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特開2024-140970定電流回路、タイマー回路、ワンショットマルチバイブレータ回路、半導体集積回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140970
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】定電流回路、タイマー回路、ワンショットマルチバイブレータ回路、半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20241003BHJP
   H03K 3/355 20060101ALI20241003BHJP
   H03K 3/011 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G05F1/56 310T
H03K3/355
H03K3/011
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052369
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 尚弘
【テーマコード(参考)】
5H430
5J300
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB12
5H430CC05
5H430EE06
5H430EE17
5H430GG11
5J300AA02
5J300BB04
5J300DD02
5J300DD11
5J300DD15
5J300PP01
5J300QA02
5J300RA03
5J300TB03
5J300UA02
5J300UA12
5J300UA14
5J300UA20
5J300UA31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電源電圧に依存する電流を生成可能な定電流回路を提供する。
【解決手段】定電流回路100において、第1カレントミラー回路CM1は、電源ラインVDDと接地ラインGNDの一方である第1ラインL1と接続される。電源ラインVDDと接地ラインGNDの他方である第2ラインL2と、第1カレントミラー回路CM1の入力ノードとの間には、基準抵抗R1およびゲートドレイン間が接続されたMOSFETである基準トランジスタM1の直列接続回路110が設けられる。第2カレントミラー回路CM2は、第2ラインL2と接続され、基準電流IREFを折り返し、第1電流Iを生成する。定電流回路100は、第1カレントミラー回路CM1から出力される第2電流Iと、第2カレントミラー回路CM1から出力される第1電流Iの差である第3電流Iに応じた電流を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインと接地ラインの一方である第1ラインと接続された第1カレントミラー回路と、
前記電源ラインと前記接地ラインの他方である第2ラインと、前記第1カレントミラー回路の入力ノードとの間に設けられた、抵抗およびゲートドレイン間が接続されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である基準トランジスタの直列接続回路と、
前記第2ラインと接続され、基準電流を折り返し、第1電流を生成する第2カレントミラー回路と、
を備え、
前記第1カレントミラー回路から出力される第2電流と、前記第2カレントミラー回路から出力される前記第1電流の差である第3電流に応じた電流を出力可能に構成された、定電流回路。
【請求項2】
前記第2カレントミラー回路は、前記基準電流を折り返して第4電流を生成し、
前記定電流回路は、
前記第4電流を折り返し、第5電流を生成する第3カレントミラー回路をさらに備え、
前記第5電流と前記第3電流の和である第6電流に応じた電流を出力可能である、請求項1に記載の定電流回路。
【請求項3】
前記第2カレントミラー回路は、前記基準電流を折り返して第7電流を生成し、
前記定電流回路は、
前記第6電流を折り返し、第8電流を生成する第4カレントミラー回路をさらに備え、
前記第7電流と前記第8電流の差である第9電流に応じた電流を出力可能である、請求項2に記載の定電流回路。
【請求項4】
前記第9電流を折り返し、第10電流を生成する第5カレントミラー回路をさらに備え、
前記第10電流に応じた電流を出力可能である、請求項3に記載の定電流回路。
【請求項5】
前記第10電流を折り返し、第11電流を生成する第6カレントミラー回路をさらに備え、
前記第11電流に応じた電流を出力可能である、請求項4に記載の定電流回路。
【請求項6】
キャパシタと、
前記キャパシタを充電する請求項1から5のいずれかに記載の定電流回路と、
前記キャパシタの電圧を受けるインバータと、
を備える、タイマー回路。
【請求項7】
請求項6に記載のタイマー回路を備える、ワンショットマルチバイブレータ回路。
【請求項8】
ヒューズを備えるワンタイムメモリ回路と、
パルス信号を受ける請求項7に記載のワンショットマルチバイブレータ回路を含むトリミング回路と、
を備える、半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定電流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に半導体集積回路は、電源電圧等に依存しない一定の基準電流を生成する基準電流源を備え、この基準電流がコピーされて、半導体集積回路内のさまざまな回路ブロックにバイアス電流として分配される。
【0003】
一般的には、基準電流のコピーにはカレントミラー回路が利用される。カレントミラー回路により生成されるバイアス電流は、電源電圧に依存しないため、多くの用途において好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-073251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、電源電圧に対して所望の依存性をもって変化する電流を生成できると便利な場合もある。
【0006】
本開示はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、電源電圧に依存する電流を生成可能な定電流回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様の定電流回路は、電源ラインと接地ラインの一方である第1ラインと接続された第1カレントミラー回路と、電源ラインと接地ラインの他方である第2ラインと、第1カレントミラー回路の入力ノードとの間に設けられた、抵抗およびゲートドレイン間が接続されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である基準トランジスタの直列接続回路と、第2ラインと接続され、基準電流を折り返し、第1電流を生成する第2カレントミラー回路と、を備える。定電流回路は、第1カレントミラー回路から出力される第2電流と、第2カレントミラー回路から出力される第1電流の差である第3電流に応じた電流を出力可能に構成される。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、電源電圧に依存する電流を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1に係る定電流回路の回路図である。
図2図2は、実施例2に係る定電流回路の回路図である。
図3図3は、実施例3に係る定電流回路の回路図である。
図4図4は、実施例4に係る定電流回路の回路図である。
図5図5は、定電流回路を備えるタイマー回路の回路図である。
図6図6は、定電流回路を備えるワンショットマルチバイブレータ回路の回路図である。
図7図7は、定電流回路の出力電流Iの電源電圧依存性を示す図である。
図8図8は、図7の比較技術(ii)の電流で動作させたときのワンショットマルチバイブレータ回路の動作波形図である。
図9図9は、図7の実施形態(i)の電流で動作させたときのワンショットマルチバイブレータ回路の動作波形図である。
図10図10は、ワンショットマルチバイブレータ回路を備える半導体集積回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
(実施形態の概要)
一実施形態に係る定電流回路は、電源ラインと接地ラインの一方である第1ラインと接続された第1カレントミラー回路と、電源ラインと接地ラインの他方である第2ラインと、第1カレントミラー回路の入力ノードとの間に設けられた、抵抗およびゲートドレイン間が接続されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である基準トランジスタの直列接続回路と、第2ラインと接続され、基準電流IREFを折り返し、第1電流Iを生成する第2カレントミラー回路と、を備える。この定電流回路は、第1カレントミラー回路から出力される第2電流Iと、第2カレントミラー回路から出力される第1電流Iの差である第3電流Iに応じた電流を出力可能に構成される。
【0013】
抵抗に流れる電流Iは、
=(VDD-Vgs1-Vgs2)/R
である。Vgs1は、基準トランジスタのゲートソース間電圧であり、Vgs2は、第1カレントミラー回路の入力側のMOSFETのゲートソース間電圧である。
【0014】
第1カレントミラー回路の電流増幅率をxとすると、第2電流Iは、
=x・I
となる。第2カレントミラー回路の電流増幅率をαとすると、第1電流Iは、
=α・IREF
である。したがって、第3電流Iは、
=I-I=α・IREF-x・I
=α・IREF-x・(VDD-Vgs1-Vgs2)/R
となる。したがって、αおよびxを調節することにより、電源電圧VDDに対して所望の依存性および極性を有する定電流Iを生成できる。
【0015】
一実施形態において、第2カレントミラー回路は、基準電流IREFを折り返して第4電流Iを生成してもよい。定電流回路は、第4電流Iを折り返し、第5電流Iを生成する第3カレントミラー回路をさらに備えてもよい。定電流回路は、第3電流Iと第5電流Iの差である第6電流Iに応じた電流を出力可能であってもよい。
【0016】
一実施形態において、第2カレントミラー回路は、基準電流IREFを折り返して第7電流Iを生成してもよい。定電流回路は、第6電流Iを折り返し、第8電流Iを生成する第4カレントミラー回路をさらに備えてもよい。定電流回路は、第7電流Iと第8電流Iの差である第9電流Iに応じた電流を出力可能であってもよい。
【0017】
一実施形態において、定電流回路は、第9電流Iを折り返し、第10電流I10を生成する第5カレントミラー回路をさらに備えてもよい。定電流回路は、第10電流I10に応じた電流を出力可能であってもよい。
【0018】
一実施形態において、定電流回路は、第10電流I10を折り返し、第11電流I11を生成する第6カレントミラー回路をさらに備えてもよい。定電流回路は、第11電流I11に応じた電流を出力可能であってもよい。
【0019】
一実施形態に係るタイマー回路は、キャパシタと、キャパシタを充電する上述のいずれかの定電流回路と、キャパシタの電圧を受けるインバータと、を備えてもよい。電源電圧に応じてインバータのしきい値が変化する。このしきい値の変化に追従するように、定電流回路の出力電流に電源電圧依存性を持たせることにより、電源電圧によらないタイマー設定が可能となる。
【0020】
一実施形態に係るワンショットマルチバイブレータ回路は、上述のタイマー回路を備えてもよい。これにより、電源電圧によらずに同じパルス幅を出力できる。
【0021】
一実施形態に係る半導体集積回路は、ヒューズを備えるワンタイムメモリ回路と、パルス信号を受ける上述のいずれかのワンショットマルチバイブレータ回路を含むトリミング回路と、を備えてもよい。
【0022】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
(実施形態)
(実施例1)
図1は、実施例1に係る定電流回路100の回路図である。定電流回路100は、基準トランジスタM1、基準抵抗R1、第1カレントミラー回路CM1、第2カレントミラー回路CM2を備える。
【0026】
第1カレントミラー回路CM1は、電源ラインVDDと接地ラインGNDの一方である第1ラインL1と接続される。カレントミラー回路CM1は、NMOSトランジスタM2,M3を含み、電流増幅率(カレントミラー比)xを有する。カレントミラー比は1より大きくてもよいし、1より小さくてもよいし、1であってもよい。
【0027】
基準抵抗R1および基準トランジスタM1を含む直列接続回路110は、電源ラインVDDと接地ラインGNDの他方である第2ラインL2と、第1カレントミラー回路CM1の入力ノードとの間に設けられる。この例では、第1ラインL1は、接地ラインGNDである。第2ラインL2は電源ラインVDDである。基準トランジスタM1は、ゲートドレイン間が結線されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、電圧クランプ素子として機能する。
【0028】
第2カレントミラー回路CM2は、第2ラインL2と接続され、基準電流IREFを折り返し、第1電流Iを生成する。カレントミラー回路CM1は、PMOSトランジスタM4、M5を含み、電流増幅率αを有する。基準電流IREFは、図示しない基準電流源によって生成され、電源電圧によらない一定の電流である。
【0029】
この定電流回路100は、第1カレントミラー回路CM1から出力される第2電流Iと、第2カレントミラー回路CM2から出力される第1電流Iの差である第3電流Iに応じた電流を出力可能に構成される。なお、出力するとは、電流の向きがソース(吐き出し)の場合と、シンク(吸い込み)の場合を含みうる。電流は、ソースの向きを正として表し、シンクの向きを負として表すものとする。
【0030】
トランジスタMN1,MP1それぞれのゲートには、図示しないカスコードバイアスキャパシタ回路によって生成されるバイアス電圧VN,VPが印加される。
【0031】
基準抵抗R1に流れる電流Iは、
=(VDD-Vgs1-Vgs2)/R
である。Vgs1は、基準トランジスタM1のゲートソース間電圧である。Vgs2は、第1カレントミラー回路CM1の入力側のMOSFETのゲートソース間電圧である。
【0032】
第1カレントミラー回路CM1の電流増幅率xを用いて、第2電流Iは、
=x・I
と表される。第2カレントミラー回路CM2の電流増幅率αを用いて、第1電流Iは、
=α・IREF
と表される.したがって、第3電流Iは、
=I-I=α・IREF-x・I
=α・IREF-x・(VDD-Vgs1-Vgs2)/R
となる。したがって、αおよびxを調節することにより、電源電圧VDDに対して所望の依存性および極性を有する定電流Iを生成できる。
【0033】
(実施例2)
図2は、実施例2に係る定電流回路100Aの回路図である。定電流回路100Aは、図1の定電流回路100に加えて、第3カレントミラー回路CM3およびトランジスタMP2、MN2をさらに備える。第2カレントミラー回路CM2は、トランジスタM6をさらに含んでおり、基準電流IREFを折り返して第4電流Iを生成する。基準電流IREFに対する第4電流Iのカレントミラー比(電流増幅器)βを用いると、第4電流Iは、
=β・IREF
と表される。
【0034】
第3カレントミラー回路CM3は、NMOSトランジスタM8,M9を含んでおり、第4電流Iを折り返し、第5電流Iを生成する。第3カレントミラー回路CM3の電流増幅率mを用いると、第5電流Iは、
=m・I=m・β・IREF
と表される。
【0035】
定電流回路100Aは、第3電流Iと第5電流Iの差である第6電流Iに応じた電流を出力可能である。
=I-I=α・IREF-x・I-m・β・IREF
【0036】
(実施例3)
図3は、実施例3に係る定電流回路100Bの回路図である。定電流回路100Bは、図2の定電流回路100Aに加えて、第4カレントミラー回路CM4およびトランジスタMP3、MN3をさらに備える。第2カレントミラー回路CM2は、トランジスタM7をさらに含んでおり、基準電流IREFを折り返して第7電流Iを生成する。基準電流IREFに対する第7電流Iのカレントミラー比(電流増幅器)γを用いると、第7電流Iは、
=γ・IREF
と表される。
【0037】
第4カレントミラー回路CM4は、トランジスタM10,M11を含み、第6電流Iを折り返し、第8電流Iを生成する。第4カレントミラー回路CM4の電流増幅率nを用いると、第8電流Iは、
=n・I
と表される。
【0038】
定電流回路100Bは、第7電流Iと第8電流Iの差である第9電流Iに応じた電流を出力可能である。
=I-I=γ・IREF-n(α・IREF-x・I-m・β・IREF
【0039】
(実施例4)
図4は、実施例4に係る定電流回路100Cの回路図である。定電流回路100Cは、図3の定電流回路100Bに加えて、第5カレントミラー回路CM5、第6カレントミラー回路CM6およびトランジスタMP4、MN4をさらに備える。
【0040】
第5カレントミラー回路CM5は、トランジスタM12,M13を含み、第9電流Iを折り返し、第10電流I10を生成する。第5カレントミラー回路CM5の電流増幅率pを用いると、第10電流I10は、
10=p・I
と表される。
【0041】
第6カレントミラー回路CM6は、トランジスタM14,M15を含み、第10電流I10を折り返し、第11電流I11を生成する。第6カレントミラー回路CM6の電流増幅率rを用いると、第11電流I11は、
11=r・I10=r・p・I
と表される。
【0042】
定電流回路100Cは、第11電流I11を出力可能である。
11=r・p・{γ・IREF-n(α・IREF-x・I-m・β・IREF)}
【0043】
続いて定電流回路100~100C(100と総称する)の用途を説明する。
【0044】
図5は、定電流回路100を備えるタイマー回路200の回路図である。タイマー回路200は、定電流回路100、キャパシタC1、スイッチSW1、インバータ210を備える。キャパシタC1は一端が接地されている。スイッチSW1は、キャパシタC1と並列に接続される。インバータ210は、キャパシタC1の電圧VC1を受け、しきい値電圧との大小関係を示す出力信号OUTを生成する。定電流回路100は、キャパシタC1に充電電流Iを供給する。
【0045】
タイマー動作前においてスイッチSW1はゼロであり、キャパシタC1の電圧VC1は0Vであり、出力信号OUTはハイである。タイマー開始とともに、スイッチSW1がオフとなる。定電流回路100が生成する充電電流によって、キャパシタC1が充電される。タイマー開始から時間t後のキャパシタC1の電圧VC1は、
C1(t)=t×I/C1
となる。キャパシタC1の電圧VC1がしきい値電圧VTHに達すると、出力信号OUTがローとなる。キャパシタC1の電圧VC1がしきい値電圧VTHに達するまでの時間Tは、
T=C1・VTH/I
となる。
【0046】
インバータ210のしきい値電圧VTHは電源電圧VDDに依存する。定電流回路100が生成する充電電流Iも、電源電圧VDDに対する依存性を持たせることができる。以下の関係式が成り立つとき、タイマー回路200の測定時間Tは電源電圧VDDに依存せずに一定となる。
I(VDD)=C1・VTH(VDD)/T
つまりこの関係を満たすように、定電流回路100のパラメータである電流増幅率(カレントミラー比)および抵抗値が設計される。
【0047】
TH(VDD)=VDD/2
とすると、定電流回路100のパラメータは以下の式を満たすように設計すればよい。
I(VDD)=C1・VDD/(2・T)
【0048】
図6は、定電流回路100を備えるワンショットマルチバイブレータ回路300の回路図である。ワンショットマルチバイブレータ回路300は、パルス状の入力信号INを受け、一定のパルス幅Tを有する出力信号OUTを発生する。
【0049】
ワンショットマルチバイブレータ回路300は、図5のタイマー回路200、インバータ302,304,306およびフリップフロップ310を備える。
【0050】
入力端子INに入力されるパルス信号は、フリップフロップ310のクロック端子(CLK)に入力される。フリップフロップ310の出力Qは、インバータ306によって反転され、スイッチSW1であるNMOSトランジスタのゲートに入力される。
【0051】
タイマー回路200の出力は、2段のインバータ302,304を含むバッファを経て、フリップフロップ310のリセット端子に入力される。
【0052】
図7は、定電流回路100の出力電流Iの電源電圧依存性を示す図である。(i)は、図4の定電流回路100Cを用いてパラメータを最適化設計した場合の特性を示す。(ii)は、図6の定電流回路100を単純なカレントミラー回路で構成した比較技術における充電電流Iの特性を示す。
【0053】
図8は、図7の比較技術(ii)の電流で動作させたときのワンショットマルチバイブレータ回路300の動作波形図である。INは入力信号を、OUTは出力信号を、VC1はキャパシタC1の電圧を示す。上段は電源電圧VDDが3Vのとき、下段は電源電圧VDDが5Vのときの動作を示す。比較技術では、電源電圧VDDが大きくなると、出力信号OUTのパルス幅が広がってしまう。
【0054】
図9は、図7の実施形態(i)の電流で動作させたときのワンショットマルチバイブレータ回路300の動作波形図である。実施形態に係る定電流回路100Cを用いることで、出力信号OUTのパルス幅は、電源電圧VDDに依存せずに一定となる。
【0055】
続いてワンショットマルチバイブレータ回路300の用途を説明する。
【0056】
図10は、ワンショットマルチバイブレータ回路300を備える半導体集積回路400のブロック図である。半導体集積回路400は、アンプ410、電流D/Aコンバータ420、ワンタイムメモリ回路430、トリミングインタフェース回路440、トリミング回路450を備える。
【0057】
アンプ410は、差動入力信号INP,INNを増幅する。アンプ410は、たとえばオペアンプであってもよい。あるいはオペアンプと抵抗を組み合わせて構成される増幅回路、たとえば減算増幅回路、非反転増幅回路、反転増幅回路であってもよい。
【0058】
ワンタイムメモリ回路430はOTP(One Time Programmable)メモリである。ワンタイムメモリ回路430は、複数のヒューズを含んでおり、各ヒューズは、半導体集積回路400の出荷前のトリミング工程において、独立に切断することができる。
【0059】
電流D/Aコンバータ420は、ヒューズトリミング後、すなわちプログラム後のワンタイムメモリ回路430が記憶するコードに応じた電流を発生し、アンプ410の一部に供給する。電流の供給先は特に限定されない。
【0060】
トリミングは、差動入力端子INP,INNを利用して行われる。2つの端子の一方(たとえばINP端子)には、書き込み用のパルス信号が入力される。2つの端子の他方(INN端子)には、書き込みイネーブル信号が入力され、イネーブル信号が第1レベル(たとえばハイ)のとき、ヒューズカットモードとなり、イネーブル信号が第2レベル(たとえばロー)のとき、仮想トリミングモードとなる。
【0061】
トリミングインタフェース回路440はトリミング工程において、2つの入力端子INP,INNの状態にもとづいて、トリミング回路450を制御する。
【0062】
トリミング回路450は、トリミングインタフェース回路440からの制御信号にしたがって動作する。ヒューズカットモードでは、トリミング回路450は、ワンタイムメモリ回路430のヒューズに実際に電流を供給して切断する。
【0063】
ワンタイムメモリ回路430は、実際にヒューズを切断することなく、仮想的な書き込みが可能となっている。仮想トリミングモードでは、トリミング回路450は、トリミングインタフェース回路440からの制御信号にしたがって、仮想的な書き込みを行う。仮想書き込みを利用することにより、最終的な書き込み(プログラム)前に、アンプ410の動作をチェックできる。
【0064】
トリミング回路450は、上述のワンショットマルチバイブレータ回路300を利用して構成することができる。トリミング工程において、INP端子に入力される信号は、シリアル信号である。トリミング回路450は、このシリアル信号を、シフトレジスタを利用してパラレル信号に変換する。これによりシフトレジスタに、複数のヒューズに書き込むべき値が保持される。ワンショットマルチバイブレータ回路300の出力信号は、このシフトレジスタのクロックとして利用することができる。
【0065】
(変形例)
上述した実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なことが当業者に理解される。以下、こうした変形例について説明する。
【0066】
図1図4において、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタを入れ替えて、電源ラインと接地ラインとを天地反転した構成も、本開示の範囲に含まれる。この場合、第2ラインL2が接地ラインGNDであり、第1ラインL1が電源ラインVDDとなる。
【0067】
ワンショットマルチバイブレータ回路300の構成は、実施形態で説明したそれに限定されず、実施形態に係るタイマー回路は、さまざまな形式のワンショットマルチバイブレータ回路に適用できる。
【0068】
ワンショットマルチバイブレータ回路300の用途は特に限定されず、さまざまな用途に利用できる。
【0069】
また定電流回路100は、パラメータを適切に設計することにより、負の電源電圧特性をもたせることも可能である。したがって、定電流回路100の用途は、タイマー回路に限定されず、さまざまな応用回路に利用できる。
【0070】
実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【0071】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0072】
(項目1)
電源ラインと接地ラインの一方である第1ラインと接続された第1カレントミラー回路と、
前記電源ラインと前記接地ラインの他方である第2ラインと、前記第1カレントミラー回路の入力ノードとの間に設けられた、抵抗およびゲートドレイン間が接続されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である基準トランジスタの直列接続回路と、
前記第2ラインと接続され、基準電流を折り返し、第1電流を生成する第2カレントミラー回路と、
を備え、
前記第1カレントミラー回路から出力される第2電流と、前記第2カレントミラー回路から出力される前記第1電流の差である第3電流に応じた電流を出力可能に構成された、定電流回路。
【0073】
(項目2)
前記第2カレントミラー回路は、前記基準電流を折り返して第4電流を生成し、
前記定電流回路は、
前記第4電流を折り返し、第5電流を生成する第3カレントミラー回路をさらに備え、
前記第5電流と前記第3電流の和である第6電流に応じた電流を出力可能である、項目1に記載の定電流回路。
【0074】
(項目3)
前記第2カレントミラー回路は、前記基準電流を折り返して第7電流を生成し、
前記定電流回路は、
前記第6電流を折り返し、第8電流を生成する第4カレントミラー回路をさらに備え、
前記第7電流と前記第8電流の差である第9電流に応じた電流を出力可能である、項目2に記載の定電流回路。
【0075】
(項目4)
前記第9電流を折り返し、第10電流を生成する第5カレントミラー回路をさらに備え、
前記第10電流に応じた電流を出力可能である、項目3に記載の定電流回路。
【0076】
(項目5)
前記第10電流を折り返し、第11電流を生成する第6カレントミラー回路をさらに備え、
前記第11電流に応じた電流を出力可能である、項目4に記載の定電流回路。
【0077】
(項目6)
キャパシタと、
前記キャパシタを充電する項目1から5のいずれかに記載の定電流回路と、
前記キャパシタの電圧を受けるインバータと、
を備える、タイマー回路。
【0078】
(項目7)
項目6に記載のタイマー回路を備える、ワンショットマルチバイブレータ回路。
【0079】
(項目8)
ヒューズを備えるワンタイムメモリ回路と、
パルス信号を受ける項目7に記載のワンショットマルチバイブレータ回路を含むトリミング回路と、
を備える、半導体集積回路。
【符号の説明】
【0080】
100 定電流回路
R1 基準抵抗
M1 基準トランジスタ
CM1 第1カレントミラー回路
CM2 第2カレントミラー回路
CM3 第3カレントミラー回路
CM4 第4カレントミラー回路
CM5 第5カレントミラー回路
CM6 第6カレントミラー回路
REF 基準電流
第1電流
第2電流
第3電流
第4電流
第5電流
第6電流
第7電流
第8電流
第9電流
10 第10電流
200 タイマー回路
210 インバータ
300 ワンショットマルチバイブレータ回路
302,304,306 インバータ
310 フリップフロップ
400 半導体集積回路
410 アンプ
420 電流D/Aコンバータ
430 ワンタイムメモリ回路
440 トリミングインタフェース回路
450 トリミング回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10