(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141091
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】実装基板の製造方法及び実装基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20241003BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052548
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 利幸
【テーマコード(参考)】
5E314
5E338
【Fターム(参考)】
5E314AA24
5E314AA33
5E314AA39
5E314AA40
5E314BB06
5E314BB11
5E314CC01
5E314EE01
5E314FF21
5E314GG09
5E314GG15
5E338AA01
5E338AA02
5E338AA03
5E338BB02
5E338BB13
5E338BB75
5E338EE11
5E338EE30
5E338EE33
(57)【要約】
【課題】電子部品と基板との間のコーティング層での気泡の発生を抑制する実装基板の製造方法及び実装基板を提供すること。
【解決手段】実装基板の製造方法は、第1の面と第2の面を有し、第1の面に実装領域を有する基板の実装領域に、基板の厚さ方向に貫通する孔を設け、本体と接続部とを備える電子部品の本体を、基板と離間し、孔と対向するように配置して、電子部品を実装領域に実装し、第1の面を上方に向け、第1の面側から電子部品に向かってコーティング剤を塗布して、基板と電子部品との間隙を含む電子部品全体を覆うコーティング層を形成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面を有し、前記第1の面に実装領域を有する基板の前記実装領域に、前記基板の厚さ方向に貫通する孔を設け、
本体と接続部とを備える電子部品の前記本体を、前記基板と離間し、前記孔と対向するように配置して、前記電子部品を前記実装領域に実装し、
前記第1の面を上方に向け、前記第1の面側から前記電子部品に向かってコーティング剤を塗布して、前記基板と前記電子部品との間隙を含む前記電子部品全体を覆うコーティング層を形成する
実装基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層の形成時に、前記コーティング剤は前記孔の少なくとも一部に入り込む
実装基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層の形成時に、前記第2の面側から前記孔を介して前記間隙の空気を吸引する
実装基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング剤の粘度は20mPa・s以上である
実装基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層は、間隙用コーティング層と被覆用コーティング層とを有し、
前記コーティング層の形成において、
前記第1の面側から間隙用コーティング剤を前記電子部品に向かって塗布して、少なくとも前記間隙に前記間隙用コーティング層を形成し、
前記第1の面側から前記間隙用コーティング剤よりも粘度の高い被覆用コーティング剤を、前記電子部品に向かって塗布して、前記間隙用コーティング層を含む前記電子部品全体を覆う前記被覆用コーティング層を形成する
実装基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層は、壁状コーティング層と被覆用コーティング層とを有し、
前記コーティング層の形成において、
前記第1の面側から壁用のコーティング剤を、前記実装領域を囲むように前記基板上に塗布して、前記電子部品を囲む前記壁状コーティング層を形成し、
前記第1の面側から前記壁用のコーティング剤よりも粘度の低い被覆用コーティング剤を、前記壁状コーティング層に囲まれた領域内に塗布して、前記間隙を含む前記電子部品全体を覆う前記被覆用樹脂層を形成する
実装基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の実装基板の製造方法であって、
前記基板は、前記第2の面に、前記第1の面の実装領域と前記厚さ方向で重ならない実装領域を有し、
前記基板の前記第2の面の実装領域に、前記厚さ方向に貫通する孔を設け、
本体と接続部とを備える第2の面実装用電子部品の前記本体を、前記基板と離間し、前記第2の面の実装領域の孔と対向するように配置して、前記第2の面実装用電子部品を前記第2の面の実装領域に実装し、
前記第2の面を上方に向け、前記第2の面側から前記第2の面実装用電子部品に向かってコーティング剤を塗布して、前記基板と前記第2の面実装用電子部品との間隙を含む前記第2の面実装用電子部品全体を覆うコーティング層を形成する
実装基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層の形成時、前記基板を加熱する
実装基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング剤の塗布はジェット塗布であり、前記コーティング剤の吐出方向は前記第1の面に対し垂直である
実装基板の製造方法。
【請求項10】
第1の面と第2の面を有し、前記第1の面に実装領域を有し、当該実装領域に厚さ方向に貫通する孔が設けられる基板と、
本体と接続部とを備え、前記本体が、前記基板と離間し、前記第1の孔と対向配置して、前記実装領域に実装される電子部品と、
前記第1の面上に設けられ、前記基板と前記電子部品との間隙を含む前記電子部品の全体を覆うコーティング層と
を具備する実装基板。
【請求項11】
請求項10に記載の実装基板であって、
前記コーティング層は前記孔の少なくとも一部に入り込んでいる
実装基板。
【請求項12】
請求項10に記載の実装基板であって、
前記コーティング層は、前記間隙を含んで配される間隙コーティング層と、前記間隙コーティング層を含む前記電子部品全体を覆う被覆用コーティング層と、を含む
実装基板。
【請求項13】
請求項10に記載の実装基板であって、
前記コーティング層は、前記基板上に配される前記電子部品を囲む壁状の壁状コーティング層と、前記壁状コーティング層により囲まれた領域内であって、前記電子部品を覆う被覆用コーティング層と、を含む
実装基板。
【請求項14】
請求項10に記載の実装基板であって、
前記基板は、前記第2の面に、前記第1の面の実装領域と前記厚さ方向で重ならない実装領域を有し、当該第2の面の実装領域に前記基板の厚さ方向に貫通する孔を有し、
本体と接続部とを備え、当該本体が、前記基板と離間し、前記第2の面の実装領域の孔と対向配置して、前記第2の面の実装領域に実装される第2の面実装用電子部品と、
前記第2の面上に設けられる、前記基板と前記第2の面実装用電子部品との間隙を含む前記第2の面実装用電子部品全体を覆うコーティング層
を更に具備する実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、基板に電子部品が実装された実装基板の製造方法及び実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種制御機器などに用いられる電子部品は、通常、基板上に表面実装された実装基板の状態で制御機器に搭載される。当該実装基板に意図せず水がかけられたり、異物が混入して結露で発生した水分と混じったりすることなどによって、電気的な短絡が発生するリスクがある。当該リスクを防止するため、基板上に表面実装された電子部品を樹脂でコーティングし絶縁する方法が広く用いられている。
【0003】
電子部品を樹脂でコーティングする方法では、コーティング時に電子部品の下に気泡が残りやすい。このような気泡が生じたコーティング層に覆われた電子部品に対し、温度変化による膨張・収縮を繰り返すような経年の負荷が加わるとコーティング層に亀裂が入ることがある。当該亀裂は、水分や異物等が電子備品に侵入する原因となり、電子部品の動作不良や故障を招く。
【0004】
例えば特許文献1には、基板の電子部品が取り付けられる部位に透孔を設け、基板に電子部品を実装した後、当該電子部品が実装された基板を樹脂に浸漬して電子部品をモールドすることが記載されている。電子部品の樹脂への浸漬は、電子部品が実装される基板を立てた姿勢で行われ、上記透孔は、当該姿勢で電子部品の上方裏面部に対応する基板の部位に設けられる。このように、透孔を設けることで、電子部品を樹脂でモールドする際に、基板と電子部品との間隙内の気泡を透孔から逃がし、気泡により発生するピンホールを防ぐことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、電子部品と基板との間に気泡が生じないように電子部品の樹脂コーティングが行われることが望まれている。
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、電子部品と基板との間のコーティング層での気泡の発生を抑制する実装基板の製造方法及び実装基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の実装基板の製造方法は、
第1の面と第2の面を有し、上記第1の面に実装領域を有する基板の上記実装領域に、上記基板の厚さ方向に貫通する孔を設け、
本体と接続部とを備える電子部品の上記本体を、上記基板と離間し、上記孔と対向するように配置して、上記電子部品を上記実装領域に実装し、
上記第1の面を上方に向け、上記第1の面側から上記電子部品に向かってコーティング剤を塗布して、上記基板と上記電子部品との間隙を含む上記電子部品全体を覆うコーティング層を形成する。
【0008】
このような構成によれば、コーティング剤の塗布時に、基板と電子部品との間隙にある空気が孔を通って第2の面側から基板外へと逃げやすくなり、基板と電子部品との間隙に配されるコーティング層での気泡の発生が抑制される。これにより、温度変化による膨張や収縮を繰り返すような経年の負荷が実装基板に与えられても、コーティング層に亀裂が入りにくくなり、電子部品の品質を安定して高く維持することができる。
【0009】
前記コーティング層の形成時に、前記コーティング剤は前記孔の少なくとも一部に入り込んでもよい。
【0010】
上記コーティング層の形成時に、上記第2の面側から上記孔を介して上記間隙の空気を吸引してもよい。
【0011】
上記コーティング剤の粘度は20mPa・s以上であってもよい。
【0012】
上記コーティング層は、間隙用コーティング層と被覆用コーティング層とを有し、
上記コーティング層の形成において、
上記第1の面側から間隙用コーティング剤を上記電子部品に向かって塗布して、少なくとも上記間隙に上記間隙用コーティング層を形成し、
上記第1の面側から上記間隙用コーティング剤よりも粘度の高い被覆用コーティング剤を、上記電子部品に向かって塗布して、上記間隙用コーティング層を含む上記電子部品全体を覆う上記被覆用コーティング層を形成してもよい。
【0013】
上記コーティング層は、壁状コーティング層と被覆用コーティング層とを有し、
上記コーティング層の形成において、
上記第1の面側から壁用のコーティング剤を、上記実装領域を囲むように上記基板上に塗布して、前記電子部品を囲む前記壁状コーティング層を形成し、
上記第1の面側から上記壁用のコーティング剤よりも粘度の低い被覆用コーティング剤を、上記壁状コーティング層に囲まれた領域内に塗布して、上記間隙を含む上記電子部品全体を覆う上記被覆用樹脂層を形成してもよい。
【0014】
上記基板は、上記第2の面に、上記第1の面の実装領域と上記厚さ方向で重ならない実装領域を有し、
上記基板の上記第2の面の実装領域に、上記厚さ方向に貫通する孔を設け、
本体と接続部とを備える第2の面実装用電子部品の上記本体を、上記基板と離間し、上記第2の面の実装領域の孔と対向するように配置して、上記第2の面実装用電子部品を上記第2の面の実装領域に実装し、
上記第2の面を上方に向け、上記第2の面側から上記第2の面実装用電子部品に向かってコーティング剤を塗布して、上記基板と上記第2の面実装用電子部品との間隙を含む上記第2の面実装用電子部品全体を覆うコーティング層を形成してもよい。
【0015】
上記コーティング層の形成時、上記基板を加熱してもよい。
【0016】
上記コーティング剤の塗布はジェット塗布であり、上記コーティング剤の吐出方向は上記第1の面に対し垂直であってもよい。
【0017】
本技術に係わる実装基板は、基板と、電子部品と、コーティング層とを具備する。
上記基板は、第1の面と第2の面を有する。
上記基板は、上記第1の面に実装領域を有し、当該実装領域に厚さ方向に貫通する孔が設けられる。
上記電子部品は、本体と接続部とを備える。
上記電子部品は、上記本体が、上記基板と離間し、上記第1の孔と対向配置して、上記実装領域に実装される。
上記コーティング層は、上記第1の面上に設けられ、上記基板と上記電子部品との間隙を含む上記電子部品の全体を覆う。
【0018】
上記コーティング層は上記孔の少なくとも一部に入り込んでいてもよい。
【0019】
上記コーティング層は、上記間隙を含んで配される間隙コーティング層と、上記間隙コーティング層を含む上記電子部品全体を覆う被覆用コーティング層と、を含んでもよい。
【0020】
上記コーティング層は、上記基板上に配される上記電子部品を囲む壁状の壁状コーティング層と、上記壁状コーティング層により囲まれた領域内であって、上記電子部品を覆う被覆用コーティング層と、を含んでもよい。
【0021】
上記基板は、上記第2の面に、上記第1の面の実装領域と上記厚さ方向で重ならない実装領域を有し、当該第2の面の実装領域に上記基板の厚さ方向に貫通する孔を有し、
本体と接続部とを備え、当該本体が、上記基板と離間し、上記第2の面の実装領域の孔と対向配置して、上記第2の面の実装領域に実装される第2の面実装用電子部品と、
上記第2の面上に設けられる、上記基板と上記第2の面実装用電子部品との間隙を含む上記第2の面実装用電子部品全体を覆うコーティング層
を更に具備してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本技術の第1実施形態に係る実装基板の模式断面図である。
【
図2】(A)は上述の実装基板に実装される電子部品の一例であるチップ抵抗器の斜視図であり、(B)は基板に設けられる孔と実装される電子部品(チップ抵抗器)の位置関係例を示す平面図である。
【
図3】(A)は上述の実装基板に実装される電子部品の一例であるリード付きICチップの側面図であり、(B)及び(C)は基板に設けられる孔と実装される電子部品(リード付きICチップ)の位置関係例を示す平面図であり、(D)は他の電子部品の一例であるリードなしICチップの斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係わる実装基板の製造方法を示すフロー図である。
【
図5】(A)~(D)は第1実施形態に係わる実装基板の製造工程を示す模式断面図である。
【
図6】コーティング剤の塗布方法を説明するための平面図であり、コーティング剤塗布時のノズルの移動経路を示す。
【
図7】第2実施形態に係わる実装基板の模式断面図である。
【
図8】第2実施形態に係わる実装基板の製造方法を示すフロー図である。
【
図9】第3実施形態に係わる実装基板の製造方法を示すフロー図である。
【
図10】第3実施形態に係わる実装基板の製造工程を示す図である。
【
図11】第4実施形態に係わる実装基板の製造方法を示すフロー図である。
【
図12】第4実施形態に係わる実装基板の製造工程を示す図である。
【
図13】第4実施形態に係わるコーティング剤の塗布方法を説明するための平面図であって、(A)は壁用コーティング剤塗布時のノズルの移動経路を示し、(B)は被覆用コーティング剤塗布時のノズルの移動経路を示す。
【
図14】第4実施形態に係わる実装基板上のコーティング剤による電子部品の被覆の状態を模式的に示す平面図である。
【
図15】第5実施形態に係わる実装基板の製造方法を説明する図である。
【
図16】第6実施形態に係わる実装基板の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、既出の構成については同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0024】
<第1実施形態>
[実装基板の構成]
図1は第1実施形態に係わる実装基板10の模式的な部分断面図である。
図1に示すように、実装基板10は、孔4が設けられた基板1と、はんだ3と、電子部品2と、コーティング層5とを有する。
【0025】
基板1は、各種の電子部品2が表面実装される実装対象の基板である。基板1は、第1の面11と第2の面12を有する。基板1は、各種の電子部品2が実装される実装領域8を有する。
図1に示す実装基板10では、当該実装領域8は第1の面11上に設けられる。実装領域8には、電子部品2の後述する外部電極やリードなどの接続部がはんだ3によって電気的に接続されるランド(図示せず)が設けられる。実装領域8は、被実装品となる電子部品を基板1に実装した際に、当該電子部品を基板1に投影した電子部品の投影図の外縁を囲んだ領域である。後述する
図2(B)、
図3(B)及び
図3(C)において、実装領域8を細かいドットで埋めて示す。孔4は、実装領域8に設けられる。
【0026】
尚、本実施形態では、基板1の一方の面(ここでは第1の面11)に電子部品2が実装されてなる片面実装の実装基板10を例にあげるが、後述する第2実施形態のように基板1の両面(第1の面11及び第2の面12)に電子部品2が実装された両面実装の実装基板であってもよい。第2実施形態において、便宜的に、第1の面11に実装される電子部品2と第2の面12に実装される電子部品2とを区別するために、第1の面11側に設けられる電子部品、コーティング層、はんだ、実装領域、当該実装領域に設けられる孔については、冒頭に「第1の」をつけ、第2の面12に設けられる電子部品、コーティング層、はんだ、実装領域、当該実装領域に設けられる孔については、冒頭に「第2の」をつける。第1実施形態、後述する第3及び4実施形態においては、第1の面11に電子部品2が実装される片面実装を例にあげ、「第1の」を省略して説明する。尚、第3及び第4実施形態においても、両面実装の構成としてもよい。
【0027】
本明細書において、基板1を、第1の面11側(又は、第2の面12側)から基板1の厚さ方向にみることを平面視という。当該厚さ方向は、基板1に垂直な方向である。
【0028】
図1及び
図5(B)に示すように、電子部品2は、はんだ3を介して基板1に実装されるため、電子部品2の本体(詳細については後述する。)と基板1との間には間隙9が生じる。当該間隙9は0.1mm~0.3mm程度の狭い隙間である。このため、電子部品2全体をコーティング剤によって覆う際に、電子部品2と基板1との間の間隙9に十分にコーティング剤がいきわたらず気泡が生じやすい。気泡が存在すると、実装基板10に温度変化による膨張や収縮を繰り返すような経年の負荷が与えられることで、コーティング層に亀裂が入りやすい。亀裂が入ると、外部から水分や異物等が侵入しやすくなり、これら水分や異物等によって短絡が発生する可能性が高くなり、電子部品の品質を安定して高く維持することができない。
【0029】
これに対し、本技術では、電子部品2の実装領域8に孔4を設けることで、コーティング材の塗布時に間隙9に気泡が生じにくく、コーティング層5での亀裂の発生を効果的に抑制することができる。詳細については後述する。
【0030】
孔4は、実装領域8に、基板1を貫通する貫通孔として形成される。実装基板10において、基板1の第1の面11と電子部品2とは離間しており、孔4と電子部品2の本体とは対向して位置する。
図1に示すように、本実施形態では、コーティング剤の塗布時に孔4内の一部にコーティング剤が入り込み、孔4には部分的にコーティング層5が配された形態となっている。間隙9内に配されるコーティング層5と孔4内に配されるコーティング層5とは隙間なく連なっている。
【0031】
基板1に厚さ方向に貫通する孔4が設けられることで、実装基板10が制御機器に搭載されて使用された際、例えば温度変化によってコーティング層5が膨張・収縮した場合、第1の面11から第2の面12に向かう方向(
図1上、下方に向かう方向)の膨張・収縮力を孔4によって逃がすことができる。これにより、電子部品2のはんだ3に加わる応力を低減することができ、はんだ3の亀裂による基板1からの電子部品2の剥がれ等の発生を効果的に抑制することができる。
【0032】
尚、本実施形態では、孔4内に部分的にコーティング層5が入り込む形態をあげたが、孔4全体にコーティング層が入り込んだ形態であってもよいし、孔4にコーティング層5が入り込んでいない形態であってもよい。
【0033】
電子部品2の基板1からの剥離を抑制する観点から、孔4内にコーティング層5が配されることが好ましく、アンカー効果を得ることができる。
上記応力を効果的に抑制しつつ、電子部品2の基板1からの剥離を抑制する観点から、
図1に示すように、孔4内にコーティング層5が部分的に配されることが好ましい。
【0034】
本実施形態では、基板1上に実装する電子部品(実装部品)が微小な電子部品である場合、当該電子部品の実装領域8に孔4を形成しなくてもよい。微小な電子部品としては、例えば平面視した大きさが0.6mm×0.3mm以下の電子部品を指す。このような微小な電子部品では、基板1と電子部品2との間隙9の平面方向での大きさが小さく、コーティング剤塗布時の気泡の発生がみられにくいため、孔4を形成しなくてもよい。
【0035】
一方、0.6mm×0.3mmよりも大きな電子部品2の実装領域8には孔4を形成する。平面視した大きさが0.6mm×0.3mmよりも大きい電子部品の例としては、抵抗器、セラミックコンデンサ、IC(Integrated Circuit)チップ等が挙げられる。典型的には、平面視で、ICチップは、抵抗器及びセラミックコンデンサよりも大きさが大きい電子部品である。このような大きさが大きい電子部品の実装領域には複数の孔4を設けることが好ましい。孔4は、基板1に設けられる配線やランドを避けて配置する。孔4の詳細については後述する。
【0036】
[電子部品例]
以下、
図2及び
図3を用い、電子部品の具体例として、チップ抵抗器2A、リード付きICチップ2B、リードなしICチップ2Cについて説明する。これらを特に区別する必要がない場合は、電子部品2という。
【0037】
図2(A)は基板1に実装される電子部品の一例であるチップ抵抗器2Aの斜視図である。
図2(B)は基板1に設けられる孔4と実装される電子部品(チップ抵抗器2A)の位置関係例を示す平面図である。
【0038】
図2(A)に示すように、チップ抵抗器2Aは、基板上に金属被膜を抵抗体として形成してなる本体60と、本体60を覆う保護膜62と、一対の接続部として外部電極61とを有する。チップ抵抗器2Aは、略直方体の外形を有し、一対の向かい合う面に外部電極61が設けられた構成を有する。チップ抵抗器2Aが基板1上に実装された実装基板10では、外部電極61は、はんだ3を介して基板1上のランドと電気的に接続する。はんだ3を介してチップ抵抗器2Aが実装されることで、本体60は、基板1から離間して間隙9ができるように位置する(
図1参照。)。
【0039】
実装領域8に孔4を設ける対象とするチップ抵抗器2Aの代表的な平面視での大きさは、
図2(B)を参照して、横の長さb×縦の長さcで表すと、1.0mm×0.5mm、1.6mm×0.8mm、2.0mm×1.25mm、3.2mm×1.6mm、3.2mm×2.5mm、4.5mm×3.2mm、5.0mm×2.5mm、6.0mm×3.0mm等である。
図2(B)に示すように、3.2mm×2.5mm以下の大きさのチップ抵抗器2Aに対しては、その実装領域8のほぼ中央に1つの孔4を設ける。一方、3.2mm×2.5mmよりも大きいチップ抵抗器2Aに対しては、典型的には2つの孔4を設ける。孔のサイズ、孔を複数設ける場合の孔の配置の詳細については後述する。
【0040】
また、電子部品がセラミックコンデンサの場合、実装領域8に孔4を設ける対象とするセラミックコンデンサの代表的な平面視での大きさは、
図2(B)を参照して、横の長さb×縦の長さcで表すと、1.0mm×0.5mm、1.6mm×0.8mm、2.0mm×1.25mm、3.2mm×1.6mm、3.2mm×2.5mm、4.5mm×3.2mm、5.7mm×5.0mm等である。3.2mm×2.5mm以下の大きさのセラミックコンデンサに対しては、その実装領域8のほぼ中央に1つの孔4を設ける。一方、3.2mm×2.5mmよりも大きいセラミックコンデンサに対しては、典型的には2つの孔4を設ける。
【0041】
図3(A)は基板1に実装される電子部品の一例であるリード付きICチップ2Bの側面図である。
図3(B)及び(C)は基板1に設けられる孔4と実装される電子部品(リード付きICチップ2B)の位置関係例を示す平面図である。
図3(D)は基板1に実装される電子部品の一例であるリードなしICチップ2Cの斜視図である。尚、ここでは、外形矩形状の対向する一対の辺からリードがつきだす形状のリード付きICチップを例にあげるが、これに限定されず、例えば四辺からリードがつきだす形状のQFP(quad flat package)であってもよい。
【0042】
図3(A)に示すように、リード付きICチップ2Bは、本体63と、本体63から突出して設けられる接続部としてのリード64とを有する。リード付きICチップ2Bが基板1上に実装された実装基板10では、リード64は、はんだ3を介して基板1上のランドと電気的に接続する。本体63は、基板1から離間して間隙9ができるように位置する。
【0043】
図3(B)を参照して、リード付きICチップ2Bの典型的な平面視での大きさは、横の長さdが1mm~50mm、本体63の縦の長さfが1mm~50mm、リード付きICチップ2B全体の縦の長さeが2mm~60mmである。チップ抵抗器2A等と比較して大きさが大きいICチップ2B及び2Cの実装領域8には複数の孔4が設けられる。
図3(B)に示す例では、4つの孔4が、縦に2つ、横に2つの格子状に配置される。
図3(C)に示す例では、実装領域8の略中央に1つの孔4が配置され、当該中央の孔4を囲むように、縦に2つ、横に2つの格子状に置かれた4つの孔4が配置された、計5つの孔4が配置される。孔の数は、ICチップ(電子部品)の大きさ及びコーティング剤の粘度によって適宜設定する。孔のサイズ、孔を複数設ける場合の孔の配置の詳細については後述する。
【0044】
また、ICチップは、
図3(D)に示すようにリードなしタイプのICチップ2Cであってもよい。リードなしタイプのICチップ2Cは、本体63と、接続部としての外部電極65とを有する。リードなしICチップ2Cが基板1上に実装された実装基板10では、
図3(D)上、上面に位置している面が基板1の第1の面に対向して位置し、外部電極65は、はんだ3を介して基板1上のランドと電気的に接続する。本体63は、リードなしICチップ2Cがはんだ3を介して基板1に実装されることで、基板1から離間し、間隙9ができるように位置する。
【0045】
図3(B)及び(C)に示すように、リード付きICチップ2Bでは、実装領域8は、本体63に対応する領域85と、リード64に対応する領域86とを有する。本体63に対応する領域85は、基板1に対して本体63を投影したときの領域である。本実施形態では、本体63に対応する領域85は、平面視矩形状である。本体に対応する領域は、換言すると、電子部品2が基板1とともに間隙9を形成する部分に対応する領域である。
【0046】
実装する電子部品2がリード付きの場合、孔4は、リード64に対応する領域86にも形成されてもよいが、間隙9の空気を効果的に逃がして気泡を形成させない観点から、孔4は、基板1とともに間隙9を形成する本体63に対応する領域85に設けられることがより好ましい。更に、同様の観点から、
図3(B)及び(C)に示すように、本体63に対応する領域85にのみ孔4を設けることが好ましい。
尚、リード付きICチップ2Bに対し、リードなしICチップ2Cやチップ抵抗器2A等は、リードのような脚がない形状となっているため、本体に対応する領域と実装領域8とは同じである。
【0047】
[実装基板の製造方法]
次に、上述の実装基板10の製造方法について説明する。
図4は、実装基板10の製造方法を示すフロー図である。
図5は、実装基板10の製造工程を示す模式断面図である。
図6は電子部品2が実装された基板1に対しコーティング剤50を塗布する様子を示す平面図であり、ノズルの移動経路例を示す。
【0048】
以下、実装基板10の製造方法について、
図4のフロー図に従って、
図5及び
図6を用いて説明する。ここでは、電子部品がチップ抵抗器であり、基板1の当該チップ抵抗器が実装される実装領域に孔4が1つ設けられる例をあげるが、電子部品がICチップで、当該ICチップの実装領域8に孔4が複数設けられていてもよい。尚、ここでは、チップ抵抗器と言わず、電子部品2と称して説明する。後述する他の実施形態においても同様である。
【0049】
図5(A)に示すように、まず基板1を準備し、基板1の第1の面11に設けられる実装領域8に、基板1を厚さ方向に貫通する孔4を形成する(ST1)。孔4は、ドリルによって形成することができる。実装領域8は、基板1の第1の面11に対し電子部品2が実装される領域である。
【0050】
次に、
図5(B)に示すように、電子部品2の本体が、基板1と離間し、孔4と対向するように、電子部品2を基板1上に配置し、はんだ3を用いて電子部品2を実装領域8に実装する(ST2)。これにより電子部品2と基板1との間に間隙9が形成される。
【0051】
次に、
図5(C)に示すように、第1の面11を上方に向けて配置した基板1上の電子部品2に向かって、第1の面11側からコーティング剤50をノズル70から吐出してジェット塗布し(ST3)、乾燥し(ST4)、コーティング層5を形成する。
【0052】
上記ジェット塗布は、ノズル70からのコーティング剤50の吐出方向が第1の面11に対して垂直となるように行う。これにより、コーティング剤50の飛び散りを抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、基板1に孔4を設けることで、粘度が20mPa・s以上の比較的粘度の高いコーティング剤50を用いても気泡のないコーティング層5を形成することが可能となっている。このような粘度の高いコーティング剤50を用いて塗布を行う場合、第1の面11に対してコーティング剤の吐出方向が垂直となるように塗布を行うことで、コーティング剤50の飛び散りを抑制しやすく、塗布したくない箇所へのコーティング剤の付着を抑制することができる。後述する他の実施形態においても、同様に、コーティング剤の飛散を抑制する観点から、ノズル70からのコーティング剤の吐出方向が第1の面11に対して垂直となるようにジェット塗布を行うことが好ましい。
【0054】
ジェット塗布では、
図6に示すように、ノズル70を基板1に対して平面方向(基板の厚さ方向と直交す平面方向)へ相対的に移動させて、実装領域8に実装されている電子部品2にコーティング剤50を塗布する。ジェット塗布時、ノズル70のみを移動させてもよいし、基板1のみを移動させてもよいし、ノズル70と基板1の双方を移動させてもよい。ここでは、ノズル70のみが移動する例を挙げる。
図6において、ノズル70の基板1に対して移動する移動経路に符号72を付す。
図6に示す例では、ノズル70の移動範囲は、電子部品2の実装領域8よりもやや広い領域となっている。
図6の移動経路72に示すように、ノズル70は、例えば、平面視矩形の電子部品2の短辺と平行な方向に沿って、図上、上から下に向かって移動する。続いて、電子部品2の長辺と平行な方向(図上、左方向)に少しずれた後、電子部品2の短辺と平行な方向に沿って、図上、下から上に向かって移動する。その後、左方向に少しずれた後、図上、上から下に向かって移動する、といった動きを繰り返す。このように、ノズル70は、図上、左方向に少しずつずれながら、上下方向に往復移動して、実装領域8よりもやや広い領域にコーティング剤50を塗布していく。このようにコーティング剤50を塗布していくことで、
図5(D)に示すように電子部品2全体を覆ったコーティング層5が形成される。
【0055】
コーティング剤50の塗布時、電子部品2の外周付近に吐出されるコーティング剤50は基板1上で平面方向に拡散する。基板1と電子部品2の本体との間の間隙9は0.1mm~0.3mm程度と狭く、実装領域8の外周付近に吐出されるコーティング剤50は、毛管現象により間隙9に入り込む。平面視で、塗布されたコーティング剤50は、間隙9内を、電子部品2の外周付近から電子部品2の中心に向かって拡散する。本実施形態では、実装領域8に孔4が設けられることで、間隙9に入り込んだコーティング剤50が間隙9内で拡散していく際に、間隙9内の空気が孔4を介して第2の面12側から基板1の外へと逃げやすくなっている。これにより、コーティング剤50は間隙9内に気泡が残らないように充填され、
図5(D)に示すように、間隙9に配されるコーティング層5に気泡が生じないように電子部品2を実装することができる。従って、コーティング層5に亀裂が生じにくくなり、亀裂が原因となって生じる浸水、ひいては短絡といった不具合の発生を抑制することができる。
【0056】
コーティング剤の塗布において、上述のジェット塗布の他、カーテン塗布を用いてもよい。また、ジェット塗布やカーテン塗布のような非接触式の塗布方法の他、接触式を用いてもよい。コーティング剤の塗布では、高精度の塗布範囲の制御が可能なジェット塗布を用いることがより好ましい。
【0057】
上記ジェット塗布では、細かい制御により、液状化したコーティング剤を、ノズル70の先端から基板1の一方の面に向かって飛ばして、所望の限定した範囲に、厚さを管理して塗布することができる。このように、ジェット塗布では、塗布範囲を制限できるため、コーティング剤の塗布を回避したい箇所へのコーティング剤の付着を防止することができる。コーティング剤の塗布を回避したい箇所は、例えば、基板1に実装されたコネクタ、筐体シャーシと電気的接続を行う基板1のネジ孔周囲、検査設備と電気的に接続するテストポイント、EMC(Electromagnetic Compatibility)対策用のガスケットやクリップ等である。また、ジェット塗布により塗布量を高精度に管理できるため、コーティング剤の利用効率を向上させることができる。
【0058】
[コーティング剤の詳細]
電子部品2において、コーティング層5を設けることで、電子部品の短絡、電流漏洩などの不具合を引き起こす電子部品2の結露や浸水等を防止することができる。
【0059】
上記のような不具合を未然に防ぐコーティング剤としては、防湿性及び絶縁性を備えた樹脂を用いることができる。例えば、ポリビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、オレフィン系樹脂等を用いることができる。
【0060】
塗布時のコーティング剤の粘度は、基板1上の所望の限定した範囲にコーティング剤を確実に塗布する観点から、20mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは50mPa・s以上であることが好ましい。20mPa・s以上とすることで、コーティング剤の塗布時、コーティング剤の過度な拡散が抑制され、所望の限定した範囲にコーティング剤を確実に塗布することができる。
【0061】
ここで、コーティング剤の粘度が高いほど、所望の限定した範囲にコーティング剤を塗布できるとともに、より確実にコーティング層で電子部品を覆うことができ、信頼性の高い電子部品とすることができる。その一方で、コーティング剤の粘度が高いほど、コーティング剤の塗布時に、基板1と電子部品2との間隙9でコーティング剤が拡散しにくくなり、気泡(空気だまり)が生じやすい。
【0062】
しかしながら、本実施形態では、孔4を設けることで、コーティング剤塗布時に間隙9内の空気が孔4を介して第2の面12側から逃げやすくなり、コーティング層での気泡の発生が抑制された実装基板10とすることができる。
【0063】
孔4を設けることで、例えば100mPa・s以上の粘度の高いコーティング剤であっても気泡の発生を抑制することができる。更に、後述する第5実施形態で説明するが、コーティング剤塗布時に、第2の面12側から孔4を介して、間隙9内の空気を吸引することで、粘度の高いコーティング剤塗布時の気泡の発生をより確実に抑制することができる。
【0064】
電子部品2の所望の限定した範囲にコーティング剤を確実に塗布しつつ、間隙9内でのコーティング剤50の拡散を良好なものとする観点から、塗布時のコーティング剤の粘度は、20mPa・s以上、100mPa・s以下とすることが好ましく、50mPa・s以上、80mPa・s以下とすることがより好ましい。
【0065】
本実施形態では、コーティング剤の主成分としてポリビニル系樹脂のコーティング剤であり、かつ、コーティング剤の粘度として55mPa・s(20℃)のコーティング剤を用いた。
【0066】
[孔のサイズ及び孔の配置]
各電子部品2における孔4のサイズ及び孔4の配置について説明する。尚、ここでは、孔4の平面視での外形形状が正円形である例をあげるが、これに限定されず、例えば多角形状、楕円形状などであってもよい。ここでは、孔4の平面視での形状が正円形である例をあげるため、「孔のサイズ」を孔4の直径で表す。正円形以外の形状の孔については、孔のサイズは、平面視において孔の外形に対して当該孔の外形の中心を通る直線を引いた時に、当該直線と孔の外形とが交わる2つの交点を結ぶ線分のうち最も長い線分の長さで表す。例えば、孔4の形状が楕円の場合、当該孔4のサイズは長径で表すことができる。
【0067】
以下に示す孔のサイズや孔の配置に係わる具体的な数値は、使用するコーティング剤(コーティング層を形成する樹脂)の粘度、塗布条件等によって、適宜調整することができ、可変する。尚、「コーティング剤の粘度」は、実際に塗布する際のコーティング剤の粘度である。
【0068】
ジェット塗布によって基板1の第1の面11に向かってコーティング剤を塗布する場合、例えば次のように孔のサイズや孔の配置を設定することができる。
【0069】
図2(B)及び
図3(B)を参照して、孔4の直径a(孔のサイズ)は、第1の面11側からコーティング剤50を塗布する際に、間隙9から空気を逃がす観点から0.1mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上である。
【0070】
第1の面11に供給されたコーティング剤が孔4を伝って第2の面12側に垂れてしまいにくくする観点から、孔4の直径aは、コーティング剤の表面張力により孔4内で毛管現象が生じる程度の微細な大きさであることが好ましい。このように構成することで、コーティング剤が基板1の第2の面12側から垂れにくくなり、また、間隙9内を確実にコーティング剤で埋めることができる。
【0071】
上述したように、コーティング剤50の塗布時、間隙9内において、コーティング剤50は、平面視で電子部品2の外周付近から電子部品2の中心に向かって徐々に拡散していきやすい。このため、例えば孔4を1つ設ける場合は、間隙9内の空気を、孔4を介して第2の面12側から基板1の外へより確実に逃げやすくする観点から、
図2(B)に示すように、孔4を実装領域8の中心付近に配置することが好ましい。実装領域8に複数の孔4を設ける場合は、上記と同様の観点から、
図3(B)及び(C)に示すように、複数の孔4からなる孔群全体の中心が、実装領域8の中心付近に位置するように、孔4を配置することが好ましい。
【0072】
図3(B)を参照して、実装領域8に複数の孔4を設ける場合、孔4のピッチh(隣り合う孔の中心間距離)が3mm以下、より好ましくは2mm以下となるように、孔4を設けることが好ましい。これにより、コーティング剤塗布時に、電子部品2と基板1との間の間隙9の空気を効果的に孔から逃がすことができる。
【0073】
孔4のピッチhの下限値は特に限定されず、基板1に設けられるランドや配線パターンを避け、かつ、実装基板10全体の強度が低下しない程度に、孔4が設けられればよい。
【0074】
孔4の数は、電子部品2のサイズ等によって適宜設定され得る。孔の数が多いほど間隙9の空気をより逃がしやすくすることができるが、電子部品の高密度実装の実現の観点からは、コーティング層5での気泡発生を抑制することが可能な範囲で、孔の数が極力少なくなるように孔4を配置することが好ましい。
【0075】
図3(B)及び(C)を参照して、実装領域8に複数の孔4を設ける場合、電子部品2と基板1との間の間隙9の空気を、効果的に孔4を介して基板1の外へ逃がす観点から、複数の孔4のうち、実装領域8の中心からみて最も外側にある孔は、本体63に対応する領域85の輪郭からの距離gが1mm以下、より好ましくは0.5mm以下となるように、孔4を設けることが好ましい。
上記の「複数の孔4のうち、実装領域8の中心からみて最も外側にある孔」とは、
図3(B)に示す例では4つの孔4を指し、
図3(C)に示す例では中心に配される孔を除いた4つの孔4を指す。
【0076】
孔4のサイズ及び孔4の配置に係わる数値が上記数値範囲となるように基板1の実装領域8の本体に対応する領域に孔4を設けていくことで、ICチップのようなサイズが比較的大きい電子部品2の実装領域8には複数の孔4が設けられる。一方、チップ抵抗器2Aのようなサイズが比較的小さい電子部品2の実装領域8には1つ或いは2つの孔4が設けられる。
【0077】
例えば、
図3(B)に示す例では、本体63のサイズ(横の長さd×縦の長さf)が4mm×5mmのリード付きICチップ2Bに対し、粘度が55mPa・sのコーティング剤を用いてコーティング層5を形成する。当該リード付きICチップ2Bの実装領域8に4つの孔4を設け、孔4の直径aを0.2mmとし、孔4のピッチhを2mmとすることができる。
【0078】
<第2実施形態>
[実装基板の構成]
図7は第2実施形態に係わる実装基板10Aの模式的な部分断面図である。
図7に示すように、実装基板10Aは、両面実装タイプの実装基板である。実装基板10Aは、第1の孔41及び第2の孔42を有する基板1と、第1の電子部品21と、第1のはんだ31と、第1のコーティング層51と、第2の電子部品22と、第2のはんだ32と、第2のコーティング層52とを有する。
【0079】
基板1は、第1の面11と第2の面12とを有する。第1の面11には第1の電子部品21が実装される。第2の面12には第2の電子部品22が実装される。第1の孔41は、第1の面11に実装される第1の電子部品21の第1の実装領域81に設けられる。第2の孔42は、第2の面12に実装される第2の電子部品22の第2の実装領域82に設けられる。第1のコーティング層51は、基板1を第1の面11を上方に向けた状態で、第1の面11側から第1の電子部品21に向かって第1のコーティング剤が塗布されることで形成される。第2のコーティング層52は、基板1を第2の面12を上方に向けた状態で、第2の面12側から第2の電子部品22に向かって第2のコーティング剤が塗布されることで形成される。
【0080】
両面実装の場合、
図7に示すように、第1の電子部品21の第1の実装領域81と、第2の電子部品22の第2の実装領域82とが基板1の厚さ方向で重ならない、換言すると平面視で重ならないように、各電子部品を実装することが好ましい。これにより、第1のコーティング剤及び第2のコーティング剤の塗布時に、第1の孔41及び第2の孔42によって、気泡の発生を効果的に抑制することができる。
【0081】
[実装基板の製造方法]
次に、本実施形態の実装基板10Aの製造方法について説明する。
図8は、実装基板10Aの製造方法を示すフロー図である。以下、
図8のフロー図に従って説明する。
【0082】
まず基板1を準備し、基板1の第1の面11に設けられる第1の実装領域81及び第2の面12に設けられる第2の実装領域82それぞれに、基板1を厚さ方向に貫通する第1の孔41及び第2の孔42を形成する(ST10)。孔4は、ドリルによって形成することができる。第1の実装領域81は、基板1の第1の面11に対し第1の電子部品21が実装される領域である。第2の実装領域82は、基板1の第2の面12に対し第2の電子部品22が実装される領域である。
【0083】
次に、第1の面11が上方、第2の面12が下方となるように、基板1を配置し、第1のはんだ31を用いて第1の電子部品21を第1の実装領域81に実装する(ST11)。これにより第1の電子部品21と基板1との間に間隙9が形成される。
【0084】
次に、基板1をひっくり返し、第1の面11が下方、第2の面12が上方となるように、基板1を配置する。続いて、第2のはんだ32を用いて第2の電子部品22を第2の実装領域82に実装する(ST12)。これにより第2の電子部品22と基板1との間に間隙9が形成される。
【0085】
第1の面11には相対的に軽い電子部品2を実装し、第2の面12には相対的に重い電子部品2を実装する。両面実装の実装基板では、はんだを溶かし電子部品と基板とを電気的に接続するリフロー工程が2回行われる。第2の面12に電子部品2を実装する際、第1の面11は下側に向くように配置される。第1の面11に相対的に軽い電子部品2を実装しておくことで、第2の面12の電子部品実装時のリフロー工程で、第1の面11に設けられたはんだが溶けても、既に第1の面11に実装された電子部品は軽いためその自重で基板1から脱落するといった事象が発生しにくい。
【0086】
次に、基板1の第2の面12側から第2の電子部品22に向かって第1実施形態と同様に、第2のコーティング剤をノズルから吐出しジェット塗布し(ST13)、乾燥して(ST14)、第2の電子部品22全体を覆った第2のコーティング層52を形成する。
【0087】
次に、基板1をひっくり返し、第1の面11が上面、第2の面12が下面となるように、基板1を配置する。続いて、基板1の第1の面11側から第1の電子部品21に向かって第1実施形態と同様に、第1のコーティング剤をノズルから吐出しジェット塗布し(ST15)、乾燥して(ST16)、第1の電子部品21全体を覆った第1のコーティング層51を形成する。
【0088】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1のコーティング剤(第2のコーティング剤)の塗布時、第1の実装領域81(第2の実装領域82)に第1の孔41(第2の孔42)が設けられることで、第1の電子部品21(第2の電子部品22)と基板1との間隙9に入り込んだ第1のコーティング剤(第2のコーティング剤)が間隙9内で拡散していく際に、間隙9内の空気が第1の孔41(第2の孔42)を介して第2の面12側(第1の面11側)から基板1の外へと逃げやすくなっている。これにより、第1のコーティング剤(第2のコーティング剤)は、間隙9内に気泡が残らないように充填され、
図7に示すように、間隙9に配される第1のコーティング層51(第2のコーティング層52)に気泡が生じないように第1の電子部品21(第2の電子部品22)を実装することができる。従って、第1のコーティング層51(第2のコーティング層52)に亀裂が生じにくくなり、亀裂が原因となって生じる浸水、ひいては短絡といった不具合の発生を抑制することができる。
【0089】
<第3実施形態>
上述の実施形態では、1つの電子部品2に対して、1回のコーティング剤の塗布で、コーティング層を形成していたが、これに限定されない。以下、本実施形態及び後述する第4実施形態では、2回のコーティング剤の塗布で、コーティング層を形成する例を挙げる。
【0090】
図9は、第3実施形態に係わる実装基板10Bの製造方法を示すフロー図である。
図10は、実装基板10Bの製造工程を示す模式断面図である。以下、実装基板10Bの製造方法について、
図9のフロー図に従って、
図10を用いて説明する。
【0091】
図10(A)に示すように、まず基板1を準備し、基板1の第1の面11に設けられる実装領域8に、基板1を厚さ方向に貫通する孔4を形成する(ST20)。
【0092】
次に、
図10(B)に示すように、はんだ3を用いて電子部品2を実装領域8に実装する(ST21)。これにより電子部品2と基板1との間に間隙9が形成される。
【0093】
次に、
図10(C)に示すように、第1の面11を上方に向けて配置した基板1上の電子部品2に向かって、第1の面11側から間隙用コーティング剤73をノズル70から吐出してジェット塗布し(ST22)、乾燥する(ST23)。これにより、
図10(D)に示すように、間隙用コーティング層6を形成する。間隙用コーティング層6は、少なくとも基板1と電子部品2との間の間隙9を埋めるように配される。
図10(D)に示す例では、間隙用コーティング層6は、間隙9を埋め、かつ、電子部品2の囲むように形成される。
【0094】
間隙用コーティング剤73の塗布では、第1実施形態と同様に、ノズル70を基板1に対して平面方向(基板の厚さ方向と直交す平面方向)へ相対的に移動させて、実装領域8に間隙用コーティング剤73を塗布する。ノズル70の移動範囲は、電子部品2の実装領域8よりもやや広い領域である。
図6に示す移動経路72と同様に、ノズル70を、図上、左方向に少しずつずらしながら、上下方向に往復移動して、実装領域8よりもやや広い領域に間隙用コーティング剤73を塗布していく。
【0095】
間隙用コーティング剤73は、粘度の低いコーティング剤である。粘度の低いコーティング剤としては、粘度が0.5mPa・s~10mPa・sのものを用いることができる。このように、1回目のコーティング剤(間隙用コーティング剤)の塗布に、粘度の低いコーティング剤を用いることで、間隙9内に間隙用コーティング剤73を速やかにかつ確実に拡散させることができる。そして、実装領域8に孔4が設けられることで、間隙9に入り込んだ間隙用コーティング剤が間隙9内で拡散していく際に、間隙9内の空気が孔4を介して第2の面12側から基板1の外へと逃げやすくなっている。これにより、間隙用コーティング剤73は間隙9内に気泡が残らないように充填され、
図10(D)に示すように、間隙9に配される間隙用コーティング層6に気泡が生じないようにすることができる。
【0096】
尚、
図10では、電子部品2の上面に間隙用コーティング剤が配されないように図示したが、塗布されてもよい。粘度の低い間隙用コーティング剤73の場合、平面方向に拡散しやすいため、電子部品2の上面に厚みをもってコーティング層を形成するのは難しい。これに対し、本実施形態では、後述する2回目のコーティング剤(被覆用コーティング剤)の塗布において粘度の高いコーティング剤を用いることで、確実に電子部品2全体を覆うことができる。
【0097】
次に、
図10(E)に示すように、基板1の第1の面11側から電子部品2に向かって被覆用コーティング剤74をノズル70から吐出してジェット塗布し(ST24)、乾燥する(ST25)。これにより、
図10(F)に示すように、被覆用コーティング層7を形成する。被覆用コーティング層7は、間隙9及び電子部品2を囲む様に形成された間隙用コーティング層6が形成された電子部品2全体を覆うように形成される。被覆用コーティング層7と間隙用コーティング層6は、コーティング層5Bを構成する。
【0098】
被覆用コーティング剤74の塗布では、第1実施形態と同様に、ノズルを基板1に対して平面方向(基板の厚さ方向と直交す平面方向)へ相対的に移動させて、実装領域8に被覆用コーティング剤74を塗布する。ノズル70の移動範囲は、間隙用コーティング剤73を塗布した際の移動範囲よりも広い領域となっている。このときの移動経路も、
図6に示す移動経路72と同様に、ノズル70を、図上、左方向に少しずつずらしながら、上下方向に往復移動して、間隙用コーティング剤73を含む電子部品2全体を覆うように、被覆用コーティング剤74を塗布していく。
【0099】
被覆用コーティング剤74は、間隙用コーティング剤73よりも粘度の高いコーティング剤である。当該粘度の高いコーティング剤としては、粘度が20mPa・s~100mPa・sのコーティング剤を用いることができる。このように、2回目のコーティング剤(被覆用コーティング剤)の塗布に、粘度の高いコーティング剤を用いることで、当該コーティング剤は平面方向に拡散しにくく、電子部品2の上面に確実にコーティング層を形成することが可能となり、電子部品2全体を確実にコーティング層5Bで覆うことができる。
【0100】
間隙用コーティング剤と被覆用コーティング剤は同じ種類の樹脂を用いてもよいし、異なる樹脂を用いてもよい。
【0101】
このように、2回の塗布工程で、コーティング層5Bを形成してもよい。1回目の塗布で粘度の低い間隙用コーティング剤73を用いることで、気泡が残らないように間隙用コーティング剤73で間隙9を確実に埋めることができる。その後、2回目の塗布で粘度の高い被覆用コーティング剤74を用いることで、電子部品2全体を確実に被覆用コーティング層7で覆うことができる。
【0102】
このように、本実施形態の実装基板10Bでは、間隙9に配されるコーティング層5Bに気泡が含まれないように電子部品2を実装することができる。従って、コーティング層5Bに亀裂が生じにくくなり、亀裂が原因となって生じる浸水、ひいては短絡といった不具合の発生を抑制することができる。
【0103】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態に係わる実装基板10Cの製造方法を示すフロー図である。
図12は、実装基板10Cの製造工程を示す模式断面図である。
図13(A)は、電子部品2が実装された基板1に対し壁用コーティング剤を塗布する様子を示す平面図であり、ノズルの移動経路例を示す。
図13(B)は、電子部品2が実装された基板1に対し被覆用コーティング剤を塗布する様子を示す平面図であり、ノズルの移動経路例を示す。
図14は、実装基板10Cの部分概略平面図であり、コーティング層の形成状態を説明する図である。以下、実装基板10Cの製造方法について、
図11のフロー図に従って、
図12~
図14を用いて説明する。
【0104】
図12(A)に示すように、まず基板1を準備し、基板1の第1の面11に設けられる実装領域8に、基板1を厚さ方向に貫通する孔4を形成する(ST30)。
【0105】
次に、
図12(B)に示すように、はんだ3を用いて電子部品2を実装領域8に実装する(ST31)。これにより電子部品2と基板1との間に間隙9が形成される。
【0106】
次に、
図12(C)に示すように、第1の面11を上方に向けて配置した基板1上の電子部品2に向かって、第1の面11側から壁用コーティング剤75をノズル70から吐出してジェット塗布し(ST32)、乾燥する(ST34)。
【0107】
壁用コーティング剤75の塗布では、ノズルを基板1に対して平面方向(基板の厚さ方向と直交す平面方向)へ相対的に移動させて、電子部品2を囲む様に(換言すると、平面方向で実装領域8からやや離間して実装領域8を囲む様に)、壁用コーティング剤75を塗布する。
図13(A)に示すように、壁用コーティング剤75を塗布するノズル70の移動経路77は、電子部品2を囲む矩形を描く様になっている。これにより、
図12(D)及び
図13(B)に示すように、電子部品2を囲む様に壁状のコーティング層30(以下、壁状コーティング層30という。)が形成される。
【0108】
壁用コーティング剤75は、粘度の高いコーティング剤である。粘度の高いコーティング剤としては、粘度が20mPa・s~100mPa・sのコーティング剤を用いることができる。このように、1回目のコーティング剤(壁用コーティング剤)の塗布に、粘度の高いコーティング剤を用いることで、基板1上の所望の限定した範囲に高さを持った壁状コーティング層30を形成することができる。後述する被覆用コーティング剤76の平面方向の拡散を確実に防止する観点から、壁状コーティング層30の上部の位置は、実装された電子部品2の上面の位置とほぼ同じ、又は、やや高いことが好ましい。
【0109】
次に、
図12(E)に示すように、基板1の第1の面11側から、電子部品2に向かって被覆用コーティング剤76をノズル70から吐出してジェット塗布し(ST34)、乾燥する(ST35)。これにより、
図12(F)に示すように、被覆用コーティング層34を形成する。被覆用コーティング剤76は、壁状コーティング層30によって囲まれた領域内に塗布される。被覆用コーティング剤76は、壁状コーティング層30を超えて、壁状コーティング層30によって囲まれた領域の外に流れ出ない程度の量で塗布される。被覆用コーティング剤76が塗布されることで、壁状コーティング層30によって囲まれた電子部品2全体を覆う被覆用コーティング層34が形成される。被覆用コーティング層34と壁状コーティング層30は、コーティング層5Cを構成する。
【0110】
被覆用コーティング剤76の塗布では、第1実施形態と同様に、ノズルを基板1に対して平面方向(基板の厚さ方向と直交す平面方向)へ相対的に移動させて、実装領域8に被覆用コーティング剤76を塗布する。
図13(B)に示すように、ノズル70の移動範囲は、壁状コーティング層30により囲まれた領域となっている。被覆用コーティング剤76を塗布するノズル70の移動経路78は、
図6に示す移動経路72と同様に、ノズル70を、図上、左方向に少しずつずらしながら、上下方向に往復移動して、壁状コーティング層30内の電子部品2全体を覆うように、被覆用コーティング剤76を塗布していく。
【0111】
被覆用コーティング剤76は、壁用コーティング剤75よりも粘度の低いコーティング剤である。当該粘度の低いコーティング剤としては、粘度が0.5mPa・s~10mPa・sのコーティング剤を用いることができる。このように、2回目のコーティング剤(被覆用コーティング剤)の塗布に、粘度の低いコーティング剤を用いることで、当該コーティング剤は平面方向に拡散しやすく、被覆用コーティング剤76を間隙9内で速やかにかつ確実に拡散させることができる。そして、実装領域8に孔4が設けられることで、間隙9に入り込んだ被覆用コーティング剤76が間隙9内で拡散していく際に、間隙9内の空気が孔4を介して第2の面12側から基板1の外へと逃げやすくなっている。これにより、被覆用コーティング剤76は間隙9内に気泡が残らないように充填され、
図12(F)に示すように、間隙9に配される被覆用コーティング層34に気泡が生じないようにすることができる。
【0112】
壁用コーティング剤と被覆用コーティング剤は同じ種類の樹脂を用いてもよいし、異なる樹脂を用いてもよい。
【0113】
更に、本実施形態では、壁状コーティング層30によって、被覆用コーティング剤76が壁状コーティング層30の外側に流出しないように堰止めることができるため、粘度の低いコーティング剤を用いても、所望の限定した範囲に被覆用コーティング層34を設けることができる。
【0114】
このように、2回の塗布工程で、コーティング層5Cを形成してもよい。1回目の塗布工程で粘度の高い壁用コーティング剤75を用いて壁状コーティング層30を設けることで、2回目に塗布される被覆用コーティング剤76の平面方向の拡散を確実に抑制することができる。更に、2回目の塗布工程で粘度の低い被覆用コーティング剤76を用いることで、間隙9をコーティング層によって気泡の発生なく確実に埋めることができるとともに、電子部品2全体を確実に被覆用コーティング層34で覆うことができる。
【0115】
以上のように、本実施形態の実装基板10Cでは、間隙9に気泡が含まれないように電子部品2を実装することができる。従って、コーティング層5Cに亀裂が生じにくくなり、亀裂が原因となって生じる浸水、ひいては短絡といった不具合の発生を抑制することができる。
【0116】
<第5実施形態>
図15は、第5実施形態の実装基板の製造方法を説明する図である。上述の各実施形態において、第1の面11側(又は、第2の面12側)に実装された電子部品2にコーティング剤を塗布する際に、
図15に示すように、第2の面12側(又は、第1の面11側)から孔4を介して電子部品2と基板1との間隙9の空気を吸引してもよい。これにより、間隙9内へのコーティング剤の充填を加速することができるとともに、間隙9内の空気が積極的に間隙9に配されるコーティング層での気泡の発生が抑制される。
【0117】
<第6実施形態>
図16は、第6実施形態の実装基板の製造方法を説明する図である。コーティング剤として、例えば冷却によって粘度が増しやすいコーティング剤を用いる場合、電子部品2にコーティング剤を塗布する際に、
図16に示すように、コーティング剤を塗布する面と反対側の面側(図に示す例では第2の面12側)にヒータ13を配置してもよい。ヒータ13で加熱することで、コーティング剤の粘度を所望の粘度に維持できるように調整してもよい。また、
図16に示す例では、基板1の下側から加熱する例をあげたが、上側から加熱するように構成してもよい。加熱温度は、用いるコーティング剤によって適宜調整する。
【0118】
<その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0119】
本技術は、以下の構成をとることもできる。
(1)
第1の面と第2の面を有し、前記第1の面に実装領域を有する基板の前記実装領域に、前記基板の厚さ方向に貫通する孔を設け、
本体と接続部とを備える電子部品の前記本体を、前記基板と離間し、前記孔と対向するように配置して、前記電子部品を前記実装領域に実装し、
前記第1の面を上方に向け、前記第1の面側から前記電子部品に向かってコーティング剤を塗布して、前記基板と前記電子部品との間隙を含む前記電子部品全体を覆うコーティング層を形成する
実装基板の製造方法。
(2)
上記(1)に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層の形成時に、前記コーティング剤は前記孔の少なくとも一部に入り込む
実装基板の製造方法。
(3)
上記(1)又は(2)に記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層の形成時に、前記第2の面側から前記孔を介して前記間隙の空気を吸引する
実装基板の製造方法。
(4)
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング剤の粘度は20mPa・s以上である
実装基板の製造方法。
(5)
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層は、間隙用コーティング層と被覆用コーティング層とを有し、
前記コーティング層の形成において、
前記第1の面側から間隙用コーティング剤を前記電子部品に向かって塗布して、少なくとも前記間隙に前記間隙用コーティング層を形成し、
前記第1の面側から前記間隙用コーティング剤よりも粘度の高い被覆用コーティング剤を、前記電子部品に向かって塗布して、前記間隙用コーティング層を含む前記電子部品全体を覆う前記被覆用コーティング層を形成する
実装基板の製造方法。
(6)
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層は、壁状コーティング層と被覆用コーティング層とを有し、
前記コーティング層の形成において、
前記第1の面側から壁用のコーティング剤を、前記実装領域を囲むように前記基板上に塗布して、前記電子部品を囲む前記壁状コーティング層を形成し、
前記第1の面側から前記壁用のコーティング剤よりも粘度の低い被覆用コーティング剤を、前記壁状コーティング層に囲まれた領域内に塗布して、前記間隙を含む前記電子部品全体を覆う前記被覆用樹脂層を形成する
実装基板の製造方法。
(7)
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の実装基板の製造方法であって、
前記基板は、前記第2の面に、前記第1の面の実装領域と前記厚さ方向で重ならない実装領域を有し、
前記基板の前記第2の面の実装領域に、前記厚さ方向に貫通する孔を設け、
本体と接続部とを備える第2の面実装用電子部品の前記本体を、前記基板と離間し、前記第2の面の実装領域の孔と対向するように配置して、前記第2の面実装用電子部品を前記第2の面の実装領域に実装し、
前記第2の面を上方に向け、前記第2の面側から前記第2の面実装用電子部品に向かってコーティング剤を塗布して、前記基板と前記第2の面実装用電子部品との間隙を含む前記第2の面実装用電子部品全体を覆うコーティング層を形成する
実装基板の製造方法。
(8)
上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング層の形成時、前記基板を加熱する
実装基板の製造方法。
(9)
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の実装基板の製造方法であって、
前記コーティング剤の塗布はジェット塗布であり、前記コーティング剤の吐出方向は前記第1の面に対し垂直である
実装基板の製造方法。
(10)
第1の面と第2の面を有し、前記第1の面に実装領域を有し、当該実装領域に厚さ方向に貫通する孔が設けられる基板と、
本体と接続部とを備え、前記本体が、前記基板と離間し、前記第1の孔と対向配置して、前記実装領域に実装される電子部品と、
前記第1の面上に設けられ、前記基板と前記電子部品との間隙を含む前記電子部品の全体を覆うコーティング層と
を具備する実装基板。
(11)
上記(10)に記載の実装基板であって、
前記コーティング層は前記孔の少なくとも一部に入り込んでいる
実装基板の製造方法。
(12)
上記(10)又は(11)に記載の実装基板であって、
前記コーティング層は、前記間隙を含んで配される間隙コーティング層と、前記間隙コーティング層を含む前記電子部品全体を覆う被覆用コーティング層と、を含む
実装基板。
(13)
上記(10)又は(11)に記載の実装基板であって、
前記コーティング層は、前記基板上に配される前記電子部品を囲む壁状の壁状コーティング層と、前記壁状コーティング層により囲まれた領域内であって、前記電子部品を覆う被覆用コーティング層と、を含む
実装基板。
(14)
上記(10)から(13)のいずれか1つに記載の実装基板であって、
前記基板は、前記第2の面に、前記第1の面の実装領域と前記厚さ方向で重ならない実装領域を有し、当該第2の面の実装領域に前記基板の厚さ方向に貫通する孔を有し、
本体と接続部とを備え、当該本体が、前記基板と離間し、前記第2の面の実装領域の孔と対向配置して、前記第2の面の実装領域に実装される第2の面実装用電子部品と、
前記第2の面上に設けられる、前記基板と前記第2の面実装用電子部品との間隙を含む前記第2の面実装用電子部品全体を覆うコーティング層
を更に具備する実装基板。
【符号の説明】
【0120】
1…基板
2…電子部品
2A…チップ抵抗器(電子部品)
2B…リード付きICチップ(電子部品)
2C…リードなしICチップ(電子部品)
4…孔、第1の孔
5、5B、5C…コーティング層
6…間隙用コーティング層
7…被覆用コーティング層
8…実装領域
9…間隙
10、10A、10B、10C…実装基板
11…第1の面
12…第2の面
21…第1の電子部品(電子部品)
22…第2の電子部品(第2の面実装用電子部品)
30…壁状コーティング層
34…被覆用コーティング層
41…第1の孔(孔)
42…第2の孔(第2の面の実装領域の孔)
50…コーティング剤
51…第1のコーティング層(コーティング層)
52…第2のコーティング層(第2の面実装用電子部品全体を覆うコーティング層)
60、63…本体
61…外部電極(接続部)
64…リード(接続部)
65…外部電極(接続部)
73…間隙用コーティング剤
74…被覆用コーティング剤
75…壁用コーティング剤
76…被覆用コーティング剤
81…第1の実装領域(第1の面の実装領域)
82…第2の実装領域(第2の面の実装領域)