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特開2024-141071活性エネルギー線硬化型インキ、その製造方法、および印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141071
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インキ、その製造方法、および印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20241003BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052514
(22)【出願日】2023-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和哉
(72)【発明者】
【氏名】福地 良寿
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AE04
4J039BC20
4J039CA02
4J039EA04
4J039GA02
(57)【要約】
【課題】活性エネルギー線による硬化性を有し、印刷時のインキミストやインキ壺逃げトラブルの解消および印刷物の湿熱ブロッキングを向上させた活性エネルギー線硬化型インキの提供を目的とする。
【解決手段】ウレタン(メタ)アクリレート(A)、および、(A)以外の(メタ)アクリル化合物(B)を含有する活性エネルギー線硬化型インキであって、
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度が、4.0~8.0mmol/gの範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、および、(A)以外の(メタ)アクリル化合物(B)を含有する活性エネルギー線硬化型インキであって、
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度が、4.0~8.0mmol/gの範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)との反応物であることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項3】
水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)が、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、および、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項4】
ポリオール化合物(a2)が、炭素数3~20のポリオール化合物、および、 炭素数3~20のポリオール化合物のアルキレンオキサイド変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項5】
ポリオール化合物(a2)が、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、ペンタエリスリトール、並びに、これらのアルキレンオキサイド変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項6】
ポリオール化合物(a2)の水酸基価が、125~1850mgKOH/gであることを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項7】
イソシアネート化合物(a3)が、ジイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項8】
イソシアネート化合物(a3)中に含有しているイソシアネート基のモル数(a3')に対する水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)中に含有している水酸基のモル数(a1')の割合[(a1')/(a3')]が、0.2~0.6の範囲であることを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項9】
請求項2記載の活性エネルギー線硬化型インキの製造方法であって、
水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)とを、(メタ)アクリル化合物(B)中で反応させてウレタン(メタ)アクリレート(A)を得る工程を含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インキの製造方法。
【請求項10】
基材上に、請求項1~8いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキの硬化物を有することを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にして有用なる活性エネルギー線硬化型インキ、その製造方法、および印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷の短納期化・環境対応の要求が高まりから従来使用されていた油性インキに替わり、速乾性で溶剤を使用しない活性エネルギー線硬化型インキの使用が拡大している。活性エネルギー線硬化型インキはアクリルエステル化合物のような活性エネルギー線硬化性を有する不飽和化合物を構成成分として含有しており、活性エネルギー線照射とともに瞬時に硬化し、上記不飽和化合物の3次元架橋による強靭な皮膜を形成する。瞬時に硬化することから、印刷直後に後加工を行うことが出来るため、生産性向上および意匠の保護のため強い皮膜が要求される包装用パッケージ印刷や商業分野におけるフォーム印刷等において活性エネルギー線硬化型インキが好適に使用されている。
【0003】
活性エネルギー線硬化型インキには、印刷適性を付与する目的としてジアリルフタレート樹脂に代表されるバインダー樹脂を用いることが多いが、ほとんどのバインダー樹脂には(メタ)アクリロイル基がないため活性エネルギー線硬化型インキの硬化膜中で3次元架橋形成に関与せず、結果としてインキの硬化性を劣化させてしまう課題がある。一方で、(メタ)アクリロイル基を有するバインダー樹脂であるウレタンアクリレートを用いることでインキの硬化性の課題を解決することができる。例えば、特許文献1には、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリオール、ポリメリックMDIを原料とし、(メタ)アクリル基濃度が1.5~3.9mmol/gの範囲となるウレタンアクリレートを用いたインキが開示されている。特許文献2では、ペンタエリスリトールトリアクリレート、分子量1000のポリプロピレングリコール、イソホロンジイソシアネートを原料としたウレタンアクリレートを用いたインキが開示されている。しかし、特許文献2のウレタンアクリレートの(メタ)アクリル基濃度は1.6mmol/g程度にとどまる。印刷現場では更なる生産性向上や活性エネルギー線の照射量の削減が求められている為、ウレタンアクリレートへの更なる(メタ)アクリロイル基の導入によるインキの硬化性向上が求められている。
【0004】
また、油性インキと比較して活性エネルギー線硬化型インキは、印刷機内のローラーの回転によりインキミストが発生しやすく印刷機が汚れるトラブルや、インキの流動性が乏しいために印刷時にインキ壺からインキがローラーに掻き取られなくなるトラブル(インキ壺逃げ)が発生しやすいといった問題点が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/63625号
【特許文献2】特開昭60-161468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、印刷適性、および硬化性を向上させた活性エネルギー線硬化型インキの提供、並びにその印刷物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、(メタ)アクリル基濃度が4.0~8.0mmol/gの範囲となるウレタンアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型インキは、印刷時のインキミストおよび壺逃げトラブルを解消し、硬化性の優れたインキとなることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、および、(A)以外の(メタ)アクリル化合物(B)を含有する活性エネルギー線硬化型インキであって、
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度が、4.0~8.0mmol/gの範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキに関するものである。
【0009】
また、本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)との反応物であることを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インキに関するものである。
【0010】
また、本発明は、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)が、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、および、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インキに関するものである。
【0011】
また、本発明は、ポリオール化合物(a2)が、炭素数3~20のポリオール化合物、および、 炭素数3~20のポリオール化合物のアルキレンオキサイド変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インキに関するものである。
【0012】
また、本発明は、ポリオール化合物(a2)が、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、ペンタエリスリトール、並びに、これらのアルキレンオキサイド変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インキに関するものである。
【0013】
また、本発明は、ポリオール化合物(a2)の水酸基価が、125~1850mgKOH/gであることを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インキに関するものである。
【0014】
また、本発明は、イソシアネート化合物(a3)が、ジイソシアネート化合物であることを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インキに関するものである。
【0015】
また、本発明は、イソシアネート化合物(a3)中に含有しているイソシアネート基のモル数(a3')に対する水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)中に含有している水酸基のモル数(a1')の割合[(a1')/(a3')]が、0.2~0.6の範囲であることを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インキに関するものである。
【0016】
また、本発明は、上記活性エネルギー線硬化型インキの製造方法であって、
水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)とを、(メタ)アクリル化合物(B)中で反応させてウレタン(メタ)アクリレート(A)を得る工程を含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インキの製造方法に関するものである。
【0017】
また、本発明は、基材上に、上記活性エネルギー線硬化型インキの硬化物を有することを特徴とする印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、印刷適性、および硬化性を向上させた活性エネルギー線硬化型インキの提供、並びにその印刷物の提供ができた。これは、工業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下に記載の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、ウレタン(メタ)アクリレート(A)および(A)以外の(メタ)アクリル化合物(B)を含有しており、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度が4.0~8.0mmol/gの範囲であることを特徴とする。ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度が4.0~8.0mmol/gの範囲では、優れた印刷適性と硬化性を兼備することが可能となる。(メタ)アクリル基濃度が4.0mmol/g未満ではインキの硬化性が悪化し、8.0以上では印刷適性が発現する構造の導入が困難となる。ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度は、好ましくは、4.5~7.5mmol/gの範囲であり、より好ましくは、5.0~7.0mmol/gの範囲である。
【0021】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量は、印刷適性と硬化性の観点からインキ全量に対して、5~40質量%が好ましく、更に10~30質量%がより好ましい。
【0022】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(A)の好ましい形態としては、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)との反応物が挙げられる。
【0023】
(水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1))
水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート類、グリセリンポリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)は、それぞれ単独で使用しても良く、また2種以上を併用しても良い。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度を4.0~8.0mmol/gとする点から、ペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ポリペンタエリスリトールポリアクリレートを使用することが好ましく、さらに、インキ流動性の観点からジペンタエリスリトールポリアクリレートを使用することが好ましい。
【0024】
((a1)以外のポリオール化合物(a2))
(a1)以外のポリオール化合物(a2)としては、分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物を使用することができる。ポリオール化合物(a2)として好ましくは炭素数3~20のポリオール化合物、および炭素数3~20のポリオール化合物のアルキレンオキサイド変性物を使用することであり、これらの使用によりインキの印刷適性が向上する。ポリオール化合物(a2)として更に好ましくは、水酸基価が125~1850mgKOH/gの範囲であるポリオール化合物を使用することであり、これらの使用によりインキの硬化性が向上する。
【0025】
炭素数3~20のポリオール化合物としては、直鎖状アルキレン2価アルコールである1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,2-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、1,2-エイコサンジオール等が、
分岐状アルキレン2価アルコールであるネオペンチルグリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ジメチルペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が、
環状アルキレン2価アルコールである1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノール、水添ビスフェノールS等が挙げられる。
また、3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、イノシトール等が挙げられる。
これらの炭素数3~20のポリオール化合物は、それぞれ単独で使用しても良く、また2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に入手のしやすさの観点から1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を使用することが好ましい。
【0026】
炭素数3~20のポリオール化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、上記の炭素数3~20のポリオール化合物に対してエチレンオキサイド変性(EO変性)、プロピレンオキサイド変性(PO変性)、ブチレンオキサイド変性(BO変性)等のアルキレンオキサイド変性を行った化合物が挙げられる。炭素数3~20のポリオール化合物のアルキレンオキサイド変性物は、それぞれ単独で使用しても良く、また2種以上を併用しても良い。
炭素数3~20のポリオール化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、サンニックスPPシリーズ(三洋化成工業(株)製、ポリプロピレングリコール)、PTMGシリーズ(三菱ケミカル(株)製、ポリテトラメチレングリコール)、ユニオックスGシリーズ(日油(株)製、エチレンオキサイド変性グリセリン)、サンニックスGPシリーズ(三洋化成工業(株)製、プロピレンオキサイド変性グリセリン)、サンニックスTPシリーズ(三洋化成工業(株)製、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパン)、ウィルブライドS-753D(日油(株)製、EOPOBO変性グリセリン)等が挙げられる。
【0027】
(イソシアネート化合物(a3))
イソシアネート化合物(a3)としては、トリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、ミリオネートMR400(東ソー(株)製、ポリメリックMDI)等が挙げられる。これらのうち反応制御の点からジイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0028】
(ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造方法)
水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)との反応物の製造方法について説明する。
水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)、(a1)以外のポリオール化合物(a2)、およびイソシアネート化合物(a3)との反応は、同時に行っても良く、予め水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)およびイソシアネート化合物(a3)を反応させた後に、ポリオール化合物(a2)を反応させても良い。イソシアネート化合物(a3)を介して水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)をポリオール化合物(a2)へ確実に反応させることができるため、予め水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)およびイソシアネート化合物(a3)を反応させた後に、ポリオール化合物(a2)を反応させることがより好ましい。
イソシアネート化合物(a3)中に含有しているイソシアネート基のモル数(a3’)に対する水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)中に含有している水酸基のモル数(a1’)の割合[(a1’)/(a3’)]は、0.2~0.6の範囲であることが好ましい。[(a1’)/(a3’)]が0.2~0.6の範囲にあることでウレタン(メタ)アクリレート(A)の分子量が好適となり印刷適性が向上する。
【0029】
反応は無触媒でも進行するが、触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの3級アミン系の触媒、スズ、亜鉛などの金属系の触媒などが挙げられるが、反応性の観点から2-エチルヘキサン酸スズが好ましい。
必要に応じて溶剤中で反応させることもできるが、後述の(メタ)アクリル化合物(B)中で反応させることもでき、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を(メタ)アクリル化合物に溶解する工程および溶剤を除去する工程を省けるため好ましい。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の分子量としては、印刷適性の観点から重量平均分子量として2000~30000の範囲が好ましい。
なお、本発明において、重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミネイションクロマトグラフィ(HLC-8320)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
【0031】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)に含まれる(メタ)アクリロイル基の個数としては、印刷適性と硬化性の観点から1分子あたり4~50個が好ましく、更に、1分子あたり7~30個がより好ましい。
【0032】
((メタ)アクリル化合物(B))
本発明のインキで用いられる(メタ)アクリル化合物(B)の含有量としては、インキ全量に対して、10~90質量%であり、より好ましくは20~85質量%であり、さらに好ましくは30~80質量%である。
【0033】
(メタ)アクリル化合物(B)としては、特に限定されるものではなく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の単官能(メタ)アクリル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=2~20)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=2~20)、アルカン(炭素数4~12)グリコールジ(メタ)アクリレート、アルカン(炭素数4~12)グリコールエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジ(メタ)アクリレート、アルカン(炭素数4~12)グリコールプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリル化合物、
グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリル化合物、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリル化合物、
ポリエステル(メタ)アクリレート、(A)以外のウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、
およびこれらの混合物が挙げられる。
これらの中でも、硬化性の観点から2官能以上の(メタ)アクリル化合物を用いることが好ましい。また、(B)全量中における2官能以上の(メタ)アクリル化合物の割合は硬化性の観点から40~100質量%が好ましい。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、要求される硬化被膜物性に応じて、(B)以外の活性エネルギー線硬化性化合物を使用することが可能である。
【0035】
(B)以外の活性エネルギー線硬化性化合物としては、ビニル化合物を使用することができ、スチレン、N-ビニルピロリドン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは着色剤として顔料を添加することができる。顔料を含有しない場合には、透明なOPニスになり、顔料を含有させた場合には有色のインキとなる。
【0037】
顔料としては、無機顔料および有機顔料を示すことができる。無機顔料としては黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉、ベンガラなどが、有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系などの溶性アゾ顔料、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系などの多環式顔料および複素環式顔料などの公知公用の各種顔料が使用可能である。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキには、必要に応じて樹脂を用いることができる。
本発明で用いることができる樹脂としては、特に限定されるものではなく、ジアリルオルソフタレート樹脂、ジアリルイソフタレート樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油(系)樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体、等が挙げられる。これらの樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキには、必要に応じて光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、光開裂型開始剤および水素引き抜き型重合開始剤が挙げられる。
【0040】
光開裂型開始剤としては、α-(ジメチル)アミノアルキルフェノン化合物およびα-モルフォリノアルキルフェノン化合物が挙げられる。
【0041】
より具体的には、α-(ジメチル)アミノアルキルフェノン化合物として、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1または2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられ、α-モルフォリノアルキルフェノン化合物として、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
さらに、水素引き抜き型重合開始剤としては、ジアルキルベンゾフェノン化合物およびチオキサントン化合物が挙げられる。
【0043】
より具体的には、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物として、4,4’-ビス-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の4,4’-ジアルキルアミノベンゾフェノン類、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等が挙げられジアルキルアミノベンゾフェノン化合物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。チオキサントン化合物としては、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-ジイソプロピルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9Hチオキサントン-2-イロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミン塩酸塩などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
増感剤としては、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、2,3,4-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3‘-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、〔4-(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノン、(4-ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-スチリルプロパン-1-オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキには、必要に応じてその他の添加剤を使用することが可能である。
【0046】
インキの保存安定性を付与する添加剤として、ラジカル重合禁止剤を添加することができる。
ラジカル重合禁止剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p -ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0047】
また、耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性を付与する添加剤として、ワックスを添加することができる。
ワックスとしては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物などの合成ワックス等が挙げられる。
【0048】
その他、要求性能に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤等の添加剤を添加することができる。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、インキ全体に対して、顔料0~30質量%、ウレタン(メタ)アクリレート(A)5~40質量%、(メタ)アクリル化合物(B)20~80質量% 、樹脂0~30質量%、光重合開始剤および/または増感剤0~20質量%、その他添加剤0~10質量%からなる組成にて調整される。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキの製造方法は、従来の活性エネルギー線硬化型インキと同様の方法によって行えばよく、例えば、常温から100℃の間で、上記顔料、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリル化合物(B)、重合禁止剤、光重合開始剤および増感剤、その他添加剤などインキ組成物成分を、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサーなどの練肉、混合、調整機を用いて製造される。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、活性エネルギー線硬化して硬化物となる。
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、基材上に印刷され、活性エネルギー線硬化されて、印刷物となる。
印刷方法としては、平版印刷(湿し水を使用する通常の平版印刷および湿し水を使用しない水無し平版印刷)、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷などが挙げられ、好ましくは平版印刷である。
【0052】
印刷物の基材としては、特に制限はなく、紙、プラスチック、シール、ラベル、金属などあらゆる材料への印刷が挙げられ、好ましくは紙への印刷である。
【0053】
本発明において、インキを活性エネルギー線にて硬化する方法に特に制限はなく、活性エネルギー線源として公知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等のLED(発光ダイオード)、電子線、ガス・固体レーザーなどが挙げられる。
【実施例0054】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、本発明において、「部」は、「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0055】
(製造例1)
攪拌機、冷却器、温度計、ガス導入管を備えた4つ口フラスコ内に水酸基を1個以上有するMIRAMER M500((メタ)アクリル化合物(a1)と(メタ)アクリル化合物(B)との混合物)を70.9部、イソシアネート化合物(a3)であるトルエン-2,4-ジイソシアネート11.8部、(メタ)アクリル化合物(B)であるMIRAMER M600を9.6部とLAROMER LR8863を5.0部、触媒として2-エチルヘキサン酸スズを0.01部、重合禁止剤としてターシャリーブチルヒドロキノン0.2部を入れ、撹拌しながら空気を吹き込み100℃で1時間反応させた。次いで、(a1)以外のポリオール化合物(a2)としてプロピレングリコールを2.6部入れ、さらに110℃で5時間反応させ樹脂組成物1を得た。この反応における[(a1')/(a3')]の値は0.5であり、得られたウレタンアクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度は6.79mmol/gであった。
【0056】
(製造例2~30、33~38、40)
表1の組成に従って、各原料を変更した以外は製造例1と同様にして樹脂組成物2~30、33~38、40を得た。
【0057】
(製造例31)
攪拌機、冷却器、温度計、ガス導入管を備えた4つ口フラスコ内に水酸基を1個以上有するMIRAMER M500((メタ)アクリル化合物(a1)と(メタ)アクリル化合物(B)との混合物)を71.6部、(a1)以外のポリオール化合物(a2)であるグリセリンを2.1部、イソシアネート化合物(a3)であるトルエン-2,4-ジイソシアネート11.9部、(メタ)アクリル化合物(B)であるMIRAMER M600を9.2部とLAROMER LR8863を5.0部、触媒として2-エチルヘキサン酸スズを0.01部、重合禁止剤としてターシャリーブチルヒドロキノン0.2部を入れ、撹拌しながら空気を吹き込み110℃で5時間反応させ樹脂組成物31を得た。この反応における[(a1')/(a3')]の値は0.5であり、得られたウレタンアクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度は6.86mmol/gであった。
【0058】
(製造例32)
表1の組成に従って、各原料を変更した以外は製造例31と同様にして樹脂組成物32を得た。
【0059】
(製造例39)
攪拌機、冷却器、温度計、ガス導入管を備えた4つ口フラスコ内に水酸基を1個以上有するMIRAMER M500((メタ)アクリル化合物(a1)と(メタ)アクリル化合物(B)との混合物)を92.1部、イソシアネート化合物(a3)であるトルエン-2,4-ジイソシアネート7.7部、触媒として2-エチルヘキサン酸スズを0.01部、重合禁止剤としてターシャリーブチルヒドロキノン0.2部を入れ、撹拌しながら空気を吹き込み100℃で5時間反応させ樹脂組成物39を得た。この反応における[(a1')/(a3')]の値は1.0であり、得られたウレタンアクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度は8.18mmol/gであった。
【0060】
【表1】
【0061】
【表1】
【0062】
表1中に記載した材料の詳細を以下に記載する。
・(メタ)アクリル化合物(a1)
アロニックスM306:東亞合成(株)製、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート=70/30(質量比)の混合物
MIRAMER M500:美源スペシャリティケミカル(株)製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート=50/50(質量比)の混合物
ビスコート#802:大阪有機化学工業(株)製、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート
HEA:大阪有機化学工業(株)製、2-ヒドロキシエチルアクリレート
4-HBA:大阪有機化学工業(株)製、4-ヒドロキシブチルアクリレート
・ポリオール化合物(a2)
サンニックスPP-600:三洋化成工業(株)製、ポリプロピレングリコール
PTMG-250:三菱ケミカル(株)製、ポリテトラメチレングリコール
ユニオックスG-450:日油(株)製、エチレンオキサイド変性グリセリン
サンニックスGP-250:三洋化成工業(株)製、プロピレンオキサイド変性グリセリン
サンニックスTP-400:三洋化成工業(株)製、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパン
ウィルブライドS-753D:日油(株)製、EOPOBO変性グリセリン
ニューポールBP-2P:三洋化成工業(株)製、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA
ニューポールBPE-20T:三洋化成工業(株)製、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA
サンニックスPP-1200:三洋化成工業(株)製、ポリプロピレングリコール
・イソシアネート化合物(a3)
ミリオネートMR400:東ソー(株)製、ポリメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)
・(メタ)アクリル化合物(B)
MIRAMER M600:美源スペシャリティケミカル(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
LAROMER LR8863:BASF社製、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
・重合禁止剤
TBHQ:ターシャリーブチルハイドロキノン
【0063】
(実施例1~34、比較例1~8)
表2の組成に従って、実施例1~34および比較例1~8の活性エネルギー線硬化型インキを三本ロールミルにて練肉することによって得た。得られた活性エネルギー線硬化型インキの印刷適性を評価する方法として印刷機上での「インキミスト」および「インキ壺逃げ」、硬化性を評価する方法として印刷物の「湿熱ブロッキング」を調べた。その結果を合わせて表2に示す。
【0064】
<インキミストの測定方法>
オフセット枚葉印刷機LITHRONE L426(小森コーポレーション)にて下記条件にて10000枚/時の速度で印刷を行った。印刷時に印刷機の安全カバーの内側に白紙を張り付け、10,000通し後に白紙を取り出し、インキの飛散の程度を評価した。◎、○および△が実用レベルである。
(評価基準)
◎:白紙の一部分に微量のインキミストが飛散している
○:白紙全面に薄くインキミストが飛散している
△:白紙全面にやや厚くインキミストが飛散している
×:白紙全面にベッタリとインキミストが飛散している

(印刷条件)
印刷機:LITHRONE26 (小森コーポレーション社製)
用紙:王子製紙株式会社製、ОKトップコート+(79.1g/m2
印刷速度:10000枚/時
ランプ:アイグラフィックス社製、メタルハライドランプ(出力120W/cm、1灯使用)
【0065】
<インキ壺逃げの評価方法>
上記と同様の印刷中のインキ壺にてインキが供給ローラーに掻き取られない「インキ壺逃げ」トラブル発生の有無を観察した。◎、○および△が実用レベルである。
(評価基準)
◎:60分以上発生しない
○:30分以上60分未満発生しない
△:10分以上30分未満発生しない
×:10分未満で発生する
【0066】
<湿熱ブロッキングの評価方法>
コート紙(王子製紙社製OKトップコートプラス)へRIテスター(簡易展色機)を用いてインキを1g/m2の塗布量で展色し、メタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製、出力:96W/cm、ランプ距離:10cm)を用いてコンベア速度を変えて(80、100、120m/分)硬化させ印刷物を得た。次いで印刷物を4cm×5cm角に切り出し、インキ印刷面同士を重ね合わせて温度:40℃、湿度:80%RH、荷重:2kg/cm2、時間:24時間の条件にてブロッキングさせた後、印刷物の状態にて評価を行った。◎、○および△が実用レベルである。
(評価基準)
◎:印刷面の変化なし
○:印刷面の一部(面積の10%未満)に剥離が見られる
△:印刷面の一部(面積の10%以上50%未満)に剥離が見られる
×:印刷面の一部(面積の50%以上)、又は全部に剥離が見られる
【0067】
【表2】
【0068】
【表2】
【0069】
【表2】
【0070】
【表2】
【0071】
表2中に記載した材料の詳細を以下に記載する。
・顔料
カーボンブラック:三菱化学社製、カーボンブラックMA11
・光重合開始剤
Omnirad379EG:iGM RESINS社製、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン
KAYACURE DETX-S:日本化薬社製、2,4-ジエチルチオキサントン
【0072】
本発明の実施例1~32は、「インキミスト」および「インキ壺逃げ」、「湿熱ブロッキング」の評価が良好な一方で、比較例7、8ではインキの弾性低下のためインキミストが悪化した。
また、比較例1~6、8ではウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度が4.0mmol/g未満のため湿熱ブロッキングが悪化した。更に、比較例1~4、7では、インキの流動性不良を起こしインキ壺逃げが発生した。
これらのことから、本発明はインキミストやインキ壺逃げ、硬化性に優れており、印刷時のトラブルを解消できる活性エネルギー線硬化型インキを得ることができることが分かった。



【手続補正書】
【提出日】2023-10-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、および、(A)以外の(メタ)アクリル化合物(B)を含有する活性エネルギー線硬化型インキであって、
ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)との反応物であり、
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度が、4.0~8.0mmol/gの範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項2】
水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)が、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、および、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項3】
ポリオール化合物(a2)が、炭素数3~20のポリオール化合物、および、 炭素数3~20のポリオール化合物のアルキレンオキサイド変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項4】
ポリオール化合物(a2)が、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、ペンタエリスリトール、並びに、これらのアルキレンオキサイド変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項5】
ポリオール化合物(a2)の水酸基価が、125~1850mgKOH/gであることを特徴とする請求項記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項6】
イソシアネート化合物(a3)が、ジイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項7】
イソシアネート化合物(a3)中に含有しているイソシアネート基のモル数(a3')に対する水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)中に含有している水酸基のモル数(a1')の割合[(a1')/(a3')]が、0.2~0.6の範囲であることを特徴とする請求項記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項8】
請求項記載の活性エネルギー線硬化型インキの製造方法であって、
水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)とを、(メタ)アクリル化合物(B)中で反応させてウレタン(メタ)アクリレート(A)を得る工程を含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インキの製造方法。
【請求項9】
基材上に、請求項1~いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキの硬化物を有することを特徴とする印刷物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
すなわち、本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、および、(A)以外の(メタ)アクリル化合物(B)を含有する活性エネルギー線硬化型インキであって、
ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリル化合物(a1)と、(a1)以外のポリオール化合物(a2)と、イソシアネート化合物(a3)との反応物であり、
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル基濃度が、4.0~8.0mmol/gの範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】