(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141017
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】セルロース粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20241003BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEP
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052437
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】大木 正啓
(72)【発明者】
【氏名】的場 聖太
(72)【発明者】
【氏名】八百 健二
(72)【発明者】
【氏名】田口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】濱野 弘一
【テーマコード(参考)】
4C083
4F070
【Fターム(参考)】
4C083AD261
4C083AD262
4C083BB24
4C083BB25
4C083CC01
4C083EE09
4C083FF01
4F070AA02
4F070AB03
4F070AC40
4F070AC42
4F070AC45
4F070AC72
4F070AC83
4F070DA31
4F070DC02
4F070DC05
4F070DC07
4F070DC16
(57)【要約】
【課題】生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子を提供すること。
【解決手段】セルロースを主成分とする母粒子と、前記母粒子の表面上に有する、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩を含む第一被覆層と、前記第一被覆層上に有する、脂肪酸、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物、及びアミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物を含む第二被覆層と、を有するセルロース粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースを主成分とする母粒子と、
前記母粒子の表面上に有する、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩を含む第一被覆層と、
前記第一被覆層上に有する、脂肪酸、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物、及びアミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物を含む第二被覆層と、
を有するセルロース粒子。
【請求項2】
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が、多糖類の多価金属塩である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項3】
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項4】
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、前記樹脂に対する多価金属の比率が、モル比で1/4以上4/1以下である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項5】
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、前記樹脂に対する多価金属する多価金属の比率が、モル比で1/3以上3/1以下である請求項4に記載のセルロース粒子。
【請求項6】
前記疎水性化合物が、前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項7】
前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である請求項6に記載のセルロース粒子。
【請求項8】
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が、多糖類の多価金属塩であり、
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種であり、
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属の比率が、モル比で1/3以上3/1以下である請求項1に記載のセルロース粒子。
【請求項9】
前記疎水性化合物が、前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である請求項8に記載のセルロース粒子。
【請求項10】
前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である請求項9に記載のセルロース粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「セルロースを主成分とする樹脂で形成されたコアビーズを固体の表面処理剤で表面処理して得られる、体積基準の累積50%粒子径が、50μm以下であり、真球度が、0.7~1.0であり、表面平滑度が、70~100%であり、結晶化度が、60%以下である樹脂ビーズ。」が開示されている。
【0003】
特許文献2には、「セルロース粒子の表面が、特定の化学式で示される表面処理セルロース。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6921293号
【特許文献2】特許6212424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、セルロースを主成分とする母粒子を有するセルロース粒子において、母粒子の表面上に有する、中性多糖類のみを含む第一被覆層と、第一被覆層上に有する、疎水性化合物を含む第二被覆層と、を有するセルロース粒子に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1>
セルロースを主成分とする母粒子と、
前記母粒子の表面上に有する、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩を含む第一被覆層と、
前記第一被覆層上に有する、脂肪酸、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物、及びアミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物を含む第二被覆層と、
を有するセルロース粒子。
<2>
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が、多糖類の多価金属塩である<1>に記載のセルロース粒子。
<3>
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である<1>又は<2>に記載のセルロース粒子。
<4>
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、前記樹脂に対する多価金属多価金属の比率が、モル比で1/4以上4/1以下である<1>~<3>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<5>
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、前記樹脂に対する多価金属多価金属の比率が、モル比で1/3以上3/1以下である<4>に記載のセルロース粒子。
<6>
前記疎水性化合物が、前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である<1>~<5>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<7>
前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である<6>に記載のセルロース粒子。
<8>
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が、多糖類の多価金属塩であり、
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種であり、
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属の比率が、モル比で1/3以上3/1以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
<9>
前記疎水性化合物が、前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である<8>に記載のセルロース粒子。
<10>
前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である<9>に記載のセルロース粒子。
【発明の効果】
【0007】
<1>に係る発明によれば、セルロースを主成分とする母粒子を有するセルロース粒子において、母粒子の表面上に有する、中性多糖類のみを含む第一被覆層と、第一被覆層上に有する、疎水性化合物を含む第二被覆層と、を有するセルロース粒子に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
<2>に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が合成樹脂の多価金属塩である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
<3>に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属がCa、及びAl以外の多価金属である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
【0008】
<4>に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属する、多価金属の比率が、モル比で1/4未満又は4/1超えである場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
<5>に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属多価金属の比率が、モル比で1/3未満又は3/1超えである場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
【0009】
<6>に係る発明によれば、疎水性化合物が、脂肪酸、及びアミノ酸化合物から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
<7>に係る発明によれば、脂肪酸の多価金属塩、及びアミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属がCa、及びAl以外の多価金属である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
【0010】
<8>に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が合成樹脂の多価金属塩である場合、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属がCa、及びAl以外の多価金属である場合、又は、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属の比率が、モル比で1/4未満若しくは4/1超えである場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
<9>に係る発明によれば、疎水性化合物が、脂肪酸、及びアミノ酸化合物から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
<10>に係る発明によれば、脂肪酸の多価金属塩、及びアミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属がCa、及びAl以外の多価金属である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
各成分の量について言及する場合、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、当該複数種の物質の合計量を意味する。
「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0014】
<セルロース粒子>
本実施形態に係るセルロース粒子は、
セルロースを主成分とする母粒子(以下「セルロース母粒子」とも称する)と、
母粒子の表面上に有する、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩を含む第一被覆層と、
第一被覆層上に有する、脂肪酸、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物、及びアミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物を含む第二被覆層と、
を有する
【0015】
本実施形態に係るセルロース粒子は、上記構成により、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持される。つまり、本実施形態に係るセルロース粒子は、高温温水に対して撥水性及びしっとり感の維持性に優れる。その理由は、次の通り推測される。
【0016】
セルロース粒子は、高い生分解性と丈夫さゆえに、種々の分野で樹脂粒子の代替として期待されている。しかし、セルロース粒子は、その剛直な分子構造と強固な分子内外水素結合力からに硬いことから、用途が限られている。
【0017】
この点、例えば、カルボキシル基を二つ有する二塩基酸から誘導される基、又は金属石鹸、等で、セルロースを主成分とする母粒子の表面処理を施し、セルロース粒子の触感を向上させる技術が知られている(例えば特許文献1~2等)。
【0018】
しかし、上記技術では、表面処理層の付着強度が低いため、セルロース粒子の耐水性が低く、またセルロース粒子を水中で保管すると耐水性が低下する。
セルロース粒子を水中保管した場合、耐水性が低下する原因として、母粒子と表面処理層の間に水が入り込み、表面処理層が剥がれて、セルロースを主成分とする母粒子の表面が露出し、水に濡れるためと考えている。
【0019】
それに対して、本実施形態に係るセルロース粒子では、生分解性が速いセルロースを主成分とする母粒子に、脂肪酸、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物、及びアミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物を含む第二被覆層を設けることで、耐水性を向上させる。
そして、母粒子と第二被覆層との間に、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩を含む第一被覆層を介在させる。酸官能基を有する樹脂の多価金属塩は、物理的架橋構造を形成するため、第一被覆層に耐水性を付与し、母粒子と第二被覆層との間に水が入り込み難くなる。
【0020】
以上から、本実施形態に係るセルロース粒子は、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されると推測される。
【0021】
ここで、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が、物理的架橋構造を形成するか否かは、次の方法により確認する。
対象物質の0.2質量%水溶液を作製する。水溶液のpHが6.5以下の場合には、水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH7.0以上8.5以下に調整する。水溶液が流動が困難な場合は、水溶液を希釈するか又は加温して流動させる。
水溶液の対象物質量に対し、15%質量分のカリミョウバンとなるように1質量%カリミョウバン水溶液で添加し混合する。30分室温(25℃)で静置後、濁りの発生、粘度増加、ゲル化のいずれかが生じた場合、物理架橋構造を形成したと判断する。
【0022】
以下、本実施形態に係るセルロース粒子について、詳細に説明する。
【0023】
(母粒子)
母粒子は、第一被覆層及び第二被覆層が形成される対象の粒子であり、セルロースを主成分として含む。
ここで、セルロースを主成分とするとは、母粒子に対するセルロースの含有量が90質量%以上(好ましくは、95質量%以上、98質量%以上、又は100質量%)であることをいう。
【0024】
セルロースの数平均分子量は、37000以上であることが好ましく、45000以上であることがより好ましい。
セルロースの数平均分子量の上限値は、特に限定されないが、例えば100000以下であってもよい。
【0025】
セルロースの数平均分子量を、37000以上とすることで、生分解性及びしっとり感が高くなる。その理由は次の通り推測される。
数平均分子量が37000以上とすると、末端水酸基の増加が抑えられ、単位体積あたりの水酸基の数が少なくなり、分子内外水素結合の数や結合強度が低くなる。その結果、セルロース粒子の柔軟性が高まり、しっとり感が向上し易くなる。
【0026】
セルロースの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(示差屈折率計 Optilab T-rEX/ Wyatt Technology社製、多角度光散乱検出器
DAWN HELEOS II/ Wyatt Technology社製、カラム TSKgel α-M、α-3000各1本/東ソー社製)にて、ジメチルアセトアミド(0.1M 塩化リチウム添加)を溶媒として測定される。
【0027】
-その他の成分-
母粒子には、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、酢酸放出を防ぐための受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、母粒子全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0028】
(第一被覆層)
第一被覆層は、セルロース母粒子と第二被覆層との間に介在する中間層である。
第一被覆層は、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩を含む。
【0029】
酸官能基を有する樹脂の酸官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基等が挙げられる。これらの中でも、耐水性向上及び耐水維持性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0030】
酸官能基を有する樹脂としては、酸官能基を有するセルロースアシレート、酸官能基を有する多糖類、酸官能基を有する合成樹脂等が挙げられる。
セルロースアシレートとしては、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース等)が挙げられる。
多糖類としては、硫酸又はリン酸を有する多糖類、ウロン酸(例えば、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸)を有する多糖類、又は、これら酸の両方の構造を持つ多糖類等が挙げられる。具体的には、多糖類としては、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム(DAG)、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、ザンタンガム、ヘキスロン酸、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ラムナン硫酸、アルギン酸が挙げられる。
合成樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキル(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー等)との共重合樹脂等が挙げられる。
【0031】
酸官能基を有する樹脂を多価金属塩の多価金属としては、アルカリ土類金属(Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)、Mg(マグネシウム))、Al(アルミニウム)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)等が挙げられる。
【0032】
酸官能基を有する樹脂を多価金属塩としては、耐水性向上及び耐水性の維持性向上の観点から、多糖類の多価金属塩が好ましく、多糖類の、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種の塩がより好ましい。これらの多糖類の多価金属塩は、耐水性の高い物理的架橋構造を形成すると考えられるためである。
【0033】
酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属多価金属の比率は、耐水性向上及び耐水性の維持性向上の観点から、モル比で1/4以上4/1以下が好ましく、1/3以上3/1以下がより好ましい。
【0034】
母粒子に対する第一被覆層の被覆量は、耐水性向上及び耐水性の維持性向上の観点から、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
ここで、第一被覆層全体に対する、樹脂の多価金属塩は90質量%以上100質量%以下が好ましく、95質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0035】
(第二被覆層)
第二被覆層は、第一被覆層上に設けられ、セルロース粒子の最外層を構成する層である。
第二被覆層は、脂肪酸、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物、及びアミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物を含む。
【0036】
-脂肪酸及び脂肪酸-
脂肪酸は、直鎖状若しくは分岐状の飽和又は不飽和の脂肪酸である。脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の混合物であってもよい。
脂肪酸としては、耐水性向上及び耐水性の維持性向上の観点から、炭素数16以上22以下(好ましくは炭素数18以上20以下)の脂肪酸であることが好ましい。炭素数16以上22以下の直鎖脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸、ベヘン酸、アラキジン酸、パルチミン酸などが挙げられる。
【0037】
脂肪酸の多価金属塩としては、上記例示した脂肪酸の多価金属塩が挙げられる。
脂肪酸の多価金属塩における多価金属としては、例えば、アルカリ土類金属(Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)、Mg(マグネシウム))、Al(アルミニウム)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)等が挙げられる。
【0038】
ここで、脂肪酸及び脂肪酸の多価金属塩において、脂肪酸の炭素数16以上であると、脂肪酸基が短く、スポンジ効果が十分となる。そのため、柔軟性が高まる。一方、脂肪酸の炭素数が22以下であると、脂肪酸基の反発が低減され、第二被覆層が剥離し難くなる。
【0039】
-アミノ酸化合物及びアミノ酸化合物の多価金属塩-
アミノ酸化合物とは、アミノ酸及びアミノ酸誘導体をいう。
アミノ酸化合物としては、ミリストイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸、ステアロイルグルタミン酸、ラウロイルアスパラギン酸、ジラウロイルグルタミン酸リシン、ラウロイルリシン、ラウリルアルギニン、ミリスチルロイシン等が挙げられる。
【0040】
アミノ酸化合物の多価金属塩としては、上記例示したアミノ酸化合物の多価金属塩が挙げられる。
アミノ酸化合物の多価金属塩における多価金属としては、アルカリ土類金属(Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)、Mg(マグネシウム))、Al(アルミニウム)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)等が挙げられる。
【0041】
疎水性化合物としては、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物の多価金属塩が好ましく、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物の、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種の塩がより好ましい。これらの多糖類の多価金属塩は、耐水性の高い物理的架橋構造を形成し、第二被覆層自体の耐水性が向上すると考えられるためである。
【0042】
母粒子に対する第二被覆層の被覆量は、耐水性向上及び耐水性の維持性向上の観点から、1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
ここで、第二被被覆層全体に対する、疎水性化合物類の含有量は90質量%以上100質量%以下が好ましく、95質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0043】
ここで、第二被覆層の被覆量に対する第一被覆層の被覆量の割合は、耐水性向上及び耐水性の維持性向上の観点から、0.01以上10以下が好ましく、0.01以上4以下がより好ましく、0.05以上2.5以下がさらに好ましい。
【0044】
(外添剤)
本実施形態に係るセルロース粒子は、外添剤が外添されていてもよい。
外添剤が外添されていると、粒子同士の2次凝集が抑制されることで、粒子本来の特性を発揮しやすくなる。そのため、耐水性、耐水性の維持が向上し易くなる。また、生分解性の低下も抑制される。
外添剤としては。珪素含有化合物粒子、金属石鹸粒子、脂肪酸エステル粒子、金属酸化物粒子等が挙げられる。
【0045】
珪素含有化合物粒子とは、珪素を含有する粒子を示す。
珪素含有化合物粒子としては、珪素のみを含む粒子であってもよく、珪素及び、その他の元素を含む粒子であってもよい。
【0046】
珪素含有化合物粒子としては、シリカ粒子であることが好ましい。
シリカ粒子は、シリカ、即ちSiO2を主成分とする粒子であればよく、結晶性でも非晶性でもよい。また、シリカ粒子は、水ガラス、アルコキシシラン等のケイ素化合物を原料に製造された粒子であってもよいし、石英を粉砕して得られる粒子であってもよい。
【0047】
金属石鹸粒子とは、金属石鹸を主成分とする粒子である。
ここで、金属石鹸を主成分とする粒子とは、粒子に対する金属石鹸の含有量が90質量%以上である粒子をいう。
【0048】
金属石鹸とは、脂肪酸と金属とが結合した脂肪酸金属塩である。
脂肪酸金属塩としては、炭素数10以上25以下(好ましくは、12以上22以下)の脂肪酸の金属塩が挙げられる。炭素数10以上25以下の脂肪酸の金属塩としては、例えば、ステアリン酸の金属塩、パルミチン酸の金属塩、ラウリン酸の金属塩、オレイン酸の金属塩、リノール酸の金属塩、リシノール酸の金属塩などが挙げられる。
脂肪酸金属塩における金属としては、2価の金属が挙げられる。
脂肪酸金属塩における金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛が挙げられる。
【0049】
脂肪酸エステル粒子とは、脂肪酸エステル粒子を主成分とする粒子である。
ここで、脂肪酸エステル粒子を主成分とする粒子とは、粒子に対する脂肪酸エステル粒子の含有量が90質量%以上である粒子をいう。
【0050】
脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数が10以上25以下である飽和脂肪酸と、炭素数が10以上25以下であるアルコールと、のエステル化物が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、パルチミン酸ステアリルなどが挙げられる。
【0051】
金属酸化物粒子とは、金属酸化物を主成分とする粒子である。
ここで、金属酸化物を主成分とする粒子とは、粒子に対する金属酸化物の含有量が90質量%以上である粒子をいう。
【0052】
金属酸化物としては、ケイ素以外の金属の酸化物が適用可能である。
金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、などが挙げられる。
【0053】
外添剤の体積平均粒径は、質感(具体的には、しっとり感)の観点から、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上30nm以下がより好ましい。
外添剤の体積平均粒径は、セルロース粒子の体積平均粒径と同様な方法で測定される。
【0054】
外添剤の外添量は、セルロース粒子(外添剤を外添していない状態のセルロース粒子)全体の質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0055】
(体積平均粒子径)
本実施形態に係るセルロース粒子の体積平均粒子径は、3μm以上10μm以下であることが好ましく、4μm以上9μm以下であることより好ましく、5μm以上8μm以下であること更に好ましい。
本実施形態に係るセルロース粒子の体積平均粒子径を、3μm以上10μm以下とすることで、粒径が適度な大きさとなり、耐水性及び耐水性の維持性が向上する。また、柔軟性が高まり、しっとり感が向上する。
【0056】
セルロース粒子の体積平均粒径は、次の通り測定される。
LS粒度分布測定装置「Beckman Coulter LS13 320(ベックマンコールター社製)」により粒径を測定し、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を、体積平均粒径として求める。
【0057】
<セルロース粒子の製造方法>
本実施形態に係るセルロース粒子の製造方法は、例えば、次の通りである。
【0058】
-セルロース粒子(母粒子)製造工程-
(1)まず、セルロースアシレートを、水溶性有機溶剤Aに溶解して、セルロースアシレート溶液Aを調製する。
(2)次に、セルロースアシレート溶液Aを、炭酸カルシウムを水に分散させた炭酸カルシウム分散液中に加えて、攪拌し、セルロースアシレート溶液Bを調整する。
(3)次に、カルボキシメチルセルロースと水溶性有機溶剤Bと水との混合溶液に、セルロースアシレート溶液Bに加え、高速攪拌して、セルロースアシレート溶液Cを調整する。
(4)次に、セルロースアシレート溶液Cに、水酸化ナトリウムを加えた後。セルロースアシレート分散液Cを加熱して、水溶性有機溶剤A及びBを除去し、塩酸を添加して、セルロースアシレート粒子形成する。そして、セルロースアシレート粒子をろ過して、濾別されたセルロースアシレート粒子を水中に分散して、セルロースアシレート粒子分散液を調製する。
(5)次に、セルロースアシレート粒子分散液に水酸化ナトリウムを加えた後、セルロースアシレート粒子分散液を弱アルカリ環境下で加温して、攪拌し、セルロースアシレート粒子を鹸化してセルロース粒子懸濁液を調製する。
(6)次に、セルロース粒子懸濁液に塩酸を加え、懸濁液のpHを中性付近(例えば6.5以上7以下の範囲)にした後、セルロース粒子の濾別及び純水洗浄を繰り返す。そして、濾液の電導度が10μs/cm以下に達した後、濾別したセルロース粒子(母粒子)を乾燥する。
【0059】
ここで、セルロースアシレートとは、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一つが脂肪族アシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。具体的には、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一つが、-CO-RAC(RACは、脂肪族炭化水素基を表す。)により置換されたセルロース誘導体である。
水溶性有機溶剤Aは、25℃で、溶剤に対する水が0.1質量%以上10質量%溶解する溶剤であり、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
水溶性有機溶剤Bは、25℃で、溶剤に対する水が0.1質量%以上10質量%溶解する溶剤であり、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
【0060】
-被覆層形成工程-
まず、スラリー化された母粒子に、酸官能基を有する樹脂を添加する。このスラリーがpH6.5以下の場合、このスラリーにアルカリ水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を加えて、pH7.0以上pH8.0となるように中和する。その後、このスラリーに、多価金属塩(塩化カルシウム、塩化マグネシウム等、塩化アルミニウムの塩化物;カリミョウバン等の硫酸塩;など)を添加し、撹拌する。それにより、母粒子表面に、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が架橋して吸着し、樹脂の多価金属塩による第一被覆層が形成される。
【0061】
次に、第一被覆層が形成された母粒子のスラリーを加熱した後、別途、非金属塩又は金属塩の疎水性化合物を含む水溶液を添加する。疎水性化合物が脂肪酸、アミノ酸化合物の場合、水酸化ナトリウム溶液を加えて、中和する。
次に、このスラリーに、多価金属の塩化物、塩酸水溶液を加えて、疎水性化合物を析出させる。それにより、第一被覆層上に、疎水性化合物による第二被覆層を形成する。
ここで、多価金属の塩化物を適用した場合、疎水性化合物の多価金属塩(つまり脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物の多価金属塩)が析出する。一方、塩酸水溶液を適用した場合、非金属塩の疎水性化合物(つまり脂肪酸、アミノ酸化合物)が析出する。
【0062】
次に、水溶液から、被覆層を有するセルロース粒子を取り出す。被覆層を有するセルロース粒子の取り出しは、例えば、水溶液を濾過することにより実施する。取り出した被覆層を有するセルロース粒子は、水により洗浄することがよい。それにより、未被覆の被覆層形成材料を除去できる。そして、被覆層を有するセルロース粒子を乾燥させることで本実施形態に係るセルロース粒子が得られる。
【0063】
-外添工程-
得られたセルロース粒子に対して外添剤を添加してもよい。
外添工程としては、例えば、混合ミル、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等を用いてセルロース粒子に外添剤を添加する処理が挙げられる。
【0064】
<用途>
本実施形態に係るセルロース粒子の用途としては、化粧品、ローリング剤、研磨剤、スクラブ剤、ディスプレイスペーサー、ビーズ成形用材料、光拡散粒子、樹脂強化剤、屈折率制御剤、生分解促進剤、肥料、吸水性粒子、トナー粒子、アンチブロッキング粒子の粒
状体が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係るセルロース粒子の用途としては、化粧品が好ましい。
中でも、本実施形態に係るセルロース粒子の用途としては、化粧品添加剤が好ましい。
本実施形態に係るセルロース粒子は柔軟性に優れるため、化粧品添加剤として用いた場合、当該化粧品を肌に塗布した場合における、肌への化粧品の伸びが良好となりやすい。
【0066】
本実施形態に係るセルロース粒子は、例えば、ベースメイク用化粧品(例えば、化粧下地、コンシーラー、ファンデーション、フェイスパウダー等);メイクアップ用化粧品(例えば、口紅、グロス、リップライナー、チーク、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、ネイル、ネイルケア用化粧品等);スキンケア用化粧品(例えば、洗顔料、クレンジング、化粧水、乳液、美容液、パック、フェイスマスク、目元口元ケア用化粧品等);等の化粧品添加剤として適用可能である。
とくに、メイクアップ用化粧品の化粧品添加剤は、柔軟性、及び生分解性が要求される観点から、本実施形態に係る樹脂粒子はメイクアップ用化粧品の化粧品添加剤として用いられることが好ましい。
【実施例0067】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0068】
<各材料の準備>
次の材料を準備した。
【0069】
(第一被覆層の被覆材)
・FT-1:カルボキシメチルセルロース(酸官能基を有するセルロースアシレート)、日本製紙(株)「サンローズ MAC500LC」
・FT-2:カルボキシメチルセルロース(酸官能基を有するセルロースアシレート)、(株)ダイセル「ダイセル2200」
・FT-3:カルボキシメチルセルロース(酸官能基を有するセルロースアシレート)、(株)ダイセル「ダイセル1160」
・FT-4:ポリアクリル酸(酸官能基を有する合成樹脂)、東亜合成(株)「ジュリマーAC-10SH」
・FT-5:ポリアクリル酸(酸官能基を有する合成樹脂)、東亜合成(株)「ジュリマーAC-10H
・FT-6:キサンタンガム(酸官能基を有する多糖類)、住友ファーマフード&ケミカル(株)「ラボールガムGS-C」
・FT-7:ジェランガム(酸官能基を有する多糖類)、住友ファーマフード&ケミカル(株)「ケルコゲル」
・FT-8:アルギン酸(酸官能基を有する多糖類)、(株)キミカ「キミカアルギン I-3」
・FT-9:アルギン酸(酸官能基を有する多糖類)、東京化成工業(株)「アルギン酸」
・FT-10:カラギーナン(酸官能基を有する多糖類)、住友ファーマフード&ケミカル(株)「シーピーガムFA」
・FT-11:カラギーナン(酸官能基を有する多糖類)、富士フイルム和光純薬(株)「κカラギーナン」
・FT-12:タマリンドガム(中性多糖類)、住友ファーマフード&ケミカル(株)「グリロイド6C」
・FT-13:デキストリン(中性多糖類)、サンエー糖化(株)「NSD300A」
【0070】
(第二被覆層の被覆材)
・ST-1:ベヘン酸(脂肪酸)、日油(株)「NAA-222S」
・ST-2:ステアリン酸(脂肪酸)、日油(株)「NAA-180」
・ST-3:パルミチン酸(脂肪酸)、ミヨシ油脂(株)「パルミチン酸98」
・ST-4:ラウロイルリシン(アミノ酸化合物)、味の素(株)「アミホープLL」
・ST-5:ミリストイルグルタミン酸ナトリウム塩(アミノ酸化合物のナトリウム塩)、旭化成(株)「アミノサーファクトAMMS-P1」
・ST-6:ステアロイルグルタミン酸ナトリウム塩(アミノ酸化合物のナトリウム塩)、BASF「オイムルゲンSG」
【0071】
<実施例1~24、実施例101~113、比較例1~3>
(母粒子の形成)
セルロースアシレートとしてDAC「(株)ダイセル製「L-50」、セルロースジアセテート、重量平均重合度570」130部を酢酸エチル870部中に完全に溶解する。これを、炭酸カルシウム45部、及び純水500部を含有する水系液体中に加え、3時間撹拌した。これに、カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」とも称する)4部、メチルエチルケトン200部を純水600部に分散させた溶液を加え、高速乳化機で5分間撹拌した。これに、10部の水酸化ナトリウムを加え、80℃に加熱して3時間攪拌して酢酸エチル及びメチルエチルケトンを除去した。これに水酸化ナトリウムと同量の希塩酸を添加し、残渣をろ過した後、再度純水中に分散し、セルロースアシレート粒子のスラリー(固形分濃度10%)を得た。
セルロースアシレート粒子のスラリー500部に20%水酸化ナトリウム水溶液を17.5部添加して、鹸化温度を30℃として6時間撹拌した。鹸化後のスラリーに塩酸を添加してpH7に調整後、ろ過、及び洗浄を繰り返し、ろ液の電導度が10μs/cm以下になるまで洗浄し、セルロース母粒子のスラリーを得た。
【0072】
表面処理)
-第一被覆層の形成-
表1に従って、母粒子に対して、下記架橋処理A、C、Mのいずれかの処理を実施した。
【0073】
--架橋処理A--
母粒子スラリー500質量部(固形分10質量%)に対して、表1に示す種類及び量の被覆材を添加する。母粒子のスラリーのpHが6.5以下の場合、母粒子スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を加えpHが7.0から8.5となるよう中和する。母粒子スラリーに、被覆材に対して15%質量分のカリミョウバンとなるようにカリミョウバン水溶液を2時間かけて添加し、数時間から24時間撹拌する。それにより、母粒子表面上に、表1に示す被覆量で、表1に示す化合物のAl塩による第一被覆層を形成した。
--架橋処理C--
母粒子スラリー500質量部(固形分10質量%)に対して、表1に示す種類及び量の被覆材を添加する。母粒子のスラリーのpHが6.5以下の場合、母粒子スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を加えpHが7.0から8.5となるよう中和する。母粒子スラリーに、被覆材の酸官能基に対して塩化カルシウムが同じモル量となるよう0.01M塩化カルシウム水溶液を2時間かけて添加し、数時間から24時間撹拌する。それにより、母粒子表面上に、表1に示す被覆量で、表1に示す化合物のCa塩による第一被覆層を形成した。
--架橋処理M--
母粒子スラリー500質量部(固形分10質量%)に対して、表1に示す種類及び量の被覆材を添加する。母粒子のスラリーのpHが6.5以下の場合、母粒子スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を加えpHが7.0から8.5となるよう中和する。母粒子スラリーに、被覆材の酸官能基に対して塩化マグネシウムが同じモル量となるよう0.01M塩化マグネシウム水溶液を2時間かけて添加し、数時間から24時間撹拌する。それにより、母粒子表面上に、表1に示す被覆量で、表1に示す被覆材のMg塩による第一被覆層を形成した。
【0074】
-第二被覆層の形成-
表1に従って、第一被覆層が形成された母粒子に対して、下記析出処理H、A、M、Mのいずれかの処理を実施した。
【0075】
--析出処理H--
次に、第一被覆層が形成された母粒子スラリーを70℃に加熱し、母粒子スラリーに、表1に示す種類及び量の被覆材を加えた。被覆材が脂肪酸、アミノ酸化合物の場合、脂肪酸を95%中和する量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、脂肪酸を中和させ、脂肪酸を溶解させる。被覆材の溶解確認後、母粒子スラリーを5分間撹拌し、母粒子スラリーに0.1M硝酸をpHが2となるよう20分かけて添加する。添加完了後、母粒子スラリーを5分間撹拌した後、撹拌しているスラリーに0℃から10℃のイオン交換水1000質量部に加える。それにより、第一被覆層が形成された母粒子表面上に、表1に示す被覆量で、表1に示す被覆材(非金属塩の被覆材)による第二被覆層を形成した。
--析出処理A--
次に、第一被覆層が形成された母粒子スラリーを70℃に加熱し、母粒子スラリーに、表1に示す種類及び量の被覆材を加えた。被覆材が脂肪酸、アミノ酸化合物の場合、脂肪酸を95%中和する量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、脂肪酸を中和させ、脂肪酸を溶解させる。被覆材の溶解確認後、母粒子スラリーを5分間撹拌し、母粒子スラリーに、塩化アルミニウム(6水和物)が被覆材と同じモル量となるように0.1M塩化アルミニウム水溶液を20分かけて添加する。添加完了後、母粒子スラリーを5分間撹拌した後、撹拌しているスラリーに0℃から10℃のイオン交換水1000質量部に加える。それにより、第一被覆層が形成された母粒子表面上に、表1に示す被覆量で、表1に示す被覆材のAl塩による第二被覆層を形成した。
--析出処理C--
次に、第一被覆層が形成された母粒子スラリーを70℃に加熱し、母粒子スラリーに、表1に示す種類及び量の被覆材を加えた。被覆材が脂肪酸、アミノ酸化合物の場合、脂肪酸を95%中和する量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、脂肪酸を中和させ、脂肪酸を溶解させる。被覆材の溶解確認後、母粒子スラリーを5分間撹拌し、母粒子スラリーに、塩化カルシウムが被覆材と同じモル量となるように0.1M塩化カルシウム水溶液を20分かけて添加する。添加完了後、母粒子スラリーを5分間撹拌した後、撹拌しているスラリーに0℃から10℃のイオン交換水1000質量部に加える。それにより、第一被覆層が形成された母粒子表面上に、表1に示す被覆量で、表1に示す被覆材のCa塩による第二被覆層を形成した。
--析出処理M--
次に、第一被覆層が形成された母粒子スラリーを70℃に加熱し、母粒子スラリーに、表1に示す種類及び量の被覆材を加えた。被覆材が脂肪酸、アミノ酸化合物の場合、脂肪酸を95%中和する量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、脂肪酸を中和させ、脂肪酸を溶解させる。被覆材の溶解確認後、母粒子スラリーを5分間撹拌し、母粒子スラリーに、塩化マグネシウムが被覆材と同じモル量となるように0.1M塩化マグネシウム水溶液を20分かけて添加する。添加完了後、母粒子スラリーを5分間撹拌した後、撹拌しているスラリーに0℃から10℃のイオン交換水1000質量部に加える。それにより、第一被覆層が形成された母粒子表面上に、表1に示す被覆量で、表1に示す被覆材のMg塩による第二被覆層を形成した。
【0076】
(洗浄処理)
第一被覆層及び第二被覆層が形成された母粒子スラリーをろ過し、濾別物を純水で洗浄し、再びろ過する。この作業を繰り返し、ろ液の電導度が50μs/cm以下になったら、濾別物を凍結乾燥し、セルロース粒子を得た。
なお、セルロース粒子をFMミキサー(FM40、日本コークス工業社製)にて、ミキサー温度を25℃に維持したまま、2000min-1の回転数で3時間攪拌し、被覆層表面をなめした。
【0077】
なお、比較例1では、第一被覆層形成時に架橋処理を実施せず、24時間撹拌して、母粒子表面上に、非金属塩の被覆材による第一被覆層を形成し、セルロース粒子を得た。
【0078】
<物性評価>
(体積平均粒子)
各例で得られたセルロース粒子の体積平均粒子径(表中「D50v」と表記)を既述の方法に従って測定した。
【0079】
<評価>
各例で得られたセルロース粒子の生分解率、初期疎水性、経時疎水性について、次の通り評価した。
【0080】
(生分解率)
各例で得られたセルロース粒子に対して、JIS K6950:2000(ISO 14851:1999)に準拠し、528日後の生分解率を測定及び算出した。
【0081】
(初期耐水性)
水5gを入れたガラス瓶中に、各例で得られたセルロース粒子50mg加え、蓋をして振とう混合する。静置し粒子の浮き沈みで評価した。
具体的には、完全に浮いた状態を「G5」、完全に沈んだ状態を「G1」として、5段階でグレード付けして評価した。
【0082】
(経時耐水性)
セテス15(界面活性剤)の0.01%水溶液を作製する。その水溶液10gに、各例で得られたセルロース粒子0.1gを加え、25℃で、7日浸漬した。浸漬後、粒子をろ過洗浄し、乾燥させる。乾燥させた粒子を、初期耐水性と同様の評価を行った。
【0083】
【0084】
【0085】
上記結果から、本実施例のセルロース粒子は、比較例のセルロース粒子に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されることがわかる。
【0086】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
セルロースを主成分とする母粒子と、
前記母粒子の表面上に有する、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩を含む第一被覆層と、
前記第一被覆層上に有する、脂肪酸、脂肪酸の多価金属塩、アミノ酸化合物、及びアミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物を含む第二被覆層と、
を有するセルロース粒子。
(((2)))
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が、多糖類の多価金属塩である(((1)))に記載のセルロース粒子。
(((3)))
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である(((1)))又は(((2)))に記載のセルロース粒子。
(((4)))
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、前記樹脂に対する多価金属多価金属の比率が、モル比で1/4以上4/1以下である(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((5)))
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、前記樹脂に対する多価金属多価金属の比率が、モル比で1/3以上3/1以下である(((4)))に記載のセルロース粒子。
(((6)))
前記疎水性化合物が、前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である(((1)))~(((5)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((7)))
前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である(((6)))に記載のセルロース粒子。
(((8)))
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が、多糖類の多価金属塩であり、
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種であり、
前記酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属の比率が、モル比で1/3以上3/1以下である(((1)))~(((7)))のいずれか1項に記載のセルロース粒子。
(((9)))
前記疎水性化合物が、前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である(((8)))に記載のセルロース粒子。
(((10)))
前記脂肪酸の多価金属塩、及び前記アミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属が、Ca、及びAlから選択される少なくとも1種である(((9)))に記載のセルロース粒子。
【0087】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))に係る発明によれば、セルロースを主成分とする母粒子を有するセルロース粒子において、母粒子の表面上に有する、中性多糖類のみを含む第一被覆層と、第一被覆層上に有する、疎水性化合物を含む第二被覆層と、を有するセルロース粒子に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
(((2)))に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が合成樹脂の多価金属塩である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属がCa、及びAl以外の多価金属である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
【0088】
(((4)))に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属、多価金属の比率が、モル比で1/4未満又は4/1超えである場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属多価金属の比率が、モル比で1/3未満又は3/1超えである場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
【0089】
(((6)))に係る発明によれば、疎水性化合物が、脂肪酸、及びアミノ酸化合物から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、脂肪酸の多価金属塩、及びアミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属がCa、及びAl以外の多価金属である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
【0090】
(((8)))に係る発明によれば、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩が合成樹脂の多価金属塩である場合、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩の多価金属がCa、及びAl以外の多価金属である場合、又は、酸官能基を有する樹脂の多価金属塩において、樹脂に対する多価金属の比率が、モル比で1/4未満若しくは4/1超えである場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
(((9)))に係る発明によれば、疎水性化合物が、脂肪酸、及びアミノ酸化合物から選ばれる少なくとも1種の疎水性化合物である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。
(((10)))に係る発明によれば、脂肪酸の多価金属塩、及びアミノ酸化合物の多価金属塩の多価金属がCa、及びAl以外の多価金属である場合に比べ、生分解性が速く、耐水性に優れ、かつ水中保管後でも耐水性が維持されるセルロース粒子が提供される。