(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141038
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】テープ貼付装置、及びテープ貼付方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20241003BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052470
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096080
【弁理士】
【氏名又は名称】井内 龍二
(74)【代理人】
【識別番号】100194098
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】熱田 直行
(72)【発明者】
【氏名】杉原 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】喜多 由起
(72)【発明者】
【氏名】高島 歩
(72)【発明者】
【氏名】只野 耕太郎
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ08
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HF23
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK23
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】ワークの形状誤差を吸収しながら押圧部を被貼付面の形状に倣わせる動作の応答性を向上させることができるテープ貼付装置を提供すること。
【解決手段】被貼付面2a上にテープ1を所定の貼付方向に貼り付けるATL装置10であって、押圧部30と回動機構70とエンド部40とパラレルリンク機構50とベース部60とを有する貼付ヘッド20を備え、押圧部30は、テープ1を被貼付面2aに貼り付けるものであり、回動機構70は、押圧部30を被貼付面2aの形状に倣うように所定の貼付方向の軸周りに回動可能とするものであり、エンド部40は、押圧部30と回動機構70とを保持するものであり、パラレルリンク機構50は、エンド部40をベース部60に対して並進3自由度で相対移動させるように構成されたものであり、ベース部60は、パラレルリンク機構50のエンド部40側とは反対側を保持するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付装置であって、
押圧部と、回動機構と、エンド部と、パラレルリンク機構と、ベース部と、を有する貼付ヘッドを備え、
前記押圧部は、前記テープを前記被貼付面との間に挟持、押圧しつつ前記テープを前記被貼付面に貼り付けるものであり、
前記回動機構は、少なくとも前記押圧部を前記被貼付面の形状に倣うように前記所定の貼付方向の軸周りに回動可能とするものであり、
前記エンド部は、前記押圧部と前記回動機構とを保持するものであり、
前記パラレルリンク機構は、前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で相対移動させるように構成されたものであり、
前記ベース部は、前記パラレルリンク機構の前記エンド部側とは反対側を保持するものであることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項2】
前記パラレルリンク機構が、
前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられる3本のリンク部と、
これら各リンク部の両端に設けられるジョイント部とを含んで構成され、
前記ジョイント部が、2自由度を有する自在継手であることを特徴とする請求項1記載のテープ貼付装置。
【請求項3】
前記自在継手が、
第1軸と第2軸とを備えた交差軸部と、
前記第1軸に回転自在に支持された第1ヨークと、
前記第2軸に回転自在に支持された第2ヨークとを備え、
前記ベース部の3カ所に前記自在継手の前記第1ヨークがそれぞれ所定の向きに固定され、
前記エンド部の3カ所に前記自在継手の前記第1ヨークがそれぞれ所定の向きに固定され、
前記各リンク部の両端に前記自在継手の前記第2ヨークがそれぞれ固定され、
前記所定の向きが、前記第1軸又は前記第2軸の軸線が1点で交わる向きであることを特徴とする請求項2記載のテープ貼付装置。
【請求項4】
前記各リンク部が、直動ジョイントを含んで構成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のテープ貼付装置。
【請求項5】
前記パラレルリンク機構が、
前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられる3本のリンク部と、
これら各リンク部の一端と前記ベース部との間に設けられる第1ジョイント部と、
前記各リンク部の他端と前記エンド部との間に設けられる第2ジョイント部とを含んで構成され、
前記各リンク部が、前記ベース部側の第1アームと、前記エンド部側の第2アームと、これら前記第1アームと前記第2アームとの間に設けられる第3ジョイント部とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のテープ貼付装置。
【請求項6】
前記第1ジョイント部が、1自由度を有する回転ジョイントで構成され、
前記第2ジョイント部が、2自由度を有する第1自在継手で構成され、
前記第3ジョイント部が、2自由度を有する第2自在継手で構成されていることを特徴とする請求項5記載のテープ貼付装置。
【請求項7】
前記ベース部の3か所に前記回転ジョイントがそれぞれ所定の向きに取り付けられ、
該所定の向きが、前記回転ジョイントの回転軸が前記ベース部面上で120度回転対称となる向きであり、
前記第1自在継手と前記第2自在継手とが、
第1軸と第2軸とを備えた交差軸部と、
前記第1軸に回転自在に支持された第1ヨークと、
前記第2軸に回転自在に支持された第2ヨークとをそれぞれ備え、
前記第1アームの前記第2アーム側の端部に前記第2自在継手の前記第1ヨークがそれぞれ所定の向きに固定され、
前記第2アームの前記第1アーム側の端部に前記第2自在継手の前記第2ヨークがそれぞれ固定され、
前記エンド部の3カ所に前記第1自在継手の前記第1ヨークがそれぞれ所定の向きに固定され、
前記第2アームの前記エンド部側の端部に前記第1自在継手の前記第2ヨークがそれぞれ固定され、
前記所定の向きが、前記第1軸又は前記第2軸の軸線が1点で交わる向きであることを特徴とする請求項6記載のテープ貼付装置。
【請求項8】
前記回動機構が、前記押圧部の姿勢を検出する姿勢検出部を備え、
前記パラレルリンク機構が、
前記姿勢検出部で検出された前記押圧部の姿勢に基づいて、前記押圧部が前記被貼付面に対して所定方向から所定の押圧力を付与するように、前記各リンク部を動作させて前記エンド部を並進運動させるように構成されていることを特徴とする請求項1~3、5~7のいずれかの項に記載のテープ貼付装置。
【請求項9】
前記回動機構が、前記被貼付面に対する前記押圧部の接触中心点を通り、前記所定の貼付方向に平行な軸周りに回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3、5~7のいずれかの項に記載のテープ貼付装置。
【請求項10】
押圧部と、回動機構と、エンド部と、パラレルリンク機構と、ベース部と、を有する貼付ヘッドを備えたテープ貼付装置を用いて、被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付方法であって、
前記パラレルリンク機構により前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で相対移動させつつ、
前記回動機構により少なくとも前記押圧部を前記被貼付面の形状に倣うように所定の回動軸周りに回動させて、
前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させながら、前記テープを前記被貼付面上に貼り付けることを特徴とするテープ貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテープ貼付装置、テープ貼付方法に関し、より詳細には、テープを被貼付面に貼り付けることにより、繊維強化プラスチック(FRP)成形品などを製造する際に用いられるテープ貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
予め樹脂が含浸された炭素繊維等の繊維束をテープ状に成形したもの(プリプレグテープ、UDテープなどとも呼ぶ)を被貼付面に貼付けてゆくことで、所望の形状をした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)成形品を製造する方法が知られている。
【0003】
これらの製法は、ATL(Auto Tape Layup)、ATW(Auto Tape Welding)、AFP(Auto Fiber Placement)など種々の称呼があるが、これらは厳密に区別されているものではない。本明細書に於いては、テープを押圧しながら被貼付面に貼付けていく製法を総称してATLと呼び、その装置(テープ貼付装置)をATL装置と呼ぶこととする。
【0004】
本出願人らは、先に下記の特許文献1に開示されたATL装置を提案した。特許文献1記載のATL装置は、ATLヘッドが、押圧部と、パラレルリンク機構とを備えた構成となっている。
【0005】
特許文献1記載のATL装置によれば、前記パラレルリンク機構の動作制御により、ワークの被貼付面にテープを押し付ける前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させることが可能となり、前記ワークの形状が設計データから幾らかの形状誤差を有している場合であっても、前記被貼付面に対する前記押圧部の押圧状態を一定に保つことが可能となり、前記テープの貼付性能を高めることが可能となった。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のATL装置では、前記被貼付面の形状誤差が前記パラレルリンク機構の制御で吸収しきれない程度以上に大きくなると、前記パラレルリンク機構の制御だけでは、その誤差を吸収しきれずに、前記押圧部のローラが前記被貼付面に片当たりする状態になることもあり、テープを前記被貼付面に押圧できない部分が生じることもあった。
【0007】
前記パラレルリンク機構の制御では、インピーダンス制御のパラメータ(慣性、粘性等)を調整することにより、前記形状誤差の吸収代を変えることが可能である。しかしながら、前記吸収代が大きくなるように前記パラメータの調整を行うと、前記被貼付面に対する前記ローラの押圧位置や押圧姿勢の制御精度が低下し、前記被貼付面に対する前記ローラの押圧荷重がばらつきやすくなるという課題が生じた。
【0008】
そこで係る課題を解決するために本出願人らは、特願2022-040026号(2022年3月15日出願、以下先願と記す)において次の発明を出願した。
先願記載のテープ貼付装置は、押圧部と、エンド部と、パラレルリンク機構と、ベース部とを有する貼付ヘッドを備え、前記パラレルリンク機構は、前記エンド部の位置及び/又は姿勢を変位させ、前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面の形状に倣うように動作するものであり、さらに、少なくとも前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動可能とする回動機構を有することを特徴としている。
【0009】
先願記載のテープ貼付装置によれば、前記回動機構により少なくとも前記押圧部を前記被貼付面の形状に応じて所定の回動軸周りに回動させることにより、前記パラレルリンク機構による前記エンド部の姿勢制御では吸収しきれない前記被貼付面の形状誤差に対する誤差吸収性を高め、前記被貼付面に対する前記押圧部の倣い性を向上させることが可能となっている。
【0010】
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、上記先願記載のテープ貼付装置では、例えば、ワークの被貼付面がテープの貼付方向に対してロール方向の傾斜を有し、ワークの被貼付面の形状誤差を有する部分が滑らかな(小さな)形状誤差ではなく、ステップ(階段)状などの大きな形状誤差を有している場合、被貼付面の形状誤差を吸収しながら押圧部を被貼付面の形状に倣わせる動作の応答性が一時的に低下する場合があった。
【0011】
図6(a)~(e)は、上記先願記載のテープ貼付装置でワークにテープを貼付している一場面を示す要部模式図であり、貼付ヘッドによる貼付動作の一例を説明するための図である。なお、
図6では、テープの貼付方向をY軸方向、これと水平面で直交する方向をX軸方向、XY平面と直交する方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0012】
図6(a)は、形状誤差のない部分のワーク2の被貼付面2aにテープ1を押圧ローラ310で貼付している状態を示している。
貼付ヘッド200は、押圧ローラ310と、押圧ローラ310をロール(θy)方向に回動させる回動機構700と、エンド部40と、エンド部40をX、Y、Z軸方向に並進運動可能かつ少なくともロール(θy)方向に回転運動可能なパラレルリンク機構500と、ベース部60とを含んで構成されている。パラレルリンク機構500は、4本のリンク部510を含んで構成されている。各リンク部510はエアシリンダを含んで構成されている。
【0013】
図6(b)は、ステップ(階段)状の大きな形状誤差αを有する部分の被貼付面2aに押圧ローラ310が到達したときの状態を示している。この状態では、押圧ローラ310はまだ被貼付面に接触していない。
【0014】
図6(c)は、ステップ(階段)状の形状誤差αを有する部分の被貼付面2aの形状に押圧ローラ310が倣うようにエンド部40の位置及び姿勢をパラレルリンク機構500により変位させている途中の状態を示している。
【0015】
図6(c)に示す状態では、パラレルリンク機構500の各リンク部510の長さを調整して、エンド部40を降下させつつ、エンド部40をロール(θy)方向に回転させる動作制御が行われている。この動作制御により、押圧ローラ310の左下端部が被貼付面2aに接し、それに伴い、押圧ローラ310が回動機構700によりロール(θy)方向に回転(右回転)し始める。
【0016】
図6(d)は、押圧ローラ310が一時的に過回転し、押圧ローラ310の左下端部が被貼付面2aからバウンドした状態(跳ね上がった状態)を示している。
図6(c)の状態から
図6(d)の状態への移行時においては、回動機構700による押圧ローラ310のロール(θy)方向への回転(右回転)につられて、エンド部40がロール(θy)方向に過回転し、それにつられて、回動機構700と押圧ローラ310もロール(θy)方向に一時的に過回転する。その結果、押圧ローラ310の左下端部が被貼付面から一時的にバウンドする現象が発生する。
図6(e)は、押圧ローラ310のバウンドが治まった後、押圧ローラ310が被貼付面2aの形状に倣った状態を示している。
【0017】
上記したとおり、上記先願記載のテープ貼付装置では、ステップ(階段)状などの大きな形状誤差を有している部分の被貼付面2aにテープ1を貼付する場合に、押圧ローラ310の一部が被貼付面2aに接触した後、回動機構700により押圧ローラ310が被貼付面2aに倣う方向に回転する動作につられて、エンド部40が同じ方向(ロール方向)に余分に回転する。
【0018】
そのため、エンド部40による押圧力の方向が安定せず(換言すれば、押圧力の方向が目標方向からずれて)、それに伴い、押圧ローラ310が被貼付面2aを押圧する力の向きが安定せずに、押圧ローラ310がバランスを崩して、押圧ローラ310が一時的にバウンドする現象が発生し、押圧ローラ310が被貼付面2aの形状に倣うまでの時間に遅れ(タイムラグ)が生じる。すなわち、ワーク2の形状誤差を吸収しながら押圧ローラ310を被貼付面2aの形状に倣わせる動作の応答性が一時的に低下する場合があるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0020】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、ワークの形状誤差を吸収しながら押圧部を被貼付面の形状に倣わせる動作の応答性を向上させることができるテープ貼付装置、及びテープ貼付方法を提供することを目的としている。
【0021】
上記目的を達成するために本発明に係るテープ貼付装置(1)は、
被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付装置であって、
押圧部と、回動機構と、エンド部と、パラレルリンク機構と、ベース部と、を有する貼付ヘッドを備え、
前記押圧部は、前記テープを前記被貼付面との間に挟持、押圧しつつ前記テープを前記被貼付面に貼り付けるものであり、
前記回動機構は、少なくとも前記押圧部を前記被貼付面の形状に倣うように前記所定の貼付方向の軸周りに回動可能とするものであり、
前記エンド部は、前記押圧部と前記回動機構とを保持するものであり、
前記パラレルリンク機構は、前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で相対移動させるように構成されたものであり、
前記ベース部は、前記パラレルリンク機構の前記エンド部側とは反対側を保持するものであることを特徴としている。
【0022】
上記テープ貼付装置(1)によれば、前記パラレルリンク機構により、前記エンド部が前記ベース部に対して並進3自由度の運動(すわわち、XYZ軸方向の並進運動)を行うように構成されている。換言すれば、前記エンド部が回転運動を行わないように動作が拘束された構成となっている。また、前記回動機構により、少なくとも前記押圧部が前記被貼付面の形状に倣うように前記所定の貼付方向の軸周りに回動するように構成されている。
【0023】
したがって、上記したステップ(階段)状などの大きな形状誤差を有する部分の前記被貼付面に前記テープを貼付する場合であっても、前記押圧部が前記被貼付面に押し付けられるときに、前記回動機構による前記押圧部の回転動作につられて前記エンド部が回転することがなく、前記パラレルリンク機構が前記エンド部を押圧する向きと力を安定させることができる。
【0024】
そのため、前記押圧部が前記被貼付面に接触した後、前記回動機構によって前記押圧部を前記所定の貼付方向の軸周りに回動させる際に、前記押圧部が一時的に過回転したり、前記押圧部が前記被貼付面から一時的にバウンドしたりする現象を防止することができ、前記押圧部を前記被貼付面の形状に倣う位置にぴたりと位置させることができる。
【0025】
これにより、前記押圧部を前記被貼付面の形状に倣わせるまでの時間的な遅れ(タイムラグ)の発生を防止でき、前記押圧部の姿勢の安定化と前記押圧部による倣い動作の高速化を図ることができることとなり、前記被貼付面の形状誤差を吸収しながら前記押圧部を前記被貼付面の形状に倣わせる動作、すなわち倣い貼付動作の応答性を向上させることができる。
【0026】
また本発明に係るテープ貼付装置(2)は、上記テープ貼付装置(1)において、
前記パラレルリンク機構が、
前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられる3本のリンク部と、
これら各リンク部の両端に設けられるジョイント部とを含んで構成され、
前記ジョイント部が、2自由度を有する自在継手であることを特徴としている。
【0027】
上記テープ貼付装置(2)によれば、前記パラレルリンク機構が、前記3本のリンク部で構成されているので、4本以上のリンク部で構成されたものと比べて、より低圧荷重で前記押圧部を前記被貼付面に押圧する動作を行うことが可能となる。
また、前記3本のリンク部のそれぞれの両端に設けられる前記ジョイント部が、2自由度を有する自在継手で構成されているので、前記3本のリンク部で前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で相対移動させる構成を実現できる。
【0028】
また本発明に係るテープ貼付装置(3)は、上記テープ貼付装置(2)において、
前記自在継手が、
第1軸と第2軸とを備えた交差軸部と、
前記第1軸に回転自在に支持された第1ヨークと、
前記第2軸に回転自在に支持された第2ヨークとを備え、
前記ベース部の3カ所に前記自在継手の前記第1ヨークがそれぞれ所定の向きに固定され、
前記エンド部の3カ所に前記自在継手の前記第1ヨークがそれぞれ所定の向きに固定され、
前記各リンク部の両端に前記自在継手の前記第2ヨークがそれぞれ固定され、
前記所定の向きが、前記第1軸又は前記第2軸の軸線が1点で交わる向きであることを特徴としている。
【0029】
上記テープ貼付装置(3)によれば、前記パラレルリンク機構を構成する前記3本のリンク部と前記自在継手によって、前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で精度よく相対移動させることが可能となり、また、前記3本のリンク部の動作で前記エンド部を押圧する向きと力を安定させる効果を高めることができ、前記倣い貼付動作の応答性を向上させることができる。
【0030】
また本発明に係るテープ貼付装置(4)は、上記テープ貼付装置(2)又は(3)において、前記各リンク部が、直動ジョイントを含んで構成されていることを特徴としている。
【0031】
上記テープ貼付装置(4)によれば、前記各リンク部が、直動ジョイントを含んで構成されているので、前記3本のリンク部の動作で前記エンド部を押圧する力(荷重)の調整範囲を拡げることができ、高押圧荷重から低押圧荷重までの所望とする押圧荷重での押圧動作を精度よく行うことができる。なお、前記直動ジョイントは、例えば、流体の出し入れにより伸縮動作を行う、エアシリンダなどの直動式アクチュエータで構成することができる。
【0032】
また本発明に係るテープ貼付装置(5)は、上記テープ貼付装置(1)において、
前記パラレルリンク機構が、
前記ベース部と前記エンド部との間に並列に設けられる3本のリンク部と、
これら各リンク部の一端と前記ベース部との間に設けられる第1ジョイント部と、
前記各リンク部の他端と前記エンド部との間に設けられる第2ジョイント部とを含んで構成され、
前記各リンク部が、前記ベース部側の第1アームと、前記エンド部側の第2アームと、これら前記第1アームと前記第2アームとの間に設けられる第3ジョイント部とを含んで構成されていることを特徴としている。
【0033】
上記テープ貼付装置(5)によれば、前記パラレルリンク機構が、前記3本のリンク部で構成されているので、4本以上のリンク部で構成されたものと比べて、より低圧荷重で前記押圧部を前記被貼付面に押圧する動作を行うことが可能となる。
また、前記3本のリンク部のそれぞれの両端に設けられた前記第1ジョイント部及び前記第2ジョイント部と、前記各リンク部の前記第1アームと前記第2アームとの間に設けられた前記第3ジョイント部とにより、前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で相対移動させる構成を実現できる。
【0034】
また本発明に係るテープ貼付装置(6)は、上記テープ貼付装置(5)において、
前記第1ジョイント部が、回転ジョイントで構成され、
前記第2ジョイント部が、2自由度を有する第1自在継手で構成され、
前記第3ジョイント部が、2自由度を有する第2自在継手で構成されていることを特徴としている。
【0035】
上記テープ貼付装置(6)によれば、前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で相対移動させる可動領域を拡げることが可能となり、また、前記各リンク部の軽量化を図ることができ、前記倣い貼付動作の応答性を向上させることができる。
【0036】
また本発明に係るテープ貼付装置(7)は、上記テープ貼付装置(6)において、
前記ベース部の3か所に前記回転ジョイントがそれぞれ所定の向きに取り付けられ、
該所定の向きが、前記回転ジョイントの回転軸が前記ベース部面上で120度回転対称となる向きであり、
前記第1自在継手と前記第2自在継手とが、
第1軸と第2軸とを備えた交差軸部と、
前記第1軸に回転自在に支持された第1ヨークと、
前記第2軸に回転自在に支持された第2ヨークとをそれぞれ備え、
前記第1アームの前記第2アーム側の端部に前記第2自在継手の前記第1ヨークがそれぞれ所定の向きに固定され、
前記第2アームの前記第1アーム側の端部に前記第2自在継手の前記第2ヨークがそれぞれ固定され、
前記エンド部の3カ所に前記第1自在継手の前記第1ヨークがそれぞれ所定の向きに固定され、
前記第2アームの前記エンド部側の端部に前記第1自在継手の前記第2ヨークがそれぞれ固定され、
前記所定の向きが、前記第1軸又は前記第2軸の軸線が1点で交わる向きであることを特徴としている。
【0037】
上記テープ貼付装置(7)によれば、前記回転ジョイントと、前記第1アームと、前記第2自在継手と、前記第2アームと、前記第1自在継手とによって、前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で精度よく相対移動させることが可能となり、また、前記3本のリンク部の動作で前記エンド部を押圧する向きと力を安定させる効果を高めることができ、前記倣い貼付動作の応答性を向上させることができる。
【0038】
また本発明に係るテープ貼付装置(8)は、上記テープ貼付装置(1)~(7)において、
前記回動機構が、前記押圧部の姿勢を検出する姿勢検出部を備え、
前記パラレルリンク機構が、
前記姿勢検出部で検出された前記押圧部の姿勢に基づいて、前記押圧部が前記被貼付面に対して所定方向から所定の押圧力を付与するように、前記各リンク部を動作させて前記エンド部を並進運動させるように構成されていることを特徴としている。
【0039】
上記テープ貼付装置(8)によれば、前記姿勢検出部で検出された前記押圧部の姿勢、例えば、回転角度、変位量などに基づいて、前記押圧部が前記被貼付面に対して所定方向から所定の押圧力を付与するように、前記各リンク部を動作させて前記エンド部を並進運動させることが可能となる。したがって、前記押圧部を前記被貼付面の形状に応答性良く倣わせながら、前記被貼付面に対して所定方向(例えば、法線方向)から所定の押圧力で精度よく押圧することが可能となる。
【0040】
また本発明に係るテープ貼付装置(9)は、上記テープ貼付装置(1)~(8)において、前記回動機構が、前記被貼付面に対する前記押圧部の接触中心点を通り、前記所定の貼付方向に平行な軸周りに回動可能に構成されていることを特徴としている。
【0041】
上記テープ貼付装置(9)によれば、前記回動機構によって、前記被貼付面に対する前記押圧部の接触中心点を通り、前記所定の貼付方向に平行な軸周りに前記押圧部を回動させることができる。したがって、前記パラレルリンク機構により前記エンド部の動作が並進3自由度に拘束されていても、前記被貼付面に対して前記押圧部を一定の押圧状態で精度良く倣わせることができ、前記被貼付面に対する前記テープの貼付性能を高めることができる。
【0042】
また本発明に係るテープ貼付方法は、押圧部と、回動機構と、エンド部と、パラレルリンク機構と、ベース部と、を有する貼付ヘッドを備えたテープ貼付装置を用いて、被貼付面上にテープを所定の貼付方向に貼り付けるテープ貼付方法であって、
前記パラレルリンク機構により前記エンド部を前記ベース部に対して並進3自由度で相対移動させつつ、
前記回動機構により少なくとも前記押圧部を前記被貼付面の形状に倣うように所定の回動軸周りに回動させて、
前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させながら、前記テープを前記被貼付面上に貼り付けることを特徴としている。
【0043】
上記テープ貼付方法によれば、上記したステップ(階段)状などの大きな形状誤差を有する部分の前記被貼付面に前記テープを貼付する場合であっても、前記押圧部が前記被貼付面に押し付けられるときに、前記回動機構による前記押圧部の回転動作につられて前記エンド部が回転することがなく、前記パラレルリンク機構が前記エンド部を押圧する向きと力を安定させることができる。
【0044】
そのため、前記押圧部が前記被貼付面に接触した後、前記回動機構によって前記押圧部を前記所定の貼付方向の軸周りに回動させる際に、前記押圧部が一時的に過回転したり、前記押圧部が前記被貼付面から一時的にバウンドしたりする現象を防止することができ、前記押圧部を前記被貼付面の形状に倣う位置にぴたりと位置させることができる。
【0045】
これにより、前記押圧部を被貼付面の形状に倣わせるまでの時間的な遅れ(タイムラグ)の発生を防止でき、前記押圧部の姿勢の安定化と押圧部による倣い動作の高速化を図ることができることとなり、ワークの形状誤差を吸収しながら、押圧ローラを被貼付面の形状に倣わせる動作、すなわち倣い貼付動作の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の実施の形態に係るATL装置の要部概略図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線断面図である。
【
図4】(a)~(d)は、実施の形態に係るATL装置でワークにテープを貼付している一場面を示す要部模式図であり、ATLヘッドの貼付動作の一例を説明するための図である。
【
図5】別の実施の形態に係るATL装置におけるATLヘッドの構成例を示す要部概略図である。
【
図6】(a)~(e)は、先願記載のテープ貼付装置でワークにテープを貼付している一場面を示す要部模式図であり、貼付ヘッドの貼付動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明に係るテープ貼付装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態に係るATL装置の要部概略図である。
図2は、
図1におけるII-II線断面図であり、ベース部に取り付けられたジョイント部の自由度の向きを説明するための図である。
図3は、
図1におけるIII-III線断面図であり、エンド部に取り付けられたジョイント部の自由度の向きを説明するための図である。なお、以下の説明では、テープの貼付方向をY軸方向、これと水平面で直交する方向をX軸方向、XY平面と直交する方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0048】
ATL装置10は、テープで補強された成形品を製造するための装置であり、本発明に係るテープ貼付装置の一例である。ATL装置10は、ATLヘッド20と、ATLヘッド20を保持するハンドリング機構80とを備えている。ATLヘッド20は、テープ1を所定の荷重でワーク2に押圧しながら貼付するためのユニットであり、貼付ヘッドの一例である。ATL装置10は、ATLヘッド20とハンドリング機構80の各部を動作させて、ATLヘッド20でテープ1をワーク2に押圧しながら貼り付けていく機能を備えている。
【0049】
ワーク2は、例えば、3次元形状を有する成形品であり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂製の成形品であってもよいし、金属製の成形品などであってもよい。
【0050】
テープ1は、例えば、繊維束の少なくとも一部に予め樹脂を含浸させてテープ状にしたものであり、熱可塑性の樹脂が含浸されたもの(UDテープとも呼ばれる)や、熱硬化性の樹脂が含浸されたもの(プリプレグテープとも呼ばれる)などが適用される。また、テープ1は、炭素繊維を含むものでもよいし、樹脂テープに多数の短い繊維が混ぜ込まれたものでもよい。テープ1は、ワーク2の材質などに応じて、その種類が適宜選択される。また、テープ1は、複数のテープが並列に配置された形態のものであってもよい。
【0051】
ハンドリング機構80は、ATLヘッド20がテープ1を押圧している状態で、ワーク2の形状に応じてATLヘッド20を移動させる動作を行い、ワーク2の被貼付面2aにテープ1を貼り付けていくための装置である。
【0052】
ハンドリング機構80は、ATLヘッド20を少なくともXYZ軸方向に並進運動可能な機構(3自由度)を備えている装置、例えば、ガントリ構造体(直交座標形機構)で構成されている。なお、別の構成例では、ハンドリング機構80が3自由度以上の多関節ロボット(シリアル多関節機構)などの汎用産業用ロボットで構成されてもよい。
【0053】
ハンドリング機構80の各部の動作制御は、ハンドリング制御部80aにより実行される。ハンドリング制御部80aは、例えば、演算処理装置や内部記憶装置などを備えた汎用のコンピューター装置で構成されている。また、ハンドリング制御部80aには、ワーク2の被貼付面2aの3次元座標データ、これら3次元座標データなどに基づいてハンドリング機構80の各部の動作を制御するためのプログラムなどが記憶されている。そして、ハンドリング制御部80aは、3次元座標データなどを基に、予めテープ1の貼り付けを開始する被貼付面2a上の所定位置(始点)と、テープ1の貼り付けを完了する被貼付面2a上の所定位置(終点)とを指定して、ATLヘッド20の押圧位置を移動させる制御を行うことが可能となっている。
【0054】
ATLヘッド20は、押圧部30と、回動機構70と、エンド部40と、パラレルリンク機構50と、ベース部60とを含んで構成されている。
【0055】
押圧部30は、テープ1をワーク2の被貼付面2aとの間に挟持、押圧しつつテープ1を被貼付面2aに貼り付けるものである。
回動機構70は、少なくとも押圧部30を被貼付面2aの形状に倣うようにテープ1の貼付方向(Y軸方向)の回転軸周り(ロール(θy)方向)に回動可能とするものである。
エンド部40は、回動機構70と押圧部30とを保持するものである。エンド部40のパラレルリンク機構50が取り付けられた面(上面)とは反対側の面(下面)に回動機構70が取り付けられ、回動機構70の下側に押圧部30が取り付けられている。
【0056】
パラレルリンク機構50は、エンド部40をベース部60に対して並進3自由度で相対移動させるように構成されたものである。
ベース部60は、パラレルリンク機構50のエンド部40側とは反対側を保持するものであり、ベース部60がハンドリング機構80に取り付けられている。
【0057】
押圧部30は、テープ1を押圧するローラ31と、ローラ31を回転軸31a周りに回転可能に支持するローラ支持部32とを備えている。ローラ支持部32は、ローラ31の長手(回転軸31a)方向両側に設けられている。
【0058】
ローラ31は、テープ1の特性、又はワーク2の材質などに応じて、樹脂製ローラ、弾性ローラ、又は金属製ローラなどで構成される。ローラ31のサイズ(直径、幅)は、使用するテープ1の種類やサイズ、ワーク2の種類や形状に応じて適宜選択される。したがって、ローラ31が樹脂製ローラ又は金属製ローラなどの変形しない剛体で構成されている場合、押圧部30におけるテープ1の被貼付面2aへの押圧に寄与する領域は線状となる。また、ローラ31が弾性ローラなどの若干変形する部材で構成されている場合、押圧に寄与する領域は細長い面状となる。
【0059】
なお、別の構成例では、ローラ31に代えて、押圧シュー等の押圧部材が用いられてもよく、この場合、押圧に寄与する領域は、ある程度の幅を有する面状となる。
また、ATLヘッド20の押圧部30には、テープ1を押圧部30に向けて送り出すフィーダー(図示せず)や該フィーダーから送り出されたテープ1と被貼付面2aの少なくともいずれかを非接触で加熱する輻射光源や熱風源などの加熱装置(図示せず)が必要に応じて装備される。前記フィーダーや前記加熱装置は、ローラ支持部32に固定された取付ガイド(図示せず)などに取り付けられる。
【0060】
回動機構70は、ローラ31を長手方向に二分する点Cを通り、テープ1の貼付方向(Y軸方向)に平行な軸の周り(すなわち、ロール(θy)方向)に押圧部30を回動させることが可能な構成となっている。なお、点Cが、被貼付面2aに対するローラ31の接触中心点であるTool Center Point(TCPともいう)にも対応しており、回動機構70は、点Cを通るY軸方向の軸を中心にしてローラ31を回動可能な構成となっている。
【0061】
回動機構70は、被貼付面2aの形状に倣うように押圧部30を従動させるもの、換言すれば、外部から動力供給を必要としない受動機構で構成されている。
このような回動機構70は、ゴニオステージなどの傾斜ステージ機構などを利用して構成することができ、例えば、エンド部40に取り付けられたガイド部71と、ガイド部71に摺動可能な態様で取り付けられた摺動部72とを含んで構成されている。摺動部72に押圧部30のローラ支持部32が取り付けられている。
【0062】
ガイド部71は、下面に円弧形状をした逆凹状曲面部71aを有し、摺動部72は、上面にガイド部71と略同じ円弧形状をした凸状曲面部72aを有している。ガイド部71の逆凹状曲面部71aと摺動部72の凸状曲面部72aは、それぞれ点Cを略中心とする円弧形状に形成されている。
【0063】
また、ガイド部71の逆凹状曲面部71aと摺動部72の凸状曲面部72aとの摺動面には、円弧動作用のガイド機構73が設けられている。ガイド機構73は、摺動部72をガイド部71の逆凹状曲面部71aに沿って円弧動作可能にする機構であればよく、例えば、リニアボール機構、アリ溝機構、又はクロスローラ機構などが採用され得る。
【0064】
摺動部72の凸状曲面部72aがガイド部71の逆凹状曲面部71aに沿って所定方向(本例ではX軸方向)に受動的に摺動することにより、摺動部72は、点Cを略中心とする円弧上を摺動可能な構成となっている。
【0065】
また、回動機構70は、押圧部30の姿勢を検出する姿勢検出部74を備えている。
姿勢検出部74は、ガイド部71に対する摺動部72の姿勢(ロール(θy)方向の傾き、変位量など)を検出可能な装置、例えば、走査ヘッドとスケールとを含んで構成されるリニアスケールなどの各種エンコーダ、又は角度検出センサなどで構成されている。
【0066】
また、姿勢検出部74で検出された押圧部30の姿勢(ロール(θy)方向の傾き(角度)、又は変位量など)に関する信号は、ATLヘッド制御部54gに出力されるようになっている。そして、ATLヘッド制御部54gでは、姿勢検出部74で検出された押圧部30の姿勢データを、パラレルリンク機構50によるエンド部40の並進3自由度の運動制御に反映させるように構成されている。
【0067】
パラレルリンク機構50は、ベース部60とエンド部40との間に並列に設けられる3本のリンク部51と、これら3本のリンク部51の両端に設けられるジョイント部52、53とを含んで構成されている。
【0068】
ジョイント部52、53は、2自由度を有する自在継手(ユニバーサルジョイントともいう)で構成されている。
自在継手からなるジョイント部52は、第1軸52aと第2軸52bとを備えた交差軸部52cと、第1軸52aに回転自在に支持された第1ヨーク52dと、第2軸52bに回転自在に支持された第2ヨーク52eとを含んで構成されている。
同様に、自在継手からなるジョイント部53は、第1軸53aと第2軸53bとを備えた交差軸部53cと、第1軸53aに回転自在に支持された第1ヨーク53dと、第2軸53bに回転自在に支持された第2ヨーク53eとを含んで構成されている。
【0069】
ベース部60の3カ所にジョイント部52の第1ヨーク52dがそれぞれ所定の向きに固定されている。そして、これらジョイント部52の第2ヨーク52eが各リンク部51の一端側(上端側)に固定されている。前記所定の向きは、
図2に示すように、ベース部60の3カ所に設けられたジョイント部52の第1軸52aの延長線が1点で交わる向きとなっている。なお、別の構成例では、第2軸52bの延長線が1点で交わる向きとなるように、3つのジョイント部52をベース部60に取り付けるようにしてもよい。換言すれば、3つのジョイント部52の交差軸部52cがベース部60面上で120度回転対称となる向きに配設されている。
【0070】
また、エンド部40の3カ所にジョイント部53の第1ヨーク53dがそれぞれ所定の向きに固定されている。そして、これらジョイント部53の第2ヨーク53eが各リンク部51の他端側(下端側)に固定されている。前記所定の向きは、
図3に示すように、エンド部40の3カ所に設けられたジョイント部53の第1軸53aの延長線が1点で交わる向きとなっている。なお、別の構成例では、第2軸53bの延長線が1点で交わる向きとなるように、3つのジョイント部53をベース部60に取り付けるようにしてもよい。換言すれば、3つのジョイント部53の交差軸部53cがエンド部40面上で120度回転対称となる向きに配設されている。
【0071】
3本のリンク部51は、それぞれエアシリンダ54を含んで構成されている。エアシリンダ54が直動ジョイントの一例である。
エアシリンダ54は、流体として空気が供給されるシリンダ部54aと、シリンダ部54a内(両室)の圧力に応じて進退(変位)するロッド部54bとを含んで構成されている。また、エアシリンダ54には、シリンダ部54a内の圧力を検出する圧力センサ54cと、ロッド部54bの変位を検出する変位センサ54dとが設けられている。変位センサ54dは、ロッド部54bの変位量を測定できるものであればよく、例えば、磁気式のリニアエンコーダでもよいし、光学式のリニアエンコーダなどでもよい。
【0072】
また、シリンダ部54aは、圧力センサ54cを介してサーボバルブ54eに接続されている。サーボバルブ54eは、圧縮した空気を出力する空気圧供給部54f(例えば、コンプレッサなど)に接続されており、サーボバルブ54eによってシリンダ部54a内への空気の流入量や排気量を調整することで、シリンダ部54aの両室の圧力(内圧)が制御されるようになっている。そして、この圧力制御により、ロッド部54bの変位と押圧荷重とが制御されるようになっている。
なお、別の構成例では、サーボバルブ54eに代えて、電空レギュレーターなどの空気圧制御機器を用いてもよい。また、圧力センサ54cで検出された圧力信号と、変位センサ54dで検出された変位信号とは、それぞれATLヘッド制御部54gに出力されるようになっている。
【0073】
上記のように構成されたパラレルリンク機構50は、ベース部60とエンド部40との間に2自由度のジョイント部52、53を介して連結された3本のリンク部51の各々の長さがエアシリンダ54によるロッド部54bの伸縮動作によって制御される構成となっている。この動作制御により、パラレルリンク機構50は、エンド部40の位置をXYZ軸の並進方向に変化させながら、シリンダ部54aの内圧を制御して、エンド部40を所定の荷重で被貼付面2aの方向に押し付けることが可能となっている。
【0074】
ATLヘッド制御部54gは、例えば、演算処理装置や内部記憶装置などを備えた汎用のコンピューター装置で構成されている。ATLヘッド制御部54gには、ワーク2の被貼付面2aの3次元座標データの他、これら3次元座標データ、圧力センサ54cからの圧力信号、変位センサ54dからの変位信号、姿勢検出部74からの姿勢信号などに基づいてATLヘッド20各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。
【0075】
ATLヘッド制御部54gは、例えば、各エアシリンダ54の圧力センサ54cや変位センサ54dから取り込んだ検出信号とともに、姿勢検出部74で検出された押圧部30の姿勢に関する検出信号を用いて、各エアシリンダ54のサーボバルブ54eの動作を制御する。そして、ATLヘッド制御部54gは、サーボバルブ54eの動作制御により、各エアシリンダ54のシリンダ部54aの内圧やロッド部54bの変位を制御して、ローラ31が被貼付面2aに対して所定方向(例えば、矢印Aで示す法線方向)から所定の押圧力を付与するように、各リンク部51を動作させてエンド部40を並進運動させる制御処理を実行する。
【0076】
また、ATLヘッド制御部54gは、エンド部40の並進3自由度の運動制御において、望ましいコンプライアンス特性を得る観点からインピーダンス制御を行うように構成してもよい。例えば、前記インピーダンス制御では、目標インピーダンス(慣性、粘性、剛性のパラメータ)を設定し、エンド部40の位置目標値に対するエンド部40の変位を計測し、エンド部40の変位とエンド部40が外部へ与える力との関係が所定の関係(インピーダンス制御則)を満たすようにパラレルリンク機構50の動作を制御するようにしてもよい。
【0077】
また、ATLヘッド制御部54gは、エンド部40の並進3自由度の運動制御を行う際に、目標とするエンド部40の位置を実現するための各エアシリンダ54のロッド部54bの長さ(変位)を計算し、これら計算値を各エアシリンダ54のロッド部54bの長さの目標値として設定し、これら設定された目標値と、貼付動作時における各エアシリンダ54の変位センサ54dの出力値とを比較して、前記目標値になるようにフィードバック制御を行ってもよい。なお、ATLヘッド制御部54gとハンドリング制御部80aとが1つの制御部で構成されてもよい。
【0078】
このようにATL装置10は、パラレルリンク機構50によりエンド部40がベース部60に対して並進3自由度の運動(すわわち、XYZ軸方向の並進運動)を行うように構成されている。換言すれば、ATL装置10は、エンド部40が回転運動を行わないように動作が拘束された構成となっている。そして、ATL装置10は、回動機構70により、少なくとも押圧部30が被貼付面2aの形状に倣うようにテープ1の貼付方向(Y軸方向)の軸周り(θy方向)に回動するように構成されている。
【0079】
次に、ATL装置10の動作について説明する。
図4(a)~(d)は、実施の形態に係るATL装置でワークにテープを貼付している一場面を示す要部模式図であり、ATLヘッドの貼付動作の一例を説明するための図である。
【0080】
図4(a)は、形状誤差のない部分のワーク2の被貼付面2aにテープ1をローラ31で貼付している状態を示している。
【0081】
図4(b)は、ステップ(階段)状の大きな形状誤差αを有する部分の被貼付面2aにローラ31が到達したときの状態を示している。この状態では、ローラ31はまだ被貼付面2aに接触していない。
図4(b)~(d)では、被貼付面2aが、破線で示す設計形状面に対して形状誤差αを有している。
【0082】
図4(c)は、パラレルリンク機構50によりエンド部40を並進運動させつつ、ステップ(階段)状の形状誤差αを有する部分の被貼付面2aの形状にローラ31が倣うように、回動機構70によりローラ31をテープ1の貼付方向(Y軸方向)の軸周り(θy方向)に回動させている途中の状態を示している。
【0083】
図4(c)に示す状態では、パラレルリンク機構50の各リンク部51の長さを調整して、エンド部40を並進運動させる動作制御が行われている。この動作制御により、ローラ31の左下端部が被貼付面2aに接する。そして、被貼付面2aからローラ31に作用する押し当て反力によって、回動機構70の摺動部72がガイド部71上を受動的に摺動し始める。すなわち、回動機構70の摺動部72が、被貼付面2aの形状誤差αに応じて、押圧部30とともに、点Cを通り貼付方向(Y軸方向)に平行な軸周り(ロール(θy)方向)に回動(右回転)し始める。
【0084】
図4(d)は、摺動部72が、押圧部30とともに、並進運動を行うエンド部40からの垂線に対して右方向に角度θy1だけ回動し、ローラ31が、形状誤差αを有する被貼付面2aの形状に倣った状態で、テープ1を押圧しながら貼付している状態を示している。
すなわち、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が、被貼付面2aに対して法線方向(A方向)から押し当てることができる状態に受動的に調整された状態になっている。
【0085】
ワーク2の被貼付面2aの形状誤差αがステップ状などの大きな形状誤差であった場合、先願のATL装置では、
図6(d)に示したように、回動機構700による押圧ローラ310のロール(θy)方向への回転につられて、エンド部40がロール(θy)方向に過回転し、それにつられて、回動機構700と押圧ローラ310もロール(θy)方向に一時的に過回転する。その結果、押圧ローラ310の一端部が被貼付面2aから一時的にバウンドする現象が発生した。
【0086】
一方、ATLヘッド20では、パラレルリンク機構50によるエンド部40の動作制御が、ベース部60に対して並進3自由度の運動に拘束されている。そのため、
図4(c)、(d)に示すように、ステップ状などの大きな形状誤差αを有する部分にテープ1を貼付する場合であっても、回動機構70によるローラ31のロール(θy)方向への回転につられて、エンド部40がロール(θy)方向に回転することがない。したがって、ATLヘッド20では、ローラ31が、過回転して一時的にバウンドするような現象が発生することなく、回動機構70による押圧部30を受動的に回動させる動作によって形状誤差αを吸収しながら、ローラ31を被貼付面2aの形状にぴたりと倣うように動作させることが可能となっている。
【0087】
実施の形態に係るATL装置10によれば、ATLヘッド20のパラレルリンク機構50が、エアシリンダ54を含んで構成された3本のリンク部51と、2自由度のジョイント部52、53とにより、エンド部40がベース部60に対して並進3自由度の運動(すわわち、XYZ軸方向の並進運動)を行うように構成されている。換言すれば、エンド部40が回転運動を行わないように動作が拘束された構成となっている。また、回動機構70により、少なくとも押圧部30のローラ31が被貼付面2aの形状に倣うようにテープ貼付方向(Y軸方向)の軸周り(θy方向)に回動するように構成されている。
【0088】
したがって、ステップ(階段)状などの大きな形状誤差αを有する部分の被貼付面2aにテープ1を貼付する場合であっても、ローラ31が被貼付面2aに押し付けられるときに、回動機構70による押圧部30の回転動作につられてエンド部40が回転することがなく、パラレルリンク機構50がエンド部40を押圧する向きと力を安定させることができる。
【0089】
そのため、ローラ31が被貼付面2aに接触した後、回動機構70によって押圧部30をテープ貼付方向の軸周りに回動させる際に、ローラ31が一時的に過回転したり、ローラ31が被貼付面2aから一時的にバウンドしたりする現象を防止することができ、ローラ31を被貼付面2aの形状に倣う位置にぴたりと位置させることができ、テープ1を精度よく貼り付けることができる。
【0090】
これにより、押圧部30のローラ31を被貼付面2aの形状に倣わせるまでの時間的な遅れ(タイムラグ)の発生を防止でき、そして、ローラ31の姿勢の安定化とローラ31による倣い動作の高速化を図ることができ、ワーク2の形状誤差を吸収しながらローラ31を被貼付面の形状に倣わせる動作、すなわち倣い貼付動作の応答性を向上させることができる。
【0091】
また上記ATL装置10によれば、パラレルリンク機構50が、3本のリンク部51で構成されているので、4本以上のリンク部で構成されたものと比べて、より低圧荷重で押圧部30のローラ31を被貼付面2aに押圧する動作を行うことが可能となる。
また、3本のリンク部51のそれぞれの両端に設けられるジョイント部52、53が、2自由度を有する自在継手で構成されているので、エンド部40をベース部60に対して並進3自由度で精度よく相対移動させることが可能となり、また、3本のリンク部51の動作でエンド部40を押圧する向きと力を安定させる効果を高めることができる。
【0092】
また上記ATL装置10によれば、各リンク部51が、直動ジョイントとしてエアシリンダ54を含んで構成されているので、3本のリンク部51の動作でエンド部40を押圧する力(荷重)の調整範囲を拡げることができ、高押圧荷重から低押圧荷重までの所望とする押圧荷重での押圧動作を精度よく行うことができる。
【0093】
また上記ATL装置10によれば、回動機構70が、ローラ31の姿勢を検出する姿勢検出部74を備え、姿勢検出部74で検出されたローラ31の姿勢、例えば、回転角度、変位量などに基づいて、ローラ31が被貼付面2aに対して所定方向(例えば、法線方向)から所定の押圧力を付与するように、各リンク部51を動作させてエンド部40を並進運動させることが可能となる。したがって、ローラ31を被貼付面2aの形状に応答性良く倣わせながら、被貼付面2aに対して所定方向から所定の押圧力で精度よく押圧することが可能となる。
【0094】
また、ATL装置10によれば、回動機構70が、ガイド部71と摺動部72とを含み、ガイド部71の逆凹状曲面部71aに沿って摺動部72が受動的に摺動するように構成されている。そのため、被貼付面2aの形状に応じて押圧部30を従動させることが可能となり、被貼付面2aの形状誤差に対する即応性が高く、また、押圧部30を被貼付面2aに低押付荷重で倣わせることができる。
【0095】
また、ATL装置10によれば、回動機構70は、点Cを通り、貼付方向(Y軸方向)に平行な軸の周りに押圧部30を回動させることができる。したがって、パラレルリンク機構50のエンド部40の動作が並進3自由度に拘束されていても、被貼付面2aに対して押圧部30を一定の押圧状態で精度良く倣わせることができ、被貼付面2aに対するテープ1の貼付性能を高めることができる。
【0096】
なお、本実施の形態では、パラレルリンク機構50を構成するリンク部51の直動ジョイントが、空気圧で駆動するエアシリンダ54で構成されている場合について説明したが、本発明に適用できる前記直動ジョイントは、エアシリンダ54に限定されるものではない。前記直動ジョイントは、例えば、油圧シリンダ、又は電動シリンダなどの直動式アクチュエータで構成することも可能である。
【0097】
また、パラレルリンク機構50を構成するリンク部51は、エアシリンダ54などの直動ジョイントを含む構成に限定されるものではなく、別の構成例では、各リンク部51が、前記直動ジョイントとは異なる構成のジョイント部を含んで構成されているものでもよい。
【0098】
図5は、別の実施の形態に係るATL装置10AにおけるATLヘッド20Aの構成例を示す要部概略図である。なお、
図5において、
図1に示したATL装置10の各構成部品と同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0099】
ATL装置10Aでは、ATLヘッド20Aを構成するパラレルリンク機構50Aが、ベース部60とエンド部40との間に並列に設けられる3本のリンク部51Aと、これら各リンク部51Aの一端とベース部60との間に設けられる第1ジョイント部52Aと、各リンク部51Aの他端とエンド部40との間に設けられる第2ジョイント部53Aとを含んで構成されている。
【0100】
そして、各リンク部51Aが、ベース部60側の第1アーム55と、エンド部40側の第2アーム57と、これら第1アーム55と第2アーム57との間に設けられる第3ジョイント部56とを含んで構成されている。
【0101】
第1ジョイント部52Aは、1自由度の回転ジョイントで構成され、ベース部60の3か所にそれぞれ所定の向きに取り付けられている。該所定の向きは、回転ジョイントからなる第1ジョイント部52Aの回転軸52fがベース部60面上(基準平面上)で120度回転対称となる向きになっている。
また、第1ジョイント部52Aは、サーボモータなどの駆動部58に接続されて、能動ジョイントとして機能するものであり、回転軸52fの回動方向に第1アーム55を能動的に回動させることが可能となっている。
【0102】
第2ジョイント部53Aは、2自由度を有する第1自在継手(ユニバーサルジョイント)で構成され、第3ジョイント部56は、2自由度を有する第2自在継手(ユニバーサルジョイント)で構成されている。
【0103】
第1自在継手からなる第2ジョイント部53Aは、第1軸53aと第2軸53bとを備えた交差軸部53cと、第1軸53aに回転自在に支持された第1ヨーク53dと、第2軸53bに回転自在に支持された第2ヨーク53eとを含んで構成されている。
第2自在継手からなる第3ジョイント部56は、第1軸56aと第2軸56bとを備えた交差軸部56cと、第1軸56aに回転自在に支持された第1ヨーク56dと、第2軸56bに回転自在に支持された第2ヨーク56eとを含んで構成されている。
【0104】
第1アーム55の第2アーム57側の端部に第3ジョイント部56を構成する第2自在継手の第1ヨーク56dがそれぞれ所定の向きに固定され、第2アーム57の第1アーム55側の端部に第3ジョイント部56を構成する第2自在継手の第2ヨーク56eがそれぞれ固定されている。
【0105】
エンド部40の3カ所に第2ジョイント部53Aを構成する第1自在継手の第1ヨーク53dがそれぞれ所定の向きに固定され、第2アーム57のエンド部40側の端部に第2ジョイント部53Aを構成する第1自在継手の第2ヨーク53eがそれぞれ固定されている。
【0106】
第1ヨーク56dが固定されている向き(前記所定の向き)は、各リンク部51Aに設けられた3つの第3ジョイント部56の第1軸56aの延長線が1点で交わる向きとなっている(
図2に示した第1軸52aの向きと同様である)。換言すれば、3つの第3ジョイント部56の交差軸部56cがある基準平面上で120度回転対称となる向きに配設されている。
【0107】
また、第1ヨーク53dが固定されている向き(前記所定の向き)は、エンド部40に設けられた3つの第2ジョイント部53Aの第1軸53aの延長線が1点で交わる向きとなっている(
図3に示した第1軸53aの向きと同様である)。換言すれば、3つの第2ジョイント部53Aの交差軸部53cがエンド部40面上(基準平面上)で120度回転対称となる向きに配設されている。
【0108】
パラレルリンク機構50Aは、いわゆるデルタ型のパラレルリンク機構の一種であり、エンド部40をベース部60に対して並進3自由度で並進移動させる機能を有している。したがって、別の実施の形態に係るATL装置10Aにおいても、上記した実施の形態に係るATL装置10と同様の効果を得ることができる。また、エンド部40の並進運動の可動領域を拡げることが可能となり、各リンク部51Aの軽量化も図ることができ、倣い貼付動作の応答性を向上させることができる。なお、さらに別の実施の形態では、
図5に示した形態とは異なる形態を有するデルタ型のパラレルリンク機構を適用することが可能である。例えば、第2ジョイント部53A及び第3ジョイント部56が球面ジョイントで構成されてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態に係るATL装置10、10Aでは、回動機構70が、ガイド部71と摺動部72とを含む傾斜ステージ機構で構成されているが、本発明に適用可能な回動機構はこの構成に限定されない。前記回動機構は、テープ1の貼付方向(Y軸方向)に平行な回動軸周り(ロール(θy)方向)にローラ31を受動的に回動させて、ローラ31を被貼付面2aの形状に倣うように動作可能な構成を備えていればよい。
【0110】
なお、上記実施の形態において、被貼付面2aへのテープ1の貼付形態は、テープ1がワーク2の被貼付面2aに順次並べて貼り付けられる形態の他、成形品の品質規格などに応じて、隣り合うテープ1の一部を重ねた状態に貼り付けるようにしてもよいし、隣り合うテープ1同士が重ならない状態(所定の隙間を設けた状態)に貼り付けてもよい。
【0111】
本実施の形態に係るATL装置10によれば、隣り合うテープ1の一部を重ねた状態で貼り付ける場合であっても、また、隣り合うテープ1同士が重ならないように、すなわち、一定の隙間を設けた状態となるように貼り付ける場合であっても、テープ1同士の重なり度合や隙間が一定の安定した貼り付けを行うことができ、テープ1が貼り付けられた成形品の品質を向上させることが可能となる。なお、押圧部30による押圧方向は、被貼付面2aの法線方向に限定されない。
【0112】
また、テープ1は、例えば、炭素繊維などの繊維の集合体である為、テープ1の断面形状が崩れると、成形品の品質に悪影響を与える虞がある。例えば、ローラ31を法線方向に押圧できない場合、ローラ31の軸方向の力が発生し、テープ1のローラ接触面近傍の繊維がずれ、テープ1の断面形状を崩す虞がある。
【0113】
しかしながら、ATL装置10、10Aによれば、ATLヘッド20、20Aの並進3自由度のパラレルリンク機構50と、テープ1の貼付方向の軸周りに回動する回動機構70とによる、被貼付面2aへの倣い貼付制御により、ワーク2の被貼付面2aの形状にステップ状の大きな形状誤差があった場合であっても、押圧ローラが被貼付面の形状に倣うまでの時間的な遅れ(タイムラグ)をなくすことができるので、ローラ31によってテープ1の断面形状が崩れる虞がなく、成形品の品質を向上させることが可能となる。
【0114】
また、ATL装置10によれば、各リンク部51にエアシリンダ54を用いているので、他のシリンダ形式(例えば、油圧シリンダや電動シリンダなど)と比較して、押圧部30を被貼付面2aに押し付けるときの力が吸収又は緩和されやすい構成、いわゆるコンプライアンス特性(受動的な滑らかさ、柔らかさを有する押圧動作)を奏する構成になっている。したがって、回動機構70により押圧部30を受動的に回動させる動作も滑らかに行うことができる。
【0115】
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、上記説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく、種々の改良、変更、又は構成の組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0116】
本発明は、テープを被貼付面に貼り付けて3次元形状を有する成形品を製造する場合など、被貼付面に対するテープの貼付性能を高めることが要求されるあらゆる分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 テープ
2 ワーク
2a 被貼付面
10、10A ATL装置(テープ貼付装置)
20、20A ATLヘッド(貼付ヘッド)
30 押圧部
31 ローラ
31a 回転軸
32 ローラ支持部
40 エンド部
50、50A パラレルリンク機構
51、51A リンク部
52、53 ジョイント部
52A 第1ジョイント部
53A 第2ジョイント部
56 第3ジョイント部
52a、53a、56a 第1軸
52b、53b、56b 第2軸
52c、53c、56c 交差軸
52d、53d、56d 第1ヨーク
52e、53e、56e 第2ヨーク
52f 回転軸
54 エアシリンダ(直動ジョイント)
54a シリンダ部
54b ロッド部
54c 圧力センサ
54d 変位センサ
54e サーボバルブ
54f 空気圧供給部
54g ATLヘッド制御部
55 第1アーム
57 第2アーム
58 駆動部
60 ベース部
70 回動機構
71 ガイド部
71a 逆凹状曲面部
72 摺動部
71a 凸状曲面部
73 ガイド機構
74 姿勢検出部
80 ハンドリング機構
80a ハンドリング制御部
200 貼付ヘッド
310 押圧ローラ
500 パラレルリンク機構
510 リンク部
700 回動機構