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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141090
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】固定用基礎
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/62 20060101AFI20241003BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04H15/62 Z
E04B1/343 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052547
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 浩樹
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141FF00
2E141FF03
(57)【要約】
【課題】人工地盤にテントを強固に固定することができる固定用基礎を提供する。
【解決手段】人工地盤10は、コンクリート層24と、コンクリート層24を上方から覆う土壌層25と、テントが固定される固定用基礎30と、を有する。固定用基礎30は、コンクリート層24に一体化され、コンクリート層24から土壌層25の表層部分まで延びる基礎部31と、基礎部31の上端部に設けられて、テントの支柱16がボルト36によって固定されるアンカー32と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート層と前記コンクリート層を上方から覆う土壌層とを有する人工地盤にテントを固定する固定用基礎であって、
前記コンクリート層に一体化され、前記コンクリート層から前記土壌層の表層部分まで延びる基礎部と、
前記基礎部の上端部に設けられて、前記テントが固定される固定具と、を有する
固定用基礎。
【請求項2】
前記基礎部は、前記上端部に、前記土壌層の表層部分に露出面を有するコンクリートであり、
前記固定具は、前記基礎部に埋設され、前記テントの支柱を前記露出面に固定するボルトが締結されるアンカーである
請求項1に記載の固定用基礎。
【請求項3】
前記露出面は、前記支柱が固定される固定面と前記固定面の外周縁から外側へ向けた下り勾配を形成する勾配面とを有する
請求項2に記載の固定用基礎。
【請求項4】
前記基礎部は、前記コンクリート層に締結される基礎プレートと前記基礎プレートから上方に延びる基礎ロッドとを有し、
前記固定具は、前記基礎ロッドの上端部に連結されて、前記テントの張り網が係合する係合具である
請求項1に記載の固定用基礎。
【請求項5】
前記基礎部は、前記基礎プレートに接合されて、前記基礎ロッドと前記係合具とが内側に配設される保護筒を有する
請求項4に記載の固定用基礎。
【請求項6】
前記基礎部は、前記基礎プレートに対向するように前記保護筒に内側に接合されて、前記固定具の位置ずれを抑制するずれ止めプレートを有する
請求項5に記載の固定用基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工地盤にテントを固定する固定用基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院などの公的施設においては、災害時などに、被災者に対応するためのスペースや仮設トイレを設置するためのスペースなどを屋外に確保するために、骨組みに取り付けられたシート材によって屋根や壁などが形成されるテントが設置される。こうしたテントとしては、例えば、特許文献1に記載されたテントが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-41283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したテントは、屋外に設置されることで風の影響を受けやすい。そのため、テントを強固に固定することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する固定用基礎は、コンクリート層と前記コンクリート層を上方から覆う土壌層とを有する人工地盤にテントを固定する。前記固定用基礎は、前記コンクリート層に一体化され、前記コンクリート層から前記土壌層の表層部分まで延びる基礎部と、前記基礎部の上端部に設けられて、前記テントが固定される固定具と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テントを人工地盤に強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態において、人工地盤に設置された固定用基礎の一実施形態にテントが固定された状況を模式的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態において、人工地盤および固定用基礎の概略構成を示す断面図である。
図3】第1実施形態において、固定用基礎を示す上面図である。
図4】第2実施形態において、人工地盤および固定用基礎の概略構成を示す断面図である。
図5】第1実施形態の固定用基礎の変形例を示す上面図である。
図6】第1実施形態の固定用基礎についての変形例を示す断面図であり、(a)コンクリート層に埋設される鉄筋を有するコンクリート材を示す図であり、(b)コンクリート層に埋設されるフランジを有するコンクリート材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(人工地盤の概略)
図1図3を参照して、固定用基礎の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、人工地盤10は、例えば、病院などの建築物11に近接した場所に設けられる。人工地盤10は、各所に固定用基礎30を有している。固定用基礎30は、災害時などにテント15を人工地盤10に固定する際に用いられる。固定用基礎30は、設置予定のテント15に対応する位置に設けられている。具体的には、固定用基礎30は、テント15の骨組みを構成する支柱16に対応する位置に設けられている。テント15は、固定用基礎30に各支柱16が固定されることにより、人工地盤10に対して強固に固定される。
【0009】
(第1実施形態)
図2に示すように、人工地盤10は、スラブ21と、スラブ21を上方から覆う防水層22と、防水層22を上方から覆う断熱層23と、を有する。また、人工地盤10は、断熱層23を上方から覆うコンクリート層24と、コンクリート層24を上方から覆う土壌層25と、を有する。
【0010】
コンクリート層24は、例えば人工軽量骨材を使用した軽量コンクリートを断熱層23の上に打設することによって形成される。
土壌層25は、保護層26、植生基材層27、芝生層28を有する。保護層26は、コンクリート層24を上方から覆うことでコンクリート層24を保護している。保護層26は、例えば耐根シートや保護マットなどをコンクリート層24に敷設することにより形成される。植生基材層27は、例えば、強度を有する大粒径素材と育成を促す小粒径素材とを混合させた植生基材を敷均したのち、転圧することにより形成される。芝生層28は、植生基材層27に植設した芝生によって形成されている。芝生層28は、土壌層25の表層部分を形成している。
【0011】
(固定用基礎)
固定用基礎30は、基礎部31と基礎部31に埋設されたアンカー32とを有する。
基礎部31は、コンクリート層24に一体化されている。基礎部31は、コンクリート層24の上面から上方に向かって延びる四角柱形状に形成されている。基礎部31は、土壌層25の表層部分に露出する露出面33を有する。
【0012】
露出面33は、固定面34と勾配面35とを有する。
固定面34は、固定用基礎30の上面視において、露出面33の中央部に矩形状に形成されている(図3参照)。固定面34は、テント15の支柱16が固定される面である。支柱16は、支柱本体17と支柱本体17の下端部に接合されたベースプレート18とを有する。支柱16は、ベースプレート18に形成された締結孔を通じてボルト36がアンカー32に締結されることにより固定面34に固定される。
【0013】
勾配面35は、固定面34の周囲に設けられている。勾配面35は、固定面34の外周縁から外側へ向けた下り勾配を露出面33に形成する。こうした構成によれば、雨水が土壌層25へと導くことができるため、露出面33に雨水が溜まることが抑えられる。こうした基礎部31は、基礎部31の型枠を設置したうえでコンクリート層24を形成するコンクリートを打設することにコンクリート層24に一体化することができる。
【0014】
図3に示すように、アンカー32は、固定面34の各隅部に位置するように基礎部31に埋設されている。基礎部31へのアンカー32の埋設方法は、基礎部31を形成するコンクリートを打設する前に所定位置に配置される方法であってもよいし、基礎部31の形成後に基礎部31に打ち込まれる方法であってもよい。また、固定用基礎30が使用されないとき、アンカー32には、内部への異物の混入を抑えるべく、ボルト36が取り付けられていてもよいし、キャップが取り付けられていてもよい。
【0015】
第1実施形態の作用および効果について説明する。
(1-1)人工地盤10の固定用基礎30は、コンクリート層24に一体化され、土壌層25の表層部分に固定面34を有するコンクリートで形成された基礎部31と、基礎部31に埋設され、テント15の支柱16を固定面34に固定するボルト36が締結されるアンカー32で形成された固定具と、を有する。これにより、テント15の支柱16を固定面34上に配置したのち、アンカー32に対してボルト36を締結するだけでテント15の支柱16を人工地盤10に強固に固定することができる。
【0016】
(1-2)固定用基礎30において、基礎部31の露出面33は、固定面34の外周縁から外側へ向けた下り勾配を形成する勾配面35を有する。これにより、露出面33に降り注いだ雨水を土壌層25へと案内することができる。その結果、固定用基礎30の耐久性を高めることができる。
【0017】
(第2実施形態)
固定用基礎の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0018】
図4に示すように、固定用基礎50には、テント15に取り付けられた張り網19が固定される。固定用基礎50の基礎部51は、基礎プレート52と基礎ロッド53とを有する。基礎プレート52は、コンクリート層24に対してアンカーボルト54とナット55とによって固定されることにより、コンクリート層24に一体化されている。基礎ロッド53は、基礎プレート52の中央部分から上方に延びている。基礎ロッド53は、例えば溶接などの接合法によって基礎プレート52に接合されている。基礎ロッド53の上端部には、上下方向に長い高ナット56を介して係合具65が連結されている。
【0019】
また、基礎部51は、保護筒58とずれ止めプレート59を有する。保護筒58は、例えば溶接などの接合法によって基礎プレート52に接合されている。保護筒58は、基礎プレート52から上方に向かって土壌層25の表層部分まで延びている。基礎ロッド53と係合具65は、保護筒58の内側に配設されている。保護筒58の下端部には、図4の紙面における手前側と奥側とに、保護筒58内に浸入した雨水を土壌層25へと逃がす水抜穴60が形成されている。
【0020】
ずれ止めプレート59は、基礎プレート52に対向するように保護筒58の内側に接合されている。ずれ止めプレート59は、高ナット56あるいは係合具65が貫通する貫通孔を有している。ずれ止めプレート59は、水平方向における係合具65の位置ずれを抑制する。また、ずれ止めプレート59には、図4の紙面における左右方向の端部に水抜穴62が形成されている。
【0021】
係合具65は、テント15の張り網19が係合することによりテント15を人工地盤10に固定する固定具である。係合具65は、例えば高ナット56に連結されるアイボルトである。
【0022】
固定用基礎50は、キャップ66を有する。キャップ66は、固定用基礎50が使用されないときに保護筒58内への異物の混入を抑えるべく、保護筒58の上端開口部を閉塞する。
【0023】
第2実施形態の作用および効果について説明する。
(2-1)固定用基礎50は、コンクリート層24に一体化された基礎部51と、基礎部51を構成する基礎ロッド53に連結され、テント15の張り網19が固定される係合具65とを有する。これにより、テント15を強固に人工地盤10に固定することができる。
【0024】
(2-2)固定用基礎50は、基礎プレート52に一体化されて基礎ロッド53と係合具65とが内側に配設される保護筒58を有する。これにより、基礎ロッド53と係合具65とを土壌層25から保護することができる。
【0025】
(2-3)基礎部51は、係合具65の位置ずれを抑制するずれ止めプレート59が設けられている。これにより、張り網19が引っ張られたとき、その荷重の一部をずれ止めプレート59で受けることができる。その結果、基礎ロッド53の基端部に作用するモーメントを小さくすることができる。
【0026】
(2-4)保護筒58には水抜穴60、ずれ止めプレート59には水抜穴62が形成されている。これにより、保護筒58内に浸入した雨水を土壌層25へと逃がすことができる。その結果、雨水に起因した基礎部51の腐食を抑えることができる。
【0027】
第1および第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1および第2実施形態、ならびに、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0028】
・第1実施形態において、基礎部31は、四角柱形状に形成されている。これに限らず、基礎部31は、コンクリート層24に一体的に形成されていればよく、例えば、円柱形状に形成されていてもよいし、多角柱形状に形成されていてもよい。
【0029】
・第1実施形態において、図5に示すように、固定用基礎30は、1つの基礎部31が複数の固定面34を有する構成であってもよい。こうした構成によれば、隣接するテント15を連結する場合に、双方のテント15を人工地盤10に強固に固定することができる。
【0030】
・第1実施形態において、基礎部31は、基礎部31の型枠を設置したうえでコンクリート層24を形成するコンクリートを打設することにコンクリート層24に一体化した。
これに限らず、基礎部31は、図6(a)に示すように、基礎部31となるコンクリートブロック70を設置したうえでコンクリート層24を形成するコンクリートを打設することによりコンクリート層24に一体化することができる。このコンクリートブロック70には、コンクリート層24に埋設される鉄筋71が配筋されていてもよい。また、図6(b)に示すように、コンクリート層24に埋設される突出部72を有していてもよい。
【0031】
・第2実施形態において、係合具65は、基礎ロッド53に対して例えば溶接などによって固定されていてもよい。
・第1および第2実施形態において、固定用基礎は、スラブ21に対して一体化されていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…人工地盤、11…建築物、15…テント、16…支柱、17…支柱本体、18…ベースプレート、19…張り網、21…スラブ、22…防水層、23…断熱層、24…コンクリート層、25…土壌層、26…保護層、27…植生基材層、28…芝生層、30…固定用基礎、31…基礎部、32…アンカー、33…露出面、34…固定面、35…勾配面、36…ボルト、50…固定用基礎、51…基礎部、52…基礎プレート、53…基礎ロッド、54…アンカーボルト、55…ナット、56…高ナット、58…保護筒、59…ずれ止めプレート、60,62…水抜穴、65…係合具、66…キャップ、70…コンクリートブロック、71…鉄筋、72…突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6