(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141032
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光応答性組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20241003BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20241003BHJP
C09K 11/02 20060101ALN20241003BHJP
G02B 5/20 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C09K11/08 G ZNM
C09K11/08 J
C09K11/66
C09K11/02 Z
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052461
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】吉正 泰
(72)【発明者】
【氏名】大橋 良太
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA11
4H001CA01
4H001CA02
4H001CC13
4H001XA35
4H001XA53
4H001XA55
4H001XA82
(57)【要約】
【課題】 共通の媒体に支持され互い組成が異なるペロブスカイト型量子ドットを含みかつ混色が低減された光応答性組成物を提供すること。
【解決手段】 光応答性組成物が、媒体と、光応答性を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第1のナノ粒子と、第1の有機基と第1のナノ粒子に配位する第1の結合部とを有し第1のナノ粒子を保護する第1の保護層と、媒体と第1の保護層との間に位置し第1の粒子を保護する第3の保護層と、を含み媒体に支持される第1の粒子と、第1のナノ粒子と異なる光応答性を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第2のナノ粒子と、第2の有機基と第2のナノ粒子に配位する結合部とを有し第2のナノ粒子を保護する第2の保護層と、を含み媒体に支持される第2の粒子と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体と、
光応答性を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第1のナノ粒子と、第1の有機基と前記第1のナノ粒子に配位する第1の結合部とを有し前記第1のナノ粒子を保護する第1の保護層と、前記媒体と前記第1の保護層との間に位置し前記第1の粒子を保護する第3の保護層と、を含み前記媒体に支持される第1の粒子と、
前記第1のナノ粒子と異なる組成を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第2のナノ粒子と、第2の有機基と前記第2のナノ粒子に配位する結合部とを有し前記第2のナノ粒子を保護する第2の保護層と、を含み前記媒体に支持される第2の粒子と、
を備える光応答性組成物。
【請求項2】
前記第3の保護層は、第3の有機基を側鎖に有する高分子を含有する請求項1に記載の光応答性組成物。
【請求項3】
前記第1の保護層は前記第3の保護層に接し、前記第2の保護層は前記第3の保護層に接しない請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【請求項4】
前記第1の保護層は、前記第3の保護層により保護される請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【請求項5】
前記第3の保護層は、前記第1の粒子を内包する一方で、前記第2の粒子を内包しない請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【請求項6】
前記第3の保護層は、紫外および青色の少なくともいずれかを含む第1の波長帯域と前記第1のナノ粒子の発光波長に係る第2の波長帯域と、において、それぞれ、前記第1のナノ粒子より低い吸光度を有する請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【請求項7】
前記媒体は、重合性化合物を含む請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【請求項8】
前記媒体は、溶媒を含む請求項7に記載の光応答性組成物。
【請求項9】
前記媒体は、前記第1の粒子と前記第2の粒子とがそれぞれ分散されるポリマーマトリクスを含む請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【請求項10】
前記媒体は、シート状の固体である請求項9に記載の光応答性組成物。
【請求項11】
前記第2の粒子は、前記媒体と前記第2の保護層との間に位置し、前記第2の粒子を保護する第4の保護層を備える請求項1に記載の光応答性組成物。
【請求項12】
前記第4の保護層は、第4の有機基を側鎖に有する高分子を含有する請求項11に記載の光応答性組成物。
【請求項13】
前記第2の保護層は前記第4の保護層に接し、前記第1の保護層は前記第4の保護層に接しない請求項11または12に記載の光応答性組成物。
【請求項14】
前記第2の保護層は、前記第4の保護層により保護される請求項11または12に記載の光応答性組成物。
【請求項15】
前記第4の保護層は、前記第2の粒子を内包する一方で、前記第1の粒子を内包しない請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【請求項16】
前記第4の保護層は、紫外および青色の少なくともいずれかを含む第1の波長帯域と前記第2のナノ粒子の発光波長に係る第3の波長帯域と、において、それぞれ、前記第1のナノ粒子より低い吸光度を有する請求項11または12に記載の光応答性組成物。
【請求項17】
前記第1の粒子は、緑色および赤色のうちいずれか一方を多く発光する発光特性を呈し、前記第2の粒子は、緑色および赤色のうちいずれか他方を多く発光する発光特性を呈する請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【請求項18】
前記第1の粒子は、臭素およびヨウ素のうちいずれか一方を多く含有し、前記第2の粒子は、臭素およびヨウ素のうちいずれか他方を多く含有する請求項1または2に記載の光応答性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光の照射を受けて応答する光応答性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト型の結晶構造を持つ量子ドットは、分光感度特性において狭い全半値幅を持ち高い色純度を呈するため、有機EL材料や量子ドット発光材料へ適用することが知られている。また、ハロゲンの組成によって、吸収、発光波長を制御できるため、幅広い波長域の光に応答する材料を提供しやすいという利点がある。
【0003】
特許文献1は、発光素子からの光を吸収してRGB光の少なくともいずれかに変換して発光するペロブスカイト結晶構造を含む量子ドットと、かかる量子ドットを備える光変換層、を備える液晶表示装置を開示している。
【0004】
特許文献2は、発光素子と該発光素子からの光を赤色光、緑色光のそれぞれに変換する異なる組成のペロブスカイト型量子ドットを含む波長変換層をバックライトとして備える液晶表示装置を開示している。特許文献2に記載の液晶表示装置は、バックライトにペロブスカイト型の量子ドットを含む波長変換層を含むことで、バックライトの発光に含まれる赤色と緑色の色純度を高めている。また、特許文献2に記載の液晶表示装置は、波長変換層または発光素子からの光の透過率を制御する液晶素子と光学フィルタと、を含む表示デバイスを備えることで、画素の発光色に応じた分光された表示色の強度を調整している。
【0005】
一方で、異なる組成のペロブスカイト型量子ドットを、同一媒体内で混合させた場合、かかる異なる組成のペロブスカイト型量子ドットの間でハロゲンが交換されることにより互いの組成が変化し、光応答性が変化する(混色)という問題が生じる。
【0006】
特許文献1は、互いに組成が異なるペロブスカイト型量子ドットのそれぞれが有機基を有する保護層を備えることで混色の低減している。特許文献2は、混色について直接的には言及していないものの、緑色発光体としてペロブスカイト型量子ドットを、赤色発光体として、ペロブスカイト型量子ドットに対する反応性が低い非ペロブスカイト型量子ドットを採用することで、混色を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-197782号公報
【特許文献2】特表2021-6900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の波長変換層において、経時とともに組成が変化し混色が生じる場合があった。特許文献1に記載の波長変換層は、各量子ドットに対して設けられた保護層があるものの保護作用が必ずしも十分ではない場合があることが懸念された。また、特許文献2に記載の波長変換層においては、緑色と赤色に対応する量子ドットのうち赤色を、非ペロブスカイト型の量子ドットを採用されていたため、光吸収性、色純度などの波長選択特性が制限される課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、共通の媒体に支持され互い組成が異なるペロブスカイト型量子ドットを含みかつ混色が低減された光応答性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る光応答性組成物は、媒体と、光応答性を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第1のナノ粒子と、第1の有機基と前記第1のナノ粒子に配位する第1の結合部とを有し前記第1のナノ粒子を保護する第1の保護層と、前記媒体と前記第1の保護層との間に位置し前記第1の粒子を保護する第3の保護層と、を含み前記媒体に支持される第1の粒子と、前記第1のナノ粒子と異なる組成を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第2のナノ粒子と、第2の有機基と前記第2のナノ粒子に配位する結合部とを有し前記第2のナノ粒子を保護する第2の保護層と、を含み前記媒体に支持される第2の粒子と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、共通の媒体に支持され互い組成が異なるペロブスカイト型量子ドットを含みかつ混色が低減された光応答性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る光応答性組成物の概略構造を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る第1の粒子(a)(b)、第2の粒子(c)(d)の概略構成を示す部分拡大図である。
【
図3】第2の実施形態に係る光応答性組成物の概略構造を示す図である。
【
図4】第3の実施形態に係る光応答性組成物の概略構造を示す図である。
【
図5】第4の実施形態に係る光応答性組成物を含む波長変換層の概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。これらの実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対配置などは、この発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0014】
<第1の実施形態>
図1、
図2を用いて、第1の実施形態に係る光応答性組成物について説明する。
【0015】
第1の実施形態に係る光応答性組成物100は、媒体70を備える。また、光応答性組成物100は、
図1のように、光応答性を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第1のナノ粒子10と、第1のナノ粒子10を保護する第1の保護層20と、を含み媒体70に支持される第1の粒子30を備える。なお、第1の保護層20は、
図2に示すように、第1の有機基122と第1のナノ粒子10に配位する第1の結合部110とを有することで、第1のナノ粒子10を保護するように構成される。
【0016】
また、第1の粒子30は、媒体70と第1の保護層20との間に位置し第1の粒子を保護する第3の保護層80と、をさらに備えるように構成される。
【0017】
また、光応答性組成物100は、
図1の様に、第1のナノ粒子10と異なる組成を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第2のナノ粒子40と、第2のナノ粒子40を保護する第2の保護層50と、を含み媒体70に支持される第2の粒子60と、を備える。なお、第2の保護層50は、
図2に示すように、第2の有機基123と第2のナノ粒子に配位する結合部111とを有するように構成される。
【0018】
(ナノ粒子)
本実施形態における第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40は、Aサイト(1価のカチオン)、Bサイト(2価のカチオン)及び、Xサイト(ハロゲン化物アニオンを含む1価のアニオン)を構成成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する半導体のナノ結晶が採用される。ペロブスカイト型結晶構造は、ペロブスカイト型構造、ABX3型結晶構造、ABX3型構造と換言される。また、A2B1B2X6と表されるダブルペロブスカイト型結晶構造もペロブスカイト型結晶構造に含まれる。本願明細書において、第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40の少なくともいずれか一方を、発光性ナノ粒子、発光性ナノ結晶、光応答性ナノ結晶、量子ドットをと 換言する場合がある。
【0019】
ナノ粒子の平均粒径は、1nm以上30nm以下であることが好ましく、2nm以上25nm以下であることがより好ましい。平均粒径が1nm未満だと、安定性が 不十分となる場合がある。平均粒径が30nmより大きいと、分散性が不十分となる場合がある。
【0020】
[ペロブスカイト型構造のAサイト]
Aサイトは、1価のカチオンが採用される。Aサイトに採用される1価のカチオンは、アンモニウムカチオン(NH4
+)、及び炭素数6以下のアルキルアンモニウムカチオン、ホルムアミジニウムカチオン(HC(NH2)2
+)、グアニジニウムカチオン(C(NH2)3
+)、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等の含窒素有機化合物カチオンが挙げられ、リチウムカチオン(Li+)、ナトリウムカチオン(Na+)、カリウムカチオン(K+)、ルビジウムカチオン(Rb+)、及びセシウムカチオン(Cs+)等のアルカリ金属カチオンが挙げられる。
【0021】
これらのAサイトに採用される1価のカチオンは、イオン径が小さく結晶格子内に入る大きさであるため、ペロブスカイト化合物が、安定な3次元結晶を形成することができる。
【0022】
炭素数6以下のアルキルアンモニウムカチオンの好ましい例としては、メチルアンモニウムカチオン(CH3NH3
+)、エチルアンモニウムカチオン(C2H5NH3
+)、プロピルアンモニウムカチオン(C3H7NH3
+)等が挙げられる。
【0023】
高い発光効率を得るという観点では、メチルアンモニウムカチオン、ホルムアミジニウムカチオン又はセシウムカチオンの少なくともいずれかをAサイトとすることが好ましく、色変化抑制の観点からは、セシウムカチオンをAサイトとすることがより好ましい。これらのAサイトに採用される1価のカチオンは2種以上を併用してもよい。
【0024】
Aサイトがセシウムカチオンである場合、後述の発光性ナノ結晶第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40の合成時の原料としては、セシウム塩が挙げられる。かかるセシウム塩は、塩化セシウム、臭化セシウム、よう化セシウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、重炭酸セシウム、ぎ酸セシウム、酢酸セシウム、プロピオン酸セシウム、ピバル酸セシウム、シュウ酸セシウムが適宜採用される。これらのセシウム塩の候補の中から、合成方法に応じて適切なものを使用できる。
【0025】
Aサイトがその他のアルカリ金属カチオンである場合は、上述のセシウム化合物のセシウム元素を、その他のアルカリ金属カチオン元素に置き換えた塩等を原料として用いることができる。
【0026】
Aサイトがメチルアンモニウムカチオン等の含窒素有機化合物カチオンである場合は、例えば、メチルアミン等の塩以外の中性化合物を原料として使用することができる。これらの原料は2種以上を併用してもよい。
【0027】
[ペロブスカイト型結晶構造Bサイト]
ペロブスカイト型結晶構造のBサイトは、2価の遷移金属カチオンまたは2価の典型金属カチオンを含む2価のカチオンが採用される。
【0028】
2価の遷移金属カチオンは、スカンジウムカチオン(Sc2+)、チタンカチオン(Ti2+)、バナジウムカチオン(V2+)、クロムカチオン(Cr2+)、マンガンカチオン(Mn2+)、鉄カチオン(Fe2+)、コバルトカチオン(Co2+)、ニッケルカチオン(Ni2+)、銅カチオン(Cu2+)、パラジウムカチオン(Pd2+)、ユウロピウムカチオン(Eu2+)、イッテルビウムカチオン(Yb2+)が採用される。
【0029】
2価の典型金属カチオンは、マグネシウムカチオン(Mg2+)、カルシウムカチオン(Ca2+)、ストロンチウムカチオン(Sr2+)、バリウムカチオン(Ba2+)、亜鉛カチオン(Zn2+)、カドミウムカチオン(Cd2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)、スズカチオン(Sn2+)、鉛カチオン(Pb2+)が採用され得る。
【0030】
これら2価のカチオンの中でも、安定な3次元結晶が成長する点で、2価の典型金属カチオンが好ましく、スズカチオン又は鉛カチオンがより好ましく、高い発光強度を得る観点から、鉛カチオンが特に好ましい。これらの2価のカチオンは2種以上を併用してもよく、ペロブスカイト型結晶構造が、所謂ダブルペロブスカイト型でもよい。
【0031】
Bサイトが鉛カチオンである場合、後述する第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40の合成時の原料としては、鉛化合物が挙げられ、合成方法に応じて適切なものを使用できる。鉛化合物としては、塩化鉛、臭化鉛、よう化鉛、酸化鉛、水酸化鉛、硫化鉛、炭酸鉛、ぎ酸鉛、酢酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、オレイン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛、クエン酸鉛、マレイン酸鉛、鉛アセチルアセトナートが採用される。Bサイトがその他の2価金属カチオンである場合は、上述の鉛化合物の鉛元素を、その他の2価金属カチオン元素に置き換えた塩等を原料として用いることができる。これらの原料は2種以上を併用してもよい。
【0032】
[ペロブスカイト型結晶構造のXサイト]
ペロブスカイト型結晶構造のXは、ハロゲン化物アニオンを含む1価のアニオンが採用される。ハロゲン化物アニオンとしては、フッ化物アニオン(F-)、塩化物アニオン(Cl-)、臭化物アニオン(Br-)、ヨウ化物アニオン(I-)等が挙げられる。中でも、塩化物アニオン、臭化物アニオン又はヨウ化物アニオンが、安定な3次元結晶を形成し、可視光域に強い発光を示す観点から好ましい。発光色は、塩化物アニオンを用いると青、臭化物アニオンを用いると緑、ヨウ化物アニオンを用いると赤となる。
【0033】
ハロゲン化物アニオンは2種以上を併用してもよい。特に塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオンを併用した場合、アニオン種の含有比率に応じて、第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40の発光波長を所望する波長とすることができる。すなわち、特に塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオンを併用した場合、アニオン種の含有比率に応じて、狭い半値全幅を維持したまま、青から赤までの可視光のほぼ全領域をカバーする発光スペクトルを得ることができるため好ましい。
【0034】
Xサイトは、ハロゲン化物アニオン以外の1価のアニオンを含んでいてもよい。このようなハロゲン化物アニオン以外の1価のアニオンは、シアン化物アニオン(CN-)、チオシアン酸アニオン(SCN-)、イソチオシアン酸アニオン(CNS-)等の擬ハロゲン化物アニオンが挙げられる。第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40の合成時の原料としては、塩化セシウム及び臭化鉛のように、Aサイト及びBサイトを対カチオンとした塩や、それ以外のカチオンとの塩等から、合成方法に応じて適切なものを選択できる。
【0035】
本実施形態における第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40は、以下のようなプロセスで製造することができる。例えば、高温中で原料液を混合し、微粒子生成後に急冷して安定な生成物を得るホットインジェクション法、生成物の溶媒への混和性の差を利用して再沈殿により微粒子を得る配位子支援再沈殿法が採用される。
【0036】
また、室温程度の温和な条件下で、Xサイト用の成分を含まない非ハロゲン化物であるAサイト用原料及びBサイト用原料の混合液に、別途調製したXサイトの原料液と混合して微粒子を得る室温合成法も採用される製造方法である。さらにまた、固体原料をミリング等の機械的な混合や超音波処理で反応させ生成物微粒子を得るメカノケミカル法、基板上に原料液塗布後に直接結晶成長させ反応物を得るIn situ合成法に採用される製造方法である。
【0037】
後述の第1の粒子30は、臭素およびヨウ素のうちいずれか一方を多く含有し、第2の粒子60は、臭素およびヨウ素のうちいずれか他方を多く含有することが好ましい。
【0038】
(第1の粒子)
本実施形態において第1の粒子30は、
図1に示すように、ペロブスカイト型結晶構造を有する第1のナノ粒子10と、第1の有機基122と第1のナノ粒子10に配位する第1の結合部110とを有し第1のナノ粒子10を保護する第1の保護層20と、を含む。第1の粒子30は、1粒1粒が離間していても、第1の保護層20を介して、複数の第1の粒子30が繋がって二次粒子を構成していてもよい。
【0039】
(第2の粒子)
第2の粒子60は、ペロブスカイト型結晶構造を有する第2のナノ粒子40と、第2の有機基123と第2のナノ粒子に配位する第2の結合部111とを有し第2のナノ粒子40を保護する第2の保護層50と、を含む。第2の粒子60は、1粒1粒が離間していても、第2の保護層50を介して、複数の第2の粒子60が繋がって二次粒子を構成していてもよい。
【0040】
第1の粒子30は、緑色および赤色のうちいずれか一方を多く発光する発光特性を呈し、第2の粒子60は、緑色および赤色のうちいずれか他方を多く発光する発光特性を呈することが好ましい。
【0041】
(第1の保護層、第2の保護層)
第1のナノ粒子10は、有機基120、122と結合部110を有する第1の保護層20によって、第2のナノ粒子40は、有機基121、123と結合部111を有する第2の保護層50によってそれぞれ保護されている。保護機能が発現するのは、以下の2つの理由によると推定される。1つ目の推定は、親水性を有する結合部がナノ結晶に配位することで、同じく親水性であるハロゲンと、完全にあるいは部分的に結合を作り、ハロゲンがナノ結晶から脱離しにくくなることが推定された。
【0042】
また、2つ目の推定は、有機基により疎水場が作られることで、親水性であるハロゲンがナノ結晶から脱離しにくくなることである。保護層は、低分子化合物から構成されていても、高分子化合物から構成されていてもよい。また、低分子化合物と高分子化合物双方を含んでいてもよい。混色をより効果的に防ぐという観点から、主に高分子化合物から構成されている方が好ましい。
【0043】
高分子化合物としては、以下に挙げる結合部と有機基をそれぞれ含む少なくとも2種類のモノマーを重合させた共重合体(後述)を用いることができる。
【0044】
(第1の結合部、第2の結合部)
第1の結合部110、第2の結合部111としては、カチオン性基、アニオン性基、双性イオン性基、それらの塩が挙げられる。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホリル基、カチオン性基としては、例えば、アミノ基、4級アンモニウムカチオン、双性イオン性基としては、例えばカルボキシベタイン基、ホスホリルコリン基、スルホベタイン基などが挙げられる。
【0045】
第1の結合部110と第2の結合部111は、同じ結合部を採用してもよいし、別の結合部を採用してもよい。
【0046】
(第1の有機基、第2の有機基)
第1の有機基120、122、第2の有機基121、123は、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状のヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、又は、ヘテロアラルキル基、が採用される。第1の有機基120、122、第2の有機基121、123のいずれも、その有機基の一部に置換基を有していても良い。
【0047】
第1の有機基120、122と第2の有機基121、123は、同じ有機基を採用しても良いし、別の有機基を採用しても良い。
【0048】
(第1、第2の保護層の含有量)
第1の保護層20の第1のナノ粒子10に対する含有量は、好ましくは第1のナノ粒子10の含有量を100質量部として、1質量部~1000質量部、好ましくは5質量部~500質量部、より好ましくは10質量部~300質量部である。1質量部未満の場合、保護層としての効果が十分に発揮されず、混色を防止できない場合がある。1000質量部より多い場合、第1の保護層20の媒体70に対する溶解性、分散性が低下し、混色を防止できない場合がある。第1の保護層20の第1のナノ粒子10に占める含有量は、第1のナノ粒子10、第1の保護層20の種類や用途に合わせて適宜調整すればよい。
【0049】
第2の保護層50の第2のナノ粒子40に対する含有量は、好ましくは第2のナノ粒子40の含有量を100質量部として、1質量部~1000質量部、好ましくは5質量部~500質量部、より好ましくは10質量部~300質量部である。1質量部未満の場合、第2の保護層50としての効果が十分に発揮されず、混色を防止できない場合がある。1000質量部より多い場合、第2の保護層50の媒体70に対する溶解性、分散性が低下し、混色を防止できない場合がある。第2の保護層50の第2のナノ粒子40に占める含有量は、第2のナノ粒子40、第2の保護層50の種類や用途に合わせて適宜調整すればよい。
【0050】
第1のナノ粒子10の表面に、第1の保護層20を配位させる方法としては、第1のナノ粒子10の合成後に第1の保護層20を作用させる方法、第1のナノ粒子10の合成時に、第1のナノ粒子10と第1の保護層20とを共存させる方法、等が挙げられる。第2のナノ粒子40の表面に第2の保護層50を配位させる方法は、同様にして、第2のナノ粒子40の合成後に第2の保護層50を作用させる方法、第2のナノ粒子40の合成時に第2のナノ粒子40と第2の保護層50とを共存させる方法、等が挙げられる。
【0051】
(高分子化合物の製造方法)
以下に、第1の保護層20、第2の保護層50に用いることのできる高分子化合物の製造方法について詳細に説明する。高分子化合物の製造方法は、上記の構造のものが得られれば特に限定されるものではないが、例えば以下のような方法(i)または(ii)で製造することができる。
【0052】
すなわち、高分子化合物の製造方法(i)は、結合部、あるいは有機基を含む構造単位を有するモノマーを製造後、かかるモノマーを重合し製造する方法が挙げられる。さらに、高分子化合物の製造方法(ii)は、高分子主鎖を合成後、結合部、あるいは有機基をかかる高分子主鎖に結合する方法が挙げられる。
【0053】
モノマーの入手容易性や、官能基量の制御の点から(i)に示す方法で製造されるのが好ましい。以下、(i)に示す方法を用いて、結合部として双性イオン性基を含有する高分子化合物を合成する方法について詳細に説明する。
【0054】
結合部を高分子化合物中に導入するためのモノマーとしては、ビニルエーテル誘導体、アクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、α―オレフィン誘導体、芳香族ビニル誘導体などを使用することができる。モノマーの製造容易性の観点から、かかるモノマーとしては、アクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体を使用するのが好ましい。
【0055】
対応するアクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体は以下に示す文献の方法などにより製造することができる。
K.Ishihara、他2名、「Polymer Journal」、(日本)、高分子学会、1990年、第22巻、p.355-360
【0056】
上記モノマーの重合方法としては、ラジカル重合、イオン重合が挙げられ、また、分子量分布制御や構造制御を目的とするリビング重合を用いることもできる。工業的にはラジカル重合を用いることが好ましい。
【0057】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の使用、放射線、レーザー光などの光の照射、光重合開始剤と光の照射との併用、加熱などにより行うことができる。上記ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、重合反応を開始させることができるものであれば良く、熱、光、放射線、酸化還元反応などの作用によってラジカルを発生する化合物から選ばれる。
【0058】
例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤などが挙げられる。
【0059】
より具体的には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物、過酸化水素-鉄(II)塩系、BPO-ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩-アルコール系などのレドックス開始剤などが挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系などが挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記ビニルモノマーの重合温度は、用いる重合開始剤の種類により好ましい温度範囲は異なり、特に制限されるものではないが、-30℃~150℃の温度で重合することが一般的であり、より好ましい温度範囲は40℃~120℃である。
【0061】
この際使用される重合開始剤の使用量は、上記モノマー100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下で、目標とする分子量分布の高分子化合物が得られるように使用量を調節するのが好ましい。
【0062】
また、その重合法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、及び塊状重合などいずれの方法を用いることも可能であり、特に限定するものではない。
【0063】
得られた高分子化合物は必要に応じて精製処理を行うことができる。精製方法としては特に制限はなく、再沈殿、透析、カラムクロマトグラフィーなどの方法を使用することができる。
【0064】
製造した高分子化合物の構造は各種機器分析を用いて同定することができる。使用できる分析機器としては核磁気共鳴装置(NMR)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES)などを使用することができる。
【0065】
(媒体)
媒体70、77は、
図1、
図3に示す通り、液体(媒体70)、固体(媒体77)のいずれかから選択される。液体としては、溶媒、重合性化合物を用いることができる。すなわち、媒体70は、重合性化合物150、あるいは、溶媒、を含むことができる。固体としては、ポリマーマトリクスを用いることができる。媒体77は、第1の粒子30,第2の粒子60のいずれをも分散するポリマーマトリクスを含む場合がある。ポリマーマトリクスは重合性化合物を架橋して重合化した重合体を採用することが可能である。ポリマーマトリクスは、受光、発光の光学的な結合面を担保する目的、一次光の失活深さ(侵入深さ)、二次光の取り出し効率、が考慮されたシート厚のシート形態が採用される。溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサンなどのアルカン類、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのシクロアルカン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジルなどのエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、シクロヘキサノン、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールなどのアルコール類を用いることができる。また、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のモノアセテート化合物、1,4-ブタンジオールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のジアセテート化合物、グリセリルトリアセテート等のトリアセテート化合物も用いることができる。重合性化合物の硬化前に溶媒を除去しやすいことから、溶媒の沸点は300℃以下が採用される。溶媒は、溶剤と換言される場合がある。
【0066】
(重合性化合物)
重合性化合物150は、光、熱等のエネルギーを受けて重合が促進され、光応答性組成物に粘性を付与し硬化させる成分となる。重合性化合物は、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物を使用することができる。これらは、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、光重合性化合物又は熱重合性化合物のいずれも使用することができる。本願明細書において、重合性化合物150を重合し粘度を増大した形態を重合体160と換言する場合がある。
【0067】
ラジカル重合性化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート系化合物、二官能(メタ)アクリレート系化合物、三官能以上の(メタ)アクリレート系化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート系化合物、ビニル系化合物などを用いることができる。
【0068】
単官能(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(2―メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0069】
二官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール300ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール700ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0070】
三官能以上の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートを用いることができる。
【0071】
ビニル系化合物としては、例えば、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、メタクリル酸ビニル、N-ビニルピロリドンを用いることができる。
【0072】
カチオン重合性化合物としては、光重合型又は熱重合型のいずれも使用することができる。これらは、単独で使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。代表的なカチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、オキタセン化合物、ビニルエーテル化合物を挙げることができる。
【0073】
上記のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物を含む重合性化合物の使用量は、光応答性組成物全体の質量部に対して、好ましくは1~99質量部、より好ましくは3~90質量部、さらに好ましくは5~80質量部である。
【0074】
媒体70、77は、有機基を有することが好ましい。有機基としては、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状のヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、又は、ヘテロアラルキル基の少なくともいずれかを採用することができる。媒体70、77が有する置換基は、その一部が置換された置換基を有していても良い。
【0075】
(重合開始剤)
重合反応では、一般的に重合開始剤と重合性化合物とを併用する。重合開始剤としては、活性エネルギー線照射や熱により、重合反応を開始する活性種を発生させる化合物であり、公知の重合開始剤を用いることが可能である。重合反応を開始させる主な活性種としては、ラジカルを発生させるラジカル重合開始剤と酸を発生させるカチオン重合開始剤とが挙げられ、これらを併用してもよい。活性エネルギー線によりラジカルを発生させる光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン類;その他フェニルグリオキシリックメチルエステルが挙げられる。
【0076】
光ラジカル重合開始剤の中でも、好ましくは、アミノケトンに代表されるアセトフェノン類、ホスフィン類、オキシムエステル化合物である。これらは、硬化物に求める特性に応じて、単独又は複数を組み合わせで使用することが可能である。ラジカル重合開始剤を用いる場合の使用量は、組成物中の固形分総量100質量部に対して、好ましくは0.01~100質量部であり、より好ましくは0.1~50質量部である。
【0077】
(第3の保護層)
第3の保護層80は、媒体70、77と第1の保護層20との間に位置し、第1の粒子30を保護する。第3の保護層80は、媒体70、77と第1の保護層20との間に位置し、第1の保護層20を保護すると換言される。第3の保護層80は、第3の有機基を側鎖に有する高分子化合物を含有する態様をとる。また、第3の保護層80は、紫外および青色の少なくともいずれかを含む第1の波長帯域と第1のナノ粒子の発光波長に係る第2の波長帯域と、において、それぞれ、第1のナノ粒子より低い吸光度(光学密度)を有することが好ましい。第1の粒子30を含有する第3の保護層80は、直径10nm~10μmの粒子状であることが好ましい。第3の保護層80は、架橋構造を有することが好ましい。また、第3の保護層80は、第1の保護層20が第3の保護層80に接し、第2の保護層50は第3の保護層80に接しないように設けられる。また、第3の保護層80は、第1のナノ粒子10を内包する一方で、第2のナノ粒子40を内包しないように構成される。このように第3の保護層80を設けることで、第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40のそれぞれに由来するハロゲンの媒体70、77を介した交換がより一層制限される。
【0078】
(第3の有機基)
第3の有機基としては、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状のヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、又は、ヘテロアラルキル基の少なくともいずれかを採用することができる。第3の有機基は、その一部が置換された置換基を有していても良い。
【0079】
(第3の保護層の形成方法)
第3の保護層80を形成する手法としては、特に制限されず、第1の粒子30を含む第3の保護層80のバルク体を、トップダウン的に微粒子化する手法、ボトムアップ的に微粒子化する手法が挙げられる。用途に応じて、適宜手法を選択すればよい。
【0080】
トップダウン的に微粒子化する場合、まず第1の粒子30を含む第3の保護層80のバルク体を形成する。バルク体の形成方法は、重合性化合物と第1の粒子30を含む混合物を重合させる方法、第1の粒子30と高分子化合物を混合する方法が挙げられる。バルク体を微粒子化する手法としては、乾式粉砕、湿式粉砕、凍結粉砕、噴霧凍結乾燥などが挙げられる。ボトムアップ的に微粒子化する手法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合、ラジカル重合、エマルション重合、ゾルゲル、再沈殿、マイクロ波加熱などが挙げられる。
【0081】
分散重合としては、例えば、メタクリロキシプロピル基により終端したポリジメチルシロキサンを安定剤として用いて、有機溶媒中でスチレンやメタクリル酸エステルを重合させることで、微粒子を得ることができる。
【0082】
第3の保護層80の第1のナノ粒子に対する含有量は、好ましくは第1のナノ粒子の含有量を1質量部として、1質量部~1000質量部である。
【0083】
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した際、第1のナノ粒子の平均表面間距離が1nm~100nmであることが好ましい。
【0084】
(その他の添加材)
本実施形態において、光応答性組成物は、必要に応じて、酸素除去剤、酸化防止剤、酸化チタン等の散乱剤、界面活性剤、防カビ剤、光安定化剤やその他種々の特性を付与する添加剤、希釈溶剤等と混合して使用してもよい。
【0085】
<第2の実施形態>
図3を用いて、第2の実施形態に係る光応答性組成物について説明する。第2の実施形態に係る光応答性組成物200は、重合性化合物150が架橋され粘度を増加させた重合体160を媒体77が含有する点において、第1の実施形態に係る光応答性組成物100と相違する。
【0086】
<第3の実施形態>
図4を用いて、第3の実施形態に係る光応答性組成物について説明する。第3の実施形態に係る光応答性組成物300は、第2の粒子66が第4の保護層90を有する点において、第1の実施形態に係る光応答性組成物100、第2の実施形態に係る200と相違する。
【0087】
(第4の保護層)
第4の保護層90は、媒体70、77と第2の保護層50との間に位置し、第2の粒子を保護する。第4の保護層90は、媒体70、77と第2の保護層50との間に位置し、第2の保護層50を保護すると換言される。第4の保護層90は、第4の有機基を側鎖に有する高分子化合物を含有することが好ましい。また、第4の保護層90は、紫外および青色の少なくともいずれかを含む第1の波長帯域と第2のナノ粒子の発光波長に係る第3の帯域と、において、それぞれ、第2のナノ粒子より低い吸光度(光学密度)を有することが好ましい。第2の粒子を含有する第4の保護層90は、直径10nm~10μmの粒子状であることが好ましい。第4の保護層90は、架橋構造を有することが好ましい。また、第4の保護層90は、第3の保護層と同様にして、第2の保護層50が第4の保護層90に接し、第1の保護層20は第4の保護層90に接しないように設けられる。また、第4の保護層90は、第2のナノ粒子40を内包する一方で、第1のナノ粒子10を内包しないように構成される。このように第4の保護層90を設けることで、第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40のそれぞれに由来するハロゲンの媒体70、77を介した交換がより一層制限される。
【0088】
(第4の有機基)
第4の有機基としては、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状のヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、又は、ヘテロアラルキル基の少なくともいずれかを採用することができる。第4の有機基は、その一部が置換された置換基を有していても良い。
【0089】
(第4の保護層の形成方法)
第4の保護層90を形成する手法としては、特に制限されず、第2の粒子を含む第4の保護層90のバルク体を、トップダウン的に微粒子化する手法、ボトムアップ的に微粒子化する手法が挙げられる。用途に応じて、適宜手法を選択すればよい。
【0090】
トップダウン的に微粒子化する場合、まず第2の粒子を含む第4の保護層90のバルク体を形成する。バルク体の形成方法は、重合性化合物と第2の粒子を含む混合物を重合させる方法、第2の粒子と高分子化合物を混合する方法が挙げられる。バルク体を微粒子化する手法としては、乾式粉砕、湿式粉砕、凍結粉砕、噴霧凍結乾燥などが挙げられる。ボトムアップ的に微粒子化する手法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合、ラジカル重合、エマルション重合、ゾルゲル、再沈殿、マイクロ波加熱などが挙げられる。
【0091】
分散重合としては、例えば、メタクリロキシプロピル基により終端したポリジメチルシロキサンを安定剤として用いて、有機溶媒中でスチレンやメタクリル酸エステルを重合させることで、微粒子を得ることができる。
【0092】
第4の保護層90の第2のナノ粒子に対する含有量は、好ましくは第2のナノ粒子の含有量を1質量部として、1質量部~1000質量部である。
【0093】
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した際、第2のナノ粒子の平均表面間距離が1nm~100nmであることが好ましい。
【0094】
<第4の実施形態>
流動性を有する光応答性組成物100、200、300は、基材上で、光応答性組成物100、200、300を硬化させた形態においても、ハロゲン交換を低減し組成を安定化する本発明の効果が発現する。光応答性組成物200(100、300)は、他の部材に支持された層形態をとるため波長変換層と換言される場合がある。支持形態には、積層形態、マトリクス材料に分散された分散形態が含まれる。波長変換層は、光応答性組成物を、支持部材(基材)上に塗工し硬化させて、フィルム又はシートまたはパターニングされた画素としたものが挙げられる。
【0095】
図5は、第4の実施形態に係る表示素子400の断面構造を示すものである。
【0096】
表示素子400は、積層方向D1において、発光層410、誘電体多層膜417、波長変換層420が積層されている。積層方向D1において下流側は、表示素子に描画がされるイメージを視聴するユーザが位置する側に一致する。波長変換層420は、画素を分離するブラックマトリクスBMにより隣接する素子に対応する波長変換層と区分けされる。
【0097】
光応答性組成物200は、前述の通り、光重合処理等の重合処理を行うことにより重合性化合物150とともに硬化される。光応答性組成物200は硬化されることにより誘電体多層膜417に支持された固体の光応答性組成物426になる。光応答性組成物426は所定のディメンジョンを満たすように構成されるとことにより表示素子400の波長変換層420を構成する。すなわち、波長変換層420は、重合性化合物150とともに光応答性組成物200の全体が硬化されることにより固相化した層である。
【0098】
発光層410は、第1波長λ1の光L1を発光する光源に該当する。波長変換層420は、発光層410の側において、発光層410と光学的に結合する光学結合面422を有し、発光層410の反対側において波長変換層420により変換されて二次光L2を取り出す取り出し面424を備えている。
【0099】
本実施形態の波長変換層420は、誘電体多層膜417を介して伝搬する波長λ1の一次光L1を受光する。誘電体多層膜417は、発光層410からの一次光の分光透過特性と、波長変換層420において発光する波長λ2の二次光L2の分光反射特性を表示素子400に与える。二次光L2の波長λ2は、一次光L1の波長λ1より長波長である。
【0100】
誘電体多層膜417は、発光層410が発光する第1の波長λ1に対して光透過性を有する他の光学部材に置換することができる。また、取り出し面424の前方(発光層410の反対側)に、不図示の他の光学部材が配置することができる。
【0101】
(波長変換層の形成方法)
波長変換層の形成方法は、特に制限されず、例えば、基材上に光応答性組成物を塗工した後、必要に応じてプレ乾燥を行い、さらに必要に応じて、加熱処理や活性エネルギー線照射を行うことで、膜を硬化させる方法が挙げられる。硬化後の波長変換層の厚みは、好ましくは0.1~200μm、より好ましくは1~100μmである。
【0102】
活性エネルギー線照射における活性エネルギー線とは、熱線、紫外線、可視光線、近赤外線、電子線等の重合、架橋、乾燥等により流動性を低下させ硬化促進する電磁波が適宜選択される。活性エネルギー線の付与の光源としては、100~450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源が好ましい。このような光源としては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、重水素ランプ、蛍光灯、ND-YAG3倍波レーザー、HE-CDレーザー、窒素レーザー、XE-Clエキシマレーザー、XE-Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザー、365nm、375nm、385nm、395nm、405nmに発光波長を有するLEDランプ光源が挙げられる。
【0103】
((測定方法))
各種物性測定は、以下のようにして行うことができる。
【0104】
((分子量分布測定))
第1、2の保護層中の高分子化合物の分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、単分散ポリメタクリル酸メチル換算で算出することができる。GPCによる分子量の測定は、例えば以下に示すように行うことができる。
【0105】
サンプル濃度が1質量%になるようにサンプルを下記溶離液に加え、室温で24時間静置し溶解させた溶液を、ポア径が0.45μmの耐溶剤性メンブレンフィルターでろ過したものをサンプル溶液とし、以下の条件で測定する。
装置:Agilent 1260 infinity system(アジレント・テクノロジーズ社製)
カラム:PFG analytical linear M columns(PSS社製)
溶離液:2,2,2-トリフルオロエタノール
流速:0.2ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:20μL
【0106】
試料の分子量分布の算出にあたっては、標準ポリメタクリル酸メチル樹脂(アジレントテクノロジーズ社製 EasiVial PM ポリマースタンダードキット)により作成した分子量校正曲線を使用する。
【0107】
((組成分析))
第1、2の保護層の組成分析は、核磁気共鳴(NMR)を用いて行うことができる。例えば、日本電子(株)製ECA-600(600MHz)を用い、1H-NMR、及び、13C-NMRのスペクトル測定を行う。その際、内部標準物質としてテトラメチルシランを含む重水素化溶剤中、25℃で測定を行う。化学シフト値は内部標準物質であるテトラメチルシランを0としたppmシフト値(δ値)を読み取る。
【0108】
((結晶構造解析))
第1のナノ粒子、第2のナノ粒子の結晶構造解析、及び組成分析は、X線回折(XRD)を用いて行うことができる。例えば、RINT 2100(リガク製)を用いてX線回折パターンを測定することにより、結晶構造、及び組成を解析できる。分析検体の形態、サイズによっては、断面TEMに付帯する電子線回折(ED)が採用される場合がある。
【0109】
((第1のナノ粒子、第2のナノ粒子の組成分析))
第1のナノ粒子、第2のナノ粒子のそれぞれの組成分析は、XPSとICP発光分光分析を用いて行うこともできる。XPSの信号強度からA及びBのモル比を、ICP発光分光分析(例えば、CIROS CCD(SPECTRO社製))の発光強度からXの濃度を測定することができる。
【0110】
((第1のナノ粒子、第2のナノ粒子の量))
光応答性組成物100に含有される第1のナノ粒子10あるいは第2のナノ粒子40の量は、ICP発光分光分析を用いて測定することができる。例えば、ICP発光分光分析の発光強度からPbの量を測定し、上記方法で求めた第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40の組成情報と比較することで、第1のナノ粒子10、第2のナノ粒子40の量を算出することができる。
【0111】
((ナノ粒子に対する第1、2の保護層の量))
第1、第2のナノ粒子のそれぞれに対する第1、2の保護層の量は、TG-DTA測定によって求めることができる。第1の粒子30または第2の粒子40のNMRの積分強度から求めることもできる。
【0112】
((媒体の組成))
媒体70が液体、流動性を有する形態の場合、NMRと質量分析を用いて組成分析を行うことができる。媒体77が固体(硬化物)の場合、熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて組成分析を行うことができる。
【0113】
((光応答性組成物中に第3の保護層が存在することの確認))
光応答性組成物100,300(媒体70)が液体の場合、遠心分離により光応答性組成物100,300から媒体70と第3の保護層80を含む第1の粒子30を分離することで、確認できる。光応答性組成物200(媒体77)が固体の場合、TEM観察により行うことができる。第3の保護層80が存在しない場合、第1の粒子30が媒体全体に均一に広がって観察されるが、第3の保護層80が存在する場合、分布に偏りが観察される。
【0114】
((第1の粒子30中の第1のナノ粒子10の量))
第1の粒子30に含有される第1のナノ粒子10の量は、ICP発光分光分析を用いて測定することができる。第3の保護層80、第1のナノ粒子10、第1の保護層20を含む混合物を酸分解し、ICP発光分光分析すればよい。第2の粒子60に含有される第2の粒子40の量も同様にして求めることができる。
【0115】
((第1の粒子30の粒径の算出方法))
第3の保護層80を含む第1の粒子30の粒径の算出はTEM観察により行うことができる。
【0116】
((第1の粒子30に含有される第1のナノ粒子10の平均表面間距離))
第1の粒子30に含有される第1のナノ粒子10の平均表面間距離の算出はTEM観察により行うことができる。
【実施例0117】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらにより本開示は限定されるものではない。
【0118】
[高分子化合物aの製造]
冷却管、撹拌機、温度計及び窒素導入管を取り付けた反応容器を用意した。かかる反応容器に3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸26.5部、メタクリル酸ヘキシル42.3部、アゾビスイソブチロニトリル 3.9部、及び2,2,2-トリフルオロエタノール900部を仕込んだ。さらに、かかる反応容器に対して30分間窒素バブリングを行った。
【0119】
得られた反応混合物を窒素雰囲気下、70℃で8時間加熱し、重合反応を完結させた。反応液を室温まで冷却後、水300部を加えて生成物を沈殿させた。遠心分離後、上澄みを除去した。溶媒を減圧留去後、50℃、0.1kPa以下で減圧乾燥させることにより高分子化合物aを得た。NMR 測定により、ポリマー中のスルホベタイン基を含むユニットの比率は18mol%であることを確認した。
【0120】
[高分子化合物bの製造]
高分子化合物aの製造において、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸を26.5部から10.2部に、メタクリル酸ヘキシルを42.3部から45.4部に変更した以外は、高分子化合物aの製造と同様にして、高分子化合物bを製造した。NMR測定により、ポリマー中のスルホベタイン基を含むユニットの比率は12mol%であることを確認した。
【0121】
[高分子化合物cの製造]
高分子化合物aの製造において、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸25.4部を、メタクリル酸4.7部に、メタクリル酸ヘキシルを45.4部から42.3部に変更した以外は、高分子化合物aの製造と同様にして、高分子化合物cを製造した。NMR測定により、ポリマー中のカルボキシ基を含むユニットの比率は18mol%であることを確認した。
【0122】
[高分子化合物溶液の調製]
(高分子化合物aのトルエン溶液)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、高分子化合物a 1部、トルエン99部を仕込み、110℃に昇温し、そのまま5分間加熱した。高分子化合物aが完全に溶解したことを確認した後、室温まで冷却し、高分子化合物aのトルエン溶液を得た。
【0123】
(高分子化合物bのトルエン溶液)
高分子化合物aの代わりに高分子化合物bを用いた以外は、高分子化合物aのトルエン溶液と同様にして高分子化合物bのトルエン溶液を調製した。
【0124】
(高分子化合物cのトルエン溶液)
高分子化合物aの代わりに高分子化合物cを用いた以外は、高分子化合物aのトルエン溶液と同様にして高分子化合物cのトルエン溶液を調製した。
【0125】
[第1のナノ粒子分散液aの製造]
炭酸セシウム10部、オレイン酸27部、1-オクタデセン385部をフラスコに入れ、液温を120℃に加熱し真空ポンプで30分脱気した。さらに乾燥窒素気流下で液温150℃に加熱し30分保持し、カチオン原料液を得た。
【0126】
別途、臭化鉛(II)10部、1-オクタデセン494部をフラスコに入れ、液温を120℃に加熱し真空ポンプで1時間脱気した。オレイン酸89部、オレイルアミン31部、を添加しさらに真空ポンプで30分脱気した。その後窒素フローに代えて液温を185℃とした。
【0127】
カチオン原料液40部を添加し5秒後に氷冷した。酢酸エチル2000部を添加し遠心分離を行ない、上澄み液を除去した。得られた残渣をトルエンに分散して固形分濃度を1重量%に調整し、CsPbBr3のペロブスカイト型結晶構造を有する第1のナノ粒子の分散液aを得た。
【0128】
[第2のナノ粒子分散液bの製造]
臭化鉛(II)10部の代わりに臭化鉛(II)3.2部、ヨウ化鉛(II)9.3部を用いること以外、発光性ナノ結晶分散液aと同様にして、CsPb(Br/I)3のペロブスカイト型結晶構造を有する第2のナノ粒子の分散液bを得た。
【0129】
(実施例1)
[第1の粒子30-1の調製]
上記第1のナノ粒子分散液a 10部を容器に収容し、溶媒を減圧留去した。そこに、高分子化合物aのトルエン溶液10部を加え、1時間攪拌し、溶媒を減圧留去した。ヘキサン10部を加え、第1の粒子30-1のヘキサン分散液を得た。
【0130】
[第2の粒子60-1の調製]
第1のナノ粒子分散液aの代わりに第2のナノ粒子分散液bを用いた以外は、第1の粒子30-1と同様にして、第2の粒子60-1のヘキサン分散液を得た。
【0131】
[第3の保護層80と第1の粒子を含む粒子1の調製]
上記第1の粒子30-1のヘキサン分散液 30部、ヘキサン200部、メタクリロキシプロピル基により終端したポリジメチルシロキサン(Gelest社製、商品名DMS-R22)5部、メタクリル酸メチル30部、トリメチロールプロパントリメタクリレート3部、2,2‘-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)2部を混合し、40℃で2時間反応させた。
【0132】
氷冷して反応を停止させたのち、ヘキサン200部を加え、遠心分離し、上澄みを除去した。ヘキサン400部を加えて再分散させ、遠心分離し、上澄みを除去した。溶媒を減圧留去し、第3の保護層80、第1のナノ粒子10、第1の保護層20を含む第1の粒子30-1を得た。
【0133】
[第4の保護層90、第2のナノ粒子40、第2の保護層50を含む第2の粒子60-1の調製]
第1の粒子30-1の代わりに第2の粒子60-1を用いた以外は、第3の保護層80、第1のナノ粒子10、第1の保護層20を含む第1の粒子30-1と同様にして、第4の保護層90、第2の粒子40、第2の保護層50を含む第2の粒子60-1を得た。
【0134】
[光応答性組成物1の製造]
第3の保護層80、第1のナノ粒子10、第1の保護層20を含む第1の粒子30-1 10部、第4の保護層90、第2の粒子40、第2の保護層50を含む粒子1 10部、アクリル酸ブチル75部、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(IGM Resins社製、商品名OmniradTPO)5部を混合し、光応答性組成物1を得た。
【0135】
(実施例2)
[第1の粒子30-2の調製]
高分子化合物aを高分子化合物cに変更した以外は、第1の粒子30-1のヘキサン分散液と同様にして、第1の粒子30-2のヘキサン分散液を得た。
【0136】
[第2の粒子60-2の調製]
高分子化合物bを高分子化合物cに変更した以外は、第2の粒子60-1のヘキサン分散液と同様にして、第2の粒子60-2のヘキサン分散液を得た。
【0137】
[第3の保護層80、第1のナノ粒子10、第1の保護層20を含む第1の粒子30-2の調製]
第1の粒子30-1の代わりに第1の粒子30-2を用いた以外は、第3の保護層80、第1のナノ粒子10、第1の保護層20を含む第1の粒子30-1と同様にして、第3の保護層80、第1のナノ粒子10、第1の保護層20を含む第1の粒子30-2を得た。
【0138】
[第4の保護層90と第2のナノ粒子40を含む第2の粒子60-2の調製]
第1の粒子30-1の代わりに第1の粒子30-2を用いた以外は、第4の保護層90、第2のナノ粒子40、第2の保護層50を含む第1の粒子30-1と同様にして、第4の保護層90、第2のナノ粒子40、第2の保護層50を含む第2の粒子60-2を得た。
【0139】
[光応答性組成物2の製造]
第1の粒子30-1の代わりに第1の粒子30-2を、第2の粒子60-1の代わりに第2の粒子60-2を用いた以外は、光応答性組成物1と同様にして光応答性組成物2を得た。
【0140】
(実施例3)
[光応答性組成物3の製造]
第2の粒子60-1のヘキサン分散液10部を容器に入れて溶媒を減圧留去し、そこに、第3の保護層80と第1のナノ粒子10を含む第1の粒子30-1 10部、アクリル酸ブチル75部、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(IGM Resins社製、商品名OmniradTPO)5部を混合し、光応答性組成物3を得た。
【0141】
(比較例1)
第1の粒子30-1のヘキサン分散液10部、第2の粒子60-1のヘキサン分散液10部を容器に入れて溶媒を減圧留去し、そこにアクリル酸ブチル75部、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(IGM Resins社製、商品名OmniradTPO)5部を混合し、光応答性組成物4を得た。
【0142】
各光応答性組成物の構成を、表1に示す。
【0143】
【0144】
<光応答性組成物の評価>
得られた光応答性組成物について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0145】
[混色性評価]
各光応答性組成物について、作成直後と5分後に発光ピーク波長を測定した。測定条件と評価基準を以下に示す。
【0146】
<測定条件>
測定装置:絶対PL量子収率測定装置C9920-03(浜松ホトニクス社製)
励起光波長:460nm
励起光積分範囲:励起光波長±10nm
発光積分範囲:(励起光波長+20)nm~770nm
【0147】
<評価基準>
作成直後と5分後で、500nm~600nmの範囲において発光が最大値となる波長の差の絶対値を算出し、以下の基準により評価した。
A:上記波長の差の絶対値が0nm以上20nm未満
B:上記波長の差の絶対値が20nm以上50nm未満
C:上記波長の差の絶対値が50nm以上
【0148】
評価結果を表2に示す。
【0149】
【0150】
表2に依れば、実施例1~3に係る光応答性組成物1~3は、比較例1に係る光応答性組成物4に比べて、混色が低減されている。これは、ペロブスカイト型の構造を持つ2種類のナノ粒子が、特定の構造を持つ複数の保護層により保護されているためであると推測される。
【0151】
本願明細書に記載の各実施形態に係る光応答性組成物は、以下の構成1~18の少なくともいずれかに該当する。
【0152】
・構成1
媒体と、
光応答性を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第1のナノ粒子と、第1の有機基と前記第1のナノ粒子に配位する第1の結合部とを有し前記第1のナノ粒子を保護する第1の保護層と、前記媒体と前記第1の保護層との間に位置し前記第1の粒子を保護する第3の保護層と、を含み前記媒体に支持される第1の粒子と、
前記第1のナノ粒子と異なる組成を有するペロブスカイト型の結晶構造を有する第2のナノ粒子と、第2の有機基と前記第2のナノ粒子に配位する結合部とを有し前記第2のナノ粒子を保護する第2の保護層と、を含み前記媒体に支持される第2の粒子と、
を備える光応答性組成物。
【0153】
・構成2
前記第3の保護層は、第3の有機基を側鎖に有する高分子を含有する構成1に関わる光応答性組成物。
【0154】
・構成3
前記第1の保護層は前記第3の保護層に接し、前記第2の保護層は前記第3の保護層に接しない構成1または2に関わる光応答性組成物。
【0155】
・構成4
前記第1の保護層は、前記第3の保護層により保護される構成1または2に関わる光応答性組成物。
【0156】
・構成5
前記第3の保護層は、前記第1の粒子を内包する一方で、前記第2の粒子を内包しない構成1~4のいずれかに関わる光応答性組成物。
【0157】
・構成6
前記第3の保護層は、紫外および青色の少なくともいずれかを含む第1の波長帯域と前記第1のナノ粒子の発光波長に係る第2の波長帯域と、において、それぞれ、前記第1のナノ粒子より低い吸光度を有する構成1~5のいずれかに関わる光応答性組成物。
【0158】
・構成7
前記媒体は、重合性化合物を含む構成1~6のいずれかに関わる光応答性組成物。
【0159】
・構成8
前記媒体は、溶媒を含む構成7に関わる光応答性組成物。
【0160】
・構成9
前記媒体は、前記第1の粒子と前記第2の粒子とがそれぞれ分散されるポリマーマトリクスを含む構成1~8のいずれかに関わる光応答性組成物。
【0161】
・構成10
前記媒体は、シート状の固体である構成9に関わる光応答性組成物。
【0162】
・構成11
前記第2の粒子は、前記媒体と前記第2の保護層との間に位置し、前記第2の粒子を保護する第4の保護層を備える構成1に関わる光応答性組成物。
【0163】
・構成12
前記第4の保護層は、第4の有機基を側鎖に有する高分子を含有する構成11に関わる光応答性組成物。
【0164】
・構成13
前記第2の保護層は前記第4の保護層に接し、前記第1の保護層は前記第4の保護層に接しない構成11または12に関わる光応答性組成物。
【0165】
・構成14
前記第2の保護層は、前記第4の保護層により保護される構成11~13のいずれかに関わる光応答性組成物。
【0166】
・構成15
前記第4の保護層は、前記第2の粒子を内包する一方で、前記第1の粒子を内包しない請求項11~14のいずれかに関わる光応答性組成物。
【0167】
・構成16
前記第4の保護層は、紫外および青色の少なくともいずれかを含む第1の波長帯域と前記第2のナノ粒子の発光波長に係る第3の波長帯域と、において、それぞれ、前記第1のナノ粒子より低い吸光度を有する構成11~15のいずれかに関わる光応答性組成物。
【0168】
・構成17
前記第1の粒子は、緑色および赤色のうちいずれか一方を多く発光する発光特性を呈し、前記第2の粒子は、緑色および赤色のうちいずれか他方を多く発光する発光特性を呈する構成1~16のいずれかに関わる光応答性組成物。
【0169】
・構成18
前記第1の粒子は、臭素およびヨウ素のうちいずれか一方を多く含有し、前記第2の粒子は、臭素およびヨウ素のうちいずれか他方を多く含有する構成1~17のいずれかに関わる光応答性組成物。