(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141014
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】無線綴じ冊子、及び無線綴じ冊子の製造方法
(51)【国際特許分類】
B42B 5/00 20060101AFI20241003BHJP
B42D 1/10 20060101ALI20241003BHJP
B42C 19/02 20060101ALI20241003BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241003BHJP
G03G 15/22 20060101ALI20241003BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20241003BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B42B5/00
B42D1/10
B42C19/02
G03G21/00 370
G03G15/22 101Z
G03G9/08 391
G03G9/087 325
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052433
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長南 紫織
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 嵩
【テーマコード(参考)】
2H078
2H270
2H500
【Fターム(参考)】
2H078AA15
2H078DD40
2H078DD47
2H078DD61
2H078DD73
2H078EE17
2H078EE25
2H078FF01
2H270KA57
2H270PA42
2H500AA01
2H500AA14
2H500CA03
(57)【要約】
【課題】各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子を提供する。
【解決手段】複数の用紙が重ねられた用紙群と、前記用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、前記各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、を有し、前記複数の接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化している無線綴じ冊子。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の用紙が重ねられた用紙群と、
前記用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、前記各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、
を有し、
前記複数の接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化している無線綴じ冊子。
【請求項2】
各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、前記冊子の厚み方向中心部で前記用紙間に介在する前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、前記冊子の第一表面側及び第二表面側で前記用紙間に介在する前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量の1.2倍以上4.0倍以下である請求項1に記載の無線綴じ冊子。
【請求項3】
前記冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、前記冊子の厚み方向中心部に向かって、前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量が変化する、用紙5枚ごとの用紙1枚の接着剤量差が0.18g/m2以上である請求項1に記載の無線綴じ冊子。
【請求項4】
前記接着層が、前記熱可塑性接着剤の、線状パターン、点状パターン、又は、前記線状パターン及び前記点状パターンの組み合わせで構成されている請求項1に記載の無線綴じ冊子。
【請求項5】
前記熱可塑性接着剤の、線状パターンの線幅、及び点状パターンの直径の少なくとも一方の変化により、前記複数の接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、前記冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、前記冊子の厚み方向中心部に向かって変化している請求項4に記載の無線綴じ冊子。
【請求項6】
前記熱可塑性接着剤が、ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の樹脂を含み、前記少なくとも2種の樹脂のガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上の圧力相転移性接着剤である請求項1に記載の無線綴じ冊子。
【請求項7】
前記用紙群が、前記複数の用紙として、10枚以上100枚以下の用紙が重ねられた用紙群である請求項1に記載の無線綴じ冊子。
【請求項8】
前記用紙の坪量が200gsm以下である請求項1に記載の無線綴じ冊子。
【請求項9】
前記複数の用紙の端部に、前記熱可塑性接着剤の粒子を付与する付与工程と、
前記熱可塑性接着剤の粒子を前記用紙に固定する固定工程と、
前記熱可塑性接着剤を含む接着層を有する前記複数の用紙を、前記各用紙間に前記接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を得た後、圧力及び熱を接着層に付与して、前記各用紙を前記接着層で圧着する圧着工程と、
を有する請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
【請求項10】
前記付与工程は、電子写真方式により、前記熱可塑性接着剤の粒子を前記複数の用紙の端部に付与する工程である請求項9に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
【請求項11】
前記圧着工程は、用紙群の第一表面側及び第二表面側から、0.01Mpa以上1Mpa以下の圧力、90℃以上220℃以下の熱を前記接着層に付与して、前記各用紙を前記接着層で圧着する工程である請求項9に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線綴じ冊子、及び無線綴じ冊子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「本文となる用紙を一葉ごと2つ折りして複数の折丁を得る紙折り工程と、前記複数の折丁の折り目部分を当該複数の折丁の厚さ方向に加圧するプレス工程と、本文となる所定枚数の折丁、表紙及び裏表紙からなる1冊分の束、又は当該1冊分の束をさらに複数積層して複数冊分の束を整える紙揃え工程と、前記1冊分の束又は前記複数冊の束における背側の断面の天地両端縁からそれぞれ5~10mmを除いた中間領域に、硬化させることで接着剤が柔軟性を示すこととなる第1の接着剤を層状に塗布する第1塗布工程と、前記第1の接着剤層を所定の乾燥時間放置した後に、前記1冊分の束において前記第1の接着剤が塗布されていない部分も含めた全面に第2の接着剤を層状に塗布する第2塗布工程とを含むことを特徴とする無線綴じ冊子の製本方法。」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「記録媒体の縁部及び折り曲げ部の少なくとも一部に圧力相転移性粒子を付与する圧力相転移性粒子付与工程と、前記圧力相転移性粒子を前記記録媒体に接着する接着工程と、前記圧力相転移性粒子が接着された前記記録媒体を含む複数の記録媒体を重ねた積層体を圧着する圧着工程と、を有し、前記圧力相転移性粒子は、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含み、前記圧力相転移性粒子は、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、前記圧力相転移性粒子が示すガラス転移温度のうち最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である、冊子の製造方法。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-503817号公報
【特許文献2】特開2021-133617公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、複数の用紙が重ねられた用紙群と、用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、を有する無線綴じ冊子であって、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって同じである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様が含まれる。
<1>
複数の用紙が重ねられた用紙群と、
前記用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、前記各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、
を有し、
前記複数の接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化している無線綴じ冊子。
<2>
各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、前記冊子の厚み方向中心部で前記用紙間に介在する前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、前記冊子の第一表面側及び第二表面側で前記用紙間に介在する前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量の1.2倍以上4.0倍以下である<1>に記載の無線綴じ冊子。
<3>
前記冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、前記冊子の厚み方向中心部に向かって、前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量が変化する、用紙5枚ごとの用紙1枚の接着剤量差が0.18g/m2以上である<1>又は<2>に記載の無線綴じ冊子。
<4>
前記接着層が、前記熱可塑性接着剤の、線状パターン、点状パターン、又は、前記線状パターン及び前記点状パターンの組み合わせで構成されている<1>~<3>のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子。
<5>
前記熱可塑性接着剤の、線状パターンの線幅、及び点状パターンの直径の少なくとも一方の変化により、前記複数の接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、前記冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、前記冊子の厚み方向中心部に向かって変化している<4>に記載の無線綴じ冊子。
<6>
前記熱可塑性接着剤が、ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の樹脂を含み、前記少なくとも2種の樹脂のガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上の圧力相転移性接着剤である<1>~<5>のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子。
<7>
前記用紙群が、前記複数の用紙として、10枚以上100枚以下の用紙が重ねられた用紙群である<1>~<6>のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子。
<8>
前記用紙の坪量が200gsm以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子。
<9>
前記複数の用紙の端部に、前記熱可塑性接着剤の粒子を付与する付与工程と、
前記熱可塑性接着剤の粒子を前記用紙に固定する固定工程と、
前記熱可塑性接着剤を含む接着層を有する前記複数の用紙を、前記各用紙間に前記接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を得た後、圧力及び熱を接着層に付与して、前記各用紙を前記接着層で圧着する圧着工程と、
を有する<1>~<8>のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
<10>
前記付与工程は、電子写真方式により、前記熱可塑性接着剤の粒子を前記複数の用紙の端部に付与する工程である<9>に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
<11>
前記圧着工程は、用紙群の第一表面側及び第二表面側から、0.01Mpa以上1Mpa以下の圧力、90℃以上220℃以下の熱を前記接着層に付与して、前記各用紙を前記接着層で圧着する工程である<9>又は<10>に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
<1>、<4>、又は<5>に係る発明によれば、複数の用紙が重ねられた用紙群と、用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、を有する無線綴じ冊子であって、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって同じである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
【0008】
<2>に係る発明によれば、各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、冊子の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量が、各々、冊子の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量の1.2倍未満又は4.0倍超えである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
<3>に係る発明によれば、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって、接着層における熱可塑性接着剤の量が変化する、用紙5枚ごとの用紙1枚の接着剤量差が0.18g/m2未満である場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
【0009】
<6>に係る発明によれば、熱可塑性接着剤が、1種の樹脂を含む接着剤である場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
<7>に係る発明によれば、用紙群が、複数の用紙として、100枚超えの用紙が重ねられた用紙群である場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
<8>に係る発明によれば、用紙の坪量が200gsm超えである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
【0010】
<9>、<10>又は<11>に係る発明によれば、複数の用紙の端部に、前熱可塑性接着剤を付与し、熱可塑性接着剤を含む接着層を形成する付与工程と、熱可塑性接着剤を含む接着層が形成された複数の用紙を、各用紙間に接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を得た後、圧力及び熱を接着層に付与して、各用紙を接着層で接着する固定工程と、を有する無線綴じ冊子の製造方法であって、各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、冊子の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量が、各々、冊子の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量の1.2倍未満又は4.0倍超えである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る無線綴じ冊子の一例を示す概略平面図である。
【
図2】本実施形態に係る無線綴じ冊子の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本実施形態に係る無線綴じ冊子の、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量の冊子の厚み方向のプロファイルの一例を示す概略図である。
【
図4】本実施形態に係る無線綴じ冊子における、熱可塑性接着剤の線状パターンの一例を示す概略平面図である。
【
図5】本実施形態に係る無線綴じ冊子における、熱可塑性接着剤の点状パターンの一例を示す概略平面図である。
【
図6】本実施形態に係る無線綴じ冊子の製造システムの一例を示す概略図である。
【
図7】本実施形態に係る冊子の製造システムの他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0013】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別されない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
本明細書において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0016】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0017】
本明細書において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0018】
本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
【0019】
<無線綴じ冊子>
本実施形態に係る無線綴じ冊子(以下「冊子」とも称する)は、複数の用紙が重ねられた用紙群と、用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、を有し、複数の接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化している。
【0020】
ここで、無線綴じ冊子は、用紙群の各用紙の端部に、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層を形成した後、用紙群の端部の第一表面側及び第二表面側から、熱及び圧力を付与して、各用紙を端部で接着する。
しかし、用紙群(つまり冊子)の厚み方向の中心部では、用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側に比べ、熱及び圧力が付与され難くなる。
そのため、熱及び圧力が用紙群(つまり冊子)の厚み方向で均一に付与され難い。その結果、用紙群(つまり冊子)の厚み方向の中心部での、各用紙間の接着性が低くなることがある。一方、用紙群(つまり冊子)の厚み方向の中心部での各用紙間の接着性を高めるため、接着時の熱及び圧力を増加させると、用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側での、各用紙間の接着性が過剰に高くなり、用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じることがある。
【0021】
それに対して、各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、用紙群(つまり冊子)の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量を、用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤よりも多くする。そにより、接着時の熱及び圧力による用紙群(つまり冊子)の厚み方向中心部での各用紙間の接着性を、用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側での各用紙間の接着性よりも高める。それにより、用紙群(つまり冊子)の厚み方向の中心部で用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側に比べて熱及び圧力が付与されなくても、用紙群の第一表面側及び第二表面側と厚み方向の中心部(つまり用紙群の厚み方向にわたって)とで、各用紙間での接着力が均一に近い状態となる。
【0022】
ここで、熱及び圧力を付与して、用紙群の各用紙を端部で接着して得られた冊子は、そのまま製品としてもよいが、厚み方向で複数に分割してもよい。
つまり、本実施形態に係る冊子は、製品として、作製後、分割されて「複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化している態様」も含まれる。
【0023】
よって、本実施形態に係る冊子は、上記構成により、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い冊子となる。
【0024】
以下、本実施形態に係る冊子の詳細について説明する。
【0025】
本実施形態に係る冊子は、例えば、平面形状が矩形状の複数の用紙が重ねられた用紙群と、用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、を有する冊子が挙げられる(
図1~
図2参照)。
なお、用紙の平均形状は、例えば、多角形、円形状、又は、その他形状(例えば、複数の辺を有し、当該辺が直線及び湾曲した形状)等であってもよい。
【0026】
矩形状、多角形状、又はその他の用紙を適用する場合、接着層は、例えば、用紙の一辺の端部に設けられる。
円形状の用紙を適用する場合、接着層は、例えば、円形状の用紙における、円周の1/2から6/1の長さの端部に設けられる。
【0027】
接着層の形成領域の幅は、例えば、冊子の各用紙の縁から1mm以上20mm以下の範囲内の領域とする(
図2中、t1参照)。
ただし、例えば、冊子の各用紙に縁から0mm超え3mm以下の範囲内に、接着層を設けない領域を設けてもよい(
図2中、t2参照)。
なお、接着層の形成領域とは、接着剤がパターンで形成されている場合、外側に位置するパターンの最外の縁を結んだ領域(
図4~
図5中、点線で囲まれた領域参照)を示す。
ここで、
図1及び
図2中、10は冊子、10Aは冊子の第一表面、10Bは冊子の第二表面、10Cは冊子の厚み方向中心部、12は用紙群、12Aは用紙、14は接着層を示す。
【0028】
本実施形態に係る冊子は、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化している。なお、熱可塑性接着剤の量の変化は、増加及び減少のいずれであってもよい。
【0029】
ここで、本実施形態に係る冊子は、各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、用紙群(つまり冊子)の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量を、用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤よりも多くした状態で、接着時の熱及び圧力により接着層で各用紙を接着した冊子、当該冊子を厚み方向で分割した冊子がある。
【0030】
そのため、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量の冊子の厚み方向のプロファイルは、例えば、
図3に示すように、次の態様が挙げられる。
【0031】
(1)複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって増加している態様(
図3中、Aに示す態様)。
(2)複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側から第二表面側に向かって増加している態様(
図3中、(1)の態様において、Bで分割されたB1に示す態様、Cで分割されたC1に示す態様)。
(3)複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第二表面側から第一表面側に向かって増加している態様(
図3中、(1)の態様において、Bで分割されたB2に示す態様、及びDで分割されたD2に示す態様)。
(4)複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部を除く冊子の厚み方向の任意の位置に向かって増加している態様(
図3中、(1)の態様において、Cで分割されたC2に示す態様、及びDで分割されたD1に示す態様)。
【0032】
上記態様の中でも、冊子中の用紙の枚数が多くなる、(1)の態様が好ましい。
ここで、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量の変化は、用紙1枚毎に変化させてもよいし、複数枚(例えば、4枚以上6枚以下)毎に変化させてもよい。
【0033】
各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、冊子の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量は、冊子の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量の1.2倍以上4.0倍以下が好ましく、1.7倍以上2.3倍以下がより好ましい。
冊子の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量を上記範囲とすることで、冊子の第一表面側及び第二表面側と厚み方向中心部とで、接着力を確保しつつ、用紙間の接着力が均一になり易くなる。その結果、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難くなる。
【0034】
冊子の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量は、単位面積(m2)あたり0.4g/m2以上1.5g/m2以下が好ましく、0.6g/m2以上1.0g/m2以下がより好ましい。
【0035】
冊子の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量、及び冊子の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量の割合の測定は、例えば、次の通りである。
同一の条件で作製された冊子を10部用意し、それぞれの冊子の、第一表面、第二表面、及び厚み方向中心部から1枚の用紙を取り出す。同一箇所から取り出した10枚の用紙をまとめ、各部位での用紙10枚の重量を測定する。そこから糊を塗布していない用紙の重量を差し引き、各箇所の接着剤量を算出する。
そして、第一表面及び第二表面の各用紙の計10枚の接着剤量に対する、厚み方向中心部の用紙の計10枚の接着剤量の割合を求め、当該割合を「冊子の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量に対する冊子の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量の割合」とする。
また、第一表面及び第二表面の、各用紙の計10枚の接着剤量と各用紙の計10枚の接着層形成領域の合計面積から、単位面積(m2)あたりの第一表面側及び第二表面側の接着剤の量を求める。
【0036】
冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって、接着層における熱可塑性接着剤の量が変化する、用紙5枚ごとの用紙1枚の接着剤量差(以下、「接着剤の変化量」とも称する)は、0.18g/m2以上が好ましく、0.27g/m2以上がより好ましく、0.36g/m2以上がさらに好ましい。
接着剤の変化量が上記範囲とすることで、冊子の第一表面側及び第二表面側と厚み方向中心部とで、接着力を確保しつつ、用紙間の接着力が均一になり易くなる。その結果、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難くなる。
ただし、剥離に必要な力の均一化の観点から、接着剤の変化量は、例えば、0.54g/m2以下とする。
ここで、用紙5枚ごとの用紙1枚の接着剤量差とは、用紙を剥離したとき、N枚目(例えば1枚目)に剥離した用紙の接着剤量と、N+5枚目(例えば6枚目)に剥離した用紙の接着剤量と、の差(絶対値)を示す。
【0037】
接着剤の変化量の測定方法は、例えば、次の通りである。
同一の条件で作成された冊子を10部用意し、測定対象である冊子の第一表面から、1枚の用紙を取り出す。同一箇所から取り出した10枚の用紙をまとめ、各部位での用紙10枚の重量を測定する。
この操作を、冊子の第一表面から第二表面まで5枚ごとに順次実施し、各箇所(つまりN枚目とN+5枚目)の用紙10枚の重量を求める。そこから糊を塗布していない用紙の重量を差し引き、各個所の接着剤量を算出し、接着層形成領域の面積から、接着剤層の単位当たりの接着剤量を得る。そして、各個所での、接着剤層の単位当たりの接着剤量から、用紙5枚ごとの用紙1枚の接着剤量差を求め、算術平均する。
【0038】
接着層は、熱可塑性接着剤の、線状パターン(
図4参照)、点状パターン(
図5参照)、又は、線状パターン及び点状パターンの組み合わせで構成されていることが好ましい。
熱可塑性接着剤の線状パターンは、斜線状、格子線状等の線状パターンが挙げられる。
熱可塑性接着剤の点状パターンは、丸、多角形、星等の点状パターンが挙げられる。
ここで、
図4~
図5中、14は接着層、14Aは熱可塑性接着剤のパターンを示す。
【0039】
そして、熱可塑性接着剤の、線状パターンの線幅、及び点状パターンの直径の少なくとも一方の変化により、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化していることが好ましい(
図4~
図5参照)。
接着層は、熱可塑性接着剤の、線状パターン、点状パターン、又は、線状パターン及び点状パターンの組み合わせで構成されていることで、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量の変化量が制御され易くなる。
【0040】
なお、接着層は、熱可塑性接着剤のパターン(つまり接着剤が存在する領域の面積)以外に、熱可塑性接着剤(つまり接着層)の厚さにより、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量を変化させてもよい。つまり、熱可塑性接着剤(つまり接着層)の厚さの変化により、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化させてもよい。
【0041】
用紙としては、塗工紙、非塗工紙(つまり普通紙)、エンボス紙等の用紙が挙げられる。
ただし、用紙の坪量は、200gsm以下が好ましく、130gsm以下がより好ましい。用紙の坪量が上記範囲であると、冊子作製時に用紙群に付与する熱及び圧力が、用紙群の厚み方向中心部まで十分付与され易くなる。その結果、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難くなる。
なお、用紙の強度を確保する観点から、紙の坪量は、例えば、50gsm以上とする。
【0042】
用紙の坪量は、23℃50%RHに24時間放置した用紙対して、JIS P8124:2011に準じて測定された値である。
【0043】
用紙群(つまり冊子)は、複数の用紙として、10枚以上100枚以下の用紙が重ねられた用紙群であることが好ましく、10枚以上50枚以下がより好ましい。
用紙群(つまり冊子)の用紙の枚数が上記範囲であると、冊子作製時に用紙群に付与する熱及び圧力が、用紙群の厚み方向中心部まで十分付与され易くなる。その結果、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難くなる。
【0044】
本実施形態に係る冊子は、用紙を冊子(つまり接着層で接着された直下の他の用紙)から剥離して利用する。用紙を剥離したとき、剥離する用紙側に、接着層が付いていることがよい。つまり、用紙を剥離するとき、接着層と直下の他の用紙との界面で剥離されることがよい。
なお、用紙を剥離するとき、直下の他の用紙側に接着層が残存する態様であってもよいし、接着層が厚み方向で分断され、剥離する用紙側、直下の他の用紙側の双方に付く態様であってもよい。
【0045】
<無線綴じ冊子の製造方法>
本実施形態に係る無線綴じ冊子の製造方法は、
複数の用紙の端部に、熱可塑性接着剤の粒子(以下「接着剤粒子」とも称する)を付与する付与工程と、
接着剤粒子を用紙に固定する固定工程と、
熱可塑性接着剤を含む接着層を有する複数の用紙を、各用紙間に接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を得た後、圧力及び熱を接着層に付与して、各用紙を接着層で圧着する圧着工程と、
を有する。
本実施形態に係る無線綴じ冊子の製造方法では、上記工程を経て、本実施形態に係る無線綴じ冊子が得られる。
【0046】
ここで、本実施形態に係る無線綴じ冊子の製造方法では、付与工程において、各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、用紙群(つまり冊子)の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量を、用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤よりも多くする。
【0047】
そして、本実施形態に係る無線綴じ冊子の製造方法では、
【0048】
本実施形態に係る冊子の製造方法は、以下に示す、本実施形態に係る冊子の製造システムにより行われる。
本実施形態に係る冊子の製造システムは、
接着剤粒子を収容し、複数の用紙の端部に、接着剤粒子を付与する付与部と、
接着剤粒子を用紙に固定する固定部と、
熱可塑性接着剤を含む接着層を有する複数の用紙を、各用紙間に接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を得た後、圧力及び熱を接着層に付与して、各用紙を接着層で圧着する圧着部と、
を備える。
【0049】
以下、本実施形態に係る冊子の製造方法の各工程について、本実施形態に係る冊子の製造システムの各手段と共に説明する。
【0050】
<付与工程及び付与部>
付与工程では、付与部により、用紙の縁部に接着剤粒子を付与する。なお、接着剤粒子の詳細については後述する。
付与部における接着剤粒子付与手段としては、特に制限はなく、用紙の表面上に、目的とする付与量にて、目的とする付与位置に接着剤粒子を付与しうる手段であればよい。
接着剤粒子付与手段として具体的には、接着剤粒子を吹き付ける吹き付け方式、接着剤粒子を塗布する塗布方式、接着剤粒子をトナーとして用いた電子写真方式等が用いられる。
【0051】
(接着剤粒子を付与する位置)
接着剤粒子は、用紙の少なくとも一方の面における、用紙の縁部に付与される。
接着剤粒子は、接着力を高める観点から、用紙の両方の面における用紙の端部を付与することが好ましい。
【0052】
(接着剤粒子の付与状態)
接着剤粒子の付与状態としては、粒子の形状を残した状態であってもよいし、接着剤粒子が集合して層状になっていてもよく、十分な剥離強度(又は圧着による接着性)を得る観点から、層状になっていることが好ましい。
接着剤粒子による接着層は、連続した層であってもよいし、不連続な層であってもよい。
【0053】
接着剤粒子の付与量としては、十分な圧着による接着性を得る観点から、0.5g/m2以上8.0g/m2以下であることが好ましく、1.0g/m2以上6.0g/m2以下であることがより好ましく、1.5g/m2以上5.0g/m2以下であることが更に好ましい。
【0054】
(接着剤粒子の付与)
接着剤粒子の付与は、目的とする付与位置に接着剤粒子が付与されれば、特に制限はなく、具体的には、接着剤粒子を吹き付ける吹き付け方式、接着剤粒子塗布する塗布方式、接着剤粒子をトナーとして用いた電子写真方式等が用いられる。接着剤粒子は、直接用紙の接着層形成領域への落下付与やロール塗布により付与してもよい。
用紙上に接着剤粒子を付与する付与部における接着剤粒子付与手段の一例としては、接着剤粒子を吹き付ける吹き付け方式である粒子付与装置、接着剤粒子を塗布する塗布方式である粒子付与装置、接着剤粒子をトナーとして用いた電子写真方式である粒子付与装置等が挙げられる。
【0055】
吹き付け方式による付与工程は、例えば、接着剤粒子が分散した分散液を準備する工程と、分散液を用紙に吹き付ける工程と、用紙上に吹き付けられた分散液を乾燥させる工程と、を有する。
また、吹き付け方式による付与部は、例えば、接着剤粒子が分散した分散液を用紙に吹き付ける吹き付け手段と、用紙上に吹き付けられた分散液を乾燥させる乾燥手段と、を備える。
吹き付け手段としては、例えば、スプレー等が挙げられる。乾燥手段としては、例えば、温風送風装置、近赤外線ヒータ、レーザ照射装置等が挙げられる。
【0056】
塗布方式による付与工程は、例えば、接着剤粒子を用紙に塗布する工程を有する。塗布方式においては、接着剤粒子が分散した塗布液を用いてもよい。塗布液を用いる塗布方式による付与工程は、例えば、接着剤粒子が分散した塗布液を準備する工程と、塗布液を用紙に塗布する工程と、用紙上に塗布された塗布液を乾燥させる工程と、を有してもよい。
また、塗布方式による付与部は、例えば、接着剤粒子を用紙に塗布する塗布手段を備える。塗布液を用いる塗布方式による付与部は、例えば、塗布液を用紙に塗布する塗布手段と、用紙上に塗布された塗布液を乾燥させる乾燥手段と、を備えてもよい。
塗布手段としては、例えば、ロール等が挙げられる。
【0057】
電子写真方式による付与工程は、例えば、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、接着剤粒子を含む静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像を接着剤粒子領域として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成された接着剤粒子領域を用紙の表面に転写する転写工程と、を有する。
また、電子写真方式による付与部は、例えば、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、接着剤粒子を含む静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像を接着剤粒子領域として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成された接着剤粒子領域を用紙の表面に転写する転写手段と、を備える。
【0058】
電子写真方式による付与部は、現像手段を含む部分が、粒子付与装置に着脱するカートリッジ構造(いわゆるプロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、接着剤粒子を含む静電荷像現像剤を収容する現像手段を備え、粒子付与装置に着脱されるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
電子写真方式による付与方法及び付与部は、いずれも、電子写真方式による画像形成方法及び画像形成装置を用いてもよく、電子写真方式による画像形成方法及び画像形成装置にて採用されている公知の工程及び手段を用いてもよい。
また、電子写真方式による付与方法及び付与部は、中間転写方式を採用していてもよい。中間転写方式では、例えば、像保持体の表面に形成された接着剤粒子領域は、一旦中間転写体の表面に転写された後、最終的に、中間転写体の表面から用紙の表面へと転写される。
更に、電子写真方式による付与方法及び付与部は、例えば、像保持体の表面をクリーニングする工程及び手段、像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等、上記したもの以外の手段や工程を含むものであってもよい。
【0059】
画像が形成された用紙を用いる場合、あらかじめ画像が形成された用紙に接着剤粒子を付与してもよく、用紙に画像を形成する画像形成工程と付与工程とを連続的に行ってもよい。
画像形成工程と付与工程とを連続的に行う方法としては、例えばインクジェット記録方法を用いた画像形成工程後に付与工程を行う方式、画像形成工程及び付与工程の両方を電子写真方式により行う方法等が挙げられる。具体的には、例えば、用紙の表面に、画像形成工程における画像形成用の色材(好ましくは有色インク)と、付与工程における接着剤粒子と、の両方を用いて複合画像を形成する方法が挙げられる。
【0060】
<固定工程及び固定部>
固定工程では、例えば、用紙に付与された接着剤粒子を、固定部により加熱する。
接着剤粒子を加熱する手段(粒子加熱手段)としては、特に制限はなく、用紙上に付与された接着剤粒子を加熱しうる手段であればよい。
接着剤粒子を加熱する手段(粒子加熱手段)としては、接触方式であってもよいし、非接触方式であってもよい。
接触方式の粒子加熱手段は、例えば、ロール、ベルト、パッド等の部材を加熱し、加熱されたこれらの部材を接着剤粒子に接触させる方法が挙げられる。
非接触方式の粒子加熱手段は、例えば、接着剤粒子が付与された用紙を、ヒータ、オーブン等で温められた領域を通す方法、ハロゲンランプ、キセノンランプ等からの照射光にて接着剤粒子を加熱する方法等が挙げられる。
【0061】
中でも、固定工程は、接着剤粒子を加熱すると共に接着剤粒子の移動、脱落等を抑制しうる観点から、接触方式の粒子加熱手段を用いることが好ましい。
即ち、粒子加熱手段は、接触方式の粒子加熱手段であることが好ましい。
【0062】
(接触方式での接着剤粒子の加熱)
接触方式にて接着剤粒子を加熱する際、接着剤粒子に接触させる部材(接触部材ともいう)により用紙群P2に印加する圧力は、0.01Mpa以上1Mpa以下が好ましい。
接触方式にて接着剤粒子を加熱する際、接着剤粒子に接触させる部材(接触部材ともいう)の設定温度は、接着剤粒子を可塑化しうる温度であればよいが、接着剤粒子の加熱効率等の観点から、例えば、120℃以上250℃以下であることが好ましい。
ここで、接触部材の設定温度とは、接触部材の、接着剤粒子に接触する表面温度の目標値をいう。
接触部材としては、上記の設定温度に加熱された表面を有する部材であれば、特に制限はなく、例えば、ロール、ベルト、パッド等が挙げられる。
【0063】
固定工程は、接着剤粒子を加熱すると共に加圧する工程であることが好ましい。
接着剤粒子を加熱すると共に加圧することで、接着剤粒子の付与面(例えば、接着剤粒子層の表面)に平滑性を付与しうる。
固定工程において接着剤粒子に印加される圧力は、例えば、電子写真方式による定着手段により印加される圧力が挙げられる。
【0064】
接着剤粒子を加熱すると共に加圧する手段(加熱加圧部材ともいう)としては、以下の例が挙げられる。
即ち、2つの接触したロール対であって、そのうちの少なくとも一方のロールから熱を付与し、ロール対の間に、接着剤粒子が付与された用紙を挿通させて熱及び圧力を加える加熱加圧ロール対;ロールとベルトとが接触した部材であってロール及びベルトの少なくとも一方から熱を付与し、これら部材の間に、接着剤粒子が付与された用紙を挿通させて熱及び圧力を加える加熱加圧部材;2つの接触したベルト対であってそのうちの少なくとも一方のベルトから熱を付与し、ベルト対の間に、接着剤粒子が付与された用紙を挿通させて熱及び圧力を加える加熱加圧ベルト対;等が挙げられる。
【0065】
<圧着工程及び圧着部>
圧着工程では、前記熱可塑性接着剤を含む接着層が形成された前記複数の用紙を、前記各用紙間に前記接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を得た後、圧力及び熱を接着層に付与して、各用紙を接着層で圧着する。
【0066】
用紙群の加圧は、接着層が形成された用紙群の端部のみに対して行ってもよく、用紙群全体に対して行ってもよい。
用紙群を加圧する手段(用紙群加圧手段)としては、特に制限はなく、用紙群を厚み方向に加圧しうる手段であればよく、用紙群を離間したロール対の間を挿通させる手段であってもよいし、プレス機、シーラー、ステープラー等にて用紙群を加圧する手段であってもよい。
【0067】
用紙群加圧手段としては、市販の装置を用いてもよい。具体的には、例えば、トッパン・フォームズ(株)製のPRESSLE LEADA、PRESSLE CORE、PRESSLE Bee、デュプロ精工(株)製のPS-500H、PS-500、EX-4100WI、EX-4100W、EX-4100/4150、PS-100等が挙げられる。
【0068】
圧着工程では、用紙群の第一表面側及び第二表面側から、0.01Mpa以上1Mpa以下(好ましくは0.1MPa以上0.5MPa以下)の圧力、90℃以上220℃以下の熱を接着層に付与して、各用紙を接着層で圧着することが好ましい。
圧力は、用紙群の厚み方向にかかる最大圧力である。熱の温度は、加圧加熱する部材の表面温度である。
上記条件で、各用紙を接着層で圧着することで、冊子の第一表面側及び第二表面側と厚み方向中心部とで、接着力を確保しつつ、用紙間の接着力が均一になり易くなる。その結果、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難くなる。
なお、圧着圧力は、市販の圧力測定フィルムにより測定される。圧力測定フィルムとしては、具体的には、富士フイルム(株)製 圧力測定フィルム プレスケールが挙げられる。なお、上記最大圧力とは、加圧手段にて、用紙群に圧力が付与されている間の圧力の変化における最大値を表す。
【0069】
本実施形態に係る冊子の製造方法は、付与工程、固定工程、及び圧着工程以外に、その他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、例えば、固定工程後の用紙群又は圧着工程後の冊子を目的とする大きさに裁断する工程、圧着工程後の冊子を厚み方向に分割する工程等が挙げられる。
【0070】
<製造システム及び製造方法の一例>
以下、本実施形態に係る冊子の製造システムの一例を示し、本実施形態に係る冊子の製造方法について説明するが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。
【0071】
図6は、本実施形態に係る冊子の製造システムの一例を示す概略構成図である。
図6に示す冊子の製造システムは、配置手段150と、配置手段150の下流に配置された圧着手段200と、を備える。
配置手段150は、接着剤粒子を収容し、用紙の縁部に接着剤粒子を付与する付与部と、接着剤粒子を用紙に固定する固定部と、を有する。
圧着手段200は、固定された接着剤粒子を含む接着層を有する複数の用紙を、各用紙間に接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を、圧力及び熱を接着層に付与して、各用紙を接着層で圧着する圧着部を含む圧着手段200を有する。
なお、
図6中、矢印は、用紙の搬送方向を示す。
【0072】
配置手段150は、塗布方式により接着剤粒子を用紙P上に配置し、固定する装置である。用紙Pには、例えば、片面又は両面に予め画像が形成されていてもよい。
【0073】
配置手段150は、用紙の端部に接着剤粒子を付与する付与部の一例として、用紙Pの表面に接着剤粒子516を付与する粒子付与装置518を有している。
【0074】
粒子付与装置518は、用紙Pの表面に接着剤粒子516を供給し、用紙Pの表面に接着剤粒子領域516Aを形成させる装置である。
粒子付与装置518には、用紙Pと対向する部分に供給ロール518Aが設けられており、対応する塗布領域のみに接着剤粒子516を供給する。粒子付与装置518では、供給ロール518Aに接着剤粒子516を供給し、供給ロール518Aに供給される接着剤粒子516の量(すなわち、用紙P上に層状に接着剤粒子516が供給されたときの層厚)が調整される。
【0075】
固定装置564は、加熱源を内蔵する加熱ロール564Aと、加熱ロール564Aに対して対向して設けられる加圧ロール564Bとを備えている。
【0076】
配置手段150は、さらに、用紙Pを収容する用紙収容部(図示省略)と、この用紙収容部に収容された用紙Pを搬送する搬送部(図示省略)と、用紙Pに塗布された接着剤粒子516を用紙Pに固定させる固定装置564と、固定装置564によって接着剤粒子516が固定された用紙Pが排出される用紙排出部(図示省略)と、を備えている。
【0077】
配置手段150が接着剤粒子を用紙P上に配置及び固定する動作について説明する。
用紙Pが、用紙収容部から搬送部により搬送され粒子付与装置518の位置まで到達すると、粒子付与装置518によって接着剤粒子516が用紙P上に付与され、接着剤粒子領域516Aが形成される。
【0078】
接着剤粒子領域516Aが形成された用紙Pは、固定装置564(固定部の一例)へと引き続き搬送される。そして、固定装置564により、熱及び圧力が付与され、用紙Pに接着剤粒子が固定される。
【0079】
用紙Pは、配置手段150を通過することによって、縁部に接着剤粒子が固定された付与後用紙P1になる。付与後用紙P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0080】
本実施形態に係る冊子の製造システムにおいて、配置手段150と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。配置手段150と圧着手段200とが離隔している場合、配置手段150と圧着手段200とは、例えば、付与後用紙P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0081】
圧着手段200は、用紙群形成装置220と加圧装置230とを備え、付与後用紙P1を重ねた用紙群P2を圧着する手段である。
【0082】
用紙群形成装置220は、当該装置を通過し、縁部に接着剤粒子が付与された付与後用紙P1を複数枚重ねることで、用紙群P2を作製する。
用紙群形成装置220を出た用紙群P2は、加圧装置230に向けて搬送される。
【0083】
加圧装置230は、一対の加圧部材(則ち、加圧ロール231及び232)を備える。加圧ロール231と加圧ロール232とは互いの外周面で接触し且つ押し合い、通過する用紙群P2に圧力を印加する。加圧装置230が備える一対の加圧部材は、加圧ロールと加圧ロールの組合せに限られず、加圧ロールと加圧ベルトの組合せ、加圧ベルトと加圧ベルトの組合せでもよい。
【0084】
加圧装置230を通過する用紙群P2に圧力が印加されると、用紙群P2上において接着剤粒子が圧力によって流動化し接着性を発揮する。
加圧装置230は、不図示の加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有している。加熱源によって加熱された際の用紙群P2を加熱する。
【0085】
用紙群P2が加圧装置230を通過することによって、重なった面どうしが流動化した接着剤粒子によって接着され、冊子P3が作製される。
【0086】
完成した冊子P3は、加圧装置230から搬出される。
【0087】
本実施形態に係る冊子の製造システムにおいて、用紙群形成装置220と加圧装置230とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。用紙群形成装置220と加圧装置230とが離隔している場合、用紙群形成装置220と加圧装置230とは、例えば、用紙群P2を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0088】
図7は、本実施形態に係る冊子の製造システムの他の一例を示す概略構成図である。
図7に示す冊子の製造システムは、配置手段100と、配置手段100の下流に配置された圧着手段200と、を備える。
配置手段100は、接着剤粒子を収容し、用紙の縁部に接着剤粒子を付与する付与部と、接着剤粒子を用紙に固定する固定部と、を有する。
圧着手段200は、固定された接着剤粒子を含む接着層を有する複数の用紙を、各用紙間に接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を、圧力及び熱を接着層に付与して、各用紙を接着層で圧着する圧着部を含む圧着手段200と、を備える。
図7中、矢印は、感光体の回転方向又は用紙の搬送方向を示す。
【0089】
配置手段100は、接着剤粒子を含む現像剤を用いて、接着剤粒子を電子写真方式により用紙P上に配置する直接転写方式の装置である。用紙Pには、例えば、片面又は両面に予め画像が形成されていてもよい。
【0090】
配置手段100は、感光体101を有している。感光体101の周囲には、感光体101の表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)102、帯電した感光体101の表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)103、静電荷像に接着剤粒子を供給して静電荷像を現像して接着剤粒子領域を形成する現像装置(現像手段の一例)104、現像により形成された接着剤粒子領域を用紙P上に転写する転写ロール(転写手段の一例)105、及び転写後に感光体101の表面に残存する接着剤粒子を除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)106が順に配置されている。
【0091】
そして、配置手段100は、用紙Pに接着剤粒子を固定する固定装置107が配置されている。
固定装置107は、例えば、一対の固定部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)を有する。また、固定装置107は、用紙Pを加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有している。
【0092】
配置手段100が接着剤粒子を用紙P上に配置及び固定する動作について説明する。
まず、帯電ロール102によって感光体101の表面が帯電される。帯電した感光体101の表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置103がレーザ光線を照射する。それにより、接着剤粒子の配置パターンの静電荷像が感光体101の表面に形成される。
【0093】
感光体101上に形成された静電荷像は、感光体101の走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体101上の静電荷像が、現像装置104によって現像され可視化され接着剤粒子領域になる。
【0094】
現像装置104内には、少なくとも接着剤粒子とキャリアとを含む現像剤が収容されている。接着剤粒子は、現像装置104の内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体101の表面が現像装置104を通過していくことにより、感光体101表面の静電荷像に接着剤粒子が静電的に付着し、静電荷像が接着剤粒子によって現像され接着剤粒子領域が形成される。接着剤粒子領域が形成された感光体101は、引き続き走行し、感光体101上に形成された接着剤粒子領域が転写位置へ搬送される。
【0095】
感光体101上の接着剤粒子領域が転写位置へ搬送されると、転写ロール105に転写バイアスが印加され、感光体101から転写ロール105に向う静電気力が接着剤粒子領域に作用し、感光体101上の接着剤粒子領域が用紙P上に転写される。
【0096】
感光体101上に残留した接着剤粒子は感光体クリーニング装置106で除去されて回収される。感光体クリーニング装置106は、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等である。感光体クリーニング装置106は、感光体の表面に残留した接着剤粒子が圧力により流動化して感光体の表面に膜状に付着する現象を抑制する観点から、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0097】
接着剤粒子領域が転写された用紙Pは固定装置(固定部の一例)107へと搬送される。そして、固定装置107により、熱及び圧力が付与され、用紙Pに接着剤粒子が固定される。
【0098】
用紙Pは、配置手段100を通過することによって、縁部に接着剤粒子が固定された付与後用紙P1になる。付与後用紙P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
図7に示す冊子の製造システムにおける圧着手段200としては、
図6に示す冊子の製造システムにおける圧着手段200と同様の圧着手段が用いられる。
【0099】
本実施形態に係る冊子の製造システムにおいて、配置手段100と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。配置手段100と圧着手段200とが離隔している場合、配置手段100と圧着手段200とは、例えば、付与後用紙P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0100】
本実施形態に係る冊子の製造システムは、用紙を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、配置手段と圧着手段との間に配置され、付与後用紙の一部を切り落とす裁断手段;用紙群形成装置と加圧装置との間に配置され、用紙群の一部を切り落とす裁断手段;圧着手段の下流に配置され、冊子の一部を切り落とす裁断手段;などである。
また、本実施形態に係る冊子の製造システムは、圧着手段の下流に配置され、冊子を厚み方向に分割する分割手段を備えていてもよい。
【0101】
本実施形態に係る冊子の製造システムは、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る冊子の製造装置は、長尺の用紙に対して配置工程及び圧着工程を行って長尺の冊子を形成した後、長尺の冊子を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0102】
本実施形態に係る冊子の製造システムは、有色の色材を用いて用紙上に有色画像を形成する有色画像形成手段をさらに含んでもよい。有色画像形成手段は、例えば、有色のインクを用いてインクジェット方式により用紙上に有色インク画像を形成する手段、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により用紙上に有色トナー像を形成する手段等が挙げられる。
【0103】
インクジェット方式を用いた有色画像形成手段は、例えば、インクである液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える。インクジェット方式を用いた有色画像形成手段は、液体吐出ヘッドが直接用紙に液体を吐出する直接吐出方式であってもよく、液体吐出ヘッドが中間転写体に液体を吐出し、中間転写体上に吐出された液体を用紙に転写する中間転写方式あってもよい。
【0104】
電子写真方式を用いた有色画像形成手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
有色の静電荷像現像剤を収容し、有色の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有色のトナー画像として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成された有色のトナー画像を用紙の表面に転写する転写手段と、
前記用紙の表面に転写された有色のトナー画像を熱定着する熱定着手段と、を備える。
【0105】
上記構成の製造システムによって、本実施形態に係る冊子の製造方法であって、有色の色材を用いて用紙上に有色画像を形成する有色画像形成工程をさらに含む製造方法が実施される。有色画像形成工程は、具体的には、例えば、有色のインクを用いてインクジェット方式により用紙上に有色インク画像を形成する工程、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により用紙上に有色トナー像を形成する工程等が挙げられる。
【0106】
インクジェット方式を用いた有色画像形成工程は、例えば、インクである液体を吐出する液体吐出工程を含む。インクジェット方式を用いた有色画像形成工程は、液体を直接録媒体に吐出する直接吐出方式であってもよく、液体を中間転写体に吐出し、中間転写体上に吐出された液体を用紙に転写する中間転写方式あってもよい。
【0107】
電子写真方式を用いた有色画像形成工程は、例えば、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
有色の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有色のトナー画像として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成された有色のトナー画像を用紙の表面に転写する転写工程と、
前記用紙の表面に転写された有色のトナー画像を熱定着する熱定着工程と、を含む。
【0108】
本実施形態に係る冊子の製造システムが含む有色画像形成手段は、例えば、有色画像を直接用紙に形成する直接方式の装置;有色画像を中間転写体の表面に形成し、中間転写体の表面に形成された有色画像を用紙の表面に転写する中間転写方式の装置;有色画像が有色のトナー画像である場合において、有色画像の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;有色画像が有色のトナー画像である場合において、有色画像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。電子写真方式の有色画像形成手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面に有色のトナー画像が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成された有色のトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された有色のトナー画像を用紙の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0109】
本実施形態に係る冊子の製造システムにおいて、接着剤粒子の配置手段と有色画像形成手段とが中間転写方式を採用している場合、配置手段と有色画像形成手段とは、中間転写体及び転写手段を共有していてもよい。
【0110】
本実施形態に係る冊子の製造システムにおいて、有色画像形成手段が有色の色材を用紙に接着させる固定装置を有する場合、接着剤粒子の配置手段における固定装置と有色画像形成手段における固定装置とは、1つの固定装置を共有したものであってもよい。
【0111】
<熱可塑性接着剤>
熱可塑性接着剤は、加熱により可塑化する接着剤が適用される。
特に、熱可塑性接着剤は、圧力相転移性接着剤であることが好ましい。圧力相転移性接着剤であると、熱と共に圧力により接着でき、冊子の第一表面側及び第二表面側と厚み方向中心部とで、接着力を確保しつつ、用紙間の接着力が均一になり易くなる。その結果、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難くなる。
【0112】
圧力相転移性接着剤とは、圧力によって相転移する接着剤であり、具体的には下記式1を満たす接着剤を意味する。
式1・・・10℃≦T1-T2
式1において、T1は、圧力1MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度である。温度T1及び温度T2の求め方は後述する。
【0113】
具体的には、熱可塑性接着剤は、ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の樹脂を含み、前記少なくとも2種の樹脂のガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上の圧力相転移性接着剤であることが好ましい。
上記特性を有する圧力相転移性接着剤を適用すると、冊子の第一表面側及び第二表面側と厚み方向中心部とで、接着力を確保しつつ、用紙間の接着力が均一になり易くなる。その結果、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難くなる。
【0114】
上記特性を有する圧力相転移性接着剤は、例えば、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含む接着剤が挙げられる。
【0115】
以下、熱可塑性接着剤の詳細について説明する。なお、以下の説明では、熱可塑性接着剤を含む接着層を形成するための接着剤粒子(以下、「本実施形態に係る接着剤粒子」とも称する)について説明する。接着剤粒子の組成及び特性は、接着剤の組成及び特性と同じである。
【0116】
本実施形態に係る接着剤粒子は、少なくとも母粒子を含み、必要に応じて外添剤を含む。
〔母粒子〕
(結着樹脂)
母粒子は、結着樹脂として、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含むことが好ましい。
以下、「スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂」を「特定スチレン系樹脂」ともいい、「少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」を「特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」ともいう。
【0117】
母粒子は、圧着による接着性を維持する観点から、特定スチレン系樹脂の含有量が特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多いことが好ましい。特定スチレン系樹脂の含有量は、特定スチレン系樹脂と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量に対して、55質量%以上80質量%以下が好ましく、60質量%以上75質量%以下がより好ましく、65質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0118】
-特定スチレン系樹脂-
特定粒子を構成する母粒子は、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含む特定スチレン系樹脂を含有する。
【0119】
特定スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、加圧されていない状態で特定粒子が流動化することを抑制する観点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
特定スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、圧力によって相転移しやすい特定粒子を形成する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
即ち、特定スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、60質量%以上95質量%以下が好ましい。
【0120】
特定スチレン系樹脂の重合成分に含まれるスチレン以外のその他のビニルモノマー(以下、その他のビニルモノマーともいう)としては、例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。
【0121】
その他のビニルモノマーにおけるスチレン系モノマーとしては、例えば、ビニルナフタレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等のアルキル置換スチレン;p-フェニルスチレン等のアリール置換スチレン;p-メトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン;p-クロロスチレン、3,4-ジクロロスチレン、p-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン;m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン等のニトロ置換スチレン;などが挙げられる。
これらのスチレン系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0122】
その他のビニルモノマーにおけるアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル系モノマーが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これらのアクリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0123】
特定スチレン系樹脂の重合成分に含まれるその他のビニルモノマーとしては、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーの他に、例えば、(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン;も挙げられる。
【0124】
特定スチレン系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、加圧されていない状態で特定粒子が流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい特定粒子を形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。
【0125】
特定スチレン系樹脂は重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましく、スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、加圧されていない状態で粒子が流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい接着剤粒子を形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。
【0126】
特定スチレン系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態で接着剤粒子が流動化することを抑制する観点から、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい接着剤粒子を形成する観点から60000以下が好ましく、55000以下がより好ましく、50000以下が更に好ましい。
【0127】
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、GPC装置として東ソー製HLC-8120GPCを用い、カラムとして東ソー製TSKgel SuperHM-M(15cm)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて行う。樹脂の重量平均分子量は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0128】
特定スチレン系樹脂のガラス転移温度は、加圧されていない状態で接着剤粒子が流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によって相転移しやすい接着剤粒子を形成する観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが更に好ましい。
【0129】
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0130】
樹脂のガラス転移温度は、重合成分の種類及び重合割合によって制御される。ガラス転移温度は、主鎖に含まれるメチレン基、エチレン基、オキシエチレン基等の柔軟な単位の密度が高いほど低く、主鎖に含まれる芳香環、シクロヘキサン環等の剛直な単位の密度が高いほど高い傾向がある。また、ガラス転移温度は、側鎖における脂肪族基の密度が高いほど低い傾向がある。
【0131】
母粒子全体に占める特定スチレン系樹脂の質量割合は、加圧されていない状態で接着剤粒子が流動化することを抑制する観点から、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい接着剤粒子を形成する観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0132】
-特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂-
接着剤粒子を構成する母粒子は、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有することが好ましい。
【0133】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、90質量%以上であり、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0134】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0135】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、圧力によって相転移しやすく且つ圧着による接着性に優れる接着剤粒子を形成する観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0136】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比は、圧力によって相転移しやすく且つ圧着による接着性に優れる接着剤粒子を形成する観点から、80:20~20:80であることが好ましく、70:30~30:70であることがより好ましく、60:40~40:60であることが更に好ましい。
【0137】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0138】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差は、圧力によって転移しやすく且つ圧着による接着性に優れる接着剤粒子を形成する観点から、1個以上4個以下であることが好ましく、2個以上4個以下であることがより好ましく、3個又は4個であることが更に好ましい。
【0139】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、圧力によって相転移しやすく且つ圧着による接着性に優れる接着剤粒子を形成する観点から、重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種がアクリル酸n-ブチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとであることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0140】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含んでいてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;スチレン;スチレン以外のスチレン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン;が挙げられる。これらビニルモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0141】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含む場合、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0142】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態で粒子が流動化することを抑制する観点から、10万以上が好ましく、12万以上がより好ましく、15万以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい粒子を形成する観点から、25万以下が好ましく、22万以下がより好ましく、20万以下が更に好ましい。
【0143】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度は、圧力によって相転移しやすい粒子を形成する観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態で粒子が流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0144】
本実施形態において母粒子全体に占める特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の質量割合は、圧力によって相転移しやすい粒子を形成する観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、加圧されていない状態で粒子が流動化することを抑制する観点から、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0145】
本実施形態において母粒子に含まれる特定スチレン系樹脂と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計量は、母粒子全体に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0146】
母粒子は、必要に応じて、例えば、ポリスチレン;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;などを含有していてもよい。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0147】
[その他の成分]
母粒子は、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、着色剤(例えば、顔料、染料)、離型剤(例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス)、帯電制御剤などが挙げられる。
【0148】
母粒子は、画像の視認性を損なわない範囲において、着色剤を含んでいてもよい。
母粒子中の着色剤の含有量は、接着剤粒子の透明性を高める観点からは少ないほど好ましい。具体的には、着色剤の含有量は、母粒子全体に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0149】
なお、母粒子は透明であってもよい。
「透明」であるとは、接着剤粒子が付与された領域の可視領域(400nm以上700nm以下)の光の平均透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であるのが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
上記平均透過率は、分光光度計V700(日本分光(株)製)を用いて測定される。
【0150】
-母粒子の構造-
母粒子の内部構造は海島構造であることが好ましい。
海島構造としては、2以上の結着樹脂のうち、一方を含む海相と、当該海相に分散したもう一方を含む島相と、を有する海島構造が好ましい。圧力によって相転移しやすい観点から、より具体的には、特定スチレン系樹脂を含む海相と、当該海相に分散した特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相と、を有する海島構造が好ましい。海相に含まれる特定スチレン系樹脂及び島相に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の詳細は既述の通りである。なお、海相に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含まない島相が分散していてもよい。
【0151】
母粒子は、単層構造の母粒子であってもよいし、コア部とコア部を被覆するシェル層とを有するコア・シェル構造の母粒子であってもよい。加圧されていない状態で接着剤粒子が流動化することを抑制する観点から、母粒子はコア・シェル構造であることが好ましい。
【0152】
母粒子がコア・シェル構造を有する場合、圧力によって相転移しやすい観点から、コア部が特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有することが好ましい。更に、加圧されていない状態で接着剤粒子が流動化することを抑制する観点から、シェル層が特定スチレン系樹脂を含有することが好ましい。
【0153】
母粒子がコア・シェル構造を有する場合、コア部が特定スチレン系樹脂を含む海相と、海相に分散した特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相と、を有することが好ましい。島相の平均径は、既述の範囲であることが好ましい。更に、コア部が上記構成であることに加えて、シェル層が特定スチレン系樹脂を含有することが好ましい。この場合、コア部の海相とシェル層とが連続した構造となり、圧力によって母粒子が相転移しやすい。
【0154】
シェル層に含まれる樹脂としては、ポリスチレン;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;なども挙げられる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0155】
母粒子の体積平均粒径(D50v)は、母粒子の取り扱いの容易さの観点から、4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上が更に好ましい。また、母粒子の体積平均粒径は、15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。
【0156】
母粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)及びアパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて測定する。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量%水溶液2mLに母粒子を0.5mg以上50mg以下加え分散させ、次いで、電解液(ISOTON-II、ベックマン・コールター社製)100mL以上150mL以下と混合し、超音波分散機で1分間分散処理を行い、得られた分散液を試料とする。試料中の粒径2μm以上60μm以下の粒子50000個の粒径を測定する。小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0157】
〔外添剤〕
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。無機粒子として、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0158】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。疎水化処理剤の量は、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0159】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0160】
外添剤の外添量は、母粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0161】
〔接着剤粒子の特性〕
接着剤粒子(その母粒子)は、ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の樹脂を含むことが好ましい。
接着剤粒子は、ガラス転移温度の異なる3つ以上の樹脂を含んでもよいが、2種の樹脂を含むことが好ましい。
上述のように2種の樹脂は、特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が好ましい。特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂以外のその他の樹脂を含んでもよい。ただし、その他の樹脂の含有量は接着剤粒子(その母粒子)全体に対して5質量%以下が好ましい。
【0162】
少なくとも2種の樹脂のガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上が好ましい。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、圧力によって粒子が相転移しやすい観点から、より好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上である。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、その上限が、例えば、140℃以下であり、130℃以下であり、120℃以下である。
【0163】
最も低いガラス転移温度は、圧力によって粒子が相転移しやすい観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態で粒子が流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0164】
最も高いガラス転移温度は、加圧されていない状態で粒子が流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によって粒子が相転移しやすい観点から、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることが更に好ましい。
【0165】
ガラス転移温度は、接着剤粒子から求めることができる。
接着剤粒子を圧縮して板状の試料を作製し、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0166】
接着剤粒子は、圧力によって相転移する粒子であることが好ましく、下記の式1を満たすことが好ましい。
式1・・・10℃≦T1-T2
式1において、T1は、圧力1MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度である。T1及びT2の求め方は後述する。
【0167】
温度差(T1-T2)は、圧力によって粒子が相転移しやすい観点から、10℃以上であり、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、加圧されていない状態で粒子が流動化することを抑制する観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
【0168】
T1の値は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましく、115℃以下が更に好ましい。温度T1の下限は、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましい。
T2の値は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。温度T2の上限は、85℃以下が好ましい。
【0169】
接着剤粒子が圧力によって相転移しやすいことを示す指標として、圧力1MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度T1と、圧力4MPaにて粘度10000Pa・sを示す温度T3と、の温度差(T1-T3)が挙げられ、温度差(T1-T3)は5℃以上であることが好ましい。温度差(T1-T2)は、一般的に25℃以下である。
接着剤粒子は、圧力によって相転移しやすい観点から、温度差(T1-T2)が5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
なお、温度差(T1-T3)は、上限は、一般的に25℃以下である。
【0170】
接着剤粒子は、温度差(T1-T3)が5℃以上となる観点から、圧力4MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度T3が90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましい。温度T3の下限は、60℃以上が好ましい。
【0171】
温度T1、温度T2及び温度T3を求める方法は、次のとおりである。
接着剤粒子を圧縮してペレット状の試料を作製する。ペレット状の試料をフローテスター(島津製作所製、CFT-500)にセットして、印加圧力を1MPaに固定して、1MPaにおける温度に対する粘度を測定する。得られた粘度のグラフから、印加圧力1MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度T1を決定する。印加圧力1MPaを10MPaとする以外は、温度T1に係る方法と同様にして、温度T2を決定する。印加圧力1MPaを4MPaとする以外は、温度T1に係る方法と同様にして、温度T3を決定する。温度T1と温度T2から温度差(T1-T2)を算出する。温度T1と温度T3から温度差(T1-T3)を算出する。
【0172】
〔接着剤粒子の製造方法〕
接着剤粒子は、母粒子を製造後、母粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0173】
母粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により母粒子を得ることがよい。
【0174】
以下、母粒子を、凝集合一法にて製造する方法を一例として示す。
母粒子を凝集合一法により製造する場合、例えば、
特定スチレン系樹脂を含むスチレン系樹脂粒子が分散したスチレン系樹脂粒子分散液を準備する工程(スチレン系樹脂粒子分散液準備工程)と、
スチレン系樹脂粒子分散液中で特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を重合し、特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する工程(複合樹脂粒子形成工程)と、
複合樹脂粒子が分散した複合樹脂粒子分散液中の複合樹脂粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、
凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、母粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、母粒子を製造する。
【0175】
接着剤粒子は、そのまま塗布して用いてもよく、静電荷像現像剤として使用してもよい。上記静電荷像現像剤は、接着剤粒子のみを含む一成分現像剤であってもよいし、接着剤粒子とキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。
【0176】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。磁性粉分散型キャリア、樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、この表面を樹脂で被覆したキャリアであってもよい。
【0177】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。
【0178】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0179】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂、及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;等が挙げられる。
【0180】
二成分現像剤における接着剤粒子とキャリアとの混合比(質量比)は、粒子:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【実施例0181】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0182】
<スチレン系樹脂粒子を含む分散液の調製>
[スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製]
・スチレン :390部
・アクリル酸n-ブチル:100部
・アクリル酸 : 10部
・ドデカンチオール :7.5部
上記の材料を混合し溶解してモノマー溶液を調製した。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)8部をイオン交換水205部に溶解し、前記モノマー溶液を加えて分散し乳化し、乳化液を得た。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)2.2部をイオン交換水462部に溶解し、攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた重合用フラスコに仕込み、攪拌しながら73℃まで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム3部をイオン交換水21部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して15分間かけて滴下した後、前記乳化液を、定量ポンプを介して160分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを75℃に3時間保持した後、室温(25℃)に戻した。
これにより、スチレン系樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が174nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が49k、ガラス転移温度が54℃、固形分量が42%のスチレン系樹脂粒子分散液(St1)を得た。
【0183】
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)を乾燥してスチレン系樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-100℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が1つ観察された。ガラス転移温度は54℃であった。
【0184】
<複合樹脂粒子を含む分散液の調製>
[複合樹脂粒子分散液(M1)の調製]
・スチレン系樹脂粒子分散液(St1):1190部(固形分500部)
・アクリル酸2-エチルヘキシル : 250部
・アクリル酸n-ブチル : 250部
・イオン交換水 : 982部
上記の材料を重合用フラスコに仕込み、25℃で1時間攪拌した後、70℃に加熱した。
過硫酸アンモニウム2.5部をイオン交換水75部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して60分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを70℃に3時間保持した後、室温(室温)に戻した。
これにより、複合樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が219nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が219k、固形分量が32%の複合樹脂粒子分散液(M1)を得た。
【0185】
複合樹脂粒子分散液(M1)を乾燥して複合樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。2つのガラス転移温度は、-52℃、54℃であった。
なお、複合樹脂粒子におけるスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂との質量比は50:50である。
【0186】
<接着剤粒子の調製>
[接着剤粒子(1)及び現像剤(1)の調製]
・複合樹脂粒子分散液(M1) :504部
・イオン交換水 :710部
・アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1): 1部
【0187】
温度計及びpH計を備えた反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0%硝酸水溶液を添加してpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて回転数5000rpmで分散しながら、2.0%硫酸アルミニウム水溶液を23部添加した。次いで、反応容器に攪拌機及びマントルヒーターを設置し、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径50μm、ベックマン-コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を保持し、スチレン系樹脂粒子分散液(St1)170部を5分間かけて投入した。投入終了後、50℃に30分間保持した後、1.0%水酸化ナトリウム水溶液を加え、スラリーのpHを6.0に調整した。次いで、5℃ごとにpHを6.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。光学顕微鏡と電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、10時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水で容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
【0188】
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粒子を除去し、メッシュを通過したスラリーをアスピレータで減圧濾過した。濾紙上に残った固形分を手によりできるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間攪拌した。次いで、アスピレータで減圧濾過し、濾紙上に残った固形分を手でできるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間攪拌した後、再度アスピレータで減圧濾過し、濾液の電気伝導度を測定した。濾液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、固形分を洗浄した。
【0189】
洗浄された固形分を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕き、25℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、母粒子(1)を得た。母粒子(1)は、体積平均粒径が8.0μmであった。
【0190】
母粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製、RY50)1.5部とを混合し、サンプルミルを用いて回転速度13000rpmで30秒間混合した。目開き45μmの振動篩で篩分して、接着剤粒子(1)を得た。
【0191】
接着剤粒子(1)を試料にして、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。2つのガラス転移温度は、-52℃、54℃であった。
【0192】
接着剤粒子(1)の温度T1、温度T2及び温度T3を先述の測定方法によって求めたところ、接着剤粒子(1)は式1「10℃≦T1-T2」を満足し、温度T3が75℃であり、温度差(T1-T3)は15℃であった。
【0193】
接着剤粒子(1)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、海島構造が観察された。接着剤粒子(1)は、島相が存在するコア部と、島相が存在しないシェル層とを有していた。海相はスチレン系樹脂を含み、島相は(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含んでいた。
【0194】
接着剤粒子(1)10部と下記の樹脂被覆キャリア100部とをV型ブレンダーに入れ20分間攪拌し、次いで、目開き212μmの振動篩で篩分して現像剤(1)を得た。
【0195】
・Mn-Mg-Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm):100部
・トルエン : 14部
・ポリメタクリル酸メチル : 2部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製) :0.12部
フェライト粒子を除く上記材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを混合し、関西ペイント社製サンドミルを用いて回転速度1200rpmで30分間攪拌し、分散液を得た。この分散液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることにより、樹脂被覆キャリアを得た。
【0196】
<実施例1~22、比較例1~2:無線綴じ冊子の作製>
電子写真方式の画像形成装置(富士フイルムビジネスイノベーション株式会社製「PC1120」)の現像器に、接着剤粒子(1)を含む現像剤(1)を収容した。
用紙として、表1に示す坪量のA4紙を準備した。
【0197】
画像形成装置により、用紙の短辺側の端部における、縁から3mmの領域(つまり接着層形成領域)に、粒子載り量0.72g/m2の接着剤粒子による斜線パターンを形成し、ベルトロール型固定機を通過させて固定(つまり定着)した。接着剤粒子の固定条件(つまり定着条件)は、加熱温度200℃、とした。そして、斜線パターンの線幅を変更し、接着剤の単位面積当たりの量を変えた、複数の用紙を得た。得られた用紙は接着層が天辺にくるように縦5cm×横9cmに断裁することで冊子用の用紙を得た。このとき接着層の領域は縦3mm×横9cmとなる。
【0198】
次に、表1に示す下記条件で、各用紙間に接着層が介在するように重ね合わせるように、複数の用紙を丁合して、用紙群を得た。
・単位面積(mm2)あたりの第一表面側及び第二表面側の接着剤の量(表1中「第一及び第二表面側接着剤量」と表記)
・用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における接着剤の量に対する用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、用紙群(つまり冊子)の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における接着剤の量の割合(表1中「第一及び第二表面側に対する厚み方向中心部の接着剤量の割合」と表記)
・用紙群(つまり冊子)の第一表面側及び第二表面側から、各々、用紙群(つまり冊子)の厚み方向中心部に向かって、接着層における接着剤の量が変化する用紙5枚あたりの変化量(表1中「接着剤量の変化量」と表記)
・丁合いする用紙の枚数(表1中「用紙群の用紙枚数」と表記」)
【0199】
次に、富士インパルス製「厚物ガゼット用シーラーT130」により、用紙群(その接着層)に、表1に示す圧力及び温度の条件で2秒間圧着を実施し、冊子を作製した。
【0200】
なお、実施例22では、接着剤粒子による斜線パターンに代えて接着剤粒子による丸点パターンを形成し、丸点パターンの直径を変更し、接着剤の単位面積当たりの量を変えた、複数の用紙を得た。そして、得られた複数の用紙を利用して、冊子を作製した。
【0201】
<評価>
各例の冊子に対して、次の評価を実施した。
【0202】
(用紙の接着力)
冊子の第一表面から、厚み方向中心部に位置する用紙が表面となるまで、用紙を
剥離して取り除いた。次に、厚み方向中心部に位置する用紙の端部(接着層が設けられていない側の端部)を冊子全体が空中に浮くまで持ち上げ、用紙の接着力を下記基準で評価した。
A:5秒保持後5回振っても剥離しない
B:5秒間接着が保持される
C:2秒間接着が保持される
D;用紙の端部を持ち上げると剥離して落下する。
【0203】
(用紙の剥離不良)
冊子の第一表面から、一枚目の用紙の端部(接着層が設けられていない側の端部)を持ち、500mm/minの速度で用紙を剥離した。剥離後の接着箇所を確認し、用紙の破損がないかを、下記基準で評価した。
A:剥離した用紙に破れだけでなく毛羽立ちも見られない
B:剥離した用紙に破れがない
C:剥離した用紙表面にわずかな破れが見られる
D:剥離した用紙表面に破れや破損が見られる。
【0204】
【0205】
上記結果から、本実施例の冊子は、比較例の冊子に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難いことがわかる。
【0206】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
複数の用紙が重ねられた用紙群と、
前記用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、前記各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、
を有し、
前記複数の接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって変化している無線綴じ冊子。
(((2)))
各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、前記冊子の厚み方向中心部で前記用紙間に介在する前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、前記冊子の第一表面側及び第二表面側で前記用紙間に介在する前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量の1.2倍以上4.0倍以下である(((1)))に記載の無線綴じ冊子。
(((3)))
前記冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、前記冊子の厚み方向中心部に向かって、前記接着層における前記熱可塑性接着剤の量が変化する、用紙5枚ごとの用紙1枚の接着剤量差が0.18g/m2以上である(((1)))又は(((2)))に記載の無線綴じ冊子。
(((4)))
前記接着層が、前記熱可塑性接着剤の、線状パターン、点状パターン、又は、前記線状パターン及び前記点状パターンの組み合わせで構成されている(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子。
(((5)))
前記熱可塑性接着剤の、線状パターンの線幅、及び点状パターンの直径の少なくとも一方の変化により、前記複数の接着層における前記熱可塑性接着剤の量が、前記冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、前記冊子の厚み方向中心部に向かって変化している(((4)))に記載の無線綴じ冊子。
(((6)))
前記熱可塑性接着剤が、ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の樹脂を含み、前記少なくとも2種の樹脂のガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上の圧力相転移性接着剤である(((1)))~(((5)))のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子。
(((7)))
前記用紙群が、前記複数の用紙として、10枚以上100枚以下の用紙が重ねられた用紙群である(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子。
(((8)))
前記用紙の坪量が200gsm以下である(((1)))~(((7)))のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子。
(((9)))
前記複数の用紙の端部に、前記熱可塑性接着剤の粒子を付与する付与工程と、
前記熱可塑性接着剤の粒子を前記用紙に固定する固定工程と、
前記熱可塑性接着剤を含む接着層を有する前記複数の用紙を、前記各用紙間に前記接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を得た後、圧力及び熱を接着層に付与して、前記各用紙を前記接着層で圧着する圧着工程と、
を有する(((1)))~(((8)))のいずれか1項に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
(((10)))
前記付与工程は、電子写真方式により、前記熱可塑性接着剤の粒子を前記複数の用紙の端部に付与する工程である(((9)))に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
(((11)))
前記圧着工程は、用紙群の第一表面側及び第二表面側から、0.01Mpa以上1Mpa以下の圧力、90℃以上220℃以下の熱を前記接着層に付与して、前記各用紙を前記接着層で圧着する工程である(((9)))又は(((10)))に記載の無線綴じ冊子の製造方法。
【0207】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))、(((4)))、又は(((5)))に係る発明によれば、複数の用紙が重ねられた用紙群と、用紙群の各用紙の端部に、かつ各用紙間に介在して設けられ、各用紙を剥離可能に接着する複数の接着層であって、熱可塑性接着剤を含む複数の接着層と、を有する無線綴じ冊子であって、複数の接着層における熱可塑性接着剤の量が、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって同じである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
【0208】
(((2)))に係る発明によれば、各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、冊子の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量が、各々、冊子の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量の1.2倍未満又は4.0倍超えである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、冊子の第一表面側及び第二表面側から、各々、冊子の厚み方向中心部に向かって、接着層における熱可塑性接着剤の量が変化する、用紙5枚ごとの用紙1枚の接着剤量差が0.18g/m2未満である場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
【0209】
(((6)))に係る発明によれば、熱可塑性接着剤が、1種の樹脂を含む接着剤である場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、用紙群が、複数の用紙として、100枚超えの用紙が重ねられた用紙群である場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、用紙の坪量が200gsm超えである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子が提供される。
【0210】
(((9)))、(((10)))又は(((11)))に係る発明によれば、複数の用紙の端部に、前熱可塑性接着剤を付与し、熱可塑性接着剤を含む接着層を形成する付与工程と、熱可塑性接着剤を含む接着層が形成された複数の用紙を、各用紙間に接着層が介在するように重ね合わせて用紙群を得た後、圧力及び熱を接着層に付与して、各用紙を接着層で接着する固定工程と、を有する無線綴じ冊子の製造方法であって、各用紙間に介在して設けられ複数の接着層のうち、冊子の第一表面側及び第二表面側で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量が、各々、冊子の厚み方向中心部で用紙間に介在する接着層における熱可塑性接着剤の量の1.2倍未満又は4.0倍超えである場合に比べ、各用紙間の接着性が高く、かつ用紙を剥離したとき剥離不良(破れ又は破損)が生じ難い無線綴じ冊子の製造方法が提供される。