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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140971
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01L27/04 P
H01L27/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052370
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038AR01
5F038AR09
5F038EZ20
(57)【要約】
【課題】電圧変調の影響を低減した抵抗を提供する。
【解決手段】半導体集積回路100は、半導体基板110上に形成される第1抵抗200を備える。第1抵抗200は、直列に接続された抵抗値が等しい第1抵抗要素r1および第2抵抗要素r2を含む。第1抵抗要素r1が形成されるウェル112と第2抵抗要素r2が形成されるウェル112は、第1抵抗要素r1と第2抵抗要素r2の接続ノード206と結線される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成される第1抵抗を備え、
前記第1抵抗は、直列に接続された抵抗値が等しい第1抵抗要素および第2抵抗要素を含み、
前記第1抵抗要素が形成されるウェルと前記第2抵抗要素が形成されるウェルは、前記第1抵抗要素と前記第2抵抗要素の接続ノードと結線される、半導体集積回路。
【請求項2】
前記第1抵抗要素が形成されるウェルと前記第2抵抗要素が形成されるウェルは、同一のウェルである、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記第1抵抗要素が形成されるウェルと前記第2抵抗要素が形成されるウェルは、独立したウェルである、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1抵抗要素および前記第2抵抗要素は、ポリ抵抗である、請求項1から3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1抵抗要素および前記第2抵抗要素は、拡散抵抗である、請求項1から3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項6】
オペアンプおよび抵抗を含む増幅回路をさらに備え、
前記第1抵抗を利用して、前記増幅回路の前記抵抗が構成される、請求項1から3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路に形成される抵抗に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の重要な構成要素のひとつに抵抗がある。抵抗の種類はさまざまであり、用途に応じて、ポリ抵抗、拡散抵抗、メタル抵抗などが使用される。
【0003】
半導体基板に形成される抵抗は、それに印加される電圧に応じて、抵抗値がわずかに変化する。これを電圧変調という。電圧変調は、10Vを超える大きな電圧を印加してせいぜい0.1%あるいはそれ以下のオーダーであるため、多くの用途で問題となることはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高精度が要求される回路では、わずかな電圧変調による抵抗値の変動が、回路の特性を大きく悪化させる。
【0005】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、電圧変調の影響を低減した抵抗の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の半導体集積回路は、半導体基板上に形成される抵抗を備える。抵抗は、直列に接続された抵抗値が等しい第1抵抗要素および第2抵抗要素を含む。第1抵抗要素が形成されるウェルと第2抵抗要素が形成されるウェルは、第1抵抗要素と第2抵抗要素の接続ノードと結線される、
【0007】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0008】
本開示のある態様によれば、抵抗の電圧変調の影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る抵抗を備える半導体集積回路の断面図である。
図2図2は、比較技術に係る抵抗を備える半導体集積回路の断面図である。
図3図3は、実施形態に係る抵抗および比較技術に係る抵抗の抵抗値のシミュレーション結果を示す図である。
図4図4は、図3のシミュレーションに用いた回路図である。
図5図5は、変形例に係る抵抗を備える半導体集積回路の断面図である。
図6図6は、一実施例に係る増幅回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0011】
一実施形態に係る半導体集積回路は、半導体基板上に形成される抵抗を備える。抵抗は、直列に接続された抵抗値が等しい第1抵抗要素および第2抵抗要素を含む。第1抵抗要素が形成されるウェルと第2抵抗要素が形成されるウェルは、第1抵抗要素と第2抵抗要素の接続ノードと結線される。
【0012】
この構成によると、1個の抵抗を2つの抵抗要素に分割して形成し、それぞれの抵抗要素のウェルに、中点電圧に相当する電圧を印加することにより、電圧変調の影響を低減できる。
【0013】
一実施形態において、第1抵抗要素が形成されるウェルと第2抵抗要素が形成されるウェルは、同一のウェルであってもよい。
【0014】
一実施形態において、第1抵抗要素が形成されるウェルと第2抵抗要素が形成されるウェルは、独立したウェルであってもよい。
【0015】
一実施形態において、第1抵抗要素および第2抵抗要素は、ポリ抵抗であってもよい。
【0016】
一実施形態において、第1抵抗要素および第2抵抗要素は、拡散抵抗であってもよい。
【0017】
一実施形態において、半導体集積回路は、オペアンプを含む減算増幅回路をさらに備えてもよい。抵抗を利用して、減算増幅回路の抵抗が構成されてもよい。
【0018】
一実施形態において、半導体集積回路は、オペアンプを含む非反転アンプをさらに備えてもよい。抵抗を利用して、非反転アンプの抵抗が構成されてもよい。
【0019】
一実施形態において、半導体集積回路は、オペアンプを含む反転アンプをさらに備えてもよい。抵抗を利用して、反転アンプの抵抗が構成されてもよい。
【0020】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bに接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
図1は、実施形態に係る抵抗200を備える半導体集積回路100の断面図である。抵抗200は、半導体基板110の上に形成される。抵抗200は、第1端202および第2端204を有する。
【0024】
半導体基板110には、ウェル112が形成される。抵抗200はウェル112上に形成される。抵抗200は、第1端202と第2端204の間に直列に接続される第1抵抗要素r1および第2抵抗要素r2に分割して形成される。抵抗200の抵抗値の設計値をrとするとき、第1抵抗要素r1および第2抵抗要素r2は、それぞれの抵抗値が等しくr/2となるように設計される。第1抵抗要素r1および第2抵抗要素r2は、ポリ抵抗もしくは拡散抵抗である。
【0025】
ウェル112には、第1端202の電圧と第2端204の電圧の中点電圧に相当する電圧が印加される。具体的には、ウェル112は、第1抵抗要素r1と第2抵抗要素r2の接続ノード206と接続されている。
【0026】
以上が抵抗200の構成である。抵抗200の利点は比較技術との対比によって明確となる。そこで先に比較技術について説明する。
【0027】
図2は、比較技術に係る抵抗200Rを備える半導体集積回路100Rの断面図である。抵抗200Rは、ウェル112上に形成された抵抗値がrである単一の抵抗要素r0を含む。ウェル112は、第1端202および第2端204の一方(ここでは第2端204)と接続される。以上が抵抗200Rの構成である。
【0028】
図3は、実施形態に係る抵抗200および比較技術に係る抵抗200Rの抵抗値のシミュレーション結果を示す図である。図4は、図3のシミュレーションに用いた回路図である。抵抗200,200Rの設計値は1kΩである。回路(i)では、抵抗200の第2端204を接地し、第1端202に可変電圧源600を接続している。回路(ii)では、抵抗200Rの第2端204を接地し、第1端202に可変電圧源600を接続している。回路(iii)では、抵抗200Rの第1端202を接地し、第2端204に可変電圧源600を接続している。可変電圧源600の電圧VDDを0~10Vでスイープし、抵抗に流れる電流を測定し、電圧と電流から、抵抗値を算出している。
【0029】
図3に示す様に、比較技術に係る抵抗200Rを用いた回路(ii)および(iii)では、抵抗値rが電源電圧VDDに応じて変化しており、電圧変調の効果が現れている。これに対して、実施形態に係る抵抗200を用いた回路(i)では、抵抗値rが電源電圧VDDによらず一定値を示しており、電圧変調の効果が抑制できていることが分かる。
【0030】
図5は、変形例に係る抵抗200aを備える半導体集積回路100aの断面図である。この変形例では、第1抵抗要素r1と第2抵抗要素r2は独立したウェル112_1,112_2に分離して形成されている。ウェル112_1および112_2は、第1抵抗要素r1と第2抵抗要素r2の接続ノード206と接続される。この構成によっても図1の抵抗200と同様に、抵抗変調の効果を抑制できる。ただし、この変形例では、ウェル112_1および112_2が独立しているため、回路面積は図1の抵抗200より大きくなる。
【0031】
続いて抵抗200の用途について説明する。抵抗200は、0.1%のオーダの高精度が要求される回路に好適に用いることができる。たとえば抵抗200の好適な用途として、オペアンプおよび抵抗の組み合わせである増幅回路が挙げられる。
【0032】
図6は、一実施例に係る増幅回路400の回路図である。増幅回路400は、オペアンプ402および抵抗R11~R14を備える減算増幅器である。R11=R13、R12=R14が成り立っており、増幅回路400のゲインは、g=R13/R11である。抵抗R11~R14は、図1の抵抗200である。
【0033】
増幅回路は、減算増幅器に限定されず、非反転増幅器や反転増幅器であってもよい。
【0034】
その他、抵抗200の用途としては、A/DコンバータやD/Aコンバータが例示される。あるいは、低電圧ロックアウト(UVLO:Under Voltage Lock Out)回路、過電圧保護(OVP:Over Voltage Protection)回路などの電圧検出手段に用いられる抵抗分圧回路が例示される。
【0035】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0036】
(項目1)
半導体基板上に形成される第1抵抗を備え、
前記第1抵抗は、直列に接続された抵抗値が等しい第1抵抗要素および第2抵抗要素を含み、
前記第1抵抗要素が形成されるウェルと前記第2抵抗要素が形成されるウェルは、前記第1抵抗要素と前記第2抵抗要素の接続ノードと結線される、半導体集積回路。
【0037】
(項目2)
前記第1抵抗要素が形成されるウェルと前記第2抵抗要素が形成されるウェルは、同一のウェルである、項目1に記載の半導体集積回路。
【0038】
(項目3)
前記第1抵抗要素が形成されるウェルと前記第2抵抗要素が形成されるウェルは、独立したウェルである、項目1に記載の半導体集積回路。
【0039】
(項目4)
前記第1抵抗要素および前記第2抵抗要素は、ポリ抵抗である、項目1から3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【0040】
(項目5)
前記第1抵抗要素および前記第2抵抗要素は、拡散抵抗である、項目1から3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【0041】
(項目6)
オペアンプおよび抵抗を含む増幅回路をさらに備え、
前記第1抵抗を利用して、前記増幅回路の前記抵抗が構成される、項目1から5のいずれかに記載の半導体集積回路。
【符号の説明】
【0042】
100 半導体集積回路
110 半導体基板
112,114 ウェル
200 抵抗
202 第1端
204 第2端
r1 第1抵抗要素
r2 第2抵抗要素
400 増幅回路
402 オペアンプ
500 増幅回路
502 オペアンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6