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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141125
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】トンネル内壁面の覆工切削装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052607
(22)【出願日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005924
【氏名又は名称】株式会社三井三池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 岳
(72)【発明者】
【氏名】賀川 昌純
(72)【発明者】
【氏名】坂下 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅井 秀明
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】福井 康仁
(72)【発明者】
【氏名】張 嘉俊
(72)【発明者】
【氏名】松藤 優樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 周作
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BA05
2D155BB02
2D155KA00
2D155LA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所望の切削深さで確実且つ迅速に切削できるとともに切削中にリアルタイムに切削度合いの確認および調整が可能であり、高精度で耐久性にも優れたトンネル内壁面の覆工切削装置を提供する。
【解決手段】覆工切削装置1は、横行フレーム30および切削フレーム40を備えたガントリー2と、2つの切削ドラム50を備えた回転式切削機3と、からなり、計測用のセンサとして、切削フレーム40を横行させるための電動モータ41の駆動軸に取り付けられてその回転数を検出する切削フレーム位置検出用センサ91と、切削フレーム40または切削ドラム50に取り付けられてトンネル10の内壁面11との距離を検出する切削深さ検出用センサ92と、シリンダ65に取り付けられてその伸縮量を検出する切削ドラム位置検出用センサ93と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の通行を可能にする通行空間を有し、前記通行空間の外側の作業空間においてトンネルの内面に覆工された内壁面を切削するトンネル内壁面の覆工切削装置であって、
前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて前記内壁面に沿って配置されたアーチ状の横行フレームと、電動モータの駆動力により前記横行フレームの外側に沿って横行可能に配置した切削フレームとを備え、前記トンネルの進行方向に移動および停止可能に配置されるガントリーと、
前記横行フレームに沿って移動可能であり、外周面に切削爪を備えた円筒状の切削ドラムを2つ有し、各前記切削ドラムの両端が前記切削フレームに支持されるとともにシリンダによって前記切削フレームに対する距離を伸縮可能である回転式切削機と、からなり、
計測用のセンサとして、前記切削フレームを横行させるための前記電動モータの駆動軸に取り付けられてその回転数を検出する切削フレーム位置検出用センサと、前記切削フレームまたは前記切削ドラムに取り付けられて前記内壁面との距離を検出する切削深さ検出用センサと、前記シリンダに取り付けられてその伸縮量を検出する切削ドラム位置検出用センサと、を備える、
ことを特徴とするトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項2】
前記横行フレームが前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて所定の間隔を有して少なくとも2本配置されているとともに、前記横行フレームに沿って走行可能な前記切削フレームを前記横行フレーム間に懸架させて前記横行フレームに沿って横行可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項3】
前記電動モータを制御するインバータを備えており、前記インバータは、出力する周波数を調整して前記電動モータの回転速度を変更することで前記切削フレームの横行速度を変更可能であることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項4】
前記回転式切削機が、前記切削ドラムの軸線方向の中央位置を前記切削フレームの架設方向の中央位置に合致させて配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項5】
前記切削フレームに取り付けられる前記切削ドラムが少なくとも幅または径のどちらか一方が異なる切削ドラムに交換可能であることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項6】
前記横行フレームと前記切削フレームの間にスペーサーを介しており、前記スペーサーに対する前記切削フレームの取り付け位置が調整可能であることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項7】
前記ガントリーの正面または背面のうち少なくとも一方に防塵飛散防止機構が配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項8】
前記ガントリーの内側に切削ズリ落下防止板が付設されているとともに、前記切削フレームに前記切削ズリ落下防止板に落下した切削ズリを掻き落とすスクレーパが設置されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項9】
前記横行フレームのアーチ形状を、前記切削するトンネルの内面形状に沿って変形可能としたことを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項10】
前記横行フレームの上面と前記切削フレームの間または前記横行フレームの側面と前記切削フレームの間のうち少なくとも一方にアンチトルクローラが付設されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項11】
車両の通行を可能にする通行空間を有し、前記通行空間の外側の作業空間においてトンネルの内面に覆工された内壁面を切削するトンネル内壁面の覆工切削装置であって、
前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて前記内壁面に沿って配置されて前記トンネルの内面形状に沿って変形可能であり所定の間隔を有して配置される少なくとも2本のアーチ状の横行フレームと、前記横行フレーム間に懸架させて電動モータの駆動力により前記横行フレームの外側に沿って横行可能に配置した切削フレームとを備え、前記トンネルの進行方向に移動および停止可能に配置されるガントリーと、
前記横行フレームに沿って移動可能であり、外周面に切削爪を備えた円筒状の切削ドラムを2つ有し、各前記切削ドラムは、軸線方向の中央位置を前記切削フレームの架設方向の中央位置に合致させて配置されるとともに両端が前記切削フレームに支持され、且つ、シリンダによって前記切削フレームに対する距離を伸縮可能である回転式切削機と、からなり、
計測用のセンサとして、前記切削フレームを横行させるための前記電動モータの駆動軸に取り付けられてその回転数を検出する切削フレーム位置検出用センサと、前記切削フレームまたは前記切削ドラムに取り付けられて前記内壁面との距離を検出する切削深さ検出用センサと、前記シリンダに取り付けられてその伸縮量を検出する切削ドラム位置検出用センサと、を備え、
前記電動モータを制御するインバータを備えており、前記インバータは、出力する周波数を調整して前記電動モータの回転速度を変更することで前記切削フレームの横行速度を変更可能であり、
前記切削フレームに取り付けられる前記切削ドラムが少なくとも幅または径のどちらか一方が異なる切削ドラムに交換可能であり、
前記横行フレームと前記切削フレームの間にスペーサーを介しており、前記スペーサーに対する前記切削フレームの取り付け位置が調整可能であり、
前記横行フレームの上面と前記切削フレームの間または前記横行フレームの側面と前記切削フレームの間のうち少なくとも一方にアンチトルクローラが付設されており、
加えて、前記ガントリーの正面または背面のうち少なくとも一方に配置された防塵飛散防止機構と、
前記ガントリーの内側に付設された切削ズリ落下防止板と、
前記切削フレームに設置されて前記切削ズリ落下防止板に落下した切削ズリを掻き落とすスクレーパと、を有することを特徴とするトンネル内壁面の覆工切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路などに設置された既存のトンネルにおける内壁面の覆工切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路などに設置されているトンネルの内壁面は表面の保護のためにコンクリートにより覆われているが、経年使用により老朽化することでひび割れ、剥離などが生じて強度が低下して、水漏れや剥落などが生じる恐れがある。
【0003】
そこで、これらを未然に対処する目的で、古くなったトンネル内壁面の覆工を一定の深さで切削し、新たなトンネル内壁面を覆工する補修工事が行われている。
【0004】
ところで、前記トンネルにおける内壁面の覆工部分についての補修工事が行われる期間中は長期間に渡ってトンネル内の交通が遮られるが、長年にわたって使用されて補修が必要な道路などに設置されているトンネルは多くの場合に日常の交通になくてはならないものであり、前記内壁面の補修工事が行われる期間中は長期間に渡ってトンネル内の交通が遮られて交通障害が生じるという問題点があった。
【0005】
この問題を解決するため、例えば特開平11-173088号公報(特許文献1)、特開2017-193885号公報(特許文献2)、特開2002-081298号公報(特許文献3)などに提示されており、図10に示した覆工切削装置1aのように、既設のトンネル2a内に、その長さ方向に沿って間欠的に移動可能なシェルター(防護工)3aを設けることにより壁面の作業空間4aと車両の通行空間5aとを区画し、トンネル2aの内壁面6aを、作業空間4a内で移動可能なフレーム7aに沿って横行する切削機8aによって切削する作業を連続して行う装置を用いた補修方法が知られている。
【0006】
この補修方法によると、シェルター(防護工)3aにより壁面の作業空間4aと車両の通行空間5aとを区画して、交通への影響を回避できるため、活線状態で(車両の交通を止めないで)連続的に内壁面の補修工事を行うことが可能である。
【0007】
しかしながら、前記図10(b)に示したように、前記特許文献1および前記特許文献2に開示された切削機8aはトンネル進行方向への移動とトンネル周方向への横行のみ可能とした構造であり、切削深さの細かい調整をすることができず、深さ一定の切削しか行えなかった。
【0008】
そこで、例えば特許文献3に提示されており、図11に示した覆工切削装置1bのように、切削機8bをトンネル2bの周方向(内壁面に近接する方向)に移動させるためのシリンダ9bおよび平行リンク機構10bを有しており、内壁面6bを所定の厚さに切削する装置が知られており、この覆工切削装置1bによれば、シリンダ9bを伸縮させて切削機8bを内壁面6bに押し当てることで切削深さを調整することができる。
【0009】
また、例えば特開2017-179853号公報(特許文献4)に開示されており、図12に示した覆工切削装置1cのように、既設のトンネル2c内に配置したシェルター(防護工)3cによって壁面の作業空間4cと車両の通行空間5cとを区画し、トンネル2cの内壁面6cを、作業空間4c内で移動可能なフレーム7cに沿って横行する切削機8cによって内壁面を切削する点、および、切削機8cをトンネルの周方向(内壁面に近接する方向)に移動させるためのシリンダ9cを有している点においては同様であるが、切削機8cの切削ドラム11cが左右両側に備えられており、シリンダ9cを伸縮させて切削ドラム11cの一方または両方を内壁面6cに押し当てて切削可能である装置が知られており、この覆工切削装置1cによれば、一つの切削機のみで、トンネル2cの内壁面6cの左右の最下端の近傍まで切削できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-173088号公報
【特許文献2】特開2017-193885号公報
【特許文献3】特開2002-081298号公報
【特許文献4】特開2017-179853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、各前記従来の覆工切削装置は、切削深さの細やかな調整についてはあまり考慮されていなかった。例えば、前記図10に示した覆工切削装置1aの構造は、切削機8aがフレーム7a上を横行して切削する際、フレームと内壁面の距離が一定でない場合には切削深さも変動してしまい、予め機械的に定めた切削深さしか1サイクルで切削を行うことができず、且つ、予め定めた切削深さだけ実際に切削が出来ているかリアルタイムで確認することは困難だった。
【0012】
また、前記図12に示した覆工切削装置1cの構造は、ストッパ部12cを接触させることで所望の切削深さで切削するものであるが、予め機械的に定めた切削深さしか1サイクルで切削を行うことができず、且つ、予め定めた切削深さだけ実際に切削が出来ているかリアルタイムで確認することは困難であることに変わりはなく、ストッパ部12cを未切削の内壁面6cに押し当てることで切削深さの制限を行う方式であることから、切削1サイクルの終端となる左右いずれかの端部など、ストッパ部12cが未切削の内壁面に押し当てられない箇所が必ず存在するため、ストッパ効果が発揮できずに切削深さが一定でなくなる恐れがある。
【0013】
一方、前記図11に示した従来の覆工切削装置1bの構造は、切削ドラム11bを、フレーム7bからシリンダ9bおよび平行リンク機構10bを介して片側に突出させた、所謂片持ち式に配置された構造であり、シリンダ10bを伸縮させて切削ドラムを内壁面に押し当てることで切削深さを調整することができるが、所望の切削深さだけ実際に切削が出来ているかリアルタイムで確認することは困難であることに変わりはなく、更に、切削ドラムを内壁面に押し当てる際の押圧力とその反力とがシリンダ、平行リンク機構、回転軸に作用することとなるため、切削深さが不安定になる恐れや、負荷が高まって精度の悪化や故障につながる恐れがある。
【0014】
そこで、トンネル内への車両の通行を遮断することなしにトンネル覆工の切削作業を行うことが可能であることは言うまでもなく、所望の切削深さで確実且つ迅速に切削できるとともに切削中にリアルタイムに切削度合いの確認および調整が可能であり、高精度で耐久性にも優れたトンネル内壁面の覆工切削装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、従来の覆工切削装置における前記課題を解決するためになされたものであり、車両の通行を可能にする通行空間を有し、前記通行空間の外側の作業空間においてトンネルの内面に覆工された内壁面を切削するトンネル内壁面の覆工切削装置であって、
前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて前記内壁面に沿って配置されたアーチ状の横行フレームと、電動モータの駆動力により前記横行フレームの外側に沿って横行可能に配置した切削フレームとを備え、前記トンネルの進行方向に移動および停止可能に配置されるガントリーと、
前記横行フレームに沿って移動可能であり、外周面に切削爪を備えた円筒状の切削ドラムを2つ有し、各前記切削ドラムの両端が前記切削フレームに支持されるとともにシリンダによって前記切削フレームに対する距離を伸縮可能である回転式切削機と、からなり、
計測用のセンサとして、前記切削フレームを横行させるための前記電動モータの駆動軸に取り付けられてその回転数を検出する切削フレーム位置検出用センサと、前記切削フレームまたは前記切削ドラムに取り付けられて前記内壁面との距離を検出する切削深さ検出用センサと、前記シリンダに取り付けられてその伸縮量を検出する切削ドラム位置検出用センサと、を備える、
ことを特徴とする。
【0016】
本発明によると、車両の通行を可能にする通行空間を有し、前記通行空間の外側の作業空間においてトンネルの内面に覆工された内壁面を切削する構造であることにより、トンネル内への車両の通行を遮断することなしにトンネル覆工の切削作業を行うことが可能なことは従来と同様である。
【0017】
そして、切削度合いの確認および調整を行うための測定用の各種センサを備えたことによって、各種センサの測定値を利用して切削中にリアルタイムに切削度合いの確認および調整が可能であるため、所望の切削深さで確実且つ迅速に切削できる。
【0018】
加えて、切削ドラムにおける回転軸の両端が横行フレームに沿って横行する切削フレームに支持されているので、従来の片持ち式の切削ドラムに比べて、安定した状態で切削ドラムを内壁面に押し当てて切削することができ、また、切削荷重による部品への負担が少ないので、高精度で耐久性にも優れたトンネル覆工の切削装置を提供することができる。
【0019】
また、本発明において、前記横行フレームがトンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて所定の間隔を有して少なくとも2本配置されているとともに、前記横行フレームに沿って走行可能な前記切削フレームを前記横行フレーム間に懸架させて前記横行フレームに沿って横行可能に支持されている場合、2本以上の横行フレームで負荷を分散させられるため、回転式切削機を設置した切削フレームを確実に安定した状態で走行可能に支持可能である。
【0020】
更に、本発明において、前記電動モータを制御するインバータを備えており、前記インバータは、出力する周波数を調整して前記電動モータの回転速度を変更することで前記切削フレームの横行速度を変更可能である場合、切削時に発生する切削反力や、切削する内壁面の硬度の差異等による負荷の上昇や、横行フレームを下降する際の電源回生(電動モータが回される力)を考慮して、前記切削フレームの横行速度を適正な速度に調整することができる。
【0021】
また、本発明において、前記回転式切削機が、前記切削ドラムの軸線方向の中央位置を前記切削フレームの架設方向の中央位置に合致させて配置されている場合には、切削ドラムの位置をトンネルの内壁面における所定の切削位置に容易に調整可能である。
【0022】
更に、本発明において、前記切削フレームに取り付けられる前記切削ドラムが少なくとも幅または径のどちらか一方が異なる切削ドラムに交換可能である場合、1サイクルの切削量を変更することができる。
【0023】
また、本発明において、前記横行フレームと前記切削フレームの間にスペーサーを介しており、前記スペーサーに対する前記切削フレームの取り付け位置が調整可能である場合、異なる断面を有するトンネルの内壁面の断面形状に対しても横行フレームを変更することなく対応可能としているとともに、横行フレーム左右両端よりも下方の側溝部分についても容易に切削を行うことが可能となる。
【0024】
更に、本発明において、前記ガントリーの正面または背面のうち少なくとも一方に防塵飛散防止機構が配置されている場合、切削作業時に切削ドラムから生じる切削屑などの粉塵を飛散させずにガントリー付近に集塵することができる。
【0025】
また、本発明において、前記ガントリーの内側に切削ズリ落下防止板が付設されているとともに、前記切削フレームに前記切削ズリ落下防止板に落下した切削ズリを掻き落とすスクレーパが設置されている場合、切削ドラムにより生じる切削ズリが横行フレームの下方にあたるトンネルの路面に飛散することが無く、更に、切削ズリ落下防止板に落下した切削ズリをスクレーパにより掻き落とすことで切削ズリが切削ズリ落下防止板上に堆積することを防止する。
【0026】
更に、本発明において、前記横行フレームのアーチ形状を、前記切削するトンネルの内面形状に沿って変形可能とする場合、トンネルの内壁面の覆工面が変形していても均一深さに切削することが可能である。
【0027】
また、本発明において、前記横行フレームの上面と前記切削フレームの間または前記横行フレームの側面と前記切削フレームの間のうち少なくとも一方にアンチトルクローラが付設されている場合、回転式切削機が切削時に発生する切削反力で押されることを受け止めることや、回転式切削機が左右に動くことを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明は、各種センサの測定値を利用して切削中にリアルタイムに切削度合いの確認および調整が可能であるため、所望の切削深さで確実且つ迅速に切削できるとともに、切削ドラムにおける回転軸の両端が横行フレームに沿って横行する切削フレームに支持されていることによって、高精度で耐久性にも優れたトンネル内壁面の覆工切削装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の好ましい実施の形態を示す正面図。
図2図1に示した実施の形態の側面図。
図3図1に示した実施の形態の平面図。
図4図1に示した実施の形態の要部を示す側面図。
図5図3の一部を拡大した平面図。
図6図1に示した実施の形態における回転式切削機によるトンネル内壁面の切削過程を示す一部拡大図。
図7図1に示した実施の形態における回転式切削機が移動した状態を示す正面図。
図8図7の一部拡大図。
図9図1に示した実施の形態におけるアンチトルクローラの断面図。
図10】従来例1を示す正面図。
図11】従来例2を示す側面図。
図12】従来例3を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1乃至図9は本発明の好ましい実施の形態の概略を示すものであり、トンネル内壁面の覆工切削装置1は、ガントリー2と、回転式切削機3と、からなり、ガントリー2の外側におけるトンネル10の内壁面11との間に切削作業用の作業空間4を設けるとともに、ガントリー2の内側に車両の通行を可能にする車両の通行空間5を設けている。
【0032】
ガントリー2は、対象となるトンネル10の路面12上に互いに所定間隔を有する一対が進行方向に所定長さを有して敷設されている走行レール13,13上を電動モータ21により駆動する駆動車輪22および受動車輪23により移動および停止可能な一対の走行フレーム20,20と、走行フレーム20,20から立設しトンネル10の進行方向に対し略直交方向に向けて配置された一対のアーチ状の横行フレーム30,30と、横行フレーム30,30の外側に沿って横行可能に配置した切削フレーム40とを備え、トンネル10の進行方向に移動および停止可能に配置される。
【0033】
横行フレーム30,30を立設した走行フレーム20,20には、例えば、変圧器24,油圧ユニット25,動力および通信に使用される各種の制御盤26,駆動電動モータを運転するためのインバータ27,操作用の出入力装置28などの本実施の形態である覆工切削装置1に使用される各種の動力機器および制御機器の動力源および制御装置が搭載されており、覆工切削装置1は外部からの電源供給により作動する。尚、更に発電機を搭載することで、覆工切削装置1は外部の電源などの駆動源を確保しなくても自力で作動可能とされていてもよい。
【0034】
そして、走行フレーム20,20は、走行駆動装置である電動モータ21により駆動車輪22を駆動させることで走行レール13,13上を前進または後退して間欠的に移動可能であり、加えて、走行フレーム20,20に備えたアウトリガ29により停車時および作業時には走行フレーム20,20の位置を固定して安全を図ることができる。尚、走行駆動装置である電動モータ21はインバータ27によるインバータ制御で出力する周波数を調整して電動モータ21の回転速度を変更しつつ駆動させることでトンネル10内の走行速度を調整可能である。
【0035】
本実施の形態における横行フレーム30,30は、正面視アーチ状でありトンネル10の進行方向に対し略直交方向に向けてトンネル10の内壁面11に沿って所定の間隔を隔て記一対の走行フレーム20,20に掛けて立設された一対の横行フレーム30,30である。
【0036】
尚、本実施の形態では、正面視アーチ状の横行フレーム30,30の径の曲率はトンネル10の内壁面11の正面形状に沿わせた形状であると好ましく、仮にトンネル10の内壁面11の正面形状が馬蹄状であった場合には、同様に横行フレーム30,30の形状を馬蹄状としてもよい(図示せず)。
【0037】
切削フレーム40は、横行フレーム30,30の外側に架設されており、切削フレーム40には横行フレーム30,30上を横行するための駆動力となる横行駆動装置である電動モータ41が左右各2基の合計4基備えられている。
【0038】
より詳細に説明すると、各横行フレーム30の内側面に沿って備えられて各横行フレーム30の下面に突出しているガイド部材31と切削フレーム40の両端に備えられたガイド部材42,42に形成したガイド溝43とがオイルレスブッシュ44を介して嵌装されているとともに、各横行フレーム30の上面に沿って形成したラック32に各電動モータ41の駆動軸に軸着したピニオンギヤ45を噛合させており、切削フレーム40は電動モータ41の駆動力によって横行フレーム30,30の両下端部(左右両端)にわたって横行可能に設置されている。
【0039】
殊に、本実施の形態では、切削フレーム40は各ガイド部材42と各横行フレーム30との間にそれぞれスペーサー46が配置されており、このスペーサー46,46により横行フレーム30,30に対する切削フレーム40の高さ位置を変更して取り付けることにより多少異なる断面形状を有するトンネル10の内壁面11に対しても横行フレーム30,30を変更することなく対応可能としているとともに、横行フレーム30,30からの突出量の増減が可能となるため、例えば突出量を増加させることで横行フレーム30,30の両下端部(左右両端)よりも下方の側溝14部分についても切削しやすくなる。
【0040】
また、スペーサー46,46は交換可能であるとともに、スペーサー46,46と切削フレーム40との取付手段は円形の部品とボルト留めによるものであって、取り付け角度および取り付け位置が調整可能である。そのため、スペーサーの交換または切削フレーム40への取り付け角度・位置の調整を行うことによって、多少異なる断面を有するトンネル10の内壁面11の断面形状に対しても横行フレーム30,30を変更することなく対応可能としている。
【0041】
回転式切削機3は、外周面51に多数の切削爪52を備えた2つの円筒状の切削ドラム50,50を有しており、各切削ドラム50の回転軸53をトンネル10の進行方向に向けた状態で、各切削ドラム50の両端を支持されるようにして切削フレーム40に対して平行に備えられている。尚、各切削ドラム50の回転方向は、例えば切削爪52の向きに応じて変更することができる。
【0042】
このように、各切削ドラム50を切削フレーム40に対して平行に備えたことにより、トンネル10(内壁面11)の進行方向と切削ドラム50の軸方向が平行となるため、切削ドラム50についての水平方向の調整が不要となる。
【0043】
各切削ドラム50は、回転軸53に接続された油圧モータ54によって駆動するとともに、伸縮装置60によって切削フレーム40に対する距離を伸縮可能である。
【0044】
伸縮装置60は、本実施の形態においては、切削フレーム40に固定されており左右に軸受部62を有する一対の保持フレーム61と、保持フレーム61の軸受部62に軸着された左右各一対のドラム上下フレーム63と、左右のドラム上下フレーム63,63間にそれぞれ架設された梁部材64と、一端が切削フレーム40に固定されるとともに他端が梁部材64に固定されており伸縮することでドラム上下フレーム63を揺動させるシリンダ65と、からなり、シリンダ65としては例えば油圧式や電動式の動力シリンダを用いることができる。
【0045】
このように、左右各一対のドラム上下フレーム63によって各切削ドラム50の両端が支持されており、シリンダ65を伸縮させることによって保持フレーム61の軸受部62を軸にしてドラム上下フレーム63が揺動することによって、各切削ドラム50の切削フレーム40に対する距離を伸縮させ、各切削ドラム50をトンネル10における内壁面11に押し当てて切削することができる。
【0046】
このとき、回転式切削機3が円筒状の切削ドラム50,50を左右方向に配置していることで、横行フレーム30の左側下端部では左側の切削ドラム50が主に切削を行い、横行フレーム30の右側下端部では右側の切削ドラム50が主に切削を行うことで、1サイクルで切削漏れを生じることなくトンネル10の内壁面11における両下端および更に下方の側溝14部分を含めた路面12に掛けて切削することが可能であり、側溝14部分において伸縮装置60を作動させることで切削ドラム50の移動範囲(図示した2点鎖線範囲)の切削を行うことも可能である(図8参照)。
【0047】
尚、一方の切削ドラム50のみをトンネル10における内壁面11に押し当てて切削することも可能であり、両方の切削ドラム50を共にトンネル10における内壁面11に押し当てて切削することも可能であり、それぞれの切削ドラム50の切削フレーム40に対する距離を相違させて、一方の切削ドラム50は1サイクルの切削深さの半分、一方の切削ドラム50は1サイクルの切削深さの全部だけトンネル10における内壁面11に押し当てて切削することも可能である。
【0048】
本実施の形態において、横行フレーム30,30と切削フレーム40の接触部にはアンチトルクローラが付設されており、このアンチトルクローラは、横行フレーム30,30の上面と切削フレーム40との間に設けられた4個の上面アンチトルクローラ110と、横行フレーム30,30の側面と切削フレーム40との間に設けられた4個の側面アンチトルクローラ120の2種類が備えられている。
【0049】
上面アンチトルクローラ110は、回転式切削機3が切削時に発生する切削反力で押されることを受け止めるためのものであり、側面アンチトルクローラ120は、回転式切削機3が左右に動くことを抑えるためのものである。
【0050】
アンチトルクローラの構造について、図9の断面図を参照して詳細に説明するが、上面アンチトルクローラ110についてのみ説明を行い、同様の構造である側面アンチトルクローラ120についての説明は省略する。
【0051】
上面アンチトルクローラ110は、軸111に対して上下2個の円筒ころ軸受112を介して外装されたローラー113が回転することによって受けたトルクを打ち消すものであって、中心箇所に形成した通孔によって軸111を支持した一対の固定板114をそれぞれボルト115によって回転式切削機3に固定することで付設される。尚、符号116はグリス供給用のグリスニップル、符号117,118はスペーサーである。
【0052】
また、本実施の形態は、回転式切削機3の各切削ドラム50の軸線方向の中央位置が切削フレーム40の架設方向の中央位置に合致させて配置されているため、切削ドラム50の切削爪52の外周面位置(切削面位置)をトンネルの内壁面における所定の切削位置に容易に調整可能である。
【0053】
尚、本実施の形態においては、制御盤26やインバータ27と回転式切削機3とを接続する図示しないケーブルベア(登録商標)を有している。
【0054】
本実施の形態は、回転式切削機3を設置した切削フレーム40を、横行フレーム30,30の一方の下端部(例えば左端)から、切削ドラム50を回転駆動させてトンネル10の内壁面11に押し当てつつ、各電動モータ41を駆動力としてラック32とピニオンギヤ45の噛合により横行フレーム30,30に沿って横行させ、横行フレーム30,30の他方の下端部(例えば右端)まで移動させることによりトンネル10の内周にわたって所定深さおよび所定幅の切削帯を形成し、これを1サイクルの動作とする。所望の切削深さとなるまでこのサイクルを繰り返し、所望の切削深さが得られたら、ガントリー2を走行レール13,13上で前進させ、切削ドラム50の長さ分だけ移動させて、順次この切削作業を繰り返すことでトンネル10の内壁面11に形成されている古くなった覆工部分を切削するものである。そして、切削後の内壁面に対して、例えば型枠の設置・コンクリート打設・コンクリートの養生を順に行う従来周知の工法により新たに覆工部分を設ける(図示せず)。
【0055】
尚、切削ドラム50の幅や径を変更することで1サイクルの切削量を変更することができ、例えば幅の異なる切削ドラムに交換した場合には切削幅を変更可能であり、例えば径の異なる切削ドラムに交換した場合には切削深さを変更可能である。
【0056】
そして、本発明の特徴部分は、計測用の各種センサを有しており、各種センサの測定値を利用して切削中にリアルタイムに切削度合いの確認および調整が可能である点にあり、この計測用のセンサは、切削フレーム40を横行させるための電動モータ41の駆動軸に取り付けられてその回転数を検出する切削フレーム位置検出用センサ91と、切削フレーム40または切削ドラム50に取り付けられて内壁面11との距離を検出する切削深さ検出用センサ92と、シリンダ65に取り付けられてその伸縮量を検出する切削ドラム位置検出用センサ93と、を備える。
【0057】
切削フレーム位置検出用センサ91は、切削フレーム40を横行させるための横行駆動装置である電動モータ41の駆動軸に取り付けられてその回転数を検出するものであり、例えば回転量を数値に変換するロータリーエンコーダが使用可能である。
【0058】
この切削フレーム位置検出用センサ91により取得した値を用いることで、横行フレーム30,30上を横行する切削フレーム40の位置および横行速度を検出可能であり、所望の切削箇所を切削できているか、および、所望の横行速度で切削できているかについて確認可能であり、また、必要に応じて電動モータ41の駆動速度を変更することも可能となる。
【0059】
また、切削フレーム位置検出用センサ91と組み合わせて、一定間隔毎に横行フレーム30,30に設置した地点検出用のリミットスイッチ94を併用可能であり、地点検出用のリミットスイッチ94の作動によって基準点のリセットを行うことで位置ズレを防ぐことができる。更に、横行フレーム30,30の両下端部に最下部検出用のリミットスイッチ95を併用可能であり、最下部検出用のリミットスイッチ95の作動によって切削フレーム40の横行が移動上限に達したことを検出可能であるとともに、電動モータ41の駆動を停止させて切削フレーム40の横行を停止させることができる。尚、符号96はリミットスイッチ94作動用のストライカーである。
【0060】
切削深さ検出用センサ92は、切削フレーム40または切削ドラム50に取り付けられてトンネル10の内壁面11との距離を検出するものであり、例えば赤外線やレーザー光線などの光学式のほか、電波式、超音波式など任意の方式の距離センサが使用可能である。
【0061】
尚、切削深さ検出用センサ92は複数備えられていてもよく、その場合は例えば未切削の内壁面と切削済の内壁面の両方の距離を同時に検出するものとすることができる。
【0062】
切削ドラム位置検出用センサ93は、シリンダ65に取り付けられてその伸縮量を検出するものであり、例えば伸縮量を数値に変換するストロークセンサが使用可能である。
【0063】
切削深さ検出用センサ92および切削ドラム位置検出用センサ93により取得した値を用いることで、切削フレーム40または切削ドラム50に対する内壁面11の距離と、シリンダ65の伸縮量とを検出可能であり、所望の切削深さで切削できているかについて確認可能であり、また、必要に応じてシリンダ65の伸縮量を変更することも可能となる。
【0064】
尚、その他の計測用のセンサとして、回転式切削機3に取り付けられて圧力を計測する圧力センサを備える場合は、切削時に生じる切削ドラム50やシリンダ65への圧力を計測して調整を行うことが可能であり、走行フレーム20,20の駆動車輪22を駆動させる走行駆動装置である電動モータ21に取り付けられてその回転数を検出する回転数センサを備える場合には、走行フレーム20,20の位置を検出可能であり、トンネル10内での進行度合いを計測して調整を行うことが可能である。
【0065】
更に、その他の計測用のセンサとして、ガントリー姿勢検出用の三軸傾斜センサを備えるものとしてもよい。
【0066】
以上のように、本発明は、これら計測用の各種センサを備えることで、従来発明における問題点であった、横行フレームと内壁面の距離が一定でない場合には切削深さも変動してしまう点と、予め機械的に定めた切削深さしか1サイクルで切削を行うことができない点と、予め定めた切削深さだけ実際に切削が出来ているかリアルタイムで確認することは困難だった点とを、いずれも解消可能としたものである。
【0067】
また、本実施の形態であるトンネル内壁面の覆工切削装置1は、切削時に発生する切削屑や切削ズリなどのごみを飛散させずに集積して撤去するための構成を有している。
【0068】
ガントリー2の正面および背面には、アーチ形の仕切りを有する防塵飛散防止機構70,70が配置されており、切削作業時に切削ドラム50,50から生じる切削屑などの粉塵を飛散させずにガントリー2付近に集塵することができる。
【0069】
防塵飛散防止機構70は、本実施の形態においては例えばアクリルなどを素材とする透明なパネル71と、該パネル71を取り付けるための枠体72と、該枠体72に取り付けられてパネル71と内壁面11または路面12との隙間を埋めるための伸縮自在なバルーン73と、からなる。
【0070】
このように、防塵飛散防止機構70を透明なパネル71を用いて構成することによって視界を遮ることがなく工事における安全確保が図れるとともに、バルーン73によって隙間を閉塞することによって切削屑などの粉塵を飛散させずに防塵飛散防止機構70,70の間にとどめてガントリー2付近に集塵することができるが、例えば布状のスクリーンを用いるものとしてもよく、スクリーンを用いる場合は柔軟に変形しつつ防塵飛散防止の効果を発揮することができる。
【0071】
また、ガントリー2の内側(横行フレーム30,30の内側)には正面視アーチ形の切削ズリ落下防止板80が付設されているとともに、切削フレーム40に切削ズリ落下防止板80に落下した切削ズリを掻き落とすスクレーパ48,48が設置されており、切削ドラム50でトンネル10の内壁面11を切削することにより生じる切削ズリが横行フレーム30,30の下方にあたるトンネル10の路面12に飛散することが無く、更に、切削ズリ落下防止板80に落下した切削ズリをスクレーパ48,48により掻き落とすことで切削ズリが切削ズリ落下防止板80上に堆積することを防止する。
【0072】
切削ズリ落下防止板80を有していることで、作業空間4と通行空間5とを容易に分断でき、従来発明のようなコンクリート製のシェルター(防護工)を設ける必要がないので、装置全体として部品の削減と軽量化が図れるとともに廉価に提供可能である。また、切削ズリ落下防止板80の効果として、万が一、回転式切削機3に備えた油圧系統からの油漏れが生じたとしても、直接その下方の路面12に落下することなく切削ズリ落下防止板80によって受け止められるため、通行中の車両に危険が及ぶことがない。
【0073】
以上の構成を有する本実施の形態であるトンネル内壁面の覆工切削装置1は、対象となるトンネル10の入口から路面12上に敷設した走行レール13,13を走行するガントリー2を切削作業を行う所定の内壁面11に近接させて回転式切削機3の切削ドラム50,50が合致する位置に停止させ、アウトリガ29を作動させてガントリー2を所定位置に固定することにより、ガントリー2の外側におけるトンネル10の内壁面11との間に所定の切削作業の作業空間4を設けるとともに、ガントリー2の内側(切削ズリ落下防止板80の下方)に車両の通行を可能にする車両の通行空間5を設けることで、車両の通行を遮断することなく切削作業を行うことができる。
【0074】
尚、本実施の形態において、車両の通行空間5に従来発明のようなコンクリート製のシェルター(防護工)6を設けてもよく、この場合にはより安全に車両の通行を確保することができるが、必ずしも必要とはしない。
【0075】
そして、次に、トンネル10の内壁面11における覆工箇所に配置した回転式切削機3の油圧モータ54により切削ドラム50,50を回転させるとともに、切削フレーム40に設置した伸縮装置60により切削ドラム50,50を切削フレーム40に対して平行状態で揺動させてトンネル10の内壁面11に押し付けることで覆工部分を切削するものである。
【0076】
この時、本実施の形態では、各種センサの測定値を利用して切削中にリアルタイムに切削度合いの確認および調整が可能であるため、所望の切削深さで確実且つ迅速に切削できる。
【0077】
また、本実施の形態では、横行フレーム30,30上を横行する切削フレーム40を駆動させるための横行駆動装置である各電動モータ41をインバータ27によるインバータ制御で出力する周波数を調整して電動モータ41の回転速度を変更しつつ駆動させることでトンネル10の内壁面11の硬さ等に合わせて横行速度を調整可能である。具体的には、切削時に発生する切削反力や、切削する内壁面11の硬度の差異等による負荷の上昇や、横行フレーム30,30を下降する際の電源回生(電動モータが回される力)を考慮して、切削フレーム40の横行速度を適正な速度に調整することができる。
【0078】
尚、切削ドラム50,50により切削された切削ズリは、切削ズリ落下防止板80に落下したあとにスクレーパ48,48によって掻き落されてガントリー2の両側下端に堆積するため、纏めて破棄可能であり、路面12に飛散して交通に影響を与える心配がない。
【0079】
加えて、ガントリー2の正面および背面にはアーチ形の防塵飛散防止機構70が配置されているので、切削作業時に生じる切削屑などの粉塵は防塵飛散防止機構70,70の間に集塵されるため広範囲に飛散する心配がない。
【0080】
また、本実施の形態は、各切削ドラム50,50における回転軸53,53の両端が、横行フレーム30,30に沿って横行する切削フレーム40に両持ち式に支持されているので、切削ドラム50,50でトンネル10の内壁面11を切削する際に切削ドラム50,50に切削フレーム40方向の荷重が掛かっても両端に均等に荷重が分散されるため、図11に示した従来の覆工切削装置1bにおける片持ち式の切削機8bのように荷重が偏ることがないので安定した状態で所定の深さと幅に正確且つ迅速に切削することができ、また、回転軸53,53への切削荷重による負担が少ないので耐久性にも優れており、回転式切削機3を切削ドラム50,50の回転軸53,53がトンネル10(内壁面11)の進行方向に平行に切削フレーム40に設置することにより切削ドラム50,50についての水平方向の調整が不要で、殊に、伸縮装置60により切削ドラム50,50による切削深さを調整することが可能である。また、切削深さを調整することで一度に切削する切削量を変更することが可能であり、更にトンネル10の内壁面11の硬さに合わせた調整も容易である。
【0081】
更にまた、本実施の形態は、切削ドラム50,50の長さ方向の中心が切削フレーム40の長さ方向の中心に合わせて設置されているので均一の厚さに切削が可能であり、切削ドラム50,50が切削フレーム40から突出しないのでガントリー2の長さも少なくて済む。
【0082】
尚、本発明における切削ドラム50,50の回転軸53,53の向きは前記図1乃至図9に示した実施の形態のようにトンネル10の進行方向に向けられることが望ましいが、切削ドラム50,50の回転軸53,53の向きをトンネル10の進行方向と直交する方向に向けられるものとしてもよい(図示せず)。
【符号の説明】
【0083】
1 覆工切削装置、2 ガントリー、3 回転式切削機、4 作業空間、5 通行空間、6 シェルター(防護工)、10 トンネル、11 内壁面、12 路面、13 走行レール、14 側溝、20 走行フレーム、21 電動モータ、22 駆動車輪、23 受動車輪、24 変圧機、25 油圧ユニット、26 制御盤、27 インバータ、28 出入力装置、29 アウトリガ、30 横行フレーム、31 ガイド部材、32 ラック、40 切削フレーム、41 電動モータ、42 ガイド部材、43 ガイド溝、44 オイルレスブッシュ、45 ピニオンギヤ、46 スペーサー、47 軸受、48 スクレーパ、50 切削ドラム、51 外周面、52 切削爪、53 回転軸、54 油圧モータ、60 伸縮装置、61 保持フレーム、62 軸受部、63 ドラム上下フレーム、64 梁部材、65 シリンダ、70 防塵飛散防止機構、71 パネル、72 枠体、73 バルーン、80 切削ズリ落下防止板、91 切削フレーム位置検出用センサ、92 切削深さ検出用センサ、93 切削ドラム位置検出用センサ、94,95 リミットスイッチ、96 ストライカー、110 上面アンチトルクローラ、111 軸、112 円筒ころ軸受、113 ローラー、114 固定板、115 ボルト、116 グリスニップル、117,118 スペーサー、120 側面アンチトルクローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12