工面、4…レーザ加工穴(スポット)、5…加工穴段階、10…制御装置、11…レーザ光、20…レーザ照射系、21…レーザ発振器、22…ガルバノスキャナ、23…集光レンズ、30…清掃装置、31…エアブロー装置、32…集塵装置、40…テーブル、41…吸着治具、42…吸着穴、100…レーザ加工装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13