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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141111
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/15 20230101AFI20241003BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
H10K39/15
H10K30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052580
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】寺下 徹
(72)【発明者】
【氏名】小島 広平
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA01
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA11
5F251BA03
5F251DA04
5F251DA15
5F251EA01
5F251EA20
5F251FA02
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA03
5F251GA04
5F251GA14
5F251JA02
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
5F251XA01
5F251XA32
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易な、シースルー型の太陽電池サブモジュールとタンデム型の太陽電池サブモジュールとを含む太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール100は、第1領域R1に配置された、結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10と、第1領域R1に配置され、結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10にスタックされた第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と、第1領域R1に隣接する第2領域R2に配置された、シースルー型の第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22とを備える。第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22とは並列に接続されており、結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10と第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21とは4端子型のタンデム型太陽電池モジュールを構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域に配置された、結晶シリコン系太陽電池サブモジュールと、
前記第1領域に配置され、前記結晶シリコン系太陽電池サブモジュールにスタックされた第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールと、
前記第1領域に隣接する第2領域に配置された、シースルー型の第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールと、
を備え、
前記第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールと前記第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールとは並列に接続されており、
前記結晶シリコン系太陽電池サブモジュールと前記第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールとは4端子型のタンデム型太陽電池モジュールを構成する、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールは、集積方向に分割され、前記集積方向と交差する方向に延在する複数の第1ペロブスカイト系太陽電池セルが前記集積方向に直列に接続された集積構造を有し、
前記第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールは、
前記集積方向に分割され、前記集積方向と交差する方向に延在する複数の第2ペロブスカイト系太陽電池セルが前記集積方向に直列に接続された集積構造を有し、
前記集積方向に延びるスリット状のシースルー領域を有する、
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールと前記第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールとは、単数の透明基板に形成されており、
前記複数の第2ペロブスカイト系太陽電池セルの各々の前記集積方向の寸法は、前記複数の第1ペロブスカイト系太陽電池セルの各々の前記集積方向の寸法と同一である、
請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールにおける前記複数の第1ペロブスカイト系太陽電池セルの各々の裏面電極は透明電極であり、
前記第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールにおける前記複数の第2ペロブスカイト系太陽電池セルの各々の裏面電極は金属電極である、
請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールと前記第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールとは、異なる透明基板に形成されており、
前記複数の第2ペロブスカイト系太陽電池セルの各々の前記集積方向の寸法は、前記複数の第1ペロブスカイト系太陽電池セルの各々の前記集積方向の寸法よりも大きい、
請求項4に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の太陽電池セルを含む太陽電池サブモジュールを、ガラスまたは透明樹脂等の保護部材および封止材によって封止した太陽電池モジュールが知られている。太陽電池セルとしては、光電変換層として結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン系太陽電池セル、光電変換層として、アモルファスシリコン薄膜等の無機系薄膜、または、ペロブスカイト薄膜等の有機系薄膜(詳細には、有機/無機ハイブリット系薄膜)を用いた薄膜系太陽電池セルが知られている。
【0003】
また、近年、広波長範囲の光を有効に利用して太陽電池セルの変換効率を高める目的で、バンドギャップが異なる光電変換層をスタックしたタンデム多接合(タンデム)型太陽電池モジュールが知られている。例えば、特許文献1には、異なる光電変換層をそれぞれ含む2種類の太陽電池セルをスタックした多接合型太陽電池モジュールが開示されている。この太陽電池モジュールでは、例えば、光電変換層として結晶シリコン基板を含むボトムセルから構成された結晶シリコン系太陽電池サブモジュールと、光電変換層としてペロブスカイト薄膜を含むトップセルから構成されたペロブスカイト系太陽電池サブモジュールとが、2種類の太陽電池サブモジュールとしてスタックされている。
【0004】
また、近年、薄膜系太陽電池セルまたはサブモジュールにおいて、多少発電出力を犠牲にしても、光の一部を透過させる光透過型(以下、シースルー型ともいう。)の太陽電池セルまたはサブモジュールの要望がある。特許文献1には、薄膜系太陽電池セルであって、多数の貫通孔を備えたシースルー型の太陽電池セルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-157176号公報
【特許文献2】特開平5-129642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建物の窓またはバルコニーフェンス等において、シースルー型の太陽電池サブモジュールが要望される。しかし、実際には、下側は、シースルー型の太陽電池サブモジュールである必要性が低く、本願発明者(ら)は、上半分にはシースルー型の太陽電池サブモジュールを配置して採光性を高め、下半分にはタンデム型の太陽電池サブモジュールを配置して発電効率を高めることを考案する。
【0007】
しかし、シースルー型の太陽電池サブモジュールとタンデム型の太陽電池サブモジュールとを組み合わせて配置する場合、これらの接続が煩雑であり、取り扱いが煩雑である。
【0008】
本発明は、取り扱いが容易な、シースルー型の太陽電池サブモジュールとタンデム型の太陽電池サブモジュールとを含む太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る太陽電池モジュールは、第1領域に配置された、結晶シリコン系太陽電池サブモジュールと、前記第1領域に配置され、前記結晶シリコン系太陽電池サブモジュールにスタックされた第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールと、前記第1領域に隣接する第2領域に配置された、シースルー型の第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールとを備える。前記第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールと前記第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールとは並列に接続されており、前記結晶シリコン系太陽電池サブモジュールと前記第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュールとは4端子型のタンデム型太陽電池モジュールを構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シースルー型の太陽電池サブモジュールとタンデム型の太陽電池サブモジュールとを含む太陽電池モジュールの取り扱いを容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る太陽電池モジュールの概略断面図である。
図2図1に示す太陽電池モジュールの太陽電池サブモジュールにおけるペロブスカイト系太陽電池サブモジュールを受光面側から示す概略平面図である。
図3図1に示す太陽電池モジュールの太陽電池サブモジュールにおける結晶シリコン系太陽電池サブモジュールを受光面側から示す概略平面図である。
図4図1に示す太陽電池モジュールの太陽電池サブモジュールにおけるペロブスカイト系太陽電池サブモジュールおよび結晶シリコン系太陽電池サブモジュールの一部を示す概略分解図である。
図5図2に示すペロブスカイト系太陽電池サブモジュールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0013】
(太陽電池モジュール)
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの概略断面図である。図1に示す太陽電池モジュール100は、タンデム型およびシースルー型の太陽電池サブモジュール1を含む。この太陽電池サブモジュール1の詳細は後述する。
【0014】
太陽電池サブモジュール1は、受光側保護部材3と裏側保護部材4とによって挟み込まれている。受光側保護部材3と裏側保護部材4との間には、液体状または固体状の封止材5が充填されており、これにより、太陽電池サブモジュール1は封止される。
【0015】
封止材5は、太陽電池サブモジュール1を封止して保護するもので、太陽電池サブモジュール1の受光側の面と受光側保護部材3との間、および、太陽電池サブモジュール1の裏側の面と裏側保護部材4との間に介在する。封止材5の形状としては、特に限定されるものではなく、例えばシート状が挙げられる。シート状であれば、面状の太陽電池サブモジュール1の表面および裏面を被覆しやすいためである。
【0016】
封止材5の材料としては、特に限定されるものではないが、光を透過する特性(透光性)を有すると好ましい。また、封止材5の材料は、太陽電池サブモジュール1と受光側保護部材3とを接着させる接着性、および、太陽電池サブモジュール1と裏側保護部材4とを接着させる接着性を有すると好ましい。このような材料としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性樹脂が挙げられる。
【0017】
受光側保護部材3は、封止材5を介して、太陽電池サブモジュール1の表面(受光面)を覆って、その太陽電池サブモジュール1を保護する。受光側保護部材3の形状としては、特に限定されるものではないが、面状の受光面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0018】
受光側保護部材3の材料としては、特に限定されるものではないが、封止材5同様に、透光性を有しつつも紫外光に耐性の有る材料が好ましく、例えば、ガラス、または、アクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂が挙げられる。また、受光側保護部材3の表面は、凹凸状に加工されていても構わないし、反射防止コーティング層で被覆されていても構わない。これらのようになっていると、受光側保護部材3は、受けた光を反射させ難くして、より多くの光を太陽電池サブモジュール1に導けるためである。また、受光側保護部材3の材料が樹脂である場合、受光側保護部材3の裏面または表面には、水蒸気の通過を防止するバリアフィルムが設けられていてもよい。これにより、太陽電池サブモジュール1を、水蒸気から保護することができる。
【0019】
裏側保護部材4は、封止材5を介して、太陽電池サブモジュール1の裏面を覆って、その太陽電池サブモジュール1を保護する。裏側保護部材4の形状としては、特に限定されるものではないが、受光側保護部材3同様に、面状の裏面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0020】
裏側保護部材4の材料としては、特に限定されるものではないが、水等の浸入を防止する(遮水性の高い)材料が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、若しくは含シリコーン樹脂等の樹脂フィルム、またはガラス、ポリカーボネート、アクリル等の透光性を有する板状の樹脂部材と、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が挙げられる。裏側保護部材4の材料が樹脂である場合、裏側保護部材4の表面または裏面には、水蒸気の通過を防止するバリアフィルムが設けられていてもよい。これにより、太陽電池サブモジュール1を、水蒸気から保護することができる。
【0021】
(太陽電池サブモジュール)
図2は、図1に示す太陽電池モジュール100の太陽電池サブモジュール1におけるペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20を受光面側から示す概略平面図であり、図3は、図1に示す太陽電池モジュール100の太陽電池サブモジュール1における結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10を受光面側から示す概略平面図である。また、図4は、図1に示す太陽電池モジュール100の太陽電池サブモジュール1におけるペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20および結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10の一部を示す概略分解図である。なお、図2図4は概略図であるため、配線部材6の位置は受光側に限定されず裏側である場合も含む。
【0022】
太陽電池サブモジュール1は、発電量が大きい発電が可能な第1領域R1と、発電と採光とが可能な第2領域R2とを有する。
【0023】
第1領域R1には、ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20における第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10とが配置されている。第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10とは、例えば上述した封止材5等の絶縁部材を介して、受光面側から順にスタックされており、4端子型のタンデム型(多接合型)の太陽電池モジュールを構成する。これにより、第1領域R1では、発電量が大きい発電が実現される。
【0024】
第2領域R2には、ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20における第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22が配置されている。第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22は、2端子型のシースルー型のモジュールを構成する。これにより、第2領域R2では、発電と採光とが実現される。
【0025】
ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20における第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22は並列に接続されている。これにより、太陽電池サブモジュール1は、4端子型のタンデム型およびシースルー型のモジュールを構成する。
<結晶シリコン系太陽電池サブモジュール>
【0026】
図3に示すように、結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10は、複数の結晶シリコン系太陽電池セル11を含む。例えば、複数の結晶シリコン系太陽電池セル11は、配線部材6によって直列に接続されており、結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10は2端子型のモジュールを構成する。
【0027】
<<結晶シリコン系太陽電池セル>>
結晶シリコン系太陽電池セル11は、光電変換層として半導体基板を含む。半導体基板は光を吸収して、光キャリアを発生させる。半導体基板は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン基板である。
【0028】
半導体基板は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板における光閉じ込め効果が向上する。
【0029】
また、半導体基板は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
【0030】
結晶シリコン系太陽電池セル11としては、第1導電型単結晶シリコン基板の受光面側に第2導電型の拡散層を設けた拡散型セルや、第1導電型単結晶シリコン基板の両面にシリコン系薄膜を設けたヘテロ接合セル等が挙げられる。
【0031】
単結晶シリコン基板の表裏にシリコン系薄膜を備えるヘテロ接合セルの場合、結晶シリコン系太陽電池セル11は、光電変換層の受光面側に形成された導電型シリコン系薄膜と、光電変換層の裏面側に形成された導電型シリコン系薄膜とを有する。
【0032】
単結晶シリコン基板は、p型でもn型でもよい。正孔と電子とを比較した場合、電子の方が移動度が大きいため、n型単結晶シリコン基板を用いた場合は、特に変換特性に優れる。導電型シリコン系薄膜は、p型シリコン系薄膜またはn型シリコン系薄膜である。
【0033】
光電変換層としての単結晶シリコン基板と導電型シリコン系薄膜との間には、真性シリコン系薄膜が設けられていることが好ましい。単結晶シリコン基板の表面に真性シリコン系薄膜が設けられることにより、単結晶シリコン基板への不純物の拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。単結晶シリコン基板の表面に真性シリコン系薄膜として真性非晶質シリコン薄膜が設けられることにより、単結晶シリコン基板の表面に対する高いパッシベーション効果が得られる。
【0034】
結晶シリコン系太陽電池セル11は、両面電極型(両面接合型ともいう。)のセルであってもよいし、裏面電極型(裏面接合型、バックコンタクト型ともいう。)のセルであってもよい。なお、裏面電極型のセルの場合、両面電極型のセルと比較して、太陽電池モジュールの出力を向上することができ、また太陽電池モジュールの意匠性を向上することができる。
【0035】
結晶シリコン系太陽電池セル11は、規定サイズ(例えば、6インチのセミスクエア形状)の大判半導体基板(Wafer)であってもよいし、大判半導体基板(Wafer)を2つに切断したハーフカットセルであってもよい。
【0036】
上述したように、半導体基板は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、結晶シリコン系太陽電池セルは、受光面側に凹凸構造を有してもよい。
<ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール>
【0037】
図2に示すように、ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20、すなわち第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21および第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22は、複数のペロブスカイト系太陽電池セルを含む。
【0038】
<<ペロブスカイト系太陽電池セル>>
ペロブスカイト系太陽電池セルは、光電変換層として薄膜の半導体層を含む。半導体層は光を吸収して、光キャリアを発生させる。半導体層は、上述した結晶シリコン系太陽電池セルの半導体基板と異なるバンドギャップを有する。そのため、上述した半導体基板と半導体層とは、異なる波長範囲に分光感度特性を有する。したがって、上述した結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10と、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21とがスタックされたタンデム型太陽電池モジュールでは、より広い波長の光を光電変換に寄与させることができる。
【0039】
具体的には、半導体層を構成する薄膜としては、有機半導体薄膜、詳細には有機無機ハイブリッド半導体薄膜が挙げられる。有機無機ハイブリッド半導体薄膜としては、ペロブスカイト型結晶構造の感光性材料を含有するペロブスカイト薄膜が挙げられる。
【0040】
ペロブスカイト型結晶材料を構成する化合物は、一般式RNHまたはHC(NHで表される。式中、Rはアルキル基であり、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。Mは2価の金属イオンであり、PbやSnが好ましい。Xはハロゲンであり、F,Cl,Br,Iが挙げられる。なお、3個のXは、全て同一のハロゲン元素であってもよく、複数のハロゲンが混在していてもよい。
【0041】
ペロブスカイト型結晶材料を構成する化合物の好ましい例として、式CHNHPb(I1-xBrで(ただし、0≦x≦1)表される化合物が挙げられる。ペロブスカイト材料は、ハロゲンの種類や比率を変更することにより、分光感度特性を変化させることができる。ペロブスカイト半導体薄膜は、各種のドライプロセスや、スピンコート等の溶液製膜により形成できる。
【0042】
図5は、図2に示すペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20、すなわち第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21および第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22の概略断面図である。なお、図5は概略図であるため、基材30bの位置は裏側に限定されず受光側である場合も含む。
【0043】
ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20、すなわち第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21および第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22は、1つの基材30b上において、X方向(集積方向:第1方向)に分割され、X方向と交差するY方向(第2方向)に延在し、直列に接続されて集積化された複数のペロブスカイト系太陽電池セル30で構成される。これにより、X方向の導電距離を短くし、且つ、一つのセル30当たりの電流量を減らすことができ、その結果、電極34,35、特に透明電極(ITO)から構成される電極34,35による抵抗損失を減らすことができる。
【0044】
太陽電池セル30は、フィルム状の基材30b上に形成されている。基材30bの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ガラス等が挙げられる。
【0045】
太陽電池セル30は、光電変換層としてのペロブスカイト層31と、電荷輸送層32,33を有する。電荷輸送層32、33は、一方が正孔輸送層であり、他方が電子輸送層である。
【0046】
正孔輸送層の材料としては、例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体、2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ジフェニルアミン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアニリン誘導体等が挙げられる。
【0047】
電子輸送層の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0048】
太陽電池セル30における電荷輸送層32側には、光生成キャリアを取り出すための電極34が形成されている。太陽電池セル30における電荷輸送層33側には、光生成キャリアを取り出すための電極35が形成されている。
【0049】
電極34は、透明電極と金属電極とを含んでいてもよいし、透明電極のみを含んでいてもよいし、金属電極のみを含んでいてもよい。同様に、電極35は、透明電極と金属電極とを含んでいてもよいし、透明電極のみを含んでいてもよいし、金属電極のみを含んでいてもよい。透明電極の材料としては、ITO、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物が好ましく用いられる。金属電極の材料としては、銀、銅、アルミニウム等が好ましく用いられる。
【0050】
第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22は、X方向(集積方向:第1方向)に延びるスリット状の複数のシースルー領域23を有する。シースルー領域23は、Y方向(第2方向)に離間して配置されている。シースルー領域23では、ペロブスカイト層31、電荷輸送層32,33および電極35が形成されておらず、透明な基板(基材)30bおよび電極34が存在する。シースルー領域23の電極34を残すことにより、発電層を電気的に孤立させないようにすることができる。なお、シースルー領域23の透明感を高めるために、シースルー領域23の電極34を除去することも可能である。
【0051】
第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22とは、単数の透明な基板(基材)30bに形成されている。
【0052】
第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21におけるペロブスカイト系太陽電池セル30のX方向(集積方向:第1方向)の寸法と、第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22におけるペロブスカイト系太陽電池セル30のX方向(集積方向:第1方向)の寸法とは、同一である。具体的には、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21における積層方向のセルピッチ、すなわちセル幅と、第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22における積層方向のセルピッチ、すなわちセル幅とは、同一である。
【0053】
これにより、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21の電圧と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22の電圧とは、同一である。これにより、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22とは、配線部材6によって並列に接続されることができ、2端子型のペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20を構成することができる。
【0054】
このようにして、2端子型のペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20と2端子型の結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10とは、4端子型の太陽電池モジュールを構成する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池モジュール100によれば、タンデム型の第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21とシースルー型の第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22とが並列に接続されており、結晶シリコン系太陽電池サブモジュール10とペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20とが4端子型の太陽電池モジュールを構成する。これにより、シースルー型の太陽電池サブモジュールとタンデム型の太陽電池サブモジュールとを含む太陽電池モジュールの取り扱いを容易とすることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【0057】
(変形例)
上述した実施形態では、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22とが、1つの透明な基板(基材)30b上に形成されている形態について説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22とは、異なる基板上に形成されてもよい。
【0058】
例えば、第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22の裏面側には、結晶シリコン系太陽電池サブモジュールが配置されていないため、第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22におけるペロブスカイト系太陽電池セル30の裏面電極は、金属電極であってもよい。これにより、第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22の発電量を高めることができる。
【0059】
裏面電極が金属であると、電極のX方向(集積方向:第1方向)の抵抗損失が低減する。そのため、第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22におけるペロブスカイト系太陽電池セル30のX方向(集積方向:第1方向)の寸法を、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21におけるペロブスカイト系太陽電池セル30のX方向(集積方向:第1方向)の寸法よりも大きくすることができる。具体的には、第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22における積層方向のセルピッチ、すなわちセル幅を、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21における積層方向のセルピッチ、すなわちセル幅よりも大きくすることができる。
【0060】
この場合、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21の電圧と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22の電圧とを同一となるように、第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22のX方向(集積方向:第1方向)の寸法を、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21のX方向(集積方向:第1方向)の寸法よりも小さくする。これにより、第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール21と第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール22とは、配線部材6によって並列に接続されることができ、2端子型のペロブスカイト系太陽電池サブモジュール20を構成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 太陽電池サブモジュール
3 受光側保護部材
4 裏側保護部材
5 封止材
6 配線部材
10 結晶シリコン系太陽電池サブモジュール
11 結晶シリコン系太陽電池セル
20 ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール
21 第1ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール
22 第2ペロブスカイト系太陽電池サブモジュール
23 シースルー領域
30 ペロブスカイト系太陽電池セル
30b 基材(基板)
31 光電変換層
32,33 電荷輸送層
34,35 電極
100 太陽電池モジュール
R1 第1領域
R2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5