IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-モータドライバ回路 図1
  • 特開-モータドライバ回路 図2
  • 特開-モータドライバ回路 図3
  • 特開-モータドライバ回路 図4
  • 特開-モータドライバ回路 図5
  • 特開-モータドライバ回路 図6
  • 特開-モータドライバ回路 図7
  • 特開-モータドライバ回路 図8
  • 特開-モータドライバ回路 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140967
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】モータドライバ回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/06 20060101AFI20241003BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H03K17/06 063
H03K17/687 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052366
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 鈴之助
(72)【発明者】
【氏名】保地 滉介
(72)【発明者】
【氏名】菅本 裕樹
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX05
5J055BX16
5J055CX13
5J055CX20
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX56
5J055EX07
5J055EX17
5J055EY10
5J055EY21
5J055EZ07
5J055EZ55
5J055FX12
5J055FX17
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】Nチャンネルのハイサイドトランジスタを高効率で駆動可能なドライバ回路を提供する。
【解決手段】ハイサイドドライバ130Aは、制御信号CTRLHに応じてハイサイドトランジスタM1を駆動する。電圧監視回路146は、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧もしくはゲートソース間電圧である検出電圧Vdetがしきい値より低くなると、検出信号Sdetをアサートする。タイマー回路144は、制御信号CTRLHがハイサイドトランジスタM1のターンオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して、または制御信号CTRLHがオン状態であるときの検出信号Sdetのアサートに応答して、所定時間の測定を開始する。チャージポンプ回路142は、タイマー回路144が所定時間を測定している間アクティブとなり、クロック信号CLKに応じて昇圧電圧VCPを発生し、ハイサイドトランジスタM1のゲートに供給する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイサイドトランジスタのオン、オフを指示する制御信号を生成するロジック回路と、
前記制御信号に応じて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、
を備え、
前記ハイサイドドライバは、
前記ハイサイドトランジスタのゲート電圧もしくはゲートソース間電圧である検出電圧をしきい値と比較し、前記検出電圧が前記しきい値より低くなると、検出信号をアサートする電圧監視回路と、
前記制御信号が前記ハイサイドトランジスタのオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して、または前記制御信号がオン状態であるときの前記検出信号のアサートに応答して、所定時間の測定を開始するタイマー回路と、
前記タイマー回路が前記所定時間を測定している間アクティブとなり、クロック信号に応じて昇圧電圧を発生し、前記ハイサイドトランジスタのゲートに供給するチャージポンプ回路と、
前記制御信号が前記ハイサイドトランジスタのオフを指示するときに前記ハイサイドトランジスタの前記ゲートの電圧を低下させるターンオフ回路と、
を備える、モータドライバ回路。
【請求項2】
前記クロック信号を生成するオシレータと、
前記オシレータの出力ノードと前記チャージポンプ回路のクロック入力ノードの間に接続された第1スイッチと、
をさらに備え、前記タイマー回路の出力に応じて、前記第1スイッチが制御される、請求項1に記載のモータドライバ回路。
【請求項3】
前記ターンオフ回路は、前記ハイサイドトランジスタのゲートと接地の間、または前記ハイサイドトランジスタのゲートとソースの間に接続された第2スイッチを含む、請求項1または2に記載のモータドライバ回路。
【請求項4】
前記チャージポンプ回路は、基準入力ノードを有し、前記クロック信号に応じて、前記基準入力ノードに供給された電圧よりも所定電圧幅高い電圧を出力可能に構成され、
前記モータドライバ回路は、
前記チャージポンプ回路の前記基準入力ノードと前記ハイサイドトランジスタのドレインの間に接続された第3スイッチをさらに備え、
前記第3スイッチは、前記制御信号が前記オン状態に遷移するとターンオンし、その後遅れて、前記タイマー回路が前記所定時間の測定を開始する、請求項1または2に記載のモータドライバ回路。
【請求項5】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1または2に記載のモータドライバ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータドライバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
モータドライバ回路は、モータのコイルと接続されるブリッジ回路を備える。ブリッジ回路は、ハイサイドアームとローサイドアームからなるレグ(Leg)を備える。ハイサイドアームおよびローサイドアームは、並列に接続されたパワートランジスタおよびフライホイルダイオードを備える。
【0003】
各レグは、三つの状態、すなわち、ハイサイドトランジスタがオン、ローサイドトランジスタがオフであるハイ出力状態と、ハイサイドトランジスタがオフ、ローサイドトランジスタがオンであるロー出力状態と、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが両方オフであるハイインピーダンス状態と、が切替可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6208504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイサイドトランジスタとしてNチャンネルトランジスタを用いる場合、ハイサイドトランジスタをオンするためには、そのゲートに、ブリッジ回路の入力電圧より高いゲート電圧を印加する必要がある。
【0006】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、Nチャンネルのハイサイドトランジスタを高効率で駆動可能なドライバ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、モータドライバ回路に関する。モータドライバ回路は、ハイサイドトランジスタのオン、オフを指示する制御信号を生成するロジック回路と、制御信号に応じてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、を備える。ハイサイドドライバは、ハイサイドトランジスタのゲート電圧もしくはゲートソース間電圧である検出電圧をしきい値と比較し、検出電圧がしきい値より低くなると、検出信号をアサートする電圧監視回路と、制御信号がハイサイドトランジスタのオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して、または制御信号がオン状態であるときの検出信号のアサートに応答して、所定時間の測定を開始するタイマー回路と、タイマー回路が所定時間を測定している間アクティブとなり、クロック信号に応じて昇圧電圧を発生し、ハイサイドトランジスタのゲートに供給するチャージポンプ回路と、制御信号がハイサイドトランジスタのオフを指示するときにハイサイドトランジスタのゲートの電圧を低下させるターンオフ回路と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、Nチャンネルのハイサイドトランジスタを高効率で駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、比較技術に係るモータドライバ回路の回路図である。
図2図2は、図1のモータドライバ回路の動作波形図である。
図3図3は、実施形態1に係るモータドライバ回路の回路図である。
図4図4は、図3のモータドライバ回路の動作波形図である。
図5図5は、実施形態2に係るモータドライバ回路の回路図である。
図6図6は、チャージポンプ回路の構成例を示す回路図である。
図7図7は、図5のモータドライバ回路の動作波形図である。
図8図8は、実施形態3に係るモータドライバ回路の回路図である。
図9図9は、図8のモータドライバ回路の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係るモータドライバ回路は、ハイサイドトランジスタのオン、オフを指示する制御信号を生成するロジック回路と、制御信号に応じてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、を備える。ハイサイドドライバは、ハイサイドトランジスタのゲート電圧もしくはゲートソース間電圧である検出電圧をしきい値と比較し、検出電圧がしきい値より低くなると、検出信号をアサートする電圧監視回路と、制御信号がハイサイドトランジスタのオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して、または制御信号がオン状態であるときの検出信号のアサートに応答して、所定時間の測定を開始するタイマー回路と、タイマー回路が所定時間を測定している間アクティブとなり、クロック信号に応じて昇圧電圧を発生し、ハイサイドトランジスタのゲートに供給するチャージポンプ回路と、制御信号がハイサイドトランジスタのオフを指示するときにハイサイドトランジスタのゲートの電圧を低下させるターンオフ回路と、を備える。
【0013】
この構成によると、制御信号がオン状態に遷移した後の所定時間、およびハイサイドトランジスタのオン期間中に、ゲート電圧が低下した後の所定時間の間だけ、チャージポンプ回路を動作させ、それ以外の期間はチャージポンプ回路を停止することにより、チャージポンプ回路のスイッチング損失を低減でき、高効率動作が可能となる。
【0014】
一実施形態において、モータドライバ回路は、クロック信号を生成するオシレータと、オシレータの出力ノードとチャージポンプ回路のクロック入力ノードの間に接続された第1スイッチと、をさらに備えてもよい。タイマー回路の出力に応じて、第1スイッチが制御されてもよい。
【0015】
一実施形態において、ターンオフ回路は、ハイサイドトランジスタのゲートと接地の間、またはハイサイドトランジスタのゲートとソースの間に接続された第2スイッチを含んでもよい。
【0016】
一実施形態において、チャージポンプ回路は、基準入力ノードを有し、クロック信号に応じて、基準入力ノードに供給された電圧よりも所定電圧幅高い電圧を出力可能に構成され、モータドライバ回路は、チャージポンプ回路の基準入力ノードとハイサイドトランジスタのドレインの間に接続された第3スイッチをさらに備えてもよい。第3スイッチは、制御信号がオン状態に遷移するとターンオンし、その後遅れて、タイマー回路が所定時間の測定を開始してもよい。これにより、ハイサイドトランジスタを高速にターンオンさせることができ、またチャージポンプ回路のスイッチング回数を減らせるため、消費電力をさらに削減できる。
【0017】
一実施形態において、モータドライバ回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0018】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
本明細書において、「部材Aが、部材Bに接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0020】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0021】
また本明細書に示される波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0022】
実施形態に係るモータドライバ回路について説明する前に、比較技術に係るモータドライバ回路を説明する。
【0023】
図1は、比較技術に係るモータドライバ回路100Rの回路図である。
【0024】
モータドライバ回路100Rは、インバータ回路のレグ102、オシレータ110、ロジック回路120、ハイサイドドライバ130R、ローサイドドライバ160を備える。出力ピンOUTには、駆動対象のモータのコイルLが接続される。電源ピンVCCには、電源電圧VCCが供給され、接地ピンGNDは接地される。
【0025】
レグ102は、上アームであるハイサイドトランジスタM1と、下アームであるローサイドトランジスタM2と、を含む。
【0026】
オシレータ110は、クロック信号CLKを生成する。クロック信号CLKは、モータドライバ回路100Rのシステムクロックであってもよく、ロジック回路120に供給される。
【0027】
ロジック回路120は、入力信号INに応じて、ハイサイドトランジスタM1のオン、オフを指示する制御信号CTRLHを生成する。またロジック回路120は、入力信号INに応じて、ローサイドトランジスタM2のオン、オフを指示する制御信号CTRLLを生成する。
【0028】
ハイサイドドライバ130Rは、制御信号CTRLHに応じてハイサイドトランジスタM1を駆動する。ローサイドドライバ160は、制御信号CTRLLに応じてローサイドトランジスタM2を駆動する。
【0029】
ハイサイドドライバ130Rは、ターンオン回路140Rおよびターンオフ回路150を含む。ターンオン回路140Rは、チャージポンプ回路142、第1スイッチSW1を含む。チャージポンプ回路142は、クロック入力ノードclkinに供給されるクロック信号Vclkinに応じてチャージポンプ動作を行い、昇圧電圧VCPを発生する。昇圧電圧VCPは、ハイサイドトランジスタM1のゲートに供給される。チャージポンプ回路142は、2倍昇圧あるいは3倍昇圧のチャージポンプ回路を用いてもよいし、電圧加算型のチャージポンプ回路を用いてもよい。
【0030】
第1スイッチSW1は、チャージポンプ回路142のクロック入力ノードclkinと、オシレータ110の出力ノードの間に設けられる。
【0031】
制御信号CTRLHは、ハイサイドオン信号HONと、ハイサイドオフ信号HOFFを含む。ハイサイドオン信号HONは、ハイサイドトランジスタM1のオン期間においてアサート(たとえばハイ)される信号であり、ローサイドオン信号LONは、ハイサイドトランジスタM1のオフ期間においてアサート(たとえばハイ)される信号である。
【0032】
第1スイッチSW1は、ハイサイドオン信号HONがアサートされる期間、オンとなる。これによりチャージポンプ回路142がチャージポンプ動作を行い、昇圧電圧VCPが、ハイサイドトランジスタM1のゲートに供給され、ハイサイドトランジスタM1がオン状態となる。
【0033】
ターンオフ回路150は、制御信号CTRLHがハイサイドトランジスタM1のオフを指示するときにハイサイドトランジスタM1のゲートの電圧Vgateを低下させる。ターンオフ回路150は、ハイサイドオフ信号HOFFがアサートされる期間、オンとなる第2スイッチSW2を含む。第2スイッチSW2は、ハイサイドトランジスタM1のゲートと接地の間に接続される。スイッチSW2がオンの期間、ハイサイドトランジスタM1のゲート容量の電荷が放電され、ゲート電圧Vgateが低下してハイサイドトランジスタM1がオフ状態となる。
【0034】
以上がモータドライバ回路100Rの構成である。続いてその動作を説明する。図2は、図1のモータドライバ回路100Rの動作波形図である。入力信号INがハイの期間、ハイサイドオン信号HONがハイとなり、第1スイッチSW1がオンとなる。これにより、クロック信号CLKが、チャージポンプ回路142のクロック入力ノードclkinに供給される。チャージポンプ回路142はクロック信号Vclkinに応じてチャージポンプ動作を行い、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateを、ハイサイドトランジスタM1のターンオンのしきい値電圧Vthより高い電圧レベルVgatemaxまで上昇させる。これによりハイサイドトランジスタM1がターンオンする。このしきい値電圧Vthは、以下の式で表される。
th=VCC+Vgs(th)
gs(th)はMOSFETのゲートしきい値電圧である。
【0035】
ハイサイドオン信号HONがハイである期間、チャージポンプ回路142のクロック入力ノードclkinには、クロック信号Vclkinが供給されており、チャージポンプ回路142はスイッチングし続ける。
【0036】
入力信号INがローとなると、ハイサイドオフ信号HOFFがハイとなり、第1スイッチSW1がオフ、ターンオフ回路150がオンとなる。これにより、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateは0Vまで低下し、ハイサイドトランジスタM1がターンオフする。
【0037】
以上がモータドライバ回路100Rの動作である。このモータドライバ回路100Rでは、ハイサイドトランジスタM1がオンの期間、チャージポンプ回路142がスイッチングし続ける。そのため、スイッチング損失が発生し、モータドライバ回路100の消費電力が大きくなるという問題がある。
【0038】
以下で説明するいくつかの実施形態に係るモータドライバ回路100では、この問題が解決される。
【0039】
(実施形態1)
図3は、実施形態1に係るモータドライバ回路100Aの回路図である。モータドライバ回路100Aのハイサイドドライバ130Aは、ターンオン回路140Aおよびターンオフ回路150を備える。モータドライバ回路100Aは、ひとつの半導体基板に集積化されたIC(Integrated Circuit)である。インバータの相数は特に限定されず、単相であってもよいし、多相(たとえば3相)であってもよい。
【0040】
ターンオン回路140Aは、第1スイッチSW1、チャージポンプ回路142、タイマー回路144、電圧監視回路146を備える。
【0041】
電圧監視回路146は、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateもしくはゲートソース間電圧Vgsである検出電圧Vdetを監視する。電圧監視回路146は、検出電圧Vdetをしきい値Vgateminと比較し、検出電圧Vdetがしきい値Vgateminより低くなると、電圧低下検出信号Sdetをアサートする。しきい値Vgateminは、しきい値電圧Vthより高く定められる。
【0042】
タイマー回路144は、ハイサイド制御信号CTRLH(ハイサイドオン信号HON)がハイサイドトランジスタM1のオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して所定時間TTIMER1を時間測定する。またタイマー回路144は、ハイサイド制御信号HONがオン状態であるときの検出信号Sdetのアサートに応答して、所定時間TTIMER2の測定を開始する。所定時間
【0043】
チャージポンプ回路142は、タイマー回路144が所定時間TTIMER1、TTIMER2測定している間アクティブとなり、クロック信号Vclkinに応じて昇圧電圧VCPを発生し、ハイサイドトランジスタM1のゲートに供給する。チャージポンプ回路142は、タイマー回路144による所定時間TTIMERの測定終了後、ディセーブルとなる。
【0044】
具体的にはタイマー回路144は、所定時間TTIMERを測定している間、制御信号S1をアサート(たとえばハイ)して第1スイッチSW1をオン状態とし、所定時間TTIMERの経過後に制御信号S1をネゲート(たとえばロー)して第1スイッチSW1をオフ状態とする。その結果、所定時間TTIMERの間、チャージポンプ回路142にクロック信号Vclkinが供給され、その後、クロック信号Vclkinの供給が停止する。
【0045】
所定時間TTIMERは、チャージポンプ回路142の出力電圧VCPがその最大レベルVgatemaxに到達するまでの時間より長く定めるとよい。最大レベルVgatemaxは、上述のしきい値Vth=Vcc+Vgs(th)より高く定められる。
【0046】
以上がモータドライバ回路100Aの構成である。続いてその動作を説明する。図4は、図3のモータドライバ回路100Aの動作波形図である。
【0047】
時刻tに制御入力INがハイに遷移すると、ハイサイドオン信号HONがオンとなる。ハイサイドオン信号HONの遷移をトリガーとして、タイマー回路144がタイマー動作を開始する。そして、時刻t~tの間の所定時間TTIMER1の間、第1スイッチSW1がオンとなる。第1スイッチSW1がオンの間、チャージポンプ回路142がチャージポンプ動作を行い、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateがその最大レベルVgatemaxまで上昇する。所定時間TTIMER1が経過すると、第1スイッチSW1がオフとなり、チャージポンプ回路142が停止する。
【0048】
時刻tに、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateが何らかの原因で低下し、ゲート電圧Vgateが最小レベルVgateminを下回ると、電圧低下検出信号Sdetがアサートされる。電圧低下検出信号Sdetのアサートに応答して、タイマー回路144がタイマー動作を再開する。そして、時刻t~tの間の所定時間TTIMER2の間、第1スイッチSW1が再びオンとなる。第1スイッチSW1がオンの間、チャージポンプ回路142がチャージポンプ動作を行い、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateがその最大レベルVgatemaxまで上昇する。所定時間TTIMER2が経過すると、第1スイッチSW1がオフとなり、チャージポンプ回路142が停止する
【0049】
以上がモータドライバ回路100Aの動作である。モータドライバ回路100Aでは、入力信号INがハイに遷移してから、タイマー時間TTIMER1に応じて決まる充電期間TCHGの間だけ、チャージポンプ回路142動作し、充電期間TCHGの経過後は、チャージポンプ回路142の動作は停止する。これにより比較技術に比べてチャージポンプ回路142のスイッチング損失を減らすことができ、効率を改善できる。
【0050】
また、ハイサイドトランジスタM1がターンオンした後、何らかの原因によってそのゲート電圧Vgateが低下した場合には、タイマー回路144を再び動作させることで、チャージポンプ回路142を動作させ、ゲート電圧Vgateを上昇させることができる。
【0051】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係るモータドライバ回路100Bの回路図である。このモータドライバ回路100Bにおいて、ハイサイドドライバ130Bは、第3スイッチSW3をさらに備える。
【0052】
チャージポンプ回路142Bは電圧加算型のチャージポンプ回路であり、クロック入力clkinに加えて、基準入力ノードrefinを備える。チャージポンプ回路142Bは、クロック信号Vclkinに応じて、基準入力ノードrefinに供給された電圧Vrefよりも所定電圧幅ΔV高い昇圧電圧VCPを出力可能に構成される。
CP=Vref+ΔV
【0053】
第3スイッチSW3は、VCCピンすなわちハイサイドトランジスタM1のドレインと、チャージポンプ回路142Bの基準入力ノードrefinと、の間に接続される。
【0054】
ロジック回路120Bが生成するハイサイド制御信号CTRLHは、2つのハイサイドオン信号HON1,HON2およびハイサイドオフ信号HOFFを含む。
【0055】
ロジック回路120Bは、制御入力INがハイサイドトランジスタM1のオンを指示するレベルに遷移すると、第1ハイサイドオン信号HON1をアサートする。第1ハイサイドオン信号HON1のアサートにより、第3スイッチSW3がオンとなる。
【0056】
ロジック回路120Bは、第1ハイサイドオン信号HON1をアサートした後、所定の遅延時間τdの経過後に、第2ハイサイドオン信号HON2をアサートする。第2ハイサイドオン信号HON2は、タイマー回路144Bに入力される。タイマー回路144Bは、第2ハイサイドオン信号HON2のアサートに応答して、所定時間TTIMERを測定し、測定中に制御信号S1をアサートして第1スイッチSW1をオンする。
【0057】
またタイマー回路144Bは、ハイサイドトランジスタM1のオン期間において、電圧低下検出信号Sdetがアサートされると、所定時間TTIMER2を測定し、測定中に制御信号S1をアサートして第1スイッチSW1をオンする。
【0058】
図6は、チャージポンプ回路142Bの構成例を示す回路図である。チャージポンプ回路142Bは、バッファBUF1,BUF2、フライングキャパシタCf1,Cf2、トランジスタM11~M14、出力キャパシタ(平滑化キャパシタ)Csmを備える。
【0059】
バッファBUF1,BUF2はインバータであり、電源電圧Vddが供給される。バッファBUF1は、クロック入力Vclkinに応じて、振幅がVddである第1パルス信号Vp1を、第1ラインL1に発生する。またバッファBUF2は、バッファBUF1の出力に応じて、振幅がVddである第2パルス信号Vp2を、第2ラインL2に発生する。第1パルス信号Vp1と第2パルス信号Vp2は互いに逆相となる。
【0060】
第1フライングキャパシタCf1の第1端E1は、第1ラインL1と接続され、第2フライングキャパシタCf2の第1端E1は、第2ラインL2と接続される。第1トランジスタM11は、基準ラインLrefと第1フライングキャパシタCf1の第2端E2の間に接続される。第2トランジスタM12は、基準ラインLrefと第2フライングキャパシタCf2の第2端E2の間に接続される。第3トランジスタM13は、出力ラインLoutと第1フライングキャパシタCf1の第2端E2の間に接続される。第4トランジスタM14は、出力ラインLoutと第2フライングキャパシタCf2の第2端E2の間に接続される。第1トランジスタM11および第3トランジスタM13それぞれのゲートは、第2フライングキャパシタCf2の第2端E2と接続される。第2トランジスタM12および第4トランジスタM14それぞれのゲートは、第1フライングキャパシタCf1の第2端E2と接続される。
【0061】
このチャージポンプ回路142Bの出力VCPは、
CP=Vref+VDD
で表される。以上がチャージポンプ回路142Bの構成である。
【0062】
図7は、図5のモータドライバ回路100Bの動作波形図である。
【0063】
時刻tに入力信号INがハイとなると、第1ハイサイドオン信号HON1がハイとなり、第3スイッチSW3がターンオンする。これにより、チャージポンプ回路142Bの基準入力ノードrefinに電圧Vccが供給され、チャージポンプ回路142Bの出力電圧は、電圧Vccまで速やかに上昇する。
【0064】
時刻tから、所定の遅延時間τdの経過後の時刻tに、第2ハイサイドオン信号HON2がハイとなり、タイマー回路144Bのタイマー動作がスタートする。タイマー回路144Bによる時間TTIMER1の測定中、制御信号S1がハイとなる。これによりチャージポンプ回路142Bのクロック入力ノードclkinに、クロック信号Vclkinが供給され、チャージポンプ回路142Bが動作する。チャージポンプ動作により、チャージポンプ回路142Bの出力電圧VCPは、Vccを始点として最大レベルVgatemaxまで上昇する。その後、時刻tに制御信号S1がローとなり、第1スイッチSW1がオフとなり、チャージポンプ回路142Bが停止する。
【0065】
以上がモータドライバ回路100Bの動作である。このモータドライバ回路100Bによれば、時刻t~tの期間において、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateを、電源電圧Vccまで速やかに上昇させ、その後、チャージポンプ動作によって最大レベルVgatemaxまで上昇させる。これにより、ハイサイドトランジスタM1を実施形態1に比べて短時間でターンオンさせることができる。また、チャージポンプ回路142Bがチャージポンプ動作する期間を短くできるため、消費電力をさらに削減できる。
【0066】
(実施形態3)
実施形態2では、時間τdをロジック回路120がカウントしたが、時間τdを、タイマー回路144Cによってカウントするようにしてもよい。
【0067】
図8は、実施形態3に係るモータドライバ回路100Cの回路図である。実施形態3では、タイマー回路144Cに、制御信号HONが供給される。タイマー回路144Cは、制御信号HONがハイに遷移した後、所定時間τdの経過後に、制御信号S1をハイとして第1スイッチSW1をオンする。そして第1スイッチSW1をオンした後、所定時間TTIMER1の経過後に、制御信号S1をローとして第1スイッチSW1をオフする。
【0068】
図9は、図8のモータドライバ回路100Cの動作波形図である。実施形態3に係るモータドライバ回路100Cによれば、実施形態2のモータドライバ回路100Bと同様の効果を得ることができる。
【0069】
(変形例)
続いて、いくつかの変形例を説明する。
【0070】
(変形例1)
ターンオフ回路150の第2スイッチSW2は、ハイサイドトランジスタM1のゲートとソースの間に設けてもよい。
【0071】
(変形例2)
実施形態では、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2は、モータドライバ回路100に内蔵されていたが、それらは外付けされるディスクリート素子であってもよい。ハイサイドトランジスタM1、ローサイドトランジスタM2がディスクリート部品である場合、ゲート容量に応じて、充電期間の長さを調節できることが好ましく、実施形態1,2に係るモータドライバ回路100A,100Bに関しては、タイマー回路の時間を、外部から設定できるようにしてもよい。
【0072】
(変形例3)
実施形態では、第1スイッチSW1のオン、オフによって、チャージポンプ回路142へのクロック信号の供給、停止を制御したが本開示はそれに限定されない。ロジック回路120のためのクロックを生成するオシレータと、チャージポンプ回路のためのクロックを生成するオシレータとが独立している場合、充電制御回路138は、チャージポンプ回路用のオシレータのオン、オフを制御してもよい。
【0073】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0074】
(項目1)
ハイサイドトランジスタのオン、オフを指示する制御信号を生成するロジック回路と、
前記制御信号に応じて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、
を備え、
前記ハイサイドドライバは、
前記ハイサイドトランジスタのゲート電圧もしくはゲートソース間電圧である検出電圧をしきい値と比較し、前記検出電圧が前記しきい値より低くなると、検出信号をアサートする電圧監視回路と、
前記制御信号が前記ハイサイドトランジスタのオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して、または前記制御信号がオン状態であるときの前記検出信号のアサートに応答して、所定時間の測定を開始するタイマー回路と、
前記タイマー回路が前記所定時間を測定している間アクティブとなり、クロック信号に応じて昇圧電圧を発生し、前記ハイサイドトランジスタのゲートに供給するチャージポンプ回路と、
を備える、モータドライバ回路。
【0075】
(項目2)
前記クロック信号を生成するオシレータと、
前記オシレータの出力ノードと前記チャージポンプ回路のクロック入力ノードの間に接続された第1スイッチと、
をさらに備え、前記タイマー回路の出力に応じて、前記第1スイッチが制御される、項目1に記載のモータドライバ回路。
【0076】
(項目3)
前記ターンオフ回路は、前記ハイサイドトランジスタのゲートと接地の間、または前記ハイサイドトランジスタのゲートとソースの間に接続された第2スイッチを含む、項目1または2に記載のモータドライバ回路。
【0077】
(項目4)
前記チャージポンプ回路は、基準入力ノードを有し、前記クロック信号に応じて、前記基準入力ノードに供給された電圧よりも所定電圧幅高い電圧を出力可能に構成され、
前記モータドライバ回路は、
前記チャージポンプ回路の前記基準入力ノードと前記ハイサイドトランジスタのドレインの間に接続された第3スイッチをさらに備え、
前記第3スイッチは、前記制御信号が前記オン状態に遷移するとターンオンし、その後遅れて、前記タイマー回路が前記所定時間の測定を開始する、項目1または2に記載のモータドライバ回路。
【0078】
(項目5)
ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目1から4のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【符号の説明】
【0079】
100 モータドライバ回路
M1 ハイサイドトランジスタ
M2 ローサイドトランジスタ
110 オシレータ
120 ロジック回路
130 ハイサイドドライバ
140 ターンオン回路
142 チャージポンプ回路
144 タイマー回路
146 電圧監視回路
150 ターンオフ回路
160 ローサイドドライバ
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9