(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141113
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】湯沸器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F24H9/02 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052584
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【弁理士】
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】宮地 克宜
(72)【発明者】
【氏名】雉本 秀樹
【テーマコード(参考)】
3L037
【Fターム(参考)】
3L037AA02
3L037AB01
3L037AB07
(57)【要約】
【課題】燃焼排気の一部がケーシング内に取り込まれるのを防止できる湯沸器を提供する。
【解決手段】湯沸器のケーシング内において、排気フード8は熱交換器の上方に設けられる。排気フード8は本体部81と前板部82を備える。本体部81は後壁部91、右壁部92、左壁部93を備える。右壁部92及び左壁部93は、後壁部の右端部と左端部から前方に延びる。本体部81の前側は開放される。前板部82の左右両端部が右端部92と左端部93の夫々の前端部に固定されることで、前板部82は本体部81の前側を閉塞する。このような前板部82は、上側部86が下側部85よりも前方に突出する段付き形状であり、そのうち上側部86は、ケーシングのフロントカバーとの隙間を埋めるようにして配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面が壁に取り付けられる筒状のケーシング内に、バーナを備えた燃焼装置と、前記燃焼装置の上方に設けられ、前記バーナの燃焼排気により通水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の上方に設けられ、前記熱交換器を通過した前記燃焼排気を外部に排出する排気部とを備えた湯沸器であって、
前記排気部は、
後壁部と、前記後壁部の左右両端部から前方に延びる左右一対の側壁部とを備え、前側が開放された本体部と、
前記左右一対の側壁部の夫々の前端部に固定され、前記本体部の前側を閉塞する前板部と
を備え、
前記前板部は、上側部が下側部よりも前方に突出する段付き形状であって、
前記上側部は、前記ケーシングとの隙間を埋めるようにして配置されたこと
を特徴とする湯沸器。
【請求項2】
前記左右一対の側壁部の夫々の前端部には、被係合部と被固定部が設けられ、
前記前板部の左右両端部の夫々には、対応する前記被係合部に係合する係合部と、対応する前記被固定部にネジ止め固定される固定部とが設けられたこと
を特徴とする請求項1に記載の湯沸器。
【請求項3】
前記被係合部は、下方向に開口し且つ上下方向に延びる第1スリットを備え、
前記係合部は、上方向に開口し且つ上下方向に延び、前記第1スリットに対して下側から差し込まれて係合する第2スリットを備えたこと
を特徴とする請求項2に記載の湯沸器。
【請求項4】
前記前板部の前記左右両端部の夫々は、前記左右一対の側壁部の夫々に対して内側から外側に向かってテンションを掛けた状態で接触していること
を特徴とする請求項1から3の何れか一に記載の湯沸器。
【請求項5】
前記左右一対の側壁部の夫々の前端部には、前記前板部の前記上側部に対応する部分が、前記前板部の前記下側部に対応する部分よりも前方に突出する段付き形状の第1段付き部が設けられ、
前記前板部の前記左右両端部の夫々には、前記下側部に対応する部分が前記上側部に対応する部分よりも外方に突出する段付き形状であって、前記第1段付き部に組み合わされることによって、前記本体部に対して前記前板部を位置決めする第2段付き部が設けられたこと
を特徴とする請求項4に記載の湯沸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯沸器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、背面が壁に取り付けられるケーシングの内部に、バーナを備えた燃焼室と、その燃焼室の上方で通水されてバーナに加熱される熱交換器と、熱交換器を通過した燃焼排ガスを排出する防熱フードとを備えた湯沸器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ケーシングは壁面に取り付けられるバックカバーと、そのバックカバーに前方から取り付けられるフロントカバーとかなる。防熱フードは、複数の整流板と、それら整流板の左右端に連設されて熱交換器の側面にビス固定される左右一対の脚部とからなる。このような構成を備える湯沸器において、熱交換器の伝熱管内を流れる水は、熱交換器のフィン間を通過する燃焼排気と熱交換することで加熱される。熱交換器を通過した燃焼排気は、防熱フードを通ってケーシングの上部から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の湯沸器では、防熱フードの上部前側が大きく開放されており、防熱フードとフロントカバーとの間には前後方向の隙間が形成されている。これにより、防熱フードの上部から排出された燃焼排気の一部が、フロントカバーとの間の前後方向の隙間を介してケーシング内に取り込まれてしまうという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、燃焼排気の一部がケーシング内に取り込まれるのを防止できる湯沸器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の湯沸器は、背面が壁に取り付けられる筒状のケーシング内に、バーナを備えた燃焼装置と、前記燃焼装置の上方に設けられ、前記バーナの燃焼排気により通水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の上方に設けられ、前記熱交換器を通過した前記燃焼排気を外部に排出する排気部とを備えた湯沸器であって、前記排気部は、後壁部と、前記後壁部の左右両端部から前方に延びる左右一対の側壁部とを備え、前側が開放された本体部と、前記左右一対の側壁部の夫々の前端部に固定され、前記本体部の前側を閉塞する前板部とを備え、前記前板部は、上側部が下側部よりも前方に突出する段付き形状であって、前記上側部は、前記ケーシングとの隙間を埋めるようにして配置されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の湯沸器の前記左右一対の側壁部の夫々の前端部には、被係合部と被固定部が設けられ、前記前板部の左右両端部の夫々には、対応する前記被係合部に係合する係合部と、対応する前記被固定部にネジ止め固定される固定部とが設けられてもよい。
【0009】
請求項3の湯沸器の前記被係合部は、下方向に開口し且つ上下方向に延びる第1スリットを備え、前記係合部は、上方向に開口し且つ上下方向に延び、前記第1スリットに対して下側から差し込まれて係合する第2スリットを備えてもよい。
【0010】
請求項4の湯沸器の前記前板部の前記左右両端部の夫々は、前記左右一対の側壁部の夫々に対して内側から外側に向かってテンションを掛けた状態で接触してもよい。
【0011】
請求項5の湯沸器の前記左右一対の側壁部の夫々の前端部には、前記前板部の前記上側部に対応する部分が、前記前板部の前記下側部に対応する部分よりも前方に突出する段付き形状の第1段付き部が設けられ、前記前板部の前記左右両端部の夫々には、前記下側部に対応する部分が前記上側部に対応する部分よりも外方に突出する段付き形状であって、前記第1段付き部に組み合わされることによって、前記本体部に対して前記前板部を位置決めする第2段付き部が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の湯沸器によれば、前板部で本体部の前側を閉塞しつつ前板部の上側部を下側部よりも前方に突出させ、ケーシングとの隙間を埋めるようにして上側部を配置する。これにより、排気部の上部から排出されるバーナの燃焼排気の一部が、前板部とケーシングとの間の隙間を介してケーシング内に取り込まれるのを防止できる。
【0013】
請求項2の湯沸器によれば、本体部の左右一対の側壁部の夫々の前端部に対して、前板部の左右両端部を固定する際、側壁部に設けられた被係合部に対して前板部の左右両端部の夫々に設けられた係合部を係合させ、側壁部に対して前板部が位置決めされた状態で、被固定部に対して固定部をネジ止め固定する。左右一対の側壁部の夫々の前端部に対して前板部の左右両端部を固定することにおいて、全ての部分をネジ止めするのではなく、一部を係合させて残りの部分をネジ止め固定することでネジ点数を減らして工数を削減できる。
【0014】
請求項3の湯沸器によれば、被係合部の第1スリットに対して、係合部の第2スリットを下側から上方向に差し込んで互い違いに係合させることによって、本体部に対して前板部を位置決めできる。その位置関係を保持しながら被固定部に対して固定部をネジ止め固定することで、排気部を確実且つ容易に組み立てることができる。
【0015】
請求項4の湯沸器によれば、左右一対の側壁部の夫々に対して前板部の左右両端部により外側に向かってテンションが掛けられている。これにより、被固定部に対して固定部をネジ止め固定する前の状態で、被係合部から係合部が外れて前板部が本体部から脱落するのを防止できる。つまり、左右一対の側壁部の夫々に対してテンションを掛けることにより、本体部と前板部の位置関係を崩すことなく、被固定部に対して固定部をネジ止め固定できるので、排気部をより確実且つ容易に組み立てることができる。
【0016】
請求項5の湯沸器によれば、左右一対の側壁部の夫々の前端部に対して、前板部の左右両端部を前方から合わせることで、第1段付き部に対して第2段付き部が組み合わされる。これにより、本体部に対して前板部をより確実に位置決めした状態で、被固定部に対して固定部をネジ止め固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】
図4とは別角度から見た排気フード8の斜視図である。
【
図9】本体部81の前側に前板部82が保持された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に記載される装置構成などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明する為に用いられるものである。本実施形態では、図中に示す前後、左右、上下の向きを使用して説明する。
【0019】
図1~
図3を参照し、湯沸器1の構成を説明する。
図1に示すように、湯沸器1はケーシング2を備える。ケーシング2は上下方向に延び且つ上部が開口する有底角筒状である。ケーシング2はバックカバー3、フロントカバー4、底板部5を備え、何れも鉄製である。バックカバー3は正面視上下方向に長い略矩形状に形成され、その上部と下部には取付金具6A,6Bが設けられる。バックカバー3はこれら取付金具6A,6Bを介して壁面(図示略)に取り付けられる。フロントカバー4はバックカバー3に対して前方から取り付けられる(
図1,
図2参照)。フロントカバー4は、バックカバー3と同様に正面視上下方向に長い略矩形状であって、平面視前側に緩やかに膨らむ略円弧状に形成される(
図2参照)。フロントカバー4の前面下部の中央には正面視円形状の開口部9が設けられ、その開口部9の内側から操作ボタン10が前方に突出して設けられる。
【0020】
底板部5はバックカバー3の下部に前方に突出した姿勢で固定され、底面視左右方向に長い略矩形状に形成される。底板部5の前端部は、フロントカバー4の前面形状に合わせ、前側に緩やかに膨らむ略円弧状に形成される。湯沸器1を正面から見た場合に、底板部5には、右から順に、給水口11、出湯口12、ガス接続口13が設けられる。給水口11には外部の水道管(図示略)が接続される。出湯口12には出湯管(図示略)が接続される。ガス接続口13には外部のガス管(図示略)が接続される。
【0021】
図3に示すように、ケーシング2の内部には下から順に、燃焼装置6、熱交換器7、排気フード8が設けられる。燃焼装置6は筒胴61とバーナユニット62を備える。筒胴61は上下方向に貫通する略四角筒状に形成される。バーナユニット62は筒胴61の下部に設けられ、前後方向に並ぶ複数のバーナ65を備える。複数のバーナ65の夫々の燃焼面は上方に向けられる。筒胴61の内側であって、複数のバーナ65の夫々の燃焼面の上方には燃焼空間(図示略)が形成される。燃焼空間は燃焼面と熱交換器7との間に挟まれる空間である。このような燃焼装置6の下側のバーナユニット62の前側と左右両側を覆うように、遮熱板15が配置される。遮熱板15は平面視後方に向けて開口する略U字状に形成される。
【0022】
図3,
図5に示すように、バーナユニット62のうち最も前側に位置するバーナ65の燃焼面の近傍には、一次熱電対16が設けられる。一次熱電対16はバーナ65の燃焼を検出する。筒胴61の前面の略中央には監視窓611が設けられる。監視窓611は前後方向に貫通する開口である。その監視窓611の近傍には二次熱電対17が設けられる。二次熱電対17の感熱部は監視窓611に臨ませて支持される。一次熱電対16と二次熱電対17の夫々の熱起電力はコントローラ100へ入力される。コントローラ100はバックカバー3の前面の左下部に固定され(
図3参照)、湯沸器1の動作を制御する。燃焼面の近傍であって一次熱電対16の左方にはフレームロッド18が設けられる。フレームロッド18はバーナ65の火炎を検出する。フレームロッド18の検出信号もコントローラ100へ入力される。
【0023】
熱交換器7は燃焼装置6の上方に設けられる。熱交換器7はフィンチューブ式であり、筐体71、複数のフィン(図示略)、伝熱管73を備える。筐体71は上部と下部が開放された略角筒状である。複数のフィンは筐体71の内側に設けられ、左右方向に面方向を向け且つ互いに間隔を空けて配置される。伝熱管73はこれら複数のフィンを蛇行状に貫通して取り付けられる。伝熱管73の入口側の一端部には給水管14の一端部が接続される。給水管14は筒胴61の外周に巻回されて下方に延び、その他端部は給水口11に接続される。伝熱管73の出口側の他端部には給湯管(図示略)の一端部が接続される。給湯管も下方に延び、その他端部が出湯口12に接続される。
【0024】
排気フード8は熱交換器7の上部に取り付けられる。排気フード8は上下方向に貫通する略四角筒状に形成され、その内側には複数の整流板94が設けられる。複数の整流板94は熱交換器7から流れる燃焼排気を前側で且つ斜め上方に整流する。
【0025】
上記構成を備える湯沸器1において、操作ボタン10を押し操作すると、コントローラ100によって熱交換器7の伝熱管73への通水と複数のバーナ65の燃焼とが開始される。伝熱管73内を流れる水は、熱交換器7のフィン72同士の間を通過する燃焼排気と熱交換することで加熱される。そして、操作ボタン10の回転操作によって設定された温度で、出湯口12に接続された出湯管(図示略)から出湯される。熱交換器7を上方に通過した燃焼排気は、排気フード8の内側を通ってケーシング2の上部開口2Aから外部へ排出される。
【0026】
図4~
図9を参照し、排気フード8の構造を具体的に説明する。
図4~
図6に示すように、排気フード8は本体部81、前板部82、4枚の整流板94を備え、上下方向に貫通する略四角筒状に形成される。
【0027】
図6を参照し、本体部81の構造を説明する。本体部81は平面視前側に向けて開口する略U字状に形成され、後壁部91、右壁部92、左壁部93を備える。後壁部91は背面視左右方向に延びる略矩形状に形成される。後壁部91の上端部には、前側に対して所定角度で斜め上方に傾斜する傾斜板911が設けられる。
【0028】
右壁部92は後壁部91の右端部から前方に突出し、右側面視前後方向に延びる略矩形状に形成される。右壁部92の下端部近傍で且つ後方寄りには、熱交換器7の筐体71の右側面にネジ45(
図3参照)で固定する為の固定穴921が左右方向に貫通して設けられる。右壁部92の前端部には段付き部922が設けられる。段付き部922は、前板部82の後述の上側部86に対応する上側部分が、後述の下側部85に対応する下側部分よりも前方に突出する形状である。段付き部922の下側部分には、右方に突出する被固定部95が設けられる。被固定部95は前後方向に面方向を有する正面視略矩形状に形成され、その中央には固定穴951が設けられる。段付き部922の上側部分には左方に突出する被係合部96が設けられる。被係合部96は前後方向に面方向を有する正面視やや縦長の略矩形状に形成され、その右端部の下部には、下方向に開口し且つ上方向に延びるスリット961が形成される。
【0029】
左壁部93は後壁部91の左端部から前方に突出し、左側面視前後方向に延びる略矩形状に形成される。左壁部93の下端部近傍で且つ後方寄りには、熱交換器7の筐体71の左側面にネジ(図示略)で固定する為の固定穴931が左右方向に貫通して設けられる。左壁部93の前端部には段付き部932が設けられる。段付き部932は、前板部82の後述の上側部86に対応する上側部分が、後述の下側部85に対応する下側部分よりも前方に突出する形状である。段付き部932の下側部分には、左方に突出する被固定部97が設けられる。被固定部97は前後方向に面方向を有する正面視略矩形状に形成され、その中央には固定穴971が設けられる。段付き部932の上側部分には右方に突出する被係合部98が設けられる。被係合部98は前後方向に面方向を有する正面視やや縦長の略矩形状に形成され、その左端部の下半分には、下方向に開口し且つ上下方向に延びるスリット981が形成される。
【0030】
4枚の整流板94は、右壁部92と左壁部93の間に渡設され、前後方向に等間隔に並んで配置される。4枚の整流板94は左右方向に長い略矩形状に形成され、前側に対して傾斜板911と同じ所定角度で斜め上方に傾斜する。
【0031】
図7,
図8を参照し、前板部82の形状を説明する。前板部82は正面視左右方向に長い略矩形状に形成される。前板部82は下側部85、上側部86、段差部87を備え、上側部86が下側部85よりも前方に突出する段付き形状である。下側部85は前板部82の下側に設けられ、正面視左右方向に長い略矩形状に形成される。下側部85の前面の上下方向中央部には、リブ851が形成される。リブ851は左右方向に延びる直線状であって、板金の打ち抜き成形により形成される。下側部85の右端部には右方に突出する固定部88が設けられる。固定部88は前後方向に面方向を有する正面視略矩形状に形成され、その略中央には固定穴881が設けられる。下側部85の左端部にも左方に突出する固定部89が設けられる。固定部89も前後方向に面方向を有する正面視略矩形状に形成され、その略中央には固定穴891が設けられる。
【0032】
上側部86は前板部82の上側で且つ下側部85よりも前方に突出して設けられ、正面視左右方向に長い略矩形状に形成される。上側部86はフロントカバー4の略円弧の形状に合わせ、平面視左右方向中央部が前側に突出する山なり形状に形成される。上側部86の左右方向の長さは、下側部85の左右方向の長さよりも短い。それ故、下側部85の右端部に設けられた固定部88は、上側部86の右端部の位置よりも右方に突出した態様となることから、前板部82の右端部には段付き部821が形成される。段付き部821は、前板部82の右端部のうち下側部85に対応する下側部分が、上側部86に対応する上側部分よりも右方に突出する形状である。他方、下側部85の左端部に設けられた固定部89は、上側部86の左端部の位置よりも左方に突出した態様となることから、前板部82の左端部には段付き部822が形成される。段付き部822は、前板部82の左端部のうち下側部85に対応する下側部分が、上側部86に対応する上側部分よりも左方に突出する形状である。
【0033】
上側部86の右端部の下半分には、後方に突出する係合部861が設けられる。係合部861は左右方向に面方向を有する右側面視やや縦長の略矩形状に形成され、その前端部の上半分には、上方向に開口し且つ上下方向に延びるスリット101が形成される。上側部86の左端部の下半分にも、後方に突出する係合部862が設けられる。係合部862も左右方向に面方向を有する左側面視やや縦長の略矩形状に形成され、その前端部の上半分には、上方向に開口し且つ上下方向に延びるスリット102が形成される。このような上側部86の左右方向の長さは、本体部81の右壁部92と左壁部93の左右方向の離間幅に対して若干長い。段差部87は、下側部85の上端部と上側部86の下端部との間を埋めるようにして略水平に設けられる。
【0034】
図4,
図6,
図9を参照し、本体部81への前板部82の固定方法の一例を説明する。
図6に示すように、作業者は先ず本体部81の開口する前側に対し、前板部82の後面を向けて配置する。そして、本体部81の右壁部92の前端部に設けられた被係合部96のスリット961に対して、前板部82の右端部に設けられた係合部861のスリット101を下側から上方向に差し込む。これと共に、本体部81の左壁部93の前端部に設けられた被係合部98のスリット981に対して、前板部82の左端部に設けられた係合部862のスリット102を下側から上方向に差し込む。これにより、被係合部96,98に対して係合部861,862が夫々互い違いに係合するので、本体部81に対して前板部82が所定位置に位置決めされる。
【0035】
ここで、被係合部96,98に対して係合部861,862が係合した状態では、右壁部92の前端部の段付き部922に対して、前板部82の右端部の段付き部821が前方から直交して隙間なく組み合わされる。他方、左壁部93の前端部の段付き部932に対して、前板部82の左端部の段付き部822が前方から直交して隙間なく組み合わされる。これにより、本体部81に対して前板部82が所定位置により確実に位置決めされる。
【0036】
そして、本体部81に対して前板部82が位置決めされた状態では、本体部81の右端部に設けられた被固定部95の前面に対して、前板部82の右端部に設けられた固定部88の後面が接触すると共に、被固定部95の固定穴951に対して固定部88の固定穴881が重合して位置決めされる。他方、本体部81の左端部に設けられた被固定部97の前面に対して、前板部82の左端部に設けられた固定部89の後面が接触すると共に、被固定部97の固定穴971に対して固定部89の固定穴891が重合して位置決めされる。
【0037】
ここで上記の通り、上側部86の左右方向の長さは、本体部81の右壁部92と左壁部93の左右方向の離間幅に対して若干長くなっている。そして、被係合部96,98に対して係合部861,862が係合した状態では、前板部82の右端部に設けられた係合部861の右面は、右壁部92の内面(左面)に当接し、前板部82の左端部に設けられた係合部862の左面は、左壁部93の内面(右面)に当接している。このことから、前板部82の係合部861,862は、本体部81の右壁部92及び左壁部93に対して内側から外側に向かってテンションを掛けた状態で接触している。これにより、前板部82は、本体部81の右壁部92と左壁部93の夫々の前端部に保持された状態となるので、仮に前板部82から手を離しても、前板部82が本体部81から脱落しない(
図9参照)。
【0038】
この状態で作業者は、前板部82の前方から右側の固定部88の固定穴881にネジ41を差し込み、被固定部95の固定穴951に締結する。他方、左側の固定部89の固定穴891にネジ42を差し込み、被固定部97の固定穴971に締結する。これにより、本体部81の右壁部92と左壁部93の夫々の前端部に対して、前板部82が所定位置に固定される(
図4参照)。
【0039】
このように本実施形態では、本体部81の右壁部92及び左壁部93の夫々に対して、前板部82の左右両端部により外側に向かってテンションを掛けることにより、被固定部95,97に対して固定部88,89をネジ41,42で固定する前の状態で、被係合部96,98から係合部861,862が外れて前板部82が本体部81から脱落するのを防止できる。つまり、本体部81と前板部82の位置関係を崩すことなく、被固定部95,97に対して固定部88,89をネジ41,42で固定できるので、排気フード8を確実且つ容易に組み立てることができる。
【0040】
また、前板部82において、上側部86は平面視前側に膨らむ円弧形状なので、上側部86の左右両端部を内側に押圧することで容易に撓ませることができる。上側部86を内側に撓ませることで、本体部81の右壁部92と左壁部93の間に容易に入れ込むことができる。そして、押圧を解除することで上側部86が元の形状に戻るので、その弾性復帰力により右壁部92及び左壁部93の夫々に対して適切なテンションを掛けることができる。他方、下側部85には補強用のリブ851が形成されているので、上側部86を撓ませても下側部85は撓むことなく平板状を維持する。これにより、下側部85の右端部及び左端部に設けられた固定部88,89を、右壁部92及び左壁部93の夫々の前端部に設けられた被固定部95,97に対して前側から正確に位置決めできる。
【0041】
また、本体部81の右壁部92及び左壁部93の夫々の前端部に対して前板部82の左右両端部を固定することにおいて、全ての部分をネジ止めするのではなく一部(係合部861,862)を被係合部96,98に係合させて残りの部分(固定部88,89)を被固定部95,97にネジ41,42で固定することでネジ点数を減らすことができるので工数を削減できる。
【0042】
図10を参照し、排気フード8における燃焼排気の流れについて説明する。熱交換器7から上方に通過して排気フード8内に流入した燃焼排気は、その上部開口から4枚の整流板94及び1枚の傾斜板911の傾斜角度に沿って前側に対して斜め上方に流れて排出される(
図10中に二点鎖線で示す燃焼排気の流れ参照)。これにより、排気フード8は、ケーシング2の上部開口2Aを介して、バックカバー3が取り付けられた壁面とは反対側に向けて燃焼排気を排出できるので、壁面の温度が上昇するのを防止できる。
【0043】
また、前板部82は本体部81の開口する前側を閉塞すると共に、その上端部の高さ位置は本体部81の上部の高さ位置と略同一である。そして、そのような排気フード8の上部は、ケーシング2の上部開口2Aよりもやや上方に突出している。このような構成により、排気フード8の内部の前側を流れる燃焼排気は、ケーシング2の内部に流入することなく、前板部82の上側部86に沿って上方に向けて良好に排出される。また、前板部82は、上側部86が下側部85よりも前側に突出する段付き形状なので、その上側部86をフロントカバー4との隙間を埋めるようにして配置できる。このようにして、湯沸器1は、排気フード8の上部開口から排出される燃焼排気の一部が、前板部82とフロントカバー4との間の隙間を介してケーシング2内に取り込まれるのを防止できる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の湯沸器1は、背面が壁に取り付けられる筒状のケーシング2を備える。そのケーシング2内には、燃焼装置6、熱交換器7、排気フード8が設けられる。燃焼装置6は複数のバーナ65を備える。熱交換器7は燃焼装置6の上方に設けられ、バーナ65の燃焼排気により通水を加熱する。排気フード8は熱交換器7の上方に設けられ、熱交換器7を通過した燃焼排気を外部に排出する。排気フード8は本体部81と前板部82を備える。本体部81は後壁部91、右壁部92、左壁部93を備える。右壁部92及び左壁部93は、後壁部の右端部と左端部から前方に延びる。本体部81の前側は開放される。前板部82の左右両端部が右壁部92と左壁部93の夫々の前端部に固定されることによって、前板部82は本体部81の前側を閉塞する。このような前板部82は、上側部86が下側部85よりも前方に突出する段付き形状であり、そのうち上側部86は、ケーシング2のフロントカバー4との隙間を埋めるようにして配置される。これにより、湯沸器1は、排気フード8の上部から排出される燃焼排気の一部が、前板部82とケーシング2との間の隙間を介してケーシング2内に取り込まれるのを防止できる。
【0045】
上記説明において、被係合部96,98のスリット961,981は本発明の「第1スリット」の一例であり、係合部861,862のスリット101,102は本発明の「第2スリット」の一例である。本体部81の右壁部92の前端部に設けられた段付き部922、左壁部93の前端部に設けられた段付き部932は本発明の「第1段付き部」の一例である。前板部82の右端部に設けられた段付き部821、左端部に設けられた段付き部822は本発明の「第2段付き部」の一例である。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。フロントカバー4の前面は緩やかな円弧形状であるが、その他の形状であってもよく、例えば平板形状であってもよい。
【0047】
排気フード8の上部は、ケーシング2の上部開口2Aよりも上方に突出しているが、ケーシング2の上部開口2Aと同じ高さ位置であってもよい。
【0048】
排気フード8の前板部82において、上側部86はフロントカバー4の前面の緩やかな円弧形状に合わせて、左右方向の中央部が前方に突出する山なり形状としているが、フロントカバー4の形状に合わせて適宜変更してもよい。例えば前板部が平板状であれば、前板部82の上側部86も平板状にすればよい。
【0049】
整流板94の傾斜角度は上記実施形態に限らず適宜変更してもよい。例えば整流板94の向きを真上にしてもよい。好ましくはバックカバー3を取り付ける壁面とは反対側に向けるのがよい。整流板94の枚数や形状も自由に変更可能である。
【0050】
上記実施形態では、係合部861,862と被係合部96,98の相互の係合について、スリット同士を互いに組み合わせることで可能としているが、これ以外の構造で係合させてもよい。
【0051】
本体部81の右壁部92及び左壁部93の夫々の前端部には、段付き部922,932が設けられているが、段付き形状でなくてもよい。前板部82の右端部及び左端部には段付き部821,822が設けられているが、段付き形状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 湯沸器
2 ケーシング
6 燃焼装置
7 熱交換器
8 排気フード
65 バーナ
81 本体部
82 前板部
85 下側部
86 上側部
88,89 固定部
91 後壁部
92 右壁部
93 左壁部
95,97 被固定部
96,98 被係合部
101,102 スリット
821,822 段付き部
861,862 係合部
922,932 段付き部
961,981 スリット