(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014105
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】金属キャスク用バスケット
(51)【国際特許分類】
G21C 19/32 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G21C19/32 040
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116699
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴也
(57)【要約】
【課題】材料費の低廉化を達成でき、金属キャスクの製品価格を低く抑える金属キャスク用バスケットを提供する。
【解決手段】一の方向に向けて互いに平行に揃えられた複数のバスケットプレート21からなる第一バスケットプレート群21Aと、一の方向と直交する方向に向けて互いに平行に揃えられた複数のバスケットプレート21からなる第二バスケットプレート群21Bとを備え、これらが軸方向に交互に積層配置してなる積層体にて構成されている。積層体は、ボロンが添加されたボロン添加鋼板により形成されたバスケットプレート21と、ボロンが添加されていないボロン無添加鋼板により形成されたバスケットプレート21とからなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済燃料を貯蔵もしくは輸送するための円筒状の金属キャスクの胴本体内に設けられ、複数の前記使用済燃料を収納する格子状の複数の区画部を形成する金属キャスク用バスケットであって、
一の方向に向けて互いに平行に揃えられた複数のバスケットプレートからなる第一バスケットプレート群と、
前記一の方向と直交する方向に向けて互いに平行に揃えられた複数のバスケットプレートからなる第二バスケットプレート群と、を備え、
前記第一バスケットプレート群と前記第二バスケットプレート群とを軸方向に交互に積層配置してなる積層体にて構成されており、
前記積層体は、ボロンが添加されたボロン添加鋼板により形成された前記バスケットプレートと、ボロンが添加されていないボロン無添加鋼板により形成された前記バスケットプレートとからなることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項2】
請求項1に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記複数のバスケットプレートのうち金属キャスクの軸心から径方向外側に最も離れた位置に配置される前記バスケットプレートは、前記ボロン無添加鋼板からなることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項3】
請求項1に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記ボロン添加鋼板は、前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群毎に、ボロン添加率が異なっていることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項4】
請求項1に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記使用済燃料は燃料が詰め込まれている燃料有効部と前記燃料有効部に該当しない非燃料有効部とを備えており、
前記燃料有効部に対応する位置に配置される、前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群の前記複数のバスケットプレートは、前記ボロン添加鋼板からなり、
前記非燃料有効部に対応する位置に配置される、前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群の前記複数のバスケットプレートは、前記ボロン無添加鋼板からなることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項5】
請求項4に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記燃料有効部と前記非燃料有効部との境界部に対応する位置に配置される、前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群の前記複数のバスケットプレートを備え、
当該複数のバスケットプレートは、前記燃料有効部に対応する位置に配置される前記複数のバスケットプレートに比べて、ボロン添加率が小さいボロン添加鋼板からなることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項6】
請求項1に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記使用済燃料は燃料が詰め込まれている燃料有効部と前記燃料有効部に該当しない非燃料有効部とを備えており、
前記燃料有効部と前記非燃料有効部との境界部に対応するように、前記第一バスケットプレート群と前記第二バスケットプレート群との積層境界が設定されていることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項7】
請求項6に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記燃料有効部に対応する位置に配置される、前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群の前記複数のバスケットプレートは、前記ボロン添加鋼板からなり、
前記非燃料有効部に対応する位置に配置される、前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群の前記複数のバスケットプレートは、前記ボロン無添加鋼板からなることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項8】
請求項7に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記燃料有効部に対応する位置に配置される前記ボロン添加鋼板からなる前記複数のバスケットプレートは、前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群毎に、ボロン添加率が異なっていることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項9】
請求項7に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記燃料有効部に対応する位置に配置される、前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群の前記複数のバスケットプレートのうち、前記境界部に隣接する前記複数のバスケットプレートは、それ以外の前記燃料有効部に対応する位置に配置される前記複数のバスケットプレートに比べて、ボロン添加率が小さいボロン添加鋼板からなることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項10】
請求項7に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記燃料有効部に対応する位置に配置される前記第一バスケットプレート群及び前記第二バスケットプレート群の前記複数のバスケットプレートのうち、金属キャスクの軸心から径方向外側に最も離れた位置に配置される前記バスケットプレートは、前記ボロン無添加鋼板からなることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【請求項11】
請求項1に記載の金属キャスク用バスケットにおいて、
前記ボロン添加鋼板にはボロンが添加されていることを表す刻印が付されていることを特徴とする金属キャスク用バスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子吸収材の使用率を低減できる金属キャスク用バスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所の敷地内もしくは敷地外にて使用済燃料を安定保管する方法として金属キャスクを用いた保管方法が知られている。金属キャスクは、使用済燃料の集合体を収納するためのバスケットを胴本体の内部に備えている。
バスケットは、格子状の複数の区画部を備えており、使用済燃料の集合体を1体毎に仕切りつつ収納するように構成されている。
従来、胴本体にバスケットを固定する構造として、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1の金属キャスクでは、胴本体の内面に複数の溝を形成し、各溝にバスケットを構成しているバスケットプレートの端部を差し込むことによりバスケットを胴本体に固定している。特許文献1のバスケットプレートは、中性子吸収材としてのボロンを含有する同一のボロン添加鋼板で形成している。
【0003】
一方、ボロン添加鋼板により形成したバスケットプレートと、ボロンが添加されていないボロン無添加鋼板により形成されたバスケットプレートとを組み合わせてバスケットを構成したものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-171135号公報
【特許文献2】特開2007-212385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ボロンは、資源として希少であり、かつボロン添加鋼板は特殊材料であるため、材料入手性が低く、価格も高い。特許文献2の金属キャスク用バスケットでは、ボロンが添加されていないボロン無添加鋼板を一部に使用しているが、バスケットを構成しているバスケットプレートが胴本体の軸方向の全体に延在する大型形状であるため、ボロン無添加鋼板の使用箇所が限定されるおそれがあり、その結果、材料費が高価になるおそれがあった。
【0006】
本発明は、前記した課題を解決し、材料費の低廉化を達成でき、金属キャスクの製品価格を低く抑えることができる金属キャスク用バスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の金属キャスク用バスケットは、使用済燃料を貯蔵もしくは輸送するための円筒状の金属キャスクの胴本体内に設けられ、複数の前記使用済燃料を収納する格子状の複数の区画部を形成する金属キャスク用バスケットであって、一の方向に向けて互いに平行に揃えられた複数のバスケットプレートからなる第一バスケットプレート群と、前記一の方向と直交する方向に向けて互いに平行に揃えられた複数のバスケットプレートからなる第二バスケットプレート群と、を備え、前記第一バスケットプレート群と前記第二バスケットプレート群とを軸方向に交互に積層配置してなる積層体にて構成されており、前記積層体は、ボロンが添加されたボロン添加鋼板により形成された前記バスケットプレートと、ボロンが添加されていないボロン無添加鋼板により形成された前記バスケットプレートとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る金属キャスク用バスケットによれば、材料費の低廉化を達成でき、金属キャスクの製品価格を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した模式横断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う模式縦断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットの構成の一部を示した分解斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う断面に相当する模式縦断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う断面に相当する模式縦断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う断面に相当する模式縦断面図である。
【
図7】本発明の第5実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う断面に相当する模式縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。各実施形態において同一の部分には同一の符号を付し重複する説明は省略する。各実施形態の説明において、「軸心方向」と記載した場合には円筒形状の金属キャスクの中心軸に平行な方向を表すものとし、「径方向」と記載した場合には前記の軸心方向に垂直な方向を表すものとする。なお、
図2,
図4~
図7において、紙面に直交する側のバスケットプレートの断面は、スリットに係合する部分の部分断面にて表している。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、金属キャスク10は、使用済燃料の集合体11(以下、「燃料集合体11」という。
図4参照)の貯蔵あるいは輸送に使用されるものである。金属キャスク10は、胴本体(内筒)12の内側に、燃料集合体11を装荷するための横断面格子状の区画部13が複数設けられた金属キャスク用バスケット20(以下、単に「バスケット20」と言うことがある)を備えている。
【0012】
胴本体12は、燃料集合体11から発生する放射線(γ線)を遮蔽する機能を有している。胴本体12は、例えば、炭素鋼製の有底円筒状の容器である。胴本体12の外周部には図示しない中性子遮蔽材が充填されている。胴本体12の内面には、
図3に示すように、胴本体12の軸心O1方向(
図2参照)に延在する複数の溝15(
図3参照)が形成されている。複数の溝15は、バスケット20を構成しているバスケットプレート21の差し込み溝として機能する。
なお、胴本体12の上部開口は、不図示の複数の蓋部材により塞がれる。
【0013】
次に、バスケット20について説明する。バスケット20は、臨界防止機能及び遮蔽機能を備えている。バスケット20は、
図2,
図3に示すように、板状のバスケットプレート21を複数直交させて格子状に組み付けることで、燃料集合体11を1体ごとに収納する複数の区画部13(
図1参照)を形成している。各区画部13は、横断面視で(胴本体12の軸心O1方向から見て)四角筒状の開口を備えており、燃料集合体11を収納可能な大きさを備えている。
【0014】
バスケット20は、
図3に示すように、第一バスケットプレート群21A及び第二バスケットプレート群21Bを備えており、これらが胴本体12の軸心O1方向に交互に積層配置してなる積層体(積層構造)にて構成されている。
図1~
図3に示すように、第一バスケットプレート群21Aは、一の方向(
図1の紙面上において縦方向)に向けて互いに平行に揃えられた複数のバスケットプレート21(本実施形態では10枚、符号21a~21jで図示)からなる。第二バスケットプレート群21Bは、一の方向と直交する方向(
図1の紙面上において横方向)に向けて互いに平行に揃えられた複数のバスケットプレート21(本実施形態では10枚、符号21k~21tで図示)からなる。なお、以下では、バスケットプレート21a~21j,21k~21tを、(1つ1つを))単にバスケットプレート21と言うことがある。
【0015】
第一バスケットプレート群21Aと第二バスケットプレート群21Bとは、
図2,
図3に示すように、軸心O1方向に対向するバスケットプレート21の交差部分に形成された切込み溝23同士を係合することで格子状に組立てられている。以下では、積層される第一バスケットプレート群21Aの各群を、
図2に示すように、胴本体12の軸心O1方向の下側(底面側)から軸心O1方向の上側(開口側)への積層配列順で奇数番のA1群~A9群と称し、積層される第二バスケットプレート群21Bの各群を、同じく底面側から開口側への積層配列順で偶数番のB2群~B8群と称する。
【0016】
第一バスケットプレート群21Aのうち軸心O1方向の最上部に配置されるA9群のバスケットプレート21a~21j(
図2では符号21fのものだけ図示、以下同様)は、A3群~A7群のバスケットプレート21a~21jに比べて約1/2の高さ寸法を有している。また、第一バスケットプレート群21Aのうち軸心O1方向の最下部に配置されるA1群のバスケットプレート21a~21jは、A3群~A7群のバスケットプレート21a~21jに比べて幾分小さい高さ寸法を有している。
【0017】
一方、第二バスケットプレート群21Bのうち、B4群~B8群のバスケットプレート21k~21t(
図2では符号21pのものだけ図示、以下同様)は、第一バスケットプレート群21AのA3群~A7群のバスケットプレート21a~21jと同様の高さ寸法を有している。また、第二バスケットプレート群21Bのうち、軸心O1方向の最下部に配置されるB2群のバスケットプレート21k~21tは、B4群~B8群のバスケットプレート21k~21tに比べて幾分大きい高さ寸法を有している。
なお、第一バスケットプレート群21A及び第二バスケットプレート群21Bにおいて、各バスケットプレート21a~21j,21k~21tの高さ寸法は、群毎に適宜変更して設定することができる。
【0018】
各バスケットプレート21は、矩形状を呈しており、長手方向に等間隔で係合のための複数の切込み溝23(
図2,
図3参照)を備えている。各切込み溝23の間隔は、収納する燃料集合体11の横断面の幅に対応している。また、各切込み溝23の深さは、軸心O1方向に各群のバスケットプレート21同士が隙間なく積み重ねられるように適宜の寸法、例えば、各バスケットプレート21の高さ寸法の約1/2~1/4の大きさに設定されている。
【0019】
本実施形態のバスケットプレート21は、ボロン(中性子吸収材として吸収能力の高いホウ素)を含有するステンレス鋼板からなるボロン添加鋼板により形成されるものと、ボロンを含有しないステンレス鋼板からなるボロン無添加鋼板により形成されるものとが、二種類備わる。つまり、バスケット20を構成している積層体は、ボロン添加鋼板からなるバスケットプレート21と、ボロン無添加鋼板からなるバスケットプレート21とからなる。ボロン添加鋼板におけるボロンの添加量は、数質量%程度であることが好ましい。
本実施形態では、
図1に示すように、ボロン無添加鋼板からなるバスケットプレート21を、各第一バスケットプレート群21A及び各第二バスケットプレート群21Bにおいて、胴本体12の軸心O1から径方向外側に最も離れた位置に配置されるバスケットプレート21a,21j,21k,21tに対して適用している。そして、これ以外のバスケットプレート21を、ボロン添加鋼板からなるバスケットプレート21としている。
すなわち、バスケット20の臨界防止機能及び遮蔽機能に影響を及ぼし難い位置に配置されるバスケットプレート21a,21j,21k,21tを、ボロン無添加鋼板から形成することで、材料費の低廉化を達成している。
なお、ボロン無添加鋼板は、ステンレス鋼板で形成することに限られることはなく、種々の材料にて形成することができる。
ここで、ボロン添加鋼板には、ボロンが添加されていることを表す刻印が付されている。なお、ボロン無添加鋼板には、刻印が付されておらず、ボロン添加鋼板に対して目視による区別が可能となっている。
【0020】
胴本体12にバスケット20を組み立てる場合には、胴本体12の溝15(
図3参照)に沿ってA1群のバスケットプレート21を胴本体12の内面に挿入する。その後、B2群、A3群、B4群~A9群の順に各バスケットプレート21を挿入しつつ各切込み溝23同士を係合させる。これにより、各群のそれぞれのバスケットプレート21が軸心O1方向に積み重ねられ、胴本体12内にバスケット20が組み立てられる。
【0021】
以上説明した本実施形態の金属キャスク用バスケット20によれば、ボロン無添加鋼板により形成されたバスケットプレート21a,21j,21k,21tを備えているので、全体をボロン添加鋼板からなるバスケットプレート21で構成した場合に比べて、材料費の低廉化を達成できる。これにより、金属キャスク10の製品価格を低く抑えることができる。
【0022】
また、ボロン無添加鋼板により形成されたバスケットプレート21a,21j,21k,21tは、胴本体12の軸心O1から径方向外側に最も離れた位置に配置されているので、バスケット20の臨界防止機能及び遮蔽機能を好適に維持できる。
【0023】
また、ボロン添加鋼板に刻印が付され、ボロン無添加鋼板には、刻印が付されていないので、バスケット20を組み立てる際にこれらを目視確認しながら適所にバスケットプレート21を組み付けることができる。したがって、誤組み付けを未然に防止でき、組み付け性に優れる。
【0024】
(第2実施形態)
図4を参照して第2実施形態の金属キャスク用バスケットについて説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う断面に相当する模式縦断面図である。本実施形態の金属キャスク用バスケット20が前記第1実施形態と異なるところは、燃料集合体11の構成に対応させてボロン無添加鋼板によるバスケットプレート21を配置した点にあり、その他の構成に変わりはない。
【0025】
図4に示すように、燃料集合体11は、燃料が詰め込まれた領域となる燃料有効部11aと、燃料有効部11aの上下部分に位置し、燃料有効部11aに該当しない非燃料有効部11b,11bとを備えている。図中符号BOを付した線は、燃料有効部11aと非燃料有効部11bとの境界部を示している。
【0026】
本実施形態では、ボロン無添加鋼板からなるバスケットプレート21を、上部側の非燃料有効部11bに対応して配置される、A7群,A9群のバスケットプレート21a~21j(
図1,2参照、
図4では符号21fのものだけ図示、以下同様)、及びB8群のバスケットプレート21k~21t(
図1,2参照、
図4では符号21pのものだけ図示、以下同様)に適用している。
図4ではA7群,A9群及びB8群が明確となるように、濃いドット模様を付している。
なお、その他のA1群~A5群、及びB2群~B6群に配置される各バスケットプレート21は、バスケットプレート21a,21j,21k,21t(ボロン無添加鋼板)を除いてボロン添加鋼板からなる。
【0027】
なお、B6群の各バスケットプレート21は、上部側の非燃料有効部11bと燃料有効部11aとの境界部BOを跨る状態に配置されるプレートであるため、臨界防止機能及び遮蔽機能を考慮してボロン添加鋼板としている。なお、このように境界部BOを跨る場合であっても、遮蔽機能が担保できる場合には、跨る部分の各バスケットプレート21をボロン無添加鋼板とすることも可能である。
【0028】
以上説明した本実施形態の金属キャスク用バスケット20によれば、燃料集合体11の上部側の非燃料有効部11bに対応して配置される各バスケットプレート21がボロン無添加鋼板からなるので、材料費の低廉化を達成できる。これにより、金属キャスク10の製品価格を低く抑えることができる。
【0029】
また、燃料集合体11の上部側の非燃料有効部11bにボロン無添加鋼板により形成されたバスケットプレート21が配置されているので、バスケット20の臨界防止機能及び遮蔽機能を好適に維持できる。
【0030】
(第3実施形態)
図5を参照して第3実施形態の金属キャスク用バスケットについて説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う断面に相当する模式縦断面図である。本実施形態の金属キャスク用バスケット20が前記第2実施形態と異なるところは、燃料集合体11の構成に併せて、ボロン添加率が異なるボロン添加鋼板により形成されたバスケットプレート21(以下、「添加率が異なるバスケットプレート21」という)を配置した点にあり、その他の構成に変わりはない。
図5では添加率が異なるバスケットプレート21が配置される群に薄いドット模様を付している。
【0031】
図5に示すように、添加率が異なるバスケットプレート21は、バスケット20の上部側において、燃料集合体11の燃料有効部11aと非燃料有効部11bとの境界部BOを跨る位置に配置されるB6群のバスケットプレート21k~21t(
図1,2参照、
図5では符号21pのものだけ図示、以下同様)に適用している。また、添加率が異なるバスケットプレート21は、バスケット20の下部側において、燃料有効部11aと非燃料有効部11bとの境界部BOを跨る位置に配置されるA1群のバスケットプレート21a~21j(
図1,2参照、
図5では符号21fのものだけ図示、以下同様)に適用している。つまり、添加率が異なるバスケットプレート21は、燃料集合体11の燃料有効部11aと非燃料有効部11bとの境界部BO及び境界部BOの近傍となる領域(中性子線量当量率が比較的小さい領域)にのみ配置されている。
【0032】
添加率が異なるバスケットプレート21は、燃料有効部11aにおけるそれ以外のボロン添加鋼板からなるバスケットプレート21よりもボロンの添加率を小さく(ボロンの添加量を少なく)設定している。添加率が異なるバスケットプレート21には、ボロン添加鋼板に付された刻印と異なる刻印が付されており、組み付け時の目視による区別が可能となっている。
【0033】
以上説明した本実施形態の金属キャスク用バスケット20によれば、燃料集合体11の上部側の非燃料有効部11bに対応して配置される各バスケットプレート21が、ボロン無添加鋼板からなり、加えて、上部側及び下部側の境界部BOを跨る位置に配置されるB6群,A1群の各バスケットプレート21が、添加率が異なる(小さい)ボロン添加鋼板からなる。したがって、上部側及び下部側の境界部BO近傍における、中性子線量当量率が比較的小さい領域において遮蔽機能を好適に図りつつ、臨界防止機能を維持しながら、材料費の低廉化を達成できる。これにより、金属キャスク10の製品価格をより低く抑えることができる。
【0034】
(第4実施形態)
図6を参照して第4実施形態の金属キャスク用バスケットについて説明する。
図6は、本発明の第4実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う断面に相当する模式縦断面図である。本実施形態の金属キャスク用バスケット20が前記第1~第3実施形態と異なるところは、燃料集合体11の境界部BOに対応するように、第一バスケットプレート群21Aと第二バスケットプレート群21Bとの積層境界を設定した点にあり、その他の構成に変わりはない。
図6ではボロン無添加鋼板からなるバスケットプレート21が配置される群に濃いドット模様を付している。
【0035】
図6に示すように、第一バスケットプレート群21Aは、燃料集合体11の燃料有効部11aに対応するA3a群,A3群~A7a群のバスケットプレート21a~21j(
図1,2参照、
図6では符号21fのものだけ図示、以下同様)を備えている。また、第一バスケットプレート群21Aは、燃料集合体11の下部側の非燃料有効部11bに対応するA1a群のバスケットプレート21a~21j(
図1,2参照、
図6では符号21fのものだけ図示、以下同様)を備えている。さらに、第一バスケットプレート群21Aは、燃料集合体11の上部側の非燃料有効部11bに対応するA9a群,A11a群のバスケットプレート21a~21j(
図1,2参照、
図6では符号21fのものだけ図示、以下同様)を備えている。
【0036】
一方、第二バスケットプレート群21Bは、燃料集合体11の燃料有効部11aに対応するB4b群~B6群のバスケットプレート21k~21t(
図1,2参照)、
図6では符号21pのものだけ図示、以下同様)を備えている。また、第二バスケットプレート群21Bは、燃料集合体11の下部側の非燃料有効部11bに対応するB2b群のバスケットプレート21k~21t(
図1,2参照、
図6では符号21pのものだけ図示、以下同様)を備えている。さらに、第二バスケットプレート群21Bは、燃料集合体11の上部側の非燃料有効部11bに対応するB8b群のバスケットプレート21k~21t(
図1,2参照)、
図6では符号21pのものだけ図示、以下同様)を備えている。
【0037】
燃料集合体11の燃料有効部11aに対応するA3a群及びA7a群のバスケットプレート21a~21jは、A3群~A5群のバスケットプレート21a~21jに比べて約1/2の高さ寸法を有している。なお、燃料有効部11aに対応するB4b群~B6群のバスケットプレート21k~21tは、A3群~A5群のバスケットプレート21と同様のものを用いている。
【0038】
これに対して、燃料集合体11の非燃料有効部11bに対応するA1a群,A9a群,A11a群,B2b群及びB8b群のバスケットプレート21は、非燃料有効部11bの領域に対応する高さ寸法となるように設定されている。このように構成することにより、第一バスケットプレート群21Aと第二バスケットプレート群21Bとの積層境界と境界部BOとを合致させている。
【0039】
本実施形態では、ボロン無添加鋼板からなるバスケットプレート21を、上部側の非燃料有効部11bに対応して配置される、A9a群,A11a群に配置されるバスケットプレート21a~21j、及びB8b群に配置されるバスケットプレート21k~21tに適用している。また、ボロン無添加鋼板からなるバスケットプレート21を、下部側の非燃料有効部11bに対応して配置される、A1a群に配置されるバスケットプレート21a~21j、及びB2b群に配置されるバスケットプレート21k~21tに適用している。
図6ではこれらのA9a群,A11a群,B8b群,A1a群及びB2b群が明確となるように濃いドット模様を付している。なお、その他のA3a群~A7a群、及びB4b群~B6群に配置される各バスケットプレート21は、バスケットプレート21a,21j,21k,21t(ボロン無添加鋼板)を除いてボロン添加鋼板からなる。
【0040】
以上説明した本実施形態の金属キャスク用バスケット20によれば、第一バスケットプレート群21Aと第二バスケットプレート群21Bとの積層境界と境界部BOとを合致させているので、ボロン無添加鋼板及びボロン添加鋼板からなるバスケットプレート21を効率よく配置することができる。これにより、材料費の低廉化を達成でき、金属キャスク10の製品価格を低く抑えることができる。
【0041】
また、燃料集合体11の上部側及び下部側の非燃料有効部11bにボロン無添加鋼板からなるバスケットプレート21が配置されているので、バスケット20の臨界防止機能及び遮蔽機能を好適に維持できる。
【0042】
(第5実施形態)
図7を参照して第5実施形態の金属キャスク用バスケットについて説明する。
図7は、本発明の第5実施形態に係る金属キャスク用バスケットが適用される胴本体及びバスケットを示した図であり、
図1のII-II線に沿う断面に相当する模式縦断面図である。本実施形態の金属キャスク用バスケット20が前記第4実施形態と異なるところは、添加率が異なるバスケットプレート21を配置した点にあり、その他の構成に変わりはない。
図7では添加率が異なるバスケットプレート21が配置される群に薄いドット模様を付している。
【0043】
図7に示すように、添加率が異なるバスケットプレート21は、燃料集合体11の境界部BOに隣接する燃料有効部11aに配置されるA3a群,A7a群のバスケットプレート21a~21j(
図1,2参照、
図7では符号21fのものだけ図示、以下同様)に適用している。つまり、添加率が異なるバスケットプレート21は、燃料集合体11の境界部BOの近傍となる領域(中性子線量当量率が比較的小さい領域)に配置されている。
【0044】
添加率が異なるバスケットプレート21は、燃料有効部11aにおけるそれ以外のボロン添加鋼板からなるバスケットプレート21よりもボロンの添加率を小さく(ボロンの添加量を少なく)設定している。添加率が異なるバスケットプレート21には、ボロン添加鋼板に付された刻印と異なる刻印が付されており、組み付け時の目視による区別が可能となっている。
【0045】
以上説明した本実施形態の金属キャスク用バスケット20によれば、燃料集合体11の非燃料有効部11bに対応して配置される各バスケットプレート21が、ボロン無添加鋼板からなり、加えて、境界部BOに隣接するA3a群,A7a群の各バスケットプレート21が、添加率が異なる(小さい)ボロン添加鋼板からなる。したがって、境界部BOの近傍における、中性子線量当量率が比較的小さい領域において遮蔽機能を好適に図りつつ、臨界防止機能を維持しながら、材料費の低廉化を達成できる。これにより、金属キャスク10の製品価格をより低く抑えることができる。
なお、遮蔽機能が担保できる場合には、境界部BOに隣接するB4b群やB6群のバスケットプレート21を添加率が異なるボロン添加鋼板に設定することも可能である。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記第1,第2,第4実施形態では、ボロン添加鋼板からなるバスケットプレート21を1種類用いたものを示したが、これに限られることはなく、群毎に異なる添加率のバスケットプレート21を1種類または複数種類用いてもよい。また、前記第3,第5実施形態では、添加率が異なるバスケットプレート21を配置した群を設けたが、これに加えて、群毎に添加率の異なるバスケットプレート21を1種類または複数種類用いてもよい。これらの場合、収納する燃料集合体11の中性子線量当量率に対応させて添加率の異なるバスケットプレート21を配置することが好ましい。
このように構成することによって、遮蔽機能を好適に図りつつ、臨界防止機能を維持しながら、材料費の低廉化をより好適に達成することができる。
【0047】
また、前記第2~第5実施形態において、バスケットプレート21a,21j,21k,21tは、ボロン無添加鋼板からなるものを用いたが、これに限られることはなく、ボロン添加鋼板や添加率の異なるバスケットプレート21を用いてもよい。
【0048】
また、各実施形態において、各群のバスケットプレート21の設置枚数や高さ寸法等は、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 金属キャスク
11 燃料集合体(使用済燃料の集合体)
11a 燃料有効部
11b 非燃料有効部
12 胴本体
13 区画部
20 金属キャスク用バスケット(バスケット、積層体)
21 バスケットプレート
21A 第一バスケットプレート群
21B 第二バスケットプレート群
BO 境界部
O1 軸心