(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141080
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】養液栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20241003BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241003BHJP
A01G 17/00 20060101ALI20241003BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
A01G31/00 612
A01G7/00 601C
A01G31/00 601A
A01G17/00
A01G22/05 A
A01G22/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052534
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彩菜
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB15
2B022AB20
2B022DA08
2B314MA11
2B314MA38
2B314PA01
2B314PA04
2B314PA15
2B314PD61
(57)【要約】
【課題】作物に青色光を照射するタイミングのずれを抑制することで、栽培された作物の収穫量や品質の安定を図ることができる養液栽培システムを提供する。
【解決手段】養液栽培システム1は、複数の栄養成分を含む養液を貯留する肥料成分調整槽10と、肥料成分調整槽10から供給される養液によって作物Xを栽培する栽培槽20と、栽培槽20の作物Xに光を照射可能な照射部40と、栽培槽20の養液に含まれる複数の栄養成分のうち少なくとも一の特定成分の量を測定する成分量測定部50と、成分量測定部50によって測定された特定成分の量に基づいて照射部40によって作物Xに青色光を照射するタイミングを判断する制御部60(判断部)と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の栄養成分を含む養液を貯留する養液貯留部と、
前記養液貯留部から供給される前記養液によって作物を栽培する栽培部と、
前記栽培部の前記作物に光を照射可能な照射部と、
前記栽培部の前記養液に含まれる前記複数の栄養成分のうち、少なくとも一の特定成分の量を測定する成分量測定部と、
前記成分量測定部によって測定された前記特定成分の量に基づいて、前記照射部によって前記作物に青色光を照射するタイミングを判断する判断部と、
を具備する、
養液栽培システム。
【請求項2】
前記成分量測定部によって測定された前記特定成分の量に基づいて、前記作物による前記特定成分の吸収速度を算出する算出部を具備し、
前記判断部は、
前記算出部によって算出された前記吸収速度に基づいて、前記青色光を照射するタイミングを判断する、
請求項1に記載の養液栽培システム。
【請求項3】
前記判断部は、
直近の第一期間における前記吸収速度と、前記第一期間以前の第二期間における前記吸収速度との比較によって、前記青色光を照射するタイミングを判断する、
請求項2に記載の養液栽培システム。
【請求項4】
前記作物は、穀物又は果樹類であり、
前記特定成分は、リンであり、
前記判断部は、
前記リンの前記第二期間における前記吸収速度が前記第一期間における前記吸収速度を下回った場合、前記青色光を照射するタイミングであると判断する、
請求項3に記載の養液栽培システム。
【請求項5】
前記作物は、ダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ又はイネである、
請求項4に記載の養液栽培システム。
【請求項6】
前記作物は、果菜類であり、
前記特定成分は、窒素であり、
前記判断部は、
前記窒素の前記第二期間における前記吸収速度が前記第一期間における前記吸収速度を下回った場合、前記青色光を照射するタイミングであると判断する、
請求項3に記載の養液栽培システム。
【請求項7】
前記作物は、トマトである、
請求項6に記載の養液栽培システム。
【請求項8】
前記作物は、果菜類又は果樹類であり、
前記特定成分は、リンであり、
前記判断部は、
前記リンの前記第二期間における前記吸収速度が前記第一期間における前記吸収速度を上回った場合、前記青色光を照射するタイミングであると判断する、
請求項3に記載の養液栽培システム。
【請求項9】
前記作物は、イチゴである、
請求項8に記載の養液栽培システム。
【請求項10】
前記判断部が前記青色光を照射するタイミングであると判断すると、前記照射部を制御して前記作物に前記青色光を照射させる制御部を具備する、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の養液栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養液によって作物を栽培する養液栽培システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の色が植物の生理(形態形成や光合成速度)に及ぼす影響を利用して、赤色や青色の人工光を植物に照射することで野菜の生育期間の短縮や収穫重量・機能性成分の増加を図る技術が開発されている。例えば、特許文献1には、施設栽培においてトマト苗に青色光と赤色光を照射することで分岐数を増やし、苗当たりの果実の収穫量を増加させる技術が記載されている。
【0003】
しかしながら、従来の技術では、光を照射するタイミングや照射する光の色を変更するタイミングについて、基準が明確でなく、目視による作物の生育段階の確認等、生産者の栽培経験からの判断によるものとなり、栽培された作物の収穫量や品質が安定しない課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、作物に青色光を照射するタイミングのずれを抑制することで、栽培された作物の収穫量や品質の安定を図ることができる養液栽培システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、複数の栄養成分を含む養液を貯留する養液貯留部と、前記養液貯留部から供給される前記養液によって作物を栽培する栽培部と、前記栽培部の前記作物に光を照射可能な照射部と、前記栽培部の前記養液に含まれる前記複数の栄養成分のうち、少なくとも一の特定成分の量を測定する成分量測定部と、前記成分量測定部によって測定された前記特定成分の量に基づいて、前記照射部によって前記作物に青色光を照射するタイミングを判断する判断部と、を具備するものである。
【0008】
請求項2においては、前記成分量測定部によって測定された前記特定成分の量に基づいて、前記作物による前記特定成分の吸収速度を算出する算出部を具備し、前記判断部は、前記算出部によって算出された前記吸収速度に基づいて、前記青色光を照射するタイミングを判断するものである。
【0009】
請求項3においては、前記判断部は、直近の第一期間における前記吸収速度と、前記第一期間以前の第二期間における前記吸収速度との比較によって、前記青色光を照射するタイミングを判断するものである。
【0010】
請求項4においては、前記作物は、穀物又は果樹類であり、前記特定成分は、リンであり、前記判断部は、前記リンの前記第二期間における前記吸収速度が前記第一期間における前記吸収速度を下回った場合、前記青色光を照射するタイミングであると判断するものである。
【0011】
請求項5においては、前記作物は、ダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ又はイネであるものである。
【0012】
請求項6においては、前記作物は、果菜類であり、前記特定成分は、窒素であり、前記判断部は、前記窒素の前記第二期間における前記吸収速度が前記第一期間における前記吸収速度を下回った場合、前記青色光を照射するタイミングであると判断するものである。
【0013】
請求項7においては、前記作物は、トマトであるものである。
【0014】
請求項8においては、前記作物は、果菜類又は果樹類であり、前記特定成分は、リンであり、前記判断部は、前記リンの前記第二期間における前記吸収速度が前記第一期間における前記吸収速度を上回った場合、前記青色光を照射するタイミングであると判断するものである。
【0015】
請求項9においては、前記作物は、イチゴであるものである。
【0016】
請求項10においては、前記判断部が前記青色光を照射するタイミングであると判断すると、前記照射部を制御して前記作物に前記青色光を照射させる制御部を具備するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、作物に青色光を照射するタイミングのずれを抑制することで、栽培された作物の収穫量や品質の安定を図ることができる。
【0019】
請求項2においては、作物に青色光を照射するタイミングの判断の精度を向上させることができる。
【0020】
請求項3においては、作物に青色光を照射するタイミングの判断の精度をより向上させることができる。
【0021】
請求項4においては、穀物又は果樹類である作物が開花期であるときに当該作物に青色光を照射することができるので、栽培された作物の収穫量の向上を図ることができる。
【0022】
請求項5においては、ダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ又はイネの収穫量の向上を図ることができる。
【0023】
請求項6においては、果菜類である作物が育苗期であるときに当該作物に青色光を照射することができるので、栽培された作物の収穫量の向上を図ることができる。
【0024】
請求項7においては、トマトの収穫量の向上を図ることができる。
【0025】
請求項8においては、果菜類又は果樹類である作物の果実が収穫直前であるときに当該作物の果実に青色光を照射することができるので、栽培された果実の機能性成分の増加を図ることができる。
【0026】
請求項9においては、イチゴの機能性成分の増加を図ることができる。
【0027】
請求項10においては、栽培された作物の収穫量や品質の安定を図ることが可能な適切なタイミングで自動で青色光を作物に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る養液栽培システムを示した模式図。
【
図3】実施例1における青色光の点灯/消灯の制御を示したフローチャート。
【
図4】実施例2における青色光の点灯/消灯の制御を示したフローチャート。
【
図5】実施例3における青色光の点灯/消灯の制御を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の一実施形態に係る養液栽培システム1について説明する。
【0030】
本実施形態に係る養液栽培システム1は、作物Xの養液栽培を行うものである。ここで、養液栽培とは、肥料を水に溶かした養液(培養液)によって作物Xを栽培する栽培法である。養液としては、例えば、一般的な植物に適した割合で配合された各種栄養成分(窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン等)を含有するものを用いることができる。
【0031】
本実施形態に係る養液栽培システム1によって栽培される作物Xには、マメ科やイネ科の穀物や、果菜類、果樹類等が含まれる。栽培可能な穀物としては、例えばダイズ、エダマメ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ及びイネが挙げられる。栽培可能な果菜類としては、例えばトマト及びナスが挙げられる。栽培可能な果樹類としては、例えばイチゴが挙げられる。
【0032】
本実施形態に係る養液栽培システム1は、露地栽培などの自然環境下で作物Xの栽培を行うものであってもよく、屋内で栽培環境を制御可能な植物工場において行われるものであってもよい。植物工場としては、例えば人工光を光源とした光の光強度や照射時間、二酸化炭素濃度、栽培温度、湿度等の栽培環境を制御可能な完全制御型(閉鎖環境型)の施設や、ビニールハウス等を採用できる。
【0033】
以下、
図1及び
図2を用いて、養液栽培システム1の構成について説明する。養液栽培システム1は、肥料成分調整槽10、栽培槽20、養液循環管30、照射部40、成分量測定部50及び制御部60を具備する。
【0034】
図1に示す肥料成分調整槽10は、後述する栽培槽20に供給するための養液を貯溜するものである。肥料成分調整槽10に貯留される養液は、栽培槽20に供給され、後述する養液循環管30を介して肥料成分調整槽10に戻される。肥料成分調整槽10は、栽培槽20の作物Xに吸収されることによって減少した養液中の栄養成分(窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン等)が補給されるように構成されている。
【0035】
図1に示す栽培槽20は、作物Xが栽培されるものである。栽培槽20は、上部が開放された略箱状のトレイにより構成される。栽培槽20は、肥料成分調整槽10から供給される養液を溜めることができるように構成されている。栽培槽20には、作物Xが根から養液を吸収できるように作物Xが配置される。このようにして、栽培槽20では、肥料成分調整槽10から供給される養液によって作物Xを栽培することができる。
【0036】
図1に示す養液循環管30は、肥料成分調整槽10に貯溜された養液を循環させるものである。養液循環管30は、内部に養液が流通可能に構成される。養液循環管30は、第一流通管31、第二流通管32及び第三流通管33を具備する。
【0037】
第一流通管31は、肥料成分調整槽10に貯溜された養液を栽培槽20に供給するためのものである。第一流通管31は、肥料成分調整槽10と栽培槽20とを接続するように設けられる。
【0038】
第二流通管32は、栽培槽20から後述する成分量測定部50に養液を供給するためのものである。第二流通管32は、栽培槽20と成分量測定部50とを接続するように設けられる。
【0039】
第三流通管33は、成分量測定部50から肥料成分調整槽10に養液を戻すためのものである。第三流通管33は、成分量測定部50と肥料成分調整槽10とを接続するように設けられる。
【0040】
このように構成された養液循環管30の中途部には、肥料成分調整槽10に貯溜された養液を吸引及び吐出可能なポンプ(不図示)が適宜設けられる。前記ポンプを稼動させることにより、肥料成分調整槽10に貯溜された養液を、養液循環管30を介して栽培槽20に供給することができる。また、栽培槽20に供給された養液を、成分量測定部50に供給することができる。また、成分量測定部50に供給された養液を、肥料成分調整槽10に戻すことができる。
【0041】
図1及び
図2に示す照射部40は、栽培槽20の作物Xに光を照射可能なものである。照射部40はLED等の人工光を光源としている。照射部40は、光の色、強度及び照射時間を設定可能に構成される。
【0042】
図1に示す成分量測定部50は、栽培槽20の養液に含まれる複数の栄養成分のうち、少なくとも一の特定成分の量を測定するものである。成分量測定部50は、栽培槽20よりも養液の流通方向における下流側に設けられる。成分量測定部50は、成分測定槽51及び成分測定器52を具備する。
【0043】
図1に示す成分測定槽51は、栽培槽20から第二流通管32を介して供給された養液を貯留するように構成される。
【0044】
図1及び
図2に示す成分測定器52は、成分測定槽51に貯留される養液に含まれる栄養成分の量を測定するように構成される。
【0045】
このように構成される成分量測定部50は、作物Xによって各種栄養成分が吸収された後の養液に含まれる栄養成分の量(成分量)を測定することができる。
【0046】
図2に示す制御部60は、養液栽培システム1の各種制御を行うものである。制御部60は、成分測定器52に電気的に接続され、成分測定器52の測定結果を取得可能に構成される。また、制御部60は、照射部40に電気的に接続され、成分測定器52の測定結果に基づいて照射部40の動作を制御可能に構成される。また、制御部60は、成分測定器52の測定結果に基づいて、成分測定槽51内の養液中の栄養成分を常時モニタリングしている。
【0047】
ここで、作物Xの根から吸収される栄養成分の吸収速度は、作物Xの生育段階(生育ステージ)ごとに異なる。そこで、制御部60は、成分量測定部50を介して、作物Xを栽培している栽培槽20の養液の組成をモニタリングし、作物Xから吸収された各栄養成分の減少速度(すなわち吸収速度)を算出することで、作物Xの現在の生育段階を判断し、この判断結果に基づいて照射部40の動作を制御する。
【0048】
以下、主として
図3を用いて、実施例1の作物Xの栽培方法について説明する。
【0049】
図3は、栽培する対象の作物Xが例えばダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ、イネ等の穀物又は果樹類である場合の栽培方法のフローチャートを示している。
図3に示す栽培方法は、開花期のみに青色光を作物Xに照射することで、作物Xの収穫量を向上させることを目的としている。
【0050】
ステップS11は、白色光または太陽光の下で、栽培槽20において作物Xを栽培する工程である。自然環境下で作物Xの栽培を行う場合には、太陽光の下で栽培槽20において作物Xを栽培する。植物工場等の屋内で作物Xの栽培を行う場合には、制御部60は、照射部40を点灯させ、作物Xに白色光を照射させる。
【0051】
白色光または太陽光の下で作物Xが栽培されている間、養液循環管30に設けられたポンプを動作させ、肥料成分調整槽10から養液が栽培槽20に供給される。こうして、栽培槽20では、肥料成分調整槽10から供給される養液によって作物Xが栽培される。
【0052】
また、栽培槽20内の養液は、適宜、栽培槽20から下流側(成分量測定部50側)に排出される。このようにして、白色光または太陽光の下で作物Xが栽培されている間、肥料成分調整槽10に貯溜された養液が養液循環管30を循環しており、成分量測定部50によって栽培槽20の養液の組成(養液に含まれる栄養成分の量)が常時測定されている。ステップS11が実行された後、次にステップS12が実行される。
【0053】
ステップS12において、制御部60は、VA(P)<VB(P)であるか否かを判定する。ここで、VB(P)とは、ステップS12の判定日を含む直近の第一期間Bにおける作物Xによるリン(P)の平均吸収速度である。また、VA(P)とは、第一期間B以前の第二期間Aにおける作物Xによるリン(P)の平均吸収速度である。制御部60は、成分量測定部50(成分測定器52)によって測定された養液の組成(養液に含まれる栄養成分の量)に基づいて、作物Xによるリン(P)の平均吸収速度を算出する。なお、第一期間B及び第二期間Aは、任意の期間とすることができ、例えば数日であってもよく、数週間であってもよい。また、判定の精度の向上のため、第二期間Aは第一期間Bよりも長い期間とすることが好ましい。
【0054】
制御部60は、VA(P)<VB(P)であると判定した場合(ステップS12で「YES」)、ステップS13に移行する。一方、制御部60は、VA(P)<VB(P)でないと判定した場合(ステップS12で「NO」)、ステップS11に戻り、白色光または太陽光の下で作物Xの栽培を続行する。
【0055】
なお、ステップS12の判定は、白色光または太陽光の下で作物Xが栽培されている間、常時行われてもよいが、作物Xの栽培を開始してから所定期間経過後に行われてもよい。前記所定期間は、一般的に作物Xが開花期になると予想される日までの期間(予想期間)よりも短い期間とされ、例えば前記予想期間の数日あるいは数週間前までの期間としてもよい。
【0056】
ここで、例えばダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ、イネ等の穀物又は果樹類においては、生育段階が開花期に入るとリン(P)の吸収量が増加する。ステップS12では、この性質を利用して、リン(P)の平均吸収速度に基づいて生育段階が開花期であるかどうかを判断している。具体的には、ステップS12で「YES」の場合とは、作物Xの生育段階が開花期に入ったと予測されることを示している。一方、ステップS12で「NO」の場合とは、作物Xの生育段階が未だ開花期でないと予測されることを示している。
【0057】
ステップS13において、制御部60は、照射部40から作物Xに青色光を照射させる。具体的には、ステップS11において太陽光の下で作物Xを栽培している場合には、制御部60は、照射部40を点灯させ青色光を照射させる。ステップS11において白色光の下で作物Xを栽培している場合には、制御部60は、照射部40から照射する光の色を白色光から青色光に切り替える。ステップS13が実行されると、次にステップS14が実行される。
【0058】
ステップS14において、制御部60は、VA´(P)>VB´(P)であるか否かを判定する。ここで、VB´(P)とは、ステップS14の判定日を含む直近の第三期間B´における作物Xによるリン(P)の平均吸収速度である。また、VA´(P)とは、第三期間B´以前の第四期間A´における作物Xによるリン(P)の平均吸収速度である。制御部60は、成分量測定部50(成分測定器52)によって測定された養液の組成(養液に含まれる栄養成分の量)に基づいて、作物Xによるリン(P)の平均吸収速度を算出する。なお、第三期間B´及び第四期間A´は、ステップS12においてYES判定となった後の任意の期間とすることができ、例えば数日であってもよく、数週間であってもよい。
【0059】
制御部60は、VA´(P)>VB´(P)であると判定した場合(ステップS14で「YES」)、ステップS15に移行する。一方、制御部60は、VA´(P)>VB´(P)でないと判定した場合(ステップS14で「NO」)、ステップS13に戻り、青色光の下での作物Xの栽培を続行する。
【0060】
ここで、例えばダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ、イネ等の穀物又は果樹類においては、前述の如く生育段階が開花期に入るとリン(P)の吸収量が増加し、開花期が終わるとリン(P)の吸収量が減少する。ステップS14では、開花期が終了するとリン(P)の吸収量が減少する性質を利用して、リン(P)の平均吸収速度に基づいて開花期が終了したかどうかを判断している。具体的には、ステップS14で「YES」の場合とは、作物Xの開花期が終了したと予測されることを示している。一方、ステップS14で「NO」の場合とは、作物Xが未だ開花期の最中であると予測されることを示している。
【0061】
ステップS15において、制御部60は、照射部40を消灯させ、作物Xへの青色光の照射を終了させる。こうして、開花期が終了した後は青色光を消灯させることで、青色光の過剰な照射を抑制でき、ひいては省エネを図ることができる。なお、ステップS11において白色光の下で栽培を行っていた場合には、再び照射部40から白色光を照射してもよい。
【0062】
このようにして、例えばダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ、イネ等の穀物又は果樹類においては、開花期にリン(P)の吸収量が増加する性質を利用して、リン(P)の平均吸収速度に基づいて生育段階が開花期であるかどうかが判断される。そして、生育段階が開花期である間に作物Xに青色光を照射することで、ダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ、イネ等の穀物又は果樹類の花芽・子実数の増加による収穫量の向上を図ることができる。
【0063】
次に、主として
図4を用いて、実施例2の作物Xの栽培方法について説明する。
【0064】
図4は、栽培する対象の作物Xが例えばトマト、ナス等の果菜類である場合の栽培方法のフローチャートを示している。
図4に示す栽培方法は、育苗期のみに青色光を作物Xに照射することで、作物Xの収穫量を向上させることを目的としている。
【0065】
ステップS21は、白色光または太陽光の下で、栽培槽20において作物Xを栽培する工程である。ステップS21は、実施例1のステップS11と同様であるので、詳細な説明を省略する。ステップS21が実行された後、次にステップS22が実行される。
【0066】
ステップS22において、制御部60は、VA(N)<VB(N)であるか否かを判定する。ここで、VB(N)とは、ステップS12の判定日を含む直近の第一期間Bにおける作物Xによる窒素(N)の平均吸収速度である。また、VA(N)とは、第一期間B以前の第二期間Aにおける作物Xによる窒素(N)の平均吸収速度である。制御部60は、成分量測定部50(成分測定器52)によって測定された養液の組成(養液に含まれる栄養成分の量)に基づいて、作物Xによる窒素(N)の平均吸収速度を算出する。
【0067】
制御部60は、VA(N)<VB(N)であると判定した場合(ステップS22で「YES」)、ステップS23に移行する。一方、制御部60は、VA(N)<VB(N)でないと判定した場合(ステップS22で「NO」)、ステップS21に戻り、白色光または太陽光の下で作物Xの栽培を続行する。
【0068】
なお、ステップS22の判定は、白色光または太陽光の下で作物Xが栽培されている間、常時行われてもよいが、作物Xの栽培を開始してから所定期間経過後に行われてもよい。前記所定期間は、一般的に作物Xが育苗期になると予想される日までの期間(予想期間)よりも短い期間とされ、例えば前記予想期間の数日あるいは数週間前までの期間としてもよい。
【0069】
ここで、例えばトマト、ナス等の果菜類においては、生育段階が育苗期に入ると窒素(N)の吸収量が増加する。ステップS22では、育苗期において窒素(N)の吸収量が増加する性質を利用して、窒素(N)の平均吸収速度に基づいて生育段階が開花期であるかどうかを判断している。具体的には、ステップS22で「YES」の場合とは、作物Xの生育段階が育苗期であると予測されることを示している。一方、ステップS22で「NO」の場合とは、作物Xの生育段階が育苗期でないと予測されることを示している。
【0070】
ステップS23において、制御部60は、照射部40から作物Xに青色光を照射させる。ステップS23は、実施例1のステップS13と同様であるので、詳細な説明を省略する。ステップS23が実行された後、次にステップS24が実行される。
【0071】
ステップS24において、制御部60は、VA´(N)>VB´(N)であるか否かを判定する。ここで、VB´(N)とは、ステップS24の判定日を含む直近の第三期間B´における作物Xによる窒素(N)の平均吸収速度である。また、VA´(N)とは、第三期間B´以前の第四期間A´における作物Xによる窒素(N)の平均吸収速度である。制御部60は、成分量測定部50(成分測定器52)によって測定された養液の組成(養液に含まれる栄養成分の量)に基づいて、作物Xによる窒素(N)の平均吸収速度を算出する。
【0072】
制御部60は、VA´(N)>VB´(N)であると判定した場合(ステップS24で「YES」)、ステップS25に移行する。一方、制御部60は、VA´(N)>VB´(N)でないと判定した場合(ステップS24で「NO」)、ステップS23に戻り、青色光の下での作物Xの栽培を続行する。
【0073】
ここで、例えばトマト、ナス等の果菜類においては、前述の如く生育段階が育苗期の間は窒素(N)の吸収量が増加し、育苗期が終わると窒素(N)の吸収量が減少する。ステップS24では、育苗期が終了すると窒素(N)の吸収量が減少する性質を利用して、窒素(N)の平均吸収速度に基づいて育苗期が終了したかどうかを判断している。具体的には、ステップS24で「YES」の場合とは、作物Xの育苗期が終了したと予測されることを示している。一方、ステップS24で「NO」の場合とは、作物Xが未だ育苗期の最中であると予測されることを示している。
【0074】
ステップS25において、制御部60は、照射部40を消灯させ、作物Xへの青色光の照射を終了させる。こうして、育苗期が終了した後は青色光を消灯させることで、青色光の過剰な照射を抑制でき、ひいては省エネを図ることができる。なお、ステップS21において白色光の下で栽培を行っていた場合には、再び照射部40から白色光を照射してもよい。
【0075】
このようにして、例えばトマト、ナス等の果菜類においては、育苗期に窒素(N)の吸収量が増加する性質を利用して、窒素(N)の平均吸収速度に基づいて生育段階が育苗期であるかどうかが判断される。そして、生育段階が育苗期であると予測される場合に作物Xに青色光を照射することで、トマト、ナス等の果菜類の分岐・花芽数の増加による収穫量の向上を図ることができる。
【0076】
以下、主として
図5を用いて、実施例3の作物Xの栽培方法について説明する。
【0077】
図5は、栽培する対象の作物Xが例えばイチゴ等の果樹類である場合の栽培方法のフローチャートを示している。対象の作物Xは、より詳細には、果実中にアントシアニン等のフラボノイド系成分を含む果樹類である。
図5に示す栽培方法は、収穫直前の果実のみに青色光を照射することで、作物Xの機能性成分を増加させることを目的としている。
【0078】
ステップS31は、白色光または太陽光の下で、栽培槽20において作物Xを栽培する工程である。ステップS31は、実施例1のステップS11と同様であるので、詳細な説明を省略する。ステップS31が実行された後、次にステップS32が実行される。
【0079】
ステップS32において、制御部60は、VA(P)>VB(P)であるか否かを判定する。前述の如く、VB(P)とは、ステップS12の判定日を含む直近の第一期間Bにおける作物Xによるリン(P)の平均吸収速度であり、VA(P)とは、第一期間B以前の第二期間Aにおける作物Xによるリン(P)の平均吸収速度である。制御部60は、成分量測定部50(成分測定器52)によって測定された養液の組成(養液に含まれる栄養成分の量)に基づいて、作物Xによるリン(P)の平均吸収速度を算出する。
【0080】
制御部60は、VA(P)>VB(P)であると判定した場合(ステップS32で「YES」)、ステップS33に移行する。一方、制御部60は、VA(P)>VB(P)でないと判定した場合(ステップS32で「NO」)、ステップS11に戻り、白色光または太陽光の下で作物Xの栽培を続行する。
【0081】
なお、ステップS32の判定は、白色光または太陽光の下で作物Xが栽培されている間、常時行われてもよいが、作物Xの栽培を開始してから所定期間経過後に行われてもよい。前記所定期間は、一般的に果実がこれ以上大きくならないと予想される日までの期間(予想期間)よりも短い期間とされ、例えば前記予想期間の数日あるいは数週間前までの期間としてもよい。
【0082】
ここで、例えばイチゴ等の果樹類においては、果実が大きくなるに従いリン(P)の吸収量が増加し、果実がこれ以上大きくならない大きさまで大きくなるとリン(P)の吸収量が減少する。ステップS32では、この性質を利用して、リン(P)の平均吸収速度に基づいて果実がこれ以上大きくならない大きさまで大きくなっているかどうかを判断している。具体的には、ステップS32で「YES」の場合とは、果実がこれ以上大きくならない大きさまで大きくなっていると予測されることを示している。一方、ステップS32で「NO」の場合とは、果実が未だ大きくなっている最中であると予測されることを示している。
【0083】
ステップS33において、制御部60は、照射部40から作物Xに青色光を照射させる。ステップS33は、実施例1のステップS13と同様であるので、詳細な説明を省略する。ステップS33が実行された後、次にステップS34が実行される。
【0084】
ステップS34において、制御部60は、VA´(P)<VB´(P)であるか否かを判定する。ここで、VB´(P)とは、ステップS34の判定日を含む直近の第三期間B´における作物Xによるリン(P)の平均吸収速度である。また、VA´(P)とは、第三期間B´以前の第四期間A´における作物Xによるリン(P)の平均吸収速度である。制御部60は、成分量測定部50(成分測定器52)によって測定された養液の組成(養液に含まれる栄養成分の量)に基づいて、作物Xによるリン(P)の平均吸収速度を算出する。
【0085】
制御部60は、VA´(P)<VB´(P)であると判定した場合(ステップS34で「YES」)、ステップS35に移行する。一方、制御部60は、VA´(P)<VB´(P)でないと判定した場合(ステップS34で「NO」)、ステップS33に戻り、青色光の下での作物Xの栽培を続行する。
【0086】
ここで、ステップS34で「YES」の場合とは、果実が収穫された後であると予測されることを示している。一方、ステップS34で「NO」の場合とは、果実が未だ収穫されていないと予測されることを示している。
【0087】
ステップS35において、制御部60は、照射部40を消灯させ、作物Xへの青色光の照射を終了させる。こうして、果実が収穫された後は青色光を消灯させることで、青色光の過剰な照射を抑制でき、ひいては省エネを図ることができる。
【0088】
このようにして、例えばイチゴ等の果樹類においては、果実が大きくなるに従いリン(P)の吸収量が増加し、果実がこれ以上大きくならない大きさまで大きくなるとリン(P)の吸収量が減少する性質を利用して、果実がこれ以上大きくならない収穫直前の果実となったかどうかが判断される。そして、果実がこれ以上大きくならない収穫直前の果実となったと予測される場合に作物Xに青色光を照射することで、イチゴ等の果樹類の機能性成分の増加を図ることができる。
【0089】
以上のように、本実施形態に係る養液栽培システム1においては、作物Xの根から吸収される成分量が生育段階(生育ステージ)ごとに異なることを利用して、作物Xの現在の生育段階を生産者の目視や栽培経験に頼らず客観的に判断することができる。このため、作物Xに青色光を照射するタイミングのずれを抑制することができ、ひいては栽培された作物Xの収穫量や品質の安定を図ることができる。
【0090】
また、制御部60によって養液中の栄養成分を常時モニタリングしているので、栽培している作物Xの病気や虫害等の異常や生育不良に早く気付くことができる。
【0091】
以上の如く、本実施形態に係る養液栽培システム1は、
複数の栄養成分を含む養液を貯留する肥料成分調整槽10(養液貯留部)と、
前記肥料成分調整槽10から供給される前記養液によって作物Xを栽培する栽培槽20(栽培部)と、
前記栽培槽20の前記作物Xに光を照射可能な照射部40と、
前記栽培槽20の前記養液に含まれる前記複数の栄養成分のうち、少なくとも一の特定成分の量を測定する成分量測定部50と、
前記成分量測定部50によって測定された前記特定成分の量に基づいて、前記照射部40によって前記作物Xに青色光を照射するタイミングを判断する制御部60(判断部)と、
を具備するものである。
【0092】
このような構成により、作物Xに青色光を照射するタイミングのずれを抑制することで、栽培された作物Xの収穫量や品質の安定を図ることができる。
【0093】
また、本実施形態に係る養液栽培システム1は、
前記成分量測定部50によって測定された前記特定成分の量に基づいて、前記作物Xによる前記特定成分の吸収速度を算出する制御部60(算出部)を具備し、
前記制御部60(判断部)は、
前記制御部60(算出部)によって算出された前記吸収速度に基づいて、前記青色光を照射するタイミングを判断するものである。
【0094】
このような構成により、作物Xに青色光を照射するタイミングの判断の精度を向上させることができる。
【0095】
また、前記制御部60(判断部)は、
直近の第一期間Bにおける前記吸収速度と、前記第一期間B以前の第二期間Aにおける前記吸収速度との比較によって、前記青色光を照射するタイミングを判断するものである。
【0096】
このような構成により、作物Xに青色光を照射するタイミングの判断の精度をより向上させることができる。
具体的には、特定成分の吸収速度を異なる生育期間(第一期間B及び第二期間A)で比較することで青色光を照射するタイミングを判断するため、作物Xの個体による吸収速度の差によって誤った判断がされるのを抑制することができ、ひいては作物Xに青色光を照射するタイミングの判断の精度を向上させることができる。
【0097】
また、前記作物Xは、穀物又は果樹類であり、
前記特定成分は、リンであり、
前記制御部60(判断部)は、
前記リンの前記第二期間Aにおける前記吸収速度V
A(P)が前記第一期間Bにおける前記吸収速度V
B(P)を下回った場合(
図3のステップS12でYES)、前記青色光を照射するタイミングであると判断するものである。
【0098】
このような構成により、穀物又は果樹類である作物Xが開花期であるときに当該作物Xに青色光を照射することができるので、栽培された作物Xの収穫量の向上を図ることができる。
【0099】
また、前記作物Xは、ダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ又はイネであるものである。
【0100】
このような構成により、ダイズ、エダマメ、イチゴ、ゴマ、ササゲ、アズキ、ソラマメ、コムギ又はイネの収穫量の向上を図ることができる。
【0101】
また、前記作物Xは、果菜類であり、
前記特定成分は、窒素であり、
前記制御部60(判断部)は、
前記窒素の前記第二期間Aにおける前記吸収速度V
A(P)が前記第一期間Bにおける前記吸収速度V
B(P)を下回った場合(
図4のステップS22でYES)、前記青色光を照射するタイミングであると判断するものである。
【0102】
このような構成により、果菜類である作物Xが育苗期であるときに当該作物Xに青色光を照射することができるので、栽培された作物Xの収穫量の向上を図ることができる。
【0103】
また、前記作物Xは、トマトであるものである。
【0104】
このような構成により、トマトの収穫量の向上を図ることができる。
【0105】
また、前記作物Xは、果菜類又は果樹類であり、
前記特定成分は、リンであり、
前記制御部60(判断部)は、
前記リンの前記第二期間Aにおける前記吸収速度V
A(P)が前記第一期間Bにおける前記吸収速度V
B(P)を上回った場合(
図5のステップS32でYES)、前記青色光を照射するタイミングであると判断するものである。
【0106】
このような構成により、果菜類又は果樹類である作物Xの果実が収穫直前であるときに当該作物Xの果実に青色光を照射することができるので、栽培された果実の機能性成分の増加を図ることができる。
【0107】
また、前記作物Xは、イチゴであるものである。
【0108】
このような構成により、イチゴの機能性成分の増加を図ることができる。
【0109】
また、本実施形態に係る養液栽培システム1は、
前記制御部60(判断部)が前記青色光を照射するタイミングであると判断すると、前記照射部40によって前記作物Xに前記青色光を照射させる制御部60を具備するものである。
【0110】
このような構成により、栽培された作物Xの収穫量や品質の安定を図ることが可能な適切なタイミングで自動で青色光を作物Xに照射することができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0112】
例えば、本実施形態では、制御部60によって照射部40の点灯/消灯を自動で制御するものとしたが、作業者が手動で照射部40の点灯/消灯を行ってもよい。この場合、養液栽培システム1は、照射部40によって作物Xに青色光を照射するタイミングの判断結果を作業者に通知する通知部を備えることが好ましい。通知部による通知の態様は、限定されるものではなく、例えば音や光の点灯で作業者に青色光を照射するタイミングを通知するものであってもよく、あるいはEメール等で作業者に青色光を照射するタイミングを通知するものであってもよい。作業者は、通知部による通知に基づいて、手動で照射部40の点灯/消灯を行うことができる。
【0113】
また、本実施形態においては、養液中のリンや窒素等の特定成分の平均吸収速度に基づいて作物Xの現在の生育段階、ひいては作物Xに青色光を照射するタイミングを判断するものとしたが、養液中の他の成分の含量に対する特定成分の含量の割合や、特定成分の減少量等に基づいて判断を行ってもよい。
【0114】
なお、
図3のステップS12、
図4のステップS22及び
図5のステップS32において、第二期間Aは第一期間B以前の期間であるとしたが、第二期間Aの全ての期間が第一期間Bより前の期間であってもよく、または第二期間Aは第一期間Bよりも前の期間を含んでいれば第一期間Bと一部重複していてもよい。
図3のステップS14、
図4のステップS24及び
図5のステップS34の第三期間B´及び第四期間A´についても同様に、第四期間A´の全ての期間が第三期間B´より前の期間であってもよく、または第四期間A´は第三期間B´よりも前の期間を含んでいれば第三期間B´と一部重複していてもよい。
【0115】
また、
図3のステップS12及びS14、
図4のステップS22及びS24、
図5のステップS32及びS34においては、成分測定器52の測定誤差等による誤判定を避けるため、ある程度余裕を見た判定としてもよい。例えば、
図3のステップS12では、V
A(P)+α<V
B(P)(αは任意の値)である場合にYES判定するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 養液栽培システム
10 肥料成分調整槽
20 栽培槽
40 照射部
50 成分量測定部
60 制御部