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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140975
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】メチルアルミノキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/06 20060101AFI20241003BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07F5/06 D
B01D65/06
B01D71/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052375
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓史
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 稔
(72)【発明者】
【氏名】重弘 大樹
【テーマコード(参考)】
4D006
4H048
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006GA03
4D006GA06
4D006KC03
4D006KC16
4D006KD29
4D006MA01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC04
4D006PA01
4D006PB12
4D006PB15
4D006PB70
4D006PC80
4H048AA02
4H048AD17
4H048AD19
4H048BB11
4H048BB15
4H048BB20
4H048BB25
4H048BB49
4H048BC51
4H048VB10
(57)【要約】
【課題】ゲル状物を本質的に含有しないメチルアルミノキサンの製造方法の提供。
【解決手段】トリメチルアルミニウムからメチルアルミノキサンを生成した反応液を、副生したアルミニウム含有ゲルを除くために膜分離にかける工程を含むことを特徴とする、メチルアルミノキサンの製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチルアルミニウムからメチルアルミノキサンを生成した反応液を、副生したアルミニウム含有ゲルを除くためにクロスフローろ過する工程を含むことを特徴とする、メチルアルミノキサンの製造方法。
【請求項2】
膜分離が、セラミックフィルターを使用して行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
膜分離で使用した膜を、トリメチルアルミニウムからメチルアルミノキサンを生成する際に使用した溶媒で洗浄することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒がトルエンであることを特徴とする、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
膜分離で使用した膜を、アルミニウム含有ゲルと反応せず、かつ、アルミニウムに配位能を持つ極性溶媒1種以上を含む溶媒で洗浄することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
膜分離で使用した膜を、トルエン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、テトラグライム及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれる1種以上を含む溶媒で洗浄することを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
膜分離で使用した膜を、40℃から沸点以下の溶媒で洗浄することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
膜分離で使用した膜を、反応液蒸発濃縮工程で留出させた溶媒で洗浄することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチルアルミノキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水とトリメチルアルミニウムの縮合生成物であるメチルアルミノキサンが、メタロセン触媒の助触媒としてエチレン重合に対して高い活性を示すことは広く知られている(非特許文献1)。水とトリメチルアルミニウムの反応においては、過度に加水分解を受けたトリメチルアルミニウムの形態としての固形物やゲル状物の生成を避けることが出来ず、アルミニウムに基づく反応収率の低下をもたらす。また、ゲル状物そのものが製造ラインやタンク内に堆積するなどして、製造プラントの円滑な運転を妨害し、最終産物の収率や純度を低める原因にもなる。さらには、ポリオレフィン中に不純物が存在すると、ポリオレフィン自体の機能性低下、着色、人体への生理活性等悪影響を招くことから助触媒メチルアルミノキサン自体に不純物が存在しないことが望ましい。
【0003】
ゲル状物、即ちアルミニウム含有ゲルの除去方法として例えば沈降分離がある(特許文献1)。しかしながら、上記の特許文献1に記載の方法は、工業的な生産という観点からすると運転操作性が悪く好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-507515
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H. Sinn, W. Kaminsky. Adv. Organomet. Chem. 18, 99 (1980).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、水とトリメチルアルミニウムからメチルアルミノキサンが生成する際に副生するアルミニウム含有ゲルをその製造工程において限りなく完全に排除することが望ましい。本発明が解決しようとする課題は、このようなゲル状物を本質的に含有しないメチルアルミノキサンの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、トリメチルアルミニウムからメチルアルミノキサンが生成する際に副生するアルミニウム含有ゲルを、膜分離により効率よく除去できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本願は以下の発明を包含する。
[1]トリメチルアルミニウムからメチルアルミノキサンを生成した反応液を、副生したアルミニウム含有ゲルを除くためにクロスフローろ過する工程を含むことを特徴とする、メチルアルミノキサンの製造方法。

[2]膜分離が、セラミックフィルターを使用して行われる、[1]の製造方法。
[3]膜分離で使用した膜を、トリメチルアルミニウムからメチルアルミノキサンを生成する際に使用した溶媒で洗浄することを特徴とする、[1]または[2]の製造方法。
[4]前記溶媒がトルエンであることを特徴とする、[3]の製造方法。
[5]膜分離で使用した膜を、アルミニウム含有ゲルと反応せず、かつ、アルミニウムに配位能を持つ極性溶媒1種以上を含む溶媒で洗浄することを特徴とする、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6]膜分離で使用した膜を、トルエン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、テトラグライム及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれる1種以上を含む溶媒で洗浄することを特徴とする、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7]膜分離で使用した膜を、40℃から沸点以下の溶媒で洗浄することを特徴とする、[1]~[6]のいずれかの製造方法。
[8]膜分離で使用した膜を、反応液蒸発濃縮工程で留出させた溶媒で洗浄することを特徴とする、[1]~[7]のいずれかの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲル状物を本質的に含有しないメチルアルミノキサンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、トリメチルアルミニウムと水を反応させてメチルアルミノキサンを生成する際、発生するアルミニウム含有ゲルを膜分離により除去するといった工程を含むことを特徴とする、メチルアルミノキサンの製造方法に関する。
【0011】
メチルアルミノキサンは、反応性の高いトリメチルアルミニウムを部分的に加水分解して得られる縮合生成物であり、式:[(CH)AlO]で表される構造単位を有する。メチルアルミノキサンは、一般に分子量の異なる2種以上の化合物の混合物であり、当該化合物は、直鎖構造、環状構造又はこれらの組み合わせを有する。メチルアルミノキサンの平均オリゴマー化度(平均重合度)は一般に60以下である。メチルアルミノキサンに分岐構造又は架橋構造が含まれる場合もある。メチルアルミノキサンの組成及び構造と安定性との間には密接な関係があるものと考えられるが、前記のとおりメチルアルミノキサンは非常に複雑な構造を有しているため、メチルアルミノキサン組成物の安定性の違いをメチルアルミノキサンの組成及び構造の観点から特定することは困難である。
【0012】
メチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムと水を反応させることで得ることができる。当該反応は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、トリメチルアルミニウム及びメチルアルミノキサンに対して不活性である、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、精製ケロシンなどの飽和炭化水素化合物;並びにシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタンなどの環状炭化水素化合物が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン及びクメンが挙げられる。溶媒はトルエンであることが好ましい。
【0013】
反応温度は、一般に0℃~100℃であり、好ましくは10℃~40℃である。
【0014】
反応時間は、一般に0.5時間~100時間であり、好ましくは1時間~10時間である。
【0015】
トリメチルアルミニウムと水のモル比(トリメチルアルミニウムのモル数/水のモル数)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.2~4.0、更に好ましくは1.5~3.0である。
【0016】
トリメチルアルミニウムは、前記溶媒と混合することでトリメチルアルミニウム溶液とし、水と反応させることが好ましい。トリメチルアルミニウム溶液中のトリメチルアルミニウム濃度は、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%である。
【0017】
水は水系分散液の形態で添加することが好ましい。水系分散液とすることにより、添加速度の調整を容易にすることができる。水系分散液は、水に前記溶媒を混合することにより調製することができる。水系分散液の媒体は、トリメチルアルミニウム溶液の溶媒と同じであることが好ましい。水系分散液中の水濃度は、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%である。
【0018】
メチルアルミノキサンを生成するためのトリメチルアルミニウムと水との反応は攪拌装置を用いて攪拌することが好ましい。撹拌装置としては、特に限定されないが、高速ホモジナイザーを使用することが好ましい。高速ホモジナイザーを用いることにより、トリメチルアルミニウムと水を速やかに反応させることができる。高速ホモジナイザーの回転数は、例えば1000rpm~20000rpmとすることができる。
【0019】
トリメチルアルミニウムと水の反応の初期段階で生成した低分子量のメチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムと同様に水との反応性が依然として非常に高いため、反応場に全量の水が予め存在した状態で反応を行うと、反応が不規則に進行してゲル状物質が生成しやすい。そのため、トリメチルアルミニウム溶液に対して、水又は水系分散液を徐々に添加することが好ましい。これにより、トリメチルアルミニウム又は低分子量のメチルアルミノキサンと共存する水の量を制御しながら反応を行うことができ、その結果、ゲル状物質の生成を幾分抑制することができる。
【0020】
上述のとおり、本発明者はトリメチルアルミニウムからメチルアルミノキサンを生成する際に副生するアルミニウム含有ゲルをクロスフローろ過により効率よく除去できることを見出した。メチルアルミノキサンの製造において、アルミニウム含有ゲルの排除を目的にクロスフローろ過工程を導入することができるのは本発明者が初めて見出したものである。
【0021】
アルミニウム含有ゲルの除去は沈降分離や遠心分離などによっても可能であるが、工業的な生産という観点からすると運転操作性から膜分離が好ましい。膜分離方法には特に限定はないが、例えば、クロスフローろ過、限外ろ過、加圧ろ過、減圧ろ過、遠心ろ過等が挙げられる。用いるフィルターのサイズには限定は無いが、例えば、捕捉粒子径が0.1μm以下のフィルター等が挙げられる。用いるフィルターの材質は無機セラミックからなる無機膜(セラミックフィルター)であっても、有機材料からなる有機膜であってもよいが、トリメチルアルミニウムと水の反応をトルエンなどの有機溶媒を用いる場合、膜材料として当該溶媒に対し耐久性を示すセラミックフィルター等を用いるのが好ましい。
【0022】
無機膜としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンのセラミックス材料や、ステンレス、ガラスなどを用いることが好ましい。有機膜としては、ポリエチレン、四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミドまたはポリビニルアルコールのいずいれかで構成されていることが好ましく、限定は無いが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、PTFE、PES等が挙げられる。
【0023】
特に好ましい膜分離方法は、目詰まりのしにくさを鑑み、セラミックフィルターを用いたクロスフロー濾過である。クロスフローろ過に用いられる分離膜は、中空糸型の形状を有するものであれば、限外ろ過膜であってもよく、逆浸透膜であっても使用できる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、分離膜に付着したアルミニウム含有ゲルは洗浄液を用い洗浄することで除去する。好ましくは、分離膜のろ過方向の流れとは逆方向に洗浄液を流す逆洗浄により分離膜を洗浄する。洗浄液はアルミニウム含有ゲルが溶解することのできる極性溶媒が好ましく利用される。ここで極性溶媒とは、アルミニウムに配位能を持つ溶媒を指す。アルミニウムに配位能を持つ溶媒としては例えばベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ホルムアミドのようなアミド、N-メチルピロリドン、2-ピロリドンのようなアミン、テトラヒドロフラン、テトラグライム、1,4-ジオキサンのようなエーテル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルのようなカーボネート、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチルのようなカルバメートが挙げられる。洗浄液は例えばトリメチルアルミニウムと水を反応させてメチルアルミノキサンを生成する際に使用する溶媒と同じでも異なるものでもよい。好ましくは、洗浄液としてはアルミニウム含有ゲルの溶解性が高い、トルエン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、テトラグライム、1,4-ジオキサン、などといった極性溶媒の1種またはその2種以上の組み合わせが利用される。特に好ましいのはトルエンである。トルエンはトリメチルアルミニウムと水を反応させてメチルアルミノキサンを生成する際に頻繁に使用される溶媒であるが、それを溶媒として使用してもアルミニウム含有ゲルの発生が伴うのは周知であり、当業者であればアルミニウム含有ゲルの溶解には向かないと考えることができる。しかしながら、そのような知見に反し、本発明者は驚くべきことにアルミニウム含有ゲルがトルエンに溶解し、アルミニウム含有ゲルの除去のための分離膜の洗浄に有効活用できることを見出した。
【0025】
サイクル性の観点からすると、洗浄液は好ましくはトリメチルアルミニウムと水を反応させてメチルアルミノキサンを生成する際に使用する溶媒と同じものを使用する。後述の通り、トリメチルアルミニウムと水を反応させて生成されるメチルアルミノキサン反応液は、減圧乾燥工程などといった濃縮工程にかけることが好ましい。上記溶媒と洗浄液を同一にすれば、メチルアルミノキサン反応液の乾燥濃縮工程により留去して回収される溶媒を洗浄液としてリサイクル使用することができ、その結果メチルアルミノキサンの製造工程全体において使用される極性溶媒の量を抑えることとなり、環境に優しいといった利点が供される。
【0026】
さらに洗浄は、使用する洗浄液におけるアルミニウム含有ゲルの溶解度が高くなるよう温度設定して行うことが好ましい。これにより、分離膜の洗浄に使用する洗浄液の量を可能な限り最小限に抑えることができ、環境に優しいといった利点が供される。したがって分離膜の洗浄工程においては、分離膜が許容性または耐久性を示す限りにおいて、アルミニウム含有ゲルの溶解度を高めるため、高めに設定した温度で使用するのが好ましい。例えば洗浄液にトルエンを使用した場合、アルミニウム含有ゲルの溶解度を考慮し、分離膜の洗浄工程を25℃から沸点以下、例えば40℃から沸点以下、好ましくは40~60℃で行うことが好ましい。
【0027】
メチルアルミノキサンの製造ラインはバッチ方式でも連続方式でもよいため、分離膜の洗浄もその方式に併せ、適宜行われればよい。例えば、製造ラインがバッチ方式の場合、洗浄を製造バッチ毎に行っても、あるいは数バッチ、例えば、2、3、4、5バッチ毎に行ってもよい。あるいはろ過流量の低下が認められた時点で洗浄するよう設定してもよい。製造ラインが連続方式の場合も分離膜の洗浄工程の時期は任意であり、例えば所定期間毎に洗浄するよう設定するか、あるいは例えばろ過流量を適宜又は随時モニターし、流量が所定量よりも低くなったら洗浄工程を実施する、といった設定にしてもよい。
【0028】
トリメチルアルミニウムと水を反応させて生成されるメチルアルミノキサン反応液は好ましくは濃縮工程にかける。濃縮工程は膜分離によるアルミニウム含有ゲルの除去の前でも、後でもよい。濃縮設備としては、特に限定されないが、自然循環型、カランドリア型、強制循環型、又はジャケット・コイル型の濃縮設備であることが好ましい。
【0029】
濃縮は減圧下で行うことが好ましい。濃縮圧力は、好ましくは1kPaA(絶対圧)~50kPaA、より好ましくは2.6kPaA~7.5kPaAである。
【0030】
濃縮は、一般に0℃(273K)~110℃(383K)の温度範囲で行われる。濃縮温度は、好ましくは60℃(333K)以下、より好ましくは40℃(313K)以下である。一実施形態では、濃縮温度は、0℃(273K)~60℃(333K)であり、好ましくは20℃(293K)~40℃(313K)である。
【0031】
濃縮時間は、特に限定されないが、好ましくは1時間~100時間、より好ましくは8時間~20時間である。
【0032】
濃縮は連続濃縮であってもよく、バッチ濃縮であってもよい。一実施形態では、連続濃縮の後にバッチ濃縮が実施される。連続濃縮とは、粗メチルアルミノキサンの体積を一定に保持して行う濃縮であり、濃縮槽に粗メチルアルミノキサンを連続的に供給しながら濃縮が行われる。バッチ濃縮は、例えば、メチルアルミノキサン組成物の濃度を精密に調整する目的で行うことができる。連続濃縮とバッチ濃縮を実施する実施形態において、前記濃縮時間は、連続濃縮及びバッチ濃縮の合計時間を意味する。
【0033】
メチルアルミノキサンは酸素との反応性が非常に高いため、一般に窒素ガス雰囲気下で保存される。メチルアルミノキサンは、溶液状態で直接オレフィン重合に使用することができる。メチルアルミノキサンをスプレー乾燥などにより乾燥して、粉末形態でオレフィン重合に使用することもできる。
【0034】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0035】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例0036】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0037】
実施例1
メチルアルミノキサン反応液24.9kg中にはアルミニウム含有ゲルが0.124kg(0.50wt%)含まれており、これをNGK製のセラミック膜フィルター(膜細孔径0.1μm、膜面積0.06m)にてクロスフローろ過した。30Lスラリータンクからろ過ポンプによってフィードした反応液の一部は膜ろ過されて30Lろ過液タンクに送られ、残部は循環経路によってスラリータンクに戻した。膜ろ過後、清澄なメチルアルミノキサンろ過液20.5kgをろ過液タンクに得た。
ろ過性能が落ちたので、膜ろ過で使用したセラミック膜フィルターに付着したケーク層を剥がすために、25℃にてトルエンで逆洗した。逆洗は、1バッチあたり0.1kgのトルエンを使用し6バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0038】
実施例2
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗を40℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を5バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0039】
実施例3
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗を60℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を4バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0040】
実施例4
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗を80℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を4バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0041】
実施例5
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗をジメチルホルムアミドにより25℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を2バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0042】
実施例6
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗をN-メチルピロリドンにより25℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を2バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0043】
実施例7
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗をテトラヒドロフランにより25℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を2バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0044】
実施例8
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗をテトラヒドロフランにより40℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を2バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0045】
実施例9
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗をテトラグライムにより25℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を2バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0046】
実施例10
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗を1,4-ジオキサンにより25℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を2バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0047】
実施例11
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗をトルエン/ジメチルホルムアミド(1/1(v/v))により25℃で実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。逆洗を2バッチ実施後、使用前のろ過性能に戻った。
【0048】
比較例1
ろ過で使用したセラミック膜フィルターの逆洗をヘキサンで実施したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。使用前のろ過性能を回復するためには逆洗が12バッチ必要であった。
比較例2
実施例1と同じ組成のメチルアルミノキサン反応液24.7kgをデッドエンドろ過したところ、途中でろ布が目詰まりしろ過できなくなった。
比較例3
実施例1と同じ組成のメチルアルミノキサン反応液25.6kgを沈降分離したところ、ゲルの沈降に30時間を要した。
【0049】
上記実施例及び比較例の逆洗に使用した溶媒種、温度、使用前のろ過性能を回復するために必要なセラミック膜フィルター逆洗バッチ数から、使用した溶媒の中では、極性溶媒の使用が洗浄液として好ましいことがわかる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、使用する材料、各種条件等は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。