(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141034
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052466
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福谷 研二
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047FA07
5F047FA73
5F047FA90
(57)【要約】
【課題】動力がオフになったときに誤ってチップ部品が基板に接合されてしまうことを防ぐことができる実装装置を提供する。
【解決手段】チップ部品Cを保持するボンディングヘッド4と、ボンディングヘッド4を昇降させる昇降ユニット3と、昇降ユニット3の動作を制御する制御部と、扉部11を有してボンディングヘッド4および昇降ユニット3を囲うカバー部10と、を備え、ボンディングヘッド4が保持するチップ部品Cを基板Sへ押圧することにより基板Sにチップ部品Cを実装する実装装置1であり、制御部は、扉部11の開閉を検知可能であり、昇降ユニット3の動力がオンである状態で扉部11の開放を検知したとき、少なくともボンディングヘッド4の高さが所定の閾値以下である場合には、ボンディングヘッド4の位置を第1の距離だけ上昇させるように昇降ユニット3を動作させた後、昇降ユニット3の動力をオフにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ部品を保持するボンディングヘッドと、
前記ボンディングヘッドを昇降させる昇降ユニットと、
前記昇降ユニットの動作を制御する制御部と、
扉部を有して前記ボンディングヘッドおよび前記昇降ユニットを囲うカバー部と、
を備え、前記ボンディングヘッドが保持するチップ部品を基板へ押圧することにより基板にチップ部品を実装する実装装置であり、
前記制御部は、前記扉部の開閉を検知可能であり、前記昇降ユニットの動力がオンである状態で前記扉部の開放を検知したとき、少なくとも前記ボンディングヘッドの高さが所定の閾値以下である場合には、前記ボンディングヘッドの位置を第1の距離だけ上昇させるように前記昇降ユニットを動作させた後、前記昇降ユニットの動力をオフにすることを特徴とする、実装装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記昇降ユニットの動力がオンである状態で前記扉部の開放を検知したときに前記ボンディングヘッドの高さを確認し、
前記ボンディングヘッドの高さが前記閾値以下である場合には、前記ボンディングヘッドの位置を前記第1の距離だけ上昇させるように前記昇降ユニットを動作させた後、前記昇降ユニットの動力をオフにし、
前記ボンディングヘッドの高さが前記閾値より高い場合には、前記昇降ユニットを動作させることなく前記昇降ユニットの動力をオフにすることを特徴とする、請求項1に記載の実装装置。
【請求項3】
前記第1の距離は、前記昇降ユニットの動力をオフにしたことに伴って前記ボンディングヘッドが降下する距離である第2の距離以上であることを特徴とする、請求項1に記載の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の所定位置にチップ部品を実装する実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板等の基板に複数のチップ部品を実装する実装装置において、たとえば特許文献1に示すようにアライメントカメラがチップ部品の上方に位置してチップ部品と基板を同時に撮像し、チップ部品と基板のアライメントを実施した後チップ部品を実装するものがある。
【0003】
この実装装置では、
図5に示すように基板ステージ102の上方にボンディングヘッド104が設けられており、チップ搬送手段106によって搬送されたチップ部品Cがボンディングヘッド104の下面に保持された状態で昇降ユニット103がボンディングヘッド104を降下させることにより、基板ステージ102に載置された基板Sの所定位置にチップ部品Cを押圧する。そして、基板ステージ102およびボンディングヘッド104が昇温することによってチップ部品Cは基板Sに熱圧着され、チップ部品Cが基板Sに実装される。
【0004】
このチップ部品Cの実装の直前であってチップ部品Cが基板Sに接近した状態において、ボンディングヘッド104に設けられた開口部にアライメントカメラ105が進入してチップ部品Cと基板Sの両方を上方から撮像し、チップ部品Cと基板Sの相対位置のアライメントが行われる。このようにチップ部品Cが基板Sに接近した状態においてアライメントが行われることにより、アライメント後のボンディングヘッド104の高さ方向移動量を極小化することができるため、高さ方向移動時の横方向へのずれを極小化し、基板S上の正確な位置にチップ部品Cを実装することができる。
【0005】
また、上記基板ステージ102、昇降ユニット103、ボンディングヘッド104、アライメントカメラ105、チップ搬送手段106などはカバー部110によって囲われており、これらの機器の稼働中にオペレータが誤って触れて怪我をすることをカバー部110が防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、何らかの異常が実装装置100にて発生したときに、実装装置100内に存在する基板Sやチップ部品Cをオペレータが取り出すことができるよう、カバー部110には扉部111が設けられている。そして、安全仕様上、実装装置100の構成機器の動力がオンである状況で扉部111が解放された際にはこれら構成機器の動力をオフにするように、実装装置100は構成されている。
【0008】
一方、実装装置100が上記のアライメントを実施している最中に扉部111が解放された場合、チップ部品Cと基板Sとが接近した状態でボンディングヘッド104を支持する昇降ユニット103の動力がオフになる。このように昇降ユニット103の動力がオフになったときには、
図6(a)に示す動力オフの直前の状態では基板Sとボンディングヘッド104の距離がhであったのに対し、昇降ユニット103のブレーキ機構の遊び(ガタ)とボンディングヘッド104の自重の影響により、
図6(b)に示すようにボンディングヘッド104は降下して距離はh-Δh2となる。すなわち、チップ部品Cと基板Sとがアライメント時以上に接近してしまう。なお、
図6(b)のように一度の動力オフではチップ部品Cが基板Sに接触しなかったとしても、扉部111の開け閉めが複数回繰り返されるとチップ部品Cが基板Sに接触してしまう。
【0009】
このように誤ってチップ部品Cが基板Sに接触してしまうと、基板ステージ102側の熱によってチップ部品Cが基板Sに接合されてしまう。そしてこのように接合されたチップ部品Cは予定されていた圧力で圧着されたものでないため不良品となり、その結果、基板Sを破棄しなければならなくなるおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記問題点を鑑み、動力がオフになったときに誤ってチップ部品が基板に接合されてしまうことを防ぐことができる実装装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の実装装置は、チップ部品を保持するボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッドを昇降させる昇降ユニットと、前記昇降ユニットの動作を制御する制御部と、扉部を有して前記ボンディングヘッドおよび前記昇降ユニットを囲うカバー部と、を備え、前記ボンディングヘッドが保持するチップ部品を基板へ押圧することにより基板にチップ部品を実装する実装装置であり、前記制御部は、前記扉部の開閉を検知可能であり、前記昇降ユニットの動力がオンである状態で前記扉部の開放を検知したとき、少なくとも前記ボンディングヘッドの高さが所定の閾値以下である場合には、前記ボンディングヘッドの位置を第1の距離だけ上昇させるように前記昇降ユニットを動作させた後、前記昇降ユニットの動力をオフにすることを特徴としている。
【0012】
本発明の実装装置では、昇降ユニットの動力がオンである状態で扉部の開放を検知したとき、ボンディングヘッドの位置を第1の距離だけ高くするように昇降ユニットを動作させた後、昇降ユニットの動力をオフにすることにより、昇降ユニットの動力がオフになった後にチップ部品Cが基板Sに接触してしまうことを防ぐことができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記昇降ユニットの動力がオンである状態で前記扉部の開放を検知したときに前記ボンディングヘッドの高さを確認し、前記ボンディングヘッドの高さが前記閾値以下である場合には、前記ボンディングヘッドの位置を前記第1の距離だけ上昇させるように前記昇降ユニットを動作させた後、前記昇降ユニットの動力をオフにし、前記ボンディングヘッドの高さが前記閾値より高い場合には、前記昇降ユニットを動作させることなく前記昇降ユニットの動力をオフにすると良い。
【0014】
こうすることにより、ボンディングヘッドが不必要に高くなることを防ぎ、その結果実装装置内での予期せぬ干渉を防ぐことができる。
【0015】
前記第1の距離は、前記昇降ユニットの動力をオフにしたことに伴って前記ボンディングヘッドが降下する距離である第2の距離以上であることが好ましい。
【0016】
こうすることにより、アライメント時に扉部が解放されても扉部の解放直前よりもチップ部品が基板に接近することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実装装置により、動力がオフになったときに誤ってチップ部品が基板に接合されてしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実装装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実装装置におけるアライメント動作時の状態を示す図である。
【
図3】本発明の実装装置における扉部解放検知時の動作を示すフロー図である。
【
図4】本発明の実装装置における扉部解放検知時のボンディングヘッドの挙動を示す図である。
【
図5】本発明の実装装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図6】従来の実装装置における扉部解放検知時のボンディングヘッドの挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実装装置を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実装装置の概略構成を示す斜視図である。また、
図2は、実装装置1の一部拡大図であってアライメント動作時の状態を示す図である。
【0021】
図1に示す実装装置1は基台に基板ステージ2と門型フレームが設けられている。基板ステージ2は基板Sを保持して基板面内方向に移動させる機能を有している。門型フレームは昇降ユニット3を基板ステージ2の上方で固定しており、昇降ユニット3の上下駆動軸にボンディングヘッド4が連結されて実装手段(処理手段)が構成されている。また、ボンディングヘッド4にチップ部品Cを搬送するチップ搬送手段6、およびチップ部品Cと基板の位置合わせの際に夫々の位置情報を取得するためのアライメントカメラ5が実装装置1を構成している。
【0022】
また、実装装置1を構成するこれら機器はカバー部10によって囲われている。
【0023】
基板ステージ2は、
図2に示すようにステージ移動機構20と吸着テーブル21によって構成される。吸着テーブル21は表面上に配置した基板Sを吸着保持するものであり、吸着テーブル21は、ステージ移動機構20により、基板Sを保持した状態で、基板S面の面内方向に移動することが可能である。すなわち、本実施形態においては、実装手段を構成する昇降ユニット3が水平方向(XY方向)には固定されているため、ステージ移動機構20は、基板Sに複数設けられた実装箇所を順次ボンディングヘッド4の直下に移動させることができる実装位置移動機構(処理位置移動機構)である。
【0024】
また、吸着テーブル21には加熱機構が設けられており、この吸着テーブル21に載置された基板Sへのチップ部品Cの実装動作時に基板Sを所定の温度まで加熱する。
【0025】
昇降ユニット3は門型フレームに固定されており、上下駆動軸が基板ステージ2の吸着テーブルに対して垂直方向に設けられており、上下駆動軸にボンディングヘッド4を連結している。昇降ユニット3はボンディングヘッド4を上下駆動するとともに、設定に応じた加圧力を印加する機能を有している。
【0026】
また、本実施形態では昇降ユニット3はサーボモータにより駆動している。そして、昇降ユニット3にはブレーキ機構が設けられており、昇降ユニット3の動力がオンの状態ではブレーキ機構は機能せず、動力がオフになったときにはブレーキ機構が機能し、昇降ユニット3に取り付けられたボンディングヘッド4が落下することを防止する。
【0027】
ボンディングヘッド4は、チップ部品Cを保持して(基板ステージ2の吸着テーブルに保持された)基板Sと平行な状態で圧着するものである。ボンディングヘッド4は、ヘッド本体40、ヒーター部41、およびアタッチメントツール42を構成要素としている。ヘッド本体40は昇降ユニット3と連結されており、下側にヒーター部41を固定配置している。ヒーター部41は発熱機能を有し、アタッチメントツール42を介してチップ部品Cを加熱するものである。また、ヒーター部41は減圧流路を用いてアタッチメントツール42を吸着保持する機能を有している。アタッチメントツール42はチップ部品Cを吸着保持するものであり、チップ部品Cの形状に応じて交換される。
【0028】
また、本実施形態における実装装置1では、チップ部品Cのアライメントマークを上から(ボンディングヘッド4越しに)観察する構成としており、アタッチメントツール42が透明部材で形成されている。また、ヒーター部41についてもチップ部品Cのアライメントマークが観察できるように透明部材で形成されている。
【0029】
また、ボンディングヘッド4は、チップ部品Cのアライメントマークおよび基板Sのアライメントマークを観察するため、アライメントカメラ5が進入できる空間が必要であり、本実施形態では
図1に示すようにヘッド本体40には開口が設けてられている。すなわち、ヘッド本体40は、ヒーター部41と連結する底板、底板と連結する側板、両側板と連結する天板にて構成される構造となっている。
【0030】
アライメントカメラ5は、アタッチメントツール42およびヒーター部41を透過して実装ヘッド4越しにチップ部品Cのアライメントマークおよび基板Sのアライメントマークに焦点を合わせて撮像し、チップ部品Cのアライメントマークおよび基板Sのアライメントマークの位置情報を取得するものである。
【0031】
本実施形態では、チップ部品Cと基板Sとが約100umまで接近した状態でチップ部品Cのアライメントマークおよび基板Sのアライメントマークを同時に撮像してアライメント動作を実施する。このようにチップ部品Cと基板Sとが接近した状態でアライメント動作を実施し、チップ部品Cの基板Sへの実装に移行することにより、アライメント後のボンディングヘッド4の高さ方向移動量を極小化することができるため、高さ方向移動時の横方向へのずれを極小化し、基板S上の正確な位置にチップ部品Cを実装することができる。
【0032】
また、アライメントカメラ5は、図示していない駆動機構により、ヘッド本体40の開口内で、基板Sおよびチップ部品Cの面内方向に移動することが可能な構成となっている。さらに、焦点位置が調整できるように、基板Sの垂直方向(Z軸方向)の移動も可能であることが望ましい。ボンディングヘッド4は昇降ユニット3により基板Sと垂直方向に移動するが、この動作はアライメントカメラ5の動作と独立して行うことが可能である。このため、ボンディングヘッド4が垂直方向に移動しても、ヘッド本体40の開口に進入したアライメントカメラ5が干渉しない寸法にヘッド本体40を設計する必要がある。
【0033】
図1に戻り、チップ搬送手段6は、搬送レールとチップスライダによって構成されており、図示しないチップ供給部から供給されたチップ部品Cをチップスライダ61が保持してアタッチメントツール42の直下までスライドして搬送するものである。
【0034】
ここで、図示しないチップ供給部は、チップスライダ上の定まった位置にチップ部品Cを配置する。必要に応じて、チップスライダ61に配置されたチップ部品Cは図示しない撮像手段で配置位置を認識してもよい。このように、チップスライダおよびチップスライダに配置するチップ部品Cの位置を制御することで、アタッチメントツール42の所定範囲内にチップ部品Cを受け渡すことが可能であり、アタッチメントツール42がチップ部品Cを保持した後に、チップ部品Cの保持を解除したチップスライダは退避位置に移動する。
【0035】
以上の基板ステージ2、昇降ユニット3、ボンディングヘッド4、アライメントカメラ5、およびチップ搬送手段6の動作は、図示しない制御部により制御される。
【0036】
カバー部10は、たとえばステンレス製のパネルにより構成されて基板ステージ2、昇降ユニット3、ボンディングヘッド4、アライメントカメラ5、およびチップ搬送手段6といった構成部品を囲い、これら構成部品とオペレータとを分断する。このように各構成部品をカバー部10が囲うことにより、これら構成部品が稼働している際にオペレータが誤ってこれらに接触して怪我を負うことを防ぐ。
【0037】
また、カバー部10には扉部11が設けられている。この扉部11を開放状態にすることにより、オペレータは実装装置1の内部にアクセスすることが可能となり、たとえば異常事態が発生した際に実装装置1内に存在する基板Sやチップ部品Cを取り出すことができる。
【0038】
また、扉部11には、扉部11が閉止状態であるか否かを制御部が検知可能とするためのセンサが設けられており、安全仕様上、実装装置1の構成機器の動力がオンである状況で扉部11が解放された際(閉止状態でなくなった際)には、制御部がそれを検知し、これら構成機器の動力をオフにする動作を行う。すなわち、インターロックが作動する。これにより、扉部11の解放により実装装置1の内部にアクセスすることが可能となったオペレータが稼働中の構成機器と接触することを防ぐことができる。
【0039】
次に、本発明の実装装置1における扉部解放検知時の動作フローを
図3に示す。
【0040】
まず、実装装置1の各構成機器の動力がオンの状態であり実装装置1が動作している場合であってカバー部10の扉部11が解放された際に、これを制御部が検知する(ステップS1)。
【0041】
ステップS1にて扉部11の解放を検知した際、制御部は、各構成機器の動力をオフにする動作を行う前に、まず、制御部は後述するボンディングヘッド4の上昇動作機能が有効となっているか否かを検知する(ステップS2)。この機能が有効となっているか否かは、実装作業を行うためのレシピプログラムで設定されても良いし、実装装置1に設けられたスイッチのオンオフで切り替えられても良い。ここで、機能が無効となっていた場合は、その後即座に後述のステップS5へジャンプする。なお、この機能を無効にする場合というのは、実装装置1のメンテナンス時など本機能が弊害になる場合などを想定している。
【0042】
ボンディングヘッド4の上昇動作機能が有効であった場合、制御部は昇降ユニット3が発する情報をもとに、ボンディングヘッド4の高さ位置を確認し、予め設定されている所定の閾値との比較を行う。そして、ボンディングヘッド4高さ方向の位置が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0043】
ここで、扉部11が解放されたときに実装装置1がチップ部品Cの基板Sへの実装前のアライメント中であれば、チップ部品Cを基板Sへ接近させるためにボンディングヘッド4は比較的低い位置(閾値以下の高さ)に位置している。このようにボンディングヘッド4の高さが閾値以下であると制御部が判断した場合、制御部は予め設定された高さ分、ボンディングヘッド4を上昇させる(ステップS4)。本説明では、このステップS4においてボンディングヘッド4を上昇させる距離を第1の距離と呼ぶ。
【0044】
一方、ステップS3においてボンディングヘッド4の高さ方向の位置が上記閾値よりも高かった場合、本実施形態ではステップS4は実行せず、ステップS5にジャンプする。
【0045】
次に、各構成機器の動力をオフにする前段階として、制御部は特に昇降ユニット3のブレーキ機構をオンにする(ステップS5)。これにより動力オフ後のボンディングヘッド4の落下を防ぐ。
【0046】
最後に、制御部は、実装装置1の各構成機器の動力をオフにし、オペレータが接触してもこれら各構成機器が危険源とならないようにする(ステップS6)。
【0047】
ここで、扉部11が解放された後、稼働する構成機器にオペレータが接触することがないよう、以上のステップS1からステップS6の動作は、可能な限り短い時間で行われる必要があり、本実施形態では約0.5秒でステップS1からステップS6の動作は完了するようにしている。また、扉部11の解放が検知されてからこの時間分経過すると各構成機器の動力がオフになるようにタイマーが設定されている。
【0048】
なお、扉部11の解放時は上記の動作フローを辿るのに対し、扉部11を解放状態から閉止状態にした後は、制御部は各構成機器の動力がオンにした後、昇降ユニット3のブレーキ機構を解除して、実装作業の待機状態に戻る。
【0049】
次に、上記のボンディングヘッド4の上昇動作機能が実施された際の扉部11の解放検知時のボンディングヘッド4の挙動を
図4に示す。
【0050】
図4(a)は、実装装置1がチップ部品Cの基板Sへの実装前のアライメント中であるときに扉部11が解放される直前の状態であり、ボンディングヘッド4の開口に進入したアライメントカメラ5がチップ部品Cおよび基板Sのアライメントマークを同時に撮像するために、チップ部品Cが基板Sに接近した状態である。このときの基板Sとボンディングヘッド4のアタッチメントツール42との距離が、
図4(a)に示すように距離hであったとする。なお、この距離hは100um程度である。
【0051】
図4(b)は、
図3に示した動作フローのステップS1からステップS4までが行われた様子を示す図である。扉部11が解放され、制御部がそれを検知する。そして、ボンディングヘッド4の高さが比較的低く、設定された閾値以下であると判断した後、第1の距離Δh1分ボンディングヘッド4を上昇させる。これにより、基板Sとボンディングヘッド4の距離はh+Δh1となる。
【0052】
図4(c)は、
図3に示した動作フローのステップS5およびステップS6が行われた様子を示す図である。
【0053】
先のステップS4にて、第1の距離Δh1分ボンディングヘッド4が上昇した後、制御部はステップS5にて昇降ユニット3のブレーキ機構を機能させる。その後、制御部はステップS6にて昇降ユニット3を含む各構成機器の動力をオフにする。
【0054】
一方、ブレーキ機構には遊び(ガタ)が存在する。この遊びとボンディングヘッド4の自重の影響によって、ブレーキ機構が機能して動力がオフになった後、ボンディングヘッド4は若干降下する。本説明では、このボンディングヘッド4が降下する距離を第2の距離Δh2と呼び、この第2の距離Δh2分ボンディングヘッド4は基板ステージ2に接近するため、基板Sとボンディングヘッド4の距離は
図4(c)に示す通りh+Δh1-Δh2となる。
【0055】
なお、本実施形態では
図3のステップS3においてボンディングヘッド4を上昇させる否かの閾値、ボンディングヘッド4を上昇させるときの速度、加速度、第1の距離Δh1は実装作業のプログラムにおいてオペレータが設定可能としている。
【0056】
ここで、第1の距離Δh1の設定において、予想される第2の距離Δh2が30umであるのに対し、第1の距離Δh1を30um程度としており、第2の距離Δh2と同等、もしくは第2の距離Δh2よりも大きく設定すると良い。こうすることにより、
図4(c)に示す距離h+Δh1-Δh2は
図4(a)に示す距離h以上となり、すなわち、アライメント時に扉部11が解放されても扉部11の解放直前よりもチップ部品Cが基板Sに接近することを防ぐことができるため、誤ってチップ部品Cが基板Sに接合されることを確実に防ぐことができる。その一方、たとえば予想される第2の距離Δh2が30umであるのに対して第1の距離Δh1を25umとするように、必ずしも第1の距離Δh1を第2の距離Δh2以上にする必要は無い。このような場合であっても、第1の距離Δh1分ボンディングヘッド4を上昇させる動作を行わない従来技術のような場合と比較して誤ってチップ部品Cが基板Sに接合されることを防ぐ効果を奏する。
【0057】
また、本実施形態では
図3のステップS3に示すように制御部が扉部11の解放を検知した際にボンディングヘッド4の高さを確認し、ボンディングヘッド4の高さが所定の閾値よりも高い場合には、制御部はボンディングヘッド4を第1の距離分上昇させないようにしている。こうすることにより、ボンディングヘッド4の高さ位置が不必要に高くなることを防ぎ、その結果実装装置1内での予期せぬ干渉を防ぐことができる。
【0058】
以上の実装装置により、動力がオフになったときに誤ってチップ部品が基板に接合されてしまうことを防ぐことが可能である。
【0059】
ここで、実装装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明ではボンディングヘッドの高さが所定の閾値以下である場合にのみボンディングヘッドを上昇させる動作を行わせているが、常に扉部解放検知時にボンディングヘッドを上昇させてから昇降ユニットの動力をオフにしても良い。
【0060】
また、ボンディングヘッドがチップを保持しているか否か、または基板ステージに基板が載置されているか否かを制御部が検知し、ボンディングヘッドがチップを保持していなかったり基板ステージに基板が載置されていなかったりする場合にはボンディングヘッドの上昇動作を行わせないようにしても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 実装装置
2 基板ステージ
3 昇降ユニット
4 ボンディングヘッド
5 アライメントカメラ
6 チップ搬送手段
10 カバー部
11 扉部
20 ステージ移動機構
21 吸着テーブル
41 ヒーター部
42 アタッチメントツール
C チップ部品
S 基板