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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141039
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】検査装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/95 20060101AFI20241003BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052471
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】日月 快
(72)【発明者】
【氏名】井上 健太
(72)【発明者】
【氏名】小田 晶美
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB13
2G051BB01
2G051CA04
2G051EA11
2G051EA12
(57)【要約】
【課題】植毛ネットに毛髪材が結びつけられた対象物において、毛髪材の結び付け不良の有無を容易に把握することができる検査装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】網目状である植毛ネットの横糸に毛髪材が結び付けられた対象物を検査する検査装置1であって、対象物を撮像した画像を処理する画像処理部112を備える。画像処理部112は、毛髪材の結び目及び背景のそれぞれが第1値、植毛ネットが第2値になるように画像を二値化し、第2値の領域を横糸に対して垂直な双方向に拡張する第1処理を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目状である植毛ネットの横糸に毛髪材が結び付けられた対象物を検査する検査装置であって、
前記対象物を撮像した画像を処理する画像処理部を備え、
前記画像処理部は、前記毛髪材の結び目及び背景のそれぞれが第1値、前記植毛ネットが第2値になるように前記画像を二値化し、前記第2値の領域を前記横糸に対して垂直な双方向に拡張する第1処理を行う、検査装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記第1処理を行う際に、隣接する前記横糸の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ、前記第2値の領域を拡張する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記第1処理の後、前記第1値の領域を、前記横糸に平行な双方向及び前記横糸に垂直な双方向に拡張する第2処理を行う、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記第2処理を行う際に、
前記対象物を作成する際に設定した前記毛髪材の結び目の前記横糸に平行な方向の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ、前記第1値の領域を当該方向に沿って拡張し、
前記対象物を作成する際に設定した前記毛髪材の結び目の前記横糸に垂直な方向の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ、前記第1値の領域を当該方向に沿って拡張する、請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記第2処理の後、前記第2値の領域を、前記横糸に平行な双方向及び前記横糸に垂直な双方向に拡張する第3処理を行う、請求項3に記載の検査装置。
【請求項6】
網目状である植毛ネットの横糸に毛髪材が結び付けられた対象物を撮像した画像の処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記毛髪材の結び目及び背景のそれぞれが第1値、前記植毛ネットが第2値になるように前記画像を二値化し、前記第2値の領域を前記横糸に対して垂直な方向に拡張する第1処理を行う、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植毛ネットに毛髪材が結びつけられた対象物を検査する検査装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、毛髪材を植毛ネットに結び付けて植毛する自動植毛装置が提案されている。この自動植毛装置では、毛髪材を植毛ネットの目の横糸に結び付けて植毛する植毛鉤針を有しており、毛髪材が植毛鉤針の先端部に保持された状態で植毛ネットの目を出入りすることによって、毛髪材が植毛ネットの目に結び付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6533350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような自動植毛装置では、植毛ネットへの毛髪材の結び付けが失敗して、部分的に毛髪材が結び付けられていない領域(ボルディングスポット)が生じる可能性がある。そのため、自動植毛装置により植毛ネットに毛髪材を結び付けた後に、これを検査する必要があるが、
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、植毛ネットに毛髪材が結びつけられた対象物において、毛髪材の結び付け不良の有無を容易に把握することができる検査装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、以下に開示する検査装置は、網目状である植毛ネットの横糸に毛髪材が結び付けられた対象物を検査する検査装置であって、前記対象物を撮像した画像を処理する画像処理部を備え、前記画像処理部は、前記毛髪材の結び目及び背景のそれぞれが第1値、前記植毛ネットが第2値になるように前記画像を二値化し、前記第2値の領域を前記横糸に対して垂直な方向に拡張する第1処理を行う。
【発明の効果】
【0007】
上記の検査装置によれば、得られる画像のうち、毛髪材の結び目については第1値のままで、その他の部分を第2値に塗りつぶすことができる。したがって、当該画像における第1値の領域の分布により、対象物における毛髪材の結び付け不良の有無を容易に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、自動植毛装置120の側面図である。
図2図2は、自動植毛装置120の正面図である。
図3図3は、自動植毛装置120の側面図である。
図4図4は、自動植毛装置120の側面図である。
図5図5は、検査装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、対象物を撮像して得られる画像の一例を示す図である。
図7図7は、画像の処理方法について説明する図である。
図8図8は、画像の処理方法について説明する図である。
図9図9は、画像の処理方法について説明する図である。
図10図10は、図6に示す画像P1を撮像するための装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、例えば実施形態及び変形例として記載された各構成を任意に組み合わせるなど、適宜変更することが可能である。また、以下で参照する図面も例示であり、当該図面中において構成の簡略化や模式化がされていることもある。
【0010】
<<自動植毛装置の基本的な構成及び動作の一例>>
最初に、本発明の実施形態に係る自動植毛装置の基本的な構成及び動作の一例について説明するが、例えば特許第6533350号公報などに記載されているような公知の自動植毛装置の構成及び動作を採用してもよい。
【0011】
図1は、自動植毛装置の側面図であり、図2は、自動植毛装置の正面図である。図1及び図2に示すように、自動植毛装置120は、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、ストッカ40、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、反転ローラー80、図示しない磁石、駆動機構、制御装置などを備える。なお、図1ないし図4に示す側面図及び正面図では、図中の左右方向が水平方向、上下方向が鉛直方向である。
【0012】
毛髪材100aとは、人工毛(ファイバー、合成繊維)のほか、人毛(ヒトから採取した毛)、動物毛(ヒト以外の動物から採取した毛)、またはこれらの混合物などであり、自動植毛装置120によって植毛可能な毛または毛様の一切の材料が含まれる。また、植毛ネット200は、例えば複数本の縦糸201と複数本の横糸202とからなる網目状である。
【0013】
図1及び図2に示すように、予め切り揃えられた複数本の毛髪材100aからなる毛髪材束100bが、ストッカ40内に配置される。以下、水平面内の方向であって、エキセン10からみて引出鉤針30がある方向を後方、その反対方向を前方といい、これらを合わせて前後方向という。また、水平面内において前後方向と垂直な方向を奥行方向といい、前方から後方を見たときに左側となる方向を奥側(図1における紙面裏側)、右側となる方向を手前側(図1における紙面表側)という。
【0014】
植毛ネット200は、エキセン10のネット掛部11に対して上方から覆い被さるようにセットされ、反転ローラー80にも接触して位置が規制されている。ストッカ40は、底部41と、一対の対向した側板43を有しており、毛髪材束100bが底部41上に配置される。なお、ストッカ40は、図2に示すように1つだけ設けられてもよいし、複数設けられていてもよい。また、ストッカ40に配置される毛髪材100aは、例えば色、太さ、硬さ(弾力)などの種類が異なるものが混合されていてもよい。
【0015】
植毛鉤針20は、先端のフック21と、フック21の針口を開閉するラッチ22とを備える。植毛鉤針20は、制御装置で制御される駆動機構によって駆動され、毛髪材100aを植毛ネット200に結び付けて植毛する。引出鉤針30は、ストッカ40から毛髪材100aを捕捉する部材であり、先端に1本(または複数本)の毛髪材100aを捕捉可能なフック31が設けられる。
【0016】
糸位置出しバー50は、引出鉤針30によってストッカ40から引き出される毛髪材100aを所定位置に誘導する部材である。糸落としバー60は、制御装置で制御される駆動機構で上下方向に振動するものであり、糸引込バー70によって引き込まれる毛髪材100aを払い落とす。糸引込バー70は、制御装置で制御される駆動機構によって前後方向に移動するものであり、植毛ネット200に植毛された毛髪材100aを引っかけて前方に引き込む。
【0017】
次に、自動植毛装置の動作について説明する。自動植毛装置は、図1に示した状態を初期状態として、以下のとおり動作する。(1)糸引込バー70が、ストッカ40の取出口42を超えた位置まで後方に向かって進む。(2)引出鉤針30が、フック31を含む先端部が取出口42からストッカ40の内部に入るまで上昇、毛髪材100aを捕捉し下降する。(3)植毛鉤針20が、後方に向かって進み、フック21が横糸202-1の下を通る。(4)軸部13が、エキセン10の逃げ部12が上方を向くように90度回転する。(5)図3に示すように、植毛鉤針20が、後方に向かって進む。(6)植毛鉤針20が、フック21の針口が上を向いた状態から毛髪材100aを向いた状態(奥側を向いた状態)になるように回転して、針口で毛髪材100aを捕捉する。(7)植毛鉤針20が、フック21の針口が上向きになるように回転した後、前方に向かって進み、横糸202-1の下方を通過する。この際、ラッチ22が横糸202-1に接触して針口が閉じられるが、その後図示しない磁石によりラッチ22が吸着されて針口が開かれる。(8)植毛鉤針20が、後方に進むとともに上昇し、回転して毛髪材100aを撚りループを形成する。(9)図4に示すように、植毛鉤針20が、後方に向かって進む。(10)植毛鉤針20が、フック21の針口が上を向いた状態から毛髪材100aを向いた状態(奥側を向いた状態)になるように回転して、針口で毛髪材100aを捕捉する。(11)植毛鉤針20が、フック21の針口が上向きになるように回転した後、前方に向かって進み毛髪材100aのループを通過する。この際、ラッチ22が毛髪材100aのループに接触して針口が閉じられる。(12)糸引込バー70が、前方に進んで毛髪材100aを前方に引き込み、初期状態に戻る。エキセン10及び植毛鉤針20が初期状態に戻る。この際、図示しない磁石によりラッチ22が吸着されて針口が開かれる。糸落としバー60が、下方に移動して毛髪材100aを下方に整髪した後、上方に移動して初期状態に戻る。
【0018】
上記(2)の動作において、引出鉤針30の先端部が取出口42に挿入された後、僅かに手前側(フック31の針口32が開口した側)に移動して、フック31に毛は毛髪材100aが捕捉され易くしてもよい。上記(6)及び(10)の動作において、毛髪材100aをフック21の針口に導入し易くするために、引出鉤針30を手前側に移動させてもよいし、引出鉤針30及び植毛鉤針20の両方が互いに近づくように移動してもよい。また、図3及び図4では、植毛鉤針20が、上記(6)の動作で2つ折りになった毛髪材100aの前方を捕捉し、上記(10)の動作で後方を捕捉するように図示したが、それぞれの動作において前方、後方のいずれを捕捉してもよい。上記(7)の動作において、植毛鉤針20は上昇しなくてもよい。また、当該動作において、植毛鉤針は1回転またはそれ以上回転してもよいし、半回転でもよい。上記(11)の動作において、植毛鉤針20が毛髪材100aのループを通過する際に、引出鉤針30が上下に小刻みに動いてもよい。これにより、フック31が毛髪材100aから外れ、毛髪材100aが摩擦によって縮れるピーリングが防止される。
【0019】
<<検査装置>>
次に、本発明の実施形態に検査装置の構成の一例について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る検査装置1の構成の一例について示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、検査装置1は、記憶部111と、画像処理部112と、出力部113とを備える。記憶部111は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置や、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置で構成される。画像処理部112は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置で構成される。出力部113は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置や、インターネット、イントラネット等のネットワークに接続するためのルータやハブなどの通信機器で構成される。例えば、記憶部111及び画像処理部112は、1つのパソコンの一部として構成される。なお、記憶部111は、複数の記憶装置で構成されてもよく、例えば不揮発性の記憶装置と揮発性の記憶装置が組み合わされて構成されてもよい。
【0021】
記憶部111は、植毛ネットに毛髪材が結びつけられた対象物を撮像して得られた画像のデータ(以下、単に「画像」という)を記憶する。また、記憶部111は、画像処理部112が当該画像を処理するために必要な情報(例えば、当該画像を処理するためのプログラムなど)も記憶している。
【0022】
画像処理部112は、記憶部111が記憶する、植毛ネットに毛髪材が結びつけられた対象物を撮像して得られた画像を処理して、対象物における毛髪材の結び付け不良の有無を容易に把握させることが可能な画像を作成する。なお、画像処理部112は、単に画像を処理するだけでなく、処理した画像に基づいて、毛髪材の結び付け不良の有無を判定してもよい。
【0023】
出力部113は、画像処理部112が処理した画像を表示したり、画像処理部112の判定結果を表示したり、これらを外部に送信したりする。
【0024】
次に、画像処理部112による画像の処理方法について、図6ないし図9を参照して説明する。図6は、対象物を撮像して得られる画像の一例を示す図である。図7ないし図9は、画像の処理方法について説明する図である。
【0025】
図6に示すように、画像P1には、植毛ネット200と、植毛ネット200のうち図中の上下方向に伸びる横糸202に結びつけられた毛髪材の結び目100cが含まれる。また、図6に示す例では、領域Rにおいて毛髪材の結び付けに失敗しており、この部分には結び目100cが形成されていない。なお、図6では、目が六角形である網目状の植毛ネット200を例示しているが、目の形状は、毛髪材を結び付けることができる横糸202が存在するのであれば、四角形などどのような形状であってもよい。
【0026】
次に、画像処理部112は、図6に示す画像P1を二値化して、図7に示す画像P2を得る。このとき、画像処理部112は、毛髪材の結び目100c及び背景のそれぞれが第1値、植毛ネット200が第2値になるように画像P1を二値化する。なお、図7に示す画像P2において、第1値を黒色、第2値を白色で表示している。
【0027】
次に、画像処理部112は、図7に示す画像P2に対して、第2値の領域を、横糸202に対して垂直な双方向(図中の左右方向)に拡張する処理を行い、図8に示す画像P3を得る。これにより、画像P1において植毛ネット200であった第2値の領域が、植毛ネット200の目を埋め尽くすように拡張される。ただし、毛髪材の結び目100cがあった部分については、第2値で埋め尽くされずに第1値のまま残るため、図8に示す画像P3においては、毛髪材の結び目100cであった部分を、第1値の領域として表示することができる。なお、この処理において、画像処理部112が、隣接する横糸202の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ第2値の領域を拡張すると、毛髪材の結び目100c以外を、完全に第2値で塗りつぶすことができる。
【0028】
次に、画像処理部112は、図8に示す画像P3に対して、第1値の領域を、横糸202に平行な双方向(図中の左右方向)及び横糸202に垂直な双方向(図中の上下方向)に拡張する処理を行い、図9に示す画像P4を得る。これにより、画像P1において毛髪材の結び付けに失敗していた領域Rを、第2値の領域として表示することができる。なお、この処理において、対象物を作成する際に設定した毛髪材の結び目100cの横糸202に平行な方向の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ第1値の領域を当該方向に沿って拡張し、対象物を作成する際に設定した毛髪材の結び目100cの横糸202に垂直な方向の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ第1値の領域を当該方向に沿って拡張すると、毛髪材の結び付けに失敗していた領域R以外を、完全に第1値で塗りつぶすことができる。
【0029】
以上のように、検査装置1において、画像処理部112により、画像P1の二値化と第2値の領域を拡張する処理(第1処理)を行うと、得られる画像P3において、毛髪材の結び目については第1値のままで、その他の部分を第2値に塗りつぶすことができる。したがって、当該画像における第1値の領域の分布により、対象物における毛髪材の結び付け不良の有無を容易に把握させることができる。
【0030】
なお、画像処理部112が、第1処理のみを行い、その後に第1値の領域を拡張する処理(第2処理)を行わなくてもよい。例えば、第1処理によって得られた画像P3を、出力部113によってユーザに対して表示するだけでも、対象物における毛髪材の結び付け不良の有無を容易に把握させることができる。ただし、画像処理部112が、第1処理に加えて第2処理を行うと、得られる画像P4では、毛髪材の結び付けが失敗した部分以外が第1値で塗りつぶされるため、当該画像P4を表示するなどにより、毛髪材の結び付けが失敗した部分を直感的に把握させることができる。
【0031】
また、画像処理部112が、第1処理及び第2処理に加えて、画像P4の第2値の領域を、横糸202に平行な双方向及び横糸202に垂直な双方向に拡張する処理(第3処理)を行ってもよい。第3処理を行うことで、毛髪材の結び付けが失敗した部分を拡大して強調することができるため、毛髪材の結び付けが失敗した部分をさらに容易に把握させることができる。
【0032】
また、画像処理部112が、画像P3や画像P4を出力部113に表示させるほかに、これらの画像に基づいて毛髪材の結び付け不良の有無を判定してもよい。例えば、画像処理部112が、画像P3における第1値のクラスタ(塊)の数が所定の数よりも少ない場合や、画像P4において所定の大きさよりも大きい第2値のクラスタが存在する場合や、このようなクラスタが所定の数よりも多い場合に、髪材の結び付け不良があったと判断して、その旨を出力部113に表示させたり、外部に出力してもよい。
【0033】
<<変形等>>
以上、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0034】
例えば、上述した検査装置1において、画像処理部112が処理する画像P1は、図6に示すように植毛ネット200と毛髪材の結び目100c以外が含まれていないと好ましい。特に、毛髪材100aが植毛ネット200に沿って付着しており、結び目100c以外に植毛ネット200と重なる部分がある場合、その重なった部分が結び目100cであると誤認される可能性がある。そこで、植毛ネット200と毛髪材の結び目100c以外が含まれていない画像P1を撮像するために、例えば図10に示すような装置を使用してもよい。図10は、図6に示す画像P1を撮像するための装置の構成の一例を示す断面図である。図10に示す装置は、カメラ311と、照明312と、縁部保持部341a~341dを備える。縁部保持部341a~341dにより植毛ネット200の周縁を保持し、毛髪材100aが重力によって鉛直下方に垂れ下がった状態にして、鉛直上方から照明312で光を照射しながらカメラ311で撮像するものである。この装置で撮像することで、図6に示すように植毛ネット200と毛髪材の結び目100c以外が含まれていない画像P1を得ることができる。
【0035】
また、上述した検査装置は、以下のように説明することができる。
【0036】
検査装置は、網目状である植毛ネットの横糸に毛髪材が結び付けられた対象物を検査する検査装置であって、前記対象物を撮像した画像を処理する画像処理部を備え、前記画像処理部は、前記毛髪材の結び目及び背景のそれぞれが第1値、前記植毛ネットが第2値になるように前記画像を二値化し、前記第2値の領域を前記横糸に対して垂直な双方向に拡張する第1処理を行う(第1の構成)。この構成によれば、得られる画像のうち、毛髪材の結び目については第1値のままで、その他の部分を第2値に塗りつぶすことができる。したがって、当該画像における第1値の領域の分布により、対象物における毛髪材の結び付け不良の有無を容易に把握させることができる。
【0037】
第1の構成において、前記画像処理部は、前記第1処理を行う際に、隣接する前記横糸の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ前記第2値の領域を拡張してもよい(第2の構成)。この構成によれば、得られる画像のうち、毛髪材の結び目以外を、完全に第2値で塗りつぶすことができるため、対象物における毛髪材の結び付け不良の有無をさらに容易に把握させることができる。
【0038】
第1または第2の構成において、前記画像処理部は、前記第1処理の後、前記第1値の領域を、前記横糸に平行な双方向及び前記横糸に垂直な双方向に拡張する第2処理を行ってもよい(第3の構成)。この構成によれば、得られる画像のうち、毛髪材の結び付けが失敗した部分以外を、第1値で塗りつぶすことができるため、毛髪材の結び付けが失敗した部分を直感的に把握させることができる。
【0039】
第3の構成において、前記画像処理部は、前記第2処理を行う際に、前記対象物を作成する際に設定した前記毛髪材の結び目の前記横糸に平行な方向の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ、前記第1値の領域を当該方向に沿って拡張し、前記対象物を作成する際に設定した前記毛髪材の結び目の前記横糸に垂直な方向の間隔の半分以上かつ当該間隔以下の大きさだけ、前記第1値の領域を当該方向に沿って拡張してもよい(第4の構成)。この構成によれば、得られる画像のうち、毛髪材の結び付けが失敗した部分以外を、完全に第1値で塗りつぶすことができるため、毛髪材の結び付けが失敗した部分をさらに直感的に把握させることができる。
【0040】
第3または第4の構成において、前記画像処理部は、前記第2処理の後、前記第2値の領域を、前記横糸に平行な双方向及び前記横糸に垂直な双方向に拡張する第3処理を行ってもよい(第5の構成)。この構成によれば、毛髪材の結び付けが失敗した部分を拡大して強調することができるため、毛髪材の結び付けが失敗した部分をさらに容易に把握させることができる。
【0041】
また、上述した検査装置で利用されるプログラムは、網目状である植毛ネットの横糸に毛髪材が結び付けられた対象物を撮像した画像の処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記毛髪材の結び目及び背景のそれぞれが第1値、前記植毛ネットが第2値になるように前記画像を二値化し、前記第2値の領域を前記横糸に対して垂直な方向に拡張する第1処理を行う(第6の構成)。
【符号の説明】
【0042】
1…検査装置、111…記憶部、112…画像処理部、113…出力部、200…植毛ネット、202…横糸、100a…毛髪材、100c…結び目、R…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10