(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140981
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241003BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20241003BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/08
B60W40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052382
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 慎史
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BB34
3D241DC31Z
3D241DC34Z
3D241DC44Z
3D241DC59Z
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】自車両と同方向に直進する移動体との衝突の回避の精度を向上させることができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置は、自車両が内輪旋回する際の周囲の情報である周辺情報を取得する取得部と、前記周辺情報に基づいて、前記内輪旋回の対象となる道路の曲率を算出する算出部と、前記周辺情報に基づいて、前記内輪旋回の経路である旋回経路付近に固定配置される第1物標の有無を検知する第1検知部と、前記旋回経路上において、前記内輪旋回を行う前の前記自車両の進行方向と同方向に進行する移動体を検知する第2検知部と、前記道路の前記曲率及び前記第1物標の有無に基づいて、前記自車両の車速を減速する制御、及び、前記移動体が検知された場合のブレーキタイミングの判断に用いるTTCの閾値を上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行う車両制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が内輪旋回する際の周囲の情報である周辺情報を取得する取得部と、
前記周辺情報に基づいて、前記内輪旋回の対象となる道路の曲率を算出する算出部と、
前記周辺情報に基づいて、前記内輪旋回の経路である旋回経路付近に固定配置される第1物標の有無を検知する第1検知部と、
前記旋回経路上において、前記内輪旋回を行う前の前記自車両の進行方向と同方向に進行する移動体を検知する第2検知部と、
前記道路の前記曲率及び前記第1物標の有無に基づいて、前記自車両の車速を減速する制御、及び、前記移動体が検知された場合のブレーキタイミングの判断に用いるTTCの閾値を上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行う車両制御部と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記周辺情報に基づいて、前記内輪旋回に対応して位置し、前記内輪旋回に対応した曲率を有する第2物標の有無を検知する第3検知部を更に備え、
前記車両制御部は、前記曲率、前記第1物標の有無及び前記第2物標の有無に基づいて、前記自車両の車速を減速する制御、及び、前記TTCの閾値を上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行う、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記自車両が進行可能な第1状態と進行不可能な第2状態とを表す第1信号の状態と、前記移動体が進行可能な第3状態と進行不可能な第4状態とを表す第2信号の状態とを取得し、
前記第1信号が前記第1状態になっているタイミングと、前記第3状態になっているタイミングとが重複している場合に、前記第1信号が前記第2状態になってからの経過時間を計測する計測部を更に備え、
前記車両制御部は、計測された経過時間が閾値を下回る場合、前記自車両の車速を減速する制御を行う、
請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に適用され、車両と物体との衝突の可能性を判定し、衝突の可能性が高い場合に、車両を減速または停止させて、衝突を回避する衝突回避制御が知られている。当該衝突回避制御には、各種自動車アセスメント(New Car Assessment Program (NCAP))で車両が交差点を折進する際に、交差点を折進前の車両と同方向に直進して交差点を通過する歩行者が存在する場合には、巻き込みによる当該歩行者との衝突を回避することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、交差点を折進する車両と同方向に直進する歩行者や自転車等の移動体との衝突を回避することは、車両の対向方向に直進する移動体との衝突を回避することと比較して困難であることが知られている。これは、例えば、当該移動体がカメラ等の車載センサの視野角に入りにくい、交差点内にポールやガードレール等が存在する場合、当該移動体がポールやガードレール等の死角に入りやすい等の理由によるものである。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、自車両と同方向に直進する移動体との衝突の回避の精度を向上させることが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両制御装置は、自車両が内輪旋回する際の周囲の情報である周辺情報を取得する取得部と、前記周辺情報に基づいて、前記内輪旋回の対象となる道路の曲率を算出する算出部と、前記周辺情報に基づいて、前記内輪旋回の経路である旋回経路付近に固定配置される第1物標の有無を検知する第1検知部と、前記旋回経路上において、前記内輪旋回を行う前の前記自車両の進行方向と同方向に進行する移動体を検知する第2検知部と、前記道路の前記曲率及び前記第1物標の有無に基づいて、前記自車両の車速を減速する制御、及び、前記移動体が検知された場合のブレーキタイミングの判断に用いるTTCの閾値を上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行う車両制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両と同方向に直進する移動体との衝突の回避の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両の自動運転ECUの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る車両が旋回する交差点の状況の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るTTCの考え方の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る自動運転ECUが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、
図1~
図5を参照しながら、本発明に係る車両制御装置の実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0010】
(車両の構成)
図1は、実施形態の運転支援装置が搭載される車両の概略構成を示すブロック図である。
【0011】
車両1(自車両)は、自動運転車である。車両1には、各部を制御するため、複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が搭載されている。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備えており、マイコンには、例えば、CPU、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、および、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリが内蔵されている。
【0012】
複数のECUには、駆動ECU11、操舵ECU12、ブレーキECU13、メータECU14およびボデーECU15が含まれる。それらは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる通信が可能に接続されている。
【0013】
駆動ECU11は、駆動装置21を制御する制御部である。駆動装置21は、エンジンを駆動源として備える構成であってもよいし、モータを駆動源として備える構成であってもよいし、エンジンおよびモータの両方を駆動源として備える構成であってもよい。駆動装置21には、必要に応じて、駆動源からの駆動力を変速して出力する変速機が含まれる。
【0014】
操舵ECU12は、操舵装置22を制御する制御部である。操舵装置22は、例えば、電動モータのトルクをステアリング機構に付与する電動パワーステアリング装置である。ステアリング機構は、例えば、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤを含み、電動モータのトルクによりラック軸が車幅方向に移動すると、そのラック軸の移動に伴って左右の操向輪が左右に転舵するように構成されている。
【0015】
ブレーキECU13は、制動装置23を制御する制御部である。制動装置23は、油圧式であってもよいし、電動式であってもよい。例えば、油圧式の制動装置23であれば、ブレーキアクチュエータを備え、このブレーキアクチュエータの機能により、各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が分配され、その油圧により各ブレーキから駆動輪を含む車輪に制動力が付与される。
【0016】
メータECU14は、メータパネル(図示せず)の各部を制御する制御部である。メータパネルには、車速やエンジン回転数を表示する計器類のほか、各種の情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示器が設けられている。また、メータECU14には、自動運転の緊急停止を指示するために操作される緊急停止スイッチ24が接続されている。
【0017】
ボデーECU15は、車両1のイグニッションスイッチがオフの状態でも動作の必要がある各部、例えば、左右の各ウインカやドアロックモータ等を制御する制御部である。
【0018】
また、複数のECUには、自動運転機能のための制御部として、自動運転ECU31(運転支援装置)、ライダECU32および単眼カメラECU33が含まれる。
【0019】
自動運転ECU31は、自動運転制御の制御中枢である。自動運転ECU31は、車両制御装置の一例である。なお、自動運転ECU31による自動運転制御は、運転者の操作を一切必要としない完全自動運転制御であってもよいし、必要に応じてブレーキを自動で作動させたり、自動でハンドル操作を行ったりする等の半自動的な制御であってもよい。自動運転ECU31は、各ECU11~15とCAN通信可能に接続されている。
【0020】
自動運転ECU31には、例えば、イーサネット(登録商標)規格の通信ケーブルを介して、全方位ライダ(LiDAR:Light Detection And Ranging)34が接続されている。全方位ライダ34は、360°全方位にレーザ光を照射し、探索範囲内に存在する物体からの反射光を光センサで受光して、その反射光に応じた検出信号を出力する。自動運転ECU31には、全方位ライダ34の検出信号が入力される。
【0021】
また、自動運転ECU31には、例えば、USB(Universal Serial Bus)規格の通信ケーブルを介して、GPS受信機35が接続されている。GPS受信機35は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星からの測位信号を受信する受信機である。GPS受信機35が受信する測位信号は、GPS受信機35から自動運転ECU31に入力される。
【0022】
ライダECU32は、例えば、イーサネット規格の通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されている。ライダECU32には、6個のライダ36が接続されている。ライダ36は、探索範囲にレーザ光を照射し、その探索範囲内に存在する物体からの反射光を光センサで受光して、その反射光に応じた検出信号を出力する。
【0023】
ライダ36は、例えば、車両1のフロントバンパの左端、中央および右端ならびにリヤバンパの左端、中央および右端にそれぞれ配置されている。ライダECU32には、各ライダ36から出力される検出信号が入力される。ライダECU32は、各ライダ36から出力される検出信号を処理し、その処理により得られるデータを自動運転ECU31に送信する。
【0024】
単眼カメラECU33は、例えば、USB規格の通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されている。単眼カメラECU33には、単眼カメラ37が接続されている。単眼カメラ37は、車両1の前方の探索範囲の静止画を所定のフレームレートで連続して撮影可能なカメラである。
【0025】
単眼カメラECU33には、単眼カメラ37から連続して出力される静止画の画信号が入力される。単眼カメラECU33は、単眼カメラ37から入力される画信号を処理し、その処理により得られる画像データを自動運転ECU31に送信する。
【0026】
(自動運転ECUの機能構成)
次に、実施形態に係る車両1の自動運転ECU31の機能について説明する。
図2は、実施形態に係る自動運転ECU31の機能構成の一例を示すブロック図である。自動運転ECU31は、経路生成部311と、取得部312と、物体認識部313と、第1検知部314と、第1算出部315と、計測部316と、第1判定部317と、第2判定部318と、第2検知部319と、第2算出部320と、車両制御部321とを機能部として備える。
【0027】
上記の機能部は、例えば、プログラム処理によってソフトウエア的に実現される。なお、上記の機能部は、論理回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0028】
なお、自動運転ECU31は、ほかに、全方位ライダ34やGPS受信機35等からの情報に基づいて車両1の位置(自己位置)を推定する自己位置推定部等も備えるが、自己位置推定部等の機能部の詳細な説明は省略する。
【0029】
以下、車両(自車両)1が交差点を左折するシーンを例として説明する。まず、
図3を用いて、想定される交差点付近の状況について説明する。
図3は、旋回経路に係る交差点の状況の一例を示す模式図である。
図3の例では、自車両1は、交差点ISを旋回するための旋回経路TPに従って、道路R1を進行し、交差点ISを左折(内輪旋回)して道路R2に進入しようとしている。
【0030】
また、歩行者P1は、自車両1の対向方向に進行中で横断歩道PCを渡ろうとしている。また、歩行者P2は、自車両1と同方向に進行中で横断歩道PCを渡ろうとしている。また、交差点ISの横断歩道PC付近には、ポールPOが設置されている。また、道路R1の左側にはガードレールGRが設置されている。また、交差点ISには、車両用信号VLが設置されている。また、横断歩道PC付近には、歩行者用信号PLが設置されている。
【0031】
ここで、
図3の例では、自車両1の対向方向に進行する歩行者P1については、全方位ライダ34や単眼カメラ37等の車載センサの検知可能範囲VAに入りやすく比較的検出はしやすい。これに対し、自車両1と同方向に進行する歩行者P2は、検知可能範囲VAに入り難く、検出が困難になることが知られている。また、歩行者P2は、ポールPOやガードレールGRの死角に入りやすい傾向があり、この点でも検出が困難になる。
【0032】
また、
図3の例で、車両用信号VLが青信号になっているタイミングと歩行者用信号PLが青信号になっているタイミングとが重複している場合、一般的に車両用信号VLが青信号になったばかりの状態では、歩行者が横断歩道PCを横断中である(交差点IC内に歩行者が存在している)可能性が高い傾向があると考えられている。
【0033】
一方、車両用信号VLが青信号になってから一定時間が経過している場合、歩行者は横断歩道PCを横断し終わっている(交差点IC内に歩行者が存在していない)可能性が高い傾向があると考えられている。
【0034】
上記を前提として、自動運転ECU31の各機能部について説明する。経路生成部311は、地図データや車両1の位置等の各種情報に基づいて、車両1の現在地から目的地までの経路を生成する。
図3の例では、経路生成部311が生成する経路には、旋回経路TPが含まれるものとする。
【0035】
取得部312は、各種構成から各種情報を取得する。取得部312は、例えば、ライダECU32、単眼カメラECU33、全方位ライダ34等から、車両1の周囲の物標の情報である周辺情報を取得する。
【0036】
また、取得部212は、自車両1が進行可能な青信号と、進行不可能な赤信号とを表す車両用信号の状態と、自車両1の対向方向又は自車両1と同方向に進行する歩行者等が進行可能な青信号と進行不可能な赤信号とを表す歩行者用信号の状態とに関する情報を取得する。この場合の車両用信号は、第1信号の一例である。また、この場合の歩行者用信号は、第2信号の一例である。
【0037】
図3の例では、取得部312は、交差点ISの周辺情報として、全方位ライダ34が交差点IS付近をセンシングして得られた検出信号や単眼カメラ37が交差点IS付近を撮影した撮影画像等を取得する。
【0038】
物体認識部313は、取得部312で取得された、全方位ライダ34の検出信号から取得される物体(車両、歩行者、建物、縁石、ガードレール、ポール、看板等の物標)までの距離の情報や、単眼カメラ37による撮影画像等から物体(物標)を認識する。
【0039】
図3の例では、物体認識部313は、単眼カメラ37による撮影画像から歩行者P1及びP2等の移動物標、ガードレールGRやポールPO等の物標を認識する。また、全方位ライダ34の検出信号から物体認識部313は、上記の物標までの距離の情報を認識する。
【0040】
第1検知部314は、旋回の対象となる対象交差点付近に存在する物標を検知する。例えば、第1検知部314は、物体認識部313の認識結果に基づいて、対象交差点付近の物標の有無を検知する。この場合の物標は、例えば、対象交差点付近に設置されるポールや看板、旋回経路における旋回前の直進経路に沿って設置されるガードレール等である。
【0041】
図3の例では、第1検知部314は、物体認識部313の認識結果に基づいて、ポールPO、ガードレールGRを交差点IS付近に存在する物標として検出する。この場合のポールPOは、第1物標の一例である。また、この場合のガードレールGRは、内輪旋回に対応した曲率を有すると言えるため、第2物標の一例である。
【0042】
第1算出部315は、旋回経路に係る道路の曲率を算出する。第1算出部315は、算出部の一例である。例えば、第1算出部315は、取得部312で取得された周辺情報に含まれる単眼カメラ37の撮影画像及び物体認識部313の認識結果に基づいて、対象交差点の右折時又は左折時における道路の曲率を推定(算出)する。なお、第1算出部315は、取得部312で取得された周辺情報に含まれる地図データに基づいて、道路の曲率を算出してもよい。
【0043】
図3の例では、第1算出部315は、単眼カメラ37が交差点IS付近を撮影した撮影画像に基づいて、道路R1を進行し、交差点ISを左折して道路R2に進入する場合の道路の曲率を推定する。
【0044】
計測部316は、自車両1に対する車両用信号が青信号になっているタイミングと、自車両1と同方向に進行する歩行者に対する歩行者用信号が青信号になっているタイミングとが重複している場合に、自車両1に対する車両用信号が青信号になってからの経過時間を計測する。
【0045】
例えば、計測部316は、取得部312で取得された周辺情報に含まれる単眼カメラ37が交差点IS付近の車両用信号を撮影した撮影画像に基づいて、自車両1に対する車両用信号が青信号になってからの経過時間を計測する。
【0046】
なお、自車両1が路車間通信等により、信号機の情報を取得できる場合、計測部316は、路車間通信等で取得した信号機の情報に基づいて、自車両1に対する車両用信号が青信号になってからの経過時間を計測してもよい。
【0047】
図3の例では、車両用信号VLが青信号になっているタイミングと歩行者用信号PLが青信号になっているタイミングとが重複している場合、計測部316は、単眼カメラ37が車両用信号VLを撮影した撮影画像に基づいて、車両用信号VLが青信号になってからの時間を計測する。
【0048】
第1判定部317は、道路の曲率及び対象交差点付近の物標の有無に基づいて、自車両1の車速を減速する制御を行うか否かを判定する。
【0049】
例えば、第1判定部317は、第1検知部314が交差点付近の物標を検出している場合、自車両1を減速する制御を行うと判定する。これは、一般的に、歩行者が交差点付近の物標の死角に入りやすく、当該方向者の検出が困難になる傾向があり、ブレーキを作動させてから実際に自車両1が停止するまでの時間を短縮するためである。なお、第1判定部317は、検出した物標の数や種類に応じて、自車両1の減速の程度を判定してもよい。
【0050】
また、例えば、第1判定部317は、第1算出部315が算出した道路の曲率が閾値を超える場合、自車両1を減速する制御を行うと判定する。これは、一般的に、旋回経路に係る道路の曲率が大きいと、対象交差点内の歩行者の早期検出が困難になる傾向があり、ブレーキを作動させてから実際に自車両1が停止するまでの時間を短縮するためである。なお、第1判定部317は、算出した道路の曲率に応じて、自車両1の減速の程度を判定してもよい。
【0051】
また、例えば、第1判定部317は、自車両1に対する車両用信号が青信号になっているタイミングと自車両1と同方向に進行する歩行者に対する歩行者用信号が青信号になっているタイミングとが重複しており、かつ、計測部316で計測された自車両1に対する車両用信号が青信号になってからの経過時間が所定時間未満の場合、自車両1を減速する制御を行うと判定してもよい。
【0052】
なお、道路の曲率及び交差点付近の物標の有無に基づいて、自車両1の車速を減速すると判定している場合には、第1判定部317は、計測部316で計測された自車両1に対する車両用信号が青信号になってからの経過時間が所定時間未満のとき、更に自車両1の車速を減速することとしてもよいし、現状以上の車速の減速はしないこととしてもよい。
【0053】
図3の例では、第1判定部317は、第1検知部314がポールPO及びガードレールGRを検出しているため、所定の速度にまで自車両1の車速を減速する制御を行うと判定する。なお、第1判定部317は、第1算出部315が算出した交差点ISに係る道路の曲率に応じて、減速の程度を判定してもよい。また、第1判定部317は、旋回経路TPに対応したガードレールGRの曲率に応じて、減速の程度を判定してもよい。
【0054】
第2判定部318は、道路の曲率及び交差点付近の物標の有無に基づいて、歩行者等の移動体が検知された場合のブレーキタイミングの判断に用いるTTC(Time To Collision)の閾値を上昇させる制御を行うか否かを判定する。
【0055】
以下、
図4を用いて、TTCの考え方について説明する。
図4は、TTCの考え方の一例を説明するである。
図4は、自車両1と他車両1AとのTTCの考え方の一例を表している。なお、
図4では、自車両1と他車両1AとのTTCの考え方について説明するが、他車両1Aは、歩行者等の他の移動体であっても同様の考え方を適用可能である。
【0056】
図4の例で、Lは、自車両1と他車両1Aとの距離を表している。Vrは、他車両1Aに対する自車両1の相対速度を表している。この場合、TTCは、下記の(1)式で表すことができる。
TTC=L/Vr・・・(1)
【0057】
本実施形態では、後述の第2算出部320で算出されるTTCが閾値を超えた場合に後述の車両制御部321がAEB(Autonomous Emergency Braking)を作動させて自車両1を停止させる制御を行う。
【0058】
つまり、TTCの閾値を小さくした場合、AEBの作動が遅れることになる。一方、TTCの閾値を大きくした場合、AEBの作動は早くなるものの、誤動作する可能性も高くなる。そこで、本実施形態では、第2判定部318は、上述のように、歩行者との衝突の可能性が高い場合のみ、TTCの閾値を上昇させると判定することとしている。
【0059】
例えば、第2判定部318は、第1検知部314が交差点付近の物標を検出している場合、TTCの閾値を上昇させる制御を行うと判定する。これは、上述のように、この場合、当該方向者の検出が困難になる傾向があり、早めにAEBを作動させることが求められるためである。なお、第2判定部318は、検出した物標の数や種類に応じて、TTCの閾値の上昇の程度を判定してもよい。
【0060】
また、例えば、第1判定部317は、第1算出部315が算出した道路の曲率が閾値を超える場合、TTCの閾値を上昇させる制御を行うと判定する。これは、上述のように、この場合、対象交差点内の歩行者の早期検出が困難になる傾向があり、早めにAEBを作動させることが求められるためである。なお、第2判定部318は、算出した道路の曲率に応じて、TTCの閾値の上昇の程度を判定してもよい。
【0061】
第2検知部319は、旋回経路上の移動体を検知する。例えば、第2検知部319は、物体認識部313の認識結果に基づいて、旋回経路上において、内輪旋回を行う前の自車両1の進行方向と同方向に進行する移動体を検知する。移動体は、例えば、歩行者、自転車、車椅子等である。なお、第2検知部319は、内輪旋回を行う前の自車両1の進行方向の対向方向に進行する移動体を検知してもよい。
【0062】
図3の例では、第2検知部319は、物体認識部313の認識結果に基づいて、歩行者P2を、内輪旋回を行う前の自車両1の進行方向と同方向に進行する移動体として検出する。
【0063】
第2算出部320は、TTCを算出する。例えば、第2算出部320は、第2検知部319で移動体が検出された場合、上述の(1)式を用いて自車両1と当該移動体とのTTCを算出する。ここで、TTCの算出に用いる自車両1と移動体との距離及び移動体に対する自車両1の相対速度は、例えば、全方位ライダ34の検出信号や単眼カメラ37の撮影画像から算出することができる。
【0064】
車両制御部321は、自車両1の自動運転制御を実行する。例えば、車両制御部321は、第1判定部317及び第2判定部318の判定結果に基づいて、自車両1の車速を減速する制御、及び、TTCの閾値を上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行う。また、例えば、車両制御部321は、第2算出部320で算出されたTTCがTTCの閾値を上回った場合、AEBを作動させる制御を実行する。
【0065】
また、例えば、車両制御部321は、TTCの閾値を上昇させる制御を行った場合、内輪旋回の完了後にTTCの閾値を所定の値に戻す制御を実行する。これにより、障害物等と衝突する可能性が低い場面におけるAEBの誤作動を防止することができる。
【0066】
(自動運転ECUの処理)
次に、自動運転ECU31が実行する処理について説明する。
図5は、自動運転ECU31が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、取得部312は、対象交差点の周辺情報を取得する(ステップS101)。例えば、取得部312は、対象交差点付近をセンシングして得られた全方位ライダ34の検出信号や対象交差点付近を撮影した単眼カメラ37の撮影画像等を周辺情報として取得する。また、例えば、物体認識部313は、取得された周辺情報に基づいて、自車両1と対象交差点付近に存在する物標を認識する。
【0068】
次いで、第1検知部314は、対象交差点付近に設置されたガードレール、ポール、看板等を検知する(ステップS102)。例えば、第1検知部314は、ステップS101で取得された情報に基づく物体認識部313の認識結果に基づいて、対象交差点付近に設置されたガードレール、ポール、看板等を検知する。
【0069】
次いで、第1算出部315は、旋回経路に係る道路の曲率を算出する(ステップS103)。例えば、第1算出部315は、ステップS101で取得された周辺情報に含まれる単眼カメラ37が対象交差点付近を撮影した撮影画像から旋回経路に係る道路の曲率を算出する。
【0070】
次いで、第1判定部317は、対象交差点の内輪旋回前に自車両1の車速を減速するか否かを判定する(ステップS104)。例えば、第1判定部317は、ステップS102で検知されたガードレール、ポール、看板等の有無、及びステップS103で算出された旋回経路に係る道路の曲率に基づいて、自車両1の車速を減速する制御を行うか否かを判定する。
【0071】
自車両1を減速する制御を行わない場合(ステップS104:No)、ステップS107の処理に移行する。
【0072】
一方、自車両1を減速する制御を行う場合(ステップS104:Yes)、第2判定部318は、TTCの閾値を上昇させる制御を行うか否かを判定する(ステップS105)。例えば、第2判定部318は、ステップS102で検知されたガードレール、ポール、看板等の有無、及びステップS103で算出された旋回経路に係る道路の曲率に基づいて、TTCの閾値を上昇させる制御を行うか否かを判定する。
【0073】
TTCの閾値を上昇させる制御を行わない場合(ステップS105:No)、ステップS107の処理に移行する。一方、TTCの閾値を上昇させる制御を行う場合(ステップS105:Yes)、車両制御部321は、TTCの閾値を上昇させる制御を実行する(ステップS106)。
【0074】
次いで、第2検知部319は、対象交差点内で歩行者を検出したか否かを判定する(ステップS107)。例えば、第2検知部319は、ステップS101で取得された情報に基づく物体認識部313の認識結果に基づいて、対象交差点内の歩行者を検知する。歩行者を検出していない場合(ステップS107:No)、ステップS111の処理に移行する。
【0075】
一方、歩行者を検出した場合(ステップS107:Yes)、第2算出部320は、自車両1と当該歩行者とのTTCを算出する(ステップS108)。例えば、第2算出部320は、ステップS101で取得された情報に基づく物体認識部313の認識結果等に基づいて、上述の(1)式を用いて自車両1とステップS107で検出された歩行者とのTTCを算出する。
【0076】
次いで、車両制御部321は、ステップS108で算出されたTTCがTTCの閾値を超えたか否かを判定する(ステップS109)。TTCがTTCの閾値を超えた場合(ステップS109:Yes)、車両制御部321は、AEBを作動させて自車両1を停止させる制御を実行し(ステップS110)、本処理を終了する。
【0077】
一方、TTCがTTCの閾値を超えていない場合(ステップS109:No)、車両制御部321は、対象交差点の内輪旋回が終了しているか否かを判定する(ステップS111)。内輪旋回が終了していない場合(ステップS111:No)、ステップS107の処理に戻る。
【0078】
一方、内輪旋回が終了している場合(ステップS111:Yes)、車両制御部321は、TTCの閾値を所定の値に戻す制御を実行し(ステップS112)、本処理を終了する。なお、TTCの閾値を上昇させる制御が行われていない場合、車両制御部321は、ステップS112の処理を省略するものとする。
【0079】
(自動運転ECUの効果)
以上のように、本実施形態に係る車両1の自動運転ECU31は、対象交差点の周辺情報を取得し、周辺情報に基づいて、対象交差点に係る道路の曲率を算出し、対象交差点を内輪旋回する旋回経路付近に固定配置されるガードレール、ポール、看板等の物標の有無を検知し、算出した道路の曲率及び検出した物標の有無に基づいて、自車両1の車速を減速する制御、及び、TTCの閾値を上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行う。
【0080】
ここで、内輪旋回前に自車両1の車速を減速させることで、歩行者を検出してブレーキを作動させてから実際に自車両1が停止するまでの時間を短縮することができる。また、TTCの閾値を上昇させることで、自車両1と歩行者との距離及び歩行者に対する自車両1の相対速度から算出されるTTCが閾値を下回りやすくなる。したがって、TTCの閾値を上昇させることで、早いタイミングでAEBを作動させて、自車両1が停止するまでの時間を短縮することができる。つまり、本実施形態に係る自動運転ECU31は、自車両1の車速を減速する制御、及び、TTCの閾値を上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行うことで、交差点を内輪旋回する場合に自車両1と歩行者とが衝突する可能性を低減することができる。
【0081】
ところで、自車両1には、例えば、全方位ライダ34や単眼カメラ37等の車載センサが搭載されるが、自車両1と同方向に進行する歩行者はこれらの車載センサのセンシング範囲に入り難いことが知られている。また、内輪旋回の旋回経路の曲率が大きい場合、当該歩行者を早期に検出することが困難になることも知られている。更に、当該歩行者は、対象交差点付近に設置されるガードレール、ポール、看板等の物標の死角に入りやすい傾向がある。このため、一般的に、車載センサのセンシング範囲に入りやすい自車両1の対向方向に進行する歩行者と比較して、自車両1と同方向に進行する歩行者との衝突を回避するのは困難である。
【0082】
これに対し、本実施形態に係る自動運転ECU31は、対象交差点に係る道路の曲率及び対象交差点付近に設置された物標の有無に基づいて、自車両1の車速を減速する制御、及び、TTCの閾値を上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行うため、検出が困難な自車両1と同方向に進行する歩行者についても、自車両1との衝突を回避できる可能性を高めることが可能である。
【0083】
また、本実施形態に係る自動運転ECU31は、周辺情報として、自車両1に対する車両用信号及び自車両1と同方向に進行する歩行者に対する歩行者用信号に関する情報を取得し、自車両1に対する車両用信号が青信号になっているタイミングと自車両1と同方向に進行する歩行者に対する歩行者用信号が青信号になっているタイミングとが重複しており、かつ、自車両1に対する車両用信号が青信号になってからの経過時間が所定時間未満の場合、自車両1を減速する制御を行う。
【0084】
ここで、自車両1に対する車両用信号が青信号になっているタイミングと自車両1と同方向に進行する歩行者に対する歩行者用信号が青信号になっているタイミングとが重複している場合、自車両1に対する車両用信号が青信号になってからの経過時間が短いと、歩行者が交差点内に存在する可能性が高く、当該経過時間が長くなると、歩行者が交差点内に存在する可能性が低い傾向があることが知られている。本実施形態に係る自動運転ECU31は、自車両1に対する車両用信号が青信号になってからの経過時間が所定時間未満の場合には、内輪旋回前の自車両1の車速の減速を強化することができるため、自車両1と歩行者とが衝突する可能性を低減することができると考えられる。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
また、本実施形態の自動運転ECU31で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 車両
31 自動運転ECU
311 経路生成部
312 取得部
313 物体認識部
314 第1検知部
315 第1算出部
316 計測部
317 第1判定部
318 第2判定部
319 第2検知部
320 第2算出部
321 車両制御部