(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141050
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ウェハ搬送手段
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/78 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052488
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 賢
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA43
5F063AA48
5F063FF42
5F131AA02
5F131BA51
5F131CA37
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB72
5F131DB86
5F131KA22
5F131KB43
(57)【要約】
【課題】 比較的簡単な構成でウェハリングを搬送するウェハ搬送手段を提供すること。
【解決手段】 ダイシングテープに貼り付けた状態のウェハを保持するウェハリングを搬送するウェハ搬送手段であって、前記ウェハリングの一部を吸着する吸着手段と、搬送中の前記ウェハリングの姿勢を保持するための回転規制手段を備えたウェハ搬送手段を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープに貼り付けた状態のウェハを保持するウェハリングを搬送するウェハ搬送手段であって、
前記ウェハリングの一部を吸着する吸着手段と、
搬送中の前記ウェハリングの姿勢を保持するための回転規制手段を備えたウェハ搬送手段。
【請求項2】
請求項1に記載のウェハ搬送手段であって、
前記吸着手段が柔軟性を有する吸着パッドを有するウェハ搬送手段。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のウェハ搬送手段であって、
前記回転規制手段が、前記ウェハリングに設けられたノッチと直線辺の少なくとも何れかで前記ウェハリングと接触して、前記ウェハリングの回転を規制するウェハ搬送手段。
【請求項4】
請求項3に記載のウェハ搬送手段であって、
前記回転規制手段が位置決めピンであるウェハ搬送手段。
【請求項5】
請求項4に記載のウェハ搬送手段であって、
前記位置決めピンがテーパ形状を有しているウェハ搬送手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープに貼り付けられたウェハ(ダイシングされたウェハを含む)を保持するウェハリングを搬送する際に用いるウェハ搬送手段に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体からなるICチップやLEDチップ等のチップ部品はウェハ上に多数形成されたものをダイシングして得られる。ダイシングに際して、ウェハは樹脂製のダイシングテープに貼られた状態で扱われる。そこで、ダイシングテープに貼り付けられた状態のウェハを保持するためのウェハリングが用いられている。
【0003】
また、ダイシングされた後のウェハが貼り付いたダイシングテープもウェハリングに保持された状態でハンドリングされる。例えば、ダイシングされたウェハからチップ部品を一つずつピックアップするのに際して、
図8に示すように、ダイシングされたウェハが貼り付いたダイシングテープを保持するウェハリング2は、(図示していない)ウェハマガジンから引き出され、ウェハステージ6まで搬送され、ウェハステージ6によりピックアップ部7まで移動する。
【0004】
なお、一般的なウェハリング2の形状は
図8に示すような単純なリング形状ではなく、
図9に示すように、位置決め溝であるノッチ20(ノッチ20A、ノッチ20B)および直線辺21(直線辺21F、直線辺21R、直線辺21S)を有している(例えば特許文献1)。
【0005】
また、ウェハリング2を搬送するのに際して、
図8に示すグリッパ100で把持して、搬送アーム4が搬送ガイド5に沿って移動することで、ウェハ搬送レール3を経由してX方向に移動させている。
【0006】
ここで、グリッパ100は、
図10に示すように下爪100Aと上爪100Bによりウェハリング2の端部を把持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10に示すようなグリッパ100でウェハリング2を把持する場合、下爪100Aと上爪100Bの間隔が開いた状態にしてグリッパ昇降シリンダ102で高さを調整して(
図10(a))、グリッパ100とウェハリング2の相対距離を縮めて(
図10(b))から、ウェハリング2の端部を把持している(
図10(c))。このような動作に際して、グリッパ100がウェハリング2を確実に保持していることを確認するため、近接センサ等のセンサが必要である。また、ウェハリング2を搬送する際の(引っかかり等によって生じる)過負荷を検出するためのセンサも設けておく必要もあり、比較的狭いスペースに複数のセンサが必要となりコスト面も含めて好ましくない。
【0009】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な構成でウェハリングを搬送するウェハ搬送手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
ダイシングテープに貼り付けた状態のウェハを保持するウェハリングを搬送するウェハ搬送手段であって、
前記ウェハリングの一部を吸着する吸着手段と、搬送中の前記ウェハリングの姿勢を保持するための回転規制手段を備えたウェハ搬送手段である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のウェハ搬送手段であって、
前記吸着手段が柔軟性を有する吸着パッドを有するウェハ搬送手段である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のウェハ搬送手段であって、
前記回転規制手段が、前記ウェハリングに設けられたノッチと直線辺の少なくとも何れかで前記ウェハリングと接触して、前記ウェハリングの回転を規制するウェハ搬送手段である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のウェハ搬送手段であって、
前記回転規制手段が位置決めピンであるウェハ搬送手段である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のウェハ搬送手段であって、
前記位置決めピンがテーパ形状を有しているウェハ搬送手段である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウェハ搬送手段により、比較的簡単な構成で、ウェハリングを保持して搬送することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るウェハ搬送手段について説明するもので、(a)上側から見た図であり、(b)横から見た図であり、(c)下側から見た図である。
【
図2】本発明の実施形態の変形例に係るウェハ搬送手段について説明するもので、(a)上側から見た図である、(b)横から見た図であり、(c)下側から見た図である。
【
図3】本願発明の実施形態に係るウェハ搬送手段のパッドについて説明するもので、(a)搬送アームに設けられた長穴タイプを示し、(b)搬送アームに設けられた複数タイプを示し、(c)ハンドに設けられた長穴タイプを示し、(d)ハンドが搬送アームと一体化した形態を示す図である。
【
図4】本願発明の実施形態に係るウェハ搬送手段の動作について説明するもので、ハンドの位置決めピンがウェハリングのノッチに入った状態を、(a)上側から見た図、(b)横から見た図である。
【
図5】本願発明の実施形態に係るウェハ搬送手段の動作について説明するもので、パッドによる吸着によりウェハリングがウェハ搬送手段に保持された状態を(a)上側から見た図、(b)横から見た図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例に係るウェハ搬送手段について説明するもので、(a)、ハンドの位置決めピンがウェハリングの直線辺に接触した状態を横から見た図であり、(b)パッドによる吸着によりウェハリングがウェハ搬送手段に保持された状態を横から見た図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るウェハ搬送手段の位置決めピンに関する変形例の効果について説明するもので、(a)ウェハリングを押す動作の際に過大な力が加わった状態を示し、(b)押す動作が継続したときに位置決めピンが外れた状態を示す図である。
【
図8】ウェハを搬送する装置の従来例を示すもので、グリッパで保持したウェハリングをピックアップユニットに搬送する形態の図である。
【
図10】ウェハリングをグリッパで保持する例を示すもので、(a)グリッパの高さを調整した状態、(b)グリッパがウェハリング外側を保持できる状態、(c)グリッパがウェハリングを保持した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態におけるウェハ搬送手段に関し、
図1(a)が上側から見た図であり、
図1(b)が横から見た図であり、
図1(c)が下側から見た図である。
【0018】
図1において、ウェハ搬送手段1はウェハリング2を保持して横方向(X方向)に搬送するものである。
【0019】
ウェハリング2は、ウェハが貼られたダイシングテープの外周を固定して保持するもので、
図9に示したように、位置決め溝であるノッチ20と直線辺21が設けられている。
図1において、直線辺21を四方(引っ張り移動時の進行方向にある直線辺21F、それと対向する直線辺21R、および横方向2箇所の直線辺21S)、ノッチ20を2箇所(ノッチ20A、ノッチ20B)に設けているが、この形状に限定されるものではない。
【0020】
図1の実施形態において、ウェハ搬送手段1は、搬送アーム11にハンド10と吸着パッド13が設けられており、ハンド10には回転規制手段である位置決めピン12(位置決めピン12A、位置決めピン12B)が設けられている。
【0021】
吸着パッド13は柔軟部材からなるパッド外周131がパッド穴130を囲うもので、パッド穴130を減圧流路に連通することで、吸着手段として機能する。
【0022】
図1に示す実施形態において、位置決めピン12Aと位置決めピン12Bの位置関係は、ノッチ20Aとノッチ20Bの位置関係に対応しており(
図1(c))、位置決めピン12Aがノッチ20Aに嵌った状態でウェハリング2と接触し、位置決めピン12Bがノッチ20Bに嵌った状態でウェハリング2と接触すると、ウェハリング20が(Z方向を軸として)回転することを規制することができる。すなわち、位置決めピン12Aがノッチ20Aに嵌り、位置決めピン12Bがノッチ20Bに嵌った状態で、吸着パッド13によりウェハリング20を部分的に吸着することで、ウェハ保持手段1はウェハリング20の(XY面内における)向きを固定して姿勢を保持することができる。
【0023】
図1において位置決めピン12は、ノッチ20に嵌って接触することで回転を規制しているが、ノッチ20の代わりに複数の位置決めピン12を直線辺21に接触させて回転を規制してもよく、実施形態の変形例として
図2に示す。
図1と同様、
図2(a)が上側から見た図であり、
図2(b)が横から見た図であり、
図2(c)が下側から見た図である。このように直線辺21を用いて回転規制を行う場合、回転規制手段は位置決めピンに限定する必要はなく、板状物の一辺をウェハリング20の直線辺に接触させてもよい。 また、複数の位置決めピンを用いる場合、1つの位置決めピン12をノッチ20にはめ、別の位置決めピンを直線辺21に接触させて回転を規制してもよい。
【0024】
位置決めピン12(または板状物)を用いることでウェハリング20の回転を規制して向きを固定できることから、吸着パッド13はウェハリング20を部分的に吸着すればよい。ただし、吸着力が大きいほどX方向にも大きな力が加えやすいことから、吸着面積を増やすことが望ましい。このため、吸着パッド13の形状としてはパッド穴130を長くした
図3(a)のようにするのが良いが、
図3(b)のように複数の吸着パッド13を配置する方式としてもよい。
【0025】
ところで、ここまでの説明に用いた実施形態では、搬送アーム11の上にハンド10を乗せた方式となっているが、
図3(c)に示したように搬送アーム11の下にハンド10を配置した方式でもよく、
図3(d)のようにハンドと搬送アーム11を一体化した方式でもよい。ただし、形状の異なる複数種類のウェハリング2を搬送する装置に用いる場合、ウェハリング2の形状に応じて位置決めピン12等の回転規制手段の配置を変更する必要があるため、搬送アーム11の上にハンド10を乗せる方式であれば複数種類のハンド10を準備して交換する方式が容易で好ましい。
【0026】
次に、
図1に示したウェハ搬送手段1を用いて、
図1(a)および
図1(b)に示した状態からウェハリング20を保持する動作を
図4および
図5を用いて説明する。ここで、
図4(a)および
図5(a)は、
図1(a)と同様に上側から見た図である。また、
図4(b)および
図5(b)は、
図1(b)と同様に横から見た図である。
【0027】
まず、
図1の状態では、ウェハ搬送手段1の高さは、位置決めピン12の先端がウェハリング2の上面より低い位置になるよう調整されている。この後、
図4の状態にかけて、ウェハ搬送手段1はウェハリング2の方向(-X方向)に移動し、位置決めピン12(位置決めピン12Aおよび位置決めピン12B)はノッチ20(ノッチ20Aおよびノッチ20B)に嵌り、位置決めピン12はウェハリング20と接触する。この状態において、ウェハリング20が左方向に移動可能であれば、ウェハ搬送手段1がウェハリング2を左方向(-X方向に)に数mm程度押してもよい。
【0028】
図4のように、位置決めピン12がウェハリング2と接触することにより、ウェハリング2の(XY面内における)向きが固定され、この状態でパッド穴130に連通する流路を減圧すれば、
図5(b)に示すようにウェハリング2に吸着パッド13が密着する。このため、搬送アーム11を右方向(X方向)に移動させることでウェハリング2を同方向に搬送することができる。
【0029】
なお、
図4の状態において、パッド穴130内に連通する流路の減圧で(
図5のように)ウェハリング2に吸着パッド13を確実に密着させるために、ウェハリング2の上面と吸着パッド13の距離が一定の範囲内にしておくことが望ましい。このため、
図4の段階(または
図2から
図4の間の段階)でウェハリング2の上面と吸着パッド13の距離を接近させるため、ウェハ搬送手段1は高さ調整手段を備えていてもよい。高さ調整手段としてはシリンダ機構が望ましいが、ウェハ搬送手段1の高さを調整して固定できるものであるならば他の機構でもよい。なお、吸着パッド外周131は柔軟性を有する素材でできているので、吸着パッド13がウェハリング2に密着した後も、わずかではあるが、ウェハ搬送手段2の位置が更に下がる余地はある。
【0030】
このような本発明の実施形態において、ウェハリング2を吸着した状態では、パッド穴130に連通する流路内の圧力は低下するので、減圧流路内に真空計を配置して圧力をモニタリングすることでウェハリング2を吸着しているか否かの判定が行える。すなわち、減圧流路内が所定の圧力以下になったら(真空度が上がったら)ウェハリング2を吸着していると判定する。
【0031】
また、ウェハリング2が搬送系路で何かに引っかかる等の干渉で、搬送時に過負荷が生じる場合において、吸着パッド13とウェハリング2の密着面に加わる横方向の力により、吸着パッド13とウェハリング2の間に隙間ができてリークが生じるため、減圧流路内の圧力を真空計でモニタリングすることで過負荷を検出することも可能である。すなわち、ウェハリング2を保持している状態で、減圧流路内の圧力が急激に上昇(真空度が急激に悪化)したら、過負荷を含むトラブルが発生していると判定できる。
【0032】
なお、
図6は、
図2に示した実施形態の変形例で、ウェハ搬送手段1がウェハリング2を保持する動作を示したものである。
図1に示した実施形態のウェハ搬送手段1との対比で、
図6(a)は
図4(b)の状態に対応し、
図6(b)は
図5(b)の状態に対応している。
【0033】
ところで、本発明のウェハ搬送手段1において、ウェハリング2の搬送方向は右方向(X方向)に限定されるものではなく、左方向(-X方向)への搬送を行ってもよい。例えば、
図8に示したウェハステージ6にウェハリング2を搬送する例において、チップ部品のピックアップが完了した後のウェハリング2を左側にある(図示していない)ウェハマガジンに戻す動作である。
【0034】
これまで図示したウェハ搬送手段1がウェハリング2を左側(-X方向)に搬送する際、位置決めピン12がウェハリング2を(-X方向に)押す状態で密接しているため、搬送方向に過負荷が生じたとしても、ウェハ搬送手段1とウェハリング2の相対位置に変化は生じ難い。このため、吸着パッド13に横方向に力が加わり難く、過負荷を検出するのは難しい。
そこで、ウェハ搬送手段1がウェハリング2を押す方向でも過負荷検出できるよう検討した結果、位置決めピンを先端部が細くなるようなテーパ形状とすることが望ましいことが判った。すなわち、
図7に示す位置決めピン120を用いた。
【0035】
図7のような位置決めピン120とすることで、ウェハリング2を左方向に移動させる際に過負荷となる場合、
図7(a)の状態からウェハ搬送手段1がウェハリング2を左側(-X方向)に押していくと位置決めピン120に上方向(Z方向)の力が加わる。その結果、吸着パッド13にも上方向の力が加わって、ウェハリング2との間に隙間が出来て
リークが生じるため、パッド穴130に連通する減圧流路内の圧力をモニタリングすることで過負荷検出は可能になる。
【0036】
以上のように、本発明のウェハ搬送手段は比較的簡単な構成で、ウェハリングを保持することが可能であるとともに、ウェハリング保持の有無と搬送時の過負荷を比較的容易に検出することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ウェハ搬送手段
2 ウェハリング
3 ウェハ搬送レール
10 ハンド
11 搬送アーム
12、12A、12B 位置決めピン
13 吸着パッド
20、20A、20B ノッチ(位置決め溝)
21、21F、21R、21S 直線辺
120 位置決めピン
130 パッド穴
131 パッド外周