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特開2024-141036テープ貼付装置、及びテープ貼付方法
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  • 特開-テープ貼付装置、及びテープ貼付方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141036
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】テープ貼付装置、及びテープ貼付方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20241003BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052468
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096080
【弁理士】
【氏名又は名称】井内 龍二
(74)【代理人】
【識別番号】100194098
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】喜多 由起
(72)【発明者】
【氏名】杉原 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】高島 歩
(72)【発明者】
【氏名】只野 耕太郎
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ08
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HF23
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK23
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】テープを精度よく貼り付けることができるテープ貼付装置を提供すること。
【解決手段】被貼付面上にテープを貼り付けるテープ貼付装置であって、押圧部及びパラレルリンク機構を含む貼付ヘッドと、ベース部、エンド部及び複数のリンク部を含むパラレルリンク機構の動作を制御する制御部とを備え、制御部が、複数のリンク部をそれぞれ動作させてエンド部を変位させることにより、押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面の形状に倣うように動作させる倣い動作制御時に貼付ヘッドの自重補償処理を行う自重補償処理部を備え、自重補償処理部が、複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分と、複数のリンク部のそれぞれに掛かるエンド部及び押圧部を含む押圧機構の荷重の重力成分とをエンド部の変位に応じて算出し、これら算出した荷重を用いて複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出する処理を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付装置であって、
押圧部、及びパラレルリンク機構を含む貼付ヘッドと、
前記パラレルリンク機構の動作を制御する制御部とを備え、
前記押圧部が、前記テープを前記被貼付面に貼り付けるものであり、
前記パラレルリンク機構が、
ベース部、前記押圧部を保持するエンド部、及び前記ベース部と前記エンド部との間に設けられる複数のリンク部を含み、
前記制御部が、
前記複数のリンク部をそれぞれ動作させて前記エンド部を変位させることにより、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させる倣い動作制御時に前記貼付ヘッドの自重を補償する処理を行う自重補償処理部を備え、
該自重補償処理部が、
前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分と、前記複数のリンク部のそれぞれに掛かる前記エンド部及び前記押圧部を含む押圧機構の荷重の重力成分とを前記エンド部の変位に応じて算出し、これら算出した荷重を用いて前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出する処理を実行することを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項2】
前記複数のリンク部のそれぞれが、直動部を有するアクチュエータを含み、
前記自重補償処理部が、
前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分として、
前記直動部の荷重の重力成分を算出することを特徴とする請求項1記載のテープ貼付装置。
【請求項3】
前記直動部の荷重の重力成分が、
前記直動部の変位量及び/又は前記直動部の姿勢を考慮して算出されることを特徴とする請求項2記載のテープ貼付装置。
【請求項4】
前記押圧機構が、
少なくとも前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動可能とする回動機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載のテープ貼付装置。
【請求項5】
テープ貼付装置を用いて被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付方法であって、
前記テープ貼付装置が、
押圧部、及びパラレルリンク機構を含む貼付ヘッドと、
前記パラレルリンク機構の動作を制御する制御部とを備え、
前記押圧部が、前記テープを前記被貼付面に貼り付けるものであり、
前記パラレルリンク機構が、
ベース部、前記押圧部が取り付けられるエンド部、及び前記ベース部と前記エンド部との間に設けられる複数のリンク部を含み、
前記制御部が、
前記複数のリンク部をそれぞれ動作させて前記エンド部を変位させることにより、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させる倣い動作制御時に前記貼付ヘッドの自重を補償する処理を行うステップを実行し、
該ステップが、
前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分と、前記複数のリンク部のそれぞれに掛かる前記エンド部及び前記押圧部を含む押圧機構の荷重の重力成分とを前記エンド部の変位に応じて算出し、これら算出した荷重を用いて前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出することを特徴とするテープ貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテープ貼付装置、及びテープ貼付方法に関し、より詳細には、テープを被貼付面に貼り付けることにより、繊維強化プラスチック(FRP)成形品などを製造する際に用いられるテープ貼付装置、該装置を用いたテープ貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
予め樹脂が含浸された炭素繊維等の繊維束をテープ状に成形したもの(プリプレグテープ、UDテープなどとも呼ぶ)を被貼付面に貼り付けていくことで、所望の形状をした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)成形品を製造する方法が知られている。
【0003】
これらの製法は、ATL(Auto Tape Layup)、ATW(Auto Tape Welding)、AFP(Auto Fiber Placement)など種々の称呼があるが、これらは厳密に区別されているものでない。本明細書においては、テープを押圧しながら被貼付面に貼り付けていく製法を総称してATLと呼び、その装置(テープ貼付装置)をATL装置と呼ぶこととする。
【0004】
このようなATL装置の一例が下記の特許文献1に開示されている。
特許文献1記載のATL装置は、多関節ロボットと、該多関節ロボットのアーム先端に取り付けられたATLヘッドとを含んで構成されている。前記ATLヘッドが押圧ローラを備え、前記多関節ロボットが前記ATLヘッドの位置及び/又は姿勢を制御して、前記押圧ローラとワークの被貼付面との間にテープを挟持しながら前記押圧ローラを前記被貼付面に押し付けることによって前記テープが貼り付けられていく。
【0005】
前記多関節ロボットによる前記ATLヘッドの位置及び/又は姿勢の制御は、前記ワークの3次元設計データに基づく座標データなどを用いて行われており、前記ATL装置は、前記ATLヘッドを被貼付面上の貼付開始点から貼付終了点まで点間移動させながら前記テープを貼り付けるようになっている。
【0006】
被貼付対象である前記ワークは、例えば、熱可塑性樹脂の射出成形品などの3次元形状をした成形品であるため、前記ワークは、設計上の形状及び寸法に対して形状誤差を有していることが多い。そのため、前記ATLヘッドの点間移動の軌跡と、前記ワークの被貼付面の形状との間に誤差が生じる場合があった。このような場合、特許文献1記載のATL装置では、被貼付面に対する前記ATLヘッドによる前記テープの押圧が過不足する箇所が生じる、すなわち、被貼付面に対する前記テープの押圧状態にばらつきが生じる虞があった。
【0007】
そのため、被貼付面に対する前記ATLヘッドによる前記テープの押圧状態のばらつきを低減できる技術が望まれていた。このような要望に対して、例えば、下記の特許文献2に開示されたATL装置が提案されている。
【0008】
特許文献2記載のATL装置は、テープを押圧しながらワークの被貼付面に貼り付ける押圧ローラと、該押圧ローラの押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するパラレルリンク機構とを備えているATLヘッド(貼付ヘッド)を含んで構成されている。
【0009】
前記パラレルリンク機構は、ベース部と、前記押圧ローラが取り付けられるエンド部と、前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられた複数のリンク部とを備えている。
これら複数のリンク部は、伸縮可能なアクチュエータで構成され、前記ATL装置は、各リンク部の長さを制御して、前記エンド部に支持された前記押圧ローラの押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するように構成されている。
【0010】
すなわち、前記ATL装置は、前記パラレルリンク機構を制御して、前記押圧ローラを前記被貼付面の形状に倣うように移動させながら、前記テープを前記被貼付面に押圧しながら貼り付けていくように構成されている。
したがって、前記ワークが幾らかの形状誤差を有している場合であっても、前記ATL装置は、前記パラレルリンク機構によって前記押圧ローラを被貼付面の形状に倣うように移動させることにより、前記押圧ローラによるテープの押圧状態のばらつきを低減することが可能となっている。
【0011】
[発明が解決しようとする課題]
しかし、上記特許文献2記載のATL装置では、以下に説明するようにテープを精度よく貼り付ける動作を行えない場合があった。
前記パラレルリンク機構の前記エンド部は、複数のリンク部によって支持され、また、前記エンド部には、前記押圧ローラの他、テープを搬送するフィーダーやテープを加熱するヒータなどの加熱手段が取り付けられていることもある。
したがって、前記ATL装置では、複数のリンク部が前記エンド部に掛かる各部の荷重(総荷重ともいう)を支持しつつ、複数のリンク部の動作制御により前記押圧ローラを被貼付面に押圧する力(押圧力)を制御するように構成されている。
【0012】
そのため、前記押圧力が前記総荷重より大きくなる場合、すなわち、前記押圧力が高荷重となる場合、前記ATL装置は、前記エンド部をワークに押し付ける方向に各リンク部を制御することとなる。このような制御の場合は、前記エンド部の位置や姿勢を比較的容易に安定させることが可能であるため、前記押圧ローラの押圧位置や押圧姿勢も比較的容易に安定させることができ、テープの押圧状態のばらつきを抑えることが可能である。
【0013】
一方で、前記押圧力が前記総荷重と同等、又は前記総荷重より小さくなる場合、すなわち、前記押圧力が低荷重となる場合、前記ATL装置は、前記エンド部を持ち上げる方向に各リンク部を制御することとなる。このような制御の場合は、前記エンド部の位置や姿勢を安定させることが容易ではなく、そのため、前記押圧ローラの押圧位置や押圧姿勢が安定せずに、テープの押圧状態にばらつきが生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2018-149730号公報
【特許文献2】国際公開第2020/184237号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、パラレルリンク機構のエンド部の位置及び/又は姿勢を安定させて、テープを精度よく貼り付けることができるテープ貼付装置、及びテープ貼付方法を提供することを目的としている。
【0016】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、貼付ヘッドの倣い動作制御時に実行する前記貼付ヘッドの自重を補償する処理を改良することによって、押圧力が低荷重となる場合であっても、パラレルリンク機構のエンド部の位置及び/押圧ローラの押圧位置及び/又は押圧姿勢を安定させることができることを知見した。本発明者等は、当該知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0017】
上記目的を達成するために本発明に係るテープ貼付装置(1)は、
被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付装置であって、
押圧部、及びパラレルリンク機構を含む貼付ヘッドと、
前記パラレルリンク機構の動作を制御する制御部とを備え、
前記押圧部が、前記テープを前記被貼付面に貼り付けるものであり、
前記パラレルリンク機構が、
ベース部、前記押圧部を保持するエンド部、及び前記ベース部と前記エンド部との間に設けられる複数のリンク部を含み、
前記制御部が、
前記複数のリンク部をそれぞれ動作させて前記エンド部を変位させることにより、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させる倣い動作制御時に前記貼付ヘッドの自重を補償する処理を行う自重補償処理部を備え、
該自重補償処理部が、
前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分と、前記複数のリンク部のそれぞれに掛かる前記エンド部及び前記押圧部を含む押圧機構の荷重の重力成分とを前記エンド部の変位に応じて算出し、これら算出した荷重を用いて前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出する処理を実行することを特徴としている。
【0018】
上記テープ貼付装置(1)によれば、前記自重補償処理部が、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出する処理を実行する際に、前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分に対する自重補償分と、前記押圧機構の荷重の重力成分に対する自重補償分とを切り分けて処理することが可能となる。
したがって、前記押圧部の前記倣い動作制御時に前記エンド部が変位する場合であっても、前記複数のリンク部のそれぞれの重心位置と、前記押圧機構の重心位置とが変化しないものとして、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出することができる。
そのため、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出する処理において、前記複数のリンク部及び前記押圧機構を含めた重心位置の変化を考慮する必要がなくなり、前記算出する処理を簡略化できるとともに、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力の算出精度を高めることが可能となる。
これにより、前記被貼付面に対する前記押圧部による押圧力が低荷重となる場合であっても、前記倣い動作制御時における前記エンド部の位置及び/又は姿勢を安定させることができ、前記テープの押圧状態のばらつきを抑えることができ、前記テープを前記被貼付面に精度よく貼り付けることができる。
【0019】
また本発明に係るテープ貼付装置(2)は、上記テープ貼付装置(1)において、
前記複数のリンク部のそれぞれが、直動部を有するアクチュエータを含み、
前記自重補償処理部が、
前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分として、
前記直動部の荷重の重力成分を算出することを特徴としている。
【0020】
上記テープ貼付装置(2)によれば、前記自重補償処理部が、前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分として、前記直動部の荷重の重力成分を算出するので、前記自重補償処理部が、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出する処理を実行する際に、前記エンド部の変位に応じて伸縮する前記直動部それぞれの荷重の重力成分に対する自重補償分と、前記押圧機構の荷重の重力成分に対する自重補償分とを切り分けて処理することが可能となる。したがって、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力の算出精度をさらに高めることができ、上記テープ貼付装置(1)で得られる効果を高めることができる。
【0021】
また本発明に係るテープ貼付装置(3)は、上記テープ貼付装置(2)において、
前記直動部の荷重の重力成分が、
前記直動部の変位量及び/又は前記直動部の姿勢を考慮して算出されることを特徴としている。
【0022】
上記テープ貼付装置(3)によれば、前記直動部の荷重の重力成分が、前記エンド部の変位に応じて伸縮する前記直動部の変位量及び/又は前記直動部の姿勢を考慮して算出される。すなわち、前記直動部それぞれの荷重の重力成分に対する自重補償分の算出が、前記倣い動作制御時における前記エンド部の変位に応じて伸縮する前記直動部の変位量及び/又は前記直動部の姿勢を考慮して行われるので、前記自重補償分の算出精度を高めることができる。これにより、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力の算出精度をさらに高めることができ、上記テープ貼付装置(2)で得られる効果をさらに高めることができる。
【0023】
また本発明に係るテープ貼付装置(4)は、上記テープ貼付装置(1)~(3)のいずれかにおいて、
前記押圧機構が、
少なくとも前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動可能とする回動機構をさらに備えていることを特徴としている。
【0024】
上記テープ貼付装置(4)によれば、前記押圧機構が前記回動機構をさらに備えているので、前記自重補償処理部が、前記複数のリンク部のそれぞれに掛かる前記押圧機構の荷重の重力成分を算出する際に、前記回動機構の荷重の重力成分も含めて算出することとなる。すなわち、前記押圧機構の荷重の重力成分に対する自重補償分に前記回動機構の荷重の重力成分に対する自重補償分も含めたものとして処理することにより、前記押圧機構に前記回動機構を備えている場合でも、上記テープ貼付装置(1)と同様の効果を得ることができる。
【0025】
また本発明に係るテープ貼付方法(1)は、テープ貼付装置を用いて被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付方法であって、
前記テープ貼付装置が、
押圧部、及びパラレルリンク機構を含む貼付ヘッドと、
前記パラレルリンク機構の動作を制御する制御部とを備え、
前記押圧部が、前記テープを前記被貼付面に貼り付けるものであり、
前記パラレルリンク機構が、
ベース部、前記押圧部が取り付けられるエンド部、及び前記ベース部と前記エンド部との間に設けられる複数のリンク部を含み、
前記制御部が、
前記複数のリンク部をそれぞれ動作させて前記エンド部を変位させることにより、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させる倣い動作制御時に前記貼付ヘッドの自重を補償する処理を行うステップを実行し、
該ステップが、
前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分と、前記複数のリンク部のそれぞれに掛かる前記エンド部及び前記押圧部を含む押圧機構の荷重の重力成分とを前記エンド部の変位に応じて算出し、これら算出した荷重を用いて前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出することを特徴としている。
【0026】
上記テープ貼付方法(1)によれば、前記ステップにおいて、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出する処理を実行する際に、前記複数のリンク部自体のそれぞれの荷重の重力成分に対する自重補償分と、前記押圧機構の荷重の重力成分に対する自重補償分とを切り分けて処理することが可能となる。
したがって、前記押圧部の前記倣い動作制御時に前記エンド部が変位する場合であっても、前記複数のリンク部のそれぞれの重心位置と、前記押圧機構の重心位置とが変化しないものとして、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出することができる。
そのため、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力を算出する処理において、前記複数のリンク部及び前記押圧機構を含めた重心位置の変化を考慮する必要がなくなり、前記算出する処理を簡略化できるとともに、前記複数のリンク部のそれぞれで補償する力の算出精度を高めることが可能となる。
これにより、前記被貼付面に対する前記押圧部による押圧力が低荷重となる場合であっても、前記倣い動作制御時における前記エンド部の位置及び/又は姿勢を安定させることができ、前記テープの押圧状態のばらつきを抑えることができ、前記テープを前記被貼付面に精度よく貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係るATL装置の構成例を示す全体斜視図である。
図2図1に示すATL装置のATLヘッド周辺の拡大斜視図である。
図3】ATLヘッドの動作を制御する構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態に係るATL装置のハンドリング制御部とATLヘッド制御部とが行うテープ貼付処理の一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態に係るATL装置のATLヘッド制御部が行う倣い動作制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態に係るATL装置のATLヘッド制御部が行う倣い動作制御処理で行われる自重補償処理を説明するための模式図である。
図7】参考例に係るATL装置のATLヘッド制御部が行う倣い動作制御処理で行われる自重補償処理を説明するための模式図である。
図8】別の実施の形態に係るATL装置におけるATLヘッドの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るテープ貼付装置、及びテープ貼付方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態に係るATL装置の構成例を示す全体斜視図である。図2は、図1に示すATL装置のATLヘッド周辺の拡大斜視図である。図3は、図2に示すATLヘッドの動作を制御する構成を示すブロック図である。なお、ATL装置は本発明に係るテープ貼付装置の一例であり、ATLヘッドは貼付ヘッドの一例である。また、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向とし、XY平面と垂直する方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0029】
ATL装置10は、テープで補強された成形品を製造するための装置であり、図1に示すように、ATL装置10は、テープ1を押圧するATLヘッド20と、ATLヘッド20の押圧位置を制御するハンドリング機構70とを備えている。ATLヘッド20は、テープ1を所定の荷重でワーク2に押圧するためのユニットであり、ハンドリング機構70に取り付けられている。
【0030】
ハンドリング機構70は、ATLヘッド20がテープ1を押圧している状態で、ワーク2の形状に応じてATLヘッド20を移動させる動作を行い、ワーク2の被貼付面2aにテープ1を貼り付けていくための装置である。
ATL装置10は、ATLヘッド20とハンドリング機構70の各部を動作させて、ATLヘッド20の位置や姿勢を制御しながらテープ1をワーク2に押圧しながら貼り付けていく機能を備えている。
【0031】
ワーク2は、例えば、3次元形状を有する成形品であり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂製の成形品であってもよいし、金属製の成形品などであってもよい。
【0032】
テープ1は、例えば、繊維束の少なくとも一部に予め樹脂を含浸させてテープ状にしたものであり、熱可塑性の樹脂が含浸されたもの(UDテープとも呼ばれる)や、熱硬化性の樹脂が含浸されたもの(プリプレグテープとも呼ばれる)などが適用される。また、テープ1は、炭素繊維を含むものでもよいし、樹脂テープに多数の短い繊維が混ぜ込まれたものでもよい。テープ1は、ワーク2の材質などに応じて、その種類が適宜選択される。また、テープ1は、複数のテープが並列に配置された形態のものであってもよい。
【0033】
ハンドリング機構70は、たとえばATLヘッド20をXYZ軸方向に並進運動可能な機構(3自由度)を備えている装置、本実施の形態では、図1に示すガントリ構造体71(直交座標形機構)で構成されている。なお、別の構成例では、ハンドリング機構70が多関節ロボット(シリアル多関節機構)などの汎用産業用ロボットで構成されてもよい。
【0034】
ガントリ構造体71の各部の動作制御は、図3に示すハンドリング制御部70aにより実行される。ハンドリング制御部70aは、例えば、演算処理装置や内部記憶装置などを備えた汎用のコンピューター装置で構成されている。そして、ハンドリング制御部70aには、ワーク2の被貼付面2aの3次元座標データ、これら3次元座標データなどに基づいて各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。また、ハンドリング制御部70aは、3次元座標データなどを基に予め、テープ1の貼り付けを開始する被貼付面2a上の所定位置(始点S)と、テープ1の貼り付けを完了する被貼付面2a上の所定位置(終点E)を指定して、ATLヘッド20の押圧位置の制御を行うことが可能となっている。
【0035】
図1に示すガントリ構造体71は、X軸直動機構72と、Y軸直動機構74と、Z軸直動機構75とを備えている。
X軸直動機構72は、X軸ガイド部72aと、X軸ガイド部72aに摺動可能に取り付けられたX軸スライドテーブル72bと、X軸スライドテーブル72b上にヨー(θz)方向に回動可能に設けられたXθz軸ステージ73とを含んで構成されている。Xθz軸ステージ73上にワーク2が載置されるようになっている。
【0036】
ガントリ構造体71は、X軸直動機構72によりXθz軸ステージ73上のワーク2をX軸方向に並進運動させたり、Xθz軸ステージ73によりワーク2をヨー(θz)方向に回動運動させたりすることが可能に構成されている。
【0037】
Y軸直動機構74は、X軸直動機構72の上方にY軸方向に架け渡された門型のY軸ガイド部74aと、Y軸ガイド部74aに摺動可能に取り付けられたY軸スライダ74bとを含んで構成されている。
【0038】
Z軸直動機構75は、Y軸スライダ74bに取り付けられたZ軸ガイド部75aと、Z軸ガイド部75aに摺動可能に取り付けられたZ軸スライダ75bと、Z軸スライダ75bに取り付けられたZ軸ブラケット75cとを含んで構成されている。Z軸ブラケット75cの下端部にATLヘッド取付部76(図2、3参照)が取り付けられ、ATLヘッド取付部76にATLヘッド20が取り付けられている。
【0039】
ガントリ構造体71は、Y軸直動機構74によりATLヘッド20をY軸方向に並進運動させたり、Z軸直動機構75によりATLヘッド20をZ軸方向に並進運動させたり(被貼付面2aに対して昇降させたり)することが可能に構成されている。
【0040】
ATLヘッド20は、図2図3に示すように被貼付面2aにテープ1を押し付ける押圧部30と、押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作するパラレルリンク機構40とを備えている。
さらにATLヘッド20は、テープ1を押圧部30に向けて送り出すフィーダー50と、フィーダー50から送り出されたテープ1と被貼付面2aの少なくともいずれかを加熱する加熱手段60とを備えている。ATLヘッド20の各部の動作は図3に示すATLヘッド制御部46gにより制御されるようになっている。
【0041】
押圧部30は、テープ1を介して被貼付面2aを押圧し、テープ1を被貼付面2aに圧着させるためのものであり、テープ1を押圧する押圧ローラ31と、押圧ローラ31を回転軸31a中心に回転可能に支持するローラ支持部32とを備え、ローラ支持部32がパラレルリンク機構40のエンド部42に取り付けられている。押圧ローラ31は、テープ1の特性、又はワーク2の材質などに応じて、樹脂ローラ、弾性ローラ、又は金属ローラなどで構成される。押圧ローラ31のサイズ(直径、幅)は、使用するテープ1の種類やサイズ、ワーク2の種類や形状に応じて適宜選択される。なお、別の構成例では、押圧ローラ31に代えて、押圧シューなどの押圧部材を用いてもよい。
【0042】
フィーダー50は、テープ1を搬送して押圧ローラ31と被貼付面2aとの間にテープ1を送り出すためのものであり、取付ガイド61を介してローラ支持部32に取り付けられている。このフィーダー50は、1組の搬送ベルト対51を有し、図示しないモータの動力により搬送ベルト対51を回転駆動させて、テープ1を搬送するように構成されている。なお、フィーダー50は、ボビンからテープ1を巻き出す巻出機構(図示せず)が搭載されたものでもよいし、予め所定の長さに裁断されたテープ1を供給するものでもよい。また、ATLヘッド20とは別に設置された巻出機構(図示せず)からテープ1を巻き出し、搬送経路に沿ってフィーダー50までテープ1を供給する構成としてもよい。また、フィーダー50内に、ヒータを設け、搬送ベルト対51が所定温度に予熱される構成としてもよい。
【0043】
加熱手段60は、フィーダー50により送り出されたテープ1と被貼付面2aの少なくともいずれかを非接触で加熱可能な装置、例えば、赤外線ランプ、レーザー、IRランプなどの輻射光源や熱風ノズルなどの熱風源、又はこれらを組み合わせたもので構成されている。なお、加熱手段60は必須の要素ではなく、テープ1などへの加熱処理が不要である場合は、ATLヘッド20に加熱手段60を設けない構成としてもよい。また、取付ガイド61に加熱手段60の着脱部(図示せず)を設けて、加熱手段60を着脱可能な構成としてもよい。
【0044】
パラレルリンク機構40は、被貼付面2aの形状に倣うように押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するためのものである。
パラレルリンク機構40は、図2図3に示すようにガントリ構造体71のATLヘッド取付部76に取り付けられるベース部41と、押圧部30を保持するエンド部42と、ベース部41とエンド部42との間に並列に設けられる複数のリンク部43とを備えている。本実施の形態では、エンド部42、押圧部30、フィーダー50、及び加熱手段60を含んで押圧機構33Aが構成されている。
【0045】
各リンク部43は、自身の両端にユニバーサルジョイント、又は球面ジョイントなどの自在継手44、45と、これら自在継手44、45の間に設けられるエアシリンダ46とを備えている。エアシリンダ46が、直動部を有するアクチュエータの一例である。
パラレルリンク機構40は、複数のリンク部43の各々の長さをエアシリンダ46によるロッド部46bの伸縮動作によって制御することにより、エンド部42の位置(並進)及び/又は姿勢(回転)を変化させることが可能となっている。そして、エンド部42の位置(並進)及び/又は姿勢(回転)を変化させることにより、押圧ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させることが可能となっている。
【0046】
パラレルリンク機構40は、一般的に3本~6本のリンク部43で構成されるが、押圧ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させることが可能であれば、リンク部43の本数は特に限定されない。仮に、リンク部43の本数を少なくした場合、パラレルリンク機構40の構成を簡素化することができ、リンク部43の本数を多くした場合、エンド部42に取り付けられる部品の支持力が高まり、パラレルリンク機構40の動作に伴うモーメントの影響を受けにくくすることができる。
【0047】
また、ハンドリング機構70の動作機能(自由度)などを考慮して、パラレルリンク機構40の自由度を設定してもよい。例えば、ガントリ構造体71の自由度が、XYZ軸方向の並進3自由度である場合に、パラレルリンク機構40は、XYZ軸方向の並進運動と、Y軸(ロール(θy)方向)回転運動と、X軸(ピッチ(θx)方向)回転運動とが可能な5自由度の構成としてもよい。なお、この場合、自在継手44、45の自由度を調整することによりZ軸(ヨー(θz)方向)回転運動が規制される構成となっている。また、ハンドリング機構70の動作機能に関わらずに、パラレルリンク機構40に、6自由度、すなわち、並進3方向、回転3方向に運動可能な機構が採用されてもよい。
【0048】
エアシリンダ46は、図2図3に示すように空気が供給されるシリンダ部46aと、シリンダ部46a内(両室)の圧力に応じて進退(変位)するロッド部46bとを備えている。エアシリンダ46は、ロッド部46bの変位量を制御することで、押圧ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢を制御するためのものであり、また、ロッド部46bを変位させることで押圧ローラ31を所定の荷重(押圧力)で被貼付面2aに押し付けるためのものでもある。なお、エアシリンダ46は、複動型シリンダで構成することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0049】
エアシリンダ46には、シリンダ部46a内の圧力を検出する圧力センサ46c(図3参照)と、ロッド部46bの変位を検出する変位センサ46d(図2、3参照)とが設けられている。変位センサ46dは、ロッド部46bの変位量を測定できるものであればよく、例えば、磁気式のリニアエンコーダでもよいし、光学式のリニアエンコーダなどであってもよい。
【0050】
シリンダ部46aは、圧力センサ46cを介してサーボバルブ46eに接続されている。サーボバルブ46eは、圧縮した空気を出力する空気圧供給部46f(例えば、コンプレッサなど)に接続されており、シリンダ部46a内への空気の流入量や排気量を調整し、シリンダ部46aの両室の圧力(内圧)を制御できるようになっている。この圧力制御によりロッド部46bの変位が制御されるようになっている。なお、別の構成例では、サーボバルブ46eに代えて、電空レギュレーターなどの空気圧制御機器を用いてもよい。
【0051】
また、圧力センサ46cで検出された圧力信号と変位センサ46dで検出された変位信号は、それぞれATLヘッド制御部46gに出力される。ATLヘッド制御部46gは、例えば、演算処理装置や内部記憶装置などを備えた汎用のコンピューター装置で構成されている。このATLヘッド制御部46gには、ワーク2の被貼付面2aの3次元座標データ(設計データ)の他、これら3次元座標データ、前記圧力信号、前記変位信号などに基づいてATLヘッド20の各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。該プログラムには、後述するステップ図4図5に示すフローチャートの処理を実行するためのプログラムが含まれている。
【0052】
ATLヘッド制御部46gは、例えば、各エアシリンダ46の圧力センサ46cや変位センサ46dから取り込んだ検出信号を制御パラメータとして用いて、各エアシリンダ46のサーボバルブ46eの動作を制御し、各エアシリンダ46のシリンダ部46aの内圧、及び/又はロッド部46bの変位を制御する処理を実行する。
【0053】
この処理により、エンド部42の位置(並進)及び/又は姿勢(回転)を変化させて、押圧ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が被貼付面2aの形状に倣うように駆動制御できるようになっている。すなわち、ワーク2の被貼付面2aに対する押圧ローラ31の押圧方向(荷重方向)が法線方向(被貼付面2aに対して直交する方向)となるように制御できるようになっている。
【0054】
また、ATLヘッド制御部46gは、押圧ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させる倣い動作制御時にATLヘッド20の自重を補償する処理を行う自重補償処理部46hを備えている。
自重補償処理部46hが行う自重補償処理により、倣い動作制御時におけるエンド部42の位置及び/又は姿勢を安定させる効果が高められる。
【0055】
そのため、ATLヘッド制御部46gに記憶されているワーク2の被貼付面2aの3次元座標データと実際のワーク2の被貼付面2aとの間に形状誤差があった場合であっても、パラレルリンク機構40の動作により前記形状誤差を吸収しつつ、押圧ローラ31が被貼付面2aを所定の荷重で安定して押圧することが可能となり、テープ1を被貼付面2aに精度よく貼り付けることができるようになっている。なお、前記自重補償処理の詳細は後述する。
【0056】
なお、本発明に適用できるアクチュエータは、上記したエアシリンダ46に限定されるものではなく、別の構成例では、電動シリンダや空気以外の流体を使用するもの、例えば、油圧シリンダなどの直動式アクチュエータで構成することも可能である。
【0057】
次に、ATL装置10の動作について説明する。
図4は、実施の形態に係るATL装置10におけるハンドリング制御部70aとATLヘッド制御部46gとが行うテープ貼付処理の一例を示すフローチャートである。
【0058】
まず、ステップS1では、ハンドリング制御部70aが、ガントリ構造体71のX軸直動機構72、Xθz軸ステージ73、及びY軸直動機構74を駆動させて、Xθz軸ステージ73に載置されたワーク2の被貼付面2a上の始点S(図3参照)の上方にATLヘッド20を位置させる位置決め制御を行い、ステップS2に進む。
【0059】
ステップS2では、ハンドリング制御部70aが、Z軸直動機構75を駆動させて、ATLヘッド20を被貼付面2aに向かって降下させ、押圧ローラ31を被貼付面2a上の始点Sに接触させる動作制御を行い、ステップS3に進む。
【0060】
ステップS3では、ATLヘッド制御部46gが、ATLヘッド20の各部を駆動させて、被貼付面2a上へのテープ1の貼り付けを開始する動作制御を行う。すなわち、ATLヘッド制御部46gは、フィーダー50を駆動させて、テープ1を押圧ローラ31と被貼付面2aとの間に搬送する制御を開始する。また、ATLヘッド制御部46gは、加熱手段60を駆動させて、テープ1及び/又は被貼付面2aを加熱する制御を開始する。また、ATLヘッド制御部46gは、パラレルリンク機構40を駆動させて、押圧ローラ31を被貼付面2aに対して法線方向から所定の荷重で押圧する制御を開始する。
【0061】
次のステップS4では、ATLヘッド制御部46gとハンドリング制御部70aが、ATLヘッド20の各部とガントリ構造体71の各部をそれぞれ駆動させて、被貼付面2a上の終点E(図3参照)までテープ1を貼り付けていく動作制御(倣い貼付制御)を行う。
【0062】
すなわち、ハンドリング制御部70aが、Y軸直動機構74及びZ軸直動機構75を駆動させて、ATLヘッド20を被貼付面2a上の貼付経路(3次元形状データ)に沿って終点Eまで移動(被貼付面2aに対して相対移動)させる動作制御を行う。この動作制御と同時に、ATLヘッド制御部46gがパラレルリンク機構40による押圧ローラ31の倣い動作制御を行う。この倣い動作制御により、前記相対移動時において押圧ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が被貼付面2aの形状に倣うように、例えば、押圧ローラ31の押圧方向が被貼付面2aに対して法線方向となるように制御される。
【0063】
また、この倣い動作制御時には、各リンク部43(この場合、各エアシリンダ46)の駆動力(荷重)を求める際にATLヘッド20の自重を補償するための自重補償処理が行われるようになっている。
【0064】
この自重補償処理を含むパラレルリンク機構40による倣い動作制御例については、図5に示すフローチャートで別途説明する。なお、本発明の自重補償処理では、複数のリンク部43自体のそれぞれの荷重の重力成分と、複数のリンク部43のそれぞれに掛かる押圧機構33Aの荷重の重力成分とをエンド部42の変位に応じて算出し、これら算出した荷重を用いて複数のリンク部43のそれぞれで補償する力を算出する処理を実行するようになっている。複数のリンク部43自体のそれぞれの荷重の重力成分として、各エアシリンダ46のロッド部46bの荷重の重力成分を算出するようになっている。
【0065】
次のステップS5では、ATLヘッド制御部46gが、ATLヘッド20の押圧ローラ31が、テープ1の貼付終了位置(終点E)に到達したか否かを判断し、終点Eに到達していないと判断すれば、ステップS4の処理を継続する一方、終点Eに到達したと判断すれば、ステップS6に進む。
【0066】
ステップS6では、ATLヘッド制御部46gが、テープ1の貼付終了処理を行う。すなわち、ATLヘッド制御部46gが、フィーダー50に設けられた切断部でテープ1をカットする制御、加熱手段60による加熱動作を停止する制御、及び押圧ローラ31による押圧動作を解除する動作制御を行い、1ライン分のテープ1の貼付を完了する。
【0067】
次のステップS7では、ワーク2の被貼付面2aへのテープ1の貼付が全て完了したか否かを判断し、全て完了していないと判断すれば、ステップS1に戻り、ワーク2の被貼付面2aにテープ1が順次並べて貼り付けられていく制御が行われる一方、全て完了したと判断すれば、その後処理を終える。これら動作制御を繰り返し行うことにより、ワーク2にテープ1が貼付された成形品が製造される。
【0068】
図5は、図4に示した貼付処理動作のステップS4でATLヘッド制御部46gが実行するパラレルリンク機構40の倣い動作制御の一例を示すフローチャートである。本制御動作は、例えば、各エアシリンダ46に設けられた変位センサ46dから各ロッド部46bの変位データを取得する周期で実施される。
図6は、実施の形態に係るパラレルリンク機構40の倣い動作制御で行われる自重補償処理を説明するための模式図である。また、図7は、参考例に係るパラレルリンク機構の倣い動作制御処理で行われる自重補償処理を説明するための模式図である。
【0069】
まず、ステップS11では、ATLヘッド制御部46gが、各エアシリンダ46に設けられた変位センサ46dから各ロッド部46bの変位データを取得し、ステップS12に進む。
【0070】
ステップS12では、ATLヘッド制御部46gが、先に取得した各ロッド部46bの変位データなどに基づいて、エンド部42の現在の位置姿勢(位置及び姿勢)を算出する。また、算出したエンド部42の現在位置姿勢から、各エアシリンダ46の上端からエンド部42及び押圧ローラ31の接触点(Tool Center Point:TCPともいう)Bまでの3次元空間における位置ベクトルを算出し、ステップS13に進む。
【0071】
ステップS13では、ATLヘッド制御部46gが、エンド部42の目標位置姿勢と、該目標位置姿勢での押圧ローラ31の押圧力のデータ(設定データ)を内部記憶装置(図示せず)から読み込み、ステップS14に進む。
なお、エンド部42の前記目標位置姿勢とは、ワーク2の3次元座標データに基づく押圧ローラ31の動作軌跡に対し、現在の押圧ローラ31の位置に対応する前記動作軌跡上の法線方向から押圧ローラ31でワーク2を押圧するための位置姿勢である。
【0072】
ステップS14では、ATLヘッド制御部46gが、エンド部42を前記現在位置姿勢から前記目標位置姿勢に制御するのに必要な各ロッド部46bの目標変位量と、その変位に必要な各エアシリンダ46の駆動力A、すなわち、倣い動作させるための駆動力(倣い動作用の駆動力)を算出し、ステップS15に進む。
【0073】
ステップS15では、ATLヘッド制御部46gが、ステップS12で求めたエンド部42の現在位置姿勢、及び/又は各エアシリンダ46の上端からエンド部42までの位置ベクトルに基づいて、各ロッド部46bの姿勢をそれぞれ算出するとともに、各ロッド部46b(n本)の鉛直方向(z軸方向)の荷重の重力成分Mznをそれぞれ算出し、ステップS16に進む。各ロッド部46bの荷重の重力成分Mznが、各ロッド部46b自体の自重補償分の荷重に相当する。
【0074】
なお、ステップS15において、各ロッド部46bの荷重の重力成分Mznを算出する際には、各ロッド部46bの重量を用いてもよいし、各エアシリンダ46のシリンダ部46aから出ている部分のロッド部46bの長さ(変位量)を考慮して求めるようにしてもよい。例えば、各ロッド部46bの重量に、前記変位量に応じた係数を乗じたり、前記変位量に応じた補正値を加減算したりして求めてもよい。また、各ロッド部46bの荷重の重力成分Mznは、各ロッド部46bの姿勢(傾き)を考慮して求めてもよい。例えば、各ロッド部46bの重量に、前記傾き(鉛直方向からの傾き角度)に応じた係数を乗じたり、前記傾きに応じた補正値を加減算したりして求めてもよい。
例えば、エアシリンダ46から出ている部分のロッド部46bの長さが長い程、前記係数の値や前記補正値が大きくなるように設定してもよいし、エアシリンダ46の傾き(鉛直方向からの傾き)が大きい程、前記係数の値や前記補正値が大きくなるように設定してもよい。これにより、各ロッド部46bの荷重の重力成分Mznを、各ロッド部46bの状態に応じた値として、より精度よく求めることが可能となる。
【0075】
ステップS16では、ATLヘッド制御部46gが、エンド部42の前記現在位置姿勢と、押圧機構33Aのz軸方向の荷重の重力成分mとに基づいて、各ロッド部46b(n本)に掛かる押圧機構33Aの荷重の重力成分mznをそれぞれ算出し、ステップS17に進む。なお、本実施の形態における押圧機構33Aの荷重mには、エンド部42、押圧部30、フィーダー50、及び加熱手段60の荷重が含まれる。
各ロッド部46bに掛かる押圧機構33Aの荷重mznは、エンド部42の姿勢(傾き)によって変化するので、ステップS12で算出したエンド部42の姿勢(傾き)のデータを用いて算出する。なお、押圧機構33Aのz軸方向の荷重の重力成分mは、各ロッド部46b(n本)に掛かる押圧機構33Aの荷重の重力成分mznの総和となり、次の式(1)で表すことができる。
【0076】
【数1】
【0077】
ステップS17では、ATLヘッド制御部46gが、各エアシリンダ46で自重補償する力Fzn=Mzn+mznをそれぞれ算出し、ステップS18に進む。
各エアシリンダ46で自重補償する力Fznは、各ロッド部46b自体の荷重の重力成分Mznと、各ロッド部46bに掛かる押圧機構33Aの荷重の重力成分mznとを合わせた荷重を相殺するための力である。すなわち、各エアシリンダ46で自重補償する力Fznは、対応する各ロッド部46b自体の荷重の重力成分Mznに対する自重補償分と、各ロッド部46bに掛かる押圧機構33Aの荷重の重力成分mznに対する自重補償分との和となる。
したがって、ATLヘッド20で可動する部分全体における自重補償のための力f(x)は、各エアシリンダ46で自重補償する力Fznの総和となり、次の式(2)で表すことができる。
【0078】
【数2】
【0079】
次のステップS18では、ATLヘッド制御部46gが、各エアシリンダ46で自重補償する力Fzn=Mzn+mznに対応する各エアシリンダ46の駆動力B、すなわち、自重補償する力Fzn分の荷重を相殺するための駆動力(自重補償用の駆動力)を算出し、ステップS19に進む。
【0080】
ステップS19では、ATLヘッド制御部46gが、ステップS18で算出した各エアシリンダ46の自重補償用の駆動力Bと、ステップS13で取得した目標位置姿勢での押圧ローラ31の押圧力とから、該押圧力を得るための各エアシリンダ46の押圧用の駆動力Cを算出し、ステップS20に進む。すなわち、各エアシリンダ46の押圧用の駆動力Cは、各エアシリンダ46での自重補償分の駆動力Bが加味されたものとなっている。
【0081】
次のステップS20では、ATLヘッド制御部46gが、ステップS14で算出した、各エアシリンダ46の倣い動作用の駆動力Aと、ステップS19で算出した、各エアシリンダ46の押圧用の駆動力Cとを含めて各エアシリンダ46の倣い押圧用の駆動力Dを算出し、ステップS21に進む。すなわち、各エアシリンダ46の倣い押圧用の駆動力Dは、押圧ローラ31の倣い動作と押圧動作とを行うための駆動力となっている。
【0082】
ステップS21では、ATLヘッド制御部46gが、ステップS20で求めた各エアシリンダ46の倣い押圧用の駆動力Dに対応するエア圧を各エアシリンダ46に印加するための制御(各サーボバルブ54eの駆動制御)を行い、その後処理を終える。
【0083】
上記したステップS15~S17の処理が、ATLヘッド制御部46gの自重補償処理部46hが実行する自重補償処理の一例である。
本実施の形態に係る自重補償処理では、各ロッド部46b自体の荷重の重力成分Mznの算出処理(ステップS15)と、各ロッド部46bに掛かる押圧機構33Aの荷重の重力成分mznの算出処理(ステップS16)とを分けて行うようになっている。
【0084】
したがって、図6に示すように、押圧ローラ31の倣い動作制御時に、エンド部42の姿勢が(a)の状態(略水平状態)から(b)の状態(傾斜状態)に変化した場合であっても、各ロッド部46bの重心位置G1と、押圧機構33Aの重心G2とが変化しないものとして、自重補償処理を行うことが可能となる。その結果、各エアシリンダ46で自重補償する力Fznの精度が向上することとなる。
【0085】
これによる効果が顕著に得られる場面としては、押圧ローラ31の押圧力が、各ロッド部46bと押圧機構33Aを含めた荷重と同程度、又は該荷重より小さい場合、すなわち低荷重となる場合である。
【0086】
本実施の形態に係る自重補償処理では、各エアシリンダ46で自重補償する力Fznを精度よく算出できるので、押圧ローラ31の押圧力が低荷重となる場合であっても、各ロッド部46bと押圧機構33Aを含めた荷重の自重補償を精度よく行うことができ、エンド部42の位置姿勢を安定させる効果を高めることが可能となる。
【0087】
なお、図7に示す参考例のように、各ロッド部46bと押圧機構33Aとを(各シリンダ部46aが支持する部分を)まとめて可動部34として扱い、可動部34の荷重(総荷重)と、エンド部42の姿勢とに基づいて、各エアシリンダ46で補償すべき荷重を割り出して自重補償を行う場合、次のような現象が生じる。
【0088】
すなわち、押圧ローラ31の倣い動作制御時に、各エアシリンダ46を駆動させて(各ロッド部46bを各シリンダ部46aから進退させて)、エンド部42の姿勢が図7の(a)の状態(略水平状態)から(b)の状態(傾斜状態)に変化すると、各ロッド部46bの変位に伴って、可動部34の重心位置が、重心位置G3から重心位置G4に変化する。
【0089】
参考例の場合、各エアシリンダ46で自重補償すべき荷重を算出する際には、エンド部42の姿勢の変化に応じて変わる可動部34の重心位置を求め、該重心位置に可動部34の総荷重が掛かるものと想定して、各エアシリンダ46で自重補償すべき荷重を算出することとなる。
【0090】
しかしながら、エンド部42の姿勢の変化に応じて可動部34の重心位置が複雑に変化するため、この変化する可動部34の重心位置を精度よく求めることが難しい。そのため、各エアシリンダ46で自重補償すべき荷重も精度よく算出することが難しく、例えば、各ロッド部46bの重量や長さが増すほど、またエンド部42の傾き(水平方向からの傾き)が増すほど、各ロッド部46bに振り分ける自重補償すべき荷重の誤差が大きくなる。その結果、エンド部42の姿勢が安定せず、押圧ローラ31で被貼付面2aを法線方向から精度よく押圧することができないといった現象が生じることがある。特に、参考例の場合、押圧ローラ31の押圧力が低荷重となる場合に、エンド部42の姿勢が安定しないといった現象が生じやすくなる。
【0091】
本実施の形態に係る自重補償処理を行うことによって、上記のとおり、押圧ローラ31の押圧力が低荷重となる場合であっても、エンド部42の位置姿勢を安定させることが可能となり、押圧ローラ31で被貼付面2aを法線方向から精度よく押圧することができる。
【0092】
上記した実施の形態に係るATL装置10によれば、自重補償処理部46hが、複数のエアシリンダ46のそれぞれで補償する力を算出する処理を実行する際に、複数のエアシリンダ46のロッド部46b自体のそれぞれの荷重の重力成分に対する自重補償分と、押圧機構33Aの荷重の重力成分に対する自重補償分とを切り分けて処理することが可能となる。
【0093】
したがって、押圧ローラ31の倣い動作制御時にパラレルリンク機構40のエンド部42が変位する場合であっても、複数のロッド部46bのそれぞれの重心位置と、押圧機構33Aの重心位置とが変化しないものとして、複数のエアシリンダ46のそれぞれで補償する力を算出することができる。
【0094】
そのため、前記複数のエアシリンダ46のそれぞれで補償する力を算出する処理において、前記複数のロッド部46b及び押圧機構33Aを含めた重心位置の変化を考慮する必要がなくなり、前記算出する処理を簡略化できるとともに、複数のエアシリンダ46のそれぞれで補償する力の算出精度を高めることが可能となる。
【0095】
これにより、被貼付面2aに対する押圧ローラ31による押圧力が低荷重となる場合であっても、前記倣い動作制御時におけるエンド部42の位置及び/又は姿勢を安定させることができ、テープ1の押圧状態のばらつきを抑えることができ、テープ1を被貼付面2aに精度よく貼り付けることができる。
【0096】
図8は、別の実施の形態に係るATL装置のATLヘッドの構成例を示す模式図である。
なお、図3に示したATL装置10のATLヘッド20と同一機能を有する構成部品には同一符号を付しその説明を省略することとする。なお、図8では、図3に示したフィーダー50及び加熱手段60の記載を省略している。
別の実施の形態に係るATL装置10Aが、上記した実施の形態に係るATL装置10と相違する主な構成は、ATLヘッド20Aの押圧部30Aである。
押圧部30Aは、押圧ローラ31と、ローラ支持部32と、回動機構35とを含んで構成されている。押圧機構33Bが、押圧部30Aと、図示しないフィーダーと加熱手段とを含んで構成されている。
【0097】
回動機構35は、押圧ローラ31の線状押圧領域31bを長手方向に二分する点Cを通り、テープ1の貼付方向(Y軸方向)に平行な軸(回動軸)の周り(すなわち、ロール(θy)方向)に押圧ローラ31を回動させることが可能な構成となっている。回動機構35は、被貼付面2aの形状に応じて押圧ローラ31を従動させるもの、換言すれば、外部から動力供給を必要としない受動機構で構成されている。
【0098】
回動機構35は、ゴニオステージなどの傾斜ステージ機構などを利用して構成することができ、例えば、エンド部42に取り付けられたガイド部36と、ガイド部36に摺動可能な態様で取り付けられた摺動部37とを含んで構成されている。摺動部37にローラ支持部32が取り付けられている。
【0099】
ガイド部36は、下面に円弧形状をした逆凹状曲面部を有し、摺動部37は、上面にガイド部36と略同じ円弧形状をした凸状曲面部を有している。ガイド部36の前記逆凹状曲面部は、押圧ローラ31に形成される線状押圧領域31bを長手方向に二分する点Cを略中心とする円弧形状に形成されている。
【0100】
また、ガイド部36の前記逆凹状曲面部と摺動部37の前記凸状曲面部との摺動面には、円弧動作用のガイド機構38が設けられている。ガイド機構38は、摺動部37をガイド部36の前記逆凹状曲面部に沿って円弧動作可能にする機構であればよく、例えば、リニアボール機構、アリ溝機構、又はクロスローラ機構などが採用され得る。
【0101】
摺動部37の前記凸状曲面部がガイド部36の前記逆凹状曲面部に沿って所定方向(本例ではX軸方向)に受動的に摺動することにより、摺動部37は、線状押圧領域31bを長手方向に二分する点Cを略中心とする円弧上を摺動可能な構成となっている。
【0102】
なお、上記点Cが、被貼付面2aに対する押圧ローラ31の接触点であるTool Center Point(TCPともいう)にも対応しており、回動機構35は、点Cを通るY軸方向の軸を中心にして押圧ローラ31を回動可能な構成となっている。なお、別の構成例では、回動機構35が、点Cとは異なる線状押圧領域31b内又はその延長上の任意の1点が回動中心となるように構成されてもよい。
【0103】
押圧部30Aを備えたATLヘッド20Aによれば、パラレルリンク機構40によりエンド部42を変位させる制御で吸収しきれない形状誤差を被貼付面2aが有している場合であっても、回動機構35による押圧ローラ31のロール(θy)方向の受動的な回動動作により、押圧ローラ31が被貼付面2aに倣いやすい構造となっている。したがって、被貼付面2aがある程度大きな形状誤差を有している場合であっても、ワーク2の被貼付面2aに対して直交する方向(法線方向)から押圧ローラ31を被貼付面2aに押圧する動作が実現されやすい構造になっている。
【0104】
別の実施の形態に係るATL装置10Aが実行する貼付処理動作は、図4、5を用いて上記説明した、ハンドリング制御部70aとATLヘッド制御部46gとが行うテープ貼付処理動作と同様であるので、その説明を省略する。
なお、ATL装置10Aでは、ATLヘッド20Aの押圧部30Aが、回動機構35を備えている。そのため、図5を用いて説明した、押圧ローラ31の倣い動作制御時において、摺動部37がガイド部36の逆凹状曲面部36aに沿って所定方向に受動的に摺動して、押圧ローラ31がロール(θy)方向に受動的に回動することに伴い、押圧機構33Bの重心位置が僅かに変化する場合がある。しかしながら、押圧機構33Bの重心位置の僅かな変化は、図5で説明した自重補償処理に与える影響は小さく、上記実施の形態と同様に自重補償処理を精度よく行うことが可能となっている。
【0105】
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、上記説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく、種々の改良、変更、又は構成の込み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0106】
本発明は、テープを被貼付面に貼り付けて3次元形状を有する成形品を製造する場合など、被貼付面に対するテープの貼付性能を高めることが要求されるあらゆる分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 テープ
2 ワーク
2a 被貼付面
10、10A ATL装置(テープ貼付装置)
20、20A ATLヘッド(貼付ヘッド)
30 押圧部
31 押圧ローラ
31a 回転軸
32 ローラ支持部
33A、33B 押圧機構
34 可動部
35 回動機構
36 ガイド部
37 摺動部
38 ガイド機構
40 パラレルリンク機構
41 ベース部
42 エンド部
43 リンク部
44、45 自在継手
46 エアシリンダ(アクチュエータ)
46a シリンダ部
46b ロッド部
46c 圧力センサ
46d 変位センサ
46e サーボバルブ
46f 空気供給部
46g ATLヘッド制御部
46h 自重補償処理部
50 フィーダー
51 搬送ベルト対
60 加熱手段
61 取付ガイド
70 ハンドリング機構
70a ハンドリング制御部
71 ガントリ構造体
72 X軸直動機構
72a X軸ガイド部
72b X軸スライドテーブル
73 Xθz軸ステージ
74 Y軸直動機構
74a Y軸ガイド部
74b Y軸スライダ
75 Z軸直動機構
75a Z軸ガイド部
75b Z軸スライダ
75c Z軸ブラケット
76 ATLヘッド取付部
A 法線方向
B、C 接触点
S 始点
E 終点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8