(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140968
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】チャージポンプ回路およびモータドライバ回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20241003BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241003BHJP
【FI】
H02M3/07
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052367
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】菅本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】保地 滉介
(72)【発明者】
【氏名】木村 鈴之助
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB02
5H730DD04
5H730FG01
5H770BA01
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770DA44
5H770FA01
5H770GA07
(57)【要約】
【課題】チャージポンプ回路のフライングキャパシタに要求される耐圧を下げる。
【解決手段】ドライバ回路320は、クロック信号CLKと同期して、相補的な第1パルス信号Vp1および第2パルス信号Vp2を生成し、第1フライングキャパシタCf1および第2フライングキャパシタCf2に印加する。第1パルス信号Vp1および第2パルス信号Vp2のハイレベルは、第1電圧V1であり、それらのローレベルは、第1電圧V1よりも所定電圧幅ΔV低く、0Vより高い第2電圧V2である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧を受ける入力ラインと、
出力ラインと、
第1端および第2端を有する第1フライングキャパシタと、
第1端および第2端を有する第2フライングキャパシタと、
第1電極が前記出力ラインと接続され、第2電極が前記第1フライングキャパシタの前記第2端と接続され、制御電極が前記第2フライングキャパシタの前記第2端と接続された第1トランジスタと、
第1電極が前記出力ラインと接続され、第2電極が前記第2フライングキャパシタの前記第2端と接続され、制御電極が前記第1フライングキャパシタの前記第2端と接続された第2トランジスタと、
第1電極が前記入力ラインと接続され、第2電極が前記第1フライングキャパシタの前記第2端と接続され、制御電極が前記第2フライングキャパシタの前記第2端と接続された第3トランジスタと、
第1電極が前記入力ラインと接続され、第2電極が前記第2フライングキャパシタの前記第2端と接続され、制御電極が前記第1フライングキャパシタの前記第2端と接続された第4トランジスタと、
クロック信号と同期して前記第1フライングキャパシタの前記第1端に、前記第1電圧をハイ、前記第1電圧よりも所定電圧幅低い第2電圧をローとする第1パルス電圧を印加するとともに、前記第2フライングキャパシタの前記第1端に、前記第1電圧をハイ、前記第2電圧をローとし、前記第1パルス電圧と逆相の第2パルス電圧を印加するドライバ回路と、
を備え、ひとつの半導体基板に集積化された、チャージポンプ回路。
【請求項2】
前記ドライバ回路は、
前記第1電圧よりも前記所定電圧幅低い第2電圧を生成する電圧源と、
上側電源端子が前記入力ラインと接続され、下側電源端子が前記電圧源の出力と接続される第1インバータと、
上側電源端子が前記入力ラインと接続され、下側電源端子が前記電圧源の出力と接続される第2インバータと、
を含む、請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項3】
前記電圧源は、
出力ノードと、
前記入力ラインと前記出力ノードの間に設けられたツェナーダイオードと、
を含む、請求項2に記載のチャージポンプ回路。
【請求項4】
前記電圧源は、前記入力ラインと前記出力ノードの間に前記ツェナーダイオードと直列に接続されたダイオードをさらに含む、請求項3に記載のチャージポンプ回路。
【請求項5】
前記電圧源は、リニアレギュレータを含む、請求項2に記載のチャージポンプ回路。
【請求項6】
ハイサイドトランジスタのオン、オフを指示する制御信号を生成するロジック回路と、
前記制御信号に応じて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、
を備え、
前記ハイサイドドライバは、
前記出力ラインが前記ハイサイドトランジスタのゲートと接続されており、クロック信号に応じて昇圧電圧を発生し、前記ハイサイドトランジスタの前記ゲートに供給する請求項1から5のいずれかに記載のチャージポンプ回路と、
前記制御信号が前記ハイサイドトランジスタのオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して、前記チャージポンプ回路を動作させる充電制御回路と、
を備える、モータドライバ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チャージポンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路において、電源電圧より高い電圧が必要な場合、チャージポンプ回路が利用される。チャージポンプ回路は、フライングキャパシタに電荷を蓄え、蓄えた電荷を出力キャパシタに転送する動作を繰り返すことにより、電源電圧よりも高い電圧を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フライングキャパシタを外付けのチップ部品とすると、アプリケーション回路の部品点数が増加し、コストアップの要因となる。また半導体集積回路には、フライングキャパシタを接続するためのパッドや端子を設ける必要があるため、チップ面積の増加の原因となる。
【0005】
フライングキャパシタを半導体集積回路に内蔵する場合、キャパシタには大きな耐圧が必要となる。この場合、高耐圧のキャパシタを形成可能なプロセスを採用する必要がある。
【0006】
あるいは、低耐圧のキャパシタを直列に接続して耐圧をかせぐ方法もあるが、この場合、キャパシタの面積が大きくなる。たとえば1pFのキャパシタが必要である場合には、2pFのキャパシタを2個、直列に接続する必要があり、キャパシタの面積は4倍となる。
【0007】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、キャパシタに要求される耐圧を下げることが可能なチャージポンプ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある態様はチャージポンプ回路に関する。チャージポンプ回路は、第1電圧を受ける入力ラインと、出力ラインと、第1端が入力ラインと接続された第1フライングキャパシタと、第1端が入力ラインと接続された第2フライングキャパシタと、第1電極が出力ラインと接続され、第2電極が第1フライングキャパシタの第2端と接続され、制御電極が第2フライングキャパシタの第2端と接続された第1トランジスタと、第1電極が出力ラインと接続され、第2電極が第2フライングキャパシタの第2端と接続され、制御電極が第1フライングキャパシタの第2端と接続された第2トランジスタと、第1電極が入力ラインと接続され、第2電極が第1フライングキャパシタの第2端と接続され、制御電極が第2フライングキャパシタの第2端と接続された第3トランジスタと、第1電極が入力ラインと接続され、第2電極が第2フライングキャパシタの第2端と接続され、制御電極が第1フライングキャパシタの第2端と接続された第4トランジスタと、クロック信号と同期して第1フライングキャパシタの第1端に、第1電圧をハイ、第1電圧よりも所定電圧幅低い第2電圧をローとする第1パルス電圧を印加するとともに、第2フライングキャパシタの第1端に、第1電圧をハイ、第2電圧をローとし、第1パルス電圧と逆相の第2パルス電圧を印加するドライバ回路と、を備え、ひとつの半導体基板に集積化される。
【0009】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある態様によれば、フライングキャパシタに必要とされる耐圧を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係るチャージポンプ回路を備える半導体集積回路の回路図である。
【
図2】
図2は、
図1のチャージポンプ回路の第1状態φ1を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1のチャージポンプ回路の第2状態φ2を示す図である。
【
図4】
図4は、ドライバ回路の構成例を示す回路図である。
【
図5】
図5は、ドライバ回路の別の構成例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、チャージポンプ回路を備えるモータドライバ回路の回路図である。
【
図7】
図7は、
図6のモータドライバ回路の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
一実施形態に係るチャージポンプ回路は、第1電圧を受ける入力ラインと、出力ラインと、第1端が入力ラインと接続された第1フライングキャパシタと、第1端が入力ラインと接続された第2フライングキャパシタと、第1電極が出力ラインと接続され、第2電極が第1フライングキャパシタの第2端と接続され、制御電極が第2フライングキャパシタの第2端と接続された第1トランジスタと、第1電極が出力ラインと接続され、第2電極が第2フライングキャパシタの第2端と接続され、制御電極が第1フライングキャパシタの第2端と接続された第2トランジスタと、第1電極が入力ラインと接続され、第2電極が第1フライングキャパシタの第2端と接続され、制御電極が第2フライングキャパシタの第2端と接続された第3トランジスタと、第1電極が入力ラインと接続され、第2電極が第2フライングキャパシタの第2端と接続され、制御電極が第1フライングキャパシタの第2端と接続された第4トランジスタと、クロック信号と同期して第1フライングキャパシタの第1端に、第1電圧をハイ、第1電圧よりも所定電圧幅低い第2電圧をローとする第1パルス電圧を印加するとともに、第2フライングキャパシタの第1端に、第1電圧をハイ、第2電圧をローとし、第1パルス電圧と逆相の第2パルス電圧を印加するドライバ回路と、を備え、ひとつの半導体基板に集積化される。
【0014】
この構成によると、フライングキャパシタの両端間には、所定電圧幅に相当する電圧が印加される。所定電圧幅は電源電圧よりも小さいため、フライングキャパシタに必要とされる耐圧を小さくできる。
【0015】
一実施形態において、ドライバ回路は、第1電圧よりも所定電圧幅低い第2電圧を生成する電圧源と、上側電源端子が入力ラインと接続され、下側電源端子が電圧源の出力と接続される第1インバータと、上側電源端子が入力ラインと接続され、下側電源端子が電圧源の出力と接続される第2インバータと、を含んでもよい。
【0016】
一実施形態において、電圧源は、出力ノードと、入力ラインと出力ノードの間に設けられたツェナーダイオードと、を含んでもよい。この場合、所定電圧幅を、ツェナー電圧に応じて定めることができる。
【0017】
一実施形態において、電圧源は、入力ラインと出力ノードの間にツェナーダイオードと直列に接続されたダイオードをさらに含んでもよい。この場合、所定電圧幅を、ツェナー電圧とダイオードの順方向電圧の組み合わせに応じて定めることができる。
【0018】
一実施形態において、電圧源は、リニアレギュレータを含んでもよい。
【0019】
一実施形態に係るモータドライバ回路は、ハイサイドトランジスタのオン、オフを指示する制御信号を生成するロジック回路と、制御信号に応じてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、を備えてもよい。ハイサイドドライバは、出力ラインがハイサイドトランジスタのゲートと接続されており、クロック信号に応じて昇圧電圧を発生し、ハイサイドトランジスタの前記ゲートに供給する上述のいずれかのチャージポンプ回路と、制御信号がハイサイドトランジスタのオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して、チャージポンプ回路を動作させる充電制御回路と、を備えてもよい。
【0020】
この構成によると、制御信号がオン状態に遷移した後の所定時間、チャージポンプ回路を動作させ、それ以外の期間はチャージポンプ回路を停止することにより、チャージポンプ回路のスイッチング損失を低減でき、高効率動作が可能となる。
【0021】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
本明細書において、「部材Aが、部材Bに接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
また本明細書に示される波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0025】
図1は、実施形態に係るチャージポンプ回路300を備える半導体集積回路400の回路図である。チャージポンプ回路300は、ひとつの半導体基板上に一体集積化されており、半導体集積回路400の機能ブロックの一つである。
【0026】
半導体集積回路400は、チャージポンプ回路300、オシレータ410、負荷回路420を備える。オシレータ410は、クロック信号CLKを生成する。チャージポンプ回路300は、クロック信号CLKと同期してスイッチング動作し、電源電圧Vccを昇圧して、電源電圧Vccより高い出力電圧VOUTを生成する。出力電圧VOUTは負荷回路420に供給される。
【0027】
チャージポンプ回路300は、クロック入力ノードclkin、基準入力ノードrefin、出力ノードout、入力ライン302、出力ライン304、第1トランジスタM11~第4トランジスタM14、第1フライングキャパシタCf1、第2フライングキャパシタCf2、ドライバ回路320を備える。
【0028】
クロック入力ノードclkinには、オシレータ410からのクロック信号CLKが供給される。基準入力ノードrefinには、第1電圧V1として電源電圧VCCが供給される。入力ライン302は基準入力ノードrefinと接続される。出力ライン304は、出力ノードoutを介して負荷回路420が接続される。第1フライングキャパシタCf1および第2フライングキャパシタCf2はそれぞれ、第1端および第2端を有する。出力ライン304には、出力キャパシタが接続されてもよい。
【0029】
第1トランジスタM11および第2トランジスタM12はPMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタである。第1トランジスタM11は、第1電極(ソース)が出力ライン304と接続され、第2電極(ドレイン)が第1フライングキャパシタCf1の第2端と接続される。第1トランジスタM11の制御電極(ゲート)は、第2フライングキャパシタCf2の第2端と接続される。
【0030】
第2トランジスタM12は、第1電極(ソース)が出力ライン304と接続され、第2電極(ドレイン)が第2フライングキャパシタCf2の第2端と接続される。第2トランジスタM12の制御電極(ゲート)は第1フライングキャパシタCf1の第2端と接続される。
【0031】
第3トランジスタM13および第4トランジスタM14は、NMOSトランジスタである。第3トランジスタM13は、第1電極(ソース)が入力ライン302と接続され、第2電極(ドレイン)が第1フライングキャパシタCf1の第2端と接続される。第3トランジスタM13の制御電極(ゲート)は第2フライングキャパシタCf2の第2端と接続される。
【0032】
第4トランジスタM14は、第1電極(ソース)が入力ライン302と接続され、第2電極(ドレイン)が第2フライングキャパシタCf2の第2端と接続され、制御電極(ゲート)が第1フライングキャパシタCf1の第2端と接続される。
【0033】
ドライバ回路320は、クロック信号CLKと同期して、第1フライングキャパシタCf1の第1端に、第1電圧V1(=Vcc)をハイ、第2電圧V2をローとする第1パルス電圧Vp1を印加する。第2電圧V2は、第1電圧V1よりも所定電圧幅ΔV低い正の電圧である。
V2=V1-ΔV>0
つまり、ΔV<V1が成り立つ。
【0034】
またドライバ回路320は、クロック信号CLKと同期して、第2フライングキャパシタCf2の第1端に、第1電圧V1(=Vcc)をハイ、第2電圧V2をローとし、第1パルス電圧Vp1と逆相の第2パルス電圧Vp2を印加する。
【0035】
ドライバ回路320は、第1インバータ322、第2インバータ324、電圧源326、レベルシフタ328を含む。
【0036】
電圧源326は、入力ライン302の第1電圧V1よりも所定電圧幅ΔV低い第2電圧V2を生成する。
【0037】
レベルシフタ328は、クロック信号CLKを受け、レベルシフトする。
【0038】
第1インバータ322および第2インバータ324それぞれの上側電源端子は入力ライン302と接続され、第1電圧V1が供給される。第1インバータ322および第2インバータ324それぞれの下側電源端子は、電圧源326の出力と接続され、第2電圧V2が供給される。
【0039】
第1インバータ322は、レベルシフト後のクロック信号CLKaを反転し、第1パルス電圧Vp1として第1フライングキャパシタCf1の第1端に印加する。第2インバータ324は、第1インバータ322の出力である第1パルス電圧Vp1を反転し、第2パルス電圧Vp2として第2フライングキャパシタCf2の第1端に印加する。
【0040】
以上が半導体集積回路400の構成である。続いてチャージポンプ回路300の動作を説明する。
【0041】
チャージポンプ回路300は、クロック信号CLKに応じて、第1状態φ1と第2状態φ2を交互に繰り返す。
【0042】
図2は、
図1のチャージポンプ回路300の第1状態φ1を示す図である。第1状態φ1では、Vp1=V1、Vp2=V2である。またトランジスタM11,M14がオン、トランジスタM12,M13がオフとなる。
【0043】
第4トランジスタM14がオンであるため、第2フライングキャパシタCf2の第2端は、第4トランジスタM14を介して入力ライン302と接続される。したがって、第2フライングキャパシタCf2の両端間には、V1-V2=ΔVが印加され、充電される。
【0044】
一方で、第1フライングキャパシタCf1は、直前の第2状態φ2において充電されており、その両端間電圧は、ΔVとなっている。第1フライングキャパシタCf1の第1端の電位はV1であるから、第1フライングキャパシタCf1の第2端の電位は、V1+ΔVとなる。この電圧V1+ΔVが、第1トランジスタM11を経由して出力ライン304に供給される。
【0045】
図3は、
図1のチャージポンプ回路300の第2状態φ2を示す図である。第2状態φ2では、Vp1=V2、Vp2=V1である。またトランジスタM11,M14がオフ、トランジスタM12,M13がオンとなる。
【0046】
第3トランジスタM13がオンであるため、第1フライングキャパシタCf1の第2端は、第3トランジスタM13を介して入力ライン302と接続される。したがって、第1フライングキャパシタCf1の両端間には、V1-V2=ΔVが印加され、充電される。
【0047】
一方で、第2フライングキャパシタCf2は、直前の第1状態φ1において充電されており、その両端間電圧は、ΔVとなっている。第2フライングキャパシタCf2の第1端の電位はV1であるから、第2フライングキャパシタCf2の第2端の電位は、V1+ΔVとなる。この電圧V1+ΔVが、第2トランジスタM12を経由して出力ライン304に供給される。
【0048】
チャージポンプ回路300は、第1状態φ1と第2状態φ2を交互に繰り返すことにより、出力ライン304に、出力電圧VOUT=V1+ΔVを発生させる。
【0049】
以上がチャージポンプ回路300の動作である。続いてその利点を説明する。
【0050】
チャージポンプ回路300の利点は比較技術との対比によって明確となる。比較技術では、第1インバータ322および第2インバータ324の下側電源端子が接地される。この場合、第1状態φ1、第2状態φ2において、第1フライングキャパシタCf1および第2フライングキャパシタCf2は、第1電圧V1(すなわち電源電圧VCC)で充電される。したがって、第1フライングキャパシタCf1と第2フライングキャパシタCf2の耐圧は、電源電圧VCCにもとづいて定める必要がある。VCC=12Vの場合、第1フライングキャパシタCf1、第2フライングキャパシタCf2には、12V以上の耐圧が要求される。
【0051】
実施形態に戻る。本実施形態では、第1状態φ1、第2状態φ2において、第1フライングキャパシタCf1および第2フライングキャパシタCf2は、第1電圧V1と第2電圧V2の電位差であるΔVで充電される。したがって、第1フライングキャパシタCf1と第2フライングキャパシタCf2の耐圧は、所定電圧幅ΔVにもとづいて定めればよい。ΔV<VCCが成り立つから、第1フライングキャパシタCf1および第2フライングキャパシタCf2に要求される耐圧は、比較技術に比べて小さくできる。
【0052】
図4は、ドライバ回路320の構成例を示す回路図である。第1インバータ322および第2インバータ324の下側電源端子は、定電圧ライン306と接続される。電圧源326は、バッファ329およびツェナーダイオードZD1、抵抗R1を含む。ツェナーダイオードZD1は、入力ライン302とバッファ329の入力の間に接続される。ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧をV
Zとするとき、ノードn1には、電圧Vxが発生する。
Vx=V1-V
Z
バッファ329はたとえばオペアンプを用いたボルテージフォロア回路であり、電流シンク能力を有する。バッファ329によって、電圧V2は、Vxと等しく保たれる。
V2=Vx=V1-V
Z
となる。つまり、所定電圧幅ΔVは、ツェナー電圧V
Zと等しくなる。なお、バッファ329の入力インピーダンスが低い場合、抵抗R1は省略できる。
【0053】
所定電圧幅ΔVを、ツェナー電圧VZより大きくしたい場合、ツェナーダイオードZD1と直列に、1個または複数のダイオードD1を追加すればよい。ダイオードD1の個数をnとするとき、
ΔV=VZ+n×Vf
となる。VfはダイオードD1の順方向電圧である。
【0054】
図5は、ドライバ回路320の別の構成例を示す回路図である。
図5のドライバ回路320は、
図4のドライバ回路320のバッファ329を、PMOSトランジスタMP1に置換したものである。トランジスタMP1はソースフォロア回路を形成しており、定電圧ライン306の電圧V2は、
V2=Vn1+Vth(p)
となる。Vth(p)はPMOSトランジスタのゲートしきい値電圧である。
【0055】
V2=V1-V
Z+Vth(p)
が成り立つから、所定電圧幅ΔVは、V
Z-Vth(p)となる。
図5においても、ツェナーダイオードZD1と直列に、1個または複数のダイオードD1を追加してもよい。
【0056】
電圧源326は、その他の構成のシリーズレギュレータであってもよいし、シャントレギュレータであってもよい。
【0057】
続いてチャージポンプ回路300の用途を説明する。チャージポンプ回路300は、モータドライバ回路に利用することができる。
【0058】
図6は、チャージポンプ回路300を備えるモータドライバ回路100Bの回路図である。モータの相数は特に限定されず、単相であってもよいし、多相(たとえば3相)であってもよく、レグの個数は、モータに応じて設計される。
【0059】
モータドライバ回路100Bは、インバータ回路のレグ102、オシレータ110、ロジック回路120、ハイサイドドライバ130B、ローサイドドライバ140を備える。出力ピンOUTには、駆動対象のモータのコイルLが接続される。電源ピンVCCには、電源電圧VCCが供給され、接地ピンGNDは接地される。
【0060】
レグ102は、上アームであるハイサイドトランジスタM1と、下アームであるローサイドトランジスタM2と、を含む。
【0061】
オシレータ110は、クロック信号CLKを生成する。クロック信号CLKは、モータドライバ回路100Bのシステムクロックであってもよく、ロジック回路120に供給される。
【0062】
ロジック回路120は、入力信号INに応じて、ハイサイドトランジスタM1のオン、オフを指示する制御信号CTRLHを生成する。またロジック回路120は、入力信号INに応じて、ローサイドトランジスタM2のオン、オフを指示する制御信号CTRLLを生成する。
【0063】
ハイサイドドライバ130Bは、制御信号CTRLHに応じてハイサイドトランジスタM1を駆動する。ローサイドドライバ140は、制御信号CTRLLに応じてローサイドトランジスタM2を駆動する。
【0064】
ハイサイドドライバ130Bは、チャージポンプ回路132B、充電制御回路138、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、ターンオフ回路136を含む。
【0065】
チャージポンプ回路132Bは、クロック入力ノードclkinに供給されるクロック信号Vclkinに応じてスイッチング動作を行い、昇圧電圧VCPを発生する。昇圧電圧VCPは、ハイサイドトランジスタM1のゲートに供給される。
【0066】
チャージポンプ回路132Bは、実施形態に係るチャージポンプ回路300である。
【0067】
第1スイッチSW1は、チャージポンプ回路132Bのクロック入力ノードclkinと、オシレータ110の出力ノードの間に設けられる。
【0068】
制御信号CTRLHは、ハイサイドオン信号HONと、ハイサイドオフ信号HOFFを含む。ハイサイドオン信号HONは、ハイサイドトランジスタM1のオン期間においてアサート(たとえばハイ)される信号であり、ローサイドオン信号LONは、ハイサイドトランジスタM1のオフ期間においてアサート(たとえばハイ)される信号である。
【0069】
充電制御回路138Bは、ハイサイドオン信号HONにもとづいて、制御信号S1,S2を生成し、第1スイッチSW1および第3スイッチSW3を制御する。第3スイッチSW3は、ハイサイドオン信号HONがアサートされる期間、オンとなる。
【0070】
第1スイッチSW1は、ハイサイドオン信号HONがアサートされる期間中、オンし続けてもよい。あるいは第1スイッチSW1は、ハイサイドオン信号HONがアサートされてから、ある充電期間の間だけ、オン状態となり、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateが十分に高くなった後に、オフとなってもよい。
【0071】
第1スイッチSW1がオンの期間、チャージポンプ回路132のクロック入力ノードclkinにクロック信号CLKが供給され、チャージポンプ回路132がイネーブル状態となり、昇圧電圧VCPが、ハイサイドトランジスタM1のゲートに供給され、ハイサイドトランジスタM1がオン状態となる。
【0072】
好ましくは、充電制御回路138Bは、ハイサイドオン信号HONがアサートされると、直ちに第3スイッチSW3をオン状態とする。第3スイッチSW3は、ハイサイドトランジスタM1のオン期間の間、オンを維持する。充電制御回路138Bは、第3スイッチSW3をターンオンしてから、ある遅延時間TTIMER1の経過後に、第1スイッチSW1をターンオンし、それから所定時間TTIMER2の経過後に、第1スイッチSW1をターンオフする。充電制御回路138Bは、所定時間TTIMER1を測定するタイマー回路を含み、タイマー回路がタイマー動作を行っている間、第1スイッチSW1をオンしてもよい。
【0073】
ターンオフ回路136は、制御信号CTRLHがハイサイドトランジスタM1のオフを指示するときにハイサイドトランジスタM1のゲートの電圧Vgateを低下させる。ターンオフ回路136は、ハイサイドオフ信号HOFFがアサートされる期間、オンとなる第2スイッチSW2を含む。第2スイッチSW2は、ハイサイドトランジスタM1のゲートと接地の間に接続される。スイッチSW2がオンの期間、ハイサイドトランジスタM1のゲート容量の電荷が放電され、ゲート電圧Vgateが低下してハイサイドトランジスタM1がオフ状態となる。
【0074】
図7は、
図6のモータドライバ回路100Bの動作波形図である。
【0075】
時刻t0に入力信号INがハイとなると、制御信号S2がハイとなり、第3スイッチSW3がターンオンする。これにより、チャージポンプ回路132Bの基準入力ノードrefinに電源電圧VCCが供給され、チャージポンプ回路132Bの出力電圧VCPは、電源電圧VCCまで速やかに上昇する。
【0076】
時刻t0から所定時間TTIMER1経過後の時刻t1に、制御信号S1がハイとなり、チャージポンプ回路132Bのクロック入力ノードclkinに、クロック信号Vclkinが供給され、チャージポンプ回路132Bがチャージポンプ動作を開始する。チャージポンプ動作により、チャージポンプ回路132Bの出力電圧VCPは、最大レベルVgatemaxまで上昇する。その後、所定時間TTIMER2の経過後の時刻t2に制御信号S1がオフとなり、チャージポンプ動作が停止する。
【0077】
以上がモータドライバ回路100Bの動作である。このモータドライバ回路100Bによれば、時刻t0~t1の期間において、ハイサイドトランジスタM1のゲート電圧Vgateを、電源電圧VCCまで速やかに上昇させ、その後、チャージポンプ動作によって最大レベルVgatemaxまで上昇させる。これにより、ハイサイドトランジスタM1を短時間でターンオンさせることができる。また、チャージポンプ回路132Bがチャージポンプ動作する期間を短くできるため、消費電力をさらに削減できる。
【0078】
なお、チャージポンプ回路300の用途はモータドライバ回路には限定されず、Nチャンネルのハイサイドトランジスタを駆動するさまざまなドライバ回路に利用することができる。さらに言えば、チャージポンプ回路300の用途は、ハイサイドトランジスタの駆動に限定されるものではなく、電源電圧VCCより高い電圧が必要とされるさまざまな集積回路に利用することができる。
【0079】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0080】
(項目1)
第1電圧を受ける入力ラインと、
出力ラインと、
第1端および第2端を有する第1フライングキャパシタと、
第1端および第2端を有する第2フライングキャパシタと、
第1電極が前記出力ラインと接続され、第2電極が前記第1フライングキャパシタの前記第2端と接続され、制御電極が前記第2フライングキャパシタの前記第2端と接続された第1トランジスタと、
第1電極が前記出力ラインと接続され、第2電極が前記第2フライングキャパシタの前記第2端と接続され、制御電極が前記第1フライングキャパシタの前記第2端と接続された第2トランジスタと、
第1電極が前記入力ラインと接続され、第2電極が前記第1フライングキャパシタの前記第2端と接続され、制御電極が前記第2フライングキャパシタの前記第2端と接続された第3トランジスタと、
第1電極が前記入力ラインと接続され、第2電極が前記第2フライングキャパシタの前記第2端と接続され、制御電極が前記第1フライングキャパシタの前記第2端と接続された第4トランジスタと、
クロック信号と同期して前記第1フライングキャパシタの前記第1端に、前記第1電圧をハイ、前記第1電圧よりも所定電圧幅低い第2電圧をローとする第1パルス電圧を印加するとともに、前記第2フライングキャパシタの前記第1端に、前記第1電圧をハイ、前記第2電圧をローとし、前記第1パルス電圧と逆相の第2パルス電圧を印加するドライバ回路と、
を備え、ひとつの半導体基板に集積化された、チャージポンプ回路。
【0081】
(項目2)
前記ドライバ回路は、
前記第1電圧よりも前記所定電圧幅低い第2電圧を生成する電圧源と、
上側電源端子が前記入力ラインと接続され、下側電源端子が前記電圧源の出力と接続される第1インバータと、
上側電源端子が前記入力ラインと接続され、下側電源端子が前記電圧源の出力と接続される第2インバータと、
を含む、項目1に記載のチャージポンプ回路。
【0082】
(項目3)
前記電圧源は、
出力ノードと、
前記入力ラインと前記出力ノードの間に設けられたツェナーダイオードと、
を含む、項目2に記載のチャージポンプ回路。
【0083】
(項目4)
前記電圧源は、前記入力ラインと前記出力ノードの間に前記ツェナーダイオードと直列に接続されたダイオードをさらに含む、項目3に記載のチャージポンプ回路。
【0084】
(項目5)
前記電圧源は、リニアレギュレータを含む、項目2に記載のチャージポンプ回路。
【0085】
(項目6)
ハイサイドトランジスタのオン、オフを指示する制御信号を生成するロジック回路と、
前記制御信号に応じて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、
を備え、
前記ハイサイドドライバは、
前記出力ラインが前記ハイサイドトランジスタのゲートと接続されており、クロック信号に応じて昇圧電圧を発生し、前記ハイサイドトランジスタの前記ゲートに供給する項目1から5のいずれかに記載のチャージポンプ回路と、
前記制御信号が前記ハイサイドトランジスタのオンを指示するオン状態に遷移したことに応答して、前記チャージポンプ回路を動作させる充電制御回路と、
前記制御信号が前記ハイサイドトランジスタのオフを指示するときに前記ハイサイドトランジスタの前記ゲートの電圧を低下させるターンオフ回路と、
を備える、モータドライバ回路。
【符号の説明】
【0086】
100 モータドライバ回路
M1 ハイサイドトランジスタ
M2 ローサイドトランジスタ
110 オシレータ
120 ロジック回路
130 ハイサイドドライバ
132 チャージポンプ回路
136 ターンオフ回路
138 充電制御回路
140 ローサイドドライバ
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
300 チャージポンプ回路
302 入力ライン
304 出力ライン
M11 第1トランジスタ
M12 第2トランジスタ
M13 第3トランジスタ
M14 第4トランジスタ
Cf1 第1フライングキャパシタ
Cf2 第2フライングキャパシタ
320 ドライバ回路
322 第1インバータ
324 第2インバータ
326 電圧源
328 レベルシフタ
400 半導体集積回路
410 オシレータ
420 負荷回路