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特開2024-141055粒子ビーム支援加工装置用ノズル及び粒子ビーム支援加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141055
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】粒子ビーム支援加工装置用ノズル及び粒子ビーム支援加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01J37/317 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052494
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 壮太郎
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA32
5C101AA39
5C101CC14
5C101CC17
5C101DD02
5C101DD33
5C101FF19
5C101FF50
5C101GG04
(57)【要約】
【課題】試料を均一に加工することができる粒子ビーム支援加工装置用ノズル及び粒子ビーム支援加工装置を提供する。
【解決手段】粒子ビーム支援加工装置用ノズルは、流路が形成された管状部と、開口と、前記流路に接続され前記開口の外縁に沿って形成された連続流路と、前記連続流路から特定の方向へ延びる複数の噴き出し孔と、が形成された先端と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が形成された管状部と、
開口と、前記流路に接続され前記開口の外縁に沿って形成された連続流路と、前記連続流路から特定の方向へ延びる複数の噴き出し孔と、が形成され、前記管状部に接続された先端と、
を備える粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項2】
前記先端及び前記連続流路は、環状の形状を有する
請求項1に記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項3】
前記先端及び前記連続流路は、円環状の形状を有する
請求項1に記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項4】
前記連続流路は、前記流路に接続される接続箇所を有し、
前記複数の噴き出し孔は、前記接続箇所を含み前記開口と垂直をなす面について対称である複数の位置にそれぞれ形成される
請求項1に記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項5】
前記複数の噴き出し孔は、前記開口の中心について点対称である複数の位置にそれぞれ形成される
請求項1に記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項6】
前記連続流路は、前記流路に接続される接続箇所を有し、
前記複数の噴き出し孔に含まれる噴き出し孔の径は、前記接続箇所から前記連続流路に沿って前記噴き出し孔に至る経路の長さが長くなるほど大きくなる
請求項1に記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項7】
前記複数の噴き出し孔に接続される複数の孔がそれぞれ形成され前記先端に取り付けられる複数の筒状構造
を備える請求項1に記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項8】
前記複数の孔の径は、それぞれ、前記複数の噴き出し孔から離れるにつれて大きくなる
請求項6に記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項9】
前記先端は、円弧状の形状を有し第1の先端を有する第1の円弧状部と、円弧状の形状を有し第2の先端を有する第2の円弧状部と、を備え、
前記連続流路は、前記第1の円弧状部に形成される第1の連続流路と、前記第2の円弧状部に形成される第2の連続流路と、を含み、
前記複数の噴き出し孔は、前記前記第1の円弧状部に形成される第1の噴き出し孔と、前記第2の円弧状部に形成される第2の噴き出し孔と、を含み、
前記第1の先端と前記第2の先端との間にギャップが形成される
請求項1に記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズル。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれかに記載の粒子ビーム支援加工装置用ノズルと、
前記開口を経由して試料に粒子ビームを照射する鏡筒と、
前記流路にガスを供給するガス源と、
を備える粒子ビーム支援加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粒子ビーム支援加工装置用ノズル及び粒子ビーム支援加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、集束イオンビーム用ガス導入装置を開示する。当該集束イオンビーム用ガス導入装置においては、複数のパイプの先端のノズルから導入ガスが噴出されて、金属薄膜又は絶縁膜が試料に堆積させられる。各ノズルからの導入ガスの噴射条件は、個別に制御される(発明の名称並びに段落0013及び0014)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-98232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された集束イオンビーム用ガス導入装置において各ノズルからの導入ガスの噴射条件が個別に制御された場合は、複数のノズルからの導入ガスの噴射条件の僅かな差により、導入ガスの噴射の等方性が失われ、均一な金属薄膜又は絶縁膜を堆積することが困難になる可能性がある。
【0005】
本開示の一態様は、この問題に鑑みてなされた。本開示の一態様は、例えば、試料を均一に加工することができる粒子ビーム支援加工装置用ノズル及び粒子ビーム支援加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様の粒子ビーム支援加工装置用ノズルは、流路が形成された管状部と、開口と、前記流路に接続され前記開口の外縁に沿って形成された連続流路と、前記連続流路から特定の方向へ延びる複数の噴き出し孔と、が形成され、前記管状部に接続された先端と、を備える。
【0007】
本開示の第2の態様の粒子ビーム支援加工装置は、本開示の第1の態様の粒子ビーム支援加工装置用ノズルと、前記開口を経由して試料に粒子ビームを照射する鏡筒と、前記流路にガスを供給するガス源と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の集束イオンビーム(FIB)支援堆積装置を模式的に図示する図である。
図2】第1実施形態のFIB支援堆積装置により形成された堆積膜、及び試料を模式的に図示する断面図である。
図3】第1実施形態のFIB支援堆積装置に備えられる鏡筒及びノズルを模式的に図示する斜視図である。
図4】第1実施形態のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する斜視図である。
図5】第1実施形態のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。
図6】第1実施形態の第1変形例のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。
図7】第1実施形態の第2変形例のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。
図8】第1実施形態の第3変形例のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。
図9】第1実施形態の第4変形例のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。
図10】参考例のFIB支援堆積装置を模式的に図示する図である。
図11】参考例のFIB支援堆積装置により形成された堆積膜、及び試料を模式的に図示する断面図である。
図12】第2実施形態のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する斜視図である。
図13】第2実施形態のFIB支援堆積装置に備えられる筒状構造を模式的に図示する断面図である。
図14】第2実施形態の第1変形例のFIB支援堆積装置に備えられる筒状構造を模式的に図示する断面図である。
図15】第3実施形態のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
1 第1実施形態
1.1 集束イオンビーム支援堆積装置
図1は、第1実施形態の集束イオンビーム(FIB)支援堆積装置を模式的に図示する図である。図2は、第1実施形態のFIB支援堆積装置により形成された堆積膜、及び試料を模式的に図示する断面図である。
【0011】
図1に図示されるFIB支援堆積装置1は、FIB11を用いてFIB支援堆積を行う。このため、FIB支援堆積装置1は、試料12にFIB11を照射し、試料12に向かって堆積ガス13を噴き出し、試料12の表面12aの付近で、照射したFIB11を噴き出した堆積ガス13に作用させる。これにより、図2に図示されるように、FIB支援堆積装置1は、試料12の表面12aに堆積膜14を形成する。FIB支援堆積装置1は、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合であっても、堆積膜14を均一に形成することができる。
【0012】
図1に図示されるように、FIB支援堆積装置1は、鏡筒21、ガス源22、ノズル23、ステージ24及び真空チャンバー25を備える。
【0013】
鏡筒21は、ノズル23を経由して試料12にFIB11を照射する。
【0014】
ガス源22は、ガス源22の供給口からノズル23に堆積ガス13を供給する。供給される堆積ガス13は、有機ガス等である。有機ガスは、金属、カーボン等を含む。金属は、白金、タングステン等である。ガス源22は、堆積ガス13をノズル23まで導くパイプ、パイプに挿入され堆積ガス13を通過させる状態と堆積ガス13を通過させない状態との切り替えを行うバルブ等を備える。
【0015】
ノズル23は、供給された堆積ガス13を試料12に向かって噴き出す。ノズル23は、試料12に照射されるFIB11を通過させ、通過させるFIB11の周りの複数の位置から堆積ガス13を噴き出す。これにより、ノズル23は、試料12に向かって堆積ガス13を等方的に噴き出し、試料12の表面12aに堆積ガス13を均一に行き渡らせる。また、ノズル23は、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合であっても、大きな凸部の影にまで堆積ガス13を回り込ませる。これにより、FIB支援堆積装置1は、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合であっても、試料12の表面12aに均一な厚さを有する堆積膜14を形成することができる。
【0016】
ステージ24には、試料12が載せられる。このため、ステージ24は、鉛直方向下方向Zから試料12を支持する。
【0017】
真空チャンバー25には、内部空間25aが形成される。真空チャンバー25は、内部空間25aを真空に維持することができる気密性を有する。内部空間25aには、鏡筒21、ガス源22、ノズル23、ステージ24及び真空チャンバー25が収容される。
【0018】
FIB支援堆積装置1が試料12の表面12aに堆積膜14を形成する場合は、鏡筒21が、ノズル23を経由して試料12にFIB11を照射する。それと並行して、ガス源22が、ノズル23に堆積ガス13を供給し、ノズル23が、供給された堆積ガス13を試料12に向かって噴き出す。照射されたFIB11は、噴き出された堆積ガス13に作用して堆積ガス13を分解する。これにより、堆積ガス13に含まれる成分が試料12の表面12aに堆積し、当該成分を含む堆積膜14がFIB11の照射部に局所的に形成される。例えば、金属元素を含む堆積膜14がFIB11の付近に局所的に形成される。形成される堆積膜14の特性は、噴き出される堆積ガス13により決まる。このため、堆積ガス13の選択により、堆積膜14を導電膜、絶縁膜等にすることができる。
【0019】
1.2 鏡筒
図3は、第1実施形態のFIB支援堆積装置に備えられる鏡筒及びノズルを模式的に図示する斜視図である。
【0020】
図3に図示されるように、鏡筒21は、イオン源31、コンデンサーレンズ32、絞り33、偏光器34及び対物レンズ35を備える。
【0021】
イオン源31は、イオンを供給して鉛直方向下方向Zに進むイオンビーム41を発生させる。供給されるイオンは、ガリウムイオン等である。
【0022】
コンデンサーレンズ32は、発生させられたイオンビーム41を集束させる。
【0023】
絞り33は、集束させられたイオンビーム41の径を絞る。
【0024】
偏光器34は、径が絞られたイオンビーム41のビーム路を鉛直方向下方向Zと垂直をなす水平方向X及び水平方向Yに移動させる。これにより、FIB11で試料12の表面12aを走査することができる。
【0025】
対物レンズ35は、径が絞られたイオンビーム41に試料12の表面12aで焦点を結ばせる。
【0026】
これらにより、鏡筒21は、鉛直方向下方向Zに進み試料12の表面12aに照射されるFIB11を生成する。
【0027】
1.3 ノズル
図4は、第1実施形態のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する斜視図である。図5は、第1実施形態のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。
【0028】
図1及び図3から図5までに図示されるように、ノズル23は、管状部51及び先端52を備える。
【0029】
管状部51は、直管である。このため、管状部51には、直線的に伸びる流路51aが形成される。管状部51が、湾曲管であってもよい。
【0030】
管状部51の一端は、ガス源22に接続され、流路51aの一端は、ガス源22の供給口に接続される。これにより、管状部51は、ガス源22により供給された堆積ガス13を流路51aの一端から流路51aの他端まで導く。
【0031】
先端52は、環状管である。このため、先端52には、FIB11を通過させる開口52bが形成される。また、先端52には、環状の形状を有する連続流路52aが形成される。連続流路52aは、開口52bの外縁に沿って形成される。開口52bの径すなわち先端52の内径は、先端52がFIB11と干渉しないように大きくされる。先端52は、例えば、500μm以下の径を有する。ノズル23は、先端52から試料12の表面12aまでの距離が、例えば、500μm以下となるように設置される。
【0032】
先端52は、管状部51の他端に接続され、連続流路52aは、流路51aの他端に接続される接続箇所61を有する。連続流路52aは、途切れることなく連続する。これにより、連続流路52aは、流路51aにより導かれてきた堆積ガス13を連続流路52a内の各位置まで導く。
【0033】
先端52には、複数の噴き出し孔52cが形成される。第1実施形態においては、複数の噴き出し孔52cは、6個の噴き出し孔である。複数の噴き出し孔52cが、2個以上5個以下の噴き出し孔又は7個以上の噴き出し孔であってもよい。
【0034】
複数の噴き出し孔52cの一端は、連続流路52aに接続される。複数の噴き出し孔52cの他端は、先端52の下面に露出する。これにより、複数の噴き出し孔52cは、連続流路52aにより導かれてきた堆積ガス13を先端52の下面まで導き、導いた堆積ガス13を噴き出す。
【0035】
複数の噴き出し孔52cは、連続流路52aから特定の方向に延びる。特定の方向は、鉛直方向下方向Zである。これにより、複数の噴き出し孔52cは、鉛直方向下方向Zに堆積ガス13を噴き出す。
【0036】
複数の噴き出し孔52cは、FIB11の周りの複数の周方向位置から堆積ガス13をそれぞれ噴き出す。これにより、ノズル23は、試料12の表面12aに向かって堆積ガス13を等方的に噴き出し、試料12の表面12aに堆積ガス13を均一に行き渡らせる。また、ノズル23は、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合であっても、大きな凸部の影にまで堆積ガス13を回り込ませる。これにより、FIB支援堆積装置1は、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合であっても、試料12の表面12aに均一な厚さを有する堆積膜14を形成することができる。
【0037】
先端52及び連続流路52aは、円環状の形状を有する。このため、先端52の開口52bは、円形状の平面形状を有する。ノズル23は、FIB11のビーム路が開口52bの中心を通り開口52bと垂直をなすように配置される。これにより、FIB11から複数の噴き出し孔52cまで距離が均一になる。これにより、試料12の表面12aに向かって堆積ガス13をより等方的に噴き出すことができ、試料12の表面12aに堆積ガス13をより均一に行き渡らせることができる。
【0038】
複数の噴き出し孔52cは、接続箇所61を含み先端52の開口52bと垂直をなす面71について対称である複数の位置にそれぞれ形成される。また、複数の噴き出し孔52cは、FIB11のビーム路上の点について点対称である複数の位置にそれぞれ形成される。複数の噴き出し孔52cは、先端52の周方向に均等に配列される。これにより、試料12の表面12aに向かって堆積ガス13をより等方的に噴き出すことができ、試料12の表面12aに堆積ガス13をより均一に行き渡らせることができる。
【0039】
複数の噴き出し孔52cは、同じ径を有する。
【0040】
先端52は、角を有しない。このため、連続流路52aは、角を有しない。これにより、堆積ガス13が流れにくくなることを抑制することができる。
【0041】
1.4 噴き出し孔の径の調整
図6は、第1実施形態の第1変形例のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。図7は、第1実施形態の第2変形例のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。図8は、第1実施形態の第3変形例のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。図9は、第1実施形態の第4変形例のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する上面図である。
【0042】
図6に図示されるように、第1実施形態の第1変形例においては、複数の噴き出し孔52cが、3個の噴き出し孔である。図7に図示されるように、第1実施形態の第2変形例においては、複数の噴き出し孔52cが、4個の噴き出し孔である。図8に図示されるように、第1実施形態の第3変形例においては、複数の噴き出し孔52cが、5個の噴き出し孔である。図9に図示されるように、第1実施形態の第4変形例においては、複数の噴き出し孔52cが、6個の噴き出し孔である。
【0043】
第1実施形態の第1変形例から第4変形例までにおいても、複数の噴き出し孔52cは、面71について対称である複数の位置にそれぞれ形成される。
【0044】
また、第1実施形態の第1変形例から第4変形例までにおいては、複数の噴き出し孔52cに含まれる噴き出し孔52cの径が、接続箇所61から連続流路52aに沿って噴き出し孔52cに至る経路の長さが長くなるほど大きくなる。これにより、ガス源22から遠く、導かれてくる堆積ガス13の圧力が低い噴き出し孔52cから噴き出される堆積ガス13の量が、ガス源22に近く、導かれてくる堆積ガス13の圧力が高い噴き出し孔52cから噴き出される堆積ガス13の量より少なくなることを抑制することができる。
【0045】
1.5 FIBによる断面加工のための保護膜としての堆積膜の利用
デバイスの微細領域の断面電子顕微鏡観察には、高い精度を有する断面加工が必要である。このため、当該断面電子顕微鏡観察には、高い精度を有するFIBによる断面加工が多用される。しかし、デバイスに保護膜を形成することなくFIBによる断面加工が行われた場合は、デバイスの元々の構造とは無関係なデバイスの表面の凹凸に由来する縦筋状の人工構造が形成される。このため、FIBによる断面加工が行われる場合には、デバイスの表面に保護膜が形成される。上述した堆積膜14は、当該保護膜として利用することができる。
【0046】
近年においては、デバイスの3次元化及び複雑化が進んでいる。このため、断面電子顕微鏡観察が行われるデバイスの表面が大きな凹凸を有する場合がある。しかし、上述した堆積膜14が保護膜として利用された場合は、デバイスの表面が大きな凹凸を有するときであっても、保護膜を均一に形成することができる。
【0047】
1.6 堆積膜の形成以外の加工、及び観察におけるFIBの利用
FIB11は、堆積膜14の形成以外の加工、及び観察にも用いることができる。FIB11が加工及び観察に用いられる場合は、FIB11で試料12が走査されるのと同期して試料12から放出される2次電子が検出されて、走査顕微鏡像が取得される。また、取得された走査顕微鏡像に基づいて加工領域が設定され、設定された加工領域にFIB11が照射されて加工領域が加工される。
【0048】
1.7 FIB支援堆積装置以外の粒子ビーム支援加工装置におけるノズルの使用
ノズル23が、FIB支援堆積装置1以外の粒子ビーム支援加工装置に備えられてもよい。例えば、ノズル23が、FIB11を用いてFIB支援エッチングを行うFIB支援エッチング装置、電子ビームを用いて電子ビーム支援堆積を行う電子ビーム支援堆積装置、電子ビームを用いて電子ビーム支援エッチングを行う電子ビーム支援エッチング装置等に備えられてもよい。ノズル23が、FIB支援堆積装置1、FIB支援エッチング装置等のFIB支援加工装置に備えられる場合は、鏡筒21は、先端52の開口52bを経由して試料12にFIBを照射する。ノズル23が、電子ビーム支援堆積装置、電子ビーム支援エッチング装置等の電子ビーム支援加工装置に備えられる場合は、鏡筒21が、開口52bを経由して試料12に電子ビームを照射する。ノズル23が、FIB支援堆積装置1、電子ビーム支援堆積装置等の粒子ビーム支援堆積装置に備えられる場合は、ノズル23により行うことができる試料12の加工は、試料12の表面12aへの堆積膜14の形成である。ノズル23が、FIB支援エッチング装置、電子ビーム支援エッチング装置等の粒子ビーム支援エッチング装置に備えられる場合は、ノズル23により行うことができる試料12の加工は、試料12の表面12aのエッチングである。
【0049】
ノズル23が、FIB支援堆積装置1及びそれ以外の装置の複合装置に備えられてもよい。例えば、ノズル23が、FIB支援堆積装置1及び走査型電子顕微鏡(SEM)の複合装置に備えられてもよい。
【0050】
FIB11を用いてFIB支援エッチングが行われる場合は、鏡筒21が、先端52の開口52bを経由して試料12にFIB11を照射する。それと並行して、ガス源22が、エッチングガスをノズル23に供給し、ノズル23が、エッチングガスを試料12に向かって噴き出す。照射されたFIB11は、噴き出されたエッチングガスに作用する。これにより、試料12とエッチングガスとの化学反応を伴うエッチングが行われる。エッチングガスは、ハロゲン系のガス等である。当該エッチングにおいては、化学反応により生成された物質が気化する。このため、当該エッチングのエッチング速度は速い。また、当該エッチングが行われた場合は、スパッタエッチングが行われた場合と比較して、残渣を減らすことができる。当該エッチングのエッチング速度を遅くし、混合材料からなる試料におけるエッチング速度の差を小さくすることもできる。
【0051】
1.8 参考例と第1実施形態との対比
図10は、参考例のFIB支援堆積装置を模式的に図示する図である。図11は、参考例のFIB支援堆積装置により形成された堆積膜、及び試料を模式的に図示する断面図である。
【0052】
図10に図示されるように、参考例においては、ノズル81は、直管である。このため、ノズル81は、ひとつの位置から堆積ガス13を噴き出す。このため、ノズル81は、試料12の表面12aに向かって堆積ガス13を等方的に噴き出すことができず、試料12の表面12aに堆積ガス13を均一に行き渡らせることができない。また、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合は、堆積ガス13が噴き出される位置から見て、大きな凸部の影となる部分ができる。このため、ノズル81は、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合は、大きな凸部の影にまで堆積ガス13を回り込ませることができない。これにより、参考例においては、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合は、試料12の表面12aに均一な厚さを有する堆積膜を形成することができない。このため、形成された堆積膜82を保護膜としてFIB11による断面加工が行われた場合は、堆積膜82が形成されなかった領域が削られることがある。また、堆積膜82が形成された領域と堆積膜82が形成されなかった領域との境界に縦筋状の人工構造が形成されることがある。
【0053】
これに対して、第1実施形態においては、上述したように、ノズル23は、FIB11の周りの複数の周方向位置から堆積ガス13を噴き出す。このため、ノズル23は、試料12の表面12aに向かって堆積ガス13を等方的に噴き出すことができ、試料12の表面12aに堆積ガス13を均一に行き渡らせることができる。また、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合であっても、堆積ガス13が噴き出される複数の位置から見て、大きな凸部の影となる部分ができない。このため、ノズル23は、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合であっても、大きな凸部の影にまで堆積ガス13を回り込ませることができる。これにより、第1実施形態においては、試料12の表面12aが大きな凹凸を有する場合であっても、試料12の表面12aに均一な厚さを有する堆積膜14を形成することができる。このため、形成された堆積膜14を保護膜としてFIB11による断面加工が行われた場合は、堆積膜14が形成されなかった領域が削られることを抑制することができる。また、堆積膜14が形成された領域と堆積膜14が形成されなかった領域との境界に縦筋状の人工構造が形成されることを抑制することができる。
【0054】
均一な厚さを有する堆積膜14が形成されたか否かは、FIB像により試料12の表面12aを観察することにより、ある程度確認することができ、FIB11による断面加工を行って試料12の断面を観察することにより、詳細に確認することができる。
【0055】
1.9 ひとつのノズルによる堆積ガスの噴き出しの利点
複数のノズルが互いに異なる複数の方向から堆積ガス13をそれぞれ噴き出す場合は、複数の方向からの堆積ガス13の噴き出し条件に差が生じやすい。このため、均一な厚さを有する堆積膜14を形成することが困難になる。また、堆積ガス13の流量、ノズルの高さ等の噴き出し条件を調整することも困難になる。
【0056】
これに対して、ひとつのノズル23が複数の方向から堆積ガス13を噴き出す場合は、複数の方向からの堆積ガス13の噴き出し条件の差が生じにくい。このため、均一な厚さを有する堆積膜14を形成することが容易になる。また、堆積ガスの流量、ノズルの高さ等の噴き出し条件を調整することも容易になる。
【0057】
2 第2実施形態
以下では、第2実施形態が第1実施形態と相違する点が説明される。説明されない点については、第1実施形態において採用される構成と同様の構成が第2実施形態においても採用される。
【0058】
図12は、第2実施形態のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する斜視図である。
【0059】
図12に図示されるように、第2実施形態においては、ノズル23は、複数の筒状構造91を備える。
【0060】
複数の筒状構造91は、先端52の下面に取り付けられる。複数の筒状構造91には、複数の孔91aがそれぞれ形成される。複数の孔91aは、複数の噴き出し孔52cにそれぞれ接続される。これにより、複数の噴き出し孔52cにより噴き出された堆積ガス13が、複数の孔91aをそれぞれ経由して、試料12に向かって噴き出される。複数の筒状構造91により、堆積ガス13が最終的に噴き出される位置を試料12の表面12aに近づけることができる。これにより、試料12の表面12aの付近の反応領域における堆積ガス13の濃度を高くすることができる。複数の筒状構造91は、例えば、数10μmの長さを有する。これにより、複数の筒状構造91が試料12と衝突するリスクを著しく高くすることなく、堆積ガス13が最終的に噴き出される位置を試料12の表面12aに近づけることができる。
【0061】
図13は、第2実施形態のFIB支援堆積装置に備えられる筒状構造を模式的に図示する断面図である。
【0062】
図13に図示されるように、複数の筒状構造91は、円柱状の外形形状を有する。このため、複数の孔91aの径は、一定である。
【0063】
図14は、第2実施形態の第1変形例のFIB支援堆積装置に備えられる筒状構造を模式的に図示する断面図である。
【0064】
図14に図示されるように、第2実施形態の第1変形例においては、複数の筒状構造91が、円錐台状の外形形状を有する。このため、複数の孔91aの径は、それぞれ、複数の噴き出し孔52cから離れるについて大きくなる。これにより、堆積ガス13をより均一に噴き出すことができる。
【0065】
3 第3実施形態
以下では、第3実施形態が第1実施形態と相違する点が説明される。説明されない点については、第1実施形態において採用される構成と同様の構成が第3実施形態においても採用される。
【0066】
図15は、第3実施形態のFIB支援堆積装置に備えられるノズルを模式的に図示する斜視図である。
【0067】
図15に図示されるように、第3実施形態においては、先端52は、第1の円弧状部101及び第2の円弧状部102を備える。
【0068】
第1の円弧状部101及び第2の円弧状部102の各々は、滑らかな円弧状の形状を有する。連続流路52aは、第1の連続流路101a及び第2の連続流路102aを含む。第1の連続流路101a及び第2の連続流路102aは、第1の円弧状部101及び第2の円弧状部102にそれぞれ形成される。複数の噴き出し孔52cは、第1の噴き出し孔101c及び第2の噴き出し孔102cを含む。第1の噴き出し孔101c及び第2の噴き出し孔102cは、第1の円弧状部101及び第2の円弧状部102にそれぞれ形成される。
【0069】
第1の円弧状部101及び第2の円弧状部102は、第1の先端111及び第2の先端112をそれぞれ有する。第1の円弧状部101及び第2の円弧状部102は、接続箇所61において分かれて第1の先端111及び第2の先端112にそれぞれ至る二又を構成する。第1の先端111及び第2の先端112との間には、ギャップ121が形成される。これにより、試料12の表面12aに、ノズル23に向かって突出する凸部が存在する場合であっても、ステージ24が傾斜した際に当該凸部が先端52に接触するリスクを減らすことができる。
【0070】
本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 FIB支援堆積装置、11 FIB、12 試料、12a 表面、13 堆積ガス、14 堆積膜、21 鏡筒、22 ガス源、23 ノズル、24 ステージ、25 真空チャンバー、25a 内部空間、31 イオン源、32 コンデンサーレンズ、33 絞り、34 偏光器、35 対物レンズ、41 イオンビーム、51 管状部、51a 流路、52 先端、52a 連続流路、52b 開口、52c 噴き出し孔、61 接続箇所、71 面、81 ノズル、82 堆積膜、91 筒状構造、91a 孔、101 第1の円弧状部、101a 第1の連続流路、101c 第1の噴き出し孔、102 第2の円弧状部、102a 第2の連続流路、102c 第2の噴き出し孔、111 第1の先端、112 第2の先端、121 ギャップ、X 水平方向、Y 水平方向、Z 鉛直方向下方向。
図1
図2
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