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特開2024-141020コンベアベルト用共重合体組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141020
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コンベアベルト用共重合体組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/18 20060101AFI20241003BHJP
   B65G 15/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08F210/18
B65G15/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052446
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和輝
(72)【発明者】
【氏名】菅原 慎介
(72)【発明者】
【氏名】杉江 太一
【テーマコード(参考)】
3F024
4J100
【Fターム(参考)】
3F024AA03
3F024BA07
3F024CA02
3F024CA08
3F024CB02
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AS15R
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA09
4J100DA24
4J100DA47
4J100DA48
4J100DA49
4J100DA50
4J100FA10
4J100FA19
4J100GB01
4J100GC25
4J100GC35
4J100GD02
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、高モジュラス(高剛性)、かつ耐オイルブリード性に優れ、耐熱老化性および耐摩耗性が良好なコンベアベルトを得るに好適なコンベアベルト用共重合体組成物を得ることにある。
【解決手段】本発明は、下記成分(S)、(F)、(G)、(H)および(R)を含むことを特徴とするコンベアベルト用共重合体組成物に係わる。
成分(S):特定の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)
成分(F);エチレン・α-オレフィン共重合体(F)
成分(G);カーボンブラック(G)
成分(H);老化防止剤(H)
成分(R);特定の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(S)、(F)、(G)、(H)および(R)を含むことを特徴とするコンベアベルト用共重合体組成物;
成分(S):
エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有し、下記要件(i)~(v)を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S);
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦80・・・式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6・・・式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【化1】
成分(F);エチレン・α-オレフィン共重合体(F)
成分(G);カーボンブラック(G)
成分(H);老化防止剤(H)
成分(R);
下記要件(1)~(6)を満たすエチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R);
(1)重量平均分子量が1,000~50,000の範囲にある。
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(Mw/Mn、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が2.7以下である。
(3)13C-NMRスペクトルの強度比Tαβ/Tααが0.0~0.1である。
(4)5-ビニル-2-ノルボルネンから導かれる構成単位の含量が0.1~20.0質量%の範囲にある。
(5)5-ビニル-2-ノルボルネンから導かれる構成単位がendo体構造およびexo体構造を含み、且つ、endo体構造/exo体構造の比が2.5以下である。
(6)135℃デカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度〔η〕が0.01~0.8dl/gの範囲にある。
【請求項2】
前記成分(R)であるエチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R)が、さらに、下記要件(7)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
(7)下記式(i)で表されるB値が1.10以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン、α-オレフィン、および5-ビニル-2-ノルボルネンのモル分率を示し、[EX]はエチレン-α-オレフィンダイアッド連鎖分率を示す。]。
【請求項3】
さらに下記成分(J)を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
(J)有機過酸化物系架橋剤
【請求項4】
前記成分(S)であるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、さらに極限粘度[η]が0.1~5dL/gであり、重量平均分子量(Mw)が10000~600000である請求項1に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【請求項5】
前記成分(S)であるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)を構成する非共役ポリエン(C)が5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)である請求項1に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【請求項6】
前記成分(S)であるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、さらに、前記式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率〔ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする。〕で含み、下記(vi)の要件を満たす請求項1に記載のコンベアベルト用共重合体組成物;
(vi)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共役ポリエン(D)に由来する構成単位の重量分率((D)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)と、共役ポリエン(D)の分子量((D)の分子量)とが、下記式(4)を満たす。;
4.5≦Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}≦45・・・式(4)
【請求項7】
前記成分(S)を95~5質量部、および前記成分(F)を5~95質量部、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部当たり、前記成分(G)を5~120質量部、前記成分(H)を0.1~20質量部、並びに成分(R)を0.1~20質量部含むことを特徴とする請求項3に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のコンベアベルト用共重合体組成物を用いてなる耐熱コンベアベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性と機械物性、耐熱老化性および耐摩耗性に優れるコンベアベルト用共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼、石炭、セメント等の様々な産業分野においては、物品の輸送手段としてベルトコンベア装置が用いられ、特に、例えばクリンカ等のように、150~250℃程度の高温物品をベルトコンベア装置で搬送するケースも多い。このような状況を受け、メンテナンス作業の最小限化及び使用寿命の長期化を図るため、耐熱老化性および耐摩耗性に優れるコンベアベルトが求められている。
【0003】
コンベアベルトの耐熱老化性、耐摩耗性などを改良する方法として、エチレン・1-オクテン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とを含有するゴム組成物を用いることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-246017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、コンベアベルトにはより高い耐摩耗性に対する要求が高まっており、そして従来品を代替する耐熱コンベヤベルト用ゴム組成物には耐熱性、機械物性、加工性を従来品と同等に維持またはそれ以上の性能を有することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、高モジュラス(高剛性)、且つ、耐オイルブリード性に優れ、耐熱老化性および耐摩耗性が良好なコンベアベルトを得るに好適なコンベアベルト用共重合体組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の項[1]~[8]に係る。
[1]
下記成分(S)、(F)、(G)、(H)および(R)を含むことを特徴とするコンベアベルト用共重合体組成物;
成分(S):
エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有し、下記要件(i)~(v)を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S);
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦80・・・式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6・・・式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【0008】
【化1】
【0009】
成分(F);エチレン・α-オレフィン共重合体(F)
成分(G);カーボンブラック(G)
成分(H);老化防止剤(H)
成分(R);
下記要件(1)~(6)を満たすエチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R);
(1)重量平均分子量が1,000~50,000の範囲にある。
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(Mw/Mn、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が2.7以下である。
(3)13C-NMRスペクトルの強度比Tαβ/Tααが0.0~0.1である。
(4)5-ビニル-2-ノルボルネンから導かれる構成単位の含量が0.1~20.0質量%の範囲にある。
(5)5-ビニル-2-ノルボルネンから導かれる構成単位がendo体構造およびexo体構造を含み、且つ、endo体構造/exo体構造の比が2.5以下である。
(6)135℃デカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度〔η〕が0.01~0.8dl/gの範囲にある。
【0010】
[2]
前記成分(R)であるエチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R)が、さらに、下記要件(7)を満たすことを特徴とする項[1]に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
(7)下記式(i)で表されるB値が1.10以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン、α-オレフィン、および5-ビニル-2-ノルボルネンのモル分率を示し、[EX]はエチレン-α-オレフィンダイアッド連鎖分率を示す。]。
【0011】
[3]
さらに下記成分(J)を含むことを特徴とする項[1]に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
(J)有機過酸化物系架橋剤
【0012】
[4]
前記成分(S)であるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、さらに極限粘度[η]が0.1~5dL/gであり、重量平均分子量(Mw)が10000~600000である項[1]~[3]のいずれかに記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【0013】
[5]
前記成分(S)であるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)を構成する非共役ポリエン(C)が5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)である項[1]~[4]のいずれかに記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【0014】
[6]
前記成分(S)であるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、さらに、前記式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率〔ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする。〕で含み、下記(vi)の要件を満たす項[1]~[5]のいずれかに記載のコンベアベルト用共重合体組成物;
(vi)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共役ポリエン(D)に由来する構成単位の重量分率((D)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)と、共役ポリエン(D)の分子量((D)の分子量)とが、下記式(4)を満たす。;
4.5≦Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}≦45・・・式(4)
【0015】
[7]
前記成分(S)を95~5質量部、および前記成分(F)を5~95質量部、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部当たり、前記成分(G)を5~120質量部、前記成分(H)を0.1~20質量部、並びに成分(R)を0.1~20質量部含むことを特徴とする項[3]に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【0016】
[8]
項[1]~[7]のいずれか1項に記載のコンベアベルト用共重合体組成物を用いてなる耐熱コンベアベルト。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、加工性と耐熱老化性、耐摩耗性を維持しつつ、高剛性で耐オイルブリード性に優れるので、コンベヤベルトの原料として有用であり、当該組成物から、耐熱コンベアベルトが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物〔以下、「共重合体組成物」と略記する場合がある。〕に含まれる成分の一つであるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)〔以下、「成分(S)」、あるいは「共重合体(S)と略記する場合がある。〕は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有する。
【0019】
【化2】
【0020】
本発明に係る成分(S)は、上記(A)、(B)、(C)に由来する構造単位に加えて、さらに上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を有していてもよい。
【0021】
炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られるコンベアベルト用共重合体組成物が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持ったコンベアベルトを得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0022】
本発明に係る成分(S)は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0023】
上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に過酸化物との反応性が良好で、コンベアベルト用共重合体組成物の耐熱性が向上しやすいことから非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(C)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0024】
本発明に係る成分(S)は、エチレン(A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)および前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位に加えて、さらに、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含んでいてもよい。このような非共役ポリエン(D)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に有機過酸化物や硫黄などの架橋剤や架橋促進剤との反応性が高く、架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(D)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0025】
本発明に係る成分(S)が、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含む場合、その割合は本発明の目的を損なわない範囲において特に限定されるものではないが、通常、0~20重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0.01~8重量%程度の重量分率で含む(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)。
【0026】
本発明に係る成分(S)は、上述の通り、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、上記非共役ポリエン(C)と、必要に応じて上記非共役ポリエン(D)とに由来する構成単位を有する共重合体であって、下記要件(i)~(v)を満たす。
【0027】
〔要件(i)〕
エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
【0028】
〔要件(ii)〕
非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が0.07重量%~10重量%である。
【0029】
〔要件(iii)〕
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦80・・・式(1)
【0030】
〔要件(iv)〕
レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(Pa・sec)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6・・・式(2)
【0031】
〔要件(v)〕
3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
本明細書において、「炭素原子数3~20のα-オレフィン」を単に「α-オレフィン」とも記す。
【0032】
〔要件(i)〕
要件(i)は、本発明に係る成分(S)中のエチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1を満たすことを特定するものであり、このモル比は好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22を満たすことが望ましい。このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、架橋成形体の原料として用いた場合に、得られる架橋成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
【0033】
なお、成分(S)中のエチレン量(エチレン(A)に由来する構成単位の含量)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(B)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0034】
〔要件(ii)〕
要件(ii)は、本発明に係る成分(S)中の非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100重量%中(すなわち全構成単位の重量分率の合計100重量%中)、0.07重量%~10重量%の範囲であることを特定するものである。この非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率は、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%であることが望ましい。
【0035】
本発明に係る成分(S)が、要件(ii)を満たすと、本発明に係る成分(S)が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましく、過酸化物を用いて架橋した場合には、早い架橋速度を示すものとなり、本発明に係る成分(S)が、架橋成形体の製造に好適なものとなるため好ましい。
なお、成分(S)中の非共役ポリエン(C)量(非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0036】
〔要件(iii)〕
要件(iii)は、本発明に係る成分(S)において、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率:重量%)と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、次の関係式(1)を満たすことを特定するものである。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦80・・・式(1)
【0037】
本発明に係る成分(S)が、要件(iii)を満たす場合、VNBなどの非共役ポリエン(C)に由来する構造単位の含有量が適切であって、十分な架橋性能を示すとともに、本発明に係る成分(S)を含む共重合体組成物を用いてコンベアベルトを製造した場合には、架橋速度に優れ、架橋後のコンベアベルトが優れた機械特性を示すものとなるため好ましい。
【0038】
本発明に係る成分(S)は、より好ましくは、下記関係式(1')を満たすことが望ましい。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦75・・・式(1')
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)は、3D―GPCで測定される数値を意味する。
【0039】
本発明に係る成分(S)は、「Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量」が前記式(1)あるいは(1')を満たす場合には架橋程度が適切となり、これを用いることにより機械的物性と耐熱老化性とにバランスよく優れた成形品を製造することができる。「Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量」が少なすぎる場合には、架橋性が不足して架橋速度が遅くなることがあり、また多すぎる場合には過度に架橋を生じて機械的物性が悪化する場合がある。
【0040】
〔要件(iv)〕
要件(iv)は、本発明に係る成分(S)の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(Pa・sec)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率:重量%)とが、下記式(2)を満たすことを特定するものである。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6・・・式(2)
【0041】
ここで、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本発明に係る成分(S)は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(2)を満たすことができると考えられる。本発明において、P値は、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%、周波数を変えた条件で測定を行って求めた、0.1rad/sでの複素粘度と、100rad/sでの複素粘度とから、比(η*比)を求めたものである。
【0042】
本発明に係る成分(S)は、好ましくは、下記式(2')を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×5.7・・・式(2')
なお、極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値を意味する。
【0043】
〔要件(v)〕
要件(v)は、成分(S)の、3D-GPCを用いて得られた1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たすことを特定するものである。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【0044】
上記式(3)により、成分(S)の単位炭素数当たりの長鎖分岐含量の上限値が特定される。
このような成分(S)は、含まれる長鎖分岐の割合が少なく、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れるとともに、これを用いて得られるコンベアベルトが耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0045】
本発明に係る成分(S)は、好ましくは、下記式(3')を満たす。
LCB1000C≦1-0.071×Ln(Mw)・・・式(3')
ここで、Mwと1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、3D-GPCを用いて構造解析法により求めることができる。本明細書においては、具体的には、次のようにして求めた。
【0046】
3D-高温GPC装置PL-GPC220型(Polymer Laboratories社製)を用い、絶対分子量分布を求め、同時に粘度計で極限粘度を求めた。主な測定条件は以下の通り。
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型(Polymer Laboratories社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.5mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
絶対分子量の決定に必要なdn/dc値は標準ポリスチレン(分子量190000)のdn/dc値0.053と単位注入質量あたりの示差屈折率計の応答強度より、試料ごとに決定した。
【0047】
粘度計より得られた極限粘度と光散乱光度計より得られた絶対分子量の関係より溶出成分毎の長鎖分岐パラメーターg'iを式(v-1)から算出した。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、[η]=KMv;v=0.725の関係式を適用した。Mは3D-GPCから求められる絶対分子量の値であり、Kは粘度係数である。
また、g'として各平均値を下記式(v-2)、(v-3)、(v-4)から算出した。なお、短鎖分岐のみを有すると仮定したTrendlineは試料ごとに決定した。
【0050】
【数2】
【0051】
更にg'wを用いて、分子鎖あたりの分岐点数BrNo、炭素1000個あたりの長鎖分岐数LCB1000C、単位分子量あたりの分岐度λを算出した。BrNo算出はZimm-Stockmayerの式(v-5)、また、LCB1000Cとλの算出は式(v-6)、(v-7)を用いた。gは慣性半径Rgから求められる長鎖分岐パラメーターであり、極限粘度から求められるg'との間に次の単純な相関付けが行われている。式中のεは分子の形に応じて種々の値が提案されている。ここではε=1(すなわちg'=g)と仮定して計算を行った。
【0052】
【数3】
【0053】
λ=BrNo/M・・・(V-6)
LCB1000C=λ×14000・・・(V-7)
*式(V-7)中、14000はメチレン(CH2)単位で1000個分の分子量を表す。
【0054】
本発明に係る成分(S)は、極限粘度[η]が好ましくは0.1~5dL/g、より好ましくは0.5~5.0dL/g、さらに好ましくは0.9~4.0dL/gであることが望ましい。
【0055】
また本発明に係る成分(S)は、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10,000~600,000、より好ましくは30,000~500,000、さらに好ましくは50,000~400,000であることが望ましい。
【0056】
本発明に係る成分(S)は、上記の極限粘度[η]および重量平均分子量(Mw)を兼ね備えて満たすことが好ましい。
本発明に係る成分(S)では、非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、VNBであることがより好ましい。すなわち上述した式(1)、式(2)ならびに後述する式(4)等において、「(C)の重量分率」が「VNBの重量分率」(重量%)であることが好ましい。
【0057】
本発明に係る成分(S)は、上述したように、上記(A)、(B)および(C)に由来する構造単位に加えて、さらに、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)で含むことも好ましい。この場合には、下記要件(vi)を満たすことが好ましい。
【0058】
〔要件(vi)〕
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共役ポリエン(D)に由来する構成単位の重量分率((D)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)と、共役ポリエン(D)の分子量((D)の分子量)とが、下記式(4)を満たす。
【0059】
4.5≦Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}≦85・・・式(4)
式(4)では、共重合体1分子中の非共役ジエン((C)と(D)の合計)の含量を特定している。
【0060】
上記(D)に由来する構造単位を含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が式(4)を満たす場合、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体から得られるコンベアベルトが優れた機械物性と耐熱老化性を示すものとなるため好ましい。
【0061】
要件(vi)を満たさず、式(4)中の「Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}」が少なすぎる場合、すなわち非共役ジエンの含量が少なすぎる場合には、十分な架橋がなされず適切な機械物性が得られない場合があり、多すぎる場合には架橋が過剰となり機械物性が悪化する場合がある他、耐熱老化性が悪化する場合がある。
【0062】
〔要件(vii)〕
本発明に係る成分(S)は特に限定されるものではないが、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η* (ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η* (ω=10)(Pa・sec)と、非共役ポリエン(c)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
【0063】
Log{η* (ω=0.01)}/Log{η* (ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42・・・式(5)
ここで、複素粘度η* (ω=0.01)および複素粘度η* (ω=10)は、要件(vi)における複素粘度η* (ω=0.1)および複素粘度η* (ω=100)と測定周波数以外は同様にして求められる。
【0064】
また、非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
(C)に由来する見かけのヨウ素価=(C)の重量分率×253.81/(C)の分子量
上記式(5)において、左辺は長鎖分岐量の指標となる剪断速度依存性を表し、右辺は重合時に長鎖分岐として消費されていない非共役ポリエン(C)の含有量の指標を表す。要件(vii)を満たし、上記式(5)を満たす場合には、長鎖分岐の程度が高すぎないため好ましい。一方上記式(5)を満たさない場合には、共重合した非共役ポリエン(C)のうち、長鎖分岐の形成に消費された割合が多いこと分かる。
【0065】
またさらに本発明に係る成分(S)は、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位を十分量含有することが好ましく、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とが、下記式(6)を満たすことが好ましい。
6-0.45×Ln(Mw)≦(C)の重量分率≦10・・・式(6)
【0066】
また本発明に係る成分(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nC)が、好ましくは6個以上、より好ましくは6個以上80個以下、さらに好ましくは7個以上79個以下、またさらに好ましくは10個以上78個以下であることが望ましい。
【0067】
このような本発明に係る成分(S)は、VNBなどの非共役ポリエン(C)から導かれる構成単位を十分量含有し、かつ、長鎖分岐含有量が少なく、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、機械的特性などの物性バランスに優れるとともに特に耐熱老化性に優れる。
【0068】
さらに本発明に係る成分(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(D)に由来する構成単位の数(nD)が、好ましくは29個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは1個未満であることが望ましい。
【0069】
このような本発明に係る成分(S)は、ENBなどの非共役ポリエン(D)から導かれる構成単位の含有量が本発明の目的を損なわない範囲に抑制されており、後架橋を生じにくく、十分な耐熱老化性を有するため好ましい。
【0070】
ここで、成分(S)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nC)あるいは非共役ポリエン(D)に由来する構成単位の数(nD)は、非共役ポリエン(C)または(D)の分子量と、共重合体中における非共役ポリエン(C)または(D)に由来する構成単位の重量分率((C)または(D)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とから、下記式により求めることができる。
(nC)=(Mw)×{(C)の重量分率/100}/非共役ポリエン(C)の分子量
(nD)=(Mw)×{(D)の重量分率/100}/非共役ポリエン(D)の分子量
【0071】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)および(D)に由来するそれぞれの構成単位の数(nc)および(nD)が、いずれも上記の範囲を満たす場合には、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、長鎖分岐含有量が少なく、かつ、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0072】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の製造>
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)と、必要に応じて前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に1つのみ2含む非共役ポリエン(D)とからなるモノマーを共重合してなる共重合体である。
【0073】
本発明に係る成分(S)は、前記の要件(i)~(v)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
【0074】
本発明に係わる上記共重合体(S)の具体的な製造方法としては、例えば、特開2018-119096号公報、国際公開第2015/122495号パンフレット記載のメタロセン触媒を用いた製造方法を採用することにより製造することができる。
その際、エチレン(A)、α-オレフィン(B)、非共役ポリエン(C)および(D)は、それぞれバイオマス由来のものであってもよい。
【0075】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(F)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれる成分の一つであるエチレン・α-オレフィン共重合体(F)〔以下、「成分(F)」と略称する場合がある。〕は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体である。
【0076】
α-オレフィンとしては、機械強度に優れるコンベアベルトが得られる等の点から、炭素数が好ましくは3~12、より好ましくは4~8のα-オレフィンが望ましい。
このようなα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。中でも、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが好ましく用いられる。これらのα-オレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0077】
本発明に係わる成分(F)において、エチレンから導かれる構成単位の含量は、好ましくは50~85モル%、さらに好ましくは50~80モル%である(但し、エチレンから導かれる構成単位と、炭素原子数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位との合計は100モル%である)。エチレンから導かれる構成単位の含量が前記範囲にあると、成分(S)との相溶性に優れるコンベアベルト用共重合体組成物を得ることができる。
【0078】
本発明に係わる成分(F)は、以下の要件(i)~(iv)を満たすことが好ましい。
(i)融点
本発明に係る成分(F)の融点は、好ましくは110℃以下、より好ましくは0~105℃であり、さらに好ましくは0~100℃である。成分(F)の融点が前記範囲にあることで、低混練温度でも未溶融の成分(F)が残留せず、特に、成形収縮率が小さく、耐摩耗性に優れるコンベアベルトを得ることができる。
本発明に係る成分(F)の融点は、JIS K 7121に記載の方法で測定することができる。
【0079】
(ii)密度
本発明に係る成分(F)の密度は、好ましくは840~920kg/m3であり、より好ましくは850~915kg/m3であり、さらに好ましくは860~915kg/m3である。密度が前記範囲にあると、成形収縮率が小さく、強度特性、耐摩耗性に優れるコンベアベルトを得ることができる。
本発明に係る成分(F)の密度は、ASTM D1505に記載の方法で測定することができる。
【0080】
(iii)MFR
本発明に係る成分(F)の190℃、2.16kgにおけるMFRは、好ましくは0.1~50g/10minであり、より好ましくは0.2~30.0g/10minであり、さらに好ましくは0.3~10g/10minである。MFRが前記範囲にあると、成形収縮率が小さく、加工性に優れるコンベアベルト用共重合体組成物を得ることができる。
本発明に係る成分(F)のMFRは、ASTM D1238に記載の方法で測定することができる。
【0081】
(iv)Mw/Mn
本発明に係わる成分(F)は、好ましくはGPC分析により求められる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが1.5~10.0の範囲にある。
【0082】
本発明に係わる成分(F)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000~500,000であり、より好ましくは20,000~300,000であり、さらに好ましくは20,000~200,000の範囲にある。
【0083】
また、本発明に係る成分(F)は、室温から約100℃において、好ましくは90℃前後の温度において固体であることが好ましい。
本発明に係る成分(F)の重量平均分子量が前記範囲にあると、成形収縮率が小さく、耐摩耗性に優れるコンベアベルトを得ることができる。また、低分子量成分が少ないことにより、得られるコンベアベルトにおいて、該低分子量成分の揮発や浮き出しが生じにくくなり好ましい。
【0084】
本発明に係る成分(F)のMw、Mn及びMw/Mnは、具体的には下記実施例に記載の共重合体(S)の分子量の測定方法と同様の方法で測定することができる。
本発明に係わる成分(F)は、例えば、バナジウム系触媒、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いて、従来公知の方法により、エチレンとα-オレフィンとを共重合することによって製造することができる。前記物性を満たす共重合体を容易に得ることができる等の点から、メタロセン触媒を用いて合成する方法が好ましく、具体的には、国際公開第2008/152935号に記載のメタロセン化合物およびアルミニウム含有化合物等を含む触媒や特開平9-40586号公報に記載のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒を用いて合成する方法がより好ましい。
また、本発明に係わる成分(F)を製造する際には、エチレン、α-オレフィンは、それぞれバイオマス由来のものであってもよい。
【0085】
<カーボンブラック(G)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれる成分の一つであるカーボンブラック(G)〔以下、「成分(G)」と略称する場合がある。〕は、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤の一種であり通常、カーボンブラックと呼称されている無機物である。
【0086】
本発明に係わるカーボンブラック(G)としては、具体的には、旭#55G、旭#60G、旭#60UG(以上、旭カーボン(株)製)、VULCAN3、STERLING(SO、V、VH、142等) のカーボンブラック(以上、キャボット コーポレーション製)、シースト(V、SO、116、3、6、9、SP、TA等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したものである。
【0087】
<老化防止剤(H)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれる成分の一つである老化防止剤(H)〔以下、「成分(H)」と略称する場合がある。〕は、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などである。
【0088】
さらに、老化防止剤として、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン(商品名:イルガノックス1010、BASF製)等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール(商品名 サンダントMB、三新化学工業(株)製)、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0089】
<エチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれる成分の一つであるエチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R)〔以下、「成分(R)」と呼称する場合がある。〕は、下記要件(1)~(6)を満たす共重合体である。
【0090】
〈要件(1)〉
重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000、好ましくは1500~35,000、より好ましくは2000~30,000、最も好ましくは2300~10,000の範囲にある。
【0091】
本発明に係わる成分(R)がかかる範囲の分子量であると、成分(R)が、軟化剤として働き、流動性が良く低圧成形可能であるが、得られるコンベアベルトなど成形体からの染み出しがなく(耐オイルブリード性)、しかも、剛性(モジュラス)が高い。
【0092】
〈要件(2)〉
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(Mw/Mn、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が2.7、好ましくは2.6以下である。
本発明に係わる成分(R)がかかる分子量分布を有すると成分(R)を含む共重合体組成物から得られるコンベアベルトの剛性(モジュラス)が高い。
【0093】
ゲル浸透クロマトグラフ HLC-8321 GPC/HT型 (東ソー社製)を用い、Mw、分子量分布を求めた。主な測定条件は以下の通り。
検出器:示差屈折率計
カラム:TSKgel GMH6-HT×2本+TSKgel GMH6-HTL×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:400 μL
試料濃度:ca 0.15%(w/v)
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
分子量換算:EPR換算/粘度を考慮した較正法
東ソー社製の単分散標準ポリスチレン16点(分子量2060万~580)を測定して三次多項式の汎用較正曲線(Universal Calibration Curve)を作成した。
EPR換算パラメータK:0.000403、α:0.700
【0094】
〈要件(3)〉
13C-NMRスペクトルの強度比Tαβ/Tααが0.0~0.2、好ましくは0.0~0.15、さらに好ましくは0.0~0.1である。ここで以下に示すように、Tαβは13C-NMRスペクトルにおけるα位およびβ位に分岐を有する炭素原子のピーク強度を示し、Tααは両α位に分岐を有する炭素原子のピーク強度を示す。
【0095】
【化3】
【0096】
強度比Tαβ/Tααがこの範囲にあると、成分(R)を含む共重合体組成物から得られるコンベアベルトが、剛性(モジュラス)が高く、強度の点で優れている。
【0097】
〈要件(4)〉
5-ビニル-2-ノルボルネン(以下、「VNB」と呼称する場合がある。)から導かれる構成単位の含量が0.1~20.0質量%、好ましくは0.5~15.0質量%、より好ましくは1.0~10.0質量%の範囲にある。
【0098】
〈要件(5)〉
VNBから導かれる構成単位がendo体構造およびexo体構造を含み、且つ、endo体構造/exo体構造の比が2.5以下、好ましくは2.4以下、さらに好ましくは2.3以下である。
【0099】
endo体構造/exo体構造の比がこの範囲にあると、成分(R)を含む共重合体組成物から得られるコンベアベルトが、剛性(モジュラス)が高く、強度の点で優れている。
【0100】
endo体は13C-NMRスペクトルにおける114ppm付近における炭素原子のピーク強度(9n)を示し、exo体は13C-NMRスペクトルにおける111.5ppm付近における炭素原子のピーク強度(9x)示す。
【0101】
【化4】
【0102】
〈強度比Tαβ/Tααおよびendo体構造/exo体構造比の測定〉
強度比Tαβ/Tαα、endo体構造/exo体構造比は、以下のようにして求めることができる。
【0103】
共重合体の13C-NMRスペクトルを、例えば日本電子(株)製の400MHzNMR測定装置を用いて測定する。測定は試料濃度が5重量%となるように調製されたヘキサクロロブタジエン/d6-ベンゼン=2/1(体積比)の混合溶液を用いて、67.8MHz、25℃、d6-ベンゼン(128ppm)基準で行う。測定された13C-NMRスペクトルを、リンデマンアダムスの提案(Analysis Chemistry 43, p 1245(1971))、J.C.Randall(Review Macromolecular Chemistry Physics,C29,201(1989))に従って解析して行う。
【0104】
〈要件(6)〉
135℃デカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度〔η〕が0.01~0.8dl/g、好ましくは0.03~0.6dl/g、より好ましくは0.05~0.5dl/g、最も好ましくは0.05~0.4dl/gの範囲にある。
【0105】
極限粘度[η]が上記範囲にあると、成分(R)の流動性が良く低圧成形可能でかつ、成分(R)を含む共重合体組成物から得られるコンベアベルトが、剛性(モジュラス)が高く、強度の点で優れている。
【0106】
本発明に係わる成分(R)は、上記要件(1)~(6)に加え、好ましくは下記要件(7)を満たす。
【0107】
〈要件(7)〉
下記式(i)で表されるB値が1.10以上、より好ましくは1.15~1.60、最も好ましくは1.20~1.55の範囲にある。
【0108】
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン(a1)、炭素数3~20のα-オレフィン(a2)、およびVNB(c)のモル分率を示し、[EX]はエチレン(a1)-炭素数3~20のα-オレフィン(a2)ダイアッド連鎖分率を示す。
【0109】
B値が上記範囲を満たす成分(R)は低温でのゴム弾性と常温での引張強度とのバランスに優れる。B値が1.20以上である成分(R)は、共重合体を構成するモノマー単位の交互性が高く結晶性が低いため、得られる組成物の加工性が向上する。
【0110】
上記B値の測定は、o-ジクロロベンゼン-d4/ベンゼン-d6(4/1[v/v])を測定溶媒とし、測定温度120℃にて、13C-NMRスペクトル(100MHz、日本電子製ECX400P)を測定し、上記式(i)に基づき算出した。
【0111】
本発明に係わる成分(R)は、通常、エチレン(k1)に由来する構造単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(k2)に由来する構造単位とのモル比[(k1)/(k2)]が、40/60~99.9/0.1、好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22である。
【0112】
かかる要件を満たす成分(R)を用いることにより、より高剛性で、ブリードアウトがないコンベアベルトを得ることができる。
なお、成分(R)中のエチレン量(エチレン(a1)に由来する構成単位の含量)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(a2)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0113】
〈α‐オレフィン(a2)〉
上記炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンおよび1-ブテンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であるので好ましい。
【0114】
上記α-オレフィン(k2)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
なお、成分(R)を下記の製造する際には、エチレン(a1)およびα‐オレフィン(a2)は、それぞれバイオマス由来のものであってもよい。
【0115】
<エチレン・α-オレフィン・VNB共重合体(R)の製造方法>
本発明に係わる成分(R)は、以下の製造方法で製造し得る。
(a)下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物、ならびに
(b)有機金属化合物(b-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)および前記架橋メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(b)
を含むオレフィン重合触媒の存在下で、エチレンとα-オレフィンと5-ビニル-2-ノルボルネンとを共重合する工程を含むことを特徴とする製造方法で製造し得る。
【0116】
かかる製造方法で、下記要件(1)~(6)を満たすエチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R)を製造し得る。
(1)重量平均分子量が1,000~50,000の範囲にある。
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(Mw/Mn、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が2.7以下である。
(3)13C-NMRスペクトルの強度比Tαβ/Tααが0.0~0.1である。
(4)5-ビニル-2-ノルボルネンから導かれる構成単位の含量が0.1~20.0質量%の範囲にある。
(5)5-ビニル-2-ノルボルネンから導かれる構成単位がendo体構造およびexo体構造を含み、且つ、
endo体構造/exo体構造の比が2.5以下である。
(6)135℃デカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度〔η〕が0.01~0.8dl/gの範囲にある。
【0117】
【化5】
【0118】
(式[I]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、
13およびR14のいずれか一方はアリール基または置換アリール基であり、他方は水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、
1からR14までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、
Yは第14族原子から選ばれ、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、
Qはハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、nは1~4の整数であり、jは1~4の整数である。)
【0119】
上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(a)は、R13およびR14のいずれか一方はアリール基または置換アリール基であり、他方は炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましい。ここで、一方、他方とは、R13とR14との関係において、一方がR13であれば他方がR14であり、または一方がR14であれば他方がR13であることを指す。
【0120】
≪化合物(b)≫
前記化合物(b)は、(b-1)有機金属化合物、(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物および(b-3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、好ましくは、少なくとも前記有機金属化合物(b-1)を含む。
【0121】
(b-1)有機金属化合物
前記有機金属化合物(b-1)としては、例えば下記一般式[VII]~[IX]のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
【0122】
(b-1a)一般式:Ra mAl(ORbnpq・・・[VII](式[VII]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0123】
このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドを例示することができる。
【0124】
(b-1b)一般式:M2AlRa 4・・・[VIII](式[VIII]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基である。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
このような化合物として、LiAl(C254、LiAl(C7154などを例示することができる。
【0125】
(b-1c)一般式:Rab3・・・[IX](式[IX]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期律表第2族または第12族金属を有するジアルキル化合物。
【0126】
上記の有機金属化合物(b-1)の中では、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が好ましい。また、このような有機金属化合物(b-1)は、1種単独で用いてもよいし2種以上組み合せて用いてもよい。
【0127】
(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物
前記有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0128】
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0129】
なお、前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0130】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、前記(b-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0131】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、中でも、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0132】
また本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)の一態様であるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算でベンゼン100重量%に対して通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。
【0133】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)としては、下記一般式[X]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0134】
【化6】
【0135】
(式[X]中、R1は炭素原子数が1~10の炭化水素基を示し、R2~R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。)
【0136】
前記一般式[X]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、
一般式:R1-B(OH)2・・・[XI]
(式[XI]中、R1は前記一般式[X]におけるR1と同じ基を示す。)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
【0137】
前記一般式[XI]で表されるアルキルボロン酸としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。
【0138】
これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0139】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物としては、前記(b-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。
【0140】
上記のような有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0141】
(b-3)イオン化イオン性化合物
前記イオン化イオン性化合物(b-3)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。このようなイオン化イオン性化合物(b-3)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0142】
具体的には、ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0143】
イオン性化合物としては、たとえば下記一般式[XII]で表される化合物が挙げられる。
【0144】
【化7】
【0145】
(式[XII]中、R1+としては、H+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。R2~R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)
【0146】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0147】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;
N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;
ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0148】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0149】
1+としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0150】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0151】
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(N、N-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3、5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0152】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0153】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえば、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0154】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式[XIII]または[XIV]で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。なお、下記式中、Etはエチル基を示す。
【0155】
【化8】
【0156】
【化9】
【0157】
ボラン化合物として具体的には、たとえばデカボラン;ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0158】
カルボラン化合物として具体的には、たとえば、4-カルバノナボラン、1,3-ジカルバノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-2,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル―7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0159】
ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子からなっている。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が使用できるが、この限りではない。
【0160】
イオン化イオン性化合物(b-3)の中では、上述のイオン性化合物が好ましく、その中でもトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートがより好ましい。
【0161】
本発明において、重合触媒として、上記架橋メタロセン化合物(a)と、トリイソブチルアルミニウムなどの有機金属化合物(b-1)、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)、およびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(b-3)とを含むメタロセン触媒を用いると、共重合体の製造に際して非常に高い重合活性を示すことができる。
【0162】
(c)粒子状担体
本発明で、必要に応じて用いられる(c)粒子状担体は、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。
【0163】
無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。これらの具体例としては、WO2015/122495号公報に記載のものが挙げられる。
【0164】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0165】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
有機化合物としては、粒径が10~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0166】
本発明に使用される重合触媒は、メタロセン化合物(a)と、有機金属化合物(b-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)およびイオン化イオン性化合物(b-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)と、必要に応じて用いられる担体(c)と共に、さらに必要に応じて特定の有機化合物成分(d)を含むこともできる。
【0167】
(d)有機化合物成分
本発明において、前記有機化合物成分(d)は、必要に応じて重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0168】
≪共重合体(R)の製造方法および条件≫
本発明に係るの共重合体(R)は、エチレン(a1)、α-オレフィン(a2)、およびVNBとを共重合して製造する。
その際、エチレン(a1)、α-オレフィン(a2)、5-ビニル-2-ノルボルネンは、それぞれバイオマス由来のものであってもよい。
【0169】
このようなモノマーを共重合させる際、前述した重合触媒を構成する各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、下記(1)~(5)のような方法が例示される。(1)架橋メタロセン化合物(a)を単独で重合器に添加する方法。(2)架橋メタロセン化合物(a)および化合物(b)を任意の順序で重合器に添加する方法。(3)架橋メタロセン化合物(a)を担体(c)に担持した触媒成分、化合物(b)を任意の順序で重合器に添加する方法。(4)化合物(b)を担体(c)に担持した触媒成分、架橋メタロセン化合物(a)を任意の順序で重合器に添加する方法。(5)架橋メタロセン化合物(a)と化合物(b)とを担体(c)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0170】
上記(2)~(5)の各方法においては、架橋メタロセン化合物(a)、化合物(b)、担体(c)の少なくとも2つは予め接触されていてもよい。
化合物(b)が担持されている上記(4)、(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない化合物(b)を、任意の順序で添加してもよい。この場合、化合物(b)は、担体(c)に担持されている化合物(b)と同一でも異なっていてもよい。
【0171】
また、上記の担体(c)に架橋メタロセン化合物(a)が担持された固体触媒成分、担体(c)に架橋メタロセン化合物(a)および化合物(b)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0172】
本発明に係る共重合体(R)は、上記のような重合触媒の存在下に、エチレン、α-オレフィン、およびVNBを共重合することにより好適に得ることができる。
上記のような重合触媒を用いて、エチレン、α-オレフィン、およびVNBの重合を行うに際して、架橋メタロセン化合物(a)は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは10-10~10-8モルになるような量で用いられる。
【0173】
化合物(b-1)は、化合物(b-1)と、架橋メタロセン化合物(a)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b-1)/M〕が、通常0.01~50000、好ましくは0.05~10000となるような量で用いられる。化合物(b-2)は、化合物(b-2)中のアルミニウム原子と、架橋メタロセン化合物(a)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(b-2)/M〕が、通常10~50000、好ましくは20~10000となるような量で用いられる。化合物(b-3)は、化合物(b-3)と、架橋メタロセン化合物(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(b-3)/M〕が、通常1~20、好ましくは1~15となるような量で用いられる。
【0174】
本発明において、共重合体(R)を製造する方法は、溶液(溶解)重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能であり、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0175】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用い、上記架橋メタロセン化合物(a)存在下に、エチレン、α-オレフィン、およびVNBとを共重合し、共重合体の重合反応液を得る工程である。
【0176】
重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。なお、これらのうち、得られる共重合体との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0177】
また、重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~+150℃の範囲、より好ましくは、+70~+110℃の範囲であり、用いるメタロセン触媒系の到達分子量、重合活性によるが、より高温(+70℃以上)であることが触媒活性、共重合性および生産性の観点から望ましい。
【0178】
重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは1.1~5MPaゲージ圧、より好ましくは1.2~2.0MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。本発明ではこのうち、エチレンと非共役ポリエンとを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0179】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間~5時間、好ましくは5分間~3時間、より好ましくは10分~2時間である。
【0180】
得られる共重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する化合物(b)の量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001~100NL程度が適当である。
【0181】
本発明では、前記重合触媒の存在下で共重合を行う工程(1)の後、触媒失活剤を添加して前記重合触媒の失活を行う工程(2)を含むことが好ましい。
前記触媒失活剤としては、アルコール類を用いることができ、メタノールまたはエタノールが好ましく、エタノールが特に好ましい。
【0182】
前記工程(2)において、前記触媒失活剤を、前記有機金属化合物(b-1)に対して、好ましくは0.05~3.0mol倍、より好ましくは0.06~2.5mol倍、さらに好ましくは0.08~2.0mol倍の量で添加することにより、エタノール等の触媒失活剤で変質した触媒がわずかに生成して低分子量成分を適度に重合する結果、分子量分布が適度に広い共重合体を得ることができる。一方、触媒失活剤の添加量が多すぎると、変質触媒がほとんど生成されず、低分子量成分の重合がほとんど行われないため、得られる共重合体の分子量分布の狭くなる傾向にある。また、触媒失活剤を添加しない、もしくは添加量が少なすぎると、変質触媒が多く生成して低分子量成分を多量に重合するため、得られる共重合体の低分子量成分の含有量が多くなり過ぎる傾向にある。
【0183】
<有機過酸化物系架橋剤(J)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれていてもよい成分の一つである有機過酸化物系架橋剤(J)〔以下、「成分(J)」と略称する場合がある。〕は、架橋剤の一種であり、具体的には、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0184】
このうちでは、ジクミルペルオキシド(DCP)、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート等の有機過酸化物系架橋剤が好ましい。
【0185】
<コンベアベルト用共重合体組成物>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、上記成分(S)、(F)、(G)、(H)および(R)、好ましくは上記成分(J)を含むことを特徴とするコンベアベルト用共重合体組成物である。
【0186】
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、上記各成分を含むことにより、加工性に優れ、当該コンベアベルト用共重合体組成物から得られるコンベアベルトは、機械物性、耐熱老化性および耐摩耗性、耐オイルブリード性に優れる。
【0187】
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、好ましくは、上記成分(S)と上記成分(F)との合計量を100質量部として、上記成分(S)を95~5質量部、好ましくは90~10質量部、さらに好ましくは80~20質量部、上記成分(F)を5~95質量部、好ましくは10~90、さらに好ましくは20~80質量部の範囲で含み、上記成分(S)と上記成分(F)との合計量100質量部当たり、上記成分(G)を5~120質量部、さらに好ましくは10~100質量部、上記成分(H)を0.1~20質量部、さらに好ましくは0.2~15質量部、および、上記成分(R)を0.1~20質量部、さらに好ましくは0.2~15質量部の範囲で含み、さらにコンベアベルト用共重合体組成物が上記成分(J)を含む場合は、上記成分(S)と上記成分(F)との合計量:100質量部当たり、0.1~30質量部、さらに好ましくは0.2~25質量部の範囲で含む。
【0188】
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、目的に応じて、上記各成分に加え他の配合剤、例えば、架橋助剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤、気泡防止剤、発泡剤および発泡助剤から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また。それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0189】
〈架橋助剤〉
架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)等の金属酸化物が挙げられる。
【0190】
架橋助剤を用いる場合、コンベアベルト用共重合体組成物中の架橋助剤の配合量は、有機過酸化物系架橋剤1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~6モルである。
【0191】
〈加工助剤〉
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0192】
コンベアベルト用共重合体組成物が加工助剤を含有する場合は、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部に対して、通常1~3質量部の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
前記加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0193】
〈活性剤〉
活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0194】
コンベアベルト用共重合体組成物が活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0195】
〈発泡剤および発泡助剤〉
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物を用いて形成された成形体は、非発泡体であってもよいし、発泡体であってもよい。コンベアベルトが発泡体である場合にはコンベアベルト用共重合体組成物には発泡剤が含まれていることが好ましい。
【0196】
発泡剤としては、市販の発泡剤のいずれもが好適に使用される。このような発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系発泡剤;N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)ジフェニルスルフォン-3,3'-ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、パラトルエンマルホニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。中でも、アゾ化合物、スルフォニルヒドラジド化合物、アジド化合物が好ましく用いられる。
【0197】
コンベアベルト用共重合体組成物が、発泡剤を含有する場合には、発泡剤の配合量は、共重合体組成物から製造される成形体に要求される性能により適宜選択されるが、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部に対して、通常0.5~30質量部、好ましくは1~20質量部の割合で用いられる。
【0198】
また、必要に応じて発泡剤とともに発泡助剤を併用しても差し支えない。発泡助剤の添加は、発泡剤の分解温度の調節、気泡の均一化などに効果がある。発泡助剤としては、具体的には、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸などの有機酸、尿素およびその誘導体などが挙げられる。
【0199】
コンベアベルト用共重合体組成物が、発泡助剤を含有する場合には、発泡助剤の配合量は、発泡剤100質量部に対して、通常1~100質量部、好ましくは2~80質量部の割合で用いられる。
【0200】
<コンベアベルト用共重合体組成物の製造方法>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、上記成分(S)、上記成分(F)、上記成分(G)、および上記成分(R)、好ましくは、並びに、必要に応じて、加工助剤、架橋助剤などを、80~170℃の温度で2~20分間混練する。次いで、得られたブレンド物に、上記成分(J)、軟化剤、架橋助剤加硫促進剤等の添加剤をオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、架橋助剤を追加混合し、ロール温度40~80℃で5~30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0201】
また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、成分(S)、成分(F)、成分(G)、成分(H)および上記成分(R)などとともに上記成分(J)を同時に混練してもよい。
【0202】
<コンベアベルト>
本発明のコンベアベルトは、本発明のコンベアベルト用共重合体組成物を用いて製造されるが、その具体的な構成としては、次のようなものが挙げられる。
【0203】
帆布を芯材とし、外周をコンベアベルト用共重合体組成物で被覆してなるコンベアベルト。
コンベアベルト用共重合体組成物内にスチールコードを芯材として埋設してなるコンベアベルト。
【0204】
帆布は、例えば、ナイロン、ビニロン、ポリエステル等の合成繊維の織布よりなる帆布であり、帆布の積層枚数、コンベアベルト用共重合体組成物の厚さやベルト幅等は使用目的に応じて適宜決定されるが、コンベアベルト用共重合体組成物の厚さは、通常、1.5~20mm程度である。
【0205】
スチールコードからなる芯材は、直径0.2~0.4mm程度の素線を複数本撚り合わせて直径2.0~9.5mm程度のワイヤロープとしたスチールコードを50~230本程度並列させて芯材とするものであり、一般に、コンベアベルトの総厚みは10~50mm程度とされる。
【0206】
本発明のコンベアベルトは、常法に従って、芯材となる帆布やスチールコードを本発明のコンベアベルト用共重合体組成物で成形した未架橋のシート間に介在させ、加熱加圧して架橋することにより容易に製造することができる。なお、架橋条件は、通常120~180℃、10~50kg/cm2程度で10~90分程度である。
【実施例0207】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0208】
実施例および比較例では、下記の共重合体を用いた。
(1)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の組成]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の、各構造単位のモル比、および質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0209】
[製造例1]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の製造
連続重合装置を用いて、以下のようにしてエチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)共重合体(S-1)の製造を行った。
【0210】
容積300リットルの重合反応器に、ライン1より脱水精製したヘキサン溶媒を58.3L/hr、ライン2よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を4.5mmol/hr、(C65)3CB(C65)4を0.150mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.030mmol/hrで連続的に供給した。同時に前記重合反応器内に、エチレンを6.6kg/hr、プロピレンを9.3kg/hr、水素を18リットル/hr、VNBを340g/hrで、各々別ラインより連続供給し、重合温度87℃、全圧1.6MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で共重合を行なった。
【0211】
前記重合反応器で生成したエチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、流量88.0リットル/hrで連続的に排出して温度170℃に昇温(圧力は4.1MPaGに上昇)して相分離器に供給した。このとき、排出ラインには重合禁止剤であるエタノールを、前記重合反応器から抜き出した液体成分中のTiBAに対して0.1mol倍の量で連続的に導入した。
【0212】
前記相分離器において、エチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、大部分のエチレン・プロピレン・VNB共重合体を含む濃厚相(下相部)と少量のポリマーを含む希薄相(上相部)とに分離した。
【0213】
分離された濃厚相を85.4リットル/hrで熱交換器Kに導き、さらにホッパー内に導いて、ここで溶媒を蒸発分離し、エチレン・プロピレン・VNB共重合体を7.8kg/hrの量で得た。
【0214】
得られた共重合体(S-1)のモル比(エチレン単位/プロピレン単位)は70/30であり、VNB単位の含有割合は1.4質量%であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.8dL/gであった。なお、得られた共重合体(S-1)の分子量分布は二峰性を示し、GPC測定によって得られるチャートが2つ以上のピークを示し、最も分子量が小さい側に現れるピークの面積が、全体のピーク面積の5%であった。
【0215】
P/([η]2.9):1.0
LCB1000C:0.03
1-0.07×Ln(Mw):0.18
【0216】
(2)エチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R)
[製造例2]
エチレン・α-オレフィン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体(R)の製造
以下のようにしてエチレン・プロピレン・VNB共重合体(R-1)の製造を行った。
【0217】
実施例の重合例で用いたメタロセン触媒である[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドはWO2015/147215号に記載の方法で合成した。
なお、製造例2で示す(a)~(t)などの記号は、下記表1に示す各単位の量である。
【0218】
容積136リットルの連続重合器の一つの供給口に、脱水精製したn-ヘキサンを(a)リットル/hの割合で供給し、他の供給口より[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド(ZD)のヘキサン溶液(b)ミリモル/リットル)を(c)リットル/hの割合、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(5ミリモル/リットル)を(d)リットル/h、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのヘキサンスラリー(e)ミリモル-B/リットル)を(f)リットル/h、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を(g)g/hの割合で連続的に供給した(合計ヘキサン(h)リットル/hr)。同時に重合器の別の供給口に、エチレン(i)kg/h、プロピレン(j)kg/h、水素を(k)NL/hの割合で連続供給し、重合温度(l)℃、全圧(m)MPaG、滞留時間(n)分の条件下で連続溶液重合を行った。
【0219】
重合器で生成したエチレン・プロピレン・VNB共重合体のヘキサン溶液は、重合器側壁部に設けられた排出口を介して連続的に排出させ、8kg/cm2スチームで加熱された連結パイプに導かれた。スチームジャケット付き連結パイプ内で約170℃に加温されたエチレン・プロピレン・VNB共重合体のヘキサン溶液は、10kg/cm2スチームで加熱された二重配管内管を通して連続的にフラッシュ槽に送液された。なお、重合器OUTの配管には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設され、0.5vol%ヘキサン希釈溶液として1.0リットル/hの速度で注入されて該ヘキサン溶液に合流させた。その結果、エチレン・1-プロペン・VNB共重合体が得られた。エチレン・プロピレン・VNB共重合体の極限粘度[η]は(r)dl/g、エチレン含量は(s)質量%、VNB含量は(t)質量%であった。
【0220】
【表1】
【0221】
(3)エチレン・α-オレフィン共重合体(F)
(3-1)エチレン・1-ブテン共重合体(F-1)
密度:864kg/m3、融点<50℃、MFR:3.6g/10分〔三井化学製 商品名 タフマーTM DF640〕。
【0222】
〔コンベアベルト用共重合体組成物の物性〕
[ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)]
100℃におけるムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、100℃の条件下で測定した。
【0223】
[耐オイルブリード性]
180℃で10分間プレスした厚み2mmの架橋シートを25℃で30日間暗所で保管し、表面状態を観察した。
評点1:表面にオイルがブリードしている。
評点2:表面にオイルブリードはないが、白い痕がある。
評点3:表面にオイルブリードはなく、痕もない。
【0224】
<コンベアベルト用共重合体組成物(架橋物)の物性>
[モジュラス(MPa)、引張破断点応力(MPa)、引張破断点伸び(%)]
シートを打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、100%伸張時のモジュラス(M100)、200%伸張時のモジュラス(M200)引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0225】
[デュロメーターA硬度]
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている厚み2mmの架橋シート6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0226】
[耐熱老化性]
シートを、JIS K 6257に従い、180℃で168時間(hrs)の各時間保持する熱老化試験を行った。熱老化試験後のシートの硬度、引張破断点応力(MPa)、引張破断点伸び(%)を、前記[硬度(Durometer-A)]の項目、前記[モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び]の項目と同様の方法で測定した。
【0227】
熱老化試験前後の硬度の差より、AH(Duro-A)を求め、熱老化試験前後の引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)から、熱老化試験前の値に対する試験後の変化率をそれぞれ、Ac(TB)、Ac(EB)として求めた。
【0228】
[DIN摩擦試験(摩耗量)]
JIS-K6264-2:2005に準拠して、厚み2mmの架橋シートを3枚重ね、直径16.0±0.2mm、厚み6mmの円盤状の試験片を作製し、該試験片について、DIN摩耗試験機を用いて、直径150.0±0.2mm、長さ500mmのドラムを40回/分で回転させ、荷重1kgfで、摩耗距離を40.0±0.2mとしたときの摩耗量(DIN摩耗量:単位mm3)を測定した。
【0229】
〔実施例1〕
第一段階として、BB-4型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、製造例1で得たエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S-1)40質量部とエチレン・1-ブテン共重合体(F-1)60質量部を1分間素練りし、次いでこれに、亜鉛華(ZnO#1、ハクスイテック(株)製)5質量部、カーボンブラック(G-1)(VULCAN3D、キャボット製)50質量部、エチレン・プロピレン・VNB共重合体(R-1)10質量部、老化防止剤(H-1)として、フェノール系老化防止剤(商品名 イルガノックス1010、BASF製)3質量部、老化防止剤(H-2)として、イミダゾール系老化防止剤(商品名 サンダントMB、三新化学工業(株)製)6質量部、ステアリン酸1質量部を加え、140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で混練物を排出し、第一段階の配合物を得た。
【0230】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、6インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、有機過酸化物系架橋剤(J-1)として、ジクミルペルオキシド(DCP)〔商品名 パークミルD-40、日本油脂(株)製〕5.1質量部、共架橋剤(K-1)としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)〔商品名 タイク、株式会社 新菱製〕2.0質量部の配合量で添加して10分間混練して未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物を得た。この共重合体組成物を用いて、その物性を評価した。
【0231】
この未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物をシート状に押出成形した後、100トンプレス成形機を用いて180℃で10分間プレスし、厚み2mmの架橋シートを調製した。これを用いて、架橋シートの物性を測定した。結果を表2に示す。
【0232】
〔比較例1〕
実施例1で用いた(R-1)を用いずに軟化剤(I-1):10質量部(商品名 ダイアナプロセスオイルPW-380 出光興産(株)製)を用いる以外は実施例1と同様に行った。得られた未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物および架橋シートの物性を測定した。結果を表2に示す。
【0233】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物からなる耐熱コンベアベルトは、焼結工場、コークス工場、セメント工場、化学工場での燃結成品及び返鉱、コークス、セメントクリンカー、生石炭、特殊薬品、高温各種粉状物質などの輸送用のコンベアベルトとして、好適である。