(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141013
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/05 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G03G5/05 104B
G03G5/05 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052432
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 紘子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 知也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 有杜
(72)【発明者】
【氏名】成田 幸介
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA13
2H068AA14
2H068AA20
2H068AA37
2H068BA12
2H068BA14
2H068BB26
2H068FC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体の提供。
【解決手段】最表面層が電荷輸送材料とポリエステル樹脂と化合物(T)Ar
T1-L
T1-Ar
T2とを含有し、ポリエステル樹脂がジオール単位(P1)乃至特定の(P2)、(P3)、(P5)、及び(P6)の少なくとも1種とビフェニル骨格とフッ素を含まない末端基とを有する、電子写真感光体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、前記導電性基体上に配置された、電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型感光層と、を備え、
前記電荷輸送層が、最表面層であり、かつ、電荷輸送材料とポリエステル樹脂と下記式(T)で表される化合物(T)とを含有し、
前記ポリエステル樹脂が、式(P1)で表されるジオール単位(P1)、式(P2)で表されるジオール単位(P2)、式(P3)で表されるジオール単位(P3)、式(P5)で表されるジオール単位(P5)、及び式(P6)で表されるジオール単位(P6)からなる群から選択される少なくとも1種を有するポリエステル樹脂(1)を含み、
前記ポリエステル樹脂(1)がビフェニル骨格を含む単位をさらに有し、
前記ポリエステル樹脂(1)の末端基がフッ素原子を含まない、
電子写真感光体。
式(T) Ar
T1-L
T1-Ar
T2
式(T)において、Ar
T1は置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいビフェニル基であり、L
T1は単結合又はエーテル結合であり、Ar
T2は置換基を有してもよい炭素数6以上12以下のアリール基又は置換基を有してもよい炭素数7以上20以下のアラルキル基である。
【化1】
式(P1)において、Rb
101は炭素数4以上20以下の分岐アルキル基であり、Rb
201は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb
401、Rb
501、Rb
801、及びRb
901はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P2)において、Rb
102は炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基であり、Rb
202は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb
402、Rb
502、Rb
802、及びRb
902はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P3)において、Rb
113及びRb
213はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、dは7以上15以下の整数であり、Rb
403、Rb
503、Rb
803、及びRb
903はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P5)において、Ar
105は炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb
205は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb
405、Rb
505、Rb
805、及びRb
905はそれぞれ独立に水
素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P6)において、Rb
116及びRb
216はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、eは4以上6以下の整数であり、Rb
406、Rb
506、Rb
806、及びRb
906はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【請求項2】
前記ビフェニル骨格を含む単位は、式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】
式(A2)において、n
201及びn
202はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n
201個のRa
201及びn
202個のRa
202はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂(1)に占める前記ビフェニル骨格を含む単位の質量割合は、20質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂(1)に占める前記ジオール単位(P1)、前記ジオール単位(P2)、前記ジオール単位(P3)、前記ジオール単位(P5)、及び前記ジオール単位(P6)の合計質量割合は、30質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂100質量部に対する前記化合物(T)の含有量は、1質量部以上20質量部以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂100質量部に対する前記化合物(T)の含有量は、4質量部以上10質量部以下である、請求項5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置をさらに備える、請求項7に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項10】
前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置をさらに備える、請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電性基体と感光層とを備え、感光層は電荷発生層及び電荷輸送層を含み、電荷発生層の厚さは、0.07μm以上であり、電荷輸送層はバインダー樹脂と正孔輸送剤とメタターフェニルとを含有し、バインダー樹脂は特定の構造を有する第1繰り返し単位と、特定の構造を有する第2繰り返し単位と、特定の構造を有する末端基とを有するポリアリレート樹脂を含む電子写真感光体が開示されている。
【0003】
特許文献2には、導電性基体と感光層とを備え、感光層は電荷発生層と電荷輸送層とを含み、電荷発生層は電荷発生剤を含有し、電荷輸送層は正孔輸送剤とポリアリレート樹脂と添加剤とを含有し、ポリアリレート樹脂は特定の構造を有する繰り返し単位を特定の比率で含み、添加剤は特定の構造を有する化合物を含む、電子写真感光体が開示されている。
【0004】
特許文献3には、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、最表面層中に特定の構造を有する電荷輸送物質と、特定の構造を有する化合物とを含有することを特徴とする、電子写真感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-118767号公報
【特許文献2】特開2020-181008号公報
【特許文献3】特開2015-062056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、電荷輸送層が電荷輸送材料と樹脂とを含有し最表面層である電子写真感光体において、樹脂が下記ポリエステル樹脂(PEc1)からなる場合又は電荷輸送層がターフェニルを含有しない場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0008】
<1> 導電性基体と、前記導電性基体上に配置された、電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型感光層と、を備え、
前記電荷輸送層が、最表面層であり、かつ、電荷輸送材料とポリエステル樹脂と下記式(T)で表される化合物(T)とを含有し、
前記ポリエステル樹脂が、式(P1)で表されるジオール単位(P1)、式(P2)で表されるジオール単位(P2)、式(P3)で表されるジオール単位(P3)、式(P5)で表されるジオール単位(P5)、及び式(P6)で表されるジオール単位(P6)からなる群から選択される少なくとも1種を有するポリエステル樹脂(1)を含み、
前記ポリエステル樹脂(1)がビフェニル骨格を含む単位をさらに有し、
前記ポリエステル樹脂(1)の末端基がフッ素原子を含まない、
電子写真感光体。
式(T) ArT1-LT1-ArT2
式(T)において、ArT1は置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいビフェニル基であり、LT1は単結合又はエーテル結合であり、ArT2は置換基を有してもよい炭素数6以上12以下のアリール基又は置換基を有してもよい炭素数7以上20以下のアラルキル基である。
【0009】
【0010】
式(P1)において、Rb101は炭素数4以上20以下の分岐アルキル基であり、Rb201は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb401、Rb501、Rb801、及びRb901はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P2)において、Rb102は炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基であり、Rb202は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb402、Rb502、Rb802、及びRb902はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P3)において、Rb113及びRb213はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、dは7以上15以下の整数であり、Rb403、Rb503、Rb803、及びRb903はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P5)において、Ar105は炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb205は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb405、Rb505、Rb805、及びRb905はそれぞれ独立に水
素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P6)において、Rb116及びRb216はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、eは4以上6以下の整数であり、Rb406、Rb506、Rb806、及びRb906はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
【0011】
<2> 前記ビフェニル骨格を含む単位は、式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)である、<1>に記載の電子写真感光体。
【0012】
【0013】
式(A2)において、n201及びn202はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n201個のRa201及びn202個のRa202はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
【0014】
<3> 前記ポリエステル樹脂(1)に占める前記ビフェニル骨格を含む単位の質量割合は、20質量%以上70質量%以下である、<1>又は<2>に記載の電子写真感光体。
<4> 前記ポリエステル樹脂(1)に占める前記ジオール単位(P1)、前記ジオール単位(P2)、前記ジオール単位(P3)、前記ジオール単位(P5)、及び前記ジオール単位(P6)の合計質量割合は、30質量%以上90質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<5> 前記ポリエステル樹脂100質量部に対する前記化合物(T)の含有量は、1質量部以上20質量部以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<6> 前記ポリエステル樹脂100質量部に対する前記化合物(T)の含有量は、4質量部以上10質量部以下である、<5>に記載の電子写真感光体。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<8> 前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置をさらに備える、<7>に記載のプロセスカートリッジ。
<9> <1>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
<10>
前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置をさらに備える、<9>に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
<1>に係る発明によれば、電荷輸送層が電荷輸送材料と樹脂とを含有し最表面層である電子写真感光体において、樹脂が下記ポリエステル樹脂(PEc1)からなる場合又は電荷輸送層がターフェニルを含有しない場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
<2>に係る発明によれば、ビフェニル骨格を含む単位がジオール単位である場合に比べ、耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
<3>に係る発明によれば、ビフェニル骨格を含む単位の質量割合が20質量%未満である場合に比べ、耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
<4>に係る発明によれば、ポリエステル樹脂(1)に占めるジオール単位(P1)、ジオール単位(P2)、ジオール単位(P3)、ジオール単位(P5)、及びジオール単位(P6)の合計質量割合が30質量%未満である場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
<5>に係る発明によれば、ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量が1質量部未満又は20質量部超えである場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
<6>に係る発明によれば、ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量が4質量部未満又は10質量部超えである場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
<7>又は<8>に係る発明によれば、電荷輸送層が電荷輸送材料と樹脂とを含有し最表面層である電子写真感光体において、樹脂が下記ポリエステル樹脂(PEc1)からなる電子写真感光体又は電荷輸送層がターフェニルを含有しない電子写真感光体を適用した場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体を適用したプロセスカートリッジが提供される。
<9>又は<10>に係る発明によれば、電荷輸送層が電荷輸送材料と樹脂とを含有し最表面層である電子写真感光体において、樹脂が下記ポリエステル樹脂(PEc1)からなる電子写真感光体又は電荷輸送層がターフェニルを含有しない電子写真感光体を適用した場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体を適用した画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す部分断面図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図3】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0018】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0019】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0020】
本開示において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0021】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0022】
本開示においてアルキル基は、特に断らない限り、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれも含む。
【0023】
本開示において、芳香環、連結基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基は、基中の水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0024】
[電子写真感光体]
本開示の一実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に配置された、電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型感光層と、を備え、前記電荷輸送層が、最表面層である。以下、電子写真感光体を「感光体」ともいう。
【0025】
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成の一例を概略的に示す部分断面図である。
図1に示す感光体10Aは、導電性基体1上に下引層2、電荷発生層3、及び電荷輸送層4がこの順に積層された構造を有し、電荷発生層3及び電荷輸送層4が積層型感光層5(いわゆる、機能分離型感光層)を構成している。感光体10Aにおいては、電荷輸送層4が最表面層である。感光体10Aは、下引層2と電荷発生層3との間に中間層(図示せず)を有してもよい。また、感光体10Aは、下引層2を有していなくてもよい。
【0026】
本実施形態に係る感光体においては、最表面層である電荷輸送層が、電荷輸送材料とポリエステル樹脂と下記式(T)で表される化合物(T)とを含有し、前記ポリエステル樹脂が、式(P1)で表されるジオール単位(P1)、式(P2)で表されるジオール単位(P2)、式(P3)で表されるジオール単位(P3)、式(P5)で表されるジオール単位(P5)、及び式(P6)で表されるジオール単位(P6)からなる群から選択される少なくとも1種を有するポリエステル樹脂(1)を含む。また、ポリエステル樹脂(1)はビフェニル骨格を含む単位をさらに有し、ポリエステル樹脂(1)の末端基がフッ素原子を含まない。末端基は、ポリエステル樹脂(1)における分子構造の末端を構成し、ジオール単位又は後述するジカルボン酸単位に結合する基であり、ジオール単位及びジカルボン酸単位を含まない。
以下、ジオール単位(P1)、ジオール単位(P2)、ジオール単位(P3)、ジオール単位(P5)、及びジオール単位(P6)からなる群から選択される少なくとも1種を「特定ジオール単位」ともいう。
【0027】
式(T) ArT1-LT1-ArT2
式(T)において、ArT1は置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいビフェニル基であり、LT1は単結合又はエーテル結合であり、ArT2は置換基を有してもよい炭素数6以上12以下のアリール基又は置換基を有してもよい炭素数7以上20以下のアラルキル基である。
【0028】
【0029】
式(P1)において、Rb101は炭素数4以上20以下の分岐アルキル基であり、Rb201は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb401、Rb501、Rb801、及びRb901はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P2)において、Rb102は炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基であり、Rb202は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb402、Rb502、Rb802、及びRb902はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P3)において、Rb113及びRb213はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、dは7以上15以下の整数であり、Rb403、Rb503、Rb803、及びRb903はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P5)において、Ar105は炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb205は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb405、Rb505、Rb805、及びRb905はそれぞれ独立に水
素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P6)において、Rb116及びRb216はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、eは4以上6以下の整数であり、Rb406、Rb506、Rb806、及びRb906はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
【0030】
本実施形態に係る感光体は、上記構成を備えることによって、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好となる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
樹脂を含有する電荷輸送層が最表面層である感光体を、感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを備えた画像形成装置に用いると、クリーニングブレードの摺擦によって感光体の表面が削れて摩耗することがある。
また、カーボンファイバー等の針状の導電性異物が混入した場合、画像形成装置内における他の部材の摩耗により異物が発生した場合に、これらの異物が感光体の最表面層に突き刺さり、亀裂が発生することがある。特に、感光体の最表面に発生した亀裂が深いと、局所的な電位低下又はリークが発生し、電荷輸送が阻害され、点状の画像欠陥(例えば黒点)が生じることがある。
【0031】
これに対して本実施形態では、最表面層である電荷輸送層が、特定ジオール単位を有するポリエステル樹脂(1)を含有する。そのため、例えば電荷輸送層に含まれる樹脂がポリカーボネート樹脂からなる場合に比べて、電荷輸送層の弾性変形率が高く、クリーニングブレードの追従性が良好になることにより、表層の削れが抑えられ、摩耗しにくくなる。
加えて、本実施形態では、最表面層である電荷輸送層が、特定ジオール単位及びビフェニル骨格を含む単位を有するポリエステル樹脂(1)と化合物(T)とを含有する。特定ジオール単位は、2つのベンゼン環に挟まれた炭素原子に嵩高い基が結合した構造を有している。この嵩高い基の立体障害によりポリエステル樹脂(1)の分子鎖間に空間が形成され、そこに化合物(T)が入り込みやすく、空間に入り込んだ化合物(T)がビフェニル骨格とパッキングしやすくなる。そして、ポリエステル樹脂(1)と化合物(T)との相互作用により電荷輸送層全体の凝集力が上がり、強度が高くなることで、さらに摩耗しにくくなるとともに、針状の異物の突き刺さりによる亀裂が発生しにくく、亀裂が発生したとしても深くなりにくくなる。そのため、深い亀裂に起因する点状の画像欠陥の発生も抑制される。さらに、ポリエステル樹脂(1)の末端基がフッ素原子を含まないことにより、樹脂の分子鎖の絡み合いによるせん断応力に対する耐久性低下が抑制されることで、耐摩耗性がさらに向上する。
以上の理由により、本実施形態では、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好となると推測される。
【0032】
以下、電荷輸送層に含まれるポリエステル樹脂及び化合物(T)、並びに感光体の各層について詳細に説明する。
【0033】
<ポリエステル樹脂>
電荷輸送層に含有されるポリエステル樹脂は、少なくともポリエステル樹脂(1)を含む。
ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂(1)以外のポリエステル樹脂を含有してもよい。電荷輸送層に含有されるポリエステル樹脂全体に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0034】
ポリエステル樹脂(1)は、特定ジオール単位、つまり、ジオール単位(P1)、ジオール単位(P2)、ジオール単位(P3)、ジオール単位(P5)、及びジオール単位(P6)からなる群から選択される少なくとも1種と、ビフェニル骨格を含む単位と、を有し、末端基がフッ素原子を含まないポリエステル樹脂であれば、特に限定されるものではない。なかでも、ポリエステル樹脂(1)は、ジオール単位(P1)、ジオール単位(P2)、ジオール単位(P3)、及びジオール単位(P6)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく;ジオール単位(P1)、ジオール単位(P2)、及びジオール単位(P3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく;ジオール単位(P1)及びジオール単位(P2)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
【0035】
以下に各ジオール単位を詳細に説明する。
【0036】
【0037】
式(P1)において、Rb101は炭素数4以上20以下の分岐アルキル基であり、Rb201は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb401、Rb501、Rb801、及びRb901はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
【0038】
Rb101に係る炭素数4以上20以下の分岐アルキル基の炭素数は、4以上16以下が好ましく、4以上12以下がより好ましく、4以上8以下が更に好ましい。また、Rb101に係る分岐アルキル基の炭素数は、耐亀裂性向上の観点から、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、7以上がさらに好ましい。Rb101の具体例として、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、tert-テトラデシル基、tert-ペンタデシル基等が挙げられる。
【0039】
【0040】
式(P2)において、Rb102は炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基であり、Rb202は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb402、Rb502、Rb802、及びRb902はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
【0041】
Rb102に係る炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基の炭素数は、4以上16以下が好ましく、4以上12以下がより好ましく、4以上10以下が更に好ましい。また、Rb102に係る直鎖アルキル基の炭素数は、耐亀裂性向上の観点から、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、7以上がさらに好ましく、8以上が特に好ましく、9以上が極めて好ましい。Rb102の具体例として、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基等が挙げられる。
【0042】
【0043】
式(P3)において、Rb113及びRb213はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、dは7以上15以下の整数であり、Rb403、Rb503、Rb803、及びRb903はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
【0044】
Rb113及びRb213に係る炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基の炭素数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。当該基の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基が挙げられる。
Rb113及びRb213に係る炭素数1以上4以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上4以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。当該基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。
Rb113及びRb213に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0045】
式(P3)におけるRb113及びRb213はそれぞれ独立に、耐亀裂性向上の観点から、水素原子、メチル基、又はメトキシ基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
式(P3)におけるdは、耐摩耗性向上及び耐亀裂性向上の観点から、7以上13以下の整数が好ましく、9以上11以下の整数がより好ましい。
【0046】
【0047】
式(P5)において、Ar105は炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb205は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb405、Rb505、Rb805、及びRb905はそれぞれ独立に水
素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
【0048】
Ar105に係る炭素数6以上12以下のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
Ar105に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。Ar105に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。炭素数7以上20以下のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
【0049】
【0050】
式(P6)において、Rb116及びRb216はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、eは4以上6以下の整数であり、Rb406、Rb506、Rb806、及びRb906はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
【0051】
Rb116及びRb216に係る炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基の炭素数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。当該基の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基が挙げられる。
Rb116及びRb216に係る炭素数1以上4以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上4以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。当該基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。
Rb116及びRb216に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0052】
式(P1)のRb201、式(P2)のRb202、及び式(P5)のRb205の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb201、Rb202、及びRb205を「Rb200」と総称して説明する。
【0053】
Rb200に係る炭素数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基が挙げられる。
【0054】
式(P1)のRb401、式(P2)のRb402、式(P3)のRb403、式(P5)のRb405、及び式(P6)のRb406の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb401、Rb402、Rb403、Rb405、及びRb406を「Rb400」と総称して説明する。
【0055】
Rb400に係る炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
【0056】
Rb400に係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0057】
Rb400に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0058】
式(P1)のRb501、式(P2)のRb502、式(P3)のRb503、式(P5)のRb505、及び式(P6)のRb506の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb501、Rb502、Rb503、Rb505、及びRb506を「Rb500」と総称して説明する。
【0059】
Rb500に係る炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
【0060】
Rb500に係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0061】
Rb500に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0062】
式(P1)のRb801、式(P2)のRb802、式(P3)のRb803、式(P5)のRb805、及び式(P6)のRb806の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb801、Rb802、Rb803、Rb805、及びRb806を「Rb800」と総称して説明する。
【0063】
Rb800に係る炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
【0064】
Rb800に係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0065】
Rb800に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0066】
式(P1)のRb901、式(P2)のRb902、式(P3)のRb903、式(P5)のRb905、及び式(P6)のRb906の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb901、Rb902、Rb903、Rb905、及びRb906を「Rb900」と総称して説明する。
【0067】
Rb900に係る炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
【0068】
Rb900に係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0069】
Rb900に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0070】
以下に、ジオール単位(P1)の具体例としてジオール単位(P1-1)~(P1-10)を示す。ジオール単位(P1)は、これに限定されるわけではない。
【0071】
【0072】
以下に、ジオール単位(P2)の具体例としてジオール単位(P2-1)~(P2-22)を示す。ジオール単位(P2)は、これに限定されるわけではない。
【0073】
【0074】
【0075】
以下に、ジオール単位(P3)の具体例としてジオール単位(P3-1)~(P3-4)を示す。ジオール単位(P3)は、これに限定されるわけではない。
【0076】
【0077】
以下に、ジオール単位(P5)の具体例としてジオール単位(P5-1)~(P5-6)を示す。ジオール単位(P5)は、これに限定されるわけではない。
【0078】
【0079】
以下に、ジオール単位(P6)の具体例としてジオール単位(P6-1)~(P6-6)を示す。ジオール単位(P6)は、これに限定されるわけではない。
【0080】
【0081】
ポリエステル樹脂(1)に含まれる特定ジオール単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
ポリエステル樹脂(1)に占める特定ジオール単位の合計質量割合は、30質量%以上90質量%以下が好ましい。
特定ジオール単位の合計質量割合が上記範囲であることにより、上記範囲より低い場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好となる。その理由は定かではないが、特定ジオール単位の立体障害により化合物(T)が入りこむ空間が多く得られやすくなるからと推測される。その観点から、特定ジオール単位の合計質量割合は、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
また、特定ジオール単位の合計質量割合が前記範囲であることにより、前記範囲より高い場合に比べ、感光層を形成するための塗布液に対する溶解性を維持して耐摩耗性の向上が可能となる。その観点から、特定ジオール単位の合計質量割合は、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。
【0082】
ポリエステル樹脂(1)は、下記式(B)で表されるジオール単位(B)のうち特定ジオール単位以外のジオール単位(B)を有してもよい。
ポリエステル樹脂(1)が有するジオール単位(B)全体に占める特定ジオール単位の合計質量割合は、耐亀裂性向上の観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
ポリエステル樹脂(1)が有するジオール単位全体に占める特定ジオール単位の合計質量割合は、耐亀裂性向上の観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0083】
【0084】
式(B)において、ArB1及びArB2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であり、LBは単結合、酸素原子、硫黄原子、又は-C(Rb1)(Rb2)-であり、nB1は0、1、又は2である。Rb1及びRb2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb1とRb2とが結合し環状アルキル基を形成していてもよい。
【0085】
ArB1の芳香環は、単環及び多環のいずれでもよい。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられ、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましい。
【0086】
ArB1の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。ArB1の芳香環が置換されているときの置換基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、及び炭素数1以上6以下のアルコキシ基が好ましい。
【0087】
ArB2の芳香環は、単環及び多環のいずれでもよい。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられ、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましい。
【0088】
ArB2の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。ArB2の芳香環が置換されているときの置換基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、及び炭素数1以上6以下のアルコキシ基が好ましい。
【0089】
Rb1及びRb2に係る炭素数1以上20以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上18以下が好ましく、1以上14以下がより好ましく、1以上10以下が更に好ましい。
【0090】
Rb1及びRb2に係る炭素数6以上12以下のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
【0091】
Rb1及びRb2に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
Rb1及びRb2に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
【0092】
ジオール単位(B)のうち特定ジオール単位以外のジオール単位(B)としては、下記の式(B4)で表されるジオール単位(B4)、下記の式(B7)で表されるジオール単位(B7)、下記の式(B8)で表されるジオール単位(B8)等が挙げられる。
【0093】
【0094】
式(B4)において、Rb104及びRb204はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb404、Rb504、Rb804、及びRb904はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0095】
Rb104に係る炭素数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。Rb104の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基が挙げられる。
なお、Rb204、Rb404、Rb504、Rb804、及びRb904の具体的形態及び好ましい形態は、それぞれ、前述のRb200、Rb400、Rb500、Rb800、及びRb900の具体的形態及び好ましい形態と同様である。
【0096】
【0097】
式(B7)において、Rb407、Rb507、Rb807、及びRb907はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
Rb407、Rb507、Rb807、及びRb907の具体的形態及び好ましい形態は、それぞれ、前述のRb400、Rb500、Rb800、及びRb900の具体的形態及び好ましい形態と同様である。
【0098】
【0099】
式(B8)において、Rb408、Rb508、Rb808、及びRb908はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
Rb408、Rb508、Rb808、及びRb908の具体的形態及び好ましい形態は、それぞれ、前述のRb400、Rb500、Rb800、及びRb900の具体的形態及び好ましい形態と同様である。
【0100】
以下に、ジオール単位(B4)の具体例としてジオール単位(B4-1)~(B4-7)を示す。ジオール単位(B4)は、これに限定されるわけではない。
【0101】
【0102】
以下に、ジオール単位(B7)の具体例としてジオール単位(B7-1)~(B7-3)を示す。ジオール単位(B7)は、これに限定されるわけではない。
【0103】
【0104】
以下に、ジオール単位(B8)の具体例としてジオール単位(B8-1)~(B8-3)を示す。ジオール単位(B8)は、これに限定されるわけではない。
【0105】
【0106】
ポリエステル樹脂(1)は、ジオール単位(B)以外のジオール単位を有してもよい。
ポリエステル樹脂(1)が有するジオール単位全体に占めるジオール単位(B)の合計質量割合は、耐摩耗性及び耐亀裂性向上の観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0107】
ジオール単位(B)以外のその他のジオール単位としては、例えば、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール)単位、脂環式ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA)単位が挙げられる。ポリエステル樹脂(1)に含まれるこれらジオール単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0108】
ポリエステル樹脂(1)は、特定ジオール単位に加えて、ビフェニル骨格を含む単位をさらに有する。
ポリエステル樹脂(1)が特定ジオール単位とビフェニル骨格を含む単位とを有することで、ビフェニル骨格を含む単位を有さない場合に比べて、耐摩耗性及び耐亀裂性がさらに良好となる。その理由は定かではないが、特定ジオール単位の立体障害により形成されたポリエステル樹脂(1)の分子鎖間の空間に入り込んだ化合物(T)がビフェニル骨格とパッキングしやすく、相互作用により、電荷輸送層全体の強度がさらに高くなるためと推測される。
【0109】
ポリエステル樹脂(1)に占めるビフェニル骨格を含む単位の質量割合は、20質量%以上70質量%以下が好ましい。
ビフェニル骨格を含む単位の質量割合が上記範囲であることにより、上記範囲より低い場合に比べ、耐亀裂性が良好となる。その理由は定かではないが、化合物(T)がビフェニル骨格とパッキングする確率が高くなり、相互作用しやすく、電荷輸送層全体の強度が高くなるためと推測される。その観点から、ビフェニル骨格を含む単位の質量割合は、30質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましい。
また、ビフェニル骨格を含む単位の質量割合が前記範囲であることにより、前記範囲より高い場合に比べ、溶媒への溶解性が良好となる。その観点から、ビフェニル骨格を含む単位の質量割合は、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。
【0110】
ポリエステル樹脂(1)は、前述のジオール単位(B)としてビフェニル骨格を含む単位を有してもよく、後述するジカルボン酸単位(A)としてビフェニル骨格を含む単位を有してもよい。ポリエステル樹脂(1)は、ジカルボン酸単位(A)としてビフェニル骨格を含む単位を有することが好ましい。特に、ポリエステル樹脂(1)は、後述するジカルボン酸単位(A2)を有することが好ましい。
ポリエステル樹脂(1)がジカルボン酸単位(A2)を有することで、耐摩耗性及び耐亀裂性がさらに良好となる。その理由は定かではないが、特定ジオール単位とジカルボン酸単位(A2)とが交互に存在することで、特定ジオール単位の立体障害による空間に入り込んだ化合物(T)が、近くに存在するジカルボン酸単位(A2)のビフェニル骨格とさらにパッキングしやすく、相互作用により、電荷輸送層全体の強度がさらに高くなるためと推測される。
【0111】
ポリエステル樹脂(1)は、特定ジオール単位に加えて、下記式(A)で表されるジカルボン酸単位(A)を有することが好ましい。
【0112】
【0113】
式(A)において、ArA1及びArA2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であり、LAは単結合又は2価の連結基であり、nA1は0、1、又は2である。
【0114】
ArA1の芳香環は、単環及び多環のいずれでもよい。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられ、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましい。
【0115】
ArA1の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。ArA1の芳香環が置換されているときの置換基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、及び炭素数1以上6以下のアルコキシ基が好ましい。
【0116】
ArA2の芳香環は、単環及び多環のいずれでもよい。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられ、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましい。
【0117】
ArA2の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。ArA2の芳香環が置換されているときの置換基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、及び炭素数1以上6以下のアルコキシ基が好ましい。
【0118】
LAが2価の連結基のとき、2価の連結基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、-C(Ra1)(Ra2)-が挙げられる。ここで、Ra1及びRa2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Ra1とRa2とが結合し環状アルキル基を形成していてもよい。
【0119】
Ra1及びRa2に係る炭素数1以上10以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0120】
Ra1及びRa2に係る炭素数6以上12以下のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
【0121】
Ra1及びRa2に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
Ra1及びRa2に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
【0122】
ジカルボン酸単位(A)は、下記の式(A1)で表されるジカルボン酸単位(A1)、下記の式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)、下記の式(A3)で表されるジカルボン酸単位(A3)、及び下記の式(A4)で表されるジカルボン酸単位(A4)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ジカルボン酸単位(A2)を含むことが更に好ましい。
ポリエステル(1)は、特に耐摩耗性及び耐亀裂性向上の観点から、ジカルボン酸単位(A)として、ジカルボン酸単位(A2)及びジカルボン酸単位(A3)からなる群よから選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、ジカルボン酸単位(A2)を含むことがさらに好ましい。
【0123】
【0124】
式(A1)において、n101は0以上4以下の整数であり、n101個のRa101はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
n101は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、
0であることが更に好ましい。
【0125】
【0126】
式(A2)において、n201及びn202はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n201個のRa201及びn202個のRa202はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
n201は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
n202は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0127】
【0128】
式(A3)において、n301及びn302はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n301個のRa301及びn302個のRa302はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
n301は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
n302は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0129】
【0130】
式(A4)において、n401は0以上6以下の整数であり、n401個のRa401はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
n401は0以上4以下の整数であることが好ましく、0、1、又は2であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0131】
式(A1)のRa101、式(A2)のRa201及びRa202、式(A3)のRa301及びRa302、並びに式(A4)のRa401の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Ra101、Ra201、Ra202、Ra301、Ra302、及びRa401を「Ra」と総称して説明する。
【0132】
Raに係る炭素数1以上10以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上10以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基が挙げられる。
炭素数3以上10以下の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基等が挙げられる。
炭素数3以上10以下の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、及びこれら単環のアルキル基が連結した多環(例えば、二環、三環、スピロ環)のアルキル基が挙げられる。
【0133】
Raに係る炭素数6以上12以下のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
炭素数6以上12以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0134】
Raに係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0135】
以下に、ジカルボン酸単位(A1)の具体例としてジカルボン酸単位(A1-1)~(A1-9)を示す。ジカルボン酸単位(A1)は、これに限定されるわけではない。
【0136】
【0137】
以下に、ジカルボン酸単位(A2)の具体例としてジカルボン酸単位(A2-1)~(A2-3)を示す。ジカルボン酸単位(A2)は、これに限定されるわけではない。
【0138】
【0139】
以下に、ジカルボン酸単位(A3)の具体例としてジカルボン酸単位(A3-1)~(A3-2)を示す。ジカルボン酸単位(A3)は、これに限定されるわけではない。
【0140】
【0141】
以下に、ジカルボン酸単位(A4)の具体例としてジカルボン酸単位(A4-1)~(A4-3)を示す。ジカルボン酸単位(A4)は、これに限定されるわけではない。
【0142】
【0143】
ジカルボン酸単位(A)としては、上記具体例の(A1-1)、(A1-7)、(A2-3)、(A3-2)、及び(A4-3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、(A2-3)、(A3-2)及び(A4-3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、少なくとも(A2-3)を含むことが更に好ましい。
【0144】
ポリエステル樹脂(1)に占めるジカルボン酸単位(A1)~(A4)の合計質量割合は、15質量%以上60質量%以下が好ましい。
ジカルボン酸単位(A1)~(A4)の合計質量割合が15質量%以上であると、感光層の耐摩耗性が良好である。この観点から、ジカルボン酸単位(A1)~(A4)の合計質量割合は、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましい。
ジカルボン酸単位(A1)~(A4)の合計質量割合が60質量%以下であると、感光層の剥がれを抑制できる。この観点から、ジカルボン酸単位(A1)~(A4)の合計質量割合は、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
ポリエステル樹脂(1)に含まれるジカルボン酸単位(A1)~(A4)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0145】
ジカルボン酸単位(A1)~(A4)以外のその他のジカルボン酸単位(A)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸)単位、脂環式ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)単位、及びこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル単位が挙げられる。ポリエステル樹脂(1)に含まれるこれらジカルボン酸単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0146】
ポリエステル樹脂(1)の末端基としては、ジオール単位に結合する水素原子、ジカルボン酸単位に結合するヒドロキシ基のほか、製造の際に使用する末端封止剤又は分子量調節剤に由来する基等が挙げられる。
末端封止剤又は分子量調節剤としては、例えば、一価フェノール、一価酸クロライド、一価アルコール、一価カルボン酸が挙げられる。
一価フェノールとしては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-プロピルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、o-tert-ブチルフェノール、m-tert-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6-ジメチルフェノール誘導体、2-メチルフェノール誘導体、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、o-メトキシフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2-フェニル-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-フェニル-2-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-フェニル-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
一価酸クロライドとしては、例えば、ベンゾイルクロライド、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメート、酢酸クロリド、酪酸クロリド、オクチル酸クロリド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルフォニルクロリド、ベンゼンスルフィニルクロリド、スルフィニルクロリド、ベンゼンホスホニルクロリド、これらの置換体等の一官能性酸ハロゲン化物が挙げられる。
一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールが挙げられる。
一価カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、p-tert-ブチル安息香酸、p-メトキシフェニル酢酸が挙げられる。
【0147】
ポリエステル樹脂(1)の末端基は、前記の通り、フッ素原子を含まない。ポリエステル樹脂(1)の末端基がフッ素原子を含まないことにより耐摩耗性及び耐亀裂性が向上する。フッ素元素を含む末端基は、樹脂の分子鎖の絡み合いを強めやすく、せん断応力に対し弱くなる方向に作用することがあるため、末端基がフッ素原子を含まない方が、フッ素原子を含む場合に比べて耐摩耗性及び耐亀裂性が向上すると推測される。
【0148】
ポリエステル樹脂(1)は、耐摩耗性及び耐亀裂性向上の観点から、フッ素原子を含まないことが好ましい。ポリエステル樹脂(1)がフッ素原子を含まないことにより耐摩耗性及び耐亀裂性が向上する理由は定かではないが、樹脂の分子鎖が動きやすくなるためであるためと推測される。
【0149】
ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量は、3万以上30万以下が好ましく、4万以上25万以下がより好ましく、5万以上20万以下が更に好ましい。
ポリエステル樹脂(1)の分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定したポリスチレン換算の分子量である。GPCは溶離液としてテトラヒドロフランを使用する。
【0150】
ポリエステル樹脂(1)は、ジカルボン酸単位(A)を与えるモノマー及びジオール単位(B)を与えるモノマーと、必要に応じて他のモノマーとを、常法により重縮合させるなどして得ることができる。モノマーの重縮合の方法としては、界面重合法、溶液重合法、溶融重合法などが挙げられる。界面重合法とは、水と相溶しない有機溶剤に溶解させた二価カルボン酸ハライドと、アルカリ水溶液に溶解させた二価アルコールとを混合することによってポリエステルを得る重合方法である。界面重合法に関する文献として、W.M.EARECKSON,J.Poly.Sci.,XL399,1959年、特公昭40-1959号公報などが挙げられる。界面重合法は溶液重合法と比較して反応が速いゆえ、二価カルボン酸ハライドの加水分解を抑えることができ、結果として高分子量のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0151】
<化合物(T)>
電荷輸送層は、下記式(T)で表される化合物(T)を含有する。
式(T) ArT1-LT1-ArT2
式(T)において、ArT1は置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいビフェニル基であり、LT1は単結合又はエーテル結合であり、ArT2は置換基を有してもよい炭素数6以上12以下のアリール基又は置換基を有してもよい炭素数7以上20以下のアラルキル基である。
【0152】
ArT1で表されるナフチル基としては、1-ナフチル基及び2-ナフチル基が挙げられる。ArT1で表されるビフェニル基としては、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、及びp-ビフェニル基が挙げられる。
ArT1が有してもよい置換基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基が挙げられる。ArT1が置換基を有する場合、置換基は、耐亀裂性向上の観点から、これらの中でも炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上2以下のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。ArT1が有する置換基の数としては、例えば0以上7以下が挙げられ、耐亀裂性向上の観点から、0以上3以下が好ましく、0以上1以下がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0153】
ArT2で表される炭素数6以上12以下のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。炭素数6以上12以下のアリール基としては、フェニル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
ArT2で表される炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、1が特に好ましい。炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。炭素数7以上20以下のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
【0154】
ArT2が有してもよい置換基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基等が挙げられる。ArT2が置換基を有する場合、置換基は、耐亀裂性向上の観点から、これらの中でも炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上2以下のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。ArT2が有する置換基の数としては、例えば0以上5以下が挙げられ、耐亀裂性向上の観点から、0以上3以下が好ましく、0以上1以下がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0155】
化合物(T)は、下記の式(T1)で表される化合物(T1)、下記の式(T2)で表される化合物(T2)、及び下記の式(T3)で表される化合物(T3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0156】
【0157】
式(T1)において、t111及びt211はそれぞれ独立に0以上5以下の整数であり、t121は0以上4以下の整数であり、t111個のRt111、t121個のRt121、及びt211個のRt211はそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、LT1は単結合又はエーテル結合である。
t111は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
t121は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
t211は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
LT1は単結合であることが好ましい。
なお、LT1のビフェニル基に対する結合部位は、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれでもよく、メタ位又はパラ位が好ましく、メタ位がより好ましい。
【0158】
式(T2)において、t112は0以上6以下の整数であり、t212は0以上5以下の整数であり、t112個のRt112及びt212個のRt212はそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、LT1は単結合又はエーテル結合である。
t112は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
t212は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
LT1はエーテル結合であることが好ましい。
なお、LT1のナフチル基に対する結合部位は、1位及び2位のいずれでもよく、2位が好ましい。
【0159】
式(T3)において、t113及びt213はそれぞれ独立に0以上6以下の整数であり、t113個のRt113及びt213個のRt213はそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、LT1は単結合又はエーテル結合である。
t113は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
t213は0、1、又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
LT1はエーテル結合であることが好ましい。
なお、LT1の2つナフチル基に対する結合部位は、それぞれ独立に1位及び2位のいずれでもよく、2位が好ましい。
【0160】
以下に、化合物(T1)の具体例として化合物(T1-1)~(T1-3)を示す。化合物(T1)は、これに限定されるわけではない。
【0161】
【0162】
以下に、化合物(T2)の具体例として化合物(T2-1)~(T2-2)を示す。化合物(T2)は、これに限定されるわけではない。
【0163】
【0164】
以下に、化合物(T3)の具体例として化合物(T3-1)~(T3-3)を示す。化合物(T3)は、これに限定されるわけではない。
【0165】
【0166】
電荷輸送層は、化合物(T)を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量は、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて、耐摩耗性及び耐亀裂性が向上する。その理由は定かではないが、化合物(T)の含有量が上記下限値以上であることにより、ポリエステル樹脂(1)と化合物(T)との相互作用による電荷輸送層全体の強度向上効果が得られやすくなるためと推測される。その観点から、ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量は、4質量部以上がより好ましく、10質量部以上であってもよい。
また、ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも多い場合に比べて、耐摩耗性及び耐亀裂性が向上する。その理由は定かではないが、膜中の樹脂比率が少なくなりすぎていることによる耐摩耗性低下及び耐亀裂性低下が抑制されるためと推測される。その観点から、ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量は、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0167】
<導電性基体>
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0168】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0169】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0170】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0171】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0172】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0173】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0174】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0175】
<下引層>
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0176】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0177】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m2/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0178】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0179】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0180】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0181】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0182】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0183】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0184】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0185】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0186】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0187】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0188】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0189】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0190】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0191】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0192】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0193】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0194】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0195】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0196】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0197】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0198】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0199】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0200】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0201】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0202】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0203】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0204】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0205】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0206】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0207】
<中間層>
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0208】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0209】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0210】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0211】
<電荷発生層>
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0212】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0213】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン;クロロガリウムフタロシアニン;ジクロロスズフタロシアニン;チタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0214】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;ビスアゾ顔料等が好ましい。
【0215】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0216】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0217】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0218】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0219】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0220】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0221】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0222】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0223】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0224】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0225】
<電荷輸送層>
電荷輸送層は、前記の通り、最表面層であり、かつ、電荷輸送材料と、結着樹脂として特定ジオール単位を有するポリエステル樹脂(1)を含むポリエステル樹脂と、化合物(T)と、を含有する。
電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0226】
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0227】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知の化学物質が挙げられる。例えば、ポリエステル系の高分子電荷輸送材が好ましい。高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよく、結着樹脂と併用してもよい。
【0228】
電荷輸送材料又は高分子電荷輸送材料としては、多環芳香族化合物、芳香族ニトロ化合物、芳香族アミン化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物(特にはトリフェニルアミン化合物)、ジアミン化合物、オキサジアゾール化合物、カルバゾール化合物、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン化合物、インドール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、チアゾール化合物、チアジアゾール化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、シアノ化合物、ベンゾフラン化合物、アニリン化合物、ブタジエン化合物及びこれらの物質から誘導される基を有する樹脂も挙げられる。具体的には、特開2021-117377号公報の段落0078~0080、特開2019-035900号公報の段落0046~0048、特開2019-012141号公報の段落0052~0053、特開2021-071565号公報の段落0122~0134、特開2021-015223号公報の段落0101~0110、特開2013-097300号公報の段落0116、国際公開第2019/070003号の段落0309~0316、特開2018-159087号公報の段落0103~0107及び特開2021-148818号公報の段落0102~0113それぞれに記載の化合物が挙げられる。
【0229】
電荷輸送材料は、電荷移動度の観点から、下記の式(C1)で表される化学物質(C1)、下記の式(C2)で表される化学物質(C2)、下記の式(C3)で表される化学物質(C3)及び下記の式(C4)で表される化学物質(C4)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0230】
【0231】
式(C1)において、ArT1、ArT2及びArT3はそれぞれ独立にアリール基、-C6H4-C(RT4)=C(RT5)(RT6)又は-C6H4-CH=CH-CH=C(
RT7)(RT8)である。RT4、RT5、RT6、RT7及びRT8はそれぞれ独立に
水素原子、アルキル基又はアリール基である。RT5及びRT6がアリール基のとき、アリール基どうしが-C(R51)(R52)-及び/又は-C(R61)=C(R62)-の2価基で連結されていてもよい。R51、R52、R61及びR62はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。
【0232】
式(C1)中の基は、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基によって置換されていてもよい。
【0233】
化学物質(C1)としては、電荷移動度の観点から、アリール基又は-C6H4-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を少なくとも1個有する化学物質が好ましく、下記の式(C’1)で表される化学物質(C’1)がより好ましい。
【0234】
【0235】
式(C’1)において、RT111、RT112、RT121、RT122、RT131及びRT132はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1以上3以下のアルコキシ基)、フェニル基又はフェノキシ基である。Tj1、Tj2、Tj3、Tk1、Tk2及びTk3はそれぞれ独立に0、1又は2である。
【0236】
【0237】
式(C2)において、RT201、RT202、RT211及びRT212はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1又は2のアルキル基で置換されたアミノ基、アリール基、-C(RT21)=C(RT22)(RT23)又は-CH=CH-CH=C(RT24)(RT25)である。RT21、RT22、RT23、RT24及びRT25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。RT221及びRT222はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基である。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2はそれぞれ独立に0、1又は2である。
【0238】
式(C2)中の基は、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基によって置換されていてもよい。
【0239】
化学物質(C2)としては、電荷移動度の観点から、アルキル基、アリール基、又は-CH=CH-CH=C(RT24)(RT25)を少なくとも1個有する化学物質が好ましく、アルキル基、アリール基、又は-CH=CH-CH=C(RT24)(RT25)を2個有する化学物質がより好ましい。
【0240】
【0241】
式(C3)において、RT301、RT302、RT311及びRT312はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1又は2のアルキル基で置換されたアミノ基、アリール基、-C(RT31)=C(RT32)(RT33)又は-CH=CH-CH=C(RT34)(RT35)である。RT31、RT32、RT33、RT34及びRT35はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。RT321、RT322及びRT331はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基である。To1、To2、Tp1、Tp2、Tq1、Tq2及びTr1はそれぞれ独立に0、1又は2である。
【0242】
式(C3)中の基は、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基によって置換されていてもよい。
【0243】
【0244】
式(C4)において、RT401、RT402、RT411及びRT412はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1又は2のアルキル基で置換されたアミノ基、アリール基、-C(RT41)=C(RT42)(RT43)又は-CH=CH-CH=C(RT44)(RT45)である。RT41、RT42、RT43、RT44及びRT45はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。RT421、RT422及びRT431はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基である。Ts1、Ts2、Tt1、Tt2、Tu1、Tu2及びTv1はそれぞれ独立に0、1又は2である。
【0245】
式(C4)中の基は、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基によって置換されていてもよい。
【0246】
電荷輸送層に含まれる電荷輸送材料の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、20質量%以上70質量%以下が好ましい。
【0247】
電荷輸送層は結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂(1)を含むポリエステル樹脂を含有することが好ましい。電荷輸送層に含まれる結着樹脂の全量に占めるポリエステル樹脂の割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。ポリエステル樹脂と他の樹脂とを併用する場合、併用する他の樹脂としてはポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0248】
電荷輸送層は、ポリエステル樹脂以外のその他の結着樹脂を含んでいてもよい。その他の結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
【0249】
電荷輸送層には、その他、公知の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例え
ば、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、フィラー、粘度調整剤などが挙げられる。
【0250】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0251】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0252】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0253】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0254】
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0255】
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体の表面に接触し、電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置をさらに備えてもよい。
【0256】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着装置を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0257】
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0258】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0259】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電装置、静電潜像形成装置、現像装置、転写装置からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0260】
また、上記プロセスカートリッジは、電子写真感光体の表面に接触し、電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置をさらに備えてもよい。
【0261】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0262】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成装置の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写装置の一例に相当する。
【0263】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電装置の一例)、現像装置11(現像装置の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング装置の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0264】
なお、
図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0265】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0266】
-帯電装置-
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0267】
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0268】
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0269】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0270】
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式のクリーニング装置13に加えて、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式等のクリーニング装置を併用してもよい。
【0271】
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0272】
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0273】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例0274】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
以下の説明において、合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0275】
[感光層の樹脂の作製]
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂(1)であるポリエステル樹脂(PE1)~(PE6)を作製した。表1にポリエステル樹脂を構成する単位及び組成、重量平均分子量(Mw)、ポリエステル樹脂に占めるビフェニル骨格を含む単位の質量割合(表中の「ビフェニル割合(質量%)」)、並びにポリエステル樹脂に占める特定ジオール単位の合計質量割合(表中の「ジオール割合(質量%)」)を示す。
なお、ポリエステル樹脂(PE1)~(PE6)の作製においては、末端封止材として2,3,5-トリメチルフェノールを用いた。
表1には「構成単位:組成比」(例えば、A2-3:50)を記した。組成比は、ジカルボン酸単位とジオール単位それぞれのmol%である。
表1に記したA2-3等は、既述のジカルボン酸単位(A)の具体例である。
表1に記したP1-2等は、既述のジオール単位(B)の具体例である。
【0276】
【0277】
比較用のポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂(1)ではないポリエステル樹脂(PEc1)を作製した。ポリエステル樹脂(PEc1)を構成する単位は下記のとおりである。組成比は、ジカルボン酸単位:ジオール単位=50mol:50molである。ポリエステル樹脂(PEc1)の重量平均分子量は10万であった。
【0278】
【0279】
比較用のポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂(1)ではないポリエステル樹脂(PEc2)を作製した。具体的には、ポリエステル樹脂(PEc2)を構成する単位は、ジカルボン酸単位:A2-3、ジオール単位:P2-9、P6-4である。組成比はジカルボン酸単位:ジオール単位=50mol:50molである。ジオール単位:P2-9、P6-4の組成比は、P2-9:P6-4=25mol:25molである。また末端封止材として下記T1を用いた以外は、ポリエステル樹脂(PE4)と同様にして、ポリエステル樹脂(PEc2)を得た。ポリエステル樹脂(PEc2)の重量平均分子量は12万であった。
(末端封止材T1) HO-CH2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3
【0280】
[積層型感光層を備えた感光体の製造]
<実施例S1>
-下引層の形成-
導電性基体として、外径30mm、長さ250mm、肉厚1mmのアルミニウム製円筒管を用意した。
【0281】
酸化亜鉛(平均粒径70nm、比表面積15m2/g、テイカ社製)100部をトルエン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:KBM603、信越化学工業社製、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)1.3部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤によって表面処理した酸化亜鉛を得た。
【0282】
表面処理した酸化亜鉛110部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、アリザリン0.6部をテトラヒドロフラン50部に溶解した溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧濾過にて固形分を濾別し、60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
【0283】
アリザリン付与酸化亜鉛60部と硬化剤(ブロック化イソシアネート、商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部とブチラール樹脂(商品名:エスレックBM-1、積水化学工業社製)15部とをメチルエチルケトン68部に溶解した溶液100部と、メチルエチルケトン5部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部と、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)4部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。下引層形成用塗布液を浸漬塗布法にて導電性基体の外周面に塗布し、170℃で40分間の乾燥硬化を行い、下引層を形成した。下引層の平均厚は25μmであった。
【0284】
-電荷発生層の形成-
電荷発生物質としてヒドロキシガリウムフタロシアニン(Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°及び28.3°の位置に回折ピークを有する。)15部、結着樹脂として塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)10部、及びn-酢酸ブチル200部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。分散液にn-酢酸ブチル175部、メチルエチルケトン180部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。電荷発生層形成用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、室温(25℃±3℃)で乾燥して
、平均厚0.18μmの電荷発生層を形成した。
【0285】
-電荷輸送層の形成-
ポリエステル樹脂(PE1)60部と、電荷輸送材料CTM-1を40部と、化合物(T1-3)6部とを、テトラヒドロフラン270部及びトルエン30部に溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、145℃で30分間の乾燥を行い、電荷輸送層を形成した。電荷輸送層の平均厚は30μmであった。
【0286】
【0287】
<実施例S2~S77、比較例SC1~SC4>
実施例S1と同様にして、ただし、電荷輸送層の樹脂の種類、化合物(T)の種類、及び樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量(質量部)を表2~表4に記載の仕様に変更して、それぞれの感光体を作製した。
なお、表に示したT1-3等は、既述の化合物(T)の具体例である。
【0288】
[感光体の性能評価]
<耐摩耗性>
各実施例又は各比較例の感光体を、電子写真方式の画像形成装置(富士フイルムビジネスイノベーション社製、ApeosC4570)に搭載し、温度30℃且つ相対湿度85%の環境下で、A3サイズの紙に、1%ソリッド画像、画像密度(エリアカバレッジ)1%の画像を10万枚形成した。その後、温度10℃且つ相対湿度15%の環境下で、A3サイズの紙に、100%ソリッド画像、画像密度(エリアカバレッジ)100%のベタ画像を10万枚形成した。上記画像形成(すなわち、温度30℃且つ相対湿度85%の環境下での10万枚画像形成及び温度10℃且つ相対湿度15%の環境下での10万枚画像形成の合計20万枚画像形成)を5回繰り返した。上記画像形成(すなわち、合計100万枚画像形成)の前後において、電荷輸送層の平均厚を求め、画像形成前後の平均厚の差を摩耗量(nm)とした。膜厚測定機として、フィッシャースコープ社製パーマスコープを用いた。
摩耗量を下記のとおり分類した。表2~表4に結果を示す。
A:摩耗量が500nm未満
B:摩耗量が500nm以上、1000nm未満
C:摩耗量が1000nm以上、1500nm未満
D:摩耗量が1500nm以上、2000nm未満
E:摩耗量が2000nm以上
【0289】
<耐亀裂性>
各実施例又は各比較例の感光体を、富士フイルムビジネスイノベーション社製の画像形成装置ApeosC4570に装着した。黒色のトナーカートリッジに、円柱状のカーボンファイバー(平均直径10μm、平均長70μm)を混入した。
温度30℃且つ相対湿度85%の高温高湿環境下、A4紙の片面全面に画像濃度10%の黒色画像を1000枚連続出力した。最後の10枚を目視で観察し、黒点の個数を数えた。また、感光体の表面解析としてレーザーテック社製レーザー顕微鏡を用い、倍率20倍で10視野内に異物突き刺さり箇所の凹凸プロファイルから亀裂深さ(μm)を計測し、平均値を算出した。表2~表4に結果を示す。
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
表2~4に示すように、本実施例では、比較例に比べて、感光体表面の耐摩耗性が高く、黒点の発生が少なく、かつ、亀裂深さが浅いことから、耐摩耗性及び耐亀裂性の両方に優れていることがわかる。
【0294】
本開示には、下記の態様が含まれる。
【0295】
(((1))) 導電性基体と、前記導電性基体上に配置された、電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型感光層と、を備え、
前記電荷輸送層が、最表面層であり、かつ、電荷輸送材料とポリエステル樹脂と下記式(T)で表される化合物(T)とを含有し、
前記ポリエステル樹脂が、式(P1)で表されるジオール単位(P1)、式(P2)で表されるジオール単位(P2)、式(P3)で表されるジオール単位(P3)、式(P5)で表されるジオール単位(P5)、及び式(P6)で表されるジオール単位(P6)からなる群から選択される少なくとも1種を有するポリエステル樹脂(1)を含み、
前記ポリエステル樹脂(1)がビフェニル骨格を含む単位をさらに有し、
前記ポリエステル樹脂(1)の末端基がフッ素原子を含まない、
電子写真感光体。
式(T) ArT1-LT1-ArT2
式(T)において、ArT1は置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいビフェニル基であり、LT1は単結合又はエーテル結合であり、ArT2は置換基を有してもよい炭素数6以上12以下のアリール基又は置換基を有してもよい炭素数7以上20以下のアラルキル基である。
【0296】
【0297】
式(P1)において、Rb101は炭素数4以上20以下の分岐アルキル基であり、Rb201は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb401、Rb501、Rb801、及びRb901はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P2)において、Rb102は炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基であり、Rb202は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb402、Rb502、Rb802、及びRb902はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P3)において、Rb113及びRb213はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、dは7以上15以下の整数であり、Rb403、Rb503、Rb803、及びRb903はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P5)において、Ar105は炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb205は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb405、Rb505、Rb805、及びRb905はそれぞれ独立に水
素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
式(P6)において、Rb116及びRb216はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、eは4以上6以下の整数であり、Rb406、Rb506、Rb806、及びRb906はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。
【0298】
(((2))) 前記ビフェニル骨格を含む単位は、式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)である、(((1)))に記載の電子写真感光体。
【0299】
【0300】
式(A2)において、n201及びn202はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n201個のRa201及びn202個のRa202はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
【0301】
(((3))) 前記ポリエステル樹脂(1)に占める前記ビフェニル骨格を含む単位の質量割合は、20質量%以上70質量%以下である、(((1)))又は(((2)))に記載の電子写真感光体。
(((4))) 前記ポリエステル樹脂(1)に占める前記ジオール単位(P1)、前記ジオール単位(P2)、前記ジオール単位(P3)、前記ジオール単位(P5)、及び前記ジオール単位(P6)の合計質量割合は、30質量%以上90質量%以下である、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((5))) 前記ポリエステル樹脂100質量部に対する前記化合物(T)の含有量は、1質量部以上20質量部以下である、(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((6))) 前記ポリエステル樹脂100質量部に対する前記化合物(T)の含有量は、4質量部以上10質量部以下である、(((5)))に記載の電子写真感光体。
(((7))) (((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
(((8))) 前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置をさらに備える、(((7)))に記載のプロセスカートリッジ。
(((9))) (((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
(((10)))
前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置をさらに備える、(((9)))に記載の画像形成装置。
【0302】
(((1)))に係る発明によれば、電荷輸送層が電荷輸送材料と樹脂とを含有し最表面層である電子写真感光体において、樹脂が下記ポリエステル樹脂(PEc1)からなる場合又は電荷輸送層がターフェニルを含有しない場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
(((2)))に係る発明によれば、ビフェニル骨格を含む単位がジオール単位である場合に比べ、耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、ビフェニル骨格を含む単位の質量割合が20質量%未満である場合に比べ、耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、ポリエステル樹脂(1)に占めるジオール単位(P1)、ジオール単位(P2)、ジオール単位(P3)、ジオール単位(P5)、及びジオール単位(P6)の合計質量割合が30質量%未満である場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量が1質量部未満又は20質量部超えである場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
(((6)))に係る発明によれば、ポリエステル樹脂100質量部に対する化合物(T)の含有量が4質量部未満又は10質量部超えである場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体が提供される。
(((7)))又は(((8)))に係る発明によれば、電荷輸送層が電荷輸送材料と樹脂とを含有し最表面層である電子写真感光体において、樹脂が下記ポリエステル樹脂(PEc1)からなる電子写真感光体又は電荷輸送層がターフェニルを含有しない電子写真感光体を適用した場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体を適用したプロセスカートリッジが提供される。
(((9)))又は(((10)))に係る発明によれば、電荷輸送層が電荷輸送材料と樹脂とを含有し最表面層である電子写真感光体において、樹脂が下記ポリエステル樹脂(PEc1)からなる電子写真感光体又は電荷輸送層がターフェニルを含有しない電子写真感光体を適用した場合に比べ、耐摩耗性及び耐亀裂性が良好な電子写真感光体を適用した画像形成装置が提供される。
7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑材、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材(ロール状)、133 繊維状部材(平ブラシ状)、300 プロセスカートリッジ