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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140973
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】逐次比較型A/Dコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/46 20060101AFI20241003BHJP
   H03M 1/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H03M1/46
H03M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052372
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 玄明
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA05
5J022BA06
5J022CA10
5J022CF01
5J022CF05
5J022CF07
(57)【要約】
【課題】サンプリングにおけるセトリング時間を短くできる逐次比較型ADCを提供する。
【解決手段】逐次比較型ADC1は、複数のキャパシタ200,202,204を有し、入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性DAC20と、アナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次的に比較する比較器14と、比較器14による逐次比較の結果に応じて、サンプリングされたアナログ信号についてデジタルの出力信号を生成する制御回路16と、を備える。制御回路16は、比較器14による逐次比較が行われたあと、容量性DAC20において次のサンプリングが行われる前に、複数のキャパシタ200,202,204のそれぞれに蓄積される電荷が前回のサンプリング時における電荷となるように、複数のキャパシタ200,202,204のそれぞれに蓄積される電荷を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号を生成する逐次比較型A/Dコンバータであって、
最上位ビットから最下位ビットまでについての複数のキャパシタを有し、前記入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、
前記最上位ビットから前記最下位ビットまでについての前記アナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次的に比較する比較器と、
前記比較器の比較結果に応じて前記デジタル入力を生成し、前記比較器による逐次比較の結果に応じて、サンプリングされた前記アナログ信号について前記デジタルの出力信号を生成する制御回路と、を備え、
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数のキャパシタのそれぞれが前記入力信号に応じた電荷を蓄積することによって前記アナログ信号をサンプリングするように構成され、
前記制御回路は、前記比較器による逐次比較が行われたあと、前記容量性D/Aコンバータにおいて次のサンプリングが行われる前に、前記複数のキャパシタのそれぞれに蓄積される電荷が前回のサンプリング時における電荷となるように、前記複数のキャパシタのそれぞれに蓄積される電荷を制御する、
逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項2】
前記容量性D/Aコンバータは、前記アナログ信号が入力される入力経路をさらに有し、
前記アナログ信号のサンプリングは、前記入力経路を通じて前記複数のキャパシタのそれぞれの一端に前記アナログ信号が供給されることによって行われ、
前記制御回路は、前記比較器による逐次比較が行われたあと、前記次のサンプリングが行われる前に、前記複数のキャパシタのそれぞれの一端を互いに短絡させる、
請求項1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項3】
前記アナログ信号を生成する入力回路と、
前記入力回路と前記入力経路との間に配置されたスイッチと、をさらに備え、
前記制御回路は、前記比較器による逐次比較が行われたあと、前記次のサンプリングが行われる前に、前記スイッチがオフの状態で、前記複数のキャパシタのそれぞれの一端を前記入力経路に接続させる、
請求項2に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項4】
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続される、前記アナログの出力信号を出力するための出力経路をさらに有し、
前記制御回路は、前回のサンプリング時に、前記出力経路に前記比較基準電圧が供給され、前記比較器による逐次比較が行われたあと、次のサンプリングの前に、前記出力経路に前記比較基準電圧が供給されるように、前記容量性D/Aコンバータを制御する、
請求項2に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、逐次比較型A/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するA/Dコンバータの一種として、逐次比較型A/Dコンバータ(以下、「逐次比較型ADC」とも称する。)が知られている。容量性D/Aコンバータ(以下、「容量性DAC」とも称する。)を有する逐次比較型ADCの場合、容量性DACでアナログの入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、サンプリングした信号と基準となる信号とを比較器で逐次比較し、その逐次比較の結果に応じたデジタルの出力信号が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-192099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サンプリングしたアナログ信号についてデジタルの出力信号を生成したあと、次のアナログ信号がサンプリングされるとき、容量性DACのキャパシタに蓄えられた電荷の流れとアナログ信号に基づく電荷の流れとがぶつかる。これにより、キックバックノイズが生じ、このキックバックノイズによって次のサンプリングにセトリング時間がかかってしまう。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、サンプリングにおけるセトリング時間を短くできる逐次比較型ADCを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の逐次比較型A/Dコンバータは、アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号を生成する。この逐次比較型A/Dコンバータは、最上位ビットから最下位ビットまでについての複数のキャパシタを有し、入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、最上位ビットから最下位ビットまでについてのアナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次的に比較する比較器と、比較器の比較結果に応じてデジタル入力を生成し、比較器による逐次比較の結果に応じて、サンプリングされたアナログ信号についてデジタルの出力信号を生成する制御回路と、を備える。容量性D/Aコンバータは、複数のキャパシタのそれぞれが入力信号に応じた電荷を蓄積することによってアナログ信号をサンプリングするように構成される。制御回路は、比較器による逐次比較が行われたあと、容量性D/Aコンバータにおいて次のサンプリングが行われる前に、複数のキャパシタのそれぞれに蓄積される電荷が前回のサンプリング時における電荷となるように、複数のキャパシタのそれぞれに蓄積される電荷を制御する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、サンプリングにおけるセトリング時間を短くできる逐次比較型ADCを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る逐次比較型ADCを示す回路図である。
図2図2は、最上位ビットを判定するための逐次比較型ADCの状態を示す図である。
図3図3は、逐次比較が終わったときの逐次比較型ADCの状態を示す図である。
図4図4は、次のサンプリングの前における逐次比較型ADCの状態を示す図である。
図5図5は、比較技術に係る逐次比較型ADCの回路図である。
図6図6は、逐次比較が終わったときの逐次比較型ADCの状態を示す図である。
図7図7は、次のサンプリング時における逐次比較型ADCの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0011】
一実施形態に係る逐次比較型A/Dコンバータは、アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号を生成する。逐次比較型A/Dコンバータは、最上位ビットから最下位ビットまでについての複数のキャパシタを有し、入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、最上位ビットから最下位ビットまでについてのアナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次的に比較する比較器と、比較器の比較結果に応じてデジタル入力を生成し、比較器による逐次比較の結果に応じて、サンプリングされたアナログ信号についてデジタルの出力信号を生成する制御回路と、を備える。容量性D/Aコンバータは、複数のキャパシタのそれぞれが入力信号に応じた電荷を蓄積することによってアナログ信号をサンプリングするように構成される。制御回路は、比較器による逐次比較が行われたあと、容量性D/Aコンバータにおいて次のサンプリングが行われる前に、複数のキャパシタのそれぞれに蓄積される電荷が前回のサンプリング時における電荷となるように、複数のキャパシタのそれぞれに蓄積される電荷を制御する。
【0012】
この構成によれば、アナログ信号のサンプリングが行われるとき、容量性DACのキャパシタに蓄積される電荷が前回のサンプリング時における電荷となる。このため、キャパシタの電荷の流れおよびアナログ信号による電荷の流れに基づくキックバックノイズの発生が抑制され、サンプリングにおけるセトリング時間を短くできる。
【0013】
一実施形態において、容量性D/Aコンバータは、アナログ信号が入力される入力経路をさらに有してよい。アナログ信号のサンプリングは、入力経路を通じて複数のキャパシタのそれぞれの一端にアナログ信号が供給されることによって行われてよい。制御回路は、比較器による逐次比較が行われたあと、次のサンプリングが行われる前に、複数のキャパシタのそれぞれの一端を互いに短絡させてよい。
【0014】
一実施形態において、逐次比較型ADCは、アナログ信号を生成する入力回路と、
入力回路と入力経路との間に配置されたスイッチと、をさらに備えてよい。制御回路は、比較器による逐次比較が行われたあと、次のサンプリングが行われる前に、スイッチがオフの状態で、複数のキャパシタのそれぞれの一端を入力経路に接続させてよい。
【0015】
一実施形態において、容量性D/Aコンバータは、複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続される、アナログの出力信号を出力するための出力経路をさらに有してよい。制御回路は、前回のサンプリング時に、出力経路に比較基準電圧が供給され、比較器による逐次比較が行われたあと、次のサンプリングの前に、出力経路に比較基準電圧が供給されるように、容量性D/Aコンバータを制御してよい。
【0016】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態に係る逐次比較型ADC1を示す回路図である。本実施形態に係る逐次比較型ADC1は、アナログの入力信号Ainに応じたデジタルの出力信号Doutを生成するように構成される。逐次比較型ADC1は、バッファ回路10(入力回路)、スイッチ12、比較器14、ロジック回路16(制御回路)および容量性DAC20を備える。
【0018】
バッファ回路10は、アナログの入力信号Ainが入力され、アナログの入力信号Ainに応じたアナログ信号ADCinを生成する。
【0019】
スイッチ12は、バッファ回路10と容量性DAC20との間に配置される。具体的には、スイッチ12は、一端がバッファ回路10に接続され、他端が容量性DAC20に接続されるように配置される。スイッチ12がオンのとき、容量性DAC20がバッファ回路10に接続され、アナログ信号ADCinが容量性DAC20に供給される。一方、スイッチ12がオフのとき、容量性DAC20がバッファ回路10から遮断される。
【0020】
容量性DAC20は、アナログの入力信号Ainに応じたアナログ信号ADCinをサンプリングし、デジタル入力Dinに応じたアナログの出力電圧DACoutを生成する。本実施形態に係る容量性DAC20は、最上位ビットから最下位ビットまでについての複数のキャパシタ200,202,204、入力経路210、基準経路212、グランド経路214、複数のセレクタ220,222,224、出力経路230およびスイッチ232を有する。
【0021】
キャパシタ200,202,204は、3ビット分に対応する。具体的には、キャパシタ200は、最上位ビットに対応し、キャパシタ202は、2ビット目に対応し、キャパシタ204は、最下位ビットに対応する。
【0022】
キャパシタ200,202,204の容量値は、「C」を基準容量値とすると、それぞれ[4C]、[2C]、[1C]である。すなわち、キャパシタ200,202,204は、それぞれ、所定の比率で重み付けされた容量値(=2C(ただし、x=0~2の整数))をもつ。なお、本実施形態に係る容量性DAC20は、3つのキャパシタ200,202,204を有するが、キャパシタの数は、2つ以下であってよいし、4つ以上であってよい。すなわち、容量性DAC20のビット数は、2ビット以下であってよいし、4ビット以上であってよい。
【0023】
キャパシタ200は、一端がセレクタ220に接続され、他端が出力経路230に接続されるように配置される。キャパシタ202は、一端がセレクタ222に接続され、他端が出力経路230に接続されるように配置される。キャパシタ204は、一端がセレクタ224に接続され、他端が出力経路230に接続されるように配置される。
【0024】
入力経路210は、セレクタ220,222,224に共通に設けられ、スイッチ12の他端と接続される。スイッチ12がオンになると、アナログ信号ADCinがバッファ回路10から入力経路210に入力される。基準経路212は、セレクタ220,222,224に共通に設けられ、基準電圧Vref1が供給されるように配置される。グランド経路214は、セレクタ220,222,224に共通に設けられ、グランドに接続される。
【0025】
セレクタ220,222,224のそれぞれは、キャパシタ200,202,204のそれぞれの一端を入力経路210、基準経路212またはグランド経路214に接続するように構成される。キャパシタ200,202,204の一端の接続先は、ロジック回路16から入力されるデジタル入力Dinに応じて切り替わる。
【0026】
出力経路230は、キャパシタ200,202,204のそれぞれの他端に接続され、容量性DAC20の出力信号DACoutを出力する。スイッチ232は、一端が共通経路20に接続され、他端に比較基準電圧Vref2が供給されるように配置される。ここで、比較基準電圧Vref2は、たとえば基準電圧Vre1の1/2などであってよい。スイッチ232がオンになると、出力経路230に比較基準電圧Vref2が供給され、スイッチ232がオフになると、出力経路230に比較基準電圧Vref2が供給されなくなる。
【0027】
容量性DAC20は、複数のキャパシタ200,202,204のそれぞれがアナログ信号ADCinに応じた電荷を蓄積することによってアナログ信号ADCinをサンプリングするように構成される。具体的には、アナログ信号ADCinのサンプリングは、入力経路210を通じて複数のキャパシタ200,202,204のそれぞれの一端にアナログ信号ADCinが供給されることによって行われる。より具体的には、セレクタ220,222,224のそれぞれがキャパシタ200,202,204のそれぞれの一端を入力経路210に接続する。これにより、キャパシタ200,202,204のそれぞれにアナログ信号ADCinに応じた電荷が蓄積され、これによりアナログ信号ADCinがサンプリングされる。
【0028】
容量性DAC20は、最上位ビットから最下位ビットまでについての出力電圧DACoutを生成するように構成される。具体的には、容量性DAC20は、生成されるデジタルの出力信号Doutについて、最上位ビットから最下位ビットまでの0,1を判定するための出力電圧DACoutを生成するように構成される。それぞれの出力信号DACoutは、セレクタ220,222,224の接続がデジタル入力Dinに応じて切り替わる度に生成される。
【0029】
比較器14は、容量性DAC20の出力信号DACoutと比較基準電圧Vref2とを比較し、比較結果に応じた信号Scomを生成する。具体的には、比較器14は、最上位ビットから最下位ビットまでについての出力電圧DACoutと比較基準電圧Vref2とを逐次的に比較し、比較の度に比較結果に応じた信号Scomを生成する。
【0030】
ロジック回路16は、比較器14の比較結果(具体的には、信号Scom)に応じてデジタル入力Dinを生成する。ロジック回路16は、比較器14による逐次比較の結果に応じたデジタルの出力信号Doutを生成する。ロジック回路16は、スイッチ12のオン、オフを制御するための信号Ssw1を生成でき、スイッチ232のオン、オフを制御するための信号Ssw2を生成できる。
【0031】
ロジック回路16は、比較器14による逐次比較が行われたあと、容量性DAC20において次のサンプリングが行われる前に、複数のキャパシタ200,202,204のそれぞれに蓄積される電荷が前回のサンプリング時における電荷となるように、複数のキャパシタ200,202,204のそれぞれに蓄積される電荷を制御する。本実施形態では、ロジック回路16は、比較器14による逐次比較が行われたあと、次のサンプリングが行われる前に、複数のキャパシタ200,202,204のそれぞれの一端を互いに短絡させる。
【0032】
具体的には、ロジック回路16は、比較器14による逐次比較が行われたあと、次のサンプリングが行われる前に、スイッチ12がオフの状態で、複数のキャパシタ200,202,204のそれぞれの一端を入力経路210に接続させる。このとき、ロジック回路16は、スイッチ12がオフとなるように信号Ssw1をスイッチ12に伝送し、キャパシタ200,202,204のそれぞれの一端が入力経路210に接続されるように、デジタル入力Dinを容量性DAC20に伝送する。
【0033】
ロジック回路16は、前回のサンプリング時に、出力経路230に比較基準電圧Vref2が供給され、比較器14による逐次比較が行われたあと、次のサンプリングの前に、出力経路230に比較基準電圧Vref2が供給されるように、容量性DAC20を制御する。具体的には、ロジック回路16は、各サンプリング時にスイッチ232がオンになるように、スイッチ232に信号Ssw2を伝送する。
【0034】
以下、図1図4を参照しながら、本実施形態に係る逐次比較型ADC1の動作の流れを説明する。図2は、最上位ビットを判定するための逐次比較型ADC1の状態を示す図である。図3は、逐次比較が終わったときの逐次比較型ADC1の状態を示す図である。図4は、次のサンプリングの前における逐次比較型ADC1の状態を示す図である。
【0035】
まず、容量性DAC20は、アナログ信号ADCinをサンプリングする。ここで、アナログの入力信号Ainは、3h(011)に相当する信号であるものとする。このとき、図1に示すように、スイッチ12がオンとなり、入力経路210にアナログ信号ADCinが入力される。また、スイッチ232がオンとなり、出力経路230に比較基準電圧Vref2が供給される。さらに、キャパシタ200,202,204のそれぞれの一端は、セレクタ220,222,224のそれぞれを通じて入力経路210に接続され、アナログ信号ADCinに応じた電荷を蓄積する。
【0036】
次いで、最上位ビットを判定するために、容量性DAC20の出力信号と比較基準電圧との比較が行われる。このとき、図2に示すように、スイッチ12がオンからオフとなり、バッファ回路10から容量性DAC20への経路が遮断される。また、スイッチ232がオンからオフとなる。さらに、キャパシタ200の一端が基準経路212に接続され、キャパシタ202,204のそれぞれの一端がグランド経路214に接続されるように、デジタル入力Dinに応じてセレクタ220,222,224の接続が切り替わる。
【0037】
比較器14は、このときの容量性DAC20の出力信号DACoutと比較基準電圧Vref2とを比較し、その比較結果に応じた信号Scomをロジック回路16に伝送する。ロジック回路16は、信号Scomに基づいて、最上位ビットを判定し、2ビット目を判定するためのデジタル入力を生成する。
【0038】
次いで、比較器14は、2ビット目を判定するためのデジタル入力Dinに応じた容量性DAC20の出力信号と比較基準電圧とを比較し、その比較結果に応じた信号をロジック回路16に伝送する。ロジック回路16は、その信号に基づいて、最下位ビットを判定するためのデジタル入力を容量性DAC20に入力する。比較器14は、最下位ビットを判定するためのデジタル入力に応じた容量性DAC20の出力信号と比較基準電圧とを比較し、その比較結果に応じた信号をロジック回路16に伝送する。
【0039】
このように、比較器14は、最上位ビットから最下位ビットまでについての出力信号と比較基準電圧とを逐次的に比較する。ロジック回路16は、比較器14の逐次比較の結果に応じたデジタルの出力信号Dout(本実施形態では3ビット)を生成する。
【0040】
図3に示すように、本実施形態では、逐次比較が終わったとき、キャパシタ200はグランド経路214に接続され、キャパシタ202,204のそれぞれは、基準経路212に接続される。このため、出力信号Doutは、3h(011)である。このとき、スイッチ12およびスイッチ232は、共にオフである。
【0041】
次いで本実施形態では、図4に示すように、キャパシタ200,202,204のそれぞれの一端が入力経路210に接続されるように、セレクタ220,222,224の接続が切り替わる。また、スイッチ232は、オフからオンに切り替わる。これにより、図1を参照しながら説明した前回のサンプリング時と同様に、キャパシタ200,202,204のそれぞれの一端が互いに入力経路210を介して接続され、出力経路230に比較基準電圧Vref2が供給される。これにより、キャパシタ200,202,204のそれぞれが蓄積する電荷は、前回のサンプリング時におけるキャパシタ200,202,204の電荷となる。
【0042】
次のサンプリング時には、図1に示したように、スイッチ12がオフからオンとなる。これにより、次のアナログ信号ADCinが容量性DAC20の入力経路210に入力され、アナログ信号ADCinのサンプリングが行われる。スイッチ12がオフからオンとなる直前では、キャパシタ200,202,204のそれぞれには、前回のサンプリング時における電荷がそれぞれ蓄積されている。このため、キャパシタ200,202,204に蓄積されている電荷と、次のサンプリング時において蓄積されるべき電荷との差分が小さく、次のサンプリング時におけるキックバックノイズを抑制できる。
【0043】
このように、本実施形態に係る逐次比較型ADC1によれば、サンプリング時におけるキックバックノイズを抑制し、サンプリングにかかるセトリング時間を短くできる。したがって、本実施形態にかかる逐次比較型ADC1によれば、セトリングの高速化のためにバッファ回路10を高速応答化する必要がなく、バッファ回路10の消費電流および面積などを増加させる必要性を低減できる。
【0044】
アナログの入力信号Ainの時間的な変化が小さいほど、前回のサンプリング時と次のサンプリング時においてキャパシタ200,202,204に蓄積される電荷の差が小さくなる。このため、本実施形態に係る逐次比較型ADC1によれば、アナログの入力信号Ainの時間的な変化が小さいほど、キックバックノイズの発生を低減できるため好ましい。具体的には、アナログの入力信号Ainは、DC(Direct Current)信号または低周波数の信号であることが好ましい。
【0045】
また、複数のアナログの入力信号から順に選択した入力信号を逐次比較型ADC1に入力する場合より、本実施形態のように単一のアナログの入力信号Ainが逐次比較型ADC1に入力される場合の方が、逐次比較型ADC1に入力される入力信号の変化が小さいため好ましい。
【0046】
(比較技術)
図5は、比較技術に係る逐次比較型ADC3の回路図である。図5では、図1に示した逐次比較型ADC1の構成と実質的に同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。比較技術に係る逐次比較型ADC3は、主として、バッファ回路10に接続されたスイッチ12を備えない点で、上記実施形態に係る逐次比較型ADC1と異なる。すなわち、バッファ回路10から出力されるアナログ信号ADCinは、直接的に容量性DAC20に入力される。
【0047】
以下、図5図7を参照しながら、比較技術に係る逐次比較型ADC3の動作の一例を説明する。図6は、逐次比較が終わったときの逐次比較型ADC3の状態を示す図である。図7は、次のサンプリング時における逐次比較型ADC3の状態を示す図である。
【0048】
まず、逐次比較型ADC3は、アナログの入力信号Ainに応じたアナログ信号ADCinをサンプリングする。ここで、入力信号Ainは、3h(011)であるものとする。図5に示すように、キャパシタ200,202,204のそれぞれの一端が入力経路210に接続され、出力経路230に接続されたスイッチ232がオンとなる。これにより、出力経路230に比較基準電圧Vref2が供給され、キャパシタ200,202,204のそれぞれに、アナログ信号ADCinに応じた電荷が蓄積され、アナログ信号ADCinがサンプリングされる。
【0049】
以降、上記実施形態と同様にして、比較器14は、容量性DAC20の出力信号DACout1と比較基準電圧Vref2とを逐次的に比較し、比較結果に応じた信号Scom1を生成する。ロジック回路16は、信号Scom1を受け、比較器14の逐次比較の結果に応じたデジタルの出力信号Dout1を生成する。
【0050】
図6には、逐次比較が終わったときの逐次比較型ADC3の状態が示されている。図6に示すように、セレクタ220,222,224は、3h(011)の状態となっており、具体的には、キャパシタ200の一端は、グランド経路214に接続され、キャパシタ202,204のそれぞれの一端は、基準経路212に接続される。また、スイッチ232は、オフとなっている。
【0051】
図7に示すように、次のサンプリング時には、キャパシタ200,202,204のそれぞれの一端は入力経路210に接続され、スイッチ232はオフからオンとなる。このとき、キャパシタ200,202,204に残った電荷の流れI1,I2,I3とアナログ信号ADCinに応じた電荷の流れとがぶつかり、キックバックノイズNが発生する。このとき、次のサンプリングの直前においてキャパシタ200,202,204に蓄積された電荷と、アナログ信号ADCinに応じてキャパシタ200,202,204に蓄積されるべき電荷との差が大きいほど、大きなキックバックノイズNが発生する。この大きなキックバックノイズN、次のサンプリングにおけるセトリングに時間がかかる。セトリングを早くするためには、バッファ回路10を高速応答化する必要などが生じ、バッファ回路10の消費電流および面積が増加する。
【0052】
これに対し、上記実施形態に係る逐次比較型ADC1によれば、次のサンプリングの直前においてキャパシタ200,202,204に蓄積された電荷と、アナログ信号ADCinに応じてキャパシタ200,202,204に蓄積されるべき電荷との差を小さくできる。この結果、キックバックノイズNを低減し、サンプリングにおけるセトリング時間を短くできる。
【0053】
(補足)
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものである。また、実施形態のみでなく、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【0054】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握できる。
【0055】
(項目1)
アナログの入力信号に応じたデジタルの出力信号を生成する逐次比較型A/Dコンバータであって、
最上位ビットから最下位ビットまでについての複数のキャパシタを有し、前記入力信号に応じたアナログ信号をサンプリングし、デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、
前記最上位ビットから前記最下位ビットまでについての前記アナログの出力信号と比較基準電圧とを逐次的に比較する比較器と、
前記比較器の比較結果に応じて前記デジタル入力を生成し、前記比較器による逐次比較の結果に応じて、サンプリングされた前記アナログ信号について前記デジタルの出力信号を生成する制御回路と、を備え、
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数のキャパシタのそれぞれが前記入力信号に応じた電荷を蓄積することによって前記アナログ信号をサンプリングするように構成され、
前記制御回路は、前記比較器による逐次比較が行われたあと、前記容量性D/Aコンバータにおいて次のサンプリングが行われる前に、前記複数のキャパシタのそれぞれに蓄積される電荷が前回のサンプリング時における電荷となるように、前記複数のキャパシタのそれぞれに蓄積される電荷を制御する、
逐次比較型A/Dコンバータ。
【0056】
(項目2)
前記容量性D/Aコンバータは、前記アナログ信号が入力される入力経路をさらに有し、
前記アナログ信号のサンプリングは、前記入力経路を通じて前記複数のキャパシタのそれぞれの一端に前記アナログ信号が供給されることによって行われ、
前記制御回路は、前記比較器による逐次比較が行われたあと、前記次のサンプリングが行われる前に、前記複数のキャパシタのそれぞれの一端を互いに短絡させる、
項目1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0057】
(項目3)
前記アナログ信号を生成する入力回路と、
前記入力回路と前記入力経路との間に配置されたスイッチと、をさらに備え、
前記制御回路は、前記比較器による逐次比較が行われたあと、前記次のサンプリングが行われる前に、前記スイッチがオフの状態で、前記複数のキャパシタのそれぞれの一端を前記入力経路に接続させる、
項目2に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0058】
(項目4)
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数のキャパシタのそれぞれの他端に接続される、前記アナログの出力信号を出力するための出力経路をさらに有し、
前記制御回路は、前回のサンプリング時に、前記出力経路に前記比較基準電圧が供給され、前記比較器による逐次比較が行われたあと、次のサンプリングの前に、前記出力経路に前記比較基準電圧が供給されるように、前記容量性D/Aコンバータを制御する、
項目2または3に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【符号の説明】
【0059】
1 逐次比較型ADC、10 バッファ回路、12 スイッチ、14 比較器、16 ロジック回路、20 容量性DAC、200,202,204 キャパシタ、210 入力経路、220,222,224 セレクタ、230 出力経路、232 スイッチ、Ain アナログの入力信号、ADCin アナログ信号、DACout アナログの出力信号、Dout デジタルの出力信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7