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特開2024-141109ハニカム構造体の製造方法及び検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141109
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/95 20060101AFI20241003BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20241003BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241003BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
G01N21/88 J
G06T7/00 350C
G06T7/00 300F
G06V10/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052578
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺拝 貴史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】山下 開
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB03
2G051BA01
2G051BA08
2G051BA10
2G051BA20
2G051BB02
2G051CA03
2G051CA04
2G051EB05
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA05
5L096DA02
5L096FA04
5L096FA59
5L096HA11
5L096JA16
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】ハニカム構造体の端面に関し所定の欠陥種類の欠陥の過剰検出を低減する。
【解決手段】ハニカム構造体の製造方法が、第1の端面から第2の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体の第1の端面の少なくとも一部が写っている被検画像から複数の断片画像を抽出し、画像を入力とし種類を出力とする学習モデルに、当該複数の断片画像をそれぞれ入力することで、当該複数の断片画像の各々について当該断片画像を分類する。製造方法が、所定の欠陥種類に分類された断片画像に属するセルである不良セルの数に基づいて第1の端面に欠陥があるか否かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端面から第2の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体の製造方法において、
前記ハニカム構造体の第1の端面の少なくとも一部が写っている被検画像から複数の断片画像を抽出し、画像を入力とし種類を出力とする学習モデルに、当該複数の断片画像をそれぞれ入力することで、当該複数の断片画像の各々について当該断片画像を分類するモデルベース分類ステップと、
所定の欠陥種類に分類された断片画像に属するセルである不良セルの数に基づいて前記第1の端面に欠陥があるか否かを判定するルールベース判定ステップと
を有する製造方法。
【請求項2】
前記ルールベース判定ステップは、
所定の欠陥種類の候補に分類された断片画像に属するセルである最終候補セルが所定のルールを満たすか否かのルールベース判定を行うステップと、
当該ルールベース判定の結果が真である最終候補セルと不良セルとみなすステップと
を含む、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記被検画像は、処理用画像の少なくとも一部であり、
前記処理用画像は、前記第1の端面の高角度照明画像と、前記第1の端面の低角度照明画像とのうちの高角度照明画像であり、
前記高角度照明画像は、前記第1の端面に対し形成される角度が高角度である光が照射されている前記第1の端面の撮影画像データが表す画像であり、
前記低角度照明画像は、前記第1の端面に対し形成される角度が低角度である光を照射されている前記第1の端面の撮影画像データが表す画像であり、
前記所定の欠陥種類は、セル変形であり、
前記学習モデルは、セル変形用の深層学習モデルであり、
前記所定のルールは、前記低角度照明画像に写っているセルのセル開口に関するルールである、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記高角度照明画像に写っている各セルについて、当該セルがセル開口に関する所定の別のルールを満たすか否かの判定である別のルールベース判定を行うルールベース分類ステップを更に有し、
前記被検画像は、前記処理用画像の一部であって、前記別のルールベース判定の結果が真であるセルである不良候補セルが写っている画像である、
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記所定の別のルールは、前記高角度照明画像において、セル開口の内接円の径が第1の径サイズ未満、又は、セル開口の面積が第1の面積未満であり、
前記所定のルールは、前記低角度照明画像において、セル開口の内接円の径が第2の径サイズ未満、又は、セル開口の面積が第2の面積未満である、
請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記所定の欠陥種類は、クラックであり、
前記学習モデルは、クラック用の深層学習モデルである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1の端面に欠陥があるか否かの判定の結果を表す情報を含んだ検査結果情報に基づき検査結果を表示させる表示制御ステップを更に有し、
前記検査結果は、
前記第1の端面に前記所定の欠陥種類の欠陥があるか否かの判定結果と、
前記判定結果の理由であって、前記所定の欠陥種類の欠陥があるとの条件が満たされたか否かを含んだ理由と
を含む、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
モデル管理ステップを更に有し、
前記学習モデルは、深層学習モデルであり、
断片画像毎に当該断片画像と当該断片画像に対応の種類とを含んだ教師データの量が一定量未満の場合、
当該教師データでは、前記教師データにおける断片画像毎に、当該断片画像が、前記所定の欠陥種類に属する二つ以上の詳細種類のいずれか、又は、非欠陥種類に属する二つ以上の詳細種類のいずれかに分類されており、
前記モデル管理ステップは、当該教師データを用いて、前記深層学習モデルを学習することを含む、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
第1の端面から第2の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体の第1の端面の少なくとも一部が写っている被検画像から複数の断片画像を抽出し、画像を入力とし種類を出力とする学習モデルに、当該複数の断片画像をそれぞれ入力することで、当該複数の断片画像の各々について当該断片画像を分類するモデルベース処理部と、
所定の欠陥種類に分類された断片画像に属するセルである不良セルの数に基づいて前記第1の端面に欠陥があるか否かを判定するルールベース処理部と
を備える検査装置。
【請求項10】
第1の端面から第2の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体の第1の端面の少なくとも一部が写っている被検画像から複数の断片画像を抽出し、画像を入力とし種類を出力とする学習モデルに、当該複数の断片画像をそれぞれ入力することで、当該複数の断片画像の各々について当該断片画像を分類し、
所定の欠陥種類に分類された断片画像に属するセルである不良セルの数に基づいて前記第1の端面に欠陥があるか否かを判定する、
ことをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項11】
第1の端面から第2の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体の第1の端面の少なくとも一部が写っている被検画像から複数の断片画像を抽出し、画像を入力とし種類を出力とする学習モデルに、当該複数の断片画像をそれぞれ入力することで、当該複数の断片画像の各々について当該断片画像を分類し、
所定の欠陥種類に分類された断片画像に属するセルである不良セルの数に基づいて前記第1の端面に欠陥があるか否かを判定する、
ことをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ハニカム構造体の製造技術に関し、具体的には、例えば、ハニカム構造体の端面の検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカム構造体の製造方法に、ハニカム構造体の検査が含まれ得ることが知られている。ハニカム構造体の検査に関する技術として、例えば、特許文献1に開示の検査装置が知られている。特許文献1には、次のことが開示されている。すなわち、検査装置は、ハニカム構造体の端面に40°以上の角度で光を照射しながら当該端面の第1の処理用画像データを得て、当該端面に40°未満の角度で光を照射しながら当該端面の第2の処理用画像データを得て、得られた第1の処理用画像データと第2の処理用画像データとを比較してクラックを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2017/073628
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハニカム構造体の端面の検査において、クラックの検出精度の一層の向上を目的として、得られた画像を学習モデルに入力する方法が考えられる。しかし、その方法では、クラックの過剰検出が懸念される。理由の一つは次の通りである。
【0005】
すなわち、学習モデルに入力される画像は、欠陥が写っている箇所の画像、つまり、欠陥全体が写っている画像である。このため、欠陥がクラックの場合、学習モデルには、クラック全体の画像が入力されることになる。
【0006】
しかし、欠陥種類がクラックであると精度良く判定できる程に学習モデルを学習させることは難しい。その理由の一つとして、クラックの長さは様々であり、クラックによっては、クラックが写っている画像が、広範囲の画像となり得ることがある。広範囲の画像では、クラックが写っている領域よりもクラックが写っていない領域の方が広いことがあり、故に、クラックの特徴が小さく、結果として、学習モデルの精度が下がる。また、クラックが写っていない領域には、クラック以外の欠陥(例えばチッピング)が写っている可能性があり、クラックと共にクラック以外の欠陥も一つの画像に写っていると、クラックの特徴が不正確となり、結果として、学習モデルの精度が下がる。
【0007】
このような理由から、精度良く学習モデルを学習させることが難しく、故に、クラック以外の欠陥の画像が学習モデルに入力されても欠陥種類がクラックであると過剰検出がされるおそれがある。また、このような課題は、クラックとは別の所定種類の欠陥(例えば、所定種類のセル変形)についても有り得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ハニカム構造体の製造方法が、モデルベース分類ステップと、ルールベース判定ステップとを有する。モデルベース分類ステップは、第1の端面から第2の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体の第1の端面の少なくとも一部が写っている被検画像から複数の断片画像を抽出し、画像を入力とし種類を出力とする学習モデルに、当該複数の断片画像をそれぞれ入力することで、当該複数の断片画像の各々について当該断片画像を分類することを含む。ルールベース判定ステップは、所定の欠陥種類に分類された断片画像に属するセルである不良セルの数に基づいて第1の端面に欠陥があるか否かを判定することを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、学習モデルに入力される画像は、断片画像であるため、判定精度の高い学習モデルを用意することができ、以って、ハニカム構造体の端面に関し所定の欠陥種類の欠陥の過剰検出を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る検査システムの構成を模式的に示す。
図2A】ハニカム構造体の第1の端面の平面視の模式図である。
図2B】ハニカム構造体の斜視図である。
図3】制御デバイスの構成を示す。
図4】端面検査の処理の概要を示す。
図5】端面検査の一例を模式的に示す。
図6】深層学習モデルの学習を模式的に示す。
図7】S402A(クラック個別判定)を模式的に示す。
図8】S402B(セル変形個別判定)を模式的に示す。
図9】S401B(セル変形全体判定)、S402B(セル変形個別判定)及びS403B(セル変形最終判定)の詳細を示す。
図10A】第1変形の例を示す。
図10B】第2変形の例を示す。
図10C】変形候補の例を示す。
図11】モデル管理部が行う学習処理の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、1つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該1つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも1つでよい。
・1つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも1つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも1つのI/Oデバイスは、ユーザインターフェースデバイス、例えば、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・1つ以上の通信インターフェースデバイス。1つ以上の通信インターフェースデバイスは、1つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば1つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし2つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0012】
また、以下の説明では、「メモリ」は、1つ以上の記憶デバイスの一例である1つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも1つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0013】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、1つ以上の記憶デバイスの一例である1つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、又は、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0014】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0015】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、1つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも1つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも1つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも1つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも1つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0016】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、1つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、1つ以上のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機又は計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が1つの機能にまとめられたり、1つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る検査システム500の構成を模式的に示す。
【0019】
検査システム500は、ステージ14と、第1の光源11aと、第2の光源11bと、撮影装置13と、検査装置450とを備える。
【0020】
ステージ14は、セラミックス製のハニカム構造体1を載置するためのステージである。ハニカム構造体1は、第1の端面2a、第2の端面2b及び側面を有する。ステージ14には、ハニカム構造体1の第2の端面2bが載置される。
【0021】
第1の光源11aは、高角度照明の光源である。第1の光源11aは、ハニカム構造体1の第1の端面2aに、第1の端面2aに対し形成される角度が高角度である光12を照射する。この照射を「高角度照射」と呼ぶことができる。
【0022】
第2の光源11bは、低角度照明の光源である。第2の光源11bは、ハニカム構造体1の第1の端面2aに、第1の端面2aに対し形成される角度が低角度である光12を照射する。この照射を「低角度照射」と呼ぶことができる。
【0023】
撮影装置13は、第1の光源11aにより高角度照射された光12を受けている第1の端面2aの第1の処理用画像データ(例えば撮影画像データ)を得る。また、撮影装置13は、第2の光源11bにより低角度照射された光12を受けている第1の端面2aの第2の処理用画像データ(例えば撮影画像データ)を得る。第1の処理用画像データを、「高角度照明画像データ」と呼ぶことができ、第1の処理用画像データが表す第1の処理用画像を「高角度照明画像」と呼ぶことができる。また、第2の処理用画像データを、「低角度照明画像データ」と呼ぶことができ、第2の処理用画像データが表す第2の処理用画像を「低角度照明画像」と呼ぶことができる。また、本実施形態において、「高角度」は、「低角度」より高い角度であってもよいし、第1の角度閾値以上の角度でよい。また、「低角度」は、「高角度」より低い角度であってもよいし、第2の角度閾値未満の角度でよい。第2の角度閾値は、第1の角度閾値と同じかそれより小さい値でよい。
【0024】
撮影装置13は、ハニカム構造体1の載置面に対し垂直方向に備えられてよい。また、第1の光源11aは、上面視(平面視)において、撮影装置13を挟んで対称位置に少なくとも一対設けられてよい。第2の光源11bは、上面視(平面視)において、撮影装置13を挟んで、対称位置に少なくとも一対設けられていてよい。
【0025】
撮影装置13としては、エリアカメラが用いられてよい。また、撮影装置13は、テレセントリック光学系を備えてよい。エリアカメラにより、ハニカム構造体1の第1の端面2a全体を撮影することができる。撮影装置13は、複数のエリアカメラを備えて、分割して第1の端面2aを撮影してもよい。或いは、撮影装置13としては、ラインセンサが用いられてもよい。ラインセンサは、撮影対象の第1の端面2aの移動方向に垂直な方向の長さよりも長くてよい。
【0026】
光源11a及び/又は11bとしては、ライン照明又は点照明の光源が用いられてよい。また、光源11a及び/又は11bとしては、LED光源、レーザー、ハロゲン、メタルハライド光源等が用いられてよい。
【0027】
高角度照明画像データと低角度照明画像データのどちらが先に得られてもよいし、それらのデータが同時に得られてもよい。例えば、第1の光源11aの光12と第2の光源11bの光12が、異なる波長の光でもよく、この場合、高角度照明画像データと低角度照明画像データとが同時に得られてもよい。異なる波長の光として、例えば、青色の光源と赤色の光源を用いることができる。高角度照明画像データと低角度照明画像データとを同時に得た場合、一つの処理用画像データに、高角度照明画像データと低角度照明画像データが含まれることになる。この場合、検査装置450が、一つの処理用画像データとしてのRGB画像データから高角度照明画像データ(例えば赤色成分の画像データ)と低角度照明画像データ(例えば青色成分の画像データ)とを分離することができる。
【0028】
検査装置450は、パーソナルコンピュータのような計算機でよく、入力デバイス572、表示デバイス540及びそれらに接続された制御デバイス570を備える。入力デバイス572及び表示デバイス540は、タッチパネルのように一体でもよい。
【0029】
制御デバイス570に、ハニカム構造体1の第1の端面2aを撮影している撮影装置13からの処理用画像データ(撮影画像)が入力される。制御デバイス570が、処理用画像データが表す第1の端面2aに所定種類の欠陥があればその欠陥を検出する。
【0030】
図2Aは、ハニカム構造体1の第1の端面2aの平面視の模式図である。図2Bは、ハニカム構造体の斜視図である。
【0031】
ハニカム構造体1は、第1の端面2aから第2の端面2bまで延びる複数のセル5を区画形成する多孔質の隔壁4を有する構造体である。具体的には、例えば、ハニカム構造体1は、柱状に形成され、長手方向(軸方向)9の第1の端面2aから第2の端面2bまで貫通する流路を有する。隔壁4によって流路となる多数のセル5が区画形成されている。
【0032】
ハニカム構造体1の形状、大きさ又は材質等は限定されないでよい。例えば、ハニカム構造体1は、円柱状に代えて角柱状であってもよい。また、例えば、セル5の隔壁4の厚さ(リブ厚)や隔壁4の密度は、目的に応じて適宜設計されてよい。また、ハニカム構造体1は、セラミックスを主成分とする(例えば、セラミックスを50質量%以上含む)構造体でよい。
【0033】
図3は、制御デバイス570の構成を示す。
【0034】
制御デバイス570は、インターフェース装置10、記憶装置20及びそれらに接続されたプロセッサ30を有する。
【0035】
インターフェース装置10は、入力デバイス572、表示デバイス540及び撮影装置13に通信可能に接続される。
【0036】
記憶装置20は、コンピュータプログラムや情報を記憶する。例えば、記憶装置20は、深層学習モデル260、ワーク仕様情報270及び検査結果情報280を記憶する。
【0037】
深層学習モデル260は、学習モデルの一例であり、画像を入力とし欠陥種類を出力とする。深層学習モデル260は、典型的にはニューラルネットワークである。深層学習モデル260は、後述のモデルベース処理部230による学習や推論に使用される。
【0038】
ワーク仕様情報270は、顧客毎のワーク仕様を表す情報である。「顧客」とは、ハニカム構造体1の提供先である。各顧客について、「ワーク仕様」とは、ハニカム構造体1の仕様であり、所定種類の欠陥毎に欠陥とみなされる条件を含む。
【0039】
検査結果情報280は、ハニカム構造体1毎の検査結果を表す情報である。検査結果は、欠陥の有無、検出された欠陥の種類、及び、欠陥が写っている被検画像を含んでよい。検査結果は、欠陥の位置(例えば、第1の端面2aにおける所定位置を基準座標(原点)とした場合の座標)といった結果詳細を含んでもよい。
【0040】
記憶装置20に記憶されているコンピュータプログラムをプロセッサ30が実行することにより、ルールベース処理部220、モデルベース処理部230、表示制御部240及びモデル管理部250といった機能が実現される。また、ステージ14や撮影装置13といった種々の装置を制御する制御部(図示せず)が実現されてもよい。ルールベース処理部220が適用するルールのうちの少なくとも一部のルールは、ワーク仕様情報270が表すワーク仕様に基づくルールでよい。
【0041】
図4は、端面検査の処理の概要を示す。なお、本実施形態では、所定種類の欠陥は、「クラック」と、「セル変形」に大別される。「クラック」は、ハニカム構造体1の長手方向9の隔壁4(リブ)及び外壁の切れである。「セル変形」は、流路としてのセルの変形である。このため、深層学習モデル260として、本実施形態では、クラックモデル260Aとセル変形モデル260Bがある。クラックモデル260Aとセル変形モデル260Bの各々は、一つ以上の深層学習モデルを含んでよい。
【0042】
まず、制御デバイス570は、ルールベース分類を行う(S401)。S401において適用されるルールベース分類は、ワーク仕様情報270が表すワーク仕様に基づいてよい。具体的には、例えば、ルールベース処理部220が、クラック全体判定(S401A)とセル変形全体判定(S401B)とを行う。
【0043】
S401A(クラック全体判定)は、ルールベースのクラック判定であって、クラック範囲画像があるか否かの判定である。「クラック範囲画像」は、クラックが写っている範囲を含む画像である。S401Aでは、ルールベース処理部220は、対象画像が、クラックとしての条件を表すルールを満たす範囲を含む画像、つまりクラック範囲画像であるか判定する。この段落での「対象画像」は、二次元撮影画像(撮影装置130からの処理対象画像データが表す画像)の少なくとも一部でもよいし、クラック判定のためのルールベースの画像処理(例えば、クラックの検出確率を高めるための画像処理)が施された二次元撮影画像の少なくとも一部でもよい。また、S401では、ルールベース処理部220が、特許文献1に開示の技術に基づき、高角度照明画像と低角度照明画像との比較の結果を基にクラック範囲画像を特定してよい。
【0044】
S401B(セル変形全体判定)は、ルールベースのセル変形判定であって、セル変形範囲画像があるか否かの判定である。「セル変形範囲画像」は、セル変形が写っている範囲を含む画像である。S401Bでは、ルールベース処理部220は、対象画像が、セル変形としての条件を表すルールを満たす範囲を含む画像、つまりセル変形範囲画像であるか判定する。この段落での「対象画像」は、二次元撮影画像の少なくとも一部でもよいし、セル変形判定のためのルールベースの画像処理(例えば、セル変形の検出確率を高めるための画像処理)が施された二次元撮影画像の少なくとも一部でもよい。
【0045】
クラック範囲画像及びセル変形範囲画像を「被検画像」と総称することができる。被検画像は、クラック範囲とセル変形範囲の両方の範囲を含む画像であることもあり得る。
【0046】
次に、制御デバイス570は、モデルベース分類を行う(S402)。具体的には、モデルベース処理部230が、クラック個別判定(S402A)とセル変形個別判定(S402B)とを行う。
【0047】
S402A(クラック個別判定)は、モデルベースのクラック判定である。S402Aでは、モデルベース処理部230は、被検画像(クラック範囲画像)から各断片画像を抽出する。断片画像は、典型的には方形の画像でよく、例えば、縦横200ピクセルの画像でよい。また、断片画像は、所定の順序(例えば、被検画像の先頭から末尾にかけて順次に)抽出されてよい。例えば、クラック範囲画像から抽出された断片画像は、図5に例示の断片画像411である(図5において、符号500は、高角度照明画像を表し、符号410は、クラックを表す)。S402Aでは、モデルベース処理部230は、断片画像に写っている欠陥の種類の推論を行う。具体的には、モデルベース処理部230は、抽出された断片画像をクラックモデル260Aに入力し、当該断片画像についての判定結果(判定された欠陥種類(クラス))と信頼度(判定の信頼度)とをクラックモデル260Aから取得する。S402Aにおいて、断片画像の抽出は、高角度照明の被検画像と低角度照明の被検画像の一方又は両方について行われてもよいし、高角度照明の成分と低角度照明の成分とを含んだ一つの被検画像について行われてもよい。高角度照明の被検画像と低角度照明の被検画像のそれぞれから断片画像が抽出される場合、その二つの被検画像の同一位置からそれぞれ抽出された二つの断片画像がクラックモデル260Aに入力され、当該二つの断片画像について(例えば、当該二つの断片画像の比較の結果に基づいて)、一つの判定結果が出力されてもよい。
【0048】
S402B(セル変形個別判定)は、モデルベースのセル変形判定である。S402Bでは、モデルベース処理部230は、被検画像(セル変形範囲画像)から各断片画像を抽出する。ここでも、断片画像は、典型的には方形の画像でよく、例えば、縦横200ピクセルの画像でよい。例えば、セル変形範囲画像から抽出された断片画像は、図5に例示の断片画像412である(図5において、符号420は、セル変形範囲画像を表す)。S402Bでは、モデルベース処理部230は、断片画像に写っている欠陥の種類の推論を行う。具体的には、モデルベース処理部230は、抽出された断片画像をセル変形モデル260Bに入力し、当該断片画像についての判定結果(判定された欠陥種類(クラス))と信頼度(判定の信頼度)とをクラックモデル260Aから取得する。S402Bにおいて、断片画像の抽出は、高角度照明の被検画像と低角度照明の被検画像の一方又は両方について行われてもよいし、高角度照明の成分と低角度照明の成分とを含んだ一つの被検画像について行われてもよいが、本実施形態では、後述するように、高角度照明の被検画像について行われる。
【0049】
S402A及びS402Bの少なくとも一つにおいて、断片画像の一部が別の断片画像の一部と重複していてもよいし、各断片画像は別の断片画像に重複無しに隣接していてもよい。また、S402A及びS402Bの少なくとも一つにおいて、モデルベース処理部230は、被検画像を回転させ、複数の回転角の被検画像(例えば、0°(未回転)の被検画像、90°回転後の被検画像、…)の各々から複数の断片画像を抽出し、異なる回転角の複数の断片画像の各々を深層学習モデル260に入力してよい。
【0050】
このように、被検画像から抽出された断片画像毎に、断片画像が深層学習モデル260に入力されることで欠陥種類が判定される。なお、深層学習モデル260は、図6に示すように、欠陥種類毎の教師データ700を用いて学習済である。教師データ700は、当該教師データ700に対応の欠陥種類(又は非欠陥種類)に属する複数の断片画像を含んでよい。また、教師データ700は、異なる回転角の複数の断片画像を含んでよい。また、断片画像のサイズは、均一でもよいし、所定の欠陥種類が「クラック」であるか「セル変形」であるかによって異なっていてもよい。
【0051】
再び図4を参照する。また、以下の説明では、「ABC」に分類された断片画像を「断片画像「ABC」」と表現することがある。
【0052】
制御デバイス570は、モデルベース分類の後、ルールベース判定を行う(S403)。具体的には、モデルベース処理部230が、クラック最終判定(S403A)と、セル変形最終判定(S403B)と、総合判定(S403C)とを行う。S403A(クラック最終判定)は、S402Aでの判定結果(抽出された各断片画像についての判定結果)に基づくルールベースの判定である。S403B(セル変形最終判定)は、S402Bでの判定結果(抽出された各断片画像についての判定結果)に基づくルールベースの判定である。総合判定(S403C)は、S403A及びS403Bの判定結果に基づく判定である。例えば、総合判定(S403C)は、不良セルの数に基づいて端面検査の最終結果をOKとするかNGとするかの判定でよい。「不良セル」とは、断片画像「NG」に属するセルである。例えば、一つのセルが複数の断片画像が属する場合、当該複数の断片画像のうち所定割合以上の断片画像が断片画像「NG」の場合、当該セルが「不良セル」とされてよい。一つの断片画像に一つのセル全体が写っていてもよいし、連続した複数の断片画像(例えば重複した断片画像)に一つのセル全体が写っていてもよい(つまり各断片画像にはセルの一部が写っていてもよい)。モデルベース処理部230は、断片画像と断片画像に写っているセルとの関連付けを表す情報(例えば、断片画像の通し番号とセルの通し番号との関係を表す情報)を作成し、当該情報を記憶装置20に格納してよい(例えば検査結果情報280に含めてもよい)。なお、S403Cの判定は、例えば、ワーク仕様情報270が表すワーク仕様に基づく判定でよい。また、S403Aは無くてもよい。
【0053】
二次元撮影画像データと共にハニカム構造体1のワークIDが検査装置450に入力されてよい。S401~S403の結果を表す情報が、検査結果情報280に格納されワークIDが関連付けられてよい。
【0054】
表示制御部240が、検査結果情報280を基に検査結果画面を表示デバイス540に表示する(S404)。検査結果画面では、検査結果情報280が表す検査結果と、ワークIDとが表示されてよい。
【0055】
図7は、S402A(クラック個別判定)を模式的に示す。
【0056】
S402A(クラック個別判定)において、モデルベース処理部230は、被検画像から複数の断片画像を抽出し、各断片画像をクラックモデル260Aに入力することで、各断片画像を分類する。分類先としては、「NG」(欠陥種類「クラック」)と「OK」(欠陥種類「非クラック」)の二つに大別される。
【0057】
図7において、クラックモデル260Aの枠に関連付けられている吹き出し内に表示されている各画像が、断片画像の一例である。図7において、クラックモデル260Aの枠内に示される各画像は、断片画像よりも広範囲に「NG」又は「OK」の例を表す画像である。
【0058】
「NG」には、「第1クラック」(端面の切れ)、「第2クラック」(隔壁4の欠如)、及び、「第3クラック」(隔壁4の切れ)といった三つの欠陥種類が属する。この三つの欠陥種類のいずれかに分類されるということが、所定の欠陥種類としての「クラック」に分類されるということである。三つの欠陥種類の各々について、教師データ700が用意され、それらの教師データを用いて、クラックモデル260Aの学習が行われてよい。なお、「NG」に属する欠陥種類は、図7に例示の欠陥種類に限られないでよい。例えば、「第4クラック」として、セルの交点の切れが採用されてもよい。
【0059】
「OK」には、「チッピング」、「繊維」(繊維の付着)、及び、「異物」(繊維以外の異物の付着)といった三つの非欠陥種類が属する。この三つの非欠陥種類のいずれかに分類されるということが、所定の欠陥種類としての「クラック」に分類されないということである。三つの非欠陥種類の各々について、教師データ700が用意され、それらの教師データを用いて、クラックモデル260Aの学習が行われてよい。なお、「OK」に属する非欠陥種類は、図7に例示の非欠陥種類に限られないでよい。
【0060】
なお、このS402Aの後のS403A(クラック最終判定)では、例えば、次のことが行われてよい。すなわち、モデルベース処理部230が、所定数の断片画像「OK」が断片画像「NG」に挟まれている場合には、当該所定数の断片画像「OK」の各々を断片画像「NG」に変更してもよい(断片画像の分類先(断片画像に関連付けられているラベル)を「OK」から「NG」に変更してもよい)。或いは、モデルベース処理部230が、所定数の断片画像「NG」がある場合には、第1の端面2aにクラックがあるとの決定をしてよい。
【0061】
図8は、S402B(セル変形個別判定)を模式的に示す。
【0062】
S402B(セル変形個別判定)において、モデルベース処理部230は、被検画像から複数の断片画像を抽出し、各断片画像をセル変形モデル260Bに入力することで、各断片画像を分類する。分類先としては、「NG」(欠陥種類「セル変形」)と「OK」(欠陥種類「非セル変形」)の他に、「変形候補」がある。すなわち、「OK」以外の分類先として、「NG」の他に「変形候補」が存在する。
【0063】
図8において、セル変形モデル260Bの枠に関連付けられている吹き出し内に表示されている各画像が、断片画像の一例である。図8において、セル変形モデル260Bの枠内に示される各画像は、断片画像よりも広範囲に「NG」、「OK」又は「変形候補」の例を表す画像である。
【0064】
「NG」には、「NG1」に属する「第1変形」(セル奥での変形)と、「NG2」に属する「第2変形」(セル全体の断面変形A)及び「第3変形」(セル全体の断面変形B)といった三つの欠陥種類が属する。この三つの欠陥種類のいずれかに分類されるということが、所定の欠陥種類としての「セル変形」に分類されるということである。三つの欠陥種類の各々について、教師データ700が用意され、それらの教師データを用いて、セル変形モデル260Bの学習が行われてよい。なお、「NG」に属する欠陥種類は、図8に例示の欠陥種類に限られないでよい。
【0065】
「OK」には、「チッピング」及び「繊維」(繊維の付着)といった二つの非欠陥種類が属する。この二つの非欠陥種類のいずれかに分類されるということが、所定の欠陥種類としての「セル変形」に分類されないということである。二つの非欠陥種類の各々について、教師データ700が用意され、それらの教師データを用いて、セル変形モデル260Bの学習が行われてよい。なお、「OK」に属する非欠陥種類は、図8に例示の非欠陥種類に限られないでよい。
【0066】
「変形候補」は、「NG」に該当する候補を意味する。「変形候補」が「NG」になるか否かの判定が、S403B(セル変形最終判定)において行われる。「変形候補」について、教師データ700が用意され、その教師データを用いて、セル変形モデル260Bの学習が行われてよい。
【0067】
図9は、S401B(セル変形全体判定)、S402B(セル変形個別判定)及びS403B(セル変形最終判定)の詳細を示す。
【0068】
S401Bにおいて、ルールベース処理部220は、高角度照明画像における全セルを、ルールベースで分類する。具体的には、例えば、S401Bでは、ルールベース処理部220は、高角度照明画像に写っている全セルの各々に、セル開口の内接円の径が第1の長さ(例えば、規格ピンゲージサイズと第1のマージンとの合計)未満か否かを判定する。この判定結果が真であるセルが、良品セルであり、この判定結果が偽であるセルが、不良候補セルである。高角度照明画像のうち一つ以上の不良候補セルが写っている画像が、S401Bにおいて得られる被検画像である。
【0069】
S402Bにおいて、モデルベース処理部230は、被検画像から複数の断片画像を抽出し、各断片画像をセル変形モデル260Bに入力することで、各断片画像を分類する(S901)。
【0070】
S403Bにおいて、ルールベース処理部220は、各断片画像について、分類結果を参照し(S910)、各セルが良品セルか不良セルかを決定する。
【0071】
具体的には、ルールベース処理部220は、断片画像「OK」に属するセルを、良品セルと決定する(S911)。ルールベース処理部220は、断片画像「第1変形」を、不良セルと決定する(S912)。
【0072】
ルールベース処理部220は、断片画像「NG2」(「第2変形」又は「第3変形」)又は「変形候補」に属するセルである最終候補セルを、ルールベースで分類する(S913)。具体的には、例えば、S913では、ルールベース処理部220は、低角度照明画像に写っている最終候補セルに、セル開口の内接円の径が第2の長さ(例えば、規格ピンゲージサイズと第2のマージンとの合計)未満か否かを判定する。この判定結果が真であるセルが、良品セルであり、この判定結果が偽であるセルが、不良セルである。なお、第2のマージンは、第1のマージンより短くてよい。また、「第2変形」及び「第3変形」のようにS913(ルールベースでの分類)が必要になる分類は、「変形候補」に含まれてもよい。
【0073】
ルールベース処理部220は、S403C(総合判定)において、不良セルの数に基づいて端面検査の最終結果をOKとするかNGとするかを判定してよい。
【0074】
なお、S401B及びS913の少なくとも一つにおいて、ルールベースの判定は、セル開口の内接円の径が所定サイズ未満であるか否かの判定に代えて、他の判定、例えば、セル開口の面積が所定サイズ未満か否かの判定でもよい。判定のベースとなるルールは、ワーク仕様情報270が表すワーク仕様に基づいてよい。
【0075】
以上、一実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。
【0076】
以上の実施形態を、例えば下記のように総括することができる。下記の総括は、上述の説明の補足説明や変形例の説明を含んでよい。
【0077】
ハニカム構造体1の製造方法が、モデルベース分類ステップ(例えばS402)と、ルールベース判定ステップ(例えばS403)とを備える(例えば、検査装置450が、モデルベース処理部230と、ルールベース処理部220とを備える)。モデルベース分類ステップ(例えばモデルベース処理部230)は、被検画像から複数の断片画像を抽出し、画像を入力とし種類を出力とする学習モデルに、当該複数の断片画像をそれぞれ入力することで、当該複数の断片画像の各々について当該断片画像を分類する。ハニカム構造体1は、第1の端面2aから第2の端面2bまで延びる複数のセル5を区画形成する多孔質の隔壁4を有する。被検画像は、ハニカム構造体1の第1の端面2aの少なくとも一部が写っている画像である。ルールベース判定ステップ(例えばルールベース処理部220)は、不良セル(所定の欠陥種類に分類された断片画像に属するセル)の数に基づいて第1の端面2aに欠陥があるか否かを判定する。
【0078】
学習モデルに入力される画像は、断片画像であるため、判定精度の高い学習モデルを用意することができ、以って、ハニカム構造体1の端面に関し所定の欠陥種類の欠陥の過剰検出を低減することができる。
【0079】
ルールベース判定ステップ(例えばルールベース処理部220)は、最終候補セル(所定の欠陥種類の候補に分類された断片画像に属するセル)が所定のルールを満たすか否かのルールベース判定を行い、当該ルールベース判定の結果が真である最終候補セルと不良セルとみなしてよい。これにより、モデルベース処理だけでは、所定の欠陥種類か否かの判定が難しいセルを正確に良品セルか不良セルか区別することが期待でき、以って、検査精度の向上が期待できる。
【0080】
被検画像は、処理用画像の少なくとも一部でよい。処理用画像は、第1の端面2aの高角度照明画像と、第1の端面2aの低角度照明画像とのうちの高角度照明画像でよい。高角度照明画像は、第1の端面2aに対し形成される角度が高角度である光が照射されている第1の端面2aの撮影画像データが表す画像でよい。低角度照明画像は、第1の端面2aに対し形成される角度が低角度である光を照射されている第1の端面2aの撮影画像データが表す画像でよい。所定の欠陥種類は、セル変形でよい。学習モデルは、セル変形モデル260B(セル変形用の深層学習モデル)でよい。最終候補セルについて適用される所定のルールは、低角度照明画像に写っている最終候補セルのセル開口に関するルールでよい。
【0081】
このように、高角度照明画像から断片画像を抽出し、最終候補セルについて適用される所定のルールを、低角度照明画像に写っているセルのセル開口に関するルールとすることで、効率的に精度良く不良セルを検出することが期待できる。具体的には、例えば、下記の通りである。
【0082】
すなわち、セル変形に関し、上述した第1変形~第3変形及び変形候補がある。そのうちの一部、具体的には、第1変形を図10Aに示し、第2変形を図10Bに示し、変形候補を図10Cに示す。図10A図10Cの各々において、紙面左側の図は、高角度照明画像におけるセル開口(セル5の開口)の模式図と低角度照明画像におけるセル開口の模式図であり、紙面右側の図は、ハニカム構造体1の長手方向に沿ったセル断面の模式図である。また、セル断面の模式図において、二種類の破線があるが、上側の破線は、低角度照明画像におけるセル開口の模式図に記載の内接円の破線に対応し、下側の破線は、高角度照明画像におけるセル開口の模式図に記載の内接円の破線に対応する。つまり、図10A図10Cは、高角度照明画像によれば、セル開口の内接円は、セル開口より奥(内部)の流路断面(ハニカム構造体1の長手方向と直交方向に沿った断面)の形状に依存する。照明が高角度照明のため、セル開口の内部まで写るためである。一方、低角度照明画像によれば、セル開口の内接円は、セル開口の形状に依存する。
【0083】
図10Aによれば、第1変形及び変形候補では、セル内部の断面の内接円がセル開口の内接円よりも小さくなっている。一方、図10Bによれば、第2変形では、セル内部の断面の内接円はセル開口の内接円と実質的に同じ大きさである。
【0084】
このような光学的な理由に鑑み、上述のように、高角度照明画像から断片画像を抽出し抽出された断片画像をセル変形モデル260Bに入力することで、第1変形を有するセル5に属する断片画像を精度良く「第1変形」に分類することができる。そして、セル内部の断面の内接円がセル開口の内接円と実質的に変わらない変形を有するセルについては、後段のルールベース処理において、良品セルであるか不良セルであるかを判定することができる。なお、断片画像を低角度照明から抽出すると、第1変形を有するセルに属する断片画像を「第1変形」に精度良く分類することが困難となり得る。なお、高角度照明画像によれば、第1変形及び変形候補では、いずれも、セル内部の断面の内接円がセル開口の内接円よりも小さくなっているが、第1変形では、隔壁4が太く見え、変形候補では、隔壁4が同一方向に倒れており、これらの違いから、モデルベースでの分類において、第1変形又は変形候補の高角度照明画像から抽出された断片画像が、第1変形又は変形候補に精度良く分類される。
【0085】
なお、上述のように、セル変形に関し断片画像は高角度照明画像から抽出されるため、セル変形モデル260Bは、高角度照明画像の複数の断片画像を含む教師データ700を用いて学習されてよい。
【0086】
ルールベース分類ステップ(例えばS401、別の言い方をすれば、例えばルールベース処理部220)は、高角度照明画像に写っている各セルについて、当該セルがセル開口に関する所定の別のルールを満たすか否かの判定である別のルールベース判定を行ってよい。被検画像は、処理用画像の一部であって、別のルールベース判定の結果が真であるセルである不良候補セルが写っている画像でよい。これにより、断片画像の抽出基を適切な範囲に絞ることができ、以って、端面検査に要する時間を削減することが期待できる。
【0087】
所定の別のルール(前段のルールベース処理で使用されるルール)は、高角度照明画像において、セル開口の内接円の径が第1の径サイズ未満、又は、セル開口の面積が第1の面積未満でよい。所定のルール(後段のルールベース処理で使用されるルール)は、低角度照明画像において、セル開口の内接円の径が第2の径サイズ未満、又は、セル開口の面積が第2の面積未満でよい。これにより、セルを精度良く良品セルか不良セルに分類することができる。
【0088】
所定の欠陥種類は、セル変形に代えて又は加えて、クラックでよい。学習モデルは、クラックモデル260A(クラック用の深層学習モデル)でよい。これにより、セル変形に代えて又は代えて、クラックを精度良く検出することができる。すなわち、検査装置は、セル変形を検出する装置であってもよいし、クラックを検出する装置であってもよいし、セル変形もクラックも検出する装置であってもよい。なお、ルールベース処理部220は、処理用画像に対しルールベースの処理を行うことで、クラックが写っている範囲の画像としての被検画像(処理用画像の一部)として取得してよい。また、クラックについて、処理用画像は、第1の端面の高角度照明画像と、第1の端面の低角度照明画像とのうちの一方又は両方の画像でよい。
【0089】
また、過剰検出の低減のための一つの方法として、深層学習モデル260を使用することに代えて、被検画像に対してバイラテラルフィルタを使用した処理を行うといった計算負荷の高いフィルタリング処理の採用が考えられる。しかし、処理の計算負荷が高いため検査に長い時間が必要となる。上述の実施形態では、深層学習モデル260を用いた処理を採用することで、その処理の前段でのルールベース処理において何らかの画像処理がされるとしてもその画像処理は計算負荷の低い処理でよく、結果として、検査精度を担保しつつ、検査時間を短縮することが期待できる。
【0090】
深層学習モデル260に代えて他種の学習モデル、例えば、決定木が採用されてもよい。しかし、他種の学習モデルでは、画像を入力とする推論を高い精度で行うことは難しい。深層学習モデル260は、画像を入力とする推論に適しており、高い精度での推論が期待される。
【0091】
また、深層学習モデル260は、いわゆるブラックボックス型のモデルである。すなわち、入力された断片画像について種類が判定(出力)されてもその判定理由の出力は無い。つまり、説明性が無い。従って、深層学習モデル260に入力される画像が被検画像であると、被検画像についての判定結果に説明性を持たせることができない。上述した実施形態では、断片画像毎に種類がモデルベース処理部230により判定され、その後に、変形候補に分類された断片画像に属する最終候補セルについてルールベース処理部220により良品セルか不良セルか判定される。このため、画像を入力とする推論に関する高い精度と、被検画像についての判定結果に説明性を持たせること(例えば、低角度照明画像において内接円が条件を満たした(又は満たしていない)ために良品セルと判定された(又は不良セルと判定された)といった説明)との両方を実現することができる。すなわち、検査装置450が、第1の端面2aに欠陥があるか否かの判定の結果を表す情報を含んだ検査結果情報280に基づき検査結果を表示させる表示制御部240を更に備えてよい。検査結果は、第1の端面2aに所定の欠陥種類の欠陥があるか否かの判定結果と、当該判定結果の理由(所定の欠陥種類の欠陥があるとの条件が満たされたか否かを含んだ理由)を含んでよい。判定結果の理由を表す情報は、不良セルの数を表す情報や、各不良セルについて不良セルと判定された理由を表す情報を含んでよい。表示制御部240は、検査結果を、検査装置450が有する表示デバイス540に表示させてもよいし、検査装置450(例えばサーバ)に接続された遠隔の計算機に表示させてもよい。
【0092】
また、本実施形態では、断片画像毎に当該断片画像と当該断片画像に対応の種類とを含んだ教師データの量が一定量未満の場合、当該教師データでは、断片画像毎に、当該断片画像が、前記所定の欠陥種類に属する二つ以上の詳細種類のいずれか、又は、非欠陥種類に属する二つ以上の詳細種類のいずれかに分類されており、モデル管理部250が、当該教師データを用いて、深層学習モデル260を学習してよい。これは、例えば、モデル260A及び260Bの各々について行われてよい。モデル管理部250が行う処理は、モデル管理ステップにおいて行われる処理と呼ばれてもよい。
【0093】
具体的には、例えば、モデル260A及び260Bの各々について、図11に示す処理が行われてよい。一つの深層学習モデルを例に取る。モデル管理部250は、深層学習モデル260の教師データのデータ量が十分(閾値以上)か否か(つまり、教師データのデータ量が一定量以上か否か)を判定する(S1101)。
【0094】
S1101の判定結果が真の場合(S1101:YES)、モデル管理部250は、少分類の学習を行う(S1102)。「少分類の学習」とは、学習に使用される教師データにおいて、所定の欠陥種類と非欠陥種類(所定の欠陥種類以外の種類)のいずれについても、用意されている種類は、所定の欠陥種類それ自体又は非欠陥種類それ自体であるか、少数の種類であることを意味する。
【0095】
一方、S1101の判定結果が偽の場合(S1101:NO)、モデル管理部250は、多分類の学習を行う(S1103)。「多分類の学習」とは、学習に使用される教師データにおいて、所定の欠陥種類と非欠陥種類(所定の欠陥種類以外の種類)のいずれについても、用意されている種類は、少分類の学習に使用される教師データよりも多いことを意味する。すなわち、多分類の学習のための教師データでは、教師データにおける断片画像毎に、当該断片画像が、所定の欠陥種類に属する二つ以上の詳細種類のいずれか、又は、非欠陥種類に属する二つ以上の詳細種類のいずれかに分類されている。教師データのデータ量が不十分の場合には、所定の欠陥種類についても非欠陥種類についても、断片画像が、より詳細な種類に分類されていることで、教師データのデータ量の割りに深層学習モデルを精度の高いモデルとすることが期待される。
【0096】
なお、上述の実施形態の説明では、ハニカム構造体1の製造方法における検査の説明が主であるが、ハニカム構造体1の製造方法は、当該検査に属するステップ以外のステップを含む。具体的には、例えば、製造方法は、例えばセラミックス原料を焼結助剤等と共に混合して坏土を作製するステップと、その坏土を口金により押出成形するステップと、押出成形された坏土を焼成するステップとを有してよい。これらのステップにより作製されたハニカム構造体には、押出成形工程や焼成工程等でその端面に欠陥が現れることがあるが、そのような欠陥の有無の検査を、製造方法が含んでよい。上述した検査において最終結果がOKとされたハニカム構造体の端面は、不良セルの数が所定数未満である。
【符号の説明】
【0097】
450…検査装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11