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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141086
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】制御装置、航空機及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/51 20060101AFI20241003BHJP
   B64C 29/00 20060101ALI20241003BHJP
   B64C 27/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B64C27/51
B64C29/00 A
B64C27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052541
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】相澤 凡
(57)【要約】
【解決手段】複数の第1ロータ(VTOLロータ18)のうちのいずれか1つが失陥した場合に、ロータ制御部(VTOLロータ制御部56)は、失陥した第1ロータに隣接する第1ロータである隣接第1ロータが発生させるスラストを増加させるスラスト増加制御を、振動抑制制御を隣接第1ロータに担わせることなく実行し、隣接第1ロータに担わせていたスラスト変動の負担を1以上の第2ロータ(VTOLロータ18)に担わせるように振動抑制制御を実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御装置であって、
複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、
前記制御装置は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストを制御するロータ制御部を備え、
前記ロータ制御部は、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、
複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記ロータ制御部は、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記ロータ制御部は、前記ロータに備えられる複数のブレードのピッチを変動させることにより、前記振動抑制制御を行う、制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置において、
前記ロータ制御部は、前記航空機の重心を対称の中心として、前記隣接第1ロータの位置と対称の位置に配される前記第2ロータに、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を担わせる、制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置において、
前記ロータ制御部は、前記隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させる前記スラスト増加制御を実行すると同時に、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を担う1以上の前記第2ロータが発生させる前記スラストを減少させる、制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置において、
前記ロータ制御部は、
前記航空機の重心を対称の中心として、失陥した前記第1ロータの位置と対称の位置に配される前記第2ロータである対称位置第2ロータの動作を停止させ、
前記対称位置第2ロータを停止させる前に、前記隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させる前記スラスト増加制御を行うとともに、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する、制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置を備える航空機。
【請求項7】
垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御方法であって、
複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、
前記制御方法は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストをロータ制御部が制御する制御ステップを有し、
前記制御ステップでは、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、
複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記制御ステップでは、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、航空機及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはVTOL航空機が開示されている。VTOL航空機は、垂直方向にスラスト(リフトスラスト)を発生させる複数のアクチュエータ(リフトファン)を備える。特許文献1の技術によれば、アクチュエータの制御に関連するパラメータ (例えば、位置、回転速度等) の最適な組み合わせが決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第11034441号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航空機のリフトスラストをより良好に制御し得る制御装置が待望されている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御装置であって、複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、前記制御装置は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストを制御するロータ制御部を備え、前記ロータ制御部は、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記ロータ制御部は、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する。
【0007】
本発明の第2の態様の航空機は、上記の制御装置を備える。
【0008】
本発明の第3の態様は、垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御方法であって、複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、前記制御方法は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストをロータ制御部が制御する制御ステップを有し、前記制御ステップでは、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記制御ステップでは、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、航空機のリフトスラストをより良好に制御し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、航空機の模式図である。
図2図2は、電力供給システムの構成を示す図である。
図3図3は、電力供給システムの構成を示す図である。
図4図4は、制御装置の制御ブロック図である。
図5図5は、本実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、失陥が発生した航空機の模式図である。
図7図7は、4つのVTOLロータのスラストのタイムチャートである。
図8図8は、失陥が発生した航空機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔一実施形態〕
以下で、一実施形態に係る制御装置、航空機及び制御方法を説明する。
【0012】
[航空機の構成]
図1は、航空機10の模式図である。本実施形態の航空機10は、電動垂直離着陸機(eVTOL機)である。本実施形態の航空機10は、電動モータ32によりロータが駆動される。本実施形態の航空機10は、ロータにより垂直方向のスラストと水平方向のスラストとを発生させる。また、本実施形態の航空機10は、ハイブリッド航空機である。本実施形態の航空機10は、電動モータ32(図2図3)の電源として、モータジェネレータ42(図3)とバッテリ30(図2)とを有する。
【0013】
航空機10は、機体12を有する。機体12には、コックピット、キャビン等が設けられる。コックピットには、パイロットが搭乗し、航空機10の操縦をする。キャビンには、搭乗者等が搭乗する。航空機10は、パイロットが搭乗せずに、自動で操縦されてもよい。
【0014】
航空機10は、前翼14及び後翼16を有する。前翼14は、機体12の重心Gよりも前方に取り付けられる。後翼16は、機体12の重心Gよりも後方に取り付けられる。航空機10が前方に移動するときに、前翼14及び後翼16のそれぞれにおいてリフトが発生する。
【0015】
航空機10は、8つのVTOLロータ18を有する。8つのVTOLロータ18とは、ロータ18FLa、ロータ18FLb、ロータ18RLa、ロータ18RLb、ロータ18FRa、ロータ18FRb、ロータ18RRa及びロータ18RRbである。
【0016】
ロータ18FLa、ロータ18FLb、ロータ18RLa及びロータ18RLbは、ブーム20Lに取り付けられる。ブーム20Lは、前後方向に延びる。ブーム20Lは、前翼14と後翼16とに取り付けられる。ブーム20Lは、重心Gに対して左方に設けられる。すなわち、ロータ18FLa、ロータ18FLb、ロータ18RLa及びロータ18RLbは、重心Gに対して左方に配置される。
【0017】
ロータ18FRa、ロータ18FRb、ロータ18RRa及びロータ18RRbは、ブーム20Rに取り付けられる。ブーム20Rは、前後方向に延びる。ブーム20Rは、前翼14と後翼16とに取り付けられる。ブーム20Rは、重心Gに対して右方に設けられる。すなわち、ロータ18FRa、ロータ18FRb、ロータ18RRa及びロータ18RRbは、重心Gに対して右方に配置される。
【0018】
航空機10を上方から見た状態で、ロータ18FLa、ロータ18RLa、ロータ18FRb及びロータ18RRbのそれぞれは左回転する。航空機10を上方から見た状態で、ロータ18FRa、ロータ18RRa、ロータ18FLb及びロータ18RLbのそれぞれは右回転する。
【0019】
VTOLロータ18のそれぞれの回転シャフト(不図示)は、上下方向に延びる。VTOLロータ18のそれぞれは、ロータの回転数、及び、ブレードのピッチ角度が適宜調整されることにより、スラストが制御される。VTOLロータ18のそれぞれは、垂直離陸時、垂直離陸から巡航への移行時、巡航から垂直着陸への移行時、垂直着陸時、空中停止時等において使用される。また、VTOLロータ18のそれぞれは、姿勢制御時に使用される。VTOLロータ18のそれぞれの回転シャフトは、上下方向に対して数度の角度(カント)が付けられていてもよい。
【0020】
8つのVTOLロータ18のそれぞれのスラストが制御されることにより、リフトスラストを発生させる。リフトスラストとは、垂直方向のスラストを示す。リフトスラストの大きさは、8つのVTOLロータ18のそれぞれのスラストの合計に応じて決まる。
【0021】
8つのVTOLロータ18のそれぞれのスラストが制御されることにより、機体12にロールモーメントを作用させる。ロールモーメントの大きさは、重心Gに対して左方に配置された4つのVTOLロータ18のそれぞれのスラストの合計と、重心Gに対して右方に配置された4つのVTOLロータ18のそれぞれのスラストの合計との差に応じて決まる。
【0022】
重心Gに対して左方に配置された4つVTOLロータ18とは、ロータ18FLa、ロータ18FLb、ロータ18RLa及びロータ18RLbを示す。重心Gに対して右方に配置された4つVTOLロータ18とは、ロータ18FRa、ロータ18FRb、ロータ18RRa及びロータ18RRbを示す。
【0023】
8つのVTOLロータ18のそれぞれのスラストが制御されることにより、機体12にピッチモーメントを作用させる。ピッチモーメントの大きさは、重心Gに対して前方に配置された4つのVTOLロータ18のそれぞれのスラストの合計と、重心Gに対して後方に配置された4つのVTOLロータ18のそれぞれのスラストの合計との差に応じて決まる。
【0024】
重心Gに対して前方に配置された4つのVTOLロータ18とは、ロータ18FLa、ロータ18FLb、ロータ18FRa及びロータ18FRbを示す。重心Gに対して後方に配置された4つのVTOLロータ18とは、ロータ18RLa、ロータ18RLb、ロータ18RRa及びロータ18RRbを示す。
【0025】
8つのVTOLロータ18のそれぞれにおける反トルクが制御されることにより、機体12にヨーモーメントを作用させる。ヨーモーメントの大きさは、左回転する4つのVTOLロータ18のそれぞれの反トルクの合計と、右回転する4つのVTOLロータ18のそれぞれの反トルクの合計との差に応じて決まる。
【0026】
VTOLロータ18のそれぞれの回転シャフトが、上下方向に対して数度の角度(カント)が付けられている場合、VTOLロータ18により、機体12の側面方向にスラストが発生する。この場合、ヨーモーメントの大きさは、前述の反トルクの合計の差に加えて、機体12の左回転方向に向かって発生するスラストによって生じるモーメントと、機体12の右回転方向に向かって発生するスラストによって生じるモーメントとの差に応じて決まる。
【0027】
左回転する4つのVTOLロータ18とは、ロータ18FLa、ロータ18RLa、ロータ18FRb及びロータ18RRbを示す。右回転する4つのVTOLロータ18とは、ロータ18FRa、ロータ18RRa、ロータ18FLb及びロータ18RLbを示す。
【0028】
航空機10は、2つのクルーズロータ22を有する。2つのクルーズロータ22とは、ロータ22L及びロータ22Rである。
【0029】
ロータ22L及びロータ22Rは、機体12の後部に取り付けられる。ロータ22Lは、機体12の長さ方向に沿う中心線Aに対して左方に配置される。ロータ22Rは、機体12の長さ方向に沿う中心線Aに対して右方に配置される。
【0030】
クルーズロータ22のそれぞれの回転シャフト(不図示)は、前後方向に延びる。クルーズロータ22のそれぞれは、ロータの回転数、及び、ブレードのピッチ角度が調整されることにより、スラストが制御される。クルーズロータ22のそれぞれは、垂直離陸から巡航への移行時、巡航時、巡航から垂直着陸への移行時等において使用される。また、クルーズロータ22のそれぞれは、姿勢制御時に使用される。クルーズロータ22のそれぞれの回転シャフトは、前後方向に対して数度の角度(カント)が付けられていてもよい。
【0031】
2つのクルーズロータ22のそれぞれのスラストが制御されることにより、クルーズスラストが発生する。クルーズスラストとは、水平方向のスラストを示す。クルーズスラストの大きさは、2つのクルーズロータ22のそれぞれのスラストの合計に応じて決まる。
【0032】
2つのクルーズロータ22のそれぞれのスラストが制御されることにより、機体12にヨーモーメントを作用させる。ヨーモーメントの大きさは、ロータ22Lのスラストの大きさと、ロータ22Rのスラストの大きさとの差に応じて決まる。
【0033】
[電力供給システムの構成]
図2は、電力供給システム24の構成を示す図である。図2は、主に、4つのバッテリ30と、12個の電動モータ32との接続関係を示す。図3は、電力供給システム24の構成を示す図である。
【0034】
それぞれのVTOLロータ18に対して、1組の駆動ユニット26が設けられる。ロータ18FLaに対して、駆動ユニット26FLaが設けられる。ロータ18FLbに対して、駆動ユニット26FLbが設けられる。ロータ18RLaに対して、駆動ユニット26RLaが設けられる。ロータ18RLbに対して、駆動ユニット26RLbが設けられる。ロータ18FRaに対して、駆動ユニット26FRaが設けられる。ロータ18FRbに対して、駆動ユニット26FRbが設けられる。ロータ18RRaに対して、駆動ユニット26RRaが設けられる。ロータ18RRbに対して、駆動ユニット26RRbが設けられる。
【0035】
それぞれのクルーズロータ22に対して、2組の駆動ユニット26が設けられる。ロータ22Lに対して、駆動ユニット26La及び駆動ユニット26Lbが設けられる。ロータ22Rに対して、駆動ユニット26Ra及び駆動ユニット26Rbが設けられる。
【0036】
3組の駆動ユニット26に対して、1つのバッテリ30が接続される。駆動ユニット26FRa、駆動ユニット26RLa及び駆動ユニット26Raに対して、バッテリ30aが接続される。駆動ユニット26FLa、駆動ユニット26RRa及び駆動ユニット26Laに対して、バッテリ30bが接続される。駆動ユニット26FRb、駆動ユニット26RLb及び駆動ユニット26Rbに対して、バッテリ30cが接続される。駆動ユニット26FLb、駆動ユニット26RRb及び駆動ユニット26Lbに対して、バッテリ30dが接続される。
【0037】
それぞれの駆動ユニット26は、電動モータ32及びインバータ34を有する。電動モータ32は、三相モータである。電動モータ32の出力シャフト(不図示)は、それぞれのVTOLロータ18の回転シャフト、又は、クルーズロータ22の回転シャフトに連結される。インバータ34は、入力された直流の電力を三相交流の電力に変換して電動モータ32に出力する。
【0038】
図3に示すように、3組の駆動ユニット26と1つのバッテリ30とにより、駆動モジュール36が構成される。駆動ユニット26FRa、駆動ユニット26RLa、駆動ユニット26Ra及びバッテリ30aにより、駆動モジュール36aが構成される。駆動ユニット26FLa、駆動ユニット26RRa、駆動ユニット26La及びバッテリ30bにより駆動モジュール36bが構成される。駆動ユニット26FRb、駆動ユニット26RLb、駆動ユニット26Rb及びバッテリ30cにより駆動モジュール36cが構成される。駆動ユニット26FLb、駆動ユニット26RRb、駆動ユニット26Lb及びバッテリ30dにより、駆動モジュール36dが構成される。
【0039】
それぞれの駆動モジュール36は、発電モジュール38に接続される。発電モジュール38は、エンジン40、モータジェネレータ42及びパワーコントロールユニット(以下、PCU)44を有する。
【0040】
エンジン40は、ガスタービンエンジンである。エンジン40は、レシプロエンジンであってもよい。モータジェネレータ42は、三相モータとして機能するとともに、三相発電機としても機能する。モータジェネレータ42の回転シャフト(不図示)は、エンジン40の出力シャフト(不図示)に連結される。
【0041】
PCU44は、インバータ及びコンバータである。PCU44は、モータジェネレータ42から入力された三相交流の電力を直流の電力に変換して出力する。また、PCU44は、それぞれのバッテリ30から入力された直流の電力を三相交流の電力に変換してモータジェネレータ42に出力する。
【0042】
図3に示すように、それぞれの駆動モジュール36はスイッチ48を有する。それぞれのスイッチ48は、IGBT等のスイッチング素子及びダイオードを有する。それぞれのスイッチ48は、発電モジュール38から駆動モジュール36への電力の供給を常時許容する。それぞれのスイッチ48は、オンである場合に、駆動モジュール36から発電モジュール38への電力の供給を許容する。
【0043】
それぞれのスイッチ48がオンである場合には、それぞれのバッテリ30からモータジェネレータ42に電力が供給される。これにより、モータジェネレータ42が動作し、エンジン40を始動する。エンジン40が動作している場合には、モータジェネレータ42により発電された電力が、それぞれのバッテリ30、及び、それぞれの電動モータ32に供給される。これにより、それぞれのバッテリ30が充電される。また、それぞれの電動モータ32が動作する。
【0044】
なお、図2及び図3には、電力供給システム24の概略が示されている。図2及び図3に示す電力供給システム24は、一部の部材を省略している。省略されている部材は、例えば、電動モータ32以外の電気的負荷、抵抗、コイル、コンデンサ、各種センサ類ヒューズ、リレー、ブレーカ、プリチャージ回路、DC-DCコンバータ等である。
【0045】
[制御装置の構成]
図4は、制御装置50の制御ブロック図である。制御装置50は、それぞれのVTOLロータ18のスラストの制御、及び、それぞれのクルーズロータ22のスラストの制御を行う。制御装置50は、演算部52及び記憶部54を有する。
【0046】
演算部52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。演算部52は、VTOLロータ制御部56、クルーズロータ制御部58及び姿勢判定部60を有する。VTOLロータ制御部56は、失陥判定部62、指令値算出部64、指令値生成部66及び制御部68を有する。指令値算出部64は、第1算出部70、第2算出部72、第3算出部74及び第4算出部76を有する。クルーズロータ制御部58は、指令値算出部78、指令値生成部80及び制御部82を有する。
【0047】
VTOLロータ制御部56、クルーズロータ制御部58及び姿勢判定部60は、記憶部54に記憶されているプログラムが演算部52によって実行されることによって実現される。VTOLロータ制御部56、クルーズロータ制御部58及び姿勢判定部60の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されてもよい。VTOLロータ制御部56、クルーズロータ制御部58及び姿勢判定部60の少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0048】
記憶部54は、コンピュータ可読記憶媒体である、不図示の揮発性メモリ及び不図示の不揮発性メモリにより構成される。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)等である。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等である。データ等が、例えば、揮発性メモリに記憶される。プログラム、テーブル、マップ等が、例えば、不揮発性メモリに記憶される。記憶部54の少なくとも一部が、上述したプロセッサ、集積回路等に備えられていてもよい。
【0049】
失陥判定部62は、8つのVTOLロータ18のいずれか1つが失陥したかを判定する。例えば、失陥判定部62は、各々のVTOLロータ18又は各々の電動モータ32に備えられたエンコーダ等の信号をモニタしてもよい。この場合、失陥判定部62は、信号が示す回転数と回転数閾値とを比較することによってVTOLロータ18が失陥したかを判定し得る。あるいは、失陥判定部62は、姿勢判定部60によって判定される機体12の姿勢変化量と姿勢変化の閾値とを比較することによってVTOLロータ18が失陥したかを判定し得る。あるいは、失陥判定部62は、VTOLロータ18と電動モータ32との間に介在するギアのギア比と、VTOLロータ18の回転数(又は電動モータ32の回転数)とから、VTOLロータ18が失陥したかを判定し得る。あるいは、失陥判定部62は、VTOLロータ18の制御に関わる通信システムが途絶した場合に、VTOLロータ18が失陥したと判定し得る。
【0050】
第1算出部70は、リフトスラスト指令値を算出する。リフトスラスト指令値は、例えば、パイロットによる操作入力部の操作量に応じて決定される。操作入力部とは、例えば、操縦桿、ペダル、レバー等である。操作入力部の操作量と、リフトスラスト指令値とは一対一で対応しなくてもよい。操作入力部の操作範囲、操作入力部の操作速度、機体12の高度等に応じて、操作入力部の操作量に対して、リフトスラスト指令値を可変にしてもよい。機体12の高度は、例えば、地面距離計(不図示)が検出した地面と機体12との間の距離に基づいて推定される。機体12の高度は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)から受信した信号に基づいて推定される。
【0051】
パイロットによる操作入力部に対する操作の入力がない場合、操作入力部の操作量に関係なく、リフトスラスト指令値が自動的に決定され、ホバリングをしてもよい。また、航空機10が自動で制御される場合、予め設定された飛行経路に応じて、操作入力部の操作量に関係なく、リフトスラスト指令値が自動的に決定されてもよい。
【0052】
第2算出部72は、ロールモーメント指令値を算出する。ロールモーメント指令値は、パイロットによる操作入力部の操作量に応じて決定される。操作入力部の操作量と、ロールモーメント指令値とは一対一で対応しなくてもよい。操作入力部の操作範囲、操作入力部の操作速度、機体12の角速度等に応じて、操作入力部の操作量に対して、ロールモーメント指令値を可変にしてもよい。機体12の角速度は、例えば、ジャイロセンサ(不図示)により検出される。
【0053】
パイロットによる操作入力部に対する操作の入力がない場合、操作入力部の操作量に関係なく、ロールモーメント指令値が自動的に決定され、ホバリングをしてもよい。また、航空機10が自動で制御される場合、予め設定された飛行経路に応じて、操作入力部の操作量に関係なく、ロールモーメント指令値が自動的に決定されてもよい。
【0054】
第3算出部74は、ピッチモーメント指令値を算出する。ピッチモーメント指令値は、例えば、パイロットによる操作入力部の操作量に応じて決定される。操作入力部の操作量と、ピッチモーメント指令値とは一対一で対応しなくてもよい。操作入力部の操作範囲、操作入力部の操作速度、機体12の角速度等に応じて、操作入力部の操作量に対して、ピッチモーメント指令値を可変にしてもよい。
【0055】
パイロットによる操作入力部に対する操作の入力がない場合、操作入力部の操作量に関係なく、ピッチモーメント指令値が自動的に決定され、ホバリングをしてもよい。また、航空機10が自動で制御される場合、予め設定された飛行経路に応じて、操作入力部の操作量に関係なく、ピッチモーメント指令値が自動的に決定されてもよい。
【0056】
第4算出部76は、ヨーモーメント指令値を算出する。ヨーモーメント指令値は、例えば、パイロットによる操作入力部の操作量に応じて決定される。操作入力部の操作量と、ヨーモーメント指令値とは一対一で対応しなくてもよい。操作入力部の操作範囲、操作入力部の操作速度、機体12の角速度等に応じて、操作入力部の操作量に対して、ヨーモーメント指令値を可変にしてもよい。
【0057】
パイロットによる操作入力部に対する操作の入力がない場合、操作入力部の操作量に関係なく、ヨーモーメント指令値が自動的に決定され、ホバリングをしてもよい。また、航空機10が自動で制御される場合、予め設定された飛行経路に応じて、操作入力部の操作量に関係なく、ヨーモーメント指令値が自動的に決定されてもよい。
【0058】
指令値生成部66は、それぞれのVTOLロータ18に対するスラスト指令値を生成する。指令値生成部66は、リフトスラスト指令値、ロールモーメント指令値、ピッチモーメント指令値及びヨーモーメント指令値に基づいて、スラスト指令値を生成する。更に、指令値生成部66は、いずれかのVTOLロータ18が失陥した場合に、機体12の姿勢が安定するまで、それぞれのVTOLロータ18のスラスト指令値を補正する。
【0059】
制御部68は、それぞれのVTOLロータ18に対するスラスト指令値に基づいて、それぞれのVTOLロータ18におけるスラストを制御する。
【0060】
指令値算出部78は、クルーズスラスト指令値を算出する。クルーズスラスト指令値は、例えば、パイロットによる操作入力部の操作量に応じて決定される。操作入力部の操作量と、クルーズスラスト指令値とは一対一で対応しなくてもよい。操作入力部の操作範囲、操作入力部の操作速度、機体12の対気速度等に応じて、操作入力部の操作量に対して、クルーズスラスト指令値を可変にしてもよい。機体12の対気速度は、例えば、対気速度センサ(不図示)により検出される。
【0061】
パイロットによる操作入力部に対する操作の入力がない場合、クルーズスラスト指令値が自動的に決定され、航空機10は一定の速度で飛行してもよい。また、航空機10が自動で制御される場合、予め設定された飛行経路に応じて、操作入力部の操作量に関係なく、クルーズスラスト指令値が自動的に決定されてもよい。
【0062】
指令値生成部80は、それぞれのクルーズロータ22に対するスラスト指令値を生成する。指令値生成部80は、クルーズスラスト指令値に基づいて、スラスト指令値を生成する。
【0063】
制御部82は、それぞれのクルーズロータ22に対するスラスト指令値に基づいて、それぞれのクルーズロータ22におけるスラストを制御する。
【0064】
姿勢判定部60は、航空機10に備えられた3軸加速度センサや方位センサ等の信号をモニタする。姿勢判定部60は、各信号に基づいて機体12の姿勢変化量及び姿勢を判定する。
【0065】
[振動抑制制御]
航空機10の飛行中に、機体12は、風等の外乱を受けることによって、所定周波数以上の周波数で振動する。これに対して、VTOLロータ制御部56は、機体12の振動を抑制するための制御(振動抑制制御)を行う。VTOLロータ制御部56は、外乱を相殺するための周波数(所定周波数以上の周波数)でスラストを変動させるスラスト変動を、各々のVTOLロータ18に担わせる。各々のVTOLロータ18のスラストが変動することによって、振動は相殺される。このため、機体12の振動は抑制される。
【0066】
例えば、指令値生成部66は、振動抑制制御のためのスラスト変動成分が付加されたスラスト指令値を生成する。制御部68は、振動抑制制御を、VTOLロータ18の回転数を変動させることによって行うことができる。また、制御部68は、振動抑制制御を、VTOLロータ18に備えられる複数のブレードのピッチを変動させることによって行うことができる。本実施形態では、制御部68は、VTOLロータ18の回転数変動による振動抑制制御よりも、ブレードのピッチ変動による振動抑制制御を優先して行う。
【0067】
[VTOLロータが失陥した場合の制御]
本実施形態では、機体12の長さ方向に沿う中心線A(仮想線)に対して一方側(左右の一方側)に配される複数のVTOLロータ18(第1ロータ)が一方のグループに属する。同様に、本実施形態では、機体12の長さ方向に沿う中心線A(仮想線)に対して他方側(左右の他方側)に配される複数のVTOLロータ18(第2ロータ)が他方のグループに属する。VTOLロータ制御部56は、いずれかのVTOLロータ18に失陥が発生した場合に、各々のグループから1以上のVTOLロータ18を選択し、選択したVTOLロータ18に対して、通常のスラスト制御とは異なるスラスト制御を行う。以下でその制御を説明する。
【0068】
図5は、本実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。VTOLロータ制御部56は、航空機10の飛行中に、図5に示す処理を所定の周期で繰り返し実行する。なお、以下の説明では、失陥したVTOLロータ18を失陥ロータ18とも称する。また、失陥ロータ18に隣接するVTOLロータ18を隣接ロータ18(隣接第1ロータ)とも称する。
【0069】
ステップS1において、失陥判定部62は、複数のVTOLロータ18のうちの1つVTOLロータ18が失陥しているかを判定する。いずれかのVTOLロータ18が失陥している場合(ステップS1:YES)、処理はステップS2に移行する。一方、いずれのVTOLロータ18も失陥していない場合(ステップS1:NO)、処理は終了する。
【0070】
ステップS1からステップS2に移行すると、失陥判定部62は、失陥したVTOLロータ18の位置を判定する。右側のVTOLロータ18が失陥している場合(ステップS2:右側)、処理はステップS3及びステップS4に移行する。一方、左側のVTOLロータ18が失陥している場合(ステップS2:左側)、処理はステップS6及びステップS7に移行する。
【0071】
ステップS2からステップS3及びステップS4に移行すると、制御装置50は、失陥ロータ18以外の右側のVTOLロータ18(第1ロータ)と、左側のVTOLロータ18(第2ロータ)とを制御して、機体12の姿勢を安定させる。
【0072】
ステップS3において、VTOLロータ制御部56は、複数の右側のVTOLロータ18のうち、隣接ロータ18が発生させるスラストを増加させる。上述したように、隣接ロータ18は、失陥ロータ18に隣接するVTOLロータ18である。隣接ロータ18が発生させるスラストを増加させる制御を、スラスト増加制御と称する。VTOLロータ18が失陥した直後、機体12に発生するリフトスラストのバランスは一時的に崩れる。スラスト増加制御は、リフトスラストのバランスを回復させるための制御である。例えば、指令値生成部66は、隣接ロータ18のスラスト指令値を、VTOLロータ18が失陥する前の隣接ロータ18のスラスト指令値よりも増加させる。その一方で、指令値生成部66は、隣接ロータ18のスラスト指令値に、振動抑制制御のためのスラスト変動成分を割り当てない。つまり、指令値生成部66は、隣接ロータ18に、振動抑制制御のためのスラスト変動を担わせない。制御部68は、生成されたスラスト指令値に基づいて、隣接ロータ18の回転数又はブレードのピッチを制御する。これにより、隣接ロータ18が発生させるスラストは増加する。
【0073】
ステップS4において、VTOLロータ制御部56は、隣接ロータ18の振動抑制制御ためのスラスト変動の負担を、左側のVTOLロータ18に担わせる。例えば、指令値生成部66は、複数の左側のVTOLロータ18のうち、航空機10の重心Gを対称の中心として、隣接ロータ18の位置と対称の位置に配されるVTOLロータ18を選択する。指令値生成部66は、選択されたVTOLロータ18のスラスト指令値に、隣接ロータ18に割り当てていた振動抑制成分を割り当てる。つまり、指令値生成部66は、選択したVTOLロータ18に、隣接ロータ18に担わせていた振動抑制制御のためのスラスト変動の負担を担わせる。
【0074】
仮に、大きなスラストを発生させる隣接ロータ18に対して、スラストを所定周波数以上で変動させる振動抑制制御が実行されると、隣接ロータ18を動作させる電動モータ32の消費電力が更に増加する。本実施形態によれば、隣接ロータ18が振動抑制制御のためのスラスト変動を担わないため、隣接ロータ18を動作させる電動モータ32の消費電力の増加を抑制することができる。
【0075】
ステップS5において、姿勢判定部60は、機体12の姿勢が安定したかを判定する。この判定は、ステップS3及びステップS4の実行中に定期的に行われる。機体12の姿勢が安定した場合(ステップS5:YES)、処理は終了する。処理終了後、VTOLロータ制御部56は、失陥ロータ18以外の複数のVTOLロータ18を協調制御することによって、機体12の姿勢を安定させる。一方、機体12の姿勢が安定していない場合(ステップS5:NO)、ステップS3の処理及びステップS4の処理が継続して行われる。
【0076】
ステップS2からステップS6及びステップS7に移行すると、制御装置50は、失陥ロータ18以外の左側のVTOLロータ18(第1ロータ)と、右側のVTOLロータ18(第2ロータ)とを制御して、機体12の姿勢を安定させる。
【0077】
ステップS6において、VTOLロータ制御部56は、複数の左側のVTOLロータ18のうち、隣接ロータ18が発生させるスラストを増加させる。例えば、指令値生成部66は、ステップS3の処理と同様にして、隣接ロータ18のスラスト指令値を生成する。
【0078】
ステップS7において、VTOLロータ制御部56は、隣接ロータ18の振動抑制制御のためのスラスト変動の負担を、右側のVTOLロータ18に担わせる。例えば、指令値生成部66は、ステップS4の処理と同様にして、複数の右側のVTOLロータ18から1以上のVTOLロータ18を選択する。指令値生成部66は、ステップS4の処理と同様にして、選択されたVTOLロータ18のスラスト指令値を生成する。
【0079】
ステップS8において、姿勢判定部60は、機体12の姿勢が安定したかを判定する。この判定は、ステップS6及びステップS7の実行中に定期的に行われる。機体12の姿勢が安定した場合(ステップS8:YES)、処理は終了する。処理終了後、VTOLロータ制御部56は、失陥ロータ18以外の複数のVTOLロータ18を協調制御することによって、機体12の姿勢を安定させる。一方、機体12の姿勢が安定していない場合(ステップS8:NO)、ステップS6の処理及びステップS7の処理が継続して行われる。
【0080】
[具体例1]
図6は、失陥が発生した航空機10の模式図である。図7は、4つのVTOLロータ18のスラストのタイムチャートである。以下では、ロータ18FRaが失陥した場合を例にして、図5に示す処理についての説明をする。
【0081】
図6のうち、実線の「×」印が付されるVTOLロータ18は、失陥が発生したVTOLロータ18である。図6のうち、破線の「×」印が付されるVTOLロータ18は、制御によって停止させるVTOLロータ18である。図6のうち、実線の矢印84が付されるVTOLロータ18は、一時的にスラストが増加されるVTOLロータ18である。図6のうち、破線の矢印86が付されるVTOLロータ18は、一時的にスラストが減少されるVTOLロータ18である。
【0082】
図7に示すように、時点t1でロータ18FRaに失陥が発生すると、ロータ18FRaが発生させるスラストは減少してゼロに至る。時点t2で、失陥判定部62は、ロータ18FRaに失陥が発生したと判定する。時点t2は、時点t1からセンサの検出遅れ時間分だけ経過したタイミングである。
【0083】
VTOLロータ制御部56は、失陥判定後に、ロータ18FRaに隣接するロータ18FRbを対象にして図5に示すステップS3の処理を実行する。すなわち、VTOLロータ制御部56は、ロータ18FRbに、振動抑制制御のためのスラスト変動を担わせることなく、ロータ18FRbが発生させるスラストを増加させる。すると、図7に示すように、時点t3で、ロータ18FRbが発生させるスラストは増加を始める。時点t3は、時点t2から機械等の応答遅れ時間分だけ遅れたタイミングである。時点t4で機体12の姿勢が安定すると、VTOLロータ制御部56は、ロータ18FRbのスラスト制御を通常の制御に戻す。時点t4以降、VTOLロータ制御部56は、ロータ18FRbに、振動抑制制御のためのスラスト変動を担わせる。時点t4以降にロータ18FRbが発生させるスラストは、時点t1以前のスラストよりも大きく、時点t3から時点t4までのスラストよりも小さくなる。
【0084】
VTOLロータ制御部56は、失陥判定後に、重心Gを対称の中心として、ロータ18FRbの位置と対称の位置に配されるロータ18RLbを対象にして、図5に示すステップS4の処理を実行する。すなわち、VTOLロータ制御部56は、ロータ18RLbに、ロータ18FRbに担わせていた振動抑制制御のためのスラスト変動の負担を担わせる。更に、VTOLロータ制御部56は、一時的にロータ18RLbが発生させるスラストを、時点t2より前にロータ18RLbが発生させたスラストよりも減少させる。すると、図7に示すように、時点t3で、ロータ18RLbが発生させるスラストは、一時的に減少する。ロータ18RLbのスラストには、ロータ18FRbに割り当てられていた振動抑制制御のためのスラスト変動成分が割り当てられている。時点t4で機体12の姿勢が安定すると、VTOLロータ制御部56は、ロータ18RLbのスラスト制御を通常の制御に戻す。時点t4以降にロータ18RLbが発生させるスラストは、時点t1以前のスラストよりも大きく、時点t3から時点t4までのスラストよりも小さくなる。
【0085】
図6及び図7に示すように、VTOLロータ制御部56は、重心Gを対称の中心として、失陥したロータ18FRaの位置と対称の位置に配されるロータ18RLa(対称位置第2ロータ)を停止させてもよい。VTOLロータ制御部56は、失陥判定後に、ロータ18RLaを停止させる。すると、図7に示すように、時点t3で、ロータ18RLaが発生させるスラストは減少してゼロに至る。
【0086】
なお、図7に示すように、VTOLロータ制御部56は、時点t4以降の時点t5に、ロータ18RLaを停止させてもよい。この場合、VTOLロータ制御部56は、図5に示すステップS3及びステップS4の処理が終了した後に、ロータ18RLaを停止させる。
【0087】
[具体例2]
図8は、失陥が発生した航空機10の模式図である。図8のうち、実線の「×」印が付されるVTOLロータ18は、失陥が発生したVTOLロータ18である。図8のうち、実線の矢印84が付されるVTOLロータ18は、一時的にスラストが増加されるVTOLロータ18である。図8のうち、破線の矢印86が付されるVTOLロータ18は、一時的にスラストが減少されるVTOLロータ18である。
【0088】
図8に示すように、ロータ18FRaが失陥した場合、VTOLロータ制御部56は、ロータ18FRbに振動抑制制御のためのスラスト変動を担わせることなく、ロータ18FRbが発生させるスラストを増加させる。この場合、VTOLロータ制御部56は、左側の1以上のVTOLロータ18を対象にして図5に示すステップS4の処理を実行してもよい。図8に示す例では、ロータ18RLa及びロータ18FLaが図5に示すステップS4の処理の制御対象とされる。また、VTOLロータ制御部56は、左側のVTOLロータ18を停止させなくてもよい。
【0089】
[その他]
上記においては、機体12の長さ方向に沿う中心線Aによって複数のVTOLロータ18がグループ分けされる場合を例に説明したが、これに限定されない。機体12の幅方向に沿う仮想線によって複数のVTOLロータ18がグループ分けされてもよい。この場合、仮想線に対して一方側(例えば前側)に配される複数のVTOLロータ18(第1ロータ)が1つのグループとされ、仮想線に対して他方側(例えば後側)に配される複数のVTOLロータ18(第2ロータ)が1つのグループとされてもよい。
【0090】
[付記]
上述した開示に関し、更に以下の付記を開示する。
【0091】
(付記1)
第1の開示は、垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータ(18)が備えられた航空機(10)を制御する制御装置(50)であって、複数の前記ロータは、機体(12)の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線(A)に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、前記制御装置は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストを制御するロータ制御部(56)を備え、前記ロータ制御部は、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記ロータ制御部は、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータ(18)が発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する。
【0092】
上記構成によれば、第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、隣接第1ロータが発生させるスラストを増加させるため、機体の姿勢を迅速に安定させることができる。
【0093】
なお、仮に、大きなスラストを発生させる隣接第1ロータに対して、スラストを所定周波数以上で変動させる振動抑制制御が実行されると、隣接第1ロータを動作させる電動モータの消費電力が更に増加する。上記構成によれば、隣接第1ロータが振動抑制制御のためのスラスト変動を担わないため、隣接第1ロータを動作させる電動モータの消費電力の増加を抑制することができる。
【0094】
スラスト増加制御と振動抑制制御とを同時に行うためには、大きな出力を得られる電動モータが必要である。つまり、大型の電動モータが必要になる。これに対して、上記構成によると、スラスト増加制御と振動抑制制御とを同時に行わない。従って、上記構成によれば、隣接第1ロータの大型化を抑制することができる。言い換えると、上記構成によれば、全体のロータを小型且つ軽量にすることができる。結果として、上記構成によれば、電費を向上させることが可能になる。
【0095】
(付記2)
付記1に記載の制御装置において、前記ロータ制御部は、前記ロータに備えられる複数のブレードのピッチを変動させることにより、前記振動抑制制御を行ってもよい。
【0096】
(付記3)
付記1又は2に記載の制御装置において、前記ロータ制御部は、前記航空機の重心(G)を対称の中心として、前記隣接第1ロータの位置と対称の位置に配される前記第2ロータに、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を担わせてもよい。
【0097】
(付記4)
付記1~3のいずれか1つに記載の制御装置において、前記ロータ制御部は、前記隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させる前記スラスト増加制御を実行すると同時に、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を担う1以上の前記第2ロータが発生させる前記スラストを減少させてもよい。
【0098】
(付記5)
付記1又は2に記載の制御装置において、前記ロータ制御部は、前記航空機の重心を対称の中心として、失陥した前記第1ロータの位置と対称の位置に配される前記第2ロータである対称位置第2ロータの動作を停止させ、前記対称位置第2ロータを停止させる前に、前記隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させる前記スラスト増加制御を行うとともに、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行してもよい。
【0099】
(付記6)
航空機は、付記1~5のいずれか1つに記載の制御装置を備える。
【0100】
(付記7)
第2の開示は、垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御方法であって、複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、前記制御方法は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストをロータ制御部が制御する制御ステップを有し、前記制御ステップでは、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記制御ステップでは、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する。
【0101】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0102】
10…航空機 12…機体
18…VTOLロータ(第1ロータ、第2ロータ、隣接第1ロータ、ロータ)
50…制御装置
56…VTOLロータ制御部(ロータ制御部)
A…中心線(仮想線) G…重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の第1の態様は、垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御装置であって、複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、前記制御装置は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストを制御するロータ制御部を備え、前記ロータ制御部は、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記ロータ制御部は、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御のための前記スラスト変動を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の第3の態様は、垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御方法であって、複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、前記制御方法は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストをロータ制御部が制御する制御ステップを有し、前記制御ステップでは、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記制御ステップでは、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御のための前記スラスト変動を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
VTOLロータ制御部56は、失陥判定後に、重心Gを対称の中心として、ロータ18FRbの位置と対称の位置に配されるロータ18RLbを対象にして、図5に示すステップS4の処理を実行する。すなわち、VTOLロータ制御部56は、ロータ18RLbに、ロータ18FRbに担わせていた振動抑制制御のためのスラスト変動の負担を担わせる。更に、VTOLロータ制御部56は、一時的にロータ18RLbが発生させるスラストを、時点t2より前にロータ18RLbが発生させたスラストよりも減少させる。すると、図7に示すように、時点t3で、ロータ18RLbが発生させるスラストは、一時的に減少する。ロータ18RLbのスラストには、ロータ18FRbに割り当てられていた振動抑制制御のためのスラスト変動成分が割り当てられている。時点t4で機体12の姿勢が安定すると、VTOLロータ制御部56は、ロータ18RLbのスラスト制御を通常の制御に戻す。時点t4以降にロータ18RLbが発生させるスラストは、時点t1以前のスラストよりも大きく、時点t3から時点t4までのスラストよりも大きくなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
(付記1)
第1の開示は、垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータ(18)が備えられた航空機(10)を制御する制御装置(50)であって、複数の前記ロータは、機体(12)の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線(A)に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、前記制御装置は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストを制御するロータ制御部(56)を備え、前記ロータ制御部は、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記ロータ制御部は、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータ(18)が発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御のための前記スラスト変動を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
(付記7)
第2の開示は、垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御方法であって、複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、前記制御方法は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストをロータ制御部が制御する制御ステップを有し、前記制御ステップでは、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記制御ステップでは、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御のための前記スラスト変動を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御装置であって、
複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、
前記制御装置は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストを制御するロータ制御部を備え、
前記ロータ制御部は、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、
複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記ロータ制御部は、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御のための前記スラスト変動を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記ロータ制御部は、前記ロータに備えられる複数のブレードのピッチを変動させることにより、前記振動抑制制御を行う、制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置において、
前記ロータ制御部は、前記航空機の重心を対称の中心として、前記隣接第1ロータの位置と対称の位置に配される前記第2ロータに、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を担わせる、制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置において、
前記ロータ制御部は、前記隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させる前記スラスト増加制御を実行すると同時に、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を担う1以上の前記第2ロータが発生させる前記スラストを減少させる、制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置において、
前記ロータ制御部は、
前記航空機の重心を対称の中心として、失陥した前記第1ロータの位置と対称の位置に配される前記第2ロータである対称位置第2ロータの動作を停止させ、
前記対称位置第2ロータを停止させる前に、前記隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させる前記スラスト増加制御を行うとともに、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の前記負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する、制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置を備える航空機。
【請求項7】
垂直方向のスラストを発生させ得る複数のロータが備えられた航空機を制御する制御方法であって、
複数の前記ロータは、機体の長さ方向又は前記機体の幅方向に沿う仮想線に対して一方側に配される複数の第1ロータと、前記仮想線に対して他方側に配される複数の第2ロータとを含み、
前記制御方法は、複数の前記ロータの各々が発生させる前記スラストをロータ制御部が制御する制御ステップを有し、
前記制御ステップでは、所定周波数以上の周波数で前記スラストを変動させるスラスト変動を前記ロータに担わせることにより、前記航空機の振動を抑制する振動抑制制御を実行可能であり、
複数の前記第1ロータのうちのいずれか1つが失陥した場合に、前記制御ステップでは、失陥した前記第1ロータに隣接する前記第1ロータである隣接第1ロータが発生させる前記スラストを増加させるスラスト増加制御を、前記振動抑制制御のための前記スラスト変動を前記隣接第1ロータに担わせることなく実行し、前記隣接第1ロータに担わせていた前記スラスト変動の負担を1以上の前記第2ロータに担わせるように前記振動抑制制御を実行する、制御方法。