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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141079
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】二重床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04F15/00 101D
E04F15/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052533
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将平
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA19
2E220AB06
2E220AC03
2E220BA01
2E220BC06
2E220CA13
2E220CA23
2E220DA19
2E220EA04
2E220EA11
2E220FA11
2E220GA09X
2E220GA09Y
2E220GA25X
2E220GA25Y
2E220GA34X
2E220GA34Y
2E220GB45Y
2E220GB46Y
(57)【要約】
【課題】遮音性能を向上させることができる二重床構造を提供する。
【解決手段】床スラブ2と床材10との間に床下空間Rが形成される二重床構造1であって、床下空間Rに配置され、床下空間Rを水平方向に仕切る複数の仕切り部材20を具備し、複数の仕切り部材20は、床スラブ2に設けられる複数の下側仕切り部材20Aと、床材10に設けられる複数の上側仕切り部材20Bと、を含み、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bは、互いに水平方向に隣接するように配置されると共に、一部が互いに水平方向に重複するように配置され、上下寸法が、床スラブ2と床材10との間の上下寸法Hよりも小さく形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブと床材との間に床下空間が形成される二重床構造であって、
前記床下空間に配置され、前記床下空間を水平方向に仕切る複数の仕切り部材を具備し、
複数の前記仕切り部材は、
前記床スラブに設けられる複数の第一仕切り部材と、前記床材に設けられる複数の第二仕切り部材と、を含み、
前記第一仕切り部材及び前記第二仕切り部材は、
互いに水平方向に隣接するように配置されると共に、一部が互いに水平方向に重複するように配置され、
上下寸法が、前記床スラブと前記床材との間の寸法よりも小さく形成されている、
二重床構造。
【請求項2】
前記第一仕切り部材及び前記第二仕切り部材は、
上下寸法が、前記床スラブと前記床材との間の寸法の半分以上である、
請求項1に記載の二重床構造。
【請求項3】
前記第一仕切り部材及び前記第二仕切り部材は、
水平方向のうち第一方向に延出し、前記第一方向に直交する第二方向に前記床下空間を仕切る第一部分と、
前記第二方向に延出し、前記第一方向に前記床下空間を仕切る第二部分と、
を具備する、
請求項1に記載の二重床構造。
【請求項4】
前記第一仕切り部材及び前記第二仕切り部材は、
前記第一部分及び前記第二部分が、平面視においてL字を構成するように形成されている、
請求項3に記載の二重床構造。
【請求項5】
複数の前記仕切り部材は、
前記床下空間のうち、複数の前記仕切り部材で仕切られた部分の水平方向の寸法が、対象となる周波数の帯域の上限周波数の波長の半分の長さである上限寸法以下になるように配置されている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の二重床構造。
【請求項6】
前記対象となる周波数の帯域は、
63Hzの帯域である、
請求項5に記載の二重床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床スラブと床材との間に所定の空間が形成される二重床構造が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、床スラブに設けた複数の支持脚により、床下地等の床材を支持する乾式二重床構造が記載されている。上記特許文献1に記載された乾式二重床構造では、床スラブと床材との間に床下空間が形成されている。
【0004】
上述のような乾式二重床構造では、床下空間で発生する定在波の影響で、特定の周波数(例えば63Hz帯域の周波数)の重量床衝撃音が上階から下階へ大きく伝わる場合があった。このため、定在波の影響を低減し、遮音性能を向上させることができる二重床構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-74694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、遮音性能を向上させることができる二重床構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、床スラブと床材との間に床下空間が形成される二重床構造であって、前記床下空間に配置され、前記床下空間を水平方向に仕切る複数の仕切り部材を具備し、複数の前記仕切り部材は、前記床スラブに設けられる複数の第一仕切り部材と、前記床材に設けられる複数の第二仕切り部材と、を含み、前記第一仕切り部材及び前記第二仕切り部材は、互いに水平方向に隣接するように配置されると共に、一部が互いに水平方向に重複するように配置され、上下寸法が、前記床スラブと前記床材との間の寸法よりも小さく形成されているものである。
【0009】
請求項2においては、前記第一仕切り部材及び前記第二仕切り部材は、上下寸法が、前記床スラブと前記床材との間の寸法の半分以上であるものである。
【0010】
請求項3においては、前記第一仕切り部材及び前記第二仕切り部材は、水平方向のうち第一方向に延出し、前記第一方向に直交する第二方向に前記床下空間を仕切る第一部分と、前記第二方向に延出し、前記第一方向に前記床下空間を仕切る第二部分と、を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記第一仕切り部材及び前記第二仕切り部材は、前記第一部分及び前記第二部分が、平面視においてL字を構成するように形成されているものである。
【0012】
請求項5においては、複数の前記仕切り部材は、前記床下空間のうち、複数の前記仕切り部材で仕切られた部分の水平方向の寸法が、対象となる周波数の帯域の上限周波数の波長の半分の長さである上限寸法以下になるように配置されているものである。
【0013】
請求項6においては、前記対象となる周波数の帯域は、63Hzの帯域であるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、遮音性能を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る二重床構造を示した側面断面図。
図2】二重床構造を示した分解側面断面図。
図3】二重床構造を示した斜視図。
図4】床材を省略した二重床構造を示した平面図。
図5】二重床構造を示した拡大側面断面図。
図6】(a)従来の二重床構造を示した側面断面図。(b)従来の二重床構造を示した平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の一実施形態に係る二重床構造1について説明する。
【0017】
図1から図3までに示す二重床構造1は、建物の床スラブ2と床材10との間に所定の空間が形成される乾式二重床(浮き床)の構造である。二重床構造1は、四方を壁4で囲われた室内空間の床を構成する(図1を参照)。また、二重床構造1は、建物のうち2階以上の室内空間の床を構成する。二重床構造1は、例えば住宅や宿泊施設、医療施設、介護施設、商業施設等の種々の建物の床に使用可能である。二重床構造1は、床スラブ2、床材10及び仕切り部材20を具備する。
【0018】
床スラブ2は、建物の構造床である。床スラブ2としては、例えば鉄筋コンクリートによるスラブや、合成スラブを採用可能である。
【0019】
床材10は、建物の床の下地を構成するものである。床材10は、略矩形状の板形状に形成される。床材10は、合板やパーティクルボード等の木質系の材料で形成される。床材10の上面には、フローリング材等の仕上げ材が適宜設けられる。図1に示すように、床材10の端部と、壁4と、の間には、空気抜き用の隙間11が形成されている。
【0020】
図1に示すように、床材10は、床スラブ2に設置された複数の支持脚3によって支持されている。支持脚3の下部は、防振ゴムにより形成されている。これにより、床材10からの振動が床スラブ2に伝わることを抑制することができる。支持脚3は、450mm程度のピッチで配置される(図4を参照)。
【0021】
床材10は、支持脚3に支持されることで、床スラブ2に対して上下寸法Hを開けて配置される。以下では、床スラブ2と、床材10と、壁4と、により形成される空間を、床下空間Rと称する。
【0022】
ここで、建物においては、上階で発生した床衝撃音が、床を通して下階へ伝わる場合がある。床衝撃音には、人が飛び跳ねたり走りまわったり、重いものを落としたときに発生する重量床衝撃音が含まれる。
【0023】
従来の二重床構造(図6を参照)では、重量床衝撃音が上階から下階へ伝わり易く、遮音性能が低くなる場合があった。その理由としては、床下空間Rで発生する定在波の影響で、特定の周波数(例えば63Hz帯域の周波数)の重量床衝撃音が増幅され、上階から下階へ音が大きく伝わることが考えられる。
【0024】
以下では、図6に示す従来の二重床構造を参照して、定在波の影響について説明する。図6では、四方が壁4に囲われた6畳程度の部屋の床を示している。なお、図6では、床スラブ2、支持脚3、壁4及び床材10について、本実施形態に係る二重床構造1と同一の符号を付している。
【0025】
定在波の周波数(1次モード)は、以下の数1の数式で表される。なお1次モードの定在波は、半波長で発生するため、以下の数1の数式では、半波長の周波数を求めている。
(数1)
周波数(半波長)=音速/(ある方向の床下空間の長さ×2)
ここで、
音速:340m/s
【0026】
図6(b)で示す例では、室内空間(床下空間R)の長辺の長さが3640mm、短辺の長さが2730mm、斜め(対角線)の長さが4550mmである。上記数1の数式に基づく算出を行った結果、床下空間Rの長辺、短辺、対角線の1次モードの定在波の周波数(半波長)は、それぞれ46.7Hz、62.3Hz、37.4Hzとなる。なお、床下空間Rの上下方向の長さについては、他の方向の長さと比較して極めて小さいため、周波数の算出を省略している。また、定在波は、1次モードの周波数の整数倍の周波数(2次モードや3次モードの周波数)においても影響を及ぼす。例えば、対角線の2次モードの定在波の周波数は、37.4の2倍であるので、74.8Hzとなる。
【0027】
二重床における重量床衝撃音としては、63Hzの帯域の周波数の音が大きく影響する。このため、床下空間Rで発生した定在波の周波数が63Hzの帯域に含まれる場合、上記定在波の影響で重量床衝撃音が増幅し、下階へ大きく伝わる可能性がある。63Hzの周波数帯域(1/1オクターブ)は、概ね44.5Hz(下限周波数)から89.1Hz(上限周波数)までの間である。
【0028】
図6(b)で示す例では、床下空間Rの長辺、及び短辺で発生する定在波の周波数(1次モード)は、それぞれ46.7Hz、62.3Hzであり、対角線で発生する定在波の周波数(2次モード)は74.8Hzであるので、上記各定在波の周波数は、63Hzの帯域に含まれることになる。このことから、上記従来の二重床構造の床下空間Rでは、長辺、短辺及び対角線の全ての方向において、定在波の影響で重量床衝撃音が伝わり易いと言える。
【0029】
ここで、63Hzの帯域の上限周波数は89.1Hzであり、当該上限周波数(89.1Hz)の波長(1波長)は、3810mm程度である。定在波は半波長で発生することから、上記上限周波数の波長の半分の値を求めると、1900mm程度となる。このことから、床下空間Rにおける水平方向の寸法が1900mm以下であれば、当該部分で発生する定在波の周波数の帯域が63Hzの帯域よりも高い帯域になり、63Hzの帯域から外れることになる。上記構成によれば、定在波の影響を低減することで、重量床衝撃音の遮音性能を向上させることができる。
【0030】
図1から図5までに示す本実施形態に係る二重床構造1は、床下空間Rに仕切り部材20を設けて、水平方向の寸法が1900mm以下となるように床下空間Rを水平方向に仕切ることで、床下空間Rで発生する定在波の周波数を63Hzの帯域から外し、重量床衝撃音の遮音性能を向上させることができる。
【0031】
図1図3及び図4に示すように、仕切り部材20は、床下空間Rに複数設置される。複数の仕切り部材20には、下側仕切り部材20Aと、上側仕切り部材20Bと、が含まれる。
【0032】
下側仕切り部材20Aは、仕切り部材20のうち、床スラブ2の上面に設けられるものである。下側仕切り部材20Aは、例えば釘やビス等の止具を用いて、床スラブ2に対して固定される。
【0033】
上側仕切り部材20Bは、仕切り部材20のうち、床材10の下面に設けられるものである。上側仕切り部材20Bは、下側仕切り部材20Aと同様に、止具を用いて床材10に対して固定される。
【0034】
なお、図1から図5までの図では、部材同士を区別し易くするために、上側仕切り部材20Bを示す部分を塗りつぶしている。また図4では、床材10の図示を省略している。本実施形態においては、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bは互いに同寸同形状に形成されている。従って以下では、仕切り部材20の形状等の説明をする際には、下側仕切り部材20Aと上側仕切り部材20Bとを区別せずに説明を行う。
【0035】
仕切り部材20は、板形状の部材を組み合わせて、平面視において略L字形状に形成されている。上記板形状の部材は、例えば木質系材料等、通気性を有さない材料で形成されている。図3に示すように、仕切り部材20は、L字形状の一方の辺を構成するように左右方向に延出し、厚さ方向を前後方向に向けた板形状の第一部分21と、L字形状の他方の辺を構成するように前後方向に延出し、厚さ方向を左右方向に向けた板形状の第二部分22と、により形成されている。第一部分21及び第二部分22は、例えば釘やビスの止具や、金具等を用いて、互いに一体的に固定されている。本実施形態では、第一部分21及び第二部分22の延出寸法を、それぞれ900mm程度に設定している。
【0036】
図1に示すように、仕切り部材20の上下寸法は、床スラブ2と床材10との間の上下寸法Hよりも小さく形成されている。これにより、仕切り部材20を床スラブ2及び床材10のうちの一方である設置対象に設けた状態で、非設置対象(床スラブ2及び床材10のうちの他方)と、仕切り部材20における非設置対象側の端部と、の間には隙間Sが形成される。
【0037】
隙間Sは、床材10がある程度撓んだ場合でも、仕切り部材20と非設置対象とが接触しない寸法に形成される。例えば床材10が、2mm程度の撓みが想定されるものである場合、隙間Sが5mm程度になるように仕切り部材20の上下寸法を設定可能である。これにより、仕切り部材20が非設置対象と接触することで仕切り部材20を介して上階で発生した振動が下階へ伝わり、遮音性能が低下することを抑制することができる。また、本実施形態では、仕切り部材20の上下寸法を、床スラブ2と床材10との間の上下寸法Hの半分以上に設定している。
【0038】
次に、図3及び図4を用いて、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bの配置について説明する。下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bは、互いに上下方向には重複しないように配置される。下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bは、互いに水平方向(左右方向及び前後方向)に隣接するように、交互に配置されている。なお、図例では、隣接する下側仕切り部材20Aと上側仕切り部材20Bとの間に隙間を形成した例を示しているが、上記隙間を設けないように、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bを互いに当接するように配置してもよい。
【0039】
図4に示すように、床スラブ2の上面には、複数の下側仕切り部材20Aが、1つ分の上側仕切り部材20Bのスペースに相当する間隔を開けて、左右方向及び前後方向に等間隔で配置されている。
【0040】
本実施形態では、左右方向及び前後方向に隣り合う下側仕切り部材20A同士の間の寸法を、1900mm以下に設定している。より詳細には、左右方向に隣り合う下側仕切り部材20Aは、それぞれの第一部分21の互いに対向する面同士の間の左右寸法Xが1900mm以下になるように配置されている。また、前後方向に隣り合う下側仕切り部材20Aは、それぞれの第二部分22の互いに対向する面同士の間の前後寸法Yが1900mm以下になるように配置されている。なお、本実施形態では、左右寸法Xと前後寸法Yとを同寸法に設定している。
【0041】
また、床材10の下面には、複数の上側仕切り部材20Bが、1つ分の下側仕切り部材20Aのスペースに相当する間隔を開けて、左右方向及び前後方向に等間隔で配置されている。上側仕切り部材20Bの配置間隔は、下側仕切り部材20Aの配置間隔と概ね同様である。すなわち、左右方向及び前後方向に隣り合う上側仕切り部材20B同士の間の寸法(左右寸法X及び前後寸法Y)は、下側仕切り部材20Aと同様に、1900mm以下に設定されている。
【0042】
また、本実施形態では、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bは、壁4の壁面と、第一部分21及び第二部分22の壁4に対向する面と、の間の寸法Wも1900mm以下になるように配置されている(図1を参照)。
【0043】
図1及び図3に示すように、仕切り部材20を設置対象に設けた状態では、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bの一部が、互いに水平方向に重複するように配置される。具体的には、床下空間Rの上下方向中間部において、下側仕切り部材20Aの第一部分21と、上側仕切り部材20Bの第一部分21と、が前後方向に重複する(図3を参照)。また、床下空間Rの上下方向中間部において、下側仕切り部材20Aの第二部分22と、上側仕切り部材20Bの第二部分22と、が左右方向に重複する(図1及び図3を参照)。
【0044】
上述のように仕切り部材20を配置したことで、床下空間Rを水平方向(左右方向及び前後方向)に仕切ることができる。床下空間Rは、仕切り部材20で仕切られた部分の水平方向の寸法が1900mm以下となる。以下では、床下空間Rのうち、仕切り部材20で仕切られた部分の詳細について説明する。なお以下の説明では、正面断面図である図5を用いて、床下空間Rを左右方向に仕切る場合に注目して説明を行う。
【0045】
図5に示すように、床下空間Rの下側の部分は、隣り合う下側仕切り部材20A(図例では第二部分22同士)により、左右寸法X分の距離を開けて仕切られる。また、床下空間Rの上側の部分も、隣り合う上側仕切り部材20B(図例では第二部分22同士)により、左右寸法X分の距離を開けて仕切られる。また、床下空間Rの上下方向中間部は、隣り合う下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20B(図例では第二部分22同士)により、左右寸法Xよりも小さい寸法Xa(第一部分21の延出寸法)の距離を開けて仕切られる。このように、仕切り部材20で仕切られた部分の左右寸法は、何れも1900mm以下になる。
【0046】
また、図示は省略するが、床下空間Rを前後方向に仕切る場合も上述した説明と同様、仕切り部材20で仕切られた部分の前後寸法は最大でも前後寸法Yであるため、何れも1900mm以下になる。
【0047】
また図4に示すように、斜め方向(対角線方向)に隣り合う下側仕切り部材20A同士(又は上側仕切り部材20B同士)の間の斜め寸法Zは、左右寸法X及び前後寸法Yよりも小さいため、1900mm以下になる。
【0048】
上述のように、本実施形態に係る二重床構造1は、床下空間Rのうち、仕切り部材20で仕切られた部分の水平方向の寸法(左右寸法X、前後寸法Y及び斜め寸法Z等)が、何れも1900mm以下になる。これにより、仕切り部材20で仕切られた部分で発生する定在波の周波数を63Hzの帯域から外し、定在波の影響を低減することで、重量床衝撃音の遮音性能を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、図1に示すように、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bを、互いに水平方向に隣接するように交互に配置すると共に、各仕切り部材20を、非設置対象に対して隙間Sが形成されるように配置している。これにより、仕切り部材20が非設置対象に対して接触することを回避しつつ、床下空間Rを水平方向に仕切ることができる。上記構成によれば、上階で発生した振動が仕切り部材20を介して下階へ伝わることによる遮音性能の低下を回避することができる。
【0050】
また、二重床において床下空間Rの空気の逃げ場がない場合、空気ばねの影響で、重量床衝撃音による振動が増幅され、上階から下階へ音が大きく伝わる場合がある。本実施形態によれば、仕切り部材20と非設置対象との間の隙間Sや、床材10の端部と壁4との間の隙間11を形成したことで、床下空間Rの空気の逃げ場(空気抜き用の開口)を確保することができ、空気ばねの影響による遮音性能の低下を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、平面視略L字形状の上側仕切り部材20Bを床材10に設けたことで、床材10の剛性を上げることができる。これにより、床材10の振動を低減させることで、遮音性能を向上させることができる。
【0052】
以上のように、本発明の一実施形態に係る二重床構造1は、
床スラブ2と床材10との間に床下空間Rが形成される二重床構造1であって、
前記床下空間Rに配置され、前記床下空間Rを水平方向に仕切る複数の仕切り部材20を具備し、
複数の前記仕切り部材20は、
前記床スラブ2に設けられる複数の第一仕切り部材(下側仕切り部材20A)と、前記床材10に設けられる複数の第二仕切り部材(上側仕切り部材20B)と、を含み、
前記下側仕切り部材20A及び前記上側仕切り部材20Bは、
互いに水平方向に隣接するように配置されると共に、一部が互いに水平方向に重複するように配置され、
上下寸法が、前記床スラブ2と前記床材10との間の寸法(上下寸法H)よりも小さく形成されているものである。
【0053】
このような構成により、遮音性能を向上させることができる。すなわち、床下空間Rの水平方向の寸法が、定在波の影響を低減可能な寸法となるように床下空間Rを水平方向に仕切ることで、重量床衝撃音の遮音性能を向上させることができる。
【0054】
また、前記下側仕切り部材20A及び前記上側仕切り部材20Bは、
上下寸法が、前記床スラブ2と前記床材10との間の寸法(上下寸法H)の半分以上であるものである。
【0055】
このような構成により、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bを、互いに水平方向に確実に重複させることができる。
【0056】
また、前記下側仕切り部材20A及び前記上側仕切り部材20Bは、
水平方向のうち第一方向(左右方向)に延出し、前記第一方向(左右方向)に直交する第二方向(前後方向)に前記床下空間Rを仕切る第一部分21と、
前記第二方向(前後方向)に延出し、前記第一方向(左右方向)に前記床下空間Rを仕切る第二部分22と、
を具備するものである。
【0057】
このような構成により、第一部分21及び第二部分22により、床下空間Rを左右方向及び前後方向に仕切ることができる。また、本実施形態では、第一部分21及び第二部分22を互いに一体的に固定しているので、互いに別体の第一部分21及び第二部分22を設置対象に設ける場合と比べて、仕切り部材20の設置の作業性を向上させることができる。
【0058】
また、前記下側仕切り部材20A及び前記上側仕切り部材20Bは、
前記第一部分21及び前記第二部分22が、平面視においてL字を構成するように形成されているものである。
【0059】
このような構成により、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bを、容易に形成することができる。また、L字形状の上側仕切り部材20Bを床材10に設けることで、床材10の剛性を上げることができる。
【0060】
また、複数の前記仕切り部材20は、
前記床下空間Rのうち、複数の前記仕切り部材20で仕切られた部分の水平方向の寸法が、対象となる周波数の帯域(63Hzの帯域)の上限周波数(89.1Hz)の波長(3810mm)の半分の長さである上限寸法(1900mm)以下になるように配置されているものである。
【0061】
このような構成により、床下空間Rのうち、仕切り部材20で仕切られた部分で発生する定在波の周波数の帯域が、対象となる周波数の帯域(63Hzの帯域)よりも高い帯域になる。これにより、床下空間Rで発生する定在波の周波数を、対象となる周波数の帯域から外し、対象となる周波数における定在波の影響を低減することで、床衝撃音の遮音性能を向上させることができる。
【0062】
また、前記対象となる周波数の帯域は、
63Hzの帯域であるものである。
【0063】
このような構成により、床下空間Rで発生する定在波の周波数を、二重床における重量床衝撃音に大きく影響する63Hzの帯域から外すことで、重量床衝撃音の遮音性能を向上させることができる。
【0064】
なお、本実施形態に係る下側仕切り部材20Aは、本発明に係る第一仕切り部材の一形態である。
また、本実施形態に係る上側仕切り部材20Bは、本発明に係る第二仕切り部材の一形態である。
【0065】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、仕切り部材20の形状や寸法、配置間隔等は、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0066】
例えば、本実施形態では、仕切り部材20を平面視において略L字形状に形成した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、仕切り部材20を平面視において略十字形状に形成してもよい。
【0067】
また、本実施形態では、下側仕切り部材20Aと上側仕切り部材20Bとを互いに同寸同形状に形成した例を示したが、このような態様に限られず、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bの寸法及び形状を互いに異なるものにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bの上下寸法を、床スラブ2と床材10との間の上下寸法Hの半分以上に形成した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bのうちの一方の上下寸法を、上下寸法Hの半分未満に形成してもよい。なおこの場合は、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bが互いに水平方向に重複するように、下側仕切り部材20A及び上側仕切り部材20Bのうちの他方の上下寸法を適宜設定する。
【0069】
また、本実施形態では、第一部分21及び第二部分22を、左右方向又は前後方向に延出する略板形状に形成した例を示したが、このような態様に限られない。例えば第一部分21及び第二部分22を、斜め方向(左右方向及び前後方向に対して傾斜する方向)に延出する形状に形成してもよく、曲面を有する形状に形成してもよい。第一部分21及び第二部分22の形状としては種々の形状を採用可能である。
【0070】
また、本実施形態では、第一部分21及び第二部分22を互いに固定した例を示したが、このような態様に限られず、第一部分21及び第二部分22を互いに別体に形成してもよい。
【0071】
また、本実施形態では、床下空間Rで発生した定在波の周波数について、回避の対象となる周波数の帯域を63Hzの帯域とした例を示したが、このような態様に限られない。回避の対象となる周波数の帯域は、上階で発生する音(衝撃音等)の特性に応じて適宜設定可能である。この場合、仕切り部材20同士の間の寸法(左右寸法X及び前後寸法Y)は、回避の対象となる周波数の帯域の上限周波数の波長に応じて、適宜設定される。
【符号の説明】
【0072】
1 二重床構造
2 床スラブ
10 床材
20 仕切り部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6