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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141103
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ネジの仮保持構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16B41/00 H
F16B41/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052569
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健二
(57)【要約】
【課題】安定化した状態でネジを仮保持する。
【解決手段】仮保持構造Sでは、ネジ40が仮保持部20に仮保持される。仮保持部20は、ネジ40の頭部42が挿入される溝部27と、溝部27の幅方向両側部を構成し且つ左右方向に弾性変形可能に構成された左右一対のアーム部22と、を有している。また、溝部27の内部には、頭部42を上下方向両側及び径方向外側から支持する仮保持機構部26が設けられている。このため、アーム部22を左右方向に弾性変形させることで、頭部42を溝部27内に挿入しつつ、溝部27内に挿入された頭部42を仮保持機構部26によって相対移動不能に保持することができる。したがって、安定化した状態でネジ40を仮保持することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジによって締結部品を被締結部品に締結固定する際に前記ネジを前記締結部品に仮保持するネジの仮保持構造であって、
前記締結部品に設けられ、前記ネジの頭部を仮保持する仮保持部と、
前記締結部品に設けられ、前記仮保持部に対して前記ネジの軸方向の一方側に配置され、仮保持される前記ネジと同軸上に配置される固定孔を有すると共に、仮保持状態が解除される前記ネジによって前記被締結部品に締結固定される固定部と、
を備え、
前記軸方向と直交する方向を第1方向とし、前記軸方向及び前記第1方向と直交する方向を第2方向とし、
前記仮保持部は、
前記第1方向に延在され且つ前記第2方向を幅方向とする溝状に形成され、前記第1方向の一方側端部が開放されると共に、前記頭部が挿入される溝部と、
前記溝部の前記第2方向の両側部を構成し、前記第2方向に弾性変形可能に構成された一対のアーム部と、
前記溝部の内部に設けられ、前記頭部を前記軸方向の両側及び径方向外側から支持する仮保持機構部と、
を含んで構成されており、
所定値以上の前記軸方向の一方側への荷重が前記ネジに入力されたときには、前記仮保持機構部による前記ネジの仮保持状態が解除されて前記ネジの前記軸方向の一方側への移動を許可するネジの仮保持構造。
【請求項2】
前記仮保持機構部は、前記ネジの第2方向両側において前記頭部を前記軸方向の一方側から支持する一対の第1保持部を有しており、
前記第1保持部は、上下方向を板厚方向とする板状に形成され、前記アーム部から前記溝部の幅方向中央側へ突出すると共に、前記軸方向に弾性変形可能に構成され、
所定値以上の前記軸方向の一方側への荷重が前記ネジに入力されたときには、前記第1保持部が前記軸方向の一方側へ弾性変形して前記第1保持部の前記ネジに対する支持状態が解除される請求項1に記載のネジの仮保持構造。
【請求項3】
前記仮保持部は、
前記第2方向に延在された保持ベース部と、
前記保持ベース部から前記第1方向の一方側へ延出された一対の前記アーム部と、
を含んで構成されており、
前記仮保持機構部は、前記第1保持部の前記第1方向の一方側において前記頭部を前記軸方向の他方側から支持する一対の第2保持部と、前記第1保持部の前記第1方向の他方側において前記頭部を前記軸方向の他方側から支持する第3保持部と、を有しており、
前記第2保持部は、上下方向を板厚方向とする板状に形成され、前記アーム部から前記溝部の幅方向中央側へ突出しており、
前記第3保持部は、上下方向を板厚方向とする板状に形成され、前記保持ベース部から前記第1方向の一方側へ突出している請求項2に記載のネジの仮保持構造。
【請求項4】
前記頭部は、
頭部本体と、
前記頭部本体の外周部から径方向外側へ突出したフランジと、
を含んで構成されており、
前記第2保持部及び前記第3保持部は、前記フランジを前記軸方向の他方側から支持すると共に、前記頭部本体を径方向外側から支持している請求項3に記載のネジの仮保持構造。
【請求項5】
前記締結部品は、前記締結部品の外郭を構成する第1部材と第2部材とを有しており、
前記仮保持部は、弾性材によって構成されると共に、前記第1部材と前記第2部材との間をシールしている請求項1に記載のネジの仮保持構造。
【請求項6】
前記アーム部の非弾性変形状態では、前記アーム部が前記第1方向の一方側へ向かうに従い前記溝部の幅方向外側へ傾斜している請求項1に記載のネジの仮保持構造。
【請求項7】
前記固定部には、前記仮保持機構部と係合可能に構成された係合部が設けられており、
前記ネジの前記溝部への挿入後に前記係合部が前記仮保持機構部に係合されることで、前アーム部の弾性変形が制限される請求項1~請求項6の何れか1項に記載のネジの仮保持構造。
【請求項8】
一対の前記アーム部の一方には、一対の前記アーム部の他方と連結可能に構成された連結部が設けられており、
前記ネジの前記溝部への挿入後に前記連結部が前記アーム部の他方と連結されることで、前アーム部の弾性変形が制限される請求項1~請求項6の何れか1項に記載のネジの仮保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジの仮保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のねじの仮止構造では、ねじ孔を有する取付部が、仮止部の下側に設けられており、仮止部は、一部開放された略円筒状に形成されている。仮止部の内径は、ねじのワッシャの外径よりも小さく設定されている。そして、ねじを仮止めするときには、仮止部を広げるように仮止部を弾性変形させて、ねじを仮止部内に挿通させる。ねじの挿通後は、ねじが取付部のねじ孔内に配置されると共に、仮止部が弾性変形前の状態に復帰する。これにより、仮止め状態のねじが上側へ変位したときには、ワッシャが仮止部に当接するため、ねじの取付部からの脱落を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-17420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ねじの仮止構造では、以下に示す点において改善の余地がある。すなわち、上記ねじの仮止構造では、ねじが、取付部及び仮止部に対して相対移動可能な状態で、取付部に仮止めされる。換言すると、ねじの仮止め状態が、不安定となっている。このため、例えば、ねじの仮止構造が適用されたコンビネーションスイッチの運搬時等において、振動等によってねじが取付部及び仮止部に衝突すると、取付部及び仮止部が破損する虞がある。このため、上記ねじの仮止構造では、仮止め状態の安定化を図るという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、安定化した状態でネジを仮保持することができるネジの仮保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、ネジによって締結部品を被締結部品に締結固定する際に前記ネジを前記締結部品に仮保持するネジの仮保持構造であって、前記締結部品に設けられ、前記ネジの頭部を仮保持する仮保持部と、前記締結部品に設けられ、前記仮保持部に対して前記ネジの軸方向の一方側に配置され、仮保持される前記ネジと同軸上に配置される固定孔を有すると共に、仮保持状態が解除される前記ネジによって前記被締結部品に締結固定される固定部と、を備え、前記軸方向と直交する方向を第1方向とし、前記軸方向及び前記第1方向と直交する方向を第2方向とし、前記仮保持部は、前記第1方向に延在され且つ前記第2方向を幅方向とする溝状に形成され、前記第1方向の一方側端部が開放されると共に、前記頭部が挿入される溝部と、前記溝部の前記第2方向の両側部を構成し、前記第2方向に弾性変形可能に構成された一対のアーム部と、前記溝部の内部に設けられ、前記頭部を前記軸方向の両側及び径方向外側から支持する仮保持機構部と、を含んで構成されており、所定値以上の前記軸方向の一方側への荷重が前記ネジに入力されたときには、前記仮保持機構部による前記ネジの仮保持状態が解除されて前記ネジの前記軸方向の一方側への移動を許可するネジの仮保持構造である。
【発明の効果】
【0007】
上記構成のスイッチ装置によれば、安定化した状態でネジを仮保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るネジの仮保持構造が適用されたスイッチ装置にネジが仮保持された状態を示す上側から見た平面図である。
図2図1に示されるスイッチ装置の前端部における中央部の右側から見た断面図(図1の2-2線断面図)である。
図3図1に示されるスイッチ装置の前端部における右部の右側から見た断面図(図1の3-3線断面図)である。
図4図1に示されるスイッチ装置の前端部における中央部の後側から見た断面図(図1の4-4線断面図)である。
図5】(A)は、ネジの仮保持部の溝部への挿入初期を示す平面図であり、(B)は、ネジの仮保持部の溝部への挿入途中を示す平面図であり、(C)は、ネジの仮保持部の溝部への挿入完了時を示す平面図である。
図6】(A)は、所定値以上の下側への荷重がネジに入力されてネジの仮保持が解除された状態を示す後側から見た断面図であり、(B)は、ネジによって固定部が被非固定ボスに締結固定された状態を示す後側から見た断面図である。
図7図1に示される仮保持部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係るネジの仮保持構造S(以下、単に仮保持構造Sと記載する)について説明する。図1図4に示されるように、仮保持構造Sは、締結部品としてのスイッチ装置10に適用されている。スイッチ装置10は、車両(自動車)に搭載されて、ネジ40によって、車両の被締結部品としての車両側部品50に締結固定される。そして、スイッチ装置10の車両側部品50への締結固定前の状態において、仮保持構造Sによってネジ40がスイッチ装置10に仮保持される。なお、図面において適宜示される矢印UP、矢印FR、及び矢印RHは、それぞれスイッチ装置10の上側、前側、右側を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、スイッチ装置10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。また、上下方向が本発明のネジの軸方向に対応し、前後方向が本発明の第1方向に対応し、左右方向が本発明の第2方向に対応している。
【0010】
スイッチ装置10は、全体として前後方向を長手方向とする略矩形箱形状に形成されている。スイッチ装置10は、スイッチ装置10の外郭を構成する第1部材としてのベース12及び第2部材としてのケース14を有しており、ベース12及びケース14が互いに組付けられている。スイッチ装置10内には、ラバーシート16が設けられており、ラバーシート16は、ゴム等の弾性材によって形成されている。また、ラバーシート16は、操作ノブ18によって押圧されるドーム部16Aを有しており、操作ノブ18は、ケース14から下方側へ操作可能に露出している。
【0011】
スイッチ装置10の前端部には、ネジ40を仮保持するための仮保持部20と、固定部30と、が設けられており、固定部30が、ネジ40によって、車両側部品50の被固定ボス50Aに締結固定される。被固定ボス50Aは、上下方向を軸方向とする円筒状に形成されて、車両側部品50から上側へ突出している。被固定ボス50Aは、スイッチ装置10の下部の前側で且つ後述する固定部30の下側に位置している。以下、先に、ネジ40について説明し、次いで、仮保持部20及び固定部30について説明する。
【0012】
(ネジ40について)
ネジ40は、上下方向を軸方向としており、ネジ40の上端部を構成する頭部42と、頭部42から下側へ延出されたネジ部44と、を含んで構成されている。頭部42は、頭部本体42Aと、頭部本体42Aの下端部の外周部から頭部本体42Aの径方向外側へ突出した円環状のフランジ42Bと、を有している。すなわち、ネジ40は、フランジ付きネジとして構成されている。
【0013】
(仮保持部20について)
仮保持部20は、ラバーシート16に設けられている。すなわち、仮保持部20は、ゴム等の弾性材によって形成されている。仮保持部20は、保持ベース部21と、左右一対のアーム部22と、左右一対の第1保持部としての中間保持部23と、左右一対の第2保持部としての前側保持部24と、第3保持部としての後側保持部25と、を含んで構成されている。そして、中間保持部23、前側保持部24、及び後側保持部25が、本発明の仮保持機構部26を構成している。
【0014】
保持ベース部21は、左右方向に延在された略柱状に形成されており、一対のアーム部22が保持ベース部21の左右方向両端部から前側へ延出している。これにより、仮保持部20には、一対のアーム部22及び保持ベース部21によって囲まれた溝部27が形成されている。溝部27は、左右方向を幅方向として前後方向に延在されると共に、前方側へ開放されている。これにより、一対のアーム部22が、溝部27の幅方向両側部を構成している。溝部27の幅寸法は、ネジ40の頭部42の径寸法よりも大きく設定されている。そして、ネジ40の頭部42が、溝部27内に挿入されて、仮保持機構部26によってネジ40が仮保持されるようになっている。以下、保持ベース部21においてネジ40が仮保持される位置を仮保持位置(図1図4に示される位置)という。
【0015】
中間保持部23は、上下方向を板厚方向とし且つ左右方向を長手方向とする略矩形板状に形成され、アーム部22の前後方向中間部における下端部から左右方向内側(溝部27の幅方向中央側)へ延出されて、溝部27内に配置されている。中間保持部23の先端は、平面視で、溝部27の幅方向中央側へ開放された略円弧状に形成されている。ネジ40の仮保持位置では、中間保持部23がネジ40のネジ部44の左右方向両側に離間して配置されると共に、中間保持部23の先端部がネジ40の頭部42の下側に隣接配置される。これにより、中間保持部23によって頭部42を下側から支持して、仮保持位置におけるネジ40の下側への移動を制限している。また、中間保持部23は、上下方向に弾性変形可能に構成されている。具体的には、所定値以上の下側への荷重が中間保持部23の先端部に入力されると、中間保持部23が、自身の基端部を起点として下側へ弾性変形するようになっている。
【0016】
前側保持部24は、上下方向を板厚方向とする略L字形板状に形成され、アーム部22の前部における上端部から左右方向内側へ延出されて、溝部27の前部内に配置されている。前側保持部24は、中間保持部23に対して前側に所定の隙間を空けて配置されている。前側保持部24の後部には、張出部24Aが形成されており、張出部24Aが、前側保持部24の前部よりも溝部27の幅方向中央側へ突出している。
【0017】
張出部24Aの前端部には、ガイド部24Bが形成されており、ガイド部24Bは、平面視で左右方向内側へ向かうに従い後側へ傾斜している。張出部24Aの先端部における後側角部には、前側切欠部24Cが形成されており、前側切欠部24Cは、平面視で後側へ向かうに従い左右方向外側へ傾斜している。ネジ40の仮保持位置では、前側切欠部24Cが、ネジ40の頭部本体42Aの前側で且つ径方向外側に隣接配置されている。すなわち、前側切欠部24Cは、平面視で頭部本体42Aの外周部に沿った円弧状に形成されており、前側保持部24によって頭部本体42Aの前部を径方向外側から支持している。また、ネジ40の仮保持位置では、張出部24Aが、ネジ40のフランジ42Bの上側に隣接配置されて、張出部24Aによってフランジ42Bを上側から支持している。以上により、前側保持部24によって、仮保持位置における頭部42の前部の前側、左右方向両側、及び上側への移動を制限している。
【0018】
一対の前側保持部24の前部間の距離は、ネジ40の頭部本体42Aの直径よりも僅かに大きく設定されており、一対の張出部24A間の距離は、頭部本体42Aの直径と比べて小さく設定されている。そして、ネジ40を仮保持位置に配置するときには、アーム部22を、自身の基端側部分を起点として左右方向外側へ弾性変形させて、ネジ40の頭部42を溝部27内に前側から挿入するようになっている。また、前側保持部24には、円形状の係合孔24D(図3及び図5(A)参照)が貫通形成されている。係合孔24Dは、張出部24Aの前端部に対して左右方向外側に位置している。
【0019】
後側保持部25は、上下方向を板厚方向とし且つ左右方向を長手方向とする略長尺板状に形成され、保持ベース部21の上端部から前側へ延出されて、溝部27の後部内に配置されている。後側保持部25は、平面視で中間保持部23に対して後側に所定の隙間を空けて配置されており、後側保持部25の左右方向両端部がアーム部22の基端部に接続されている。後側保持部25の前端部には、左右方向中央部において、後側切欠部25Aが形成されており、後側切欠部25Aは、平面視で前側へ開放された凹状に形成されている。ネジ40の仮保持位置では、後側切欠部25Aが、ネジ40の頭部本体42Aの後側で且つ径方向外側に隣接配置されている。すなわち、後側切欠部25Aが、平面視で頭部本体42Aの外周部に沿った円弧状に形成されており、後側保持部25によって頭部42の後部を径方向外側から支持している。また、ネジ40の仮保持位置では、ネジ40のフランジ42Bが、後側保持部25の下側に隣接配置されて、後側保持部25によってフランジ42Bを上側から支持している。以上により、後側保持部25によって、仮保持位置における頭部42の後部の後側、左右方向両側、及び上側への移動を制限している。
【0020】
また、仮保持部20は、周壁部28を有している。周壁部28は、上下方向を軸方向とし且つ前側へ一部開放された略矩形筒状に形成されて、アーム部22及び保持ベース部21の外周部から下側へ延出している。そして、後側の周壁部28が、他の部分の周壁部28よりも下側へ突出してラバーシート16の前端部に接続されている。さらに、スイッチ装置10では、仮保持部20の保持ベース部21及び後側の周壁部28が、ベース12及びケース14によって上下方向及び前後方向に挟まれて、ベース12とケース14との間をシールしている(図2参照)。
【0021】
(固定部30について)
固定部30は、ケース14に設けられている。固定部30は、上下方向を板厚方向とする略矩形板状に形成されており、仮保持部20の下側に配置されている。スイッチ装置10の車両側部品50への締結固定時には、固定部30が、車両側部品50の被固定ボス50Aの上側に隣接配置される。固定部30には、円形状の固定孔31が貫通形成されており、固定孔31は、仮保持位置のネジ40及び被固定ボス50Aと同軸上に配置されている。ネジ40の仮保持位置では、ネジ40の先端部(下端部)の一部が固定孔31内に配置される。
【0022】
固定部30は、囲繞壁32を有しており、囲繞壁32は、上下方向を軸方向とする略矩形筒状に形成されて、固定部30の外周部から上側へ突出している。そして、囲繞壁32の上端部が、仮保持部20の周壁部28に嵌入される。
【0023】
また、固定部30には、仮保持部20の係合孔24Dに対応する位置において、左右一対の係合部としての係合ピン33(図3参照)が設けられている。仮保持部20によるネジ40の仮保持後では、係合ピン33によって、前側保持部24を固定部30に連結して、アーム部22の弾性変形を制限するようになっている。係合ピン33は、略段付き円柱状に形成されて、固定部30から上側へ延出されており、係合ピン33の上端部が係合孔24D内に挿入される。また、係合ピン33の上端部には、略球状の抜止部33Aが形成されている。抜止部33Aの直径は、係合孔24Dの直径よりも大きく設定されており、前側保持部24の上側に隣接配置される。
【0024】
(作用効果)
次に、ネジ40をスイッチ装置10に仮保持する手順を説明しつつ、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0025】
スイッチ装置10では、ネジ40をラバーシート16の仮保持部20に仮保持させた後に、ラバーシート16をベース12に組付けるようになっている。ネジ40をラバーシート16に仮保持するときには、ネジ40を仮保持部20における溝部27の前側に配置して、ネジ40の頭部42を溝部27内に挿入する。具体的には、ネジ40のフランジ42Bを一対の前側保持部24の下側に位置するように配置して、ネジ40の頭部本体42Aを一対の前側保持部24の間に挿入する(図5(A)参照)。頭部本体42Aが、前側保持部24の張出部24Aに到達すると、張出部24Aが頭部本体42Aによって左右方向外側へ押し広げられて、アーム部22が左右方向外側へ弾性変形する。これにより、頭部本体42Aが、ガイド部24Bを摺動しながら溝部27内を後側へ移動して、左右一対の張出部24Aの間に配置される(図5(B)参照)。
【0026】
頭部本体42Aが、一対の前側保持部24を通過して、仮保持位置に到達すると、アーム部22が、左右方向内側へ弾性変形して、もとの状態に復帰する(図5(C)参照)。この状態では、中間保持部23が、ネジ部44の左右方向両側に配置されると共に、頭部42の下側に隣接配置される。また、前側保持部24がフランジ42Bの上側に配置されると共に、頭部本体42Aの前部の径方向外側に配置される。さらに、フランジ42Bの後端部が後側保持部25の下側に隣接配置されると共に、頭部本体42Aの後端部が後側保持部25の後側切欠部25A内に配置される。
【0027】
これにより、ネジ40の頭部42が、仮保持機構部26(中間保持部23、前側保持部24、及び後側保持部25)によって上下方向両側から支持される。さらに、頭部42が、前側保持部24及び後側保持部25によって前後方向に挟まれると共に、径方向外側から支持される。したがって、ネジ40の上下方向、左右方向、前後方向の移動が規制されて、ネジ40がラバーシート16の仮保持部20に仮保持される。
【0028】
この後、ネジ40を仮保持した状態のラバーシート16をベース12に組み付けて、スイッチ装置10を組立てる。スイッチ装置10の組立時には、ケース14における固定部30の囲繞壁32の上端部を仮保持部20の周壁部28内に嵌入させる。このときには、ネジ40のネジ部44の先端部が、固定孔31内に配置される。また、スイッチ装置10の組立時には、係合ピン33の上端部を仮保持部20の係合孔24D内に挿通させる。具体的には、係合孔24Dを広げるように前側保持部24を弾性変形させて、係合ピン33の抜止部33Aを、係合孔24Dに挿入させる。これにより、抜止部33Aが前側保持部24の上側に隣接配置されて、アーム部22の弾性変形が制限された状態になる。
【0029】
スイッチ装置10を車両側部品50に締結固定するときには、スイッチ装置10の固定部30を車両側部品50の被固定ボス50Aの上側に隣接配置する(図2図4参照)。そして、ドライバ等の工具によってネジ40を下側へ押し込むことで、下側への所定値以上の荷重(図6(A)の矢印参照)が中間保持部23の先端部に入力されると、中間保持部23がその基端部を起点に下側へ弾性変形する(図6(A)参照)。これにより、仮保持部20によるネジ40に対する仮保持状態が解除され、ネジ40の下側への移動が許可される。その後、ネジ40を被固定ボス50Aに螺合させることで、固定部30が被固定ボス50Aに締結固定される(図6(B)参照)。
【0030】
以上説明したように、仮保持構造Sでは、ネジ40が仮保持部20に仮保持される。仮保持部20は、ネジ40の頭部42が挿入される溝部27と、溝部27の幅方向両側部を構成し且つ左右方向に弾性変形可能に構成された左右一対のアーム部22と、を有している。また、溝部27の内部には、頭部42を上下方向両側及び径方向外側から支持する仮保持機構部26が設けられている。このため、アーム部22を左右方向に弾性変形させることで、頭部42を溝部27内に挿入しつつ、溝部27内に挿入された頭部42を仮保持機構部26によって相対移動不能に保持することができる。したがって、安定化した状態でネジ40を仮保持することができる。そして、ネジ40によって固定部30を車両側部品50の被固定ボス50Aに締結固定させる場合には、ネジ40を下側へ押し込むことで、仮保持機構部26によるネジ40の仮保持状態が解除されてネジ40の下側への移動が許可される。これにより、ネジ40による固定部30の被固定ボス50Aへの締結が可能となる。
【0031】
また、仮保持機構部26では、左右一対の中間保持部23が、ネジ40の左右方向両側において、頭部42を下側から支持している。中間保持部23は、上下方向を板厚方向とする板状に形成され、アーム部22から溝部27の幅方向中央側へ突出すると共に、上下方向に弾性変形可能に構成されている。そして、所定値以上の下側への荷重がネジ40に入力されたときには、中間保持部23が下側へ弾性変形して、中間保持部23のネジ40に対する支持状態が解除される。これにより、例えば、中間保持部23の板厚寸法や仮保持部20の硬度を適宜設定することで、ネジ40の仮保持状態を解除させるための荷重を容易に設定することができる。
【0032】
また、仮保持機構部26は、中間保持部23の前側において頭部42を上側から支持する一対の前側保持部24と、中間保持部23の後側において頭部42を上側から支持する後側保持部25と、を有している。前側保持部24は、上下方向を板厚方向とする板状に形成されると共に、アーム部22から溝部27の幅方向中央側へ突出している。後側保持部25は、上下方向を板厚方向とする板状に形成されると共に、保持ベース部21から前側へ突出している。これにより、中間保持部23と、前側保持部24及び後側保持部25と、によって、仮保持位置におけるネジ40の頭部42を上下方向両側から挟み込んで保持することができる。
【0033】
また、ネジ40の頭部42は、頭部本体42Aと、頭部本体42Aの外周部から径方向外側へ突出したフランジ42Bと、を含んで構成されている。そして、前側保持部24及び後側保持部25が、フランジ42Bを上側から支持すると共に、頭部本体42Aを径方向外側から支持している。具体的には、フランジ42Bが、前側保持部24及び後側保持部25の下側に隣接配置されると共に、頭部本体42Aが、前側保持部24の前側切欠部24C及び後側保持部25の後側保持部25に対して径方向内側に隣接配置される。これにより、前側保持部24及び後側保持部25によって、頭部42における上側、前後方向両側、左右方向両側の移動を制限することができる。
【0034】
また、固定部30には、前側保持部24の係合孔24Dと係合可能に構成された係合ピン33が設けられており、ネジ40の溝部27への挿入後に、係合ピン33が係合孔24Dを挿通し前側保持部24と係合されることで、アーム部22の弾性変形が制限される。これにより、仮保持部20によるネジ40の仮保持状態を良好に維持することができる。
【0035】
また、仮保持部20は、ゴム等の弾性材によって構成されており、スイッチ装置10の外郭を構成するベース12とケース14との間をシールしている。具体的には、仮保持部20の保持ベース部21及び後側の周壁部28が、ベース12及びケース14によって上下方向及び前後方向に挟まれて、ベース12とケース14との間をシールしている。これにより、ネジ40を仮保持するための仮保持部20を活用して、スイッチ装置10の防水性及び防塵性を向上することができる。
【0036】
また、本実施の形態では、囲繞壁32が固定部30に設けられており、固定部30の囲繞壁32の上端部が仮保持部20の周壁部28内に嵌入されている。さらに、ネジ40の仮保持状態では、ネジ40のネジ部44が囲繞壁32内に配置される。これにより、スイッチ装置10の車両側部品50への締結固定前において、仮に、外力によって中間保持部23が弾性変形してネジ40の仮保持状態が解除された場合には、ネジ40が囲繞壁32内に収容される。したがって、ネジ40のスイッチ装置10からの離脱を抑制することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、アーム部22の非弾性変形状態において、アーム部22が保持ベース部21から前側へ延出されているが、アーム部22を保持ベース部21から前側へ向かうに従い左右方向外側へ傾斜する方向へ延出させてもよい。すなわち、仮保持部20を、図5(B)に示される形状に変更してもよい。これにより、ネジ40を溝部27に挿入するときの作業性を向上することができる。また、この場合には、スイッチ装置10の組立時において、作業者によってアーム部22を左右方向内側に弾性変形させつつ、ケース14の係合ピン33を前側保持部24の係合孔24D内に挿通させる。これにより、ネジ40が図1に示される状態と同じ状態で仮保持される。
【0038】
また、本実施の形態では、係合ピン33を前側保持部24の係合孔24D内に挿通させることで、ネジ40の仮保持後におけるアーム部22の弾性変形を制限しているが、アーム部22の弾性変形を制限する構成はこれに限らない。例えば、図7に示されるように、左側の前側保持部24に、右側へ延出する連結部60を設け、連結部60と連結される連結ボス62を右側の前側保持部24に設けて、連結部60によって左右の前側保持部24を互いに連結してもよい。この場合でも、ネジ40の仮保持後に連結部60によって一対の前側保持部24を連結することで、左右方向におけるアーム部22の弾性変形が制限されて、仮保持部20によるネジ40の仮保持状態を良好に維持することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、アーム部22の左右方向の厚み寸法等は特に規定していないが、アーム部22を良好に弾性変形させるように、アーム部22の寸法は適宜変更可能である。また、例えば、アーム部22の左右方向外側部に左右方向外側へ開放された溝を形成して、当該溝が形成された部位を起点にアーム部22を弾性変形させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 スイッチ装置(締結部品)
12 ベース(第1部材)
14 ケース(第2部材)
20 仮保持部
21 保持ベース部
22 アーム部
23 中間保持部(第1保持部)
24 前側保持部(第2保持部)
25 後側保持部(第3保持部)
26 仮保持機構部
27 溝部
30 固定部
31 固定孔
33 係合ピン(係合部)
40 ネジ
42 頭部
42A 頭部本体
42B フランジ
50 車両側部品(被締結部品)
60 連結部
S ネジの仮保持構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7