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特開2024-141060フェライト粒子、電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、及び電子写真現像剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141060
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】フェライト粒子、電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、及び電子写真現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/107 20060101AFI20241003BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G03G9/107 321
G03G9/113 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052502
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231970
【氏名又は名称】パウダーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】石川 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 哲也
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AB01
2H500AB04
2H500CB01
2H500CB02
2H500CB08
2H500CB15
2H500EA43E
2H500EA52E
2H500EA53E
(57)【要約】
【課題】帯電付与能力が高く、帯電量分布がシャープであるため、画像濃度不良やトナー飛散が生じにくく、現像剤として長期に渡り使用されても良好な画像品質が得られる電子写真現像剤用キャリア芯材、該電子写真現像剤用キャリア芯材の表面に樹脂を被覆してなる電子写真現像剤用キャリア、及び該電子写真現像剤用キャリアを用いた電子写真現像剤となるフェライト粒子を提供する。
【解決手段】本発明に係るフェライト粒子は、粒子径が35μm以下の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合をX(原子%)、粒子径が40μm以上の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合をY(原子%)としたとき、1.10≦Y/Xを満たす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が35μm以下の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合をX(原子%)、粒子径が40μm以上の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合をY(原子%)としたとき、下記式:
1.10≦Y/X
を満たす
フェライト粒子。
【請求項2】
下記式:
0.30≦X≦0.80
0.36≦Y≦1.55
1.20≦Y/X≦2.00
を満たす
請求項1のフェライト粒子。
【請求項3】
体積基準による粒度分布における累積50%粒子径D50が30μm以上50μm以下であり、
個数基準による粒度分布における粒子径40μm以上の粒子の割合P+40が5個数%以上40個数%以下である
請求項1のフェライト粒子。
【請求項4】
表面粗さRzが、2.5μm以上4.5μm以下であり、
前記表面粗さRzの標準偏差Rzσが、0.2μm以上1.0μm以下である
請求項1に記載のフェライト粒子。
【請求項5】
Sr又はCaを0.3重量%以上1.2重量%以下含む
請求項1に記載のフェライト粒子。
【請求項6】
Mnを15重量%以上30重量%以下含み、Feを45重量%以上65重量%以下含む
請求項5に記載のフェライト粒子。
【請求項7】
残留磁化σrが3.0Am/kg未満である
請求項1に記載のフェライト粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のフェライト粒子を含む
電子写真現像剤用キャリア芯材。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のフェライト粒子と、前記フェライト粒子の表面に設けられた樹脂被覆層とを備える
電子写真現像剤用キャリア。
【請求項10】
請求項9に記載の電子写真現像剤用キャリアと、トナーとを含む
電子写真現像剤。
【請求項11】
補給用現像剤として用いられる
請求項10に記載の電子写真現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト粒子、電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、及び電子写真現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真現像方法は、現像剤中のトナー粒子を感光体上に形成された静電潜像に付着させて現像する方法であり、この方法で使用される現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子からなる二成分系現像剤及びトナー粒子のみを用いる一成分系現像剤に分けられる。こうした現像剤のうち、トナー粒子とキャリア粒子からなる二成分系現像剤を用いた現像方法として、マグネットロールを用いる磁気ブラシ法が主流である。
【0003】
二成分系現像剤において、キャリア粒子は、現像剤が充填されている現像ボックス内において、トナー粒子と共に攪拌されることによって、トナー粒子に所望の電荷を付与し、さらにこのように電荷を帯びたトナー粒子を感光体の表面に搬送して感光体上にトナー像を形成するための担体物質である。マグネットを保持する現像ロール上に残ったキャリア粒子は、この現像ロールから再び現像ボックス内に戻り、新たなトナー粒子と混合・攪拌され、一定期間繰り返して使用される。
【0004】
二成分系現像剤は、一成分系現像剤とは異なり、キャリア粒子は、トナー粒子と混合・攪拌され、トナー粒子を帯電させ、さらに搬送する機能を有しており、現像剤を設計する際の制御性が良い。従って、二成分系現像剤は高画質が要求されるフルカラー現像装置及び画像維持の信頼性、耐久性が要求される高速印刷を行う装置等に適している。
【0005】
このように、キャリア粒子は、長時間の使用中、常にトナー粒子を所望する極性で、かつ充分な帯電量に摩擦帯電させなければならない。しかしながら、トナーの帯電量の分布が広い場合には、低帯電のトナーに由来したトナー飛散や高帯電のトナーに由来した画像濃度不良が発生しやすくなる。すなわち、キャリア粒子には、トナーへの帯電能力だけでなく、帯電量分布をより狭く制御できることが求められる。
【0006】
特許文献1では、キャリア粒子となるフェライト粒子の表面に、局所的に大きな凸部を設けることによって、優れたトナー帯電量の立ち上がり性及び高い帯電安定性を有するフェライト粒子が提案されている。具体的には、特許文献1には、組成式MFe3-X(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表される材料を主成分とするフェライト粒子であって、粒子の最大高さRzが2.2μmより大きく、粒子の平均長さRSmが19μmより大きく26μmよりも小さいことを特徴とするフェライト粒子が開示されている。
【0007】
特許文献2では、樹脂で被覆されたキャリアにおける樹脂被覆層に適度な凹凸を設けることで、シャープな帯電量分布を有するキャリアが提案されている。具体的には、特許文献2には、少なくとも結着樹脂と微粒子からなる被覆膜を有するキャリアにおいて、該粒子径(D)と該結着樹脂膜厚(h)が1<[D/h]<10であり、該キャリアの1kOeにおける磁化が40~80emu/gの範囲であることを特徴とする静電荷像現像用キャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-151287号公報
【特許文献2】特開2004-198663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~2に記載された技術では、キャリアの粒度分布を考慮した帯電量分布に対する検討が必ずしも十分ではなく、帯電量分布が十分にシャープとは言えなかった。特に、表面に樹脂被覆層が設けられたキャリアにおいては、現像槽内での長期間の使用による樹脂被覆層の摩耗・剥離によりキャリア芯材が露出することがあり、キャリア芯材の帯電付与能力及び帯電量分布の影響が強くなることで、トナーの帯電制御が難しくなって画像濃度不良やトナー飛散が生じやすくなる。
【0010】
従って、本発明の目的は、帯電付与能力が高く、帯電量分布がシャープであるため、画像濃度不良やトナー飛散が生じにくく、現像剤として長期に渡り使用されても良好な画像品質が得られる電子写真現像剤用キャリア芯材、該電子写真現像剤用キャリア芯材の表面に樹脂を被覆してなる電子写真現像剤用キャリア、及び該電子写真現像剤用キャリアを用いた電子写真現像剤となるフェライト粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討した結果、相対的に粒子径が小さい粒子の表面におけるSr又はCaの割合と、相対的に粒子径が大きい粒子の表面におけるSr又はCaの割合が所定の条件を満たすことで、所望の帯電付与能力とシャープな帯電量分布を持つ電子写真現像剤用キャリア芯材が得られるフェライト粒子となることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、粒子径が35μm以下の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合をX(原子%)、粒子径が40μm以上の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合をY(原子%)としたとき、下記式:
1.10≦Y/X
を満たすフェライト粒子を提供する。
【0013】
本発明に係るフェライト粒子では、下記式:
0.30≦X≦0.80
0.36≦Y≦1.55
1.20≦Y/X≦2.00
を満たすことが好ましい。
【0014】
本発明に係るフェライト粒子では、体積基準による粒度分布における累積50%粒子径D50が30μm以上50μm以下であり、個数基準による粒度分布における粒子径40μm以上の粒子の割合が5個数%以上40個数%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係るフェライト粒子では、表面粗さRzが、2.5μm以上4.5μm以下であり、前記表面粗さRzの標準偏差Rzσが、0.2μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るフェライト粒子では、Sr又はCaを0.3重量%以上1.2重量%以下含むことが好ましく、さらに、Mnを15重量%以上30重量%以下含み、Feを45重量%以上65重量%以下含むことがより好ましい。
【0017】
本発明に係るフェライト粒子では、残留磁化σrが3.0Am/kg未満であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記のフェライト粒子を含む電子写真現像剤用キャリア芯材を提供する。
【0019】
また、本発明は、上記のフェライト粒子と、前記フェライト粒子の表面に設けられた樹脂被覆層とを備える電子写真現像剤用キャリアを提供する。
【0020】
また、本発明は、上記の電子写真現像剤用キャリアと、トナーとを含む電子写真現像剤を提供する。本発明に係る電子写真現像剤は、補給用現像剤として用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、帯電付与能力が高く、帯電量分布がシャープであるため、画像濃度不良やトナー飛散が生じにくく、現像剤として長期に渡り使用されても良好な画像品質が得る電子写真現像剤用キャリア芯材、該電子写真現像剤用キャリア芯材の表面に樹脂を被覆してなる電子写真現像剤用キャリア、及び該電子写真現像剤用キャリアを用いた電子写真現像剤となるフェライト粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るフェライト粒子、電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、及び電子写真現像剤の実施の形態を説明する。なお、本明細書において、フェライト粒子、電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、及び電子写真現像剤は、特記しない限り、それぞれ個々の粒子の集合体、つまり粉体を意味するものとする。
【0023】
1.フェライト粒子及び電子写真現像剤用キャリア芯材
まず、本発明に係るフェライト粒子の実施の形態を説明する。また、以下では、本発明に係るフェライト粒子は、主として、電子写真現像剤用キャリア芯材として用いられるものとして説明する。しかしながら、本発明に係るフェライト粒子は、磁性インク、磁性流体、磁性フィラー、ボンド磁石用フィラー、及び電磁波シールド材用フィラー等の各種機能性フィラー、電子部品材料等の各種用途に用いることができ、当該フェライト粒子の用途は、電子写真現像剤用キャリア芯材に限定されるものではない。
【0024】
(1)構成成分
本発明に係るフェライト粒子は、MO・Fe(M:2価の金属元素)で表されるものであり、通常、主成分となる金属成分として、Feを含み、好ましくはMnおよびMgから選ばれる1種又は2種の成分により構成される。これらの主成分となる金属成分は、スピネル構造中に固溶して存在する。本発明に係るフェライト粒子は、主成分となる金属成分としてFe及びMnを少なくとも含むことが好ましく、主成分となる金属成分としてFe、Mn、及びMgにより構成されていることが好ましい。
【0025】
本発明に係るフェライト粒子において、Feの含有率は、45重量%以上65重量%以下であることが好ましい。Feの含有率がこの範囲であれば、磁化と抵抗を所望のレベルに調整しやすくなる。Feの含有率は、47重量%以上であることがより好ましく、48重量%以上であることがさらに好ましい。また、Feの含有率は、60重量%以下であることがより好ましく、55重量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明に係るフェライト粒子において、Mnの含有率は、15重量%以上30重量%以下であることが好ましい。Mnの含有率がこの範囲であれば、磁化と抵抗を所望のレベルに調整しやすくなる。Mnの含有率は、16重量%以上であることがより好ましく、17重量%以上であることがさらに好ましい。また、Mnの含有率は、25重量%以下であることがより好ましく、22重量%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明に係るフェライト粒子において、Mgの含有率は、0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。Mgの含有率がこの範囲であれば、磁化と抵抗を所望のレベルに調整しやすくなる。Mgの含有率は、1.0重量%以上であることがより好ましく、1.5重量%以上であることがさらに好ましい。また、Mgの含有率は、5.0重量%以下であることがより好ましく、3.0重量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
また、本発明に係るフェライト粒子は、微量成分として、Sr又はCaを含むことが重要である。本発明に係るフェライト粒子におけるSr又はCaの含有率は、0.3重量%以上1.2重量%以下であることが好ましい。Sr又はCaの含有率を、0.3重量%以上とすることで、電子写真現像剤用キャリアのトナーへの帯電付与能力が高まる。Sr又はCaの含有率を1.2重量%以下とすることで、高温高湿下などの環境による影響を受けにくく、帯電量の環境依存性が向上する。Sr又はCaの含有率は、0.4重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましい。また、Sr又はCaの含有率は、0.9重量%以下であることがより好ましく、0.8重量%以下であることがさらに好ましい。なお、本発明に係るフェライト粒子は、Sr又はCaのいずれか一方を含んでもよく、Sr及びCaの両方を含んでもよい。Sr及びCaの両方を含む場合の上記の含有率は、Sr及びCaの合計の含有率とする。
【0029】
(2)粒子径に応じたSr又はCaの割合
ここで、トナーへの帯電付与能力は、電子写真現像剤用キャリアとトナーの摩擦帯電により行われるため、電子写真現像剤用キャリア(フェライト粒子)の粒子径や比表面積が大きく影響する。そして、一般に、粒子の粒子径と比表面積は強い相関があり、粒子径が大きいほど比表面積は小さくなることから、粒子径が大きい電子写真現像剤用キャリアの方が、粒子径が小さい電子写真現像剤用キャリアよりも相対的に帯電付与能力が弱い。すなわち、粒子径の分布が電子写真現像剤用キャリアのトナーへの帯電量付与能力のバラツキの原因となって、トナーの帯電量分布が広くなると考えられる。
【0030】
一方、電子写真現像剤用キャリアの粒子径の分布をシャープにし過ぎると、粒子間空隙に入るトナーが相対的に増加することで、トナーとの接触頻度が低下してしまうことから、帯電量低下や帯電量分布が広くなる可能性があり、また生産歩留まりが大きく低下する可能性があった。
【0031】
そこで、本発明では、トナーへの帯電付与能力が高まることが知られているSr又はCaをフェライト粒子に添加するにあたり、フェライト粒子の粒子径に応じた組成(特にSr又はCaの割合)の勾配を持たせることで、粒子径による帯電付与能力のバラツキを低減し、帯電量分布をシャープにしている。すなわち、相対的に粒子径が大きい粒子の表面におけるSr又はCaの割合を、相対的に粒子径が小さい粒子の表面におけるSr又はCaの割合よりも高く設定することが重要である。
【0032】
より具体的には、そこで、本発明では、粒子径が35μm以下の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合をX(原子%)、粒子径が40μm以上の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合をY(原子%)としたとき、下記式:
1.10≦Y/X
を満たすことが重要である。Y/Xが1.10未満であると、トナーへの帯電付与能力のバラツキが大きくなり、帯電量分布が広くなるため、トナー飛散や画像濃度不足が生じやすくなる。Y/Xは、1.20以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましい。ただし、Y/Xが大きすぎると、かえってトナーへの帯電付与能力のバラツキが生じやすいことから、Y/Xは、2.50以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましく、1.75以下であることがさらに好ましい。
【0033】
粒子径が35μm以下の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合X(原子%)は、下記式:
0.30≦X≦0.80
を満たすことが好ましい。Xを0.30以上とすることで、十分な帯電付与能力が得られる。また、Xを0.80以下とすることで、高温高湿下などの環境による影響を受けにくく、帯電量の環境依存性が向上する。Xは、0.35以上であることがより好ましく、0.40以上であることがさらに好ましい。また、Xは、0.70以下であることがより好ましく、0.65以下であることがさらに好ましい。
【0034】
粒子径が40μm以上の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合Y(原子%)は、下記式:
0.36≦Y≦1.55
を満たすことが好ましい。Yを0.36以上とすることで、十分な帯電付与能力が得られる。また、Yを1.55以下とすることで、高温高湿下などの環境による影響を受けにくく、帯電量の環境依存性が向上する。Yは、0.45以上であることがより好ましく、0.60以上であることがさらに好ましい。また、Yは、1.15以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。
【0035】
なお、粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合は、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)で測定することができる。EDX分析では、フェライト粒子の数μm程度の深さにおける元素の含有量を測定することができる。具体的な測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0036】
(3)粒度分布
本発明に係るフェライト粒子において、体積基準による粒度分布における体積累積50%粒子径D50が30μm以上50μm以下であることが好ましい。D50を30μm以上とすることで、電子写真現像剤用キャリアの付着が発生しにくくなる、D50を50μm以下とすることで、トナーに対して適度な粒径となるため帯電付与能力が向上する。D50は、33μm以上であることがより好ましい。また、D50は、45μm以下であることがより好ましく、42μm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明に係るフェライト粒子において、体積基準による粒度分布における粒子径62μm以上の粒子の割合D+62が12体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがさらに好ましい。D+62を12体積%以下とすることで、大きい粒子が少ないシャープな分布になるため、トナーの搬送能力が高まり、画質が向上する。また、本発明に係るフェライト粒子において、体積基準による粒度分布における粒子径22μm以下の粒子の割合D-22が3体積%以下であることが好ましく、1.5体積%以下であることがさらに好ましい。D-22を3体積%以下とすることで、小さい粒子が少ないシャープな分布になるため、キャリア付着が発生しにくくなる。
【0038】
また、本発明に係るフェライト粒子において、個数基準による粒度分布における粒子径40μm以上の粒子の割合P+40が5個数%以上40個数%以下であることが好ましい。P+40がこの範囲であれば、歩留りを落とすことなく粒子間空隙が適度に埋まるため、トナーの帯電付与性を所望の値に調整しやすくなる。P+40は、8個数%以上であることがより好ましい。また、P+40は、20個数%以下であることがより好ましい。
【0039】
(4)表面性
本発明に係るフェライト粒子において、表面粗さRzが2.5μm以上4.5μm以下であることが好ましい。Rzを2.5μm以上とすることで、適度に存在する凹凸によって帯電付与能力が高くなる傾向がある。Rzを4.5μm以下とすることで、過剰な凹凸による流動性の低下を抑制し、また、トナーとの接触頻度が高まることでトナーの帯電付与能力が向上する。Rzは、2.8μm以上であることがより好ましい。また、Rzは、4.0μm以下であることがより好ましい。
【0040】
また、本発明に係るフェライト粒子において、表面粗さRzの標準偏差Rzσが0.2μm以上1.0μm以下であることが好ましい。Rzσを0.2μm以上とすることで、固相反応による焼結を含む方法で製造しやすくなる。Rzσを1.0μm以下とすることで、樹脂被覆して使用する場合に樹脂被覆のバラツキによる芯材の露出が起きにくくなり、電荷注入によるキャリア付着が生じにくくなる。Rzσは、0.3μm以上であることがより好ましい。また、Rzσは、0.8μm以下であることがより好ましい。
【0041】
(5)磁化
本発明に係るフェライト粒子において、残留磁化σrが3.0Am/kg未満であることが好ましい。σrが3.0Am/kg未満であれば、残留磁化による凝集が発生しにくくなり、トナーへの帯電付与能力の低下や帯電量分布のバラツキが生じにくくなる。σrは、2.5Am/kg以下であることがより好ましい。また、σrは、通常0.5Am/kg以上となる。
【0042】
(6)製造方法
本発明に係るフェライト粒子を製造する方法は、特に限定されないが、次のような方法で製造することが好ましい。
【0043】
まず、本発明に係るフェライト粒子を製造するための原料を適量秤量した後、ボ-ルミル又は振動ミル等で0.5時間以上(好ましくは1~20時間)粉砕混合することで、粉砕物を得る。原料は、特に制限されないが、上述した元素を含有する組成となるように選択することが好ましい。なお、Feの原料としては、Feを用いることが好ましい。Mnの原料としては、Mn及びMnOから選択される1種又は2種以上の化合物を用いることが好ましい。Mgの原料としては、Mg(OH)、MgO、及びMgCOから選択される1種又は2種以上の化合物を用いることが好ましい。Srの原料としては、SrCOを用いることが好ましい。Caの原料としては、CaCOを用いることが好ましい。
【0044】
本発明に係るフェライト粒子において、粒子径に応じた組成(特にSr又はCaの割合)の勾配を持たせる必要があるが、その勾配は、組成及び粒子径の異なる造粒物を混合して焼成する方法により、調整することができる。具体的には、所望の組成比となるような2種類の配合原料を準備し、造粒段階において、造粒条件(例えば、アトマイザー回転数など)を変えることで、造粒物の粒子径を調整することで、粒子径の異なる2種類の造粒物を準備し、焼成物のD50が所望の粒子径となるように混合して焼成する方法が挙げられる。
【0045】
また、粒子径に応じた組成の勾配は、使用するSr又はCaの原料の粒子径を変える方法で調整することもできる。具体的には、粒子径の異なる原料を準備する方法や、Sr又はCaの原料のみをビーズミルなどで粉砕する方法が挙げられる。原料の粒子径が細かいほど、固相反応が生じやすく粒子表面に析出しやすくなるため、例えば、造粒段階において、Fe、Mn、Mgなどの主成分となる金属の原料を所望の粒径まで粉砕した後、Sr又はCaの原料を添加して混合することで、原料中のSr又はCaのみ粒子径が異なるスラリーを作製することができる。
【0046】
なお、焼成温度を高くすることで、Sr又はCaを粒子表面に析出しやすくすることもできるが、粒度分布での勾配をつけることは難しい。また、焼成温度の異なる焼成物を混合する方法は、表面性又は形状が異なる2種類の粒子が混合されるため、結果的に帯電量分布をシャープにすることができない場合がある。
【0047】
このようにして得られた粉砕物を、加圧成型機等を用いてペレット化した後、大気下で700~1100℃の温度で仮焼成する。加圧成型機を使用せずに、粉砕物に水を加えてスラリー化してスプレードライヤーにより粒状化してもよい。仮焼成した後、さらにボールミル又は振動ミル等で粉砕し、その後に水及び必要に応じ分散剤やバインダー等を添加して粘度を調整し、スプレードライヤーにて粒状化し、造粒する。仮焼成後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕してもよい。
【0048】
ボールミルや振動ミル等の粉砕機は、特に限定されないが、原料を効果的かつ均一に分散させるためには、使用するメディアに1mm以下の粒径を持つ微粒なビーズを使用することが好ましい。また、使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。原料を均一に分散させる上で、粉砕物の体積平均粒径(D50)が5μm以下になるように粉砕することが好ましく、3.0μm以下になるように粉砕することがより好ましく、2.5μm以下になるように粉砕することが更に好ましい。
【0049】
次に、粒度の揃ったフェライト粉を得るために、上記造粒物を焼成する前に分級して当該造粒物に含まれる微細粒子を除去することが好ましい。造粒物の分級は、既知の気流分級や篩等を用いて行うことができる。
【0050】
そして、分級された造粒物を焼成する。造粒物は、ロータリーキルンのように、造粒物(被焼成物)を流動させながら熱間部を通過させるような形式の焼成炉で一次焼成した後に、本焼成を行うことが好ましい。ロータリーキルンのように、造粒物を流動させながら熱間部を通過させるような形式の焼成炉で一次焼成を行うことで、造粒物をコウ鉢などに静置した状態で一次焼成を行う場合と比較すると、相対的に短時間で、且つ、均一に造粒物から造粒時に用いられたバインダー等の有機物を除去することができる。また、これと同時に一次焼成時にフェライト反応の一部を進めることができ、その後の本焼成時に表面Rzにばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0051】
上記形式の焼成炉を用いて一次焼成を行う際に、その温度は、例えば750℃以上1050℃以下とすることが好ましい。当該温度範囲で一次焼成を行うことで有機物の除去及びフェライト反応を効率よく行いつつ、異常粒成長を抑制し、上記の通り表面粗さRzのばらつきが生じるのを抑制することがより容易になる。さらに、有機物の除去及びフェライト反応を効率よく行う上で、一次焼成温度は800℃以上で行うことがより好ましく、850℃以上で行うことがさらに好ましい。また、異常粒成長を抑制する上では、一次焼成温度は1000℃以下で行うことがより好ましく、980℃以下で行うことがさらに好ましい。
【0052】
本焼成は、不活性雰囲気又は弱酸化性雰囲気下で、1050℃以上1300℃以下の温度で4時間以上24時間以下保持することにより行うことが好ましく、1100℃以上1250℃以下であることがさらに好ましい。なお、不活性雰囲気又は弱酸化性雰囲気下とは、窒素と酸素の混合ガス雰囲気下において酸素濃度が0.1体積%(1000ppm)以上5体積%(50000ppm)以下であることを言い、雰囲気酸素濃度が0.1体積%(1000ppm)以上3.5体積%(35000ppm)以下であることがより好ましく、0.1体積%(1000ppm)以上2.5体積%(25000ppm)以下であることがさらに好ましい。当該温度範囲、酸素濃度範囲で本焼成することで、フェライト化反応が進み、所望の飽和磁化と残留磁化を得ることができる。
【0053】
その後、焼成物を解砕、分級を行ってフェライト粒子を得る。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法等を用いて所望の粒子径に粒度調整する。乾式回収を行う場合は、サイクロン等で回収することも可能である。粒度調整を行う際は前述の分級方法を2種類以上選んで実施してもよく、1種類の分級方法で条件を変更して粗粉側粒子と微粉側粒子を除去してもよい。その後、必要に応じて、フェライト粒子の表面を低温加熱、例えば300℃~700℃で熱処理することで表面酸化処理を施し、フェライト粒子の表面抵抗を調整することができる。
【0054】
2.電子写真現像剤用キャリア
次に、本発明に係る電子写真現像剤用キャリアについて説明する。本発明に係る電子写真現像剤用キャリアは、上記フェライト粒子と、当該フェライト粒子の表面に設けられた樹脂被覆層とを備えることを特徴とする。すなわち、上記フェライト粒子は、電子写真現像剤用キャリアの芯材として用いられることを特徴とする。フェライト粒子については、上述したとおりであるため、ここでは主として樹脂被覆層について説明する。
【0055】
(1)被覆樹脂
樹脂被覆層を構成する樹脂(被覆樹脂)の種類は、特に限定されるものではない。例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。また、シリコーン樹脂等をアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等を用いてもよい。
【0056】
また、例えば、トナーとの撹拌混合時に受ける機械的ストレスによる樹脂剥離を抑制するという観点から、被覆樹脂は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。当該被覆樹脂に好適な熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂及びそれらを含有する樹脂等が挙げられる。但し、上述のとおり、被覆樹脂の種類は特に限定されるものではなく、組み合わせるトナーの種類や使用環境等に応じて、適宜適切なものを選択することができる。
【0057】
また、1種類の樹脂を用いて樹脂被覆層を構成してもよいし、2種類以上の樹脂を用いて樹脂被覆層を構成してもよい。2種類以上の樹脂を用いる場合は、2種類以上の樹脂を混合して1層の樹脂被覆層を形成してもよいし、複数層の樹脂被覆層を形成してもよい。例えば、フェライト粒子の表面に、フェライト粒子と密着性の良好な第一の樹脂被覆層を設け、当該第一の樹脂被覆層の表面に、当該キャリアに所望の帯電付与性能を付与するための第二の樹脂被覆層を設けることなども好ましい。
【0058】
(2)樹脂被覆量
フェライト粒子の表面を被覆する樹脂量(樹脂被膜量)は、電子写真現像剤用キャリア芯材として用いるフェライト粒子に対して0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。当該樹脂被覆量を0.1重量%以上とすることで、フェライト粒子の表面を樹脂で十分被覆することができ、所望の帯電付与能力を得ることができるようになる。また、当該樹脂被覆量を10重量%以下とすることで、製造時にキャリア粒子同士の凝集が発生しにくくなるため、歩留まり低下等の生産性の低下、及び実機内での現像剤の流動性又はトナーに対する帯電付与性等の現像剤特性の変動を抑えることができる。
【0059】
(3)添加剤
樹脂被覆層には、導電剤や帯電制御剤等のキャリアの電気抵抗や帯電量、帯電速度をコントロールすることを目的とした添加剤が含まれていてもよい。
【0060】
導電剤としては、例えば、導電性カーボン、酸化チタンや酸化スズ等の酸化物、又は、各種の有機系導電剤が挙げられる。但し、導電剤の電気抵抗は低いため、導電剤の添加量が多くなりすぎると、電荷リークを引き起こしやすくなる。そのため、導電剤の含有量は、被覆樹脂の固形分に対して0.25重量%以上20.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上15.0重量%以下であることがより好ましく、1.0重量%以上10.0重量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
帯電制御剤としては、例えば、トナー用に一般的に用いられる各種の帯電制御剤や、シランカップリング剤が挙げられる。これらの帯電制御剤やカップリング剤の種類は特に限定されないが、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等の帯電制御剤や、アミノシランカップリング剤やフッ素系シランカップリング剤等を好ましく用いることができる。帯電制御剤の含有量は、被覆樹脂の固形分に対して0.25重量%以上20.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上15.0重量%以下であることがより好ましく、1.0重量%以上10.0重量%以下であることがさらに好ましい。
【0062】
3.電子写真現像剤
次に、本発明に係る電子写真現像剤の実施の形態について説明する。当該電子写真現像剤は、上記の電子写真現像剤用キャリアとトナーとを含む。
【0063】
(1)トナー
当該電子写真現像剤を構成するトナーとしては、例えば、重合法により製造される重合トナー及び粉砕法によって製造される粉砕トナーのいずれも好ましく用いることができる。これらのトナーは各種の添加剤を含んでいてもよく、上記キャリアと組み合わせて電子写真現像剤として使用することができる限り、どのようなものであってもよい。
【0064】
トナーの体積平均粒径(累積50%粒子径D50)は、2μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上10μm以下であることがより好ましい。トナーの体積平均粒径(累積50%粒子径D50)が上記の範囲内であると、高画質な電子写真印刷を可能とする電子写真現像剤を得ることができる。
【0065】
キャリアとトナーとの混合比に関しては、トナー濃度が3重量%以上15重量%以下であることが好ましい。トナーを上記の濃度で含む電子写真現像剤は、所望の画像濃度が得られやすく、カブリやトナー飛散をより良好に抑制することができる。一方、電子写真現像剤を補給用現像剤として用いる場合には、キャリア1重量部に対してトナー2重量部以上50重量部以下であることが好ましい。
【0066】
(2)電子写真装置への適用
本発明に係る電子写真現像剤は、磁気ドラム等にキャリアを磁力により吸引付着させてブラシ状にしてトナーを搬送し、バイアス電界を付与しながら、感光体上等に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像を形成する磁気ブラシ現像法を適用した各種電子写真現像装置に好適に用いることができる。本発明に係る電子写真現像剤は、バイアス電界を付与する際に、直流バイアス電界を用いる電子写真現像装置だけでなく、直流バイアス電界に交流バイアス電界を重畳した交番バイアス電界を用いる電子写真現像装置にも用いることができる。
【実施例0067】
<実施例1>
主成分原料としてのMnO原料、MgO原料、及びFe原料を、MnO:MgO:Fe換算モル比で39.0:10.0:51.0となるように秤量した。また、SrO原料を、主成分原料:SrO換算モル比が100:0.8になるように秤量した。なお、Mn原料としては四酸化三マンガンを用い、MgO原料としては酸化マグネシウムを用い、Fe原料としては酸化第二鉄を用い、SrO原料としては炭酸ストロンチウムを用いた。
【0068】
次いで、秤量した原料を乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)で5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにより約1mm角のペレットにした。得られたペレットを目開き3mmの振動篩により粗粉を除去し、次いで、目開き0.5mmの振動篩により微粉を除去した。その後、ペレットを連続式電気炉に入れて900℃で3時間加熱することで、仮焼成を行った。次いで、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)を用いて、平均粒径(D50)が約5μmになるまで6時間粉砕した。
【0069】
得られた粉砕物に水を加え、湿式のメディアミル(横型ビーズミル、1mm径のジルコニアビーズ)を用いて6時間粉砕し、得られたスラリーの粒径(粉砕の一次粒子径)をレーザー回折式粒度分布測定装置(LA-950、堀場製作所製)で測定したところ、平均粒径(D50)は約2.3μmであった。さらに、得られたスラリーに分散剤を適量添加し、バインダーとしてPVA(ポリビニルアルコール)を固形分(スラリー中の仮焼成物量)に対して0.5重量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒・乾燥した。得られた造粒物の粒度調整を行うことで、平均粒径(D50)が約42μmの造粒物Aを得た。
【0070】
また、主成分原料としてMnO原料、MgO原料、及びFe原料を、MnO:MgO:Fe換算モル比で39.0:10.0:51.0となるように秤量したこと、及び、SrO原料を、主成分原料:SrO換算モル比が100:1.2になるように秤量したこと以外は造粒物Aと同様の方法により、平均粒径(D50)が約55μmの造粒物Bを得た。なお、造粒物の粒径は、スプレードライヤーでの造粒時のアトマイザー回転数を調整することで行い、かつ粒度調整を行った。
【0071】
そして、上記で得られた造粒物Aと造粒物Bを2:1の割合で混合した造粒物を、ロータリー式電気炉を用いて大気雰囲気下で950℃にて2時間加熱することで、一次焼成を行った。その後、トンネル式電気炉により、焼成温度(保持温度)1200℃、酸素濃度0.3体積%雰囲気下で3時間保持することにより、造粒物の本焼成を行った。このとき、昇温速度を200℃/時、冷却速度を150℃/時とした。得られた焼成物をハンマークラッシャーにより解砕し、さらにジャイロシフター(振動篩機)及びターボクラシファイア(気流分級機)により分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別することで、フェライト粒子を得た。
【0072】
<実施例2~9及び比較例1~3>
造粒物A及び造粒物Bの製造で用いた原料の配合量、並びに造粒物A及び造粒物Bの平均粒径(D50)を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フェライト粒子を得た。なお、実施例8においては、SrO原料の代わりにCaO原料として炭酸カルシウムを用いた。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1~9及び比較例1~3で得られたフェライト粒子について、以下の点を評価した。結果を表2に示す。
【0075】
<元素分析>
フェライト粒子中の金属成分の含有率は、化学分析(ICP)により測定した。具体的には、まず、フェライト粒子0.2gを秤量し、これに純水60mlと1Nの塩酸20ml及び1Nの硝酸20mlを加えたものを加熱して、フェライト粒子を完全溶解させた水溶液を準備した。得られた水溶液をICP分析装置(ICPS-1000IV、島津製作所製)にセットし、金属成分であるFe、Mn、Mg、Sr、Caの含有率を測定した。
【0076】
<粒度分布>
フェライト粒子の粒度分布は、レーザー回折散乱法により測定した。具体的には、まず、フェライト粒子10gと水80mlを100mlのビーカーに入れ、分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を2滴~3滴添加した。次いで、超音波ホモジナイザー(UH-150型、エスエムテー製)を用い、出力レベル4に設定して、20秒間分散を行った後、ビーカー表面にできた泡を取り除くことにより、測定サンプルを調製した。そして、マイクロトラック粒度分析計(Model MT3300II、日機装製)を使用し、屈折率2.42の条件で測定サンプル中のフェライト粒子の粒度分布を測定し、体積基準による粒度分布における累積50%粒子径D50(μm)、粒子径22μm以下の粒子の割合D-22(体積%)、及び粒子径62μm以上の粒子の割合D+62(体積%)を算出した。また、個数基準による粒度分布における粒子径40μm以上の粒子の割合P+40(個数%)を算出した。
【0077】
<磁化>
フェライト粒子の残留磁化は、振動試料型磁気測定装置(VSM-C7-10A、東英工業製)により測定した。具体的には、まず、フェライト粒子を内径5mm、高さ2mmのセルに充填し上記装置にセットした。そして、磁場を印加し、1K・1000/4π・A/m(=1kOe)まで掃引した。次いで、印加する磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作成した。このカーブのデータから残留磁化を測定した。
【0078】
<表面性>
フェライト粒子の表面性の評価として、表面粗さRz(μm)及び前記表面粗さRzの標準偏差Rzσ(μm)を測定した。具体的には、まず、ハイブリッドレーザーマイクロスコープ(mc2000、レーザーテック製)を用いて、測定対象とするフェライト粒子(測定対象粒子)表面の3次元形状を取得した。なお、前処理としてスライドガラス上に両面テープを貼り、粘着面にフェライト粒子を振りかけてフェライト粒子をスライドガラス上に固定した。また、光源としてはキセノンランプを用い、対物レンズの倍率を100倍とし、測定対象粒子を選択して、その表面の3次元形状を装置付属のソフトウェアLMeye7のオート撮影機能により取得した。
【0079】
上記のようにして取得した測定対象粒子の3次元画像上に15.0μmの線分21本を0.75μm間隔で引き、各線分上の測定断面曲線を抽出した。得られた各測定断面曲線に輪郭曲線フィルタによる補正をそれぞれ行い、粗さ曲線を取り出した。そして、輪郭曲線フィルタのカットオフ値として、粗さ成分とそれより短い波長成分を分離するλs、粗さ成分とうねり成分を分離するλcを用い、それぞれのカットオフ値をλs=0.0025mm、λc=0.0800mmをとし、得られた粗さ曲線から表面粗さRz(μm)を算出した。このようにして、21本の線分に基づき得た表面粗さRz(μm)の平均値を各測定対象粒子のRz(μm)とした。同様の手順で測定対象粒子30粒子分の表面粗さRzの値の平均値を各フェライト粒子の表面粗さRz(μm)とし、また、その標準偏差Rzσ(μm)を算出した。
【0080】
<EDX>
粒子表面のSr又はCaの割合(原子%)は、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)で測定した。なお、EDX分析では、フェライト粒子の数μm程度の深さにおける元素の含有量を測定することができる。具体的には、まず、走査電子顕微鏡(SEM、SU8020、日立ハイテクノジーズ製)にて、加速電圧を20kV、WDを15mm、倍率150倍の条件で、フェライト粒子の画像を撮影した。続いて、得られた画像をエネルギー分散型X線分析装置(EMax X-Max50、堀場製作所製)に取り込み、粒子の重なりがなく粒子径が35μm以下の粒子を領域選択により選定した。なお、最小フェレ径と最大フェレ径の比が1.0以上1.2以下の粒子に限定して選択し、この範囲内であれば2個以上の粒子が凝集した粒子も選択した。そして、Fe、Mn、Mg、Sr、及びCaなどの構成元素を対象としてマッピング収集を行い、得られたX線スペクトルピークからSr又はCaの割合(原子%)を算出した。このようにして測定した100粒子のSr又はCaの割合(原子%)の平均値を、粒子径35μm以下の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合X(原子%)とした。粒子径40μm以上の粒子に対しても同様の操作を行い、粒子径40μm以上の粒子表面の元素マッピングにおけるSr又はCaの割合Y(原子%)を算出した。
【0081】
<帯電性>
フェライト粒子(キャリア芯材)の帯電性の評価として、常温常湿(N/N)環境下での帯電量QN/N及びその標準偏差QN/Nσを測定した。なお、帯電量測定装置としては、円筒形のアルミ素管(スリーブ)と、スリーブの内側に配置されたマグネットロールと、スリーブの外側を取り囲むように配置された円筒状の電極とからなる装置を用いた。スリーブの直径は31mm、長さは76mmである。マグネットロールは、合計8極の磁石(磁束密度0.1T)が、そのN極とS極が交互となるように配置した構造を有している。円筒形のスリーブと円筒状の電極は、その間のギャップが5.0mmとなるようにセットされている。
【0082】
常温常湿(N/N)環境下での帯電量及び帯電量分布の測定は、次のようにして行った。まず、フェライト粒子(キャリア芯材)と、フルカラープリンターに使用されている市販の負極性トナー(シアントナー、富士ゼロックス製DocuPrintC3530用)とを、トナー濃度が7.5重量%、総重量が50gとなるように秤量した。秤量したフェライト粒子とトナーを、温度20℃及び相対湿度55%の常温常湿環境下に12時間以上暴露した。その後、フェライト粒子とトナーを50mlのガラス瓶に入れ、120rpmの回転数にて30分間撹拌を行なって現像剤とした。
【0083】
得られた現像剤0.5gを、帯電量測定装置のスリーブ上に均一に付着させた。次に、スリーブを固定したまま、内側のマグネットロールを100rpmの回転数で回転させ、その状態で、外側の電極とスリーブの間に、直流電圧2000Vを60秒間印加した。電圧印加により、現像剤中のトナーは外側の電極に移行した。このとき、円筒状の電極にエレクトロメーター(絶縁抵抗計model6517A、KEITHLEY製)をつなぎ、移行したトナーの電荷量を測定した。60秒経過後に印加電圧を切り、マグネットロールの回転を止め、外側の電極を取り外し、電極に移行したトナーを回収して、その重量を測定した。そして、測定されたトナーの電荷量と重量から、帯電量QN/N(μC/g)を計算した。
【0084】
また、上記で得られた現像剤について、帯電量・粒子径分布測定装置(E-SPART Analyzer EST-G、ホソカワミクロン製)を用いて、帯電量分布を測定した。測定は、現像剤を電磁石に保持させ、適正圧力の窒素ガスを吹き付けることにより、トナーのみを現像剤から分離し、測定装置の測定部に導入した。3000個のトナーに対して解析を行い、粒径あたりの帯電量の標準偏差QN/Nσ(μC/g)を計算した。
【0085】
【表2】
【0086】
以上の結果より、実施例1~9で得られたフェライト粒子は、帯電付与能力が高く、帯電量分布がシャープであることが分かる。