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特開2024-141004ガスエンジン及びガスエンジンの起動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141004
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ガスエンジン及びガスエンジンの起動方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20241003BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20241003BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F02M21/02 301L
F02D45/00 360A
F02D45/00 368S
F02M21/02 G
F02D19/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052421
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】今森 祐介
(72)【発明者】
【氏名】古川 雄太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 壮太
(72)【発明者】
【氏名】山本 高之
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AB09
3G092BB11
3G092DE04
3G092DF01
3G092DF02
3G092DF03
3G092EA12
3G092FA15
3G092FA31
3G092GA01
3G092HB02
3G092HC01
3G092HD01
3G384AA14
3G384CA01
3G384DA44
3G384EB09
3G384FA29
3G384FA45
(57)【要約】
【課題】 ガスエンジンの起動時における燃焼を安定させることができるガスエンジン及びガスエンジンの起動方法を提供する。
【解決手段】 ガスエンジンは、複数の気筒に燃料ガスを導入する燃料ガス導入ラインに設けられ、複数の気筒に導入されるガス流量を調整するガス流量調整装置と、複数の気筒から排ガスを排出する排ガスラインと、を備え、排ガスラインは、複数の気筒の夫々に対応する複数の排出側枝管と、複数の排出側枝管が接続される共通の排出側本管と、を含む。ガス流量調整装置は、ガスエンジンの起動時に、排出側本管の出口までの距離が最も小さい最下流気筒を含む第1グループに属する気筒のみに燃料ガスの供給を開始する第1の供給制御部と、第1グループに属する気筒の燃焼が安定した後に、第1グループに属する気筒よりも排出側本管の出口からの距離が大きい第2グループに属する気筒に燃料ガスの供給を開始する第2の供給制御部と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒と、
前記複数の気筒の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ラインと、
前記複数の気筒の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ラインであって、前記燃焼用気体導入ラインとは異なる燃料ガス導入ラインと、
前記燃料ガス導入ラインを介して前記複数の気筒の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置と、
前記複数の気筒から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスラインと、を備え、
前記少なくとも1つの排ガスラインは、前記複数の気筒の夫々に対応する複数の排出側枝管と、前記複数の排出側枝管が接続される共通の排出側本管と、を含み、
前記複数の気筒を、
各々の気筒から前記排出側本管の出口までの距離が最も小さい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記排出側本管の前記出口までの距離が最も大きい気筒よりも、前記排出側本管の前記出口からの距離が大きい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガス流量調整装置は、
ガスエンジンの起動時に、前記第1グループに属する前記気筒のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給制御部と、
前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定部と、
前記燃焼判定部において前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給制御部と、を含む、
ガスエンジン。
【請求項2】
前記少なくとも1つの排ガスラインは、
前記複数の気筒のうち、2つ以上の前記気筒からなる第1気筒群に接続される第1排ガスラインと、
前記複数の気筒のうち、前記第1気筒群に属さない2つ以上の前記気筒からなる第2気筒群に接続される第2排ガスラインと、を含み、
前記第1気筒群及び前記第2気筒群の各々を前記第1グループと前記第2グループに区分した場合において、
前記第1の供給制御部は、前記ガスエンジンの起動時に、前記第1気筒群及び前記第2気筒群の各々の前記第1グループに属する前記気筒のみに前記燃料ガスの供給を開始するように構成された、
請求項1に記載のガスエンジン。
【請求項3】
複数の気筒と、
前記複数の気筒の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ラインと、
前記複数の気筒の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ラインであって、前記燃焼用気体導入ラインとは異なる燃料ガス導入ラインと、
前記燃料ガス導入ラインを介して前記複数の気筒の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置と、
前記複数の気筒から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスラインと、を備え、
前記燃料ガス導入ラインは、前記複数の気筒の夫々に対応する複数の導入側枝管と、前記複数の導入側枝管が接続される共通の導入側本管と、を含み、
前記複数の気筒を、
各々の気筒から前記導入側本管の入口までの距離が最も大きい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記導入側本管の前記入口までの距離が最も小さい気筒よりも、前記導入側本管の前記入口からの距離が小さい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガス流量調整装置は、
ガスエンジンの起動時に、前記第1グループに属する前記気筒のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給制御部と、
前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定部と、
前記燃焼判定部において前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給制御部と、を含む、
ガスエンジン。
【請求項4】
前記少なくとも1つの排ガスラインは、
前記複数の気筒の夫々に対応する複数の排出側枝管と、前記複数の排出側枝管が接続される共通の排出側本管と、を含み、
前記第2グループに属する前記気筒は、前記第1グループのうち前記排出側本管の出口までの距離が最も大きい気筒よりも、前記排出側本管の出口からの距離が大きい気筒からなる、
請求項3に記載のガスエンジン。
【請求項5】
前記第1グループに属する前記気筒は、前記最下流気筒のみである、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のガスエンジン。
【請求項6】
複数の気筒と、
前記複数の気筒の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ラインと、
前記複数の気筒の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ラインであって、前記燃焼用気体導入ラインとは異なる燃料ガス導入ラインと、
前記燃料ガス導入ラインを介して前記複数の気筒の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置と、
前記複数の気筒から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスラインと、を備え、
前記ガス流量調整装置は、
ガスエンジンの起動時に、前記複数の気筒のうち、少なくとも1つの気筒を含む供給対象気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給制御部と、
前記供給対象気筒の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定部と、
前記燃焼判定部において前記供給対象気筒の燃焼が安定したと判定された後に、前記供給対象気筒以外の複数の気筒のうち、燃焼順序が前記供給対象気筒の直前に該当しない少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給制御部と、を含む、
ガスエンジン。
【請求項7】
前記第2の供給制御部は、前記供給対象気筒以外の前記複数の気筒のうち、燃焼順序が前記供給対象気筒の直後に該当しない少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始するように構成された、
請求項6に記載のガスエンジン。
【請求項8】
前記排ガスラインは、前記複数の気筒の夫々に対応する複数の排出側枝管と、前記複数の排出側枝管が接続される共通の排出側本管と、を含み、
前記ガスエンジンは、
前記複数の排出側枝管の温度、又は、前記複数の排出側枝管の内部を流れるガスの温度、の何れかを取得するように構成された温度取得装置をさらに備え、
前記燃焼判定部は、前記温度取得装置が取得する前記温度が閾値を超えたときに、前記温度取得装置が前記温度を取得した前記排出側枝管が接続された気筒の燃焼が安定したと判定するように構成された、
請求項1~4、6又は7の何れか1項に記載のガスエンジン。
【請求項9】
前記複数の気筒の夫々の筒内圧を取得するように構成された筒内圧取得装置をさらに備え、
前記燃焼判定部は、前記筒内圧取得装置が取得する前記筒内圧が閾値を超えたときに前記筒内圧を取得した気筒の燃焼が安定したと判定するように構成された、
請求項1~4、6又は7の何れか1項に記載のガスエンジン。
【請求項10】
前記燃料ガスは、水素ガスからなる、
請求項1~4、6又は7の何れか1項に記載のガスエンジン。
【請求項11】
複数の気筒と、
前記複数の気筒の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ラインと、
前記複数の気筒の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ラインであって、前記燃焼用気体導入ラインとは異なる燃料ガス導入ラインと、
前記燃料ガス導入ラインを介して前記複数の気筒の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置と、
前記複数の気筒から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスラインと、を備えるガスエンジンの起動方法であって、
前記少なくとも1つの排ガスラインは、前記複数の気筒の夫々に対応する複数の排出側枝管と、前記複数の排出側枝管が接続される共通の排出側本管と、を含み、
前記複数の気筒を、
各々の気筒から前記排出側本管の出口までの距離が最も小さい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記排出側本管の前記出口までの距離が最も大きい気筒よりも、前記排出側本管の前記出口からの距離が大きい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガスエンジンの起動方法は、
前記ガスエンジンの起動時に、前記第1グループに属する前記気筒のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給ステップと、
前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定ステップと、
前記燃焼判定ステップにおいて前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給ステップと、を含む、
ガスエンジンの起動方法。
【請求項12】
複数の気筒と、
前記複数の気筒の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ラインと、
前記複数の気筒の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ラインであって、前記燃焼用気体導入ラインとは異なる燃料ガス導入ラインと、
前記燃料ガス導入ラインを介して前記複数の気筒の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置と、
前記複数の気筒から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスラインと、を備えるガスエンジンの起動方法であって、
前記燃料ガス導入ラインは、前記複数の気筒の夫々に対応する複数の導入側枝管と、前記複数の導入側枝管が接続される共通の導入側本管と、を含み、
前記複数の気筒を、
各々の気筒から前記導入側本管の入口までの距離が最も大きい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記導入側本管の前記入口までの距離が最も小さい気筒よりも、前記導入側本管の前記入口からの距離が小さい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガスエンジンの起動方法は、
前記ガスエンジンの起動時に、前記第1グループに属する前記気筒のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給ステップと、
前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定ステップと、
前記燃焼判定ステップにおいて前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給ステップと、を含む、
ガスエンジンの起動方法。
【請求項13】
複数の気筒と、
前記複数の気筒の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ラインと、
前記複数の気筒の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ラインであって、前記燃焼用気体導入ラインとは異なる燃料ガス導入ラインと、
前記燃料ガス導入ラインを介して前記複数の気筒の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置と、
前記複数の気筒から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスラインと、を備えるガスエンジンの起動方法であって、
前記ガスエンジンの起動時に、前記複数の気筒のうち、少なくとも1つの気筒を含む供給対象気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給ステップと、
前記供給対象気筒の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定ステップと、
前記燃焼判定ステップにおいて前記供給対象気筒の燃焼が安定したと判定された後に、前記供給対象気筒以外の複数の気筒のうち、燃焼順序が前記供給対象気筒の直前に該当しない少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給ステップと、を含む、
ガスエンジンの起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスエンジン及び該ガスエンジンの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを燃料ガスとする水素ガスエンジンが知られている(特許文献1)。水素ガスエンジン等の、燃料ガスを燃焼室に導入するための燃料ガス導入配管の内部に燃料ガスを残すことに危険が伴うガスエンジンの場合、該ガスエンジンの停止中に燃料ガス導入配管の内部のガスを燃料ガスから代替の不活性ガスに置換する安全策が取られることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-12999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスエンジンの起動時は、ガスエンジンの回転数が低く燃焼室における燃焼が不安定である点、ガスエンジンの気筒の燃焼室の壁面温度が低い点、等により気筒で失火が生じ易い。気筒から排出される排ガスを排出するための排ガス排出配管に未燃ガスが滞留すると、該未燃ガスが燃焼ガスと接触すること等により燃焼してガスエンジンを構成する部品を破損させる虞がある。特に、上述した燃料ガス導入配管の内部に燃料ガスを残すことに危険が伴うガスエンジンの場合には、ガスエンジンの起動時に燃料ガス導入配管の内部のガスが代替の不活性ガスから燃料ガスに入れ替わる過渡状態が生じるため、燃焼室における燃焼がさらに不安定となり、失火リスクが増大する虞がある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、ガスエンジンの起動時における燃焼を安定させることができるガスエンジン及びガスエンジンの起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスエンジンは、
複数の気筒と、
前記複数の気筒の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ラインと、
前記複数の気筒の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ラインであって、前記燃焼用気体導入ラインとは異なる燃料ガス導入ラインと、
前記燃料ガス導入ラインを介して前記複数の気筒の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置と、
前記複数の気筒から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスラインと、を備え、
前記少なくとも1つの排ガスラインは、前記複数の気筒の夫々に対応する複数の排出側枝管と、前記複数の排出側枝管が接続される共通の排出側本管と、を含み、
前記複数の気筒を、
各々の気筒から前記排出側本管の出口までの距離が最も小さい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記排出側本管の前記出口までの距離が最も大きい気筒よりも、前記排出側本管の前記出口からの距離が大きい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガス流量調整装置は、
ガスエンジンの起動時に、前記第1グループに属する前記気筒のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給制御部と、
前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定部と、
前記燃焼判定部において前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給制御部と、を含む。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスエンジンの起動方法は、
複数の気筒と、
前記複数の気筒の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ラインと、
前記複数の気筒の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ラインであって、前記燃焼用気体導入ラインとは異なる燃料ガス導入ラインと、
前記燃料ガス導入ラインを介して前記複数の気筒の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置と、
前記複数の気筒から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスラインと、を備えるガスエンジンの起動方法であって、
前記少なくとも1つの排ガスラインは、前記複数の気筒の夫々に対応する複数の排出側枝管と、前記複数の排出側枝管が接続される共通の排出側本管と、を含み、
前記複数の気筒を、
各々の気筒から前記排出側本管の出口までの距離が最も小さい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記排出側本管の前記出口までの距離が最も大きい気筒よりも、前記排出側本管の前記出口からの距離が大きい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガスエンジンの起動方法は、
前記ガスエンジンの起動時に、前記第1グループに属する前記気筒のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給ステップと、
前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定ステップと、
前記燃焼判定ステップにおいて前記第1グループに属する前記気筒の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ガスエンジンの起動時における燃焼を安定させることができるガスエンジン及びガスエンジンの起動方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1の実施形態に係るガスエンジンの模式図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係るガスエンジンの変形例の模式図である。
図3】本開示の一実施形態に係るガスエンジンのガス流量調整装置の模式図である。
図4】本開示の一実施形態に係るガスエンジンの起動方法の一例を示すフロー図である。
図5】本開示の第2の実施形態に係るガスエンジンの模式図である。
図6】本開示の第2の実施形態に係るガスエンジンの模式図である。
図7】本開示の第3の実施形態に係るガスエンジンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
(ガスエンジン)
図1は、本開示の第1の実施形態に係るガスエンジン1の模式図である。図2は、本開示の第1の実施形態に係るガスエンジン1の変形例の模式図である。幾つかの実施形態に係るガスエンジン1は、図1及び図2に示されるように、複数の気筒2を備える。複数の気筒2の各々は、気筒本体201と、気筒本体201の内部に収容されたピストン202と、を含み、気筒本体201とピストン202との間に形成された燃焼室203を有する。ガスエンジン1は、複数の気筒2の夫々の燃焼室203において燃料ガス及び燃焼用気体を燃焼させるように構成されている。
【0012】
燃料ガスは、ガス状の燃料である。以下の実施形態では、ガスエンジン1の燃料ガスが水素ガスである場合について説明する。なお、ガスエンジン1の燃料ガスは、天然ガス、都市ガス、バイオガス等であってもよい。以下の実施形態では、ガスエンジン1が、4ストロークエンジンである場合について説明するが、本開示の幾つかの実施形態は、ガスエンジン1が、2ストロークエンジンである場合にも適用可能である。複数の気筒2の各々のピストン202は、共通のクランクシャフト(不図示)に接続されており、該クランクシャフトの回転に連動して気筒本体201内を往復動するようになっている。
【0013】
燃焼用気体は、燃料ガスの酸化剤となる気体である。以下の実施形態では、ガスエンジン1の燃焼用気体が空気(一次空気)である場合について説明する。一次空気は、ガスエンジン1の外部から取り込んだ空気であって、燃焼等に用いられていない空気である。なお、ガスエンジン1の燃焼用気体は、燃焼等に用いられた空気(循環排ガス)でもよいし、一次空気と循環排ガスが混合した混合ガスでもよい。また、ガスエンジン1の燃焼用気体は、空気よりも酸素濃度が高められた酸素リッチガスであってもよい。
【0014】
(燃焼用気体導入ライン、燃料ガス導入ライン、排ガスライン)
上述したガスエンジン1は、図1及び図2に示されるように、複数の気筒2の各々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ライン3と、複数の気筒2の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ライン4と、複数の気筒2から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスライン5と、をさらに備える。燃焼用気体導入ライン3、燃料ガス導入ライン4及び排ガスライン5の各々は、例えば、配管によって形成される。
【0015】
ガスエンジン1では、ガスエンジン1の運転中に、燃焼用気体導入ライン3を介して複数の気筒2の夫々の燃焼室203に燃焼用気体が導入され、且つ燃料ガス導入ライン4を介して複数の気筒2の夫々の燃焼室203に燃料ガスが導入されるようになっている。燃焼室203に導かれた燃料ガスは、燃焼用気体と混合後に燃焼室203で燃焼する。ガスエンジン1の運転中に、複数の気筒2の夫々の燃焼室203において燃料ガス及び燃焼用気体を燃焼させることで生じた排ガスは、排ガスライン5を介してガスエンジン1の外部に排出されるようになっている。
【0016】
図示される実施形態では、燃焼用気体導入ライン3は、複数の気筒2の夫々に対応する複数の導入側枝管31と、複数の導入側枝管31が接続される共通の導入側本管32と、を含む。複数の導入側枝管31の各々は、該導入側枝管31に対応する気筒2の燃焼室203に一端が接続され、導入側本管32に他端が接続されている。燃焼用気体は、導入側枝管31を介して導入側本管32から該導入側枝管31に対応する気筒2の燃焼室203に導かれる。
【0017】
図示される実施形態では、導入側本管32の入口321は、燃焼用気体を貯留する貯留タンクや過給機の圧縮機等の、燃焼用気体の流れ方向における導入側本管32よりも上流側の機器33に接続されている。燃焼用気体は、入口321を通じて機器33から導入側本管32に導かれる。
【0018】
図示される実施形態では、燃料ガス導入ライン4は、燃焼用気体導入ライン3とは異なるものであり、燃焼用気体導入ライン3とは配管を共有しない。燃料ガス導入ライン4は、複数の気筒2の夫々に対応する複数の導入側枝管41と、複数の導入側枝管41が接続される共通の導入側本管42と、を含む。複数の導入側枝管41の各々は、該導入側枝管41に対応する気筒2の燃焼室203に一端が接続され、導入側本管42に他端が接続されている。燃料ガスは、導入側枝管41を介して導入側本管42から該導入側枝管41に対応する気筒2の燃焼室203に導かれる。
【0019】
図示される実施形態では、導入側本管42の入口421は、燃料ガスを貯留する貯留タンク等の、燃料ガスの流れ方向における導入側本管42よりも上流側の機器43に接続されている。燃料ガスは、入口421を通じて機器43から導入側本管42に導かれる。
【0020】
図示される実施形態では、排ガスライン5は、複数の気筒2の夫々に対応する複数の排出側枝管51と、複数の排出側枝管51が接続される共通の排出側本管52と、を含む。複数の排出側枝管51の各々は、該排出側枝管51に対応する気筒2の燃焼室203に一端が接続され、排出側本管52に他端が接続されている。気筒2の燃焼室203から排出される排ガスは、排出側枝管51を介して該排出側枝管51に対応する気筒2の燃焼室203から排出側本管52に導かれる。
【0021】
図示される実施形態では、排出側本管52の出口521は、排ガスをガスエンジン1の外部に排出するための煙突や過給機の排ガスタービン等の、排ガスの流れ方向における排出側本管52よりも下流側の機器53に接続されている。排ガスは、出口521を通じて排出側本管52から機器53に導かれる。
【0022】
(吸気弁、排気弁)
図3は、本開示の一実施形態に係るガスエンジン1のガス流量調整装置6の模式図である。図示される実施形態では、図1図3に示されるように、複数の気筒2の各々は、吸気弁204と、排気弁205と、をさらに含む。吸気弁204は、導入側枝管31と燃焼室203の接続部に設けられ、導入側枝管31と燃焼室203を仕切るように開閉可能な弁体を有する。排気弁205は、排出側枝管51と燃焼室203の接続部に設けられ、排出側枝管51と燃焼室203を仕切るように開閉可能な弁体を有する。
【0023】
(点火装置)
図示される実施形態では、図3に示されるように、複数の気筒2の各々には、燃焼室203において燃焼ガス及び燃焼用気体が混合した混合気に点火する点火装置(図示例では、点火プラグ)206が取り付けられていてもよい。
【0024】
(ガス流量調整装置)
上述したガスエンジン1は、図1図3に示されるように、燃料ガス導入ライン4を介して複数の気筒2の夫々に導入されるガスの流量を調整するように構成されたガス流量調整装置6をさらに備える。ガス流量調整装置6が流量を調整するガスには、燃料ガス、不活性ガス及び燃料ガスと不活性ガスの混合ガスが含まれる。
【0025】
図示される実施形態では、ガス流量調整装置6は、複数の導入側枝管41の夫々に対応する複数のガス流量調整弁61(61A~61F)を少なくとも含む。ガス流量調整装置6は、複数のガス流量調整弁61の開度を制御可能に構成された制御装置62をさらに含んでいてもよい。
【0026】
複数のガス流量調整弁61の各々は、該ガス流量調整弁61が対応する導入側枝管41に設けられ、導入側枝管41から該導入側枝管41に対応する気筒2の燃焼室203に導かれるガスの流量を調整可能に構成されている。なお、複数のガス流量調整弁61の各々は、全閉と全開に開度調整可能な開閉弁でもよいし、全閉と全開とこれらの間の少なくとも1つの中間開度に開度調整可能な開度調整弁でもよい。
【0027】
制御装置62は、複数のガス流量調整弁61の開度を制御するための電子制御ユニットである。制御装置62は、図3に示されるように、入力装置63(入力インターフェース)、出力装置64(出力インターフェース)、記憶装置65(ROMやRAMといったメモリ、外部記憶装置など)、及び演算装置66(CPU)を含むマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。制御装置62は、例えば上記メモリの主記憶装置にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(例えばデータの演算など)することで、後述する各部(第1の供給制御部101、燃焼判定部102、第2の供給制御部103)における制御を実現してもよい。
【0028】
図示される実施形態では、ガス流量調整装置6の制御装置62は、図3に示されるように、第1の供給制御部101と、燃焼判定部102と、第2の供給制御部103と、を含む。制御装置62は、温度取得装置7や筒内圧取得装置8等の、ガスエンジン1に設けられたセンサ類からの各種信号が、入力装置63を介して記憶装置65や演算装置66に入力されるようになっている。記憶装置65は、ガスエンジン1に設けられたセンサ類からの各種信号を記憶するようになっている。演算装置66では、記憶装置65に記憶されている制御プログラムに従って、各種制御を実行するように構成されている。
【0029】
(ガスエンジンの停止時)
ガスエンジン1の停止時には、燃料ガス導入ライン4(導入側枝管41及び導入側本管42)の内部には燃料ガスから置換された窒素ガス等の不活性ガスが充填されている。ガスエンジン1は、燃料ガス導入ライン4に不活性ガスを導入するための不活性ガス導入ライン9をさらに備えていてもよい。図示される実施形態では、不活性ガス導入ライン9は、窒素ガス(不活性ガス)を貯留するガスタンク92に一端が接続され、他端が燃料ガス導入ライン4(図示例では、導入側本管42)に接続された不活性ガス導入配管91を含む。不活性ガス導入配管91には、不活性ガス導入配管91から導入側本管42に導入される不活性ガスの流量を調整する不活性ガス流量調整弁93が設けられていてもよい。
【0030】
(ガスエンジンの起動方法)
図4は、本開示の一実施形態に係るガスエンジン1の起動方法100の一例を示すフロー図である。幾つかの実施形態に係るガスエンジン1の起動方法100は、図4に示されるように、第1の供給ステップS1と、燃焼判定ステップS2と、第2の供給ステップS3と、を備える。
【0031】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、上述した複数の気筒2を、各々の気筒2から排出側本管52の出口521までの距離が最も小さい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、第1グループのうち排出側本管52の出口521までの距離が最も大きい気筒よりも、排出側本管52の出口521からの距離が大きい気筒からなる第2グループと、に区分する。各気筒2から排出側本管52の出口521までの距離は、各気筒2に接続された排出側枝管51の長さと、排出側本管52の該排出側枝管51との接続部から出口521までの長さの和である。
【0032】
図1に示される実施形態では、複数の気筒2(21A~21F)は、21A、21B、21C、21D、21E、21Fの順に、各気筒2から排出側本管52の出口521までの距離が大きくなっている。気筒21Aは、複数の気筒21A~21Fのうち、気筒2から排出側本管52の出口521までの距離が最も小さい気筒である最下流気筒である。気筒21Fは、複数の気筒21A~21Fのうち、気筒2から排出側本管52の出口521までの距離が最も大きい気筒である最上流気筒である。最下流気筒21Aは、第1グループに属する気筒2A(2)であり、最上流気筒21Fは、第2グループに属する気筒2B(2)である。最下流気筒21A及び最上流気筒21Fを除いた気筒21B~21Eの各々は、第1グループ又は第2グループの何れかに属してもよいし、第1グループ又は第2グループに属していなくてもよい。
【0033】
(第1の供給ステップ)
第1の実施形態における第1の供給ステップS1では、ガスエンジン1の起動時に、第1グループに属する気筒2Aのみに燃料ガスの供給を開始することが行われる。第1の供給ステップS1は、第1の供給制御部101により行われるようになっていてもよい。
【0034】
第1の実施形態における第1の供給制御部101(第1の供給ステップS1)では、第1グループに属する気筒2Aに対応するガス流量調整弁61、すなわち、第1グループに属する気筒2Aに接続された導入側枝管41に設けられたガス流量調整弁61(例えば、61A)が開かれ、導入側本管42から第1グループに属する気筒2Aの燃焼室203に上記ガスが導かれる。第1の実施形態における第1の供給ステップS1では、第2グループに属する気筒2Bに対応するガス流量調整弁61、すなわち、第2グループに属する気筒2Bに接続された導入側枝管41に設けられたガス流量調整弁61(例えば、61F)は閉状態が維持され、導入側本管42から第2グループに属する気筒2Bの燃焼室203には、上記ガスが導かれないようになっている。
【0035】
ガスエンジン1の運転中に複数の気筒2の各々において吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程の4つの行程を1周期とする燃焼サイクルが繰り返し行われる。吸気行程では、燃焼用気体導入ライン3を介して燃焼室203内に燃焼用気体が吸入される。排気行程では、燃焼室203内のガスが燃焼室203内から排ガスライン5に排出される。具体的には、第1グループに属する気筒2Aから排ガスライン5に、燃焼室203における燃焼により生じた既燃ガス又は未燃の燃料ガスが排出される。第2グループに属する気筒2Bから排ガスライン5に、吸気行程において燃焼室203内に吸入された燃焼用気体が排出される。
【0036】
(燃焼判定ステップ)
燃焼判定ステップS2では、第1の供給ステップS1において燃料ガスの供給を開始された気筒2の燃焼が安定したか否かを判定することが行われる。燃焼判定ステップS2は、燃焼判定部102により行われるようになっていてもよい。第1の実施形態における燃焼判定部102(燃焼判定ステップS2)では、上述した第1グループに属する気筒2Aの燃焼が安定したか否かを判定することが行われる。
【0037】
(第2の供給ステップ)
第1の実施形態における第2の供給ステップS3では、燃焼判定部102(燃焼判定ステップS2)において第1グループに属する気筒2Aの燃焼が安定したと判定された後(S2にて「YES」)に、第2グループに属する気筒2Bのうち少なくとも1つの気筒2に燃料ガスの供給を開始することが行われる。第2の供給ステップS3は、第2の供給制御部103により行われるようになっていてもよい。
【0038】
上記の構成(方法)によれば、ガスエンジン1の起動時に、第1グループに属する気筒2Aのみを燃焼させ、第2グループに属する気筒2Bから排ガスライン5に燃焼用気体を流入させることで、排ガスライン5の燃料ガス濃度の上昇を抑制できる。第2グループに属する気筒2Bは、第1グループに属する気筒2Aよりも排ガスライン5の上流側に接続されているため、仮に第1グループに属する気筒2Aから排ガスライン5に未燃ガスが流入したとしても、第2グループに属する気筒2Bから排ガスライン5に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスを希釈させ、排ガスライン5の下流側に押し流せる。これにより、ガスエンジン1の起動時において、排ガスライン5に上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できるため、排ガスライン5における上記未燃ガスの着火を抑制できる。よって、上記の構成(方法)によれば、ガスエンジン1の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0039】
幾つかの実施形態に係るガスエンジン1の上述した少なくとも1つの排ガスライン5は、図2に示されるように、複数の気筒2のうち、2つ以上の気筒2からなる第1気筒群に接続される第1排ガスライン5Aと、複数の気筒2のうち、第1気筒群に属さない2つ以上の気筒2からなる第2気筒群に接続される第2排ガスライン5Bと、を含む。
【0040】
図2に示される実施形態では、第1排ガスライン5Aは、第1気筒群に属する複数の気筒2(22A、22B、22C)の夫々に対応する複数の排出側枝管51A(51)と、複数の排出側枝管51Aが接続される共通の排出側本管52A(52)と、を含む。第1気筒群に属する複数の気筒2(22A、22B、22C)の燃焼室203から排出される排ガスは、排出側枝管51Aを介して該排出側枝管51Aに対応する気筒2の燃焼室203から排出側本管52Aに導かれる。排出側本管52Aの出口521Aは、機器53A(53)に接続されている。
【0041】
図2に示される実施形態では、第2排ガスライン5Bは、第2気筒群に属する複数の気筒2(22D、22E、22F)の夫々に対応する複数の排出側枝管51B(51)と、複数の排出側枝管51Bが接続される共通の排出側本管52B(52)と、を含む。第2気筒群に属する複数の気筒2(22D、22E、22F)の燃焼室203から排出される排ガスは、排出側枝管51Bを介して該排出側枝管51Bに対応する気筒2の燃焼室203から排出側本管52Bに導かれる。排出側本管52Bの出口521Bは、機器53B(53)に接続されている。
【0042】
幾つかの実施形態では、上記第1気筒群及び上記第2気筒群の各々を上記第1グループと上記第2グループに区分した場合において、上述した第1の供給制御部101は、ガスエンジン1の起動時に、第1気筒群及び第2気筒群の各々の第1グループに属する気筒2Aのみに燃料ガスの供給を開始するように構成されている。
【0043】
第1気筒群に属する複数の気筒2(22A、22B、22C)は、22A、22B、22Cの順に、各気筒2から排出側本管52Aの出口521Aまでの距離が大きくなっている。気筒22Aは、第1気筒群の最下流気筒であり、第1気筒群の第1グループに属する。気筒22Cは、第1気筒群の最上流気筒であり、第1気筒群の第2グループに属する。
【0044】
第2気筒群に属する複数の気筒2(22D、22E、22F)は、22D、22E、22Fの順に、各気筒2から排出側本管52Bの出口521Bまでの距離が大きくなっている。気筒22Dは、第2気筒群の最下流気筒であり、第2気筒群の第1グループに属する。気筒22Fは、第2気筒群の最上流気筒であり、第2気筒群の第2グループに属する。
【0045】
上述した第2の供給制御部103は、燃焼判定部102において第1気筒群の第1グループに属する気筒2Aの燃焼が安定したと判定された後に、第1気筒群の第2グループに属する気筒2Bのうち少なくとも1つの気筒2に燃料ガスの供給を開始するように構成されている。また、第2の供給制御部103は、燃焼判定部102において第2気筒群の第2グループに属する気筒2Aの燃焼が安定したと判定された後に、第2気筒群の第2グループに属する気筒2Bのうち少なくとも1つの気筒2に燃料ガスの供給を開始するように構成されている。
【0046】
上記の構成によれば、ガスエンジン1の起動時に、第1気筒群及び第2気筒群の各々の第2グループに属する気筒2Bから、第1、第2排ガスライン5A、5Bの各々に燃焼用気体を流入させることができる。これにより、ガスエンジン1の起動時に、第1、第2排ガスライン5A、5Bの各々において上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できるため、第1、第2排ガスライン5A、5Bの各々における上記未燃ガスの着火を抑制できる。
【0047】
幾つかの実施形態では、上述した第1グループに属する気筒2Aは、各排ガスライン5(5A、5B)の最下流に接続された最下流気筒21A、22A、22Dのみである。ガスエンジン1の起動時に燃焼させる気筒を最下流気筒21A、22A、22Dに限定することで、ガスエンジン1の起動時に複数の気筒2Aを燃焼させる場合に比べて、排ガスライン5への未燃ガスの流入リスクを低減でき、且つ第2グループに属する気筒2Bから排ガスライン5に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスをより効果的に希釈させることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図5及び図6の各々は、本開示の第2の実施形態に係るガスエンジン1の模式図である。第2の実施形態では、上述した複数の気筒2を、各々の気筒2から導入側本管42の入口421までの距離が最も大きい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、第1グループのうち導入側本管42の入口421までの距離が最も小さい気筒よりも、導入側本管42の入口421からの距離が小さい気筒からなる第2グループと、に区分する。各気筒2から導入側本管42の入口421までの距離は、各気筒2に接続された導入側枝管41の長さと、導入側本管42の該導入側枝管41との接続部から入口421までの長さの和である。
【0049】
図5及び図6に示される実施形態では、複数の気筒2(23A~23F)は、23A、23B、23C、23D、23E、23Fの順に、各気筒2から導入側本管42の入口421までの距離が小さくなっている。気筒23Aは、複数の気筒23A~23Fのうち、気筒2から導入側本管42の入口421までの距離が最も大きい気筒である最下流気筒である。気筒23Fは、複数の気筒23A~23Fのうち、気筒2から導入側本管42の入口421までの距離が最も小さい気筒である最上流気筒である。最下流気筒23Aは、第1グループに属する気筒2C(2)であり、最上流気筒23Fは、第2グループに属する気筒2D(2)である。最下流気筒23A及び最上流気筒23Fを除いた気筒23B~23Eの各々は、第1グループ又は第2グループの何れかに属してもよいし、第1グループ又は第2グループに属していなくてもよい。
【0050】
(第1の供給ステップ)
第2の実施形態における第1の供給ステップS1では、ガスエンジン1の起動時に、第1グループに属する気筒2Cのみに燃料ガスの供給を開始することが行われる。第1の供給ステップS1は、第1の供給制御部101により行われるようになっていてもよい。
【0051】
第2の実施形態における第1の供給制御部101(第1の供給ステップS1)では、第1グループに属する気筒2Cに対応するガス流量調整弁61、すなわち、第1グループに属する気筒2Cに接続された導入側枝管41に設けられたガス流量調整弁61(例えば、61A)が開かれ、導入側本管42から第1グループに属する気筒2Cの燃焼室203に上記ガスが導かれる。第2の実施形態における第1の供給ステップS1では、第2グループに属する気筒2Dに対応するガス流量調整弁61、すなわち、第2グループに属する気筒2Dに接続された導入側枝管41に設けられたガス流量調整弁61(例えば、61F)は閉状態が維持され、導入側本管42から第2グループに属する気筒2Dの燃焼室203には、上記ガスが導かれないようになっている。
【0052】
ガスエンジン1の運転中に複数の気筒2の各々において吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程の4つの行程を1周期とする燃焼サイクルが繰り返し行われる。吸気行程では、燃焼用気体導入ライン3を介して燃焼室203内に燃焼用気体が吸入される。排気行程では、燃焼室203内のガスが燃焼室203内から排ガスライン5に排出される。具体的には、第1グループに属する気筒2Cから排ガスライン5に、燃焼室203における燃焼により生じた既燃ガス又は未燃の燃料ガスが排出される。第2グループに属する気筒2Dから排ガスライン5に、吸気行程において燃焼室203内に吸入された燃焼用気体が排出される。
【0053】
(燃焼判定ステップ)
第2の実施形態における燃焼判定部102(燃焼判定ステップS2)では、上述した第1グループに属する気筒2Cの燃焼が安定したか否かを判定することが行われる。
【0054】
(第2の供給ステップ)
第2の実施形態における第2の供給ステップS3では、燃焼判定部102(燃焼判定ステップS2)において第1グループに属する気筒2Cの燃焼が安定したと判定された後(S2にて「YES」)に、第2グループに属する気筒2Dのうち少なくとも1つの気筒2に燃料ガスの供給を開始することが行われる。第2の供給ステップS3は、第2の供給制御部103により行われるようになっていてもよい。
【0055】
上記の構成(方法)によれば、ガスエンジン1の起動時に、第1グループに属する気筒2Cのみを燃焼させ、第2グループに属する気筒2Dから排ガスライン5に燃焼用気体を流入させることで、排ガスライン5の燃料ガス濃度の上昇を抑制できる。ガスエンジン1の停止時に燃料ガス導入ライン4に不活性ガスが充填される等、ガスエンジン1の起動時に、燃料ガス導入ライン4に燃料ガスが十分に充填されていないことがある。燃料ガス導入ライン4の最下流に接続される最下流気筒23Aの燃焼が安定した後は、燃料ガス導入ライン4には燃料ガスが充満している。最下流気筒23Aの燃焼が安定した後に、第2グループに属する気筒2Dに燃料ガスの供給を開始することで、第2グループに属する気筒2Dの燃焼を速やかに安定させることができるため、排ガスライン5への未燃ガスの流入リスクを低減できる。よって、上記の構成(方法)によれば、ガスエンジン1の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0056】
幾つかの実施形態に係るガスエンジン1では、図5及び図6に示されるように、上述した少なくとも1つの排ガスライン5は、上述した複数の排出側枝管51と、上述した排出側本管52と、を含む。第2グループに属する気筒2Dは、図5に示されるように、第1グループのうち排出側本管52の出口521までの距離が最も大きい気筒2Cよりも、排出側本管52の出口521からの距離が大きい気筒からなる。
【0057】
上記の構成によれば、第2グループに属する気筒2Dは、第1グループに属する気筒2Cよりも排ガスライン5の上流側に接続されているため、仮に第1グループに属する気筒2Cから排ガスライン5に未燃ガスが流入したとしても、第2グループに属する気筒2Dから排ガスライン5に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスを希釈させ、排ガスライン5の下流側に押し流せる。これにより、ガスエンジン1の起動時において、排ガスライン5に上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できるため、排ガスライン5における上記未燃ガスの着火を抑制できる。
【0058】
なお、他の幾つかの実施形態では、図6に示されるように、第2グループに属する気筒2Dは、第1グループに属する気筒2Cよりも排ガスライン5の下流側に接続されていてもよい。換言すると、第2グループに属する気筒2Dは、第1グループのうち排出側本管52の出口521までの距離が最も大きい気筒2Cよりも、排出側本管52の出口521からの距離が小さい気筒を含んでいてもよい。
【0059】
幾つかの実施形態では、上述した第1グループに属する気筒2Cは、排ガスライン5の最下流に接続された最下流気筒23Aのみである。ガスエンジン1の起動時に燃焼させる気筒を最下流気筒23Aに限定することで、ガスエンジン1の起動時に複数の気筒2Cを燃焼させる場合に比べて、排ガスライン5への未燃ガスの流入リスクを低減でき、且つ第2グループに属する気筒2Dから排ガスライン5に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスをより効果的に希釈させることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
図7は、本開示の第3の実施形態に係るガスエンジン1の模式図である。複数の気筒2(24A~24F)は、互いの燃焼開始時期がずれている。燃焼開始時期は、点火装置206(図3参照)による着火時期でもよいし、上述した膨張行程の始期でもよい。図7に示される実施形態では、複数の気筒2(24A~24F)を燃焼開始時期の早い順に並べると、24A、24E、24C、24F、24B、24Dの順になる。
【0061】
(第1の供給ステップ)
第3の実施形態における第1の供給ステップS1では、ガスエンジン1の起動時に、複数の気筒2(24A~24F)のうち、少なくとも1つの気筒2を含む供給対象気筒2Eに燃料ガスの供給を開始することが行われる。第1の供給ステップS1は、第1の供給制御部101により行われるようになっていてもよい。なお、供給対象気筒2Eは、図示例では気筒24Aであるが、複数の気筒2(24A~24F)のうち何れの気筒2であってもよい。
【0062】
第3の実施形態における第1の供給制御部101(第1の供給ステップS1)では、供給対象気筒2Eに対応するガス流量調整弁61、すなわち、供給対象気筒2Eに接続された導入側枝管41に設けられたガス流量調整弁61(例えば、61A)が開かれ、導入側本管42から供給対象気筒2Eの燃焼室203に上記ガスが導かれる。第3の実施形態における第1の供給ステップS1では、複数の気筒2(24A~24F)のうち、供給対象気筒2E以外の気筒2に対応するガス流量調整弁61、すなわち、供給対象気筒2E以外の気筒2に接続された導入側枝管41に設けられたガス流量調整弁61(例えば、61F)は閉状態が維持され、導入側本管42から供給対象気筒2E以外の気筒2の燃焼室203には、上記ガスが導かれないようになっている。
【0063】
ガスエンジン1の運転中に複数の気筒2の各々において吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程の4つの行程を1周期とする燃焼サイクルが繰り返し行われる。吸気行程では、燃焼用気体導入ライン3を介して燃焼室203内に燃焼用気体が吸入される。排気行程では、燃焼室203内のガスが燃焼室203内から排ガスライン5に排出される。具体的には、供給対象気筒2Eから排ガスライン5に、燃焼室203における燃焼により生じた既燃ガス又は未燃の燃料ガスが排出される。供給対象気筒2E以外の気筒2から排ガスライン5に、吸気行程において燃焼室203内に吸入された燃焼用気体が排出される。
【0064】
(燃焼判定ステップ)
第3の実施形態における燃焼判定部102(燃焼判定ステップS2)では、上述した供給対象気筒2Eの燃焼が安定したか否かを判定することが行われる。
【0065】
(第2の供給ステップ)
第3の実施形態における第2の供給ステップS3では、燃焼判定部102(燃焼判定ステップS2)において供給対象気筒2Eの燃焼が安定したと判定された後(S2にて「YES」)に、供給対象気筒2E以外の複数の気筒2のうち、燃焼順序が供給対象気筒2Eの直前に該当しない少なくとも1つの気筒2である次回供給対象気筒2Fに燃料ガスの供給を開始することが行われる。第2の供給ステップS3は、第2の供給制御部103により行われるようになっていてもよい。図示例は、気筒24Dが、燃焼順序が供給対象気筒2Eの直前に該当する気筒2である。
【0066】
第3の実施形態では、燃焼判定ステップS2及び第2の供給ステップS3の組み合わせを複数回行うようにしてもよい。燃焼判定ステップS2及び第2の供給ステップS3の2回目からは、供給対象気筒2Eに前回の次回供給対象気筒2Fが含まれる。なお、燃焼順序が供給対象気筒2Eの直前に該当しない気筒2が存在しなくなった後は、燃料ガスの供給が開始されていない気筒2の何れを次回供給対象気筒2Fとしてもよい。
【0067】
上記の構成(方法)によれば、燃焼順序が供給対象気筒2Eの直前の気筒2を次の燃料ガスの供給対象となる次回供給対象気筒2Fから除外する。この場合には、仮に次回供給対象気筒2Fから排ガスライン5に未燃ガスが流入したとしても、燃焼順序が供給対象気筒2Eの直前の気筒2(24D)から排ガスライン5に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスを希釈させ、排ガスライン5の下流側に押し流せる。すなわち、上記の構成(方法)によれば、ガスエンジン1の起動時において、排ガスライン5に上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できる。また、供給対象気筒2Eから排ガスライン5に排出される比較的高温の排ガスが、次回供給対象気筒2Fから排ガスライン5に流入した未燃ガスに触れ、未燃ガスを昇温させることを抑制できる。これにより、排ガスライン5における上記未燃ガスの着火を抑制できるため、ガスエンジン1の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、第2の供給制御部103(第2の供給ステップS3)では、供給対象気筒2E以外の複数の気筒2のうち、燃焼順序が供給対象気筒2Eの直前及び直後に該当しない少なくとも1つの気筒2に燃料ガスの供給を開始することが行われる。図示例は、気筒24Eが、燃焼順序が供給対象気筒2Eの直後に該当する気筒2である。
【0069】
上記の構成(方法)によれば、燃焼順序が供給対象気筒2E(24A)の直前及び直後の気筒2(24D、24E)を次の燃料ガスの供給対象となる次回供給対象気筒2Fから除外する。この場合には、供給対象気筒2Eから排ガスライン5に排出される比較的高温の排ガスを、燃焼順序が供給対象気筒2E(24A)の直後の気筒2(24E)から排ガスライン5に流入する燃焼用気体により排ガスライン5の下流側に押し流せる。また、供給対象気筒2E(24A)から排ガスライン5に排出される比較的高温の排ガスが、次回供給対象気筒2Fから排ガスライン5に流入した未燃ガスに触れ、未燃ガスを昇温させることを抑制できる。これにより、排ガスライン5における上記未燃ガスの着火を抑制できるため、ガスエンジン1の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0070】
(燃焼判定部)
上述した幾つかの実施形態に係るガスエンジン1の上述した排ガスライン5は、上述した複数の排出側枝管51と、上述した排出側本管52と、を含む。幾つかの実施形態では、上述したガスエンジン1は、図3に示されるように、複数の排出側枝管51の温度、又は、複数の排出側枝管51の内部を流れるガスの温度、の何れかを取得するように構成された温度取得装置7をさらに備える。上述した燃焼判定部102は、温度取得装置7が取得する温度が閾値を超えたときに、温度取得装置7が温度を取得した排出側枝管51が接続された気筒2の燃焼が安定したと判定するように構成されている。図3に示されるように、温度取得装置7は、複数の排出側枝管51の各々に対応して個別に取り付けられ複数の温度センサであってもよい。
【0071】
上記の構成によれば、温度取得装置7が取得する温度が閾値を超えた場合には、排出側枝管51に排ガスを排出する気筒2の燃焼室203(燃焼室203の壁面温度等)が、燃焼が安定する程度の高温になっているため、該気筒2の燃焼が安定したと判定できる。
【0072】
幾つかの実施形態では、上述したガスエンジン1は、図3に示されるように、複数の気筒2の夫々の筒内圧を取得するように構成された筒内圧取得装置8をさらに備える。上述した燃焼判定部102は、筒内圧取得装置8が取得する筒内圧が閾値を超えたときに該筒内圧を取得した気筒2の燃焼が安定したと判定するように構成されている。図3に示されるように、筒内圧取得装置8は、複数の気筒2の各々に対応して個別に取り付けられ複数の筒内圧センサであってもよい。上記筒内圧センサは、装着された気筒2の内部の圧力に応じた電気を発生させるように構成されている。或る実施形態では、上記筒内圧センサは、圧電素子や歪ゲージなどを圧力検出素子として用い、筒内圧センサで生じる電気量を制御装置62でモニタリングすることで、上記筒内圧センサが装着された気筒2の内部(燃焼室203)の圧力を監視できる。
【0073】
上記の構成によれば、筒内圧取得装置8が取得する筒内圧が閾値を超えた場合には、筒内圧を取得した気筒2の燃焼室203が、燃焼が安定する程度の高圧になっているため、該気筒2の燃焼が安定したと判定できる。
【0074】
上述した幾つかの実施形態に係るガスエンジン1の燃料ガスは、水素ガスからなる。この場合には、天然ガスをガスエンジン1の燃料ガスとして用いる場合に比べて、ガスエンジン1からの二酸化炭素ガスの排出が抑制されるため、環境負荷の低減が図れる。水素ガスを燃料ガスとして用いる場合には、排ガスライン5に流出した未燃の水素ガスの着火リスクが比較的高いものとなるが、上記ガスエンジン1を採用することで、上記未燃の水素ガスの着火リスクを低減できる。
【0075】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0076】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0077】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0078】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスエンジン(1)は、
複数の気筒(2)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ライン(3)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ライン(4)であって、前記燃焼用気体導入ライン(3)とは異なる燃料ガス導入ライン(4)と、
前記燃料ガス導入ライン(4)を介して前記複数の気筒(2)の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置(6)と、
前記複数の気筒(2)から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスライン(5)と、を備え、
前記少なくとも1つの排ガスライン(5)は、前記複数の気筒(2)の夫々に対応する複数の排出側枝管(51)と、前記複数の排出側枝管(51)が接続される共通の排出側本管(52)と、を含み、
前記複数の気筒(2)を、
各々の気筒(2)から前記排出側本管(52)の出口(521)までの距離が最も小さい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記排出側本管(52)の前記出口(521)までの距離が最も大きい気筒よりも、前記排出側本管(52)の前記出口(521)からの距離が大きい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガス流量調整装置(6)は、
ガスエンジン(1)の起動時に、前記第1グループに属する前記気筒(2A)のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給制御部(101)と、
前記第1グループに属する前記気筒(2A)の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定部(102)と、
前記燃焼判定部(102)において前記第1グループに属する前記気筒(2A)の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒(2B)のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給制御部(103)と、を含む。
【0079】
上記1)の構成によれば、ガスエンジン(1)の起動時に、第1グループに属する気筒(2A)のみを燃焼させ、第2グループに属する気筒(2B)から排ガスライン(5)に燃焼用気体を流入させることで、排ガスライン(5)の燃料ガス濃度の上昇を抑制できる。第2グループに属する気筒(2B)は、第1グループに属する気筒(2A)よりも排ガスライン(5)の上流側に接続されているため、仮に第1グループに属する気筒(2A)から排ガスライン(5)に未燃ガスが流入したとしても、第2グループに属する気筒(2B)から排ガスライン(5)に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスを希釈させ、排ガスライン(5)の下流側に押し流せる。これにより、ガスエンジン(1)の起動時において、排ガスライン(5)に上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できるため、排ガスライン(5)における上記未燃ガスの着火を抑制できる。よって、上記1)の構成によれば、ガスエンジン(1)の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0080】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のガスエンジン(1)であって、
前記少なくとも1つの排ガスライン(5)は、
前記複数の気筒(2)のうち、2つ以上の前記気筒(2)からなる第1気筒群に接続される第1排ガスライン(5A)と、
前記複数の気筒(2)のうち、前記第1気筒群に属さない2つ以上の前記気筒(2)からなる第2気筒群に接続される第2排ガスライン(5B)と、を含み、
前記第1気筒群及び前記第2気筒群の各々を前記第1グループと前記第2グループに区分した場合において、
前記第1の供給制御部(101)は、前記ガスエンジン(1)の起動時に、前記第1気筒群及び前記第2気筒群の各々の前記第1グループに属する前記気筒(2A)のみに前記燃料ガスの供給を開始するように構成された。
【0081】
上記2)の構成によれば、ガスエンジン(1)の起動時に、第1気筒群及び第2気筒群の各々の第2グループに属する気筒(2B)から、第1、第2排ガスライン(5A、5B)の各々に燃焼用気体を流入させることができる。これにより、ガスエンジン(1)の起動時に、第1、第2排ガスライン(5A、5B)の各々において上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できるため、第1、第2排ガスライン(5A、5B)の各々における上記未燃ガスの着火を抑制できる。
【0082】
3)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスエンジン(1)は、
複数の気筒(2)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ライン(3)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ライン(4)であって、前記燃焼用気体導入ライン(3)とは異なる燃料ガス導入ライン(4)と、
前記燃料ガス導入ライン(4)を介して前記複数の気筒(2)の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置(6)と、
前記複数の気筒(2)から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスライン(5)と、を備え、
前記燃料ガス導入ライン(4)は、前記複数の気筒(2)の夫々に対応する複数の導入側枝管(41)と、前記複数の導入側枝管(41)が接続される共通の導入側本管(42)と、を含み、
前記複数の気筒(2)を、
各々の気筒(2)から前記導入側本管(42)の入口(421)までの距離が最も大きい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記導入側本管(42)の前記入口(421)までの距離が最も小さい気筒よりも、前記導入側本管(42)の前記入口(421)からの距離が小さい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガス流量調整装置(6)は、
ガスエンジン(1)の起動時に、前記第1グループに属する前記気筒(2C)のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給制御部(101)と、
前記第1グループに属する前記気筒(2C)の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定部(102)と、
前記燃焼判定部(102)において前記第1グループに属する前記気筒(2C)の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒(2D)のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給制御部(103)と、を含む。
【0083】
上記3)の構成によれば、ガスエンジン(1)の起動時に、第1グループに属する気筒(2C)のみを燃焼させ、第2グループに属する気筒(2D)から排ガスライン(5)に燃焼用気体を流入させることで、排ガスライン(5)の燃料ガス濃度の上昇を抑制できる。ガスエンジン(1)の停止時に燃料ガス導入ライン(4)に不活性ガスが充填される等、ガスエンジン(1)の起動時に、燃料ガス導入ライン(4)に燃料ガスが十分に充填されていないことがある。燃料ガス導入ライン(4)の最下流に接続される最下流気筒の燃焼が安定した後は、燃料ガス導入ライン(4)には燃料ガスが充満している。最下流気筒の燃焼が安定した後に、第2グループに属する気筒(2D)に燃料ガスの供給を開始することで、第2グループに属する気筒(2Dの燃焼を速やかに安定させることができるため、排ガスライン(5)への未燃ガスの流入リスクを低減できる。よって、上記3)の構成によれば、ガスエンジン(1)の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0084】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載のガスエンジン(1)であって、
前記少なくとも1つの排ガスライン(5)は、
前記複数の気筒(2)の夫々に対応する複数の排出側枝管(51)と、前記複数の排出側枝管(51)が接続される共通の排出側本管(52)と、を含み、
前記第2グループに属する前記気筒(2D)は、前記第1グループのうち前記排出側本管(52)の出口(521)までの距離が最も大きい気筒よりも、前記排出側本管(52)の前記出口(521)からの距離が大きい気筒からなる。
【0085】
上記4)の構成によれば、第2グループに属する気筒(2D)は、第1グループに属する気筒(2C)よりも排ガスライン(5)の上流側に接続されているため、仮に第1グループに属する気筒(2C)から排ガスライン(5)に未燃ガスが流入したとしても、第2グループに属する気筒(2D)から排ガスライン(5)に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスを希釈させ、排ガスライン(5)の下流側に押し流せる。これにより、ガスエンジン(1)の起動時において、排ガスライン(5)に上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できるため、排ガスライン(5)における上記未燃ガスの着火を抑制できる。
【0086】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)の何れかに記載のガスエンジン(1)であって、
前記第1グループに属する前記気筒(2A、2C)は、前記最下流気筒(21A、23A)のみである。
【0087】
上記5)の構成によれば、ガスエンジン(1)の起動時に燃焼させる気筒を最下流気筒(21A、23A)に限定することで、ガスエンジン(1)の起動時に複数の気筒(2A、2C)を燃焼させる場合に比べて、排ガスライン(5)への未燃ガスの流入リスクを低減でき、且つ第2グループに属する気筒(2B、2D)から排ガスライン(5)に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスをより効果的に希釈させることができる。
【0088】
6)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスエンジン(1)は、
複数の気筒(2)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ライン(3)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ライン(4)であって、前記燃焼用気体導入ライン(3)とは異なる燃料ガス導入ライン(4)と、
前記燃料ガス導入ライン(4)を介して前記複数の気筒(2)の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置(6)と、
前記複数の気筒(2)から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスライン(5)と、を備え、
前記ガス流量調整装置(6)は、
ガスエンジン(1)の起動時に、前記複数の気筒(2)のうち、少なくとも1つの気筒を含む供給対象気筒(2E)に前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給制御部(101)と、
前記供給対象気筒(2E)の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定部(102)と、
前記燃焼判定部(102)において前記供給対象気筒(2E)の燃焼が安定したと判定された後に、前記供給対象気筒(2E)以外の複数の気筒(2)のうち、燃焼順序が前記供給対象気筒(2E)の直前に該当しない少なくとも1つの気筒(2)に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給制御部(103)と、を含む。
【0089】
上記6)の構成によれば、燃焼順序が供給対象気筒(2E)の直前の気筒(2)を次の燃料ガスの供給対象となる次回供給対象気筒(2F)から除外する。この場合には、仮に次回供給対象気筒(2F)から排ガスライン(5)に未燃ガスが流入したとしても、燃焼順序が供給対象気筒(2E)の直前の気筒(2)から排ガスライン(5)に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスを希釈させ、排ガスライン(5)の下流側に押し流せる。すなわち、上記6)の構成によれば、ガスエンジン(1)の起動時において、排ガスライン(5)に上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できる。また、供給対象気筒(2E)から排ガスライン(5)に排出される比較的高温の排ガスが、次回供給対象気筒(2F)から排ガスライン(5)に流入した未燃ガスに触れ、未燃ガスを昇温させることを抑制できる。これにより、排ガスライン(5)における上記未燃ガスの着火を抑制できるため、ガスエンジン(1)の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0090】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載のガスエンジン(1)であって、
前記第2の供給制御部(103)は、前記供給対象気筒(2E)以外の前記複数の気筒(2)のうち、燃焼順序が前記供給対象気筒(2E)の直後に該当しない少なくとも1つの気筒(2)に前記燃料ガスの供給を開始するように構成された。
【0091】
上記7)の構成によれば、燃焼順序が供給対象気筒(2E)の直後の気筒(2)を次の燃料ガスの供給対象となる次回供給対象気筒(2F)から除外する。この場合には、供給対象気筒(2E)から排ガスライン(5)に排出される比較的高温の排ガスを、燃焼順序が供給対象気筒(2E)の直後の気筒(2)から排ガスライン(5)に流入する燃焼用気体により排ガスライン(5)の下流側に押し流せる。また、供給対象気筒(2E)から排ガスライン(5)に排出される比較的高温の排ガスが、次回供給対象気筒(2F)から排ガスライン(5)に流入した未燃ガスに触れ、未燃ガスを昇温させることを抑制できる。これにより、排ガスライン(5)における上記未燃ガスの着火を抑制できるため、ガスエンジン(1)の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0092】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)の何れかに記載のガスエンジン(1)であって、
前記排ガスライン(5)は、前記複数の気筒(2)の夫々に対応する複数の排出側枝管(51)と、前記複数の排出側枝管(51)が接続される共通の排出側本管(52)と、を含み、
前記ガスエンジン(1)は、
前記複数の排出側枝管(51)の温度、又は、前記複数の排出側枝管(51)の内部を流れるガスの温度、の何れかを取得するように構成された温度取得装置(7)をさらに備え、
前記燃焼判定部(102)は、前記温度取得装置(7)が取得する前記温度が閾値を超えたときに、前記温度取得装置(7)が前記温度を取得した前記排出側枝管(51)が接続された気筒の燃焼が安定したと判定するように構成された。
【0093】
上記8)の構成によれば、温度取得装置(7)が取得する温度が閾値を超えた場合には、排出側枝管(51)に排ガスを排出する気筒(2)の燃焼室(203)が、燃焼が安定する程度の高温になっているため、該気筒(2)の燃焼が安定したと判定できる。
【0094】
9)幾つかの実施形態では、上記1)から7)までの何れかに記載のガスエンジン(1)であって、
前記複数の気筒(2)の夫々の筒内圧を取得するように構成された筒内圧取得装置(8)をさらに備え、
前記燃焼判定部(102)は、前記筒内圧取得装置(8)が取得する前記筒内圧が閾値を超えたときに前記筒内圧を取得した気筒(2)の燃焼が安定したと判定するように構成された。
【0095】
上記9)の構成によれば、筒内圧取得装置(8)が取得する筒内圧が閾値を超えた場合には、筒内圧を取得した気筒(2)の燃焼室(203)が、燃焼が安定する程度の高圧になっているため、該気筒(2)の燃焼が安定したと判定できる。
【0096】
10)幾つかの実施形態では、上記1)から9)までの何れかに記載のガスエンジン(1)であって、
前記燃料ガスは、水素ガスからなる。
【0097】
上記10)の構成によれば、天然ガスをガスエンジン(1)の燃料ガスとして用いる場合に比べて、ガスエンジン(1)からの二酸化炭素ガスの排出が抑制されるため、環境負荷の低減が図れる。水素ガスを燃料ガスとして用いる場合には、排ガスライン(5)に流出した未燃の水素ガスの着火リスクが比較的高いものとなるが、上記ガスエンジン(1)を採用することで、上記未燃の水素ガスの着火リスクを低減できる。
【0098】
11)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスエンジン(1)の起動方法(100)は、
複数の気筒(2)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ライン(3)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ライン(4)であって、前記燃焼用気体導入ライン(3)とは異なる燃料ガス導入ライン(4)と、
前記燃料ガス導入ライン(4)を介して前記複数の気筒(2)の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置(6)と、
前記複数の気筒(2)から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスライン(5)と、を備えるガスエンジン(1)の起動方法(100)であって、
前記少なくとも1つの排ガスライン(5)は、前記複数の気筒(2)の夫々に対応する複数の排出側枝管(51)と、前記複数の排出側枝管(51)が接続される共通の排出側本管(52)と、を含み、
前記複数の気筒(2)を、
各々の気筒(2)から前記排出側本管(52)の出口(521)までの距離が最も小さい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記排出側本管(52)の前記出口(521)までの距離が最も大きい気筒よりも、前記排出側本管(52)の前記出口(521)からの距離が大きい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガスエンジン(1)の起動方法(100)は、
前記ガスエンジンの起動時に、前記第1グループに属する前記気筒(2A)のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給ステップ(S1)と、
前記第1グループに属する前記気筒(2A)の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定ステップ(S2)と、
前記燃焼判定ステップ(S2)において前記第1グループに属する前記気筒(2A)の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒(2B)のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給ステップ(S3)と、を含む。
【0099】
上記11)の方法によれば、ガスエンジン(1)の起動時に、第1グループに属する気筒(2A)のみを燃焼させ、第2グループに属する気筒(2B)から排ガスライン(5)に燃焼用気体を流入させることで、排ガスライン(5)の燃料ガス濃度の上昇を抑制できる。第2グループに属する気筒(2B)は、第1グループに属する気筒(2A)よりも排ガスライン(5)の上流側に接続されているため、仮に第1グループに属する気筒(2A)から排ガスライン(5)に未燃ガスが流入したとしても、第2グループに属する気筒(2B)から排ガスライン(5)に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスを希釈させ、排ガスライン(5)の下流側に押し流せる。これにより、ガスエンジン(1)の起動時において、排ガスライン(5)に上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できるため、排ガスライン(5)における上記未燃ガスの着火を抑制できる。よって、上記11)の方法によれば、ガスエンジン(1)の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0100】
12)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスエンジン(1)の起動方法(100)は、
複数の気筒(2)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ライン(3)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ライン(4)であって、前記燃焼用気体導入ライン(3)とは異なる燃料ガス導入ライン(4)と、
前記燃料ガス導入ライン(4)を介して前記複数の気筒(2)の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置(6)と、
前記複数の気筒(2)から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスライン(5)と、を備えるガスエンジン(1)の起動方法(100)であって、
前記燃料ガス導入ライン(4)は、前記複数の気筒(2)の夫々に対応する複数の導入側枝管(41)と、前記複数の導入側枝管(41)が接続される共通の導入側本管(42)と、を含み、
前記複数の気筒(2)を、
各々の気筒(2)から前記導入側本管(42)の入口(421)までの距離が最も大きい気筒である最下流気筒を少なくとも含む第1グループと、
前記第1グループのうち前記導入側本管(42)の前記入口(421)までの距離が最も小さい気筒よりも、前記導入側本管(42)の前記入口(421)からの距離が小さい気筒からなる第2グループと、に区分した場合において、
前記ガスエンジン(1)の起動方法(100)は、
前記ガスエンジン(1)の起動時に、前記第1グループに属する前記気筒(2C)のみに前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給ステップ(S1)と、
前記第1グループに属する前記気筒(2C)の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定ステップ(S2)と、
前記燃焼判定ステップ(S2)において前記第1グループに属する前記気筒(2C)の燃焼が安定したと判定された後に、前記第2グループに属する前記気筒(2D)のうち少なくとも1つの気筒に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給ステップ(S3)と、を含む。
【0101】
上記12)の方法によれば、ガスエンジン(1)の起動時に、第1グループに属する気筒(2C)のみを燃焼させ、第2グループに属する気筒(2D)から排ガスライン(5)に燃焼用気体を流入させることで、排ガスライン(5)の燃料ガス濃度の上昇を抑制できる。ガスエンジン(1)の停止時に燃料ガス導入ライン(4)に不活性ガスが充填される等、ガスエンジン(1)の起動時に、燃料ガス導入ライン(4)に燃料ガスが十分に充填されていないことがある。燃料ガス導入ライン(4)の最下流に接続される最下流気筒の燃焼が安定した後は、燃料ガス導入ライン(4)には燃料ガスが充満している。最下流気筒の燃焼が安定した後に、第2グループに属する気筒(2D)に燃料ガスの供給を開始することで、第2グループに属する気筒(2D)の燃焼を速やかに安定させることができるため、排ガスライン(5)への未燃ガスの流入リスクを低減できる。よって、上記12)の方法によれば、ガスエンジン(1)の起動時における燃焼を安定させることができる。
【0102】
13)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスエンジン(1)の起動方法(100)は、
複数の気筒(2)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃焼用気体を導入するための燃焼用気体導入ライン(3)と、
前記複数の気筒(2)の夫々に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ライン(4)であって、前記燃焼用気体導入ライン(3)とは異なる燃料ガス導入ライン(4)と、
前記燃料ガス導入ライン(4)を介して前記複数の気筒(2)の夫々に導入されるガスの流量を調整するガス流量調整装置(6)と、
前記複数の気筒(2)から排出される排ガスを排出するための少なくとも1つの排ガスライン(5)と、を備えるガスエンジン(1)の起動方法(100)であって、
前記ガスエンジン(1)の起動時に、前記複数の気筒(2)のうち、少なくとも1つの気筒を含む供給対象気筒(2E)に前記燃料ガスの供給を開始する第1の供給ステップ(S1)と、
前記供給対象気筒(2E)の燃焼が安定したか否かを判定する燃焼判定ステップ(S2)と、
前記燃焼判定ステップ(S2)において前記供給対象気筒(2E)の燃焼が安定したと判定された後に、前記供給対象気筒(2E)以外の複数の気筒(2)のうち、燃焼順序が前記供給対象気筒(2E)の直前に該当しない少なくとも1つの気筒(2)に前記燃料ガスの供給を開始する第2の供給ステップ(S3)と、を含む。
【0103】
上記13)の方法によれば、燃焼順序が供給対象気筒(2E)の直前の気筒(2)を次の燃料ガスの供給対象となる次回供給対象気筒(2F)から除外する。この場合には、仮に次回供給対象気筒(2F)から排ガスライン(5)に未燃ガスが流入したとしても、燃焼順序が供給対象気筒(2E)の直前の気筒(2)から排ガスライン(5)に流入する燃焼用気体により上記未燃ガスを希釈させ、排ガスライン(5)の下流側に押し流せる。すなわち、上記13)の方法によれば、ガスエンジン(1)の起動時において、排ガスライン(5)に上記未燃ガスが滞留して未燃ガス濃度が高まることを抑制できる。また、供給対象気筒(2E)から排ガスライン(5)に排出される比較的高温の排ガスが、次回供給対象気筒(2F)から排ガスライン(5)に流入した未燃ガスに触れ、未燃ガスを昇温させることを抑制できる。これにより、排ガスライン(5)における上記未燃ガスの着火を抑制できるため、ガスエンジン(1)の起動時における燃焼を安定させることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 ガスエンジン
2 気筒
3 燃焼用気体導入ライン
4 燃料ガス導入ライン
5 排ガスライン
6 ガス流量調整装置
7 温度取得装置
8 筒内圧取得装置
9 不活性ガス導入ライン
31,41 導入側枝管
32,42 導入側本管
33,43,53 機器
51,51A,51B 排出側枝管
52,52A,52B 排出側本管
61,61A~61F ガス流量調整弁
62 制御装置
63 入力装置
64 出力装置
65 記憶装置
66 演算装置
91 不活性ガス導入配管
92 ガスタンク
93 不活性ガス流量調整弁
100 起動方法
101 第1の供給制御部
102 燃焼判定部
103 第2の供給制御部
201 気筒本体
202 ピストン
203 燃焼室
204 吸気弁
205 排気弁
206 点火装置
S1 第1の供給ステップ
S2 燃焼判定ステップ
S3 第2の供給ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7