(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140983
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ガス分離装置、ガス分離方法、及び精製ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/047 20060101AFI20241003BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20241003BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20241003BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241003BHJP
C01B 39/46 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B01D53/047
B01J20/18 A
B01J20/34 E
B01J20/34 Z
C01B32/50
C01B39/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052385
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大久保 敦史
(72)【発明者】
【氏名】赤荻 隆之
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G073
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012CA03
4D012CA20
4D012CB16
4D012CD07
4D012CD10
4D012CE01
4D012CE02
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4D012CF02
4D012CF03
4D012CF05
4D012CF10
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4D012CG02
4D012CH01
4D012CH10
4G066AA61B
4G066BA36
4G066CA35
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4G066DA01
4G066GA01
4G066GA14
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA57
4G073BA62
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BD06
4G073BD21
4G073CZ50
4G073FB21
4G073FB26
4G073FD08
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA19
4G073UA06
4G146JA02
4G146JB10
4G146JC27
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】長期にわたり安定運転可能なガス分離装置、ガス分離方法、及び精製ガスの製造方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素を含む混合ガスから、前記二酸化炭素を分離するガス分離装置であって、二酸化炭素を吸着するゼオライトを含む吸着剤成形体が充填された吸着塔と、減圧装置を有する前記吸着塔から二酸化炭素を取り出す二酸化炭素回収ラインと、を備え、前記二酸化炭素回収ラインが、前記吸着塔と前記減圧装置との間に粉体除去部を有する、ガス分離装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む混合ガスから、前記二酸化炭素を分離するガス分離装置であって、
二酸化炭素を吸着するゼオライトを含む吸着剤成形体が充填された吸着塔と、
減圧装置を有する前記吸着塔から二酸化炭素を取り出す二酸化炭素回収ラインと、
を備え、
前記二酸化炭素回収ラインが、前記吸着塔と前記減圧装置との間に粉体除去部を有する、
ガス分離装置。
【請求項2】
前記粉体除去部がストレーナーである、請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項3】
前記ストレーナーの目開きが0.026mm以上である、請求項2に記載のガス分離装置。
【請求項4】
前記粉体除去部の初期圧力損失が5kPa以下である、請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項5】
前記ゼオライトが、GIS型ゼオライトである、請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項6】
前記吸着剤成形体のCO2吸着等温線における40kPa及び100kPaの吸着量差が20cc以下である、請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項7】
前記粉体除去部の圧力損失を測定する圧力損失測定部と、
前記圧力損失測定部からの結果に基づいて、粉体除去部のメンテナンス情報を表示する管理部と、を備える、請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項8】
前記粉体除去部が、前記二酸化炭素回収ラインに切り替え可能に接続された2以上の粉体除去装置を備える、請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項9】
前記粉体除去装置の圧力損失を測定する圧力損失測定部と、
前記圧力損失測定部からの結果に基づいて、粉体除去装置の切替を行う管理部と、を備える、請求項8に記載のガス分離装置。
【請求項10】
前記混合ガスが、二酸化炭素とは異なる気体物質Aを含み、
前記吸着塔から気体物質Aを取り出す気体物質A回収ラインと、
を備え、
前記二酸化炭素と前記気体物質Aとを分離する、
請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項11】
二酸化炭素を含む混合ガスから、吸着剤が充填された吸着塔を用いて、前記二酸化炭素と前記気体物質Aとを分離するガス分離方法であって、
前記吸着塔内に前記混合ガスを導入し、前記吸着剤に二酸化炭素を吸着させる吸着工程と、
前記吸着塔から二酸化炭素を減圧排気させることで、前記吸着剤から前記二酸化炭素を取り出す脱着工程と、
を含み、
前記脱着工程が、気体中から粉体除去しながら減圧排気する、
ガス分離方法。
【請求項12】
前記吸着工程における平均温度が、0℃以上である、請求項11に記載のガス分離方法。
【請求項13】
前記脱着工程における到達圧力Pbが、30kPa以下である、請求項11に記載のガス分離方法。
【請求項14】
前記脱着工程における平均温度が、150℃以下である、請求項11に記載のガス分離方法。
【請求項15】
前記粉体除去が、粉体除去部により行われ、
圧力損失測定部が、前記粉体除去部の圧力損失を測定する圧損測定工程と、
管理部が、前記圧力損失測定工程からの結果に基づいて、粉体除去部のメンテナンス情報を表示する管理工程と、を備える、請求項11に記載のガス分離方法。
【請求項16】
前記粉体除去が、前記二酸化炭素回収ラインに切り替え可能に接続された2以上の粉体除去装置を備える粉体除去部により行われる、請求項11に記載のガス分離方法。
【請求項17】
圧力損失測定部が、前記粉体除去装置の圧力損失を測定する圧力損失測定工程と、
管理部が、前記圧力損失測定工程からの結果に基づいて、粉体除去装置の切替を行う管理工程と、を備える、請求項16に記載のガス分離方法。
【請求項18】
前記混合ガスが、二酸化炭素とは異なる気体物質Aを含み、
前記吸着工程において気体物質Aを取り出す、
請求項11に記載のガス分離方法。
【請求項19】
請求項11~18のいずれか一項に記載のガス分離方法により、精製された二酸化炭素を得る、精製ガスの製造方法。
【請求項20】
請求項18に記載のガス分離方法により、精製された気体物質Aを得る、精製ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離装置、ガス分離方法、及び精製ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出削減のため、二酸化炭素の分離に対するニーズが拡大している。二酸化炭素の分離方法はいくつかあるが、その一つとして吸着剤を用いた分離方法がある。吸着剤を用いた分離方法には、ガスの吸着時の圧力より脱離時の圧力を下げ、高圧力時の吸着量と低圧力時の吸着量の差を利用してガスの分離を行う圧力スイング式吸着分離方法(PSA:Pressure Swing Adsorption)と、ガスの吸着時の温度より脱離時の温度を上げ、低温時の吸着量と高温時の吸着量の差を利用してガスの分離を行う温度スイング式吸着分離方法(TSA:Thermal Swing Adsorption)とがある。さらに、これらを組み合わせた圧力・温度スイング式吸着脱離法(PTSA:Pressure and Therml Swing Adsorption)がある。
【0003】
例えば、バイオガスから高純度のメタン及び高純度の二酸化炭素を取り出すことが可能な二酸化炭素製造方法として、吸着剤が充填された吸着塔を用いた圧力変動吸着法により、バイオガスからメタンとともに二酸化炭素を分離する二酸化炭素製造方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二酸化炭素の排出削減の観点からバイオガス等の混合ガスからの二酸化炭素の分離回収が求められる。二酸化炭素を分離回収する方法として、二酸化炭素を吸着するゼオライトを用いる方法が提案されている。当該方法においては、ハンドリングの容易性の観点から、ゼオライトを成形した吸着剤成形体を用いて二酸化炭素を吸着する。実際に吸着剤成形体を製造し、二酸化炭素を吸着させると、成形体が脆化し、粉体が発生することが明らかになった。粉体が装置内での圧力損失につながり、減圧時の到達圧力が高くなり、二酸化炭素の分離回収装置の稼働時間が制限される。
【0006】
本発明は、長期にわたり安定運転可能なガス分離装置、ガス分離方法、及び精製ガスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の実施形態を包含する。
<1>
二酸化炭素を含む混合ガスから、前記二酸化炭素を分離するガス分離装置であって、
二酸化炭素を吸着するゼオライトを含む吸着剤成形体が充填された吸着塔と、
減圧装置を有する前記吸着塔から二酸化炭素を取り出す二酸化炭素回収ラインと、
を備え、
前記二酸化炭素回収ラインが、前記吸着塔と前記減圧装置との間に粉体除去部を有する、
ガス分離装置。
<2>
前記粉体除去部がストレーナーである、<1>に記載のガス分離装置。
<3>
前記ストレーナーの目開きが0.026mm以上である、<2>に記載のガス分離装置。
<4>
前記粉体除去部の初期圧力損失が5kPa以下である、<1>~<3>のいずれかに記載のガス分離装置。
<5>
前記ゼオライトが、GIS型ゼオライトである、<1>~<4>のいずれかに記載のガス分離装置。
<6>
前記吸着剤成形体のCO2吸着等温線における40kPa及び100kPaの吸着量差が20cc以下である、<1>~<5>のいずれかに記載のガス分離装置。
<7>
前記粉体除去部の圧力損失を測定する圧力損失測定部と、
前記圧力損失測定部からの結果に基づいて、粉体除去部のメンテナンス情報を表示する管理部と、を備える、<1>~<6>のいずれかに記載のガス分離装置。
<8>
前記粉体除去部が、前記二酸化炭素回収ラインに切り替え可能に接続された2以上の粉体除去装置を備える、<1>~<7>のいずれかに記載のガス分離装置。
<9>
前記粉体除去装置の圧力損失を測定する圧力損失測定部と、
前記圧力損失測定部からの結果に基づいて、粉体除去装置の切替を行う管理部と、を備える、<8>に記載のガス分離装置。
<10>
前記混合ガスが、二酸化炭素とは異なる気体物質Aを含み、
前記吸着塔から気体物質Aを取り出す気体物質A回収ラインと、
を備え、
前記二酸化炭素と前記気体物質Aとを分離する、
<1>~<9>のいずれかに記載のガス分離装置。
<11>
二酸化炭素を含む混合ガスから、吸着剤が充填された吸着塔を用いて、前記二酸化炭素と前記気体物質Aとを分離するガス分離方法であって、
前記吸着塔内に前記混合ガスを導入し、前記吸着剤に二酸化炭素を吸着させる吸着工程と、
前記吸着塔から二酸化炭素を減圧排気させることで、前記吸着剤から前記二酸化炭素を取り出す脱着工程と、
を含み、
前記脱着工程が、気体中から粉体除去しながら減圧排気する、
ガス分離方法。
<12>
前記吸着工程における平均温度が、0℃以上である、<11>に記載のガス分離方法。
<13>
前記脱着工程における到達圧力Pbが、30kPa以下である、<11>又は<12>に記載のガス分離方法。
<14>
前記脱着工程における平均温度が、150℃以下である、<11>~<13>のいずれかに記載のガス分離方法。
<15>
前記粉体除去が、粉体除去部により行われ、
圧力損失測定部が、前記粉体除去部の圧力損失を測定する圧損測定工程と、
管理部が、前記圧力損失測定工程からの結果に基づいて、粉体除去部のメンテナンス情報を表示する管理工程と、を備える、<11>~<14>のいずれかに記載のガス分離方法。
<16>
前記粉体除去が、前記二酸化炭素回収ラインに切り替え可能に接続された2以上の粉体除去装置を備える粉体除去部により行われる、<11>~<15>のいずれかに記載のガス分離方法。
<17>
圧力損失測定部が、前記粉体除去装置の圧力損失を測定する圧力損失測定工程と、
管理部が、前記圧力損失測定工程からの結果に基づいて、粉体除去装置の切替を行う管理工程と、を備える、<16>に記載のガス分離方法。
<18>
前記混合ガスが、二酸化炭素とは異なる気体物質Aを含み、
前記吸着工程において気体物質Aを取り出す、
<11>~<17>のいずれかに記載のガス分離方法。
<19>
<11>~<18>のいずれかに記載のガス分離方法により、精製された二酸化炭素を得る、精製ガスの製造方法。
<20>
<18>に記載のガス分離方法により、精製された気体物質Aを得る、精製ガスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期にわたり安定運転可能なガス分離装置、ガス分離方法、及び精製ガスの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1はガス分離装置100の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、粉体除去部6の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3はガス分離装置100の動作による、二酸化炭素吸着塔3aと、二酸化炭素吸着塔3bの圧力変動の経時的変化を示す概念図である。
【
図4】
図4は、ガス分離装置100をバイオガス精製への適用するバイオガス精製システム1000の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
本実施形態に係るガス分離装置は、
二酸化炭素を含む混合ガスから、前記二酸化炭素を分離するガス分離装置であって、
二酸化炭素を吸着するゼオライトを含む吸着剤成形体が充填された吸着塔と、
減圧装置を有する前記吸着塔から二酸化炭素を取り出す二酸化炭素回収ラインと、
を備え、
前記二酸化炭素回収ラインが、前記吸着塔と前記減圧装置との間に粉体除去部を有する。
上述の構成によれば、長期にわたり安定運転可能なガス分離装置、ガス分離方法、及び精製ガスの製造方法を提供することが可能となる。
【0012】
なお、本実施形態においては、混合ガス中に含まれる二酸化炭素とは異なる別の気体(以下「気体物質A」ともいう)をあわせて分離してもよい。
以下、ガス分離装置に用いる吸着成形体と、ガス分離装置により処理する二酸化炭素及び気体物質Aを含む混合ガスについて説明した後、本実施形態に係るガス分離装置について説明する
【0013】
<吸着剤成形体>
二酸化炭素吸着塔3aには、吸着剤成形体が充填されている。吸着剤成形体は、二酸化炭素を吸着するゼオライトを含む。
【0014】
ゼオライトとしては、例えば、CHA型ゼオライト、GIS型ゼオライト、FAU型ゼオライト、MWF型ゼオライト、LTA型ゼオライト等が挙げられる。これらの中でもGIS型ゼオライトが好ましい。
【0015】
GIS型ゼオライトは、シリカ及びアルミナが主成分であることが好ましい。主成分とは、51質量%以上を占める成分である。
GIS型ゼオライトは、シリカ及びアルミナを含有してもよい。GIS型ゼオライトにおけるアルミニウムの含有量は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上である。GIS型ゼオライトにおけるシリコンの含有量は、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。アルミニウム及びシリコンの含有量の上限としては、後述のSARが所定の範囲を満たすことが好ましく、当該SARの値により定められる。
【0016】
GIS型ゼオライトにおけるシリカアルミナ比(SiO2/Al2O3で表記されるシリカとアルミナのモル比を表し、以下、「SAR」ともいう)は、好ましくは3.40以上である。GIS型ゼオライトは、SARが低い程、親水性となり、二酸化炭素のような極性分子の吸着力が強くなる。SARが低いと、吸着力が強すぎるために、加熱や真空引きによって脱着させるために必要なエネルギーが大きくなるため、SARは高い方が好ましいが、SARが高すぎると吸着質に対する相互作用が小さくなる。SARは、より好ましくは4.40~3000であり、更に好ましくは4.60~500であり、更に好ましくは4.80~100る。
【0017】
GIS型ゼオライトにおけるリンの含有量は、好ましくは4質量%以下である。リンの含有量の下限としては、特に限定されず、0質量%以上であってもよい。
GIS型ゼオライトにおけるZrの含有量は、好ましくは8質量%以下である。Zrの含有量の下限としては、特に限定されず、0質量%以上であってもよい。
GIS型ゼオライトにおけるTiの含有量は、好ましくは8質量%以下である。Tiの含有量の下限としては、特に限定されず、0質量%以上であってもよい。
二酸化炭素の選択的吸着能をより向上させる観点から、ゼオライトにおけるリン原子の含有量が1.5質量%以下であることがより好ましく、とりわけ好ましくは0質量%である。
また、上記アルミニウム、シリコン、リン、Zr及びTiの含有量については、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。また、上記アルミニウム、シリコン、リン、Zr及びTiの含有量については、例えば、GIS型ゼオライトの合成に用いる混合ゲルの組成比等を後述する好ましい範囲に調整すること等により、上述した範囲に調整することができる。
【0018】
二酸化炭素の選択的吸着能を向上させる観点から、GIS型ゼオライト中のカチオン種として、カリウム又はリチウムを含むことが好ましく、カリウムを含むことがより好ましい。また、ゼオライト中のカリウム及びリチウムの合計含有量は、GIS型ゼオライト中のアルカリ金属の物質量の合計値(T)に対するカリウム及びリチウムの物質量の合計値(Z)の割合(Z/T)として算出する。Z/Tは、0.05以上であることが好ましく、より好ましくは0.10以上であり、さらに好ましくは0.15以上である。Z/Tの上限は特に制限されないが、Z/Tは1.00以下であってもよい。Z/Tは、ゼオライトを水酸化ナトリウム水溶液又は王水で熱溶解し、適宜希釈した液を用いてICP-発光分光分析することで測定することができる。Z/Tは、より詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。Z/Tは、GIS型ゼオライトのカチオン種のカリウム及びリチウムの割合を変更することで調整できる。
GIS型ゼオライト中のアルカリ金属の各々の物質量の合計値(T)に対するカリウムの物質量の合計値(K)の割合(K/T)が、0.05以上であることが好ましく、より好ましくは0.10以上であり、さらに好ましくは0.15以上である。K/Tの上限は特に制限されないが、K/Tは1.00以下であってもよい。
【0019】
脱着させるために必要なエネルギーの観点から、SARは高い方が好ましい一方で、GIS型ゼオライトにおいてSARが高くなると、二酸化炭素の吸脱着等温線における吸脱着ヒステリシスが顕在化することが確認される。GIS型ゼオライトでは、ゼオライト骨格中のSi及びAlの結合様式を制御することで、二酸化炭素の吸脱着等温線における吸脱着ヒステリシスを解消できる。具体的には、29Si-MAS-NMRスペクトルで観測されるQ4(3Al)、Q4(2Al)、Q4(1Al)、Q4(0Al)に帰属されるピーク面積強度をそれぞれ、a、b、c、dとしたとき、(a+d)/(b+c)≧0.192を満たすことが好ましく、より好ましくは0.913≧(a+d)/(b+c)≧0.195であり、更に好ましくは0.519≧(a+d)/(b+c)≧0.199である。29Si-MAS-NMRスペクトルで観測されるQ4(3Al)、Q4(2Al)、Q4(1Al)、Q4(0Al)といったピークはゼオライト骨格中におけるSi及びAlの結合様式を表し、面積強度の和であるX,Yはそれらの結合様式の存在量の和、Zは存在比を表す。Si及びAlの結合様式の存在比は吸着時、脱着時におけるゼオライト骨格自体の構造変化に影響を与えるため、ゼオライト骨格中におけるSi及びAlの結合様式の存在比であるZを適切な範囲とすることで吸脱着等温線における吸脱着ヒステリシスを解消できる。
【0020】
29Si-MAS-NMRスペクトルは、底に水を張ったデシケータを準備し、当該デシケータ内の上部に試料管に入れたゼオライトを48時間、室温(25℃)にて保持することで調湿処理を行い、その後、固体NMR測定装置により測定を行う。固体NMR測定装置としては、例えば、JEOL社製「RESONANCE ECA700」(磁場強度:16.44 T(1Hにおける共鳴周波数700MHz))が挙げられる。
【0021】
本実施形態のGIS型ゼオライトは、29Si-MAS-NMRスペクトルにおいて、一般的には次の5つのピークを示す。
(1)Q4(0Al):酸素を介してAlと全く結合していないSiのピーク
(2)Q4(1Al):酸素を介して1個のAlと結合しているSiのピーク
(3)Q4(2Al):酸素を介して2個のAlと結合しているSiのピーク
(4)Q4(3Al):酸素を介して3個のAlと結合しているSiのピーク
(5)Q4(4Al):酸素を介して4個のAlと結合しているSiのピーク
【0022】
また、29Si-MAS-NMRスペクトルにおいて、それらのピーク位置は、一般的には-112ppmから-80ppmに存在し、高磁場側からQ4(0Al)、Q4(1Al)、Q4(2Al)、Q4(3Al)、Q4(4Al)に帰属できる。ゼオライト骨格中に存在するカチオン種によってピーク位置は変化し得るが、一般的には以下の範囲にピーク位置が存在する。
(1)Q4(0Al):-105ppmから-112ppm
(2)Q4(1Al):-100ppmから-105ppm
(3)Q4(2Al):-95ppmから-100ppm
(4)Q4(3Al):-87ppmから-95ppm
(5)Q4(4Al):-80ppmから-87ppm
【0023】
29Si-MAS-NMRスペクトルのピーク面積強度については、解析プログラムdmfit(♯202000113バージョン)を用いて、ガウス及びローレンツ関数により解析を行い、振幅(スペクトルの最大値の高さ)、位置(スペクトル位置、ppm)、幅(スペクトルの半値全幅、ppm)、ガウス/ローレンツ比(xG/(1-x)L)の4つのパラメーターを最小二乗法のアルゴリズムで最適化計算することで得られる。
【0024】
この計算で得られるピークの面積強度を用いて、Q4(3Al)、Q4(2Al)、Q4(1Al)、Q4(0Al)に帰属されるピーク面積強度a、b、c、dを求められる。
29Si-MAS-NMRスペクトルは、より詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。(a+d)/(b+c)を所定範囲とするためには、アルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属を含む塩化合物を添加し、当該塩化合物の添加によりもたらされるカチオンとアルミ源の量比等により調整することが可能である。
【0025】
(結合剤)
吸着剤成形体は、結合剤を含んでいてもよい。結合剤としては、例えば、無機結合剤、有機結合剤が挙げられる。
【0026】
無機結合剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、チタニア等の無機酸化物、ベントナイト、カオリン等の粘土鉱物、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウムが挙げられる。アルミナとしては、例えば、α-アルミナ、γ-アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、バイヤライト、ギブサイト、ダイアスポアが挙げられる。シリカとしては、例えば、コロイダルシリカ、水ガラス、ヒュームドシリカ、シリカゾル、湿式法シリカ、乾式法シリカ、天然シリカが挙げられる。これらの無機結合剤は単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。これらの無機結合剤の中でも、ゼオライト成形体の強度を高める観点から、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、チタニアが好ましく、シリカ及びアルミナがより好ましい。
【0027】
無機結合剤の含有量としては、吸着剤成形体の全量(100質量%)に対し、1~99質量%が好ましく、5~90質量%がより好ましく、8~80質量%がさらに好ましい。
【0028】
有機結合剤としては、例えば、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ラテックス、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、塩化ビニル、アクリル、ポリアミド、ウレア、メラミン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリサルファイド、ブチルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムが挙げられる。これらの有機結合剤は単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。これらの有機結合剤の中でも、GIS型ゼオライトとの表面結合の観点から、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコールが好ましく、セルロース、メチルセルロース、及びポリビニルアルコールがより好ましい。
【0029】
有機結合剤の含有量としては、吸着剤成形体の全量(100質量%)に対し、1~99質量%が好ましく、5~90質量%がより好ましく、8~80質量%がさらに好ましい。
【0030】
なお、上述の無機結合剤、有機結合剤をそれぞれ1種類以上含むことが好ましい。
【0031】
結合剤の合計含有量としては、吸着剤成形体の全量(100質量%)に対し、1~99質量%が好ましく、5~90質量%がより好ましく、8~80質量%がさらに好ましい。担体の含有量を高くすると、成形体は強度が高くなる傾向にあるが、ゼオライト自体の含有量が低くなる傾向にある。そのため、結合剤の含有量は、用途により求められる強度や性能などを考慮し、調整してもよい。
【0032】
吸着剤成形体の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、円柱状、楕円状、俵型、三つ葉型、リング状、粉状などが挙げられる。これらの中でも、球状、円柱状がさらに好ましい。成形体の大きさは特に制限ないが、成形体を使用する状況により変化する。例えば、固定床や移動床など、流動状態以外で成形体を用いるプロセスの使用においては、長さ3mm以上30mm以下及び直径1mm以上30mm以下の円柱状であることが好ましい。円柱の長さは、より好ましくは3mm以上10mm以下であり、さらに好ましくは3mm以上8mm以下である。円柱の直径は、より好ましくは2mm以上4mm以下である。
【0033】
上記長さ及び直径は、最小読み取り値が0.1mm以下のノギスを用いるノギス法によりペレットの長さ及び直径を3つのサンプルに対して測定を行い、その平均値を長さ及び直径として測定することができ、例えば分級等の操作によって上述した範囲に調整することができる。
【0034】
吸着剤成形体の二酸化炭素/気体物質Aの吸着選択率は10以上であることが好ましい。このように二酸化炭素/気体物質Aの吸着選択率が高い吸着剤を用いることで、吸着工程1回により取り出される気体物質Aの回収率、及び脱着工程1回により取り出される二酸化炭素の純度を高めることができる。
吸着剤成形体の吸着選択率は、吸着等温線の測定により得られた760mmHgにおける二酸化炭素、気体物質Aの平衡吸着量(cm3/gSTP)をそれぞれ、q(CO2),q(GMA)としたとき、q(CO2)/q(GMA)を吸着選択率とする。
吸着剤の二酸化炭素/気体物質Aの吸着選択率は、好ましくは13以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上である。
吸着剤成形体の二酸化炭素/気体物質Aの吸着選択率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0035】
〔吸着剤成形体の製造方法〕
(調製工程)
上述のGIS型ゼオライトは、例えば、珪素を含むシリカ源、アルミニウムを含むアルミ源、アルカリ金属(M1)及びアルカリ土類金属(M2)から選ばれる少なくとも1種を含むアルカリ源、アルカリ金属(M1)及びアルカリ土類金属(M2)から選ばれる少なくとも1種を含む塩化合物、リンを含むリン源、有機構造規定剤及び水を含有する混合ゲルの調製工程を含む製造方法により得られる。
【0036】
(水熱合成工程)
GIS型ゼオライトの製造方法において、水熱合成温度が80℃~200℃である水熱合成工程をさらに含むことが好ましい。当該水熱合成温度は好ましくは100℃~180℃である。調製工程により得た混合ゲルを所定の温度で、所定の時間、撹拌又は静置状態で保持することにより水熱合成する。水熱合成の時間は一般的に用いられる時間であれば特に限定されず、3時間~30日であることが好ましく、10時間~20日であることがより好ましく、24時間~10日であることが更に好ましい。
【0037】
(分離・乾燥工程)
水熱合成工程後、生成物である固体と水を含む液体とを分離するが、その分離方法は一般的な方法であれば特に限定されず、濾過、デカンテーション、噴霧乾燥法(回転噴霧、ノズル噴霧及び超音波噴霧など)、回転蒸発器を用いた乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法、又は自然乾燥法等を用いることができ、通常は濾過又はデカンテーションにより分離することができる。
【0038】
(焼成工程)
GIS型ゼオライトの製造方法において、焼成温度が300℃~450℃である焼成工程をさらに含むことが好ましい。焼成する温度は、350℃~420℃であることがより好ましく、360℃~400℃以下であることがさらに好ましい。焼成時間は、0.5時間~10日であってもよく、1時間~7日であってもよく、3時間~5日であってもよい。焼成の雰囲気は、一般的に用いられる雰囲気であれば特に限定されないが、通常、空気雰囲気、窒素、アルゴンなどの不活性ガスや酸素を付加した雰囲気が用いられる。
【0039】
(カチオン交換工程)
GIS型ゼオライトの製造方法において、カチオン交換工程をさらに含むことが好ましい。カチオン交換は、以下に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、あるいは硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩、あるいは前記炭酸塩、硝酸塩に含まれる炭酸イオン、硝酸イオンをハロゲン化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、リン酸イオン又はリン酸水素イオンに変更した塩、硝酸や塩酸などの酸を用いることができる。カチオン交換の温度は、一般的なカチオン交換の温度であれば特に限定されないが、通常、室温から100℃以下である。
【0040】
カチオン交換後のゼオライトを分離する際、その分離方法は一般的な方法であれば特に限定されず、濾過、デカンテーション、噴霧乾燥法(回転噴霧、ノズル噴霧及び超音波噴霧など)、回転蒸発器を用いた乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法、又は自然乾燥法等を用いることができ、通常は濾過又はデカンテーションにより分離することができる。
【0041】
〔吸着剤成形体の製造方法〕
吸着剤成形体の製造方法としては、特に限定されないが、ゼオライトと、その他の任意成分(例えば結合剤)とを混合して調製する原料混合工程(X)と、調製した原料を成形処理に供して前駆体を得る成形処理工程(Y)と、前記前駆体を焼成してゼオライト成形体を得る焼成工程(Z)と、を含んでいてもよい。
その他、吸着剤成形体の製造方法としては、所望の吸着剤成形体が得られる場合には、例えば、押出し成形処理、射出処理、射出・鋳込処理、転動造粒処理、圧縮成形処理、噴霧乾燥処理もしくはこれらの方法を2種以上を組み合わせた方法等により成形してもよい。
【0042】
(原料混合工程(X))
原料混合工程(X)において、使用される原料は、粉体、溶媒分散、ゾル状、液状など製法に合わせた状態で使用してよい。使用される原料のうち、例えば、無機結合剤を用いる場合においては、粉体、溶媒分散、ゾル状、液状など製法に合わせた状態で使用されるが、取り扱い容易性の観点から粉体、ゾル状が好ましい。これらの無機結合剤は単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
原料を混合する温度としては、特に限定されないが、例えば、10℃~80℃が好ましく、15℃~60℃がより好ましい。
【0044】
原料を調製する際の撹拌手段としては、任意の手段を採用することがでる。例えば噴霧乾燥処理の様に、原料混合後の状態がスラリー状である場合、好ましくは撹拌翼があげられる。撹拌に使用する翼としては、具体的には、プロペラ形、パドル形、フラットパドル形、タービン形、コーン形などが挙げられる。また、効率的な撹拌を行なうために、槽内に邪魔板等を設置してもよい。撹拌機の数は、触媒原料液槽の大きさ、撹拌翼の形状などに応じて最適な条件を選択すればよい。
【0045】
また、例えば押出成形処理の様に、原料混合後にファニキュラーからキャピラリー域の粘土状となる場合、原料の状態に合わせて、混合機や混練機などを選択することが好ましい。
【0046】
〔成形処理工程(Y)〕
成形処理工程(Y)における成形処理としては、例えば、押出し成形処理、圧縮成形処理、噴霧乾燥処理が挙げられる。
【0047】
押出し成形処理としては、特に限定されないが、例えば、用いる原料(押出し成形処理においては「原料粘土」ともいう。)の性状に合わせて、押出し成形時の温度としては10℃~80℃が好ましく、15℃~75℃がより好ましい。
【0048】
原料粘土中の水分量は35質量%~50質量%が好ましく、38質量%~45質量%がより好ましい。水分量が50質量%以下である場合、原料粘土の柔軟性の過度な向上を防止でき、成形性が向上する傾向にあり、水分量が35質量%以上である場合、原料粘土の柔軟性の適度な低下を防止でき、成形性が向上する傾向にある。
【0049】
成形処理工程(Y)として、押出し成形処理を用いる場合、押出成形機としては、特に限定されないが、例えば、スクリュー型、ロール型、ブレード型、自己成形型、ラム型、ディスクペレッター型などが挙げられる。これらの中でも特にロール型、スクリュー型、ディスクペレッター型の押出成形機で押出し成形処理を実施することが好ましい。
【0050】
成形処理工程(Y)として、圧縮成形処理を用いる場合、圧縮成形機としては、特に限定されないが、例えば、一軸プレス成型、ホットプレス成型などが挙げられる。
【0051】
噴霧乾燥処理においては、例えば、スラリーの噴霧化は、通常工業的に実施される回転円盤方式、二流体ノズル方式および高圧ノズル方式等の方法によって行うことができるが、特に回転円盤方式で行うことが好ましい。噴霧された液滴の乾燥における乾燥熱源としては、スチーム、電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。
【0052】
乾燥機入口の温度は100℃~400℃程度とすることができ、好ましくは150℃~300℃である。乾燥機出口の温度は40℃~150℃程度とすることができ、好ましくは50℃~130℃である。
【0053】
〔焼成工程(Z)〕
焼成工程(Z)における焼成温度は、一般的に用いられる温度であれば特に限定されないが、ゼオライトの結晶性を保持しつつ強度を確保できる傾向にあることから、550℃未満であることが好ましく、530℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましい。また、焼成温度は、110℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上である。
【0054】
焼成工程(Z)における焼成時間は、担体が十分に乾燥や焼結される時間であれば特に限定されず、焼成の温度により適宜選択することができるが、ゼオライトの結晶性を保持しつつ強度を確保できる傾向にあることから、20日以下であることが好ましく、10日以下であることがより好ましく、7日以下であることがさらに好ましい。
【0055】
焼成工程(Y)における焼成の雰囲気は、一般的に用いられる雰囲気であれば特に限定されないが、通常、空気雰囲気、窒素、アルゴンなどの不活性ガスや酸素を付加した雰囲気が用いられる。
【0056】
焼成工程(Z)における焼成は、回転炉、トンネル炉、マッフル炉等の焼成炉を用いて行うことができる。
【0057】
<気体物質A>
気体物質Aは、二酸化炭素と異なる気体物質であればよい。「気体物質」とは、常温25℃常圧下で気体である物質を意味する。気体物質Aとしては、例えば、メタン、エタン、窒素、一酸化炭素、水素、アルゴン、及びジメチルエーテルが挙げられる。これらの気体物質Aの中でも、メタン、エタン、窒素が好ましく、メタン、エタンがより好ましく、メタンが更に好ましい。
【0058】
<混合ガス>
原料として用いられる混合ガスは、二酸化炭素及び気体物質Aを含む。
混合ガス中の二酸化炭素の含有量は、1体積%~99体積%、5体積%~90体積%、10体積%~80体積%、20体積%~70体積%、又は30体積%~70体積%であってもよい。
【0059】
混合ガス中の気体物質Aの含有量は、1体積%~99体積%、5体積%~90体積%、10体積%~80体積%、20体積%~70体積%、又は30体積%~70体積%であってもよい。
【0060】
混合ガスの水分含有量は、好ましくは1000体積ppm以下であり、より好ましくは500体積ppm以下であり、更に好ましくは100体積ppm以下である。当該範囲の水分含有量とすることで、吸着剤の吸着性能を高く発揮させることが可能となる。混合ガスの水分含有量は、例えば露点計により測定し、JIS Z8806:2001に記載の方法を用いて水分含有量に変換可能である。
【0061】
[ガス分離装置]
図1を参照して、第1実施形態に係るガス分離装置100の概略構成について説明する。ガス分離装置100は、混合ガス供給ライン1と、二酸化炭素吸着塔3a及び二酸化炭素吸着塔3bと、二酸化炭素回収ライン5と、粉体除去部6と、気体物質A回収ライン7と、減圧装置9と、を有する。
【0062】
<二酸化炭素吸着塔>
二酸化炭素吸着塔3aは、混合ガスを導入し、吸着剤成形体と混合ガスを接触させることができるように構成されている。後述の吸着工程にて、混合ガスを吸着剤と接触させることで混合ガス中の二酸化炭素を吸着剤に吸着させる。混合ガス中で二酸化炭素が吸着されるため、気体物質Aを取り出すことができる。また、吸着工程後、脱着工程にて、吸着塔を減圧とすることで、二酸化炭素を取り出すことができる。このように吸着工程及び脱着工程にて、気体物質Aの精製ガス及び二酸化炭素の精製ガスが得られる。なお、吸着塔は、吸着塔内を昇温するためヒータを備えていてもよい。
【0063】
図1に示すように、二酸化炭素吸着塔3aは、内部に導入した混合ガスと接触可能に構成された吸着剤成形体が充填された固定床31aを有する。二酸化炭素吸着塔3aは、その片端が混合ガス供給ライン1と接続され、その他端が気体物質A回収ライン7と接続されている。気体物質A回収ライン7には、自動弁AV3が備えられる。また、気体物質A回収ライン7には、流量計71と水分計72と成分分析計73とが備えられている。成分分析計73として、二酸化炭素の濃度、及び気体物質Aの濃度が測定可能な分析計を用いてもよい。
【0064】
二酸化炭素吸着塔3aは、混合ガス供給ライン1と接続されている端部と同方向の端部で、二酸化炭素回収ライン5と接続されている。混合ガス供給ライン1には、流量計11と、水分計12と、成分分析計13とが備えられている。二酸化炭素吸着塔3aの入口には、自動弁AV1が備えられている。一方、二酸化炭素回収ライン5には減圧装置9が接続され、二酸化炭素吸着塔3a内を減圧可能に構成されている。なお、減圧装置9は、真空ポンプであってもよい。また、二酸化炭素吸着塔3aに接続する二酸化炭素回収ライン5には、自動弁AV5と圧力計53aが備えられる。更に、二酸化炭素回収ライン5には、流量計51と水分計52と成分分析計54とが備えられている。成分分析計54として、二酸化炭素の濃度、及び気体物質Aの濃度が測定可能な分析計を用いてもよい。
【0065】
<粉体除去部>
二酸化炭素回収ライン5は、二酸化炭素吸着塔3aと減圧装置9との間に粉体除去部6を有する。二酸化炭素吸着塔3a内に充填された吸着剤成形体は、二酸化炭素を吸着することで脆化し、粉体を生じる。粉体除去部6は、二酸化炭素吸着塔3a内から発生する粉体を除去する。
【0066】
粉体除去部6に用いられる粉体除去装置としては、例えば、重力式、慣性式、遠心式、洗浄式、ろ過式、及び電気式のいずれの方式であっても使用できる。これらの粉体除去装置の中でも、粉体除去部6は、ろ過式粉体除去装置であることが好ましい。
【0067】
ろ過式粉体除去装置としては、ストレーナー式、及びフィルター式等のいずれの方式であってもよいが、ストレーナー式であることが好ましい。
【0068】
図2は、粉体除去部6の概略構成を示す図である。粉体除去部6は、ストレーナー61a及びストレーナー62bを有する。ストレーナー61aは、ストレーナー筐体61aとフィルター62aとを有する。ストレーナー61bも同様にストレーナー筐体61bとフィルター62bとを有する。切替弁62及び63で、二酸化炭素吸着塔3a又は3bから導入される気体の流れを制御し、ストレーナー61a及びストレーナー62bのいずれか一方又は両方により粉体を除去する。ここで、切替弁62及び63を操作して、ストレーナー61aのみを稼働させ、ストレーナー61bのフィルターを掃除するなど、メンテナンスできるように構成してもよい。
【0069】
各ストレーナー61a及びストレーナー62bのそれぞれに、上流下流の圧力差を測定する差圧計65を設け、ストレーナー61a及びストレーナー62bにおける圧力損失を測定してもよい。差圧計65と電子的に接続し、差圧計から差圧情報を取得可能な管理部66を有していてもよい。管理部66は、当該圧力損失の結果に基づいて、ストレーナー61a及びストレーナー62b等の粉体除去部6のメンテナンス情報を図示しない表示部に表示する。
図2に示す粉体除去部6のように2つのストレーナーを有する場合、これらのストレーナーを切替弁62及び63の操作により切り替え可能であるが、管理部66により各ストレーナーの圧力損失の値を測定し、所定値を超える場合に、切替弁62及び63の操作を自動的に行うよう構成し、ストレーナー61a及びストレーナー62bを自動転切り替え運転してもよい。
【0070】
二酸化炭素吸着塔3bは、内部に導入した混合ガスと接触可能に構成された吸着剤成形体を含む固定床31bを有する。二酸化炭素吸着塔3bの入口には、自動弁AV2が備えられている。二酸化炭素吸着塔3bは、その片端が混合ガス供給ライン1と接続され、他端が気体物質A回収ライン7と接続されている。気体物質A回収ライン7には、自動弁AV4が備えられる。二酸化炭素吸着塔3bも、混合ガス供給ライン1と接続されている端部と同方向の端部で、二酸化炭素回収ライン5と接続されている。また、二酸化炭素吸着塔3bに接続する二酸化炭素回収ライン5には、自動弁AV6と圧力計53bが備えられる。
【0071】
次に、
図1を参照して、本実施の形態のガス分離装置100の動作について説明する。本実施の形態のガス分離装置100により、二酸化炭素及び二酸化炭素とは異なる気体物質Aを含む混合ガスから、吸着剤が充填された吸着塔を用いて、前記二酸化炭素と前記気体物質Aとを分離するガス分離方法であって、前記吸着塔内に前記混合ガスを導入し、前記吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、気体物質Aを取り出す吸着工程と、前記吸着塔から二酸化炭素を減圧排気させることで、前記吸着剤から前記二酸化炭素を取り出す脱着工程と、
を含む、ガス分離方法が実施される。以上のガス分離方法により、少ない動力により効率的に二酸化炭素と気体物質Aを分離することができる。本実施形態に係るガス分離方法では、精製ガスとして、二酸化炭素及び気体物質Aが得られる。本実施形態に係るガス分離方法では、処理する混合ガスの量及び目的とする精製ガスの純度に応じて吸着工程と脱着工程とを繰り返し行ってもよく、これらの工程を繰り返し行うことで純度の高い精製ガスが得られる。
【0072】
吸着工程1回により取り出される気体物質Aの回収率を90%以上とすることが好ましく、これにより少ない回数で高純度の気体物質Aを得ることができる。また、脱着工程1回により取り出される二酸化炭素の純度が、90%以上であることで、少ない回数で高純度の二酸化炭素を得ることができる。以上の構成により、少ない動力により効率的に精製が可能であるため、高純度な二酸化炭素と高純度な気体物質Aを同時に製造することができる。なお、吸着工程1回により取り出される気体物質Aの回収率は、圧力変動サイクルにおける2サイクル目以降の回収率を意味する。圧力変動サイクル初回(立ち上げ時)の吸着剤は、二酸化炭素がほぼ吸着されていない状態であるが、圧力変動サイクルにおける2サイクル目以降は、前回の二酸化炭素が所定量吸着された状態で吸着工程が開始する。このため2サイクル目以降の回収率を、吸着工程1回により取り出される気体物質Aの回収率とする。「吸着工程1回」、及び「脱着工程1回」とは、吸着工程及び脱着工程による二酸化炭素吸着塔の圧力変動サイクル1回を意味する。
【0073】
二酸化炭素吸着塔3aには、混合ガス供給ライン1を介して、混合ガスが供給される。そして、混合ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)が二酸化炭素吸着塔3a内に充填された吸着剤により吸着され、気体物質A回収ライン7からメタン(CH4)等の気体物質Aが回収される。つまり、二酸化炭素吸着塔3aでは、吸着塔内に混合ガスを導入し、吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、気体物質Aを取り出す吸着工程が行われている。
【0074】
吸着工程における吸着圧Paは、好ましくは50~3000kPaであり、より好ましくは60~500kPa以下であり、更に好ましくは70~350kPa以下である。吸着圧Paは、混合ガスを導入する吸着塔の入口付近の圧力を意味する。
【0075】
吸着工程における平均温度は、後に行う脱着工程における二酸化炭素の脱着の効率を高め処理する混合ガス当たりの動力を削減する観点から、好ましくは0℃以上であり、好ましくは10℃~400℃であり、さらに好ましくは25℃~300℃であり、よりさらに好ましくは25℃~200℃である。吸着工程における平均温度とは、吸着工程における吸着塔出口付近のガスの平均温度を意味する。なお、吸着工程では、吸着剤への二酸化炭素の吸着によって発熱するため温度が徐々に変化することがある。
【0076】
二酸化炭素を吸着した吸着剤を内包する二酸化炭素吸着塔3aを減圧装置9により、二酸化炭素を減圧排気させることで、二酸化炭素吸着塔3a内の吸着剤を再生すると共に、精製された二酸化炭素を取り出す。つまり、吸着塔から二酸化炭素を減圧排気させることで、二酸化炭素を取り出す二酸化炭素脱着工程が行われる。
【0077】
脱着工程における到達圧力Pbが、好ましくは50kPa以下であり、より好ましくは30kPa以下であり、更に好ましくは20kPa以下であり、更に好ましくは15kPa以下であり、更に好ましくは10kPa以下であり、更に好ましくは5kPa以下であり、更に好ましくは3kPa以下である。到達圧力Pbは、吸着剤が充填された吸着塔から減圧排気する吸着塔の排気出口付近の圧力を意味し、減圧排気により吸着塔の圧力が徐々に低下してき、最終的に一定となる圧力を意味する。
【0078】
脱着工程における平均温度は、二酸化炭素の脱着の効率を高め処理する混合ガス当たりの動力を削減する観点から、好ましくは0℃以上であり、好ましくは10℃~400℃であり、さらに好ましくは25℃~300℃であり、よりさらに好ましくは25℃~200℃である。脱着工程における平均温度とは、脱着工程における吸着塔出口付近の脱着ガス(二酸化炭素)の平均温度を意味する。なお、脱着工程では、吸着剤からの二酸化炭素の脱着によって吸熱があるため温度が徐々に変化することがある。
【0079】
本実施形態に係るガス分離方法では、脱着工程1回により取り出される二酸化炭素の純度が、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは92体積%以上であり、更に好ましくは94体積%以上である。なお、脱着工程を経た二酸化炭素は、更に吸着工程及び脱着工程を経て、更に純度を高めてもよい。
【0080】
二酸化炭素吸着塔3a及び二酸化炭素吸着塔3bは、上述の通り混合ガスの導入による二酸化炭素吸着と、減圧による二酸化炭素脱着を繰り返し行う。そこで、二酸化炭素吸着塔3aが二酸化炭素を脱着している間に、二酸化炭素吸着塔3bに混合ガスを導入し二酸化炭素を吸着させる。二酸化炭素吸着塔3aの二酸化炭素の脱着完了後に、二酸化炭素吸着塔3a内に再び混合ガスを導入し、二酸化炭素吸収塔3bを減圧として二酸化炭素を脱着することで、それぞれの塔で二酸化炭素の吸脱着を繰り返し、連続的に混合ガスの処理を行うことができる。
【0081】
より具体的には、以下の手順で動作させることができる。
図3はガス分離装置100の動作による、二酸化炭素吸着塔3aと、二酸化炭素吸着塔3bの圧力変動の経時的変化を示す概念図である。
図3中の時刻T
1aに、自動弁AV1~AV6すべてが閉じた状態から、自動弁AV1、AV3を開け、混合ガス供給ライン1に所定流量となるように流量計11を確認して混合ガスを二酸化炭素吸着塔3aに吸着圧P
a(例えば105kPa)で供給する。成分分析計73において二酸化炭素濃度が5体積%を越えた際(例えば
図3中の時刻T
1b)に、自動弁AV1、自動弁AV3を閉じると同時に、自動弁AV2、自動弁AV4を開け、混合ガスの供給を二酸化炭素吸着塔3aから二酸化炭素吸着塔3bに切り替えてもよい。切り替えにより、混合ガスを二酸化炭素吸着塔3bに吸着圧P
a(例えば105kPa)で供給する。また、二酸化炭素吸着塔3aは、自動弁AV3を閉じた状態で自動弁AV5を開けて、減圧装置9で減圧することにより、二酸化炭素吸着塔3a内の圧力は低下し、二酸化炭素吸着塔の圧力を到達圧力P
b(例えば2kPa)として脱着操作を行うことで、二酸化炭素吸着塔3aより二酸化炭素を回収する。この到達圧力P
bへの到達時刻をT
1cとする。二酸化炭素吸着塔3a内の吸着剤に吸着された二酸化炭素が脱着されるため、二酸化炭素が回収されると共に、吸着剤が再生する。
【0082】
続いて、二酸化炭素吸着塔3bから流出するガスの二酸化炭素濃度が5体積%を越える際に、自動弁AV2、自動弁AV4を閉じると同時に、自動弁AV1、自動弁AV3を開け、混合ガスの供給を二酸化炭素吸着塔3bから3aに切り替えてもよい(当該時刻をT
1dとする)。また、二酸化炭素吸着塔3bは、自動弁AV6を開けて、減圧装置9で減圧することにより、二酸化炭素吸着塔3bの圧力を2kPaとして脱着操作を行うことで、二酸化炭素吸着塔3bより二酸化炭素を回収する。その後、成分分析計73において二酸化炭素濃度が5体積%を越えた際(例えば
図3中の時刻T
1e)に、自動弁AV1、自動弁AV3を閉じると同時に、自動弁AV2、自動弁AV4を開け、混合ガスの供給を二酸化炭素吸着塔3aから二酸化炭素吸着塔3bに再び切り替えてもよい。
【0083】
以上に示す時刻T1a~T1dまでの一連の動作が、二酸化炭素吸着塔3aにおける圧力変動の1サイクルC1の動作である。また、時刻T1b~T1eまでの一連の動作が、二酸化炭素吸着塔3bにおける圧力変動の1サイクルC1の動作である。つまり、サイクルC1には、1回の吸着工程及び1回の脱着工程が含まれる。同様の動作を繰り返すことにより、圧力変動の2サイクル目C2、3サイクル目C3と吸着工程及び脱着工程が繰り返し行われてもよい。
【0084】
本実施形態に係るガス分離方法では、吸着工程1回により取り出される気体物質Aの純度が、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは93体積%以上であり、更に好ましくは95体積%以上である。なお、脱着工程を経た二酸化炭素は、更に吸着工程及び脱着工程を経て、更に純度を高めてもよい。
【0085】
本実施形態に係るガス分離方法では、吸着工程及び脱着工程1回により取り出される二酸化炭素の回収率が、前記吸着工程1回で吸着塔に導入した混合ガス中の二酸化炭素の総量に対して、好ましくは90%以上であり、より好ましくは93%以上であり、更に好ましくは95%以上である。なお、吸着工程及び脱着工程1回により取り出される二酸化炭素の回収率は、圧力変動サイクルにおける2サイクル目以降の回収率を意味する。圧力変動サイクル初回(立ち上げ時)の吸着剤は、二酸化炭素がほぼ吸着されていない状態であるが、圧力変動サイクルにおける2サイクル目以降は、前回の二酸化炭素が所定量吸着された状態で吸着工程が開始する。このため2サイクル目以降の回収率を吸着工程及び脱着工程1回により取り出される二酸化炭素の回収率とする。
【0086】
本実施形態に係るガス分離方法では、吸着塔内を昇温及び減圧し前記吸着剤から水分を脱離させる活性化工程を含むことが好ましい。活性化工程により吸着剤を活性化し、処理するガス中の水分を吸着し、得られる二酸化炭素及び気体物質A中の水分を低減することができる。活性化工程は、上述の吸着工程及び脱着工程の前に実施されることが好ましい。また吸着工程及び脱着工程を繰り返し行い、吸着剤が多くの水分量を吸着した際に活性化工程を実施してもよい。
【0087】
活性化工程における到達圧力Peが、好ましくは50kPa以下であり、より好ましくは30kPa以下であり、更に好ましくは20kPa以下であり、更に好ましくは15kPa以下であり、更に好ましくは10kPa以下であり、更に好ましくは5kPa以下であり、更に好ましくは3kPa以下である。到達圧力Peは、吸着剤が充填された吸着塔から減圧排気する吸着塔の排気出口付近の圧力を意味し、減圧排気により吸着塔の圧力が徐々に低下してき、最終的に一定となる圧力を意味する。
【0088】
活性化工程における吸着塔内の温度は、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは180℃~300℃であり、更に好ましくは200℃~280℃である。
【0089】
ガス分離装置100は、例えば、二酸化炭素を含む工業排ガス、有機物の発酵により得られるバイオガスの精製などに適用してもよい。これらの中でもバイオガスの精製に用いることが好適である。
【0090】
本実施形態に係るガス分離方法は、二酸化炭素の混合ガスからの総回収率が、好ましくは90%以上であり、より好ましくは93%以上であり、更に好ましくは95%以上である。ここでの総回収率は、吸着塔に導入した混合ガス中の二酸化炭素の総量に対して、回収された二酸化炭素の総量を意味する。
【0091】
本実施形態に係るガス分離方法では、吸着工程及び脱着工程1回により取り出される気体物質Aの回収率が、前記吸着工程1回で吸着塔に導入した混合ガス中の気体物質Aの総量に対して、好ましくは90%以上であり、より好ましくは93%以上であり、更に好ましくは95%以上である。
【0092】
本実施形態に係るガス分離方法は、気体物質Aの混合ガスからの総回収率が、90%以上であり、より好ましくは93%以上であり、更に好ましくは95%以上である。
ここでの総回収率は、吸着塔に導入した混合ガス中の気体物質Aの総量に対して、回収された気体物質Aの総量を意味する。
【0093】
本実施形態に係るガス分離方法は、二酸化炭素の混合ガスからの総回収率が、90体積%以上であり、且つ、気体物質Aの混合ガスからの総回収率が、90%以上であることが好ましく、二酸化炭素の混合ガスからの総回収率が、93%以上であり、且つ、気体物質Aの混合ガスからの総回収率が、93%以上であることがより好ましく、二酸化炭素の混合ガスからの総回収率が、95%以上であり、且つ、気体物質Aの混合ガスからの総回収率が、95%以上であることが更に好ましい。
【0094】
本実施形態に係るガス分離方法により得られる気体物質Aの純度は、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは93体積%以上であり、更に好ましくは95体積%以上である。
【0095】
本実施形態に係るガス分離方法により得られる二酸化炭素の純度は、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは92体積%以上であり、更に好ましくは95体積%以上である。
【0096】
本実施形態に係るガス分離方法により得られる二酸化炭素の中の水分含有量は、好ましくは500体積ppm以下であり、より好ましくは300体積ppm以下であり、更に好ましくは100体積ppm以下である。当該二酸化炭素中の水分含有量は、例えば露点計により測定することができる。ガス分離方法において吸着剤としてゼオライトを採用することで、二酸化炭素の中の水分含有量を上述の値よりも低くすることができる。
【0097】
本実施形態に係る精製ガスの製造方法は、上述の本実施形態に係るガス分離方法により、精製された気体物質A又は精製された二酸化炭素を得る。
【0098】
[バイオガス精製システム1000;バイオガス精製への適用例]
図4は、ガス分離装置100をバイオガス精製への適用するバイオガス精製システム1000の概略構成を示す図である。バイオガス精製への適用例では、バイオガスの主成分であるメタンと、二酸化炭素を分離回収する例を示す。バイオガスの精製の場合、気体物質Aは、通常、メタン(CH
4)である。なお、
図4では、ガス分離装置100を適用する例を示すが、上述のガス分離装置110、又はガス分離装置120を適用してもよい。
【0099】
本実施形態のバイオガス精製システム1000は、発酵槽200と、脱硫塔300と、シロキサン除去装置400と、酸素除去装置500と、冷却装置600と、脱水装置700と、ガス分離装置100と、を有する。
【0100】
発酵槽200は、下水処理場から発生する下水汚泥、食品工場や飲食店から発生する食品残渣、酪農家等から発生する糞尿類を、嫌気状態で発酵させることで、バイオガス(以下、「混合ガス」ともいう)を発生させるタンクである。発酵槽200は、発生したバイオガスを他の装置に供給可能にするため、ブロア201と接続されている。
【0101】
発酵槽200は、バイオガスがガス分離装置100に導入される前に脱硫塔300と接続されていてもよい。脱硫塔300は、バイオガスに含まれる硫化水素を除去するための吸着塔である。脱硫塔300に充填される脱硫剤としては、例えば、酸化鉄が挙げられる。酸化鉄は、バイオガスに含まれる硫化水素と反応し、硫化鉄を生成する。
【0102】
発酵槽200は、バイオガスがガス分離装置100に導入される前にシロキサン除去装置400と接続されていてもよい。シロキサン除去装置400は、バイオガスに含まれるシロキサンを除去する。このシロキサンは、下水汚泥に含まれる酸化ケイ素含有物質である。
【0103】
発酵槽200は、バイオガスがガス分離装置100に導入される前に酸素除去装置500と接続されていてもよい。酸素除去装置500は、バイオガスに含まれる酸素を除去する。この酸素を除去することで精製後のメタンガスを安全に輸送することができる。
【0104】
発酵槽200は、バイオガスがガス分離装置100に導入される前に冷却装置600と接続されていてもよい。冷却装置600は、供給されたバイオガスを冷却することで、バイオガスに含まれる水分を除去する。これにより、バイオガスの露点が下げられる。冷却装置600としては、例えば、水冷式冷却器、空冷式冷却器、電気式冷却器等を用いることができる。
【0105】
発酵槽200は、バイオガスがガス分離装置100に導入される前に脱水装置700と接続されていてもよい。脱水装置700は、冷却装置600により水分除去されたバイオガスからさらに水分を除去する。これにより、バイオガスの露点をさらに下げることができる。脱水装置700としては、例えば、脱水剤が充填された装置を用いることができる。
【0106】
次に、
図4を参照して、本実施の形態のバイオガス精製システム1000の動作について説明する。
始めに、発酵槽200内において、下水処理場から発生する下水汚泥、食品工場や飲食店から発生する食品残渣、酪農家等から発生する糞尿類を、嫌気状態で発酵させることにより、バイオガスを発生させる。この段階のバイオガスには、硫化水素や水分等が含まれている。
【0107】
発酵槽200内で発生させたバイオガスは、脱硫塔300に送られる。脱硫塔300では、バイオガスに含まれる硫化水素の濃度が数体積ppmレベル程度となるように、硫化水素を除去する。
【0108】
その後、硫化水素が除去されたバイオガスは、シロキサン除去装置400に送られる。シロキサン除去装置400では、バイオガスに含まれるシロキサンの濃度が数mg/Nm3レベル程度となるように、シロキサンを除去する。
【0109】
その後、シロキサンが除去されたバイオガスは、酸素除去装置500に送られる。酸素除去装置500では、バイオガスに含まれる酸素の濃度が数体積ppmレベル程度となるように、酸素を除去する。
【0110】
次いで、バイオガスは、冷却装置600に送られる。冷却装置600は、バイオガスを冷却して、バイオガスに含まれる水分を除去することで、バイオガスの露点を低下させる。その後、バイオガスは、脱水装置700に送られる。脱水装置700では、バイオガスの水分がさらに除去され、1000体積ppm以下に水分量が低減される。
【0111】
以上、硫化水素、シロキサン、水分が除去されたバイオガスは、ガス分離装置100に送られる。ガス分離装置100での動作は、上述のガス分離装置に示したとおりである。
【0112】
本実施形態のガス分離方法によれば、吸収塔内から発生する粉体を粉体除去部により除去することで、長期にわたり安定運転可能である。
【実施例0113】
以下に実施例等を挙げて本実施形態を更に詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0114】
<吸着選択性>
吸着選択性は以下の手順にて求めた。
(1)吸着剤を12mmセル(Micro Meritics社製)に0.2g入れた。
(2)上記(1)のセルに入れた試料をMicro Meritics社製ガス吸着測定装置「3-Flex」(商品名)に設置し、250℃、0.001mmHg以下で12時間加熱真空脱気処理した。
(3)上記(2)の処理後のセルに入れた試料を25℃の恒温循環水中に入れ、試料の温度が25±0.2℃になった後、液化炭酸ガス(住友精化株式会社製、純度99.9質量体積%以上)を用いて絶対圧0.25~760mmHgまで測定した。なお、上記測定中、圧力を経時的に測定し、その圧力変動が0.001体積%/10sec以下となったときに飽和吸着量に達したものと判定する。同様に気体物質Aについても純度99.9体積%以上のガスを用いて、絶対圧0.25~760mmHgまで測定した。吸着選択率としては、吸着等温線の測定により得られた760mmHgにおける二酸化炭素、気体物質Aの平衡吸着量(cc/g)をそれぞれ、q(CO2),q(GMA)としたとき、q(CO2)/q(GMA)を吸着選択率とする。
【0115】
<混合ガスの水分含有量>
混合ガスの水分含有量は露点計(VAISALA社製、DMP74Bプローブ)を用いて測定を行った。
【0116】
<シリコン、アルミニウム、リン、カリウムの原子数濃度及びゼオライト中のカリウム及びリチウムの含有量>
ゼオライトを水酸化ナトリウム水溶液あるいは王水で熱溶解し、適宜希釈した液を用いてICP-発光分光分析(以下、「ICP-AES」ともいう、株式会社日立ハイテクサイエンス製SPS3520UV-DD:装置名)によってゼオライト中のアルカリ金属の濃度を測定した。ゼオライト中のカリウム及びリチウムの含有量は、ゼオライト中のアルカリ金属の各々の物質量の合計値(T)に対するカリウム及びリチウムの物質量の合計値(Z)の割合(Z/T)として算出した。ゼオライト中のアルカリ金属の各々の物質量の合計値(T)に対するカリウムの物質量の合計値(K)の割合(K/T)も同様にして算出した。
【0117】
<29Si-MAS-NMRスペクトル、SARの測定>
ゼオライト成形体におけるゼオライトのSARは29Si-MAS-NMRを測定することで求めることができる。まず、ゼオライトの調湿として、デシケーターの底に水を張っておき、その上部に試料管に入れたゼオライトを48時間保持した。調湿処理を行った後、下記条件で29Si-MAS-NMRの測定を行った。
装置:JEOL RESONANCE ECA700
磁場強度:16.44 T(1H共鳴周波数700MHz)
測定核:29Si
共鳴周波数:139.08MHz
NMR管:4mmφ(ジルコニア製ローター)
測定方法:DD/MAS(dipolar decoupling magic angle spinning)
パルス幅:45°
待ち時間:50sec
積算回数:800回 (測定時間;約22時間)
MAS:10,000Hz
化学シフト基準:シリコーンゴム(-22.34ppm)外部基準
GIS型ゼオライトを含む成形体では、29Si-MAS-NMRスペクトルにおいて、次の5つのピークを示す。
(1)Q4(0Al):酸素を介してAlと全く結合していないSiのピーク
(2)Q4(1Al):酸素を介して1個のAlと結合しているSiのピーク
(3)Q4(2Al):酸素を介して2個のAlと結合しているSiのピーク
(4)Q4(3Al):酸素を介して3個のAlと結合しているSiのピーク
(5)Q4(4Al):酸素を介して4個のAlと結合しているSiのピーク
また、29Si-MAS-NMRスペクトルにおいて、それらのピーク位置は、一般的には-112ppmから-80ppmに存在し、高磁場側からQ4(0Al)、Q4(1Al)、Q4(2Al)、Q4(3Al)、Q4(4Al)に帰属できる。ゼオライト骨格中に存在するカチオン種によってピーク位置は変化し得るが、一般的には以下の範囲にピーク位置が存在する。
(1)Q4(0Al):-105ppmから-112ppm
(2)Q4(1Al):-100ppmから-105ppm
(3)Q4(2Al):-95ppmから-100ppm
(4)Q4(3Al):-87ppmから-95ppm
(5)Q4(4Al):-80ppmから-87ppm
29Si-MAS-NMRスペクトルのピーク面積強度については、解析プログラムdmfit(♯202000113バージョン)を用いて、ガウス及びローレンツ関数により解析を行い、振幅(スペクトルの最大値の高さ)、位置(スペクトル位置、ppm)、幅(スペクトルの半値全幅、ppm)、ガウス/ローレンツ比(xG/(1-x)L)の4つのパラメーターを最小二乗法のアルゴリズムで最適化計算することで得られる。こうして求められたQ4(0Al)、Q4(1Al)、Q4(2Al)、Q4(3Al)、Q4(4Al)それぞれのピーク面積をA_Q4(0Al)、A_Q4(1Al)、A_Q4(2Al)、A_Q4(3Al)、A_Q4(4Al)とし、A_Q4(0Al)、A_Q4(1Al)、A_Q4(2Al)、A_Q4(3Al)、A_Q4(4Al)の合計値をA_totalするとSARとしては以下で求めることが可能である。
SAR=100/〔A_Q4(1Al)/4+2×A_Q4(2Al)/4
+3×A_Q4(3Al)/4+4×A_Q4(4Al)/4〕×2
【0118】
<X線回折;結晶構造解析>
X線回折は以下の手順で行った。
(1)各製造例で得られたゼオライト(乾燥物)を試料として、メノウ乳鉢で粉砕した。さらに結晶性シリコン(株式会社レアメタリック製)を10質量%加え、メノウ乳鉢で均一になるまで混合したものを構造解析の試料とした。
(2)上記(1)の試料を粉末用無反射試料板上に均一に固定し、下記条件でX線回折により結晶構造解析を行った。
X線回折装置(XRD):リガク社製粉末X線回折装置「RINT2500型」(商品名)
X線源:Cu管球(40kV、200mA)
測定温度:25℃
測定範囲:5~60°(0.02°/step)
測定速度:0.2°/分
スリット幅(散乱、発散、受光):1°、1°、0.15mm
【0119】
製造例1:GIS型ゼオライト成形体の製造方法
水61.93gと水酸化ナトリウム(NaOH、富士フイルム和光純薬社製)0.403gと、硝酸ナトリウム(NaNO3、富士フイルム和光純薬社製)3.39gと、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2、富士フイルム和光純薬社製)1.64gとコロイダルシリカ(Ludox AS-40、固形分濃度40質量%、Grace社製)10.82gを混合し、30分間撹拌することで混合ゲルを調製した。混合ゲルの組成は、α=E/Al2O3=4.53、β=SiO2/Al2O3=8.17、γ=Na2O/Al2O3=3.99、δ=P2O5/Al2O3=0.00、ε=H2O/Al2O3=431.0、ζ=H2O/OH-=376.7、η=R/Al2O3=0.00であった。混合ゲルをフッ素樹脂内筒の入った200mLのステンレス製マイクロボンベ(HIRO COMPANY製)に仕込み、マイクロボンベ上下方向に回転可能な撹拌型恒温槽(HIRO COMPANY製)によって、撹拌速度30rpm、135℃、4日間水熱合成した。生成物をろ過して120℃で乾燥した後、粉末状のゼオライトを得た。得られたゼオライト1gを、炭酸カリウム(K2CO3、日本曹達社製)を用いて調整した0.05Nの炭酸カリウム水溶液500mLに入れ、室温で3時間、500rpmで攪拌した。生成物をろ過して120℃で乾燥し、カチオンの一部がカリウムに交換された粉末状のゼオライトを得た。XRDスペクトルより、得られたゼオライトがGIS型ゼオライトであることを確認した。さらに、他のゼオライトや非晶質シリカアルミナなどに由来するピークが見られなかったことから、高純度のGIS型ゼオライトであると評価した。
【0120】
得られたゼオライトについて、29Si-MAS-NMRスペクトルより、シリカアルミナ比を算出した結果、SAR=6.90であり、(a+d)/(b+c)=0.305であった。また、ゼオライト中のカリウム及びリチウムの含有量は、Z/T=0.99(=K/T)であった。得られたGIS型ゼオライトのCO2の吸着等温線及び脱着等温線を測定すると、760mmHgでの吸着量は82.2cc/gであり、q(Ad)/q(De)=0.984であった。また、同様にCH4の吸着等温線について測定を行うと、760mmHgでの吸着量は2.2cc/gであった。
【0121】
GIS型ゼオライト粉40質量部、メチルセルロース(ハイケム株式会社製セランダーYB‐132A)1.2質量部、ポリビニルアルコール0.2質量部(三菱ケミカル株式会社製ゴーセノールN‐300)、アルミナゾル48.2質量部(日産化学株式会社製、アルミナ含有率:10.5質量%)を用い、粉末アルミナ水和物を10.4質量部を混合した。 上記混合物を湿式押出造粒機MG‐55(株式会社ダルトン製)にて直径3mmの円柱状に押出した後、電気炉を用いて350℃で24時間、空気雰囲気下で焼成し、GIS型ゼオライト成形体を製造した。
【0122】
実施例1:ガス分離方法
図1に示すガス分離装置を用いて、メタンと二酸化炭素を含む混合ガスを分離し、ガス1(メタン)とガス2(二酸化炭素)とに分離回収を行った。
二酸化炭素吸着塔3a及び3bの容積はそれぞれ1Lとして、二酸化炭素吸着塔3a及び3bの内部にGIS型ゼオライト成形体を充填したものを用いた。
メタン60体積%と二酸化炭素40体積%とを含む混合ガスを用いた。混合ガス中の水分含有量は98体積ppmであった。
下記の操作1の前に二酸化炭素除去塔3a及び3bを50kPaに減圧し、ヒータにより200℃に昇温し活性化工程を実施した。
【0123】
(操作1)
自動弁AV1~AV6すべてが閉じた状態から、自動弁AV1、自動弁AV3を開け、配管1に8.0NL/minとなるように流量計11によりモニターして25℃の混合ガスを二酸化炭素吸着塔3aに供給した。成分分析計73において二酸化炭素濃度が5体積%を越えた際に、自動弁AV1、自動弁AV3を閉じると同時に、自動弁AV2、自動弁AV4を開け、原料ガスの供給を二酸化炭素除去塔3aから3bに切り替えた。切り替えるまでに二酸化炭素吸着塔3aから流出したガスは全量回収した。(得られたガスをガス1(メタン)とした。)また、二酸化炭素吸着塔3aは、自動弁AV5を開けて、減圧装置9で減圧することにより、二酸化炭素吸着塔の圧力を2kPaとして脱着操作を行うことで、二酸化炭素吸着塔3aよりガスを回収した。(得られたガスをガス2(二酸化炭素)とする。)脱着ガスの温度は平均で35℃であった。なお、ここまでの操作を操作1とした。
【0124】
(操作2)
引き続き、二酸化炭素吸着塔3bから流出するガスの二酸化炭素濃度が5体積%を越えた際に、自動弁AV2、自動弁AV4を閉じると同時に、自動弁AV1、自動弁AV3を開け、原料ガスの供給を二酸化炭素吸着塔3bから二酸化炭素吸着塔3aに切り替えた。また、二酸化炭素吸着塔3bは、自動弁AV6を開けて、減圧装置9で減圧することにより、二酸化炭素吸着塔3bの圧力を2kPaとして脱着操作を行うことで、二酸化炭素吸着塔3bよりガスを回収する。ここまでの操作を操作2とした。
【0125】
以上の操作1、2を100回繰り返し、操作1を再度行ったところ、得られたガス1中のメタン濃度は97.0体積%(吸着工程1回により取り出される気体物質Aの純度97.0体積%)であり、ガス2の二酸化炭素濃度は94.5体積%(脱着工程1回により取り出される二酸化炭素の純度:94.5体積%)であり、ガス2の水分含有量は、30体積ppmであった。また回収率は、吸着ならびに脱着工程2回目以降は、吸着工程1回により得られたガス1中のメタン回収率は97.0%であり、脱着工程2回目以降の脱着工程1回により得られたガス2の二酸化炭素回収率は94.5%であった。
【0126】
また、操作1、2を100回繰り返した際に得られたすべてのガス1(メタン)、及びガス2(二酸化炭素)について全量回収し、同様にメタン濃度、二酸化炭素濃度を測定したところ、それぞれ97.0体積%、94.5体積%であった。この間に供給されたメタン量V1(NL)からガス1に於いて回収されたメタン量V2(NL)からV2/V1により回収率を求めると96%であった。同様にこの間に供給された二酸化炭素量V3(NL)からガス2に於いて回収されたメタン量V4(NL)からV2/V1により回収率を求めると96%であった。また、分離メタン当たりの動力としては0.25kWh/m3-CH4であった。
【0127】
操作1、2を100回繰り返した後に、粉体除去部6を確認したところストレーナー61a内に粉体が捕集されており、切替弁62及び63を操作し、ストレーナー61bでの粉体捕集に切り替え、更に操作1、2を100回繰り返した。また、その後の減圧時の到達圧力には、初期からの変化はみられなかった。
【0128】
比較例1:ガス分離方法
上述の実施例1で用いた装置であって、粉体除去部を有していない装置を用いて上述の操作1及び2を200回繰り返した。また、200回目の減圧時の到達圧力は、初回と比較して87%上昇していた。
本発明のガス分離方法、精製ガスの製造方法及びガス分離装置は、例えば、バイオガスから、二酸化炭素を回収しながら精製されたメタンガスを製造することが可能となり、産業上の利用可能性を有する。