(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141142
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】多レベル直流パルス電源、及び多レベル直流パルス電源の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 9/04 20060101AFI20241003BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241003BHJP
【FI】
H02M9/04 Z
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052629
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】安達 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】片渕 竜平
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770DA01
5H770DA17
5H770DA31
5H770DA46
5H770GA02
(57)【要約】
【課題】直流電源の直流電圧を選択して多レベル(マルチレベル)の直流パルス電圧を出力する場合に、直流電源の切り替え時における電圧レベルに起因するLC共振回路の誤動作を解消する。
【解決手段】本発明の多レベル直流パルス電源、及びその制御方法は、直流電源の直流電圧を切り替える時点を、LC共振回路の供給時と回生時の電圧状態に対して適切なタイミングに設定する構成とし、及び制御することにより、LC共振回路の入力電圧と出力コンデンサの電圧との電圧関係において、直流電源の切り替え時に電圧レベルに起因するLC共振回路の誤動作を抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多レベルの高周波パルス電圧を出力する多レベル直流パルス電源であり、
(a)多レベルの直流電圧を選択的に切り替えて出力する直流電源部と、
(b)LC共振回路と当該LC共振回路の電流方向を切り替える双方向スイッチとを備え、前記直流電源部の直流電圧を高周波パルス電圧に変換する共振部と、
(c)前記直流電源部が出力する直流電圧を切り替える第1の切り替え動作と、前記双方向スイッチを切り替える第2の切り替え動作を制御する制御部を備え、
(d)前記制御部において、
(d1)第1の切り替え動作は、前記LC共振回路に印加する直流電圧を切り替える動作であり、
(d2)第2の切り替え動作は、前記LC共振回路の出力コンデンサに直流電圧を供給する供給動作と、前記出力コンデンサに蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作とを切り替える動作であり、
(d3)前記第1の切り替え動作時点は、前記第2の切り替え動作の前記回生動作時点と前記供給動作時点との間である、
多レベル直流パルス電源。
【請求項2】
前記制御部が出力する制御信号は、
前記第1の切り替え動作において、多レベルの直流電圧を選択的に出力するスイッチング素子を切り替える電圧切替信号であり、
前記第2の切り替え動作において、前記双方向スイッチの一方のスイッチング素子を制御する前記供給動作の供給切替信号と、前記双方向スイッチの他方のスイッチング素子を制御する前記回生動作の回生切替信号であり、
前記電圧切替信号の設定時点は、前記回生切替信号から前記LC共振回路の時定数が経過した時点と、その後の供給切替信号の立ち上がり時点との間の期間内である、
請求項1に記載の多レベル直流パルス電源。
【請求項3】
前記LC共振回路は、前記直流電源部に並列接続された電源コンデンサ及び出力端に並列接続された出力コンデンサと、前記電源コンデンサと前記出力コンデンサとの間に直列接続されたリアクトルを含むπ型LC回路であり、前記回生動作の回生先は前記LC共振回路の電源コンデンサである、
請求項1又は2に記載の多レベル直流パルス電源。
【請求項4】
前記LC共振回路は、入力端と出力端の間に直列接続されたリアクトルと、出力端に並列接続された出力コンデンサとを含むL型LC回路であり、前記回生動作の回生先は前記直流電源部である、
請求項1又は2に記載の多レベル直流パルス電源。
【請求項5】
前記双方向スイッチは、スイッチング素子とダイオードの第1の直列回路と、スイッチング素子とダイオードの第2の直列回路との並列接続を備え、
第1の直列回路のダイオードと第2の直列回路のダイオードの導通方向は互いに逆方向である、
請求項1又は2に記載の多レベル直流パルス電源。
【請求項6】
前記双方向スイッチは、スイッチング素子とダイオードとリアクトルの第1の直列回路と、スイッチ素子とダイオードとリアクトルの第2の直列回路との並列接続を備え、
第1の直列回路のダイオードと第2の直列回路のダイオードの導通方向は互いに逆方向である、
請求項1又は2に記載の多レベル直流パルス電源。
【請求項7】
スイッチング素子と抵抗の直列回路をさらに備え、当該直列回路は、前記出力コンデンサに並列接続され、
前記制御部は、前記回生動作中に前記並列接続されたスイッチング素子をオン状態に切り替える、
請求項1又は2に記載の多レベル直流パルス電源。
【請求項8】
前記直流電源部は、
複数の直流電圧源と、当該複数の直流電圧源を選択的に切り替えるスイッチング素子を備える構成、
又は、
単一の直流電圧源と、当該単一の直流電圧源から複数レベルの電圧を生成する電圧生成回路を備える構成である、
請求項1に記載の多レベル直流パルス電源。
【請求項9】
多レベルの直流電圧を選択的に切り替えて出力する直流電源部と、LC共振回路と当該LC共振回路の電流方向を切り替える双方向スイッチとを含み、前記直流電源部の直流電圧を高周波パルス電圧に変換する共振部とを備え、多レベルの高周波パルス電圧を出力する多レベル直流パルス電源の制御方法であり、
(a)前記直流電源部が出力する直流電圧を切り替える第1の切り替え動作の制御と、
(b)前記双方向スイッチを切り替える第2の切り替え動作の制御と
を備え、
(c)前記第1の切り替え動作の制御は、LC共振回路に印加する直流電圧を切り替える動作の制御であり、
(d)前記第2の切り替え動作は、前記LC共振回路の出力コンデンサに直流電圧を供給する供給動作と、前記出力コンデンサに蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作とを切り替える動作の制御であり、
(e)前記第1の切り替え動作時点は、前記第2の切り替え動作の前記回生動作時点と前記供給動作時点との間である、
多レベル直流パルス電源の制御方法。
【請求項10】
前記第1の切り替え動作は、電圧切替信号によって、レベルの直流電圧を選択的に切り替え、
前記第2の切り替え動作は、前記供給動作の供給切替信号によって前記双方向スイッチの一方のスイッチング素子を切り替え、前記回生動作の回生切替信号によって前記双方向スイッチの他方のスイッチング素子を切り替え、
前記電圧切替信号の設定時点は、回生切替信号から前記LC共振回路の時定数が経過した時点と、その後の供給切替信号の立ち上がり時点との間の期間内である、
請求項9に記載の多レベル直流パルス電源の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流パルス電源及び直流パルス電源の制御方法に関し、負荷に対して多レベルの高周波パルス電圧を供給する多レベル直流パルス電源、及び多レベル直流パルス電源の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、高精度のプロセス制御が容易であるという利点から、成膜処理、エッチング処理、アッシング処理などにおいてプラズマ処理装置が用いられている。このプラズマ処理装置では、高周波プラズマに対してパルス状の直流電力を印加する電源として直流パルス電源が用いられる。
【0003】
直流パルス電源では数百V~数kV程度の波高値の高電圧パルスを生成する必要がある。特許文献1~特許文献3には、コンデンサとリアクトルのLC共振回路と半導体スイッチとで構成される充放電回路により直流パルス電圧を生成するパルス電源が開示され、特許文献2には多レベルの直流パルス電圧を生成するパルス電源が開示されている。
【0004】
特許文献1には、直流電源と2つのスイッチング素子を備え、容量性負荷と、スイッチ素子とコンデンサとリアクトルを含む充放電回路とによりLC共振回路を構成し、2つのスイッチング素子を相補的にオン/オフさせることで容量性負荷とコンデンサとの間で電荷を移動させて負極性の直流パルス電圧を生成することが開示されている。また、特許文献1には容量性負荷に蓄積されたエネルギーを電源装置側に回生する構成も開示されている。
【0005】
特許文献2には、直流パルス電圧の2つの電圧レベルを供給する基本電圧生成部と、直流パルス電圧を2つの電圧レベル間で立ち上げ及び立ち下げる共振駆動部とを備える構成が記載されている。基本電圧生成部は、電源投入時等の過大な突入電流による素子破壊を防ぐために限流抵抗を備える。特許文献2には、この限流抵抗による電力損失、及び直流パルス電圧の立ち上がり立ち下がり特性を改善するために、共振電流により充電される出力コンデンサの充電電圧が基本電圧生成部の所定電位と等しいとき、及び共振電流により放電される出力コンデンサの充電電圧が接地電位と等しいときに基本電圧生成部と共振駆動部との切り替え動作を行うことが開示されている。また、特許文献2には可変電圧レベルの直流パルス電圧を生成する構成も開示されている。
【0006】
特許文献3には、スイッチング素子の切り替え制御のための電圧検出手段や複雑な制御が必要となる特許文献2の課題に対して、LC共振動作時に共振電流を供給する2つのスイッチング素子からなる共振レグ回路と、電圧出力端に電源電圧又は接地電位を選択に出力する2つのスイッチング素子からなる主レグ回路とを備え、主レグ回路によりスイッチング動作により共振波形の立ち上がり及び立ち下がりのスロープの一部を用いた部分共振によって立ち上がり及び立ち下がりの高速化を図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-107904号公報
【特許文献2】特許第6613411号公報
【特許文献3】特許第6810317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献3に示されるパルス電源装置は、1つの所定電圧と接地電位との間の電位差によって、単一レベルの直流パルス電圧を出力している。
【0009】
プラズマを励起する際、単一レベルの直流パルス電圧をプラズマ負荷に供給する態様の他に、所定電圧を複数種類設けて、パルスレベルが異なる多レベル(マルチレベル)の直流パルス電圧を供給する態様が知られている。
【0010】
単一レベルの直流パルス電圧を生成する直流パルス電源では、直流電源は1つの直流電圧を出力する。これに対して、多レベル(マルチレベル)の直流パルス電圧を生成する直流パルス電源では、異なる直流電圧を選択的に切り替えて出力する。
【0011】
本願の発明者は、選択された直流電圧を用いて多レベル(マルチレベル)の直流パルス電圧を生成する直流パルス電源は、1つの直流電圧を用いて単一レベルの直流パルス電圧を生成する単一レベルの直流パルス電源では想定されない動作上の課題があることを見出した。
【0012】
LC共振回路において、直流電源から供給される1つの直流電圧による電圧状態と、直流電源から供給される複数種の直流電圧の中から選択されたて直流電圧による電圧状態とは、直流電圧の切り替えに起因して異なる。
【0013】
より詳細には、単一レベルの直流パルス電圧する場合には、LC共振回路のコンデンサの充電電圧と直流電源の直流電圧は同一の電圧レベルであるのに対して、直流電源の直流電圧を選択して多レベル(マルチレベル)の直流パルス電圧を出力する場合には、LC共振回路のコンデンサの充電電圧と直流電源の直流電圧とは、直流電源の切り替え時における切り替え状態によってLC共振回路のコンデンサの充電電圧と直流電源の直流電圧は異なる電圧レベルとなる。この切り替え時における電圧レベルの異同は、LC共振回路の動作において誤動作の要因となるという課題がある。
【0014】
切り替え時における電圧レベルの異同に起因する誤動作として、例えばプラズマ負荷に負電圧を供給する供給動作においてピーク形状の正電圧が供給される誤動作や、不十分な回生動作により零電圧への回帰が不完全となる誤動作などがある。
【0015】
特許文献2中の
図7には、出力電圧を異にする3つの直流電圧源を備え、直流電源の直流電圧を選択して3レベルの直流パルス電圧を生成する構成例が開示されている。しかしながら、特許文献2には、直流電源の直流電圧の選択時において電圧レベルに相違が生じること、及びこの電圧レベルの相違がLC共振回路の誤動作の要因となるということについて何ら開示されていない。
【0016】
本発明は前記した従来の課題を解決して、直流電源の直流電圧を選択して多レベル(マルチレベル)の直流パルス電圧を出力する場合に、直流電源の切り替え時における電圧レベルに起因するLC共振回路の誤動作を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の多レベル直流パルス電源、及びその制御方法は、直流電源の電圧レベルが異なる直流電圧を切り替える時点を、LC共振回路の供給時の電圧状態と回生時の電圧状態の各電圧状態に対して適切なタイミングに設定することにより、LC共振回路の入力電圧と出力コンデンサの電圧との電圧関係において、直流電源の切り替え時に電圧レベルに起因するLC共振回路の誤動作を抑制する。
【0018】
本発明は多レベル直流パルス電源の態様A、及び多レベル直流パルス電源の制御方法の態様Bを備える。
【0019】
(A:多レベル直流パルス電源)
本発明の多レベル直流パルス電源は、多レベルの高周波パルス電圧を出力する多レベル直流パルス電源であり、
(a)多レベルの直流電圧を選択的に切り替えて出力する直流電源部と、
(b)直流電源部の直流電圧を高周波パルス電圧に変換する共振部と、
(c)切り替え動作を制御する制御部と
を備える。
【0020】
本発明の共振部は、LC共振回路とこのLC共振回路の電流方向を切り替える双方向スイッチとを備え、制御部は直流電源部が出力する直流電圧の電圧レベルを切り替える第1の切り替え動作と、前記双方向スイッチを切り替える第2の切り替え動作を制御する。
(d)制御部の切り替え動作の制御において、
(d1)第1の切り替え動作は直流電源部での切り替え動作であり、直流電源部からLC共振回路に印加する直流電圧の電圧レベルを切り替える動作である。
(d2)第2の切り替え動作はLC共振回路での切り替え動作であり、LC共振回路の出力コンデンサに直流電圧を供給する供給動作と、出力コンデンサに蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作とを切り替える動作である。
(d3)制御部は、第1の切り替え動作の時点が、第2の切り替え動作の回生動作時点における供給動作時点との間の時点となるように制御する。
【0021】
本発明の制御部は、直流電源部及びLC共振回路の切り替え動作を制御する制御信号を出力する。制御部が出力する制御信号は、第1の切り替え動作において、多レベルの直流電圧の電圧レベルを選択的に切替えるスイッチ素子の電圧切替信号、及び第2の切り替え動作において、双方向スイッチを制御して供給動作と回生動作とを切替える切り替え信号を含んでいる。
【0022】
第2の切り替え動作において、双方向スイッチを制御する切り替え信号は、双方向スイッチの一方のスイッチング素子を制御して供給動作に切り替えるための供給切替信号と、双方向スイッチの他方のスイッチング素子を制御して回生動作に切り替えるための回生切替信号を備える。
【0023】
第1の切り替え動作の電圧切替信号の設定時点は、第2の切り替え動作において回生切替信号からLC共振回路の時定数が経過した時点と、その後の供給切替信号の立ち上がり時点との間の期間内のタイミングである。第1の切り替え動作時点の動作時点が第2の切り替え動作のこの期間内のタイミングとなるように設定する。第1の切り替え動作をこの第2の切り替え動作で設定した上記期間内で行うことにより、直流電源の切り替え時における電圧レベルの変化に起因するLC共振回路の誤動作を解消する。
【0024】
(LC共振回路の構成)
本発明のLC共振回路は、π型LC回路あるいはL型LC回路により構成される。
π型LC回路は、直流電源部に並列接続された電源コンデンサ、及び出力端に並列接続された出力コンデンサと、電源コンデンサと出力コンデンサとの間に直列接続されたリアクトルにより構成される。このπ型LC共振回路では、回生動作において出力コンデンサに蓄積された静電エネルギーは電源コンデンサに回生される。
【0025】
L型LC回路は、入力端と出力端の間に直列接続されたリアクトルと、出力端に並列接続された出力コンデンサとにより構成される直列LC型回路である。このL型LC共振回路では、回生動作において出力コンデンサに蓄積された静電エネルギーは直流電源に回生される。
【0026】
出力コンデンサに蓄積される静電エネルギーを解放する補助的機構として、スイッチング素子と抵抗の直列回路を出力コンデンサに対して並列接続させる構成としても良い。回生動作中において出力コンデンサに並列接続されたスイッチング素子をオン状態に切り替えることによって、回生動作で十分に回生されずに残余する出力コンデンサの静電エネルギーを抵抗で消費させる。抵抗によって出力コンデンサの静電エネルギーを零状態とし、LC共振回路の共振動作の継続的な繰り返しを担保する。
【0027】
(双方向スイッチ)
双方向スイッチは、複数の形態で構成することができる。双方向スイッチの一構成は、スイッチング素子とダイオードの第1の直列回路と、スイッチング素子とダイオードの第2の直列回路との並列接続を備える。並列接続される第1の直列回路のダイオードと第2の直列回路のダイオードの導通方向は互いに逆方向である。双方向スイッチの両方のスイッチング素子を切り替えることより電流方向を切り替える。
【0028】
双方向スイッチの他の構成は、スイッチング素子とダイオードとリアクトルの第1の直列回路と、スイッチ素子とダイオードとリアクトルの第2の直列回路との並列接続を備える。並列接続される第1の直列回路のダイオードと第2の直列回路のダイオードの導通方向は互いに逆方向である。双方向スイッチの両方のスイッチング素子を切り替えることより電流方向を切り替える。この双方向スイッチは、第1の直列回路と第2の直列回路がそれぞれ備えるリアクトルのインダクタ値を同一とする構成に限らず、異なるインダクタ値とする構成としてもよい。リアクトルのインダクタ値をそれぞれ個別の値とすることにより、供給動作及び回生動作の時定数を個別に設定することができる。
【0029】
(直流電源部)
本発明の直流電源部は複数の形態で構成することができる。直流電源部の一構成は、電圧レベルが異なる複数の直流電圧源と、この複数の直流電圧源を選択的に切り替えるスイッチング素子を備える。直流電源部の他の構成は、単一の直流電圧源と、この単一の直流電圧源から複数の電圧レベルを生成する電圧生成回路を備える。
【0030】
(B:多レベル直流パルス電源の制御方法)
本発明の多レベル直流パルス電源は、多レベルの直流電圧を選択的に切り替えて出力する直流電源部と、直流電源部の直流電圧を高周波パルス電圧に変換する共振部とを備え、共振部は、LC共振回路とこのLC共振回路の電流方向を切り替える双方向スイッチとを備える。本発明の多レベル直流パルス電源の制御方法は、この多レベル直流パルス電源の多レベルの直流電圧の選択的な切り替え、及びLC共振回路の電流方向を切り替えを制御し、多レベルの高周波パルス電圧を出力する。
【0031】
本発明の制御方法は、
(a)直流電源部が出力する直流電圧の電圧レベルを切り替える第1の切り替え動作の制御と、
(b)双方向スイッチを切り替える第2の切り替え動作の制御と
を備える。そして、
(c)第1の切り替え動作の制御は、LC共振回路に印加する直流電圧の電圧レベルを切り替える動作の制御である。
(d)第2の切り替え動作は、LC共振回路の出力コンデンサに直流電圧を供給する供給動作と、出力コンデンサに蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作とを切り替える動作の制御である。
(e)第1の切り替え動作時点は、第2の切り替え動作の回生動作時点と供給動作時点との間である。
【0032】
本発明の制御方法は、直流電源部の切り替え動作及びLC共振回路の切り替え動作を、制御信号を用いて制御する。
【0033】
LC共振回路に印加する直流電圧の電圧レベルを切り替える第1の切り替え動作は、電圧切替信号によって電圧レベルが異なる直流電源を選択的に切り替える動作、あるいは直流電源部が生成する直流電源の電圧レベルを選択的に切り替える動作である。
LC共振回路の供給動作と回生動作を切り替える第2の切り替え動作は、供給動作の供給切替信号によって双方向スイッチの導通方向を負荷側方向に切り替え、回生動作の回生切替信号によって双方向スイッチの導通方向を電源側方向に切り替える動作である。
【0034】
第1の切り替え動作の電圧切替信号の設定時点は、第2の切り替え動作において回生切替信号からLC共振回路の時定数の時間が経過した時点と、その後の供給切替信号の立ち上がり時点との間の期間内に設定される。この第2の切り替え動作での期間内において第1の切り替え動作の電圧切替信号を設定することにより、直流電源の切り替え時における電圧レベルに起因するLC共振回路の誤動作を解消する。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、直流電源の直流電圧の電圧レベルを選択して多レベル(マルチレベル)の直流パルス電圧を出力する場合に、直流電源の切り替え時における電圧レベルに起因するLC共振回路の誤動作を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の多レベル直流パルス電源の第1構成例の概略図である。
【
図2】多レベル直流パルス電源の正常に制御されている時の各部信号、及び電圧波形を示す図である。
【
図3】電源コンデンサの電圧Vcが電圧レベルV1から電圧レベルV2に切り替わる時の各部信号、電圧波形を示す図である。
【
図4】電源コンデンサの電圧Vcが電圧レベルV1から電圧レベルV2に切り替わる時の各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図5】
図3の各時点t1~t7での動作状態を示す図である。
【
図6】電源コンデンサの電圧Vcが電圧レベルV2から電圧レベルV1に切り替わる時の各部信号、電圧波形の一部を示す図である。
【
図7】電源コンデンサの電圧Vcが電圧レベルV2から電圧レベルV1に切り替わる時の各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図8】
図6の各時点t11~t17での動作状態を示す図である。
【
図9】制御部の第1の構成例を説明するための図である。
【
図10】制御部の第1の構成例の動作例を説明するための図である。
【
図11】制御部の第2、3の構成例を説明するための図である。
【
図12】制御部の第2の構成例の動作例を説明するための図である。
【
図13】制御部の第3の構成例の動作例を説明するための図である。
【
図14】誤制御時の各部信号、及び電圧波形を説明するための図である。
【
図15】電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の誤制御の態様における各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図16】電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の誤制御の態様における動作状態を説明するための図である。
【
図17】電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の誤制御の態様における各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図18】電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の誤制御の態様における動作状態を説明するための図である。
【
図19】電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の誤制御の態様における各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図20】電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の誤制御の態様における動作状態を説明するための図である。
【
図21】電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の誤制御の態様における各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図22】電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の誤制御の態様における動作状態を説明するための図である。
【
図23】電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様における各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図24】電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様における動作状態を説明するための図である。
【
図25】電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様における各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図26】電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様における動作状態を説明するための図である。
【
図27】電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様における各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図28】電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様における動作状態を説明するための図である。
【
図29】電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様における各部信号、電圧波形の要部を示す図である。
【
図30】電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様における動作状態を説明するための図である。
【
図31】多レベル直流パルス電源の第2構成例を示す図である。
【
図32】多レベル直流パルス電源の第3構成例を示す図である。
【
図33】多レベル直流パルス電源の第4構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(1)多レベル直流パルス電源の第1構成例、及び各部信号、電圧波形
図1は本発明の多レベル直流パルス電源1の第1構成例の概略図である。
本発明の多レベル直流パルス電源1は、直流のパルス電圧を負荷5に供給する電源装置である。負荷5は例えばプラズマ負荷のような容量負荷であり、
図1では負荷容量CEのコンデンサ51で表している。負荷5がプラズマ負荷の場合には、多レベル直流パルス電源1は負の直流パルス電圧を供給する。
【0038】
多レベル直流パルス電源1は、直流電源部2、共振部3、及び制御部4を備え、直列接続された直流電源部2と共振部3は、直流パルス電圧を生成し負荷5に供給する。
【0039】
直流電源部2は、多レベルの直流電圧を選択的に切り替えて出力する電源部である。
図1では、電圧レベルが異なる2つの直流電源として、電圧レベルがV1の直流電源21と、電圧レベルがV2の直流電源22を備え、スイッチング素子SW2によって2つの直流電源21,22の直流電圧を選択的に出力する。スイッチング素子SW2は、電圧切替信号QH,QLにより切り替えを行う。電圧切替信号QHによる切り替えによって直流電源21の電圧V1が出力され、電圧切替信号QLによる切り替えによって直流電源22の電圧V2が出力される。
【0040】
なお、
図1では選択的に出力される電圧レベルがV1とV2の2つの電圧レベルの例を示しているが、本発明の直流電源部2が出力する電圧レベルは、2つの電圧レベルに限らず3以上の電圧レベルとしても良い。電圧レベルを3以上とする場合には、各電圧レベルの直流電源を備え、これらの直流電源をスイッチング素子SW2によって切り替えることによって選択的に出力する。
【0041】
また、直流電源部2の他の構成として、1つの直流電源の電圧から複数の電圧レベルの電圧を生成する構成としてもよい。複数の電圧レベルの電圧を生成する構成は、分圧回路や昇圧回路等の任意の回路構成を適用して構成することができる。
【0042】
共振部3は、直流電源部2の直流電圧を高周波パルス電圧に変換し、変換した高周波パルス電圧を負荷5に供給する。共振部3は、LC共振回路RESとこのLC共振回路RESの電流方向を切り替える双方向スイッチSW1とを備える。
【0043】
図1に示されるLC共振回路RESは、π型LC回路の構成例を示している。
LC共振回路RESは、直流電源部2に並列接続された電源コンデンサ31、出力端に並列接続された出力コンデンサ32、及び電源コンデンサ31と出力コンデンサ32との間に直列接続されたリアクトル33により構成されるπ型LC回路である。ここでは、電源コンデンサ31の容量をC1で表し、出力コンデンサ32の容量をC2で表している。
【0044】
このπ型LC回路において、電源コンデンサ31には直流電源部2から供給された直流電圧の電圧V1、V2により静電エネルギーが蓄電される。電源コンデンサ31に蓄電された静電エネルギーは、共振動作によりリアクトル33を介して出力コンデンサ32との間で入れ替わりが行われる。
【0045】
双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1によってオン/オフが制御されるスイッチング素子とダイオードD1の直列回路、及び回生切替信号QP2によってオン/オフが制御されるスイッチング素子とダイオードD2の直列回路が並列接続された構成であり、電源コンデンサ31とリアクトル33との間に接続される。
【0046】
ダイオードD1は、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31に向かう方向を順方向として接続され、ダイオードD2は電源コンデンサ31から出力コンデンサ32に向かう方向を順方向として接続される。
図1に示す回路では、直流電源21、22は正電圧側を接地して共振部3に対して負電圧を供給し、負荷5に負電圧を印加する構成を示している。この負電圧を供給する構成では、共振部3の共振動作において、双方向スイッチSW1は供給切替信号QP1によるオン動作によってダイオードD1を介して電流が流れ、電源コンデンサ31から出力コンデンサ32への充電電流による供給動作が行われ、回生切替信号QP2によるオン動作によってダイオードD2を介して電流が流れ、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流による回生動作が行われる。
【0047】
制御部4は、直流電源部2の切り替え動作、及び共振部3の切り替え動作を制御する。制御部4は、直流電源部2のスイッチング素子SW2の切り替え動作を制御する電圧切替信号QH,QLをスイッチング素子SW2に出力する。電圧切替信号QHは、スイッチング素子SW2の切り替え動作によって直流電源21と直流電源部2出力端との間を接続し、電圧レベルがV1の直流電圧を出力する。電圧切替信号QLは、スイッチング素子SW2の切り替え動作によって直流電源22と直流電源部2出力端との間を接続し、電圧レベルV2の直流電圧を出力する。
【0048】
制御部4は、共振部3の双方向スイッチSW1の切り替え動作を制御する供給切替信号QP1、回生切替信号QP2を双方向スイッチSW1に出力する。供給切替信号QP1は、双方向スイッチSW1のダイオードD1が接続されたスイッチング素子のオン/オフを制御して、電源コンデンサ31から出力コンデンサ32へ充電電流を流して供給動作を行わせる。回生切替信号QP2は、双方向スイッチSW1のダイオードD2が接続されたスイッチング素子のオン/オフを制御して、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31へ回生電流を流して回生動作を行わせる。
【0049】
双方向スイッチSW1の切り替え動作により切り替わる供給動作時及び回生動作時において、電源コンデンサ31の電圧Vcは、スイッチング素子SW2の切り替え動作により切り替えられ、直流電源21の直流電圧の電圧V1あるいは直流電源22の直流電圧の電圧V2となる。
【0050】
(2)正常制御時における各部信号、電圧波形、及び動作例
制御部4の制御が正常に行われるときの各部の信号、電圧波形、及びそのときの動作例について
図2~
図8を用いて説明する。
【0051】
(2a)正常制御時の各部信号、電圧波形
図2は、多レベル直流パルス電源が正常に制御されている時の各部信号、及び電圧波形を示している。
【0052】
図2(a)は、電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧波形を示し、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V1と電圧V2との電圧レベル間で交互に時間間隔Tvcで周期変化する電圧波形の例を示している。この間隔Tvcは、多レベル直流パルス電源1が出力する高周波パルスの電圧波高値が変化する周期間隔となる。
【0053】
図2(b)は、電圧切替信号QHの信号波形を示し、スイッチング素子SW2の直流電源21に接続される側をオン状態に切り替え、負電圧で直流高電圧の電圧V1を共振部3に供給し、電源コンデンサ31を電圧V1に充電する。
図2(c)は、電圧切替信号QLの信号波形を示し、スイッチング素子SW2の直流電源22に接続される側をオン状態に切り替え、負電圧で直流低電圧の電圧V2を共振部3に供給し、電源コンデンサ31を電圧V2に充電する。
【0054】
図2(d)は、供給切替信号QP1の信号波形を示し、双方向スイッチSW1のダイオードD1が接続される側をオン状態に切り替え、電源コンデンサ31をリアクトル33を介して出力コンデンサ32に接続してπ型LC共振回路を構成する。この接続によるπ型LC共振回路では、ダイオードD1は出力コンデンサ32から電源コンデンサ31に向かう方向が順方向であるため、電源コンデンサ31の電圧Vcの負電圧が出力コンデンサ32に印加される供給動作となる。
図2(e)は、回生切替信号QP2の信号波形を示し、双方向スイッチSW1のダイオードD2が接続される側をオン状態に切り替え、電源コンデンサ31をリアクトル33を介して出力コンデンサ32に接続してπ型LC共振回路を構成する。この接続によるπ型LC共振回路では、ダイオードD2は電源コンデンサ31からに出力コンデンサ32向かう方向が順方向であるため、出力コンデンサ32の電圧が電源コンデンサ31に戻される回生動作となる。
【0055】
図2(f)は、多レベル直流パルス電源1の出力電圧Voutの電圧波形を示している。
出力コンデンサ32には、供給切替信号QP1の供給動作によって負電圧が発生し、回生切替信号QP2の回生動作によって零電圧が発生する。
【0056】
多レベル直流パルス電源の共振部3の出力端の出力電圧Voutは出力コンデンサ32の電圧であり、供給切替信号QP1による供給動作で生じる負電圧と回生切替信号QP2による回生動作で生じる零電圧との間を共振部3による共振動作によって周期的に変化する高周波パルス電圧となる。この高周波パルス電圧の負電圧の電圧値は電圧V1,V2であり、この電圧レベルV1,V2は直流電源部2の切り替え動作に応じて変化する。
【0057】
(2b)電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の態様
電圧レベルV1から電圧レベルV2への切り替え時の態様を
図3~
図5を用いて説明する。
図3は、電源コンデンサ31の電圧Vcが電圧レベルV1から電圧レベルV2に切り替わる時の各部信号、電圧波形の一部を示している。ここでは、電圧レベルV1及び電圧レベルV2が共に負電圧であり、電圧レベルV2は電圧レベルV1よりも負の電圧レベルが小さい場合を示している。
【0058】
図3(a)は、電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧波形を示し、電圧Vcが電圧V1から電圧V2に切り替わる状態を示し、
図3(b),(c)は、電源コンデンサ31の電圧Vcを切り替えるための電圧切替信号QH、及び電圧切替信号QLの各信号波形を示している。時点tC1において、電圧切替信号QHがHighレベルからLowレベルに切り替わることにより直流電源21の電圧V1の供給が停止し、電圧切替信号QLがLowレベルからHighレベルに切り替わることにより直流電源22の電圧レベルV2の供給が開始する。スイッチング素子SW2が時点tC1で切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧Vcは直流電圧V1から直流電圧V2に切り替わる。
【0059】
図3(d)は、供給切替信号QP1の信号波形を示し、双方向スイッチSW1のダイオードD1が接続される側をオン状態に切り替える。供給切替信号QP1は、時点t1と時点t2の間、時点t5と時点t6の間において双方向スイッチSW1のダイオードD1側に接続されるスイッチング素子をオン状態として、出力コンデンサ32への供給動作が行われる。ダイオードD1は、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31に向かう電流方向を順方向としている。
【0060】
図3(e)は、回生切替信号QP2の信号波形を示し、双方向スイッチSW1のダイオードD2が接続される側をオン状態に切り替える。回生切替信号QP2は、時点t3と時点t4の間、時点t7と時点t8の間において、双方向スイッチSW1のダイオードD2側に接続されるスイッチング素子をオン状態として、出力コンデンサ32からの回生動作が行われる。ダイオードD2は、電源コンデンサ31から出力コンデンサ32に向かう電流方向を順方向としている。
【0061】
電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧V1から電圧V2への切り替え動作の時点tC1は、出力コンデンサ32に蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作の動作時点(t4)と、出力コンデンサ32に直流電圧を供給する供給動作の動作時点(t5)との間の期間T12内に設定される。
【0062】
図3(f)は、多レベル直流パルス電源1の出力電圧Voutの電圧波形を示している。スイッチング素子SW2が電圧V1から電圧V2への切り替わる前の時点では、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V1である。この電源コンデンサ31の電圧Vcが電圧V1である時、出力コンデンサ32の電圧は、供給切替信号QP1の供給動作の時点t2で負電圧の電圧(2×V1)となり、回生切替信号QP2の回生動作の時点t3で零電圧となる。これにより、時点t2と時点t3との間において、電圧(2×V1)の電圧Vcが出力電圧Voutとして出力される。
【0063】
スイッチング素子SW2によって直流電源部2の出力電圧Voutが電圧V1から電圧V2への切り替わった後の時点では、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V2である。この電源コンデンサ31の電圧Vcが電圧V2である時、出力電圧Voutは、供給切替信号QP1の供給動作の時点t6で負電圧の電圧(2×V2)となり、回生切替信号QP2の回生動作の時点t7で零電圧となる。これにより、時点t6と時点t7との間において電圧(2×V2)の電圧Vcが出力電圧Voutとして出力される。なお、出力コンデンサ32の電圧Vcは、共振動作によって電源コンデンサ31の電圧の2倍となる。
【0064】
以下、電源電圧の切り替え時点の設定について
図4,
図5を用いて説明する。
本発明の多レベル直流パルス電源は、直流電源の切り替え時における電圧レベルに起因するLC共振回路の誤動作を抑制するために、直流電源部の第1の切り替え動作で行う電源電圧の切り替えの時点を、共振部の第2の切り替え動作での回生動作の時点と供給動作の時点との関係において、回生動作の時点と供給動作の時点の間の期間内とする。より詳細には、前記期間は、第2の切り替え動作において回生切替信号が入力してからLC共振回路の時定数の時間が経過した時点と、その後に入力される供給切替信号の立ち上がり時点との間の期間である。
【0065】
図4は、電源コンデンサ31の電圧Vcが電圧V1からV2に切り替わる時の各部信号、電圧波形の要部を示し、
図3で示したt1,t2,t7,t8の各時点については省略し、t3~t6の時点について示している。
図4は、第2の切り替え動作を制御する供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2の信号状態によって区分される各区間A~Eにおける各信号状態と出力電圧Voutを示している。
【0066】
区間Aでは、電圧切替信号QH、QLがそれぞれHighレベルとLowレベルである状態であることから(
図4(b),
図4(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V1である(
図4(a))。また、回生切替信号QP2及び供給切替信号QP1が共にLowレベルであり、双方向スイッチSW1はオフの状態にあり(
図4(d),
図4(e))、出力電圧Voutは前回の供給動作によって電圧(2×V1)である(
図4(f))。
【0067】
区間Bでは、区間Aと同様に、電圧切替信号QH、QLはそれぞれHighレベルとLowレベルの状態であり(
図4(b),
図4(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V1である(
図4(a))。一方、供給切替信号QP1はLowレベルのままであるが、回生切替信号QP2は時点t3でLowレベルの状態から立ち上がってHighレベルの状態に切り替わって回生動作の状態となり(
図4(d),
図4(e))、出力電圧Voutは回生動作によって電圧(2×V1)から零電圧に向かって時定数Trで上昇する(
図4(f))。
【0068】
区間Cでは、時点tC1において、電圧切替信号QHはHighレベルからLowレベルに切り替わり、電圧切替信号QLはLowレベルからHighレベルに切り替わることから(
図4(b),
図4(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは時点tC1において電圧V1から電圧V2に切り替わる(
図4(a))。
【0069】
回生切替信号QP2は、区間Bと区間Cとの間の切り替わり時点である時点t4でHighレベルからLowレベルに切り替わっているため、回生切替信号QP2及び供給切替信号QP1は共にLowレベルとなり、双方向スイッチSW1はオフの状態にある(
図4(d),
図4(e))。出力電圧Voutは区間Bの零電圧に保持される(
図4(f))。
【0070】
区間Dでは、区間Cの時点tC1で行われた電圧切替によって電圧切替信号QH、QLは、それぞれLowレベルとHighレベルの状態であり(
図4(b),
図4(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V2である(
図4(a))。一方、回生切替信号QP2はLowレベルのままであるが、供給切替信号QP1は、時点t5でLowレベルの状態から立ち上がってHighレベルの状態に切り替わって供給動作の状態となり(
図4(d),
図4(e))、出力電圧Voutは供給動作によって零電圧から電圧(2×V2)に向かって時定数Trで下降する(
図4(f))。
【0071】
区間Eでは、区間Dと同様に、電圧切替信号QH、QLはそれぞれLowレベルとHighレベルの状態であり(
図4(b),
図4(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V2である(
図4(a))。一方、供給切替信号QP1は、区間Dと区間Eとの間の切り替わり時点である時点t6でHighレベルからLowレベルに切り替わっているため、回生切替信号QP2及び供給切替信号QP1は共にLowレベルであり、双方向スイッチSW1はオフの状態にある(
図4(d),
図4(e))。出力電圧Voutは、区間Dの電圧(2×V2)に保持される(
図4(f))。
【0072】
図5は、
図3に示した各時点t1~t7での動作状態を示している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0073】
図5(a)は、時点t1における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源21の電圧V1によって充電された電圧V1である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって電源コンデンサ31から出力コンデンサ32への充電電流の供給が行われる。ここでは、電圧V1は負電圧であるため、リアクトル33を流れる電流方向は、出力コンデンサ32側から電源コンデンサ31側に向かう方向である。
【0074】
共振動作により、出力電圧Voutは、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VL(=2×V1-V1)を加算した電圧(V1+VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧V1となるため、出力電圧Voutは電圧(2×V1)となる。出力コンデンサ32は電圧(2×V1)に充電される。
【0075】
図5(b)は、時点t2における保持時の動作状態を示している。
双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V1)に保持される。
【0076】
図5(c)は、時点t3における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、電圧V1は負電圧であるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0077】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V1-VL)となる。インダクタ電圧VLは、電圧(2×V1-V1)となるため、出力電圧Voutは、電圧(V1-(2×V1-V1)=0)となる。出力コンデンサ32は、電圧(2×V1)から零電圧に放電される。
【0078】
図5(d)は、時点t4における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることからオフ状態となり、共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧Voutも零電圧に保持される。
【0079】
図5(e)は、時点tC1において直流電圧を電圧レベルV1から電圧レベルV2に切り替えた状態を示している。ここで、電圧レベルV1及び電圧レベルV2は共に負電圧であり、電圧レベルV2は電圧レベルV1よりも、負方向において電圧レベルが小さい場合を示している。時点tC1では、双方向スイッチSW1はオフ状態であり共振動作は停止した状態にあり、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧Voutも零電圧に保持されている。
【0080】
図5(f)は、時点t5における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源22の電圧レベルV2によって充電された電圧V2である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によってダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって電源コンデンサ31から出力コンデンサ32への充電電流の供給が行われる。
【0081】
共振動作により、出力電圧Voutは、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V2とリアクトル33のインダクタ電圧VL(=2×V2-V2)を加算した電圧(V2+VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧V2となるため、出力電圧Voutは電圧(2×V2)となる。出力コンデンサ32は電圧(2×V2)に充電される。
【0082】
図5(g)は、時点t6における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることからオフ状態となり、共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V2)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V2)に保持される。
【0083】
図5(h)は、時点t7における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によってダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。
【0084】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V2とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V2-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V2-V2)となるため、出力電圧Voutは零電圧(=(V2-(2×V2-V2)))となる。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V2)から零電圧に向かって放電される。
【0085】
(2c)電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の態様
電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の態様を
図6~
図8を用いて説明する。
図6は、電源コンデンサ31の電圧Vcが電圧レベルV2から電圧レベルV1に切り替わる時の各部信号、電圧波形の一部を示している。ここでは、電圧レベルV1及び電圧レベルV2が共に負電圧であり、電圧レベルV2は、電圧レベルV1よりも負の電圧レベルが小さい場合を示している。
【0086】
図6(a)は、電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧波形を示し、電圧Vcは、直流電圧V2から直流電圧V1に切り替わる状態を示し、
図6(b),(c)は、電源コンデンサ31の電圧Vcを切り替えるための電圧切替信号QH、及び電圧切替信号QLの各信号波形を示している。時点tC2において、電圧切替信号QHがLowレベルからHighレベルに切り替わることにより、直流電源21の電圧V1の供給が開始し、電圧切替信号QLがHighレベルからLowレベルに切り替わることにより、直流電源22の電圧レベルV2の供給が停止する。スイッチング素子SW2が時点tC2で切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V2から電圧V1に切り替わる。
【0087】
図6(d)は、供給切替信号QP1の信号波形を示し、双方向スイッチSW1のダイオードD1が接続される側をオン状態に切り替える。供給切替信号QP1は、時点t11と時点t12の間、時点t15と時点t16の間において、双方向スイッチSW1のダイオードD1側に接続されるスイッチング素子をオン状態として、出力コンデンサ32への供給動作が行われる。ダイオードD1は、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31に向かう電流方向を順方向としている。
【0088】
図6(e)は、回生切替信号QP2の信号波形を示し、双方向スイッチSW1のダイオードD2が接続される側をオン状態に切り替える。回生切替信号QP2は、時点t13と時点t14の間、時点t17と時点t18の間において、双方向スイッチSW1のダイオードD2側に接続されるスイッチング素子をオン状態として、出力コンデンサ32からの回生動作が行われる。ダイオードD2は、電源コンデンサ31から出力コンデンサ32に向かう電流方向を順方向としている。
【0089】
電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧V2から電圧V1への切り替え動作の時点tC2は、出力コンデンサ32に蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作の時点t14と、出力コンデンサ32に直流電圧を供給する供給動作の時点t15との間の期間T21内に設定される。
【0090】
図6(f)は、多レベル直流パルス電源1の出力電圧Voutの電圧波形を示している。スイッチング素子SW2が電圧V2から電圧V1への切り替わる前の時点では、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V2である。この電源コンデンサ31の電圧Vcが電圧V2である時、出力電圧Voutは供給切替信号QP1の供給動作の時点t12で負電圧の電圧(2×V2)となり、回生切替信号QP2の回生動作の時点t13で零電圧となる。これにより、時点t12と時点t13との間において電圧(2×V2)の電圧Vcが出力電圧Voutとして出力される。
【0091】
スイッチング素子SW2によって直流電源部2の出力電圧Voutが電圧V2から電圧V1への切り替わった後の時点では、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V1である。この電源コンデンサ31の電圧Vcが電圧V1である時、出力電圧Voutは、供給切替信号QP1の供給動作の時点t16で負電圧の電圧(2×V2)となり、回生切替信号QP2の回生動作の時点t17で零電圧となる。これにより、時点t16と時点t17との間において電圧(2×V1)が、出力電圧Voutとして出力される。なお、出力コンデンサ32の電圧は、共振動作によって電源コンデンサ31の電圧Vcの2倍となる。
【0092】
以下、電源電圧の切り替え時点の設定について
図7,
図8を用いて説明する。
図7は、電源コンデンサ31の電圧Vcが電圧V2から電圧V1に切り替わる時の各部信号、電圧波形の要部を示し、
図6で示したt11,t12,t17,t18の各時点については省略し、t13~t16の時点について示している。
図7は、第2の切り替え動作を制御する供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2の信号状態によって区分される各区間1A~1Eにおける各信号状態と出力電圧Voutを示している。
【0093】
区間1Aでは、電圧切替信号QH、QLがそれぞれLowレベルとHighレベルである状態であることから(
図7(b),
図7(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V2である(
図7(a))。また、回生切替信号QP2及び供給切替信号QP1が共にLowレベルであり、双方向スイッチSW1はオフの状態にあり(
図7(d),
図7(e))、出力電圧Voutは前回の供給動作によって電圧(2×V2)である(
図7(f))。
【0094】
区間1Bでは、区間1Aと同様に、電圧切替信号QH、QLはそれぞれLowレベルとHighレベルの状態であり(
図7(b),
図7(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧V2である(
図7(a))。一方、供給切替信号QP1はLowレベルのままであるが、回生切替信号QP2は時点t13でLowレベルの状態から立ち上がってHighレベルの状態に切り替わって回生動作の状態となり(
図7(d),
図7(e))、出力電圧Voutは、回生動作によって電圧(2×V2)から零電圧に向かって時定数Trで上昇する(
図7(f))。
【0095】
区間1Cでは、時点tC2において、電圧切替信号QHはLowレベルからHighレベルに切り替わり、電圧切替信号QLはHighレベルからLowレベルに切り替わることから(
図7(b),
図7(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは、時点tC2において電圧V2から電圧V1に切り替わる(
図7(a))。回生切替信号QP2は、区間1Bと区間1Cとの切り替わり時点である時点t14でHighレベルからLowレベルに切り替わっているため、回生切替信号QP2及び供給切替信号QP1は共にLowレベルとなり、双方向スイッチSW1はオフの状態にある(
図7(d),
図7(e))。出力電圧Voutは区間1Bの零電圧に保持される(
図7(f))。
【0096】
区間1Dでは、区間1Cの時点tC2で行われた電圧切替によって、電圧切替信号QH、QLはそれぞれHighレベルとLowレベルの状態であり(
図7(b),
図7(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧レベルV1である(
図7(a))。一方、回生切替信号QP2はLowレベルのままであるが、供給切替信号QP1は、時点t15でLowレベルの状態から立ち上がってHighレベルの状態に切り替わって供給動作の状態となり(
図7(d),
図7(e))、出力電圧Voutは、供給動作によって零電圧から電圧(2×V1)に向かって時定数Trで下降する(
図7(f))。
【0097】
区間1Eでは、区間1Dと同様に、電圧切替信号QH、QLはそれぞれHighレベルとLowレベルの状態であり(
図7(b),
図7(c))、電源コンデンサ31の電圧Vcは電圧レベルV1である(
図7(a))。一方、供給切替信号QP1は、区間1Dと区間1Eとの切り替わり時点である時点t16でHighレベルからLowレベルに切り替わっているため、回生切替信号QP2及び供給切替信号QP1は共にLowレベルであり双方向スイッチSW1はオフの状態にある(
図7(d),
図7(e))。出力電圧Voutは区間1Dの電圧(2×V1)に保持される(
図7(f))。
【0098】
図8は、
図6に示した各時点t11~t17での動作状態を示している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0099】
図8(a)は、時点t11における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源22の電圧レベルV2によって充電された電圧V2である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によってダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって電源コンデンサ31から出力コンデンサ32への充電電流の供給が行われる。ここでは、電圧V2は負電圧であるため、リアクトル33を流れる電流方向は、出力コンデンサ32側から電源コンデンサ31側に向かう方向である。
【0100】
共振動作により、出力電圧Voutは、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V2とリアクトル33のインダクタ電圧VL(=2×V2-V2)を加算した電圧(V2+VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧V2となるため、出力電圧Voutは電圧(2×V2)となる。出力コンデンサ32は電圧(2×V2)に充電される。
【0101】
図8(b)は、時点t12における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることからオフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V2)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V2)に保持される。
【0102】
図8(c)は、時点t13における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によってダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、電圧V1は負電圧であるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0103】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V2とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V2-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V2-V2)となるため、出力電圧Voutは電圧(V2-(2×V2-V2)=0)となる。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V2)から零電圧に向かって放電される。
【0104】
図8(d)は、時点t14における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることからオフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧Voutも零電圧に保持される。
【0105】
図8(e)は、時点tC2において直流電圧を電圧レベルV2から電圧レベルV1に切り替えた状態を示している。ここで、電圧レベルV1及び電圧レベルV2は共に負電圧であり、電圧レベルV2は、電圧レベルV1よりも負方向において電圧レベルが小さい場合を示している。時点tC2では、双方向スイッチSW1はオフ状態であり、共振動作は停止した状態にあり、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧Voutも零電圧に保持されている。
【0106】
図8(f)は、時点t15における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源21の電圧レベルV1によって充電された電圧V1である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって電源コンデンサ31から出力コンデンサ32への充電電流の供給が行われる。
【0107】
共振動作により、出力電圧Voutは、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VL(=2×V1-V1)を加算した電圧(V1+VL)となる。インダクタ電圧VLはV1となるため、出力電圧Voutは電圧(2×V1)となる。出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)に充電される。
【0108】
図8(g)は、時点t16における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることからオフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V1)に保持される。
【0109】
図8(h)は、時点t17における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。
【0110】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V1-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V1-V1)となるため、出力電圧Voutは電圧(V1-(2×V1-V1))=0となる。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V1)から零電圧に向けて放電される。
【0111】
(3)制御部の構成例及び制御例
制御部4の構成例、及び制御例について
図9~
図13を用いて説明する。以下に示す各構成例で示すブロックはQH信号、QL信号、供給切替信号QP1、及び回生切替信号QP2を生成するための機能ブロックを示している。これら機能ブロックは、それぞれの機能を行う回路により構成する他、FPGA等によってプログラム上で機能を実施する構成としてもよい。
【0112】
(3a)第1の構成例及び制御例
制御部4の第1の構成例及び制御例について
図9,
図10を用いて説明する。
図9において、第1の構成例の制御部4Aは、パルス信号生成部4a、QP1信号生成部4b、QP2信号生成部4c、遅延部4d、QH信号生成部4e、QL信号生成部4fを備える。
【0113】
パルス信号生成部4aは、図示しない外部装置あるいは内蔵装置からクロック信号を導入してパルス信号を生成する。
【0114】
QP1信号生成部4b及びQP2信号生成部4cは、パルス信号生成部4aで生成されたパルス信号を用いて、双方向スイッチSW1のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御する供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2を生成する。供給切替信号QP1は、共振回路の共振動作において供給動作を制御する制御信号であり、回生切替信号QP2は、共振回路の共振動作において回生動作を制御する制御信号である。供給切替信号QP1と回生切替信号QP2との時間間隔は、共振回路の共振周波数に対応している。
【0115】
また、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2の信号自体の時間幅は、共振回路の立ち上がり時間Tr及び立ち下がり時間Trに依存し、立ち上がり及び立ち下がりが十分に完了する時間内となるように設定される。なお、立ち上がり時間Tr及び立ち下がり時間Trは、共振回路の時定数に相当する時間幅に基づいて設定することができる。
【0116】
本発明では、電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧V1から電圧V2への切り替え動作の時点tC1は、出力コンデンサ32に蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作の時点t4と、出力コンデンサ32に直流電圧を供給する供給動作の時点t5との間の期間T12内に設定し、電源コンデンサ31の電圧Vcの直流電圧V2から直流電圧V1への切り替え動作の時点tC2は、出力コンデンサ32に蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作の時点t14と、出力コンデンサ32に直流電圧を供給する供給動作の時点t15との間の期間T21内に設定する。
【0117】
遅延部4dは、切り替え動作の時点tC1を、回生動作の動作時点と供給動作の動作時点との間の期間T12内に設定し、切り替え動作の時点tC2を、回生動作の動作時点と供給動作の動作時点との間の期間T21内に設定するために、回生動作の動作時点からの遅延時間を定める。遅延時間tdは図示しない外部装置、あるいは制御部4A内の記憶装置(図示していない)に格納しておいたデータを読み込むことで取得することができる。遅延時間tdは、切り替え動作の時点tC1の設定では期間T12の時間幅に設定し、切り替え動作の時点tC2の設定では期間T21の時間幅に設定する。
【0118】
遅延時間を生成する時点は、図示しない外部装置あるいは制御装置が別途生成するトリガ信号に基づいて行うことができる。遅延部4dはトリガ信号を受けると、トリガ信号を受けた時点の後に発生する回生切替信号QP2の時点を起点として遅延時間tdを設定し、遅延時間tdが経過した時点を切り替え動作の時点tC1として電圧切替信号QH、QLを生成する。
【0119】
QH信号生成部4e及びQL信号生成部4fは、遅延部4dからの信号を受けて電圧切替信号QH、QLを生成する。
【0120】
QH信号生成部4e及びQL信号生成部4fは、電圧切替前の電圧が電圧レベルV1である場合には、電圧切替信号QHをHighレベルからLowレベルに切り替えると共に、電圧切替信号QLをLowレベルからHighレベルに切り替え、直流電源部2のスイッチング素子SW2を切り替える。これにより、直流電源22の電圧レベルV2が出力される。
【0121】
一方、電圧切替前の電圧が電圧レベルV2である場合には、電圧切替信号QHをLowレベルからHighレベルに切り替えると共に、電圧切替信号QLをHighレベルからLowレベルに切り替え、直流電源部2のスイッチング素子SW2を切り替え、これにより、直流電源21の電圧レベルV1が出力される。
【0122】
図10は、
図9に示した第1の構成例による制御部の動作例を示すためのフローチャートである。パルス信号生成部4aは、クロック信号を受けて(S1)、パルス信号を生成する(S2)。QP1信号生成部4bは、パルス信号を供給切替信号QP1として出力する(S3)。QP2信号生成部4cは、パルス信号生成部4aから入力する次のパルス信号を回生切替信号QP2として出力する(S4)。
【0123】
遅延部4dは、トリガ信号を受信したかどうかを判別し(S5)、トリガ信号を受信していないと判別された場合は、S5を繰り返す。一方、トリガ信号を受信したと判別した場合は、QP2信号生成部4cからの回生切替信号QP2を所定の遅延時間tdだけ遅延させる(S6)。QH信号生成部4e及びQL信号生成部4fは、遅延部4dで遅延された信号に基づいて電圧切替信号QH、QLを生成する(S7)。
【0124】
(3b)第2の構成例及び制御例
制御部の第2の構成例は、電圧レベルが変化する時点と、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が発生する時点とを比較し、電圧レベルが変化する時点が、回生切替信号QP2と供給切替信号QP1との間の期間内に有るか否かを判定し、電圧レベルが変化する時点が、期間外であるときには、電圧レベルが変化する時点を遅延させる。これにより、電圧レベルが変化する時点が、回生切替信号QP2と供給切替信号QP1との間の期間内となるように制御する。
【0125】
制御部4の第2の構成例及び制御例について
図11(a),
図12を用いて説明する。
第2の構成例の制御部4Bは、パルス信号生成部4a、QP1信号生成部4b、QP2信号生成部4c、遅延部4d、QH信号生成部4e、QL信号生成部4f、立ち上がり検出部4g、立ち下がり検出部4h、及び期間判定部4iを備える。
【0126】
パルス信号生成部4aは、図示しない外部装置あるいは内蔵装置からクロック信号を導入してパルス信号を生成し、QP1信号生成部4b及びQP2信号生成部4cにパルス信号を出力する。
【0127】
QP1信号生成部4b及びQP2信号生成部4cは、パルス信号生成部4aで生成されたパルス信号を用いて、双方向スイッチSW1のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御する供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2を生成する。供給切替信号QP1は、共振回路の共振動作において供給動作を制御する制御信号であり、回生切替信号QP2は、共振回路の共振動作において回生動作を制御する制御信号である。供給切替信号QP1と回生切替信号QP2との時間間隔は、共振回路の共振周波数に対応している。
【0128】
また、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2の信号自体の時間幅は、共振回路の立ち上がり時間Tr及び立ち下がり時間Trに依存し立ち上がり及び立ち下がりが十分に完了する時間内となるように設定される。
【0129】
電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧V1から電圧V2への切り替え動作の時点tC1は、出力コンデンサ32に蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作の時点t4と、出力コンデンサ32に直流電圧を供給する供給動作の時点t5との間の期間T12内に設定し、電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧V2から電圧V1への切り替え動作の時点tC2は、出力コンデンサ32に蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作の時点t14と、出力コンデンサ32に直流電圧を供給する供給動作の時点t15との間の期間T21内に設定する。
【0130】
遅延部4dは、切り替え動作の時点tC1を回生動作の動作時点と供給動作の動作時点との間の期間T12内とし、切り替え動作の時点tC2を回生動作の動作時点と供給動作の動作時点との間の期間T21内とするために、回生動作の動作時点からの所定の遅延時間を定める。遅延時間tdは図示しない外部装置、あるいは制御部4B内の記憶装置(図示していない)に格納しておいたデータを読み込むことで取得することができる。遅延時間tdは、切り替え動作の時点tC1の設定では、期間T12の時間幅内となるように設定され、切り替え動作の時点tC2の設定では、期間T21の時間幅内となるように設定される。
【0131】
遅延部4dは、電圧レベルが変化する時点が供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が発生する時点と間の期間外にあるときに遅延時間を生成し、電圧レベルが変化する時点を所定の遅延時間だけ遅延させる。電圧レベルが変化する時点を遅延させることにより、電圧レベルの変化時点を回生切替信号QP2が発生する時点と供給切替信号QP1が発生する時点の間の期間内に制御する。
【0132】
立ち上がり検出部4g、立ち下がり検出部4hは、遅延部4dで遅延された電圧レベルの信号を入力し、その信号の立ち上がり時点及び立ち下がり時点を検出する。
【0133】
QH信号生成部4eは、立ち下がり検出部4hからの信号を受けて電圧切替信号QHを生成する。QL信号生成部4fは、立ち上がり検出部4gからの信号を受けて電圧切替信号QLを生成する。
【0134】
電圧切替前の電圧が電圧レベルV1である場合には、電圧切替信号QHをHighレベルからLowレベルに切り替えると共に、電圧切替信号QLをLowレベルからHighレベルに切り替え、直流電源部2のスイッチング素子SW2を切り替える。これにより、直流電源22の電圧レベルV2が出力される。
【0135】
一方、電圧切替前の電圧が電圧レベルV2である場合には、電圧切替信号QHをLowレベルからHighレベルに切り替えると共に、電圧切替信号QLをHighレベルからLowレベルに切り替え、直流電源部2のスイッチング素子SW2を切り替え、これにより、直流電源21の電圧レベルV1が出力される。
【0136】
期間判定部4iは、QP1信号生成部4bの供給切替信号QP1と、QP2信号生成部4cの回生切替信号QP2と、立ち上がり検出部4gの検出信号と、立ち下がり検出部4hの検出信号とを入力する。
【0137】
期間判定部4iにおいて、立ち上がり検出部4gの検出信号と立ち下がり検出部4hの検出信号の両方の信号、あるいは何れか一方の信号によって電圧レベルの変化時点を検出し、回生切替信号QP2と供給切替信号QP1との間の時間間隔内において電圧レベルを変化させるに適した期間を求め、電圧レベルの変化時点がこの期間内にあるか否かを判定する。
【0138】
電圧レベルの変化時点が期間内にあると判定したときには、QH信号生成部4eから電圧切替信号QHを出力させ、QL信号生成部4fから電圧切替信号QLを出力させる。一方、電圧レベルの変化時点が期間外にあると判定したときには、遅延部4dで電圧レベルの信号を遅延させる。
【0139】
図12は、
図11(a)に示した第2の構成例による制御例を示すためのフローチャートである。S11~S14は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2を生成する工程であり、S15~S19が、電圧レベルの変化時点を検出する工程であり、S20~S22は、電圧レベルの変化時点が所定期間内であるか否かを判定し、判定結果に基づいて必要に応じて電圧レベルの信号を遅延させて、電圧切替信号QH、QLを生成する工程である。
【0140】
パルス信号生成部4aは、クロック信号を受け(S11)、パルス信号を生成する(S12)。QP1信号生成部4bは、パルス信号を供給切替信号QP1として出力する(S13)。QP2信号生成部4cは、パルス信号生成部4aから入力する次のパルス信号を回生切替信号QP2として出力する(S14)。
【0141】
遅延部4dは、電圧レベルの信号を入力する(S15)。立ち上がり検出部4gは、電圧レベルの信号が立ち上がる時点を検出し(S16)、立ち上がり信号Supを生成する(S17)。立ち下がり検出部4hは、電圧レベルの信号が立ち下がる時点を検出し(S18)、立ち下がり信号Sdownを生成する(S19)。
【0142】
期間判定部4iは、供給切替信号QP1、回生切替信号QP2、立ち上がり信号Sup、及び立ち下がり信号Sdownを入力し、回生切替信号QP2と供給切替信号QP1との間の期間内に立ち上がり信号Sup、立ち下がり信号Sdownが有るか否かを判定する(S20)。
【0143】
立ち上がり信号Sup、及び立ち下がり信号Sdownが期間内にあるときには、QH信号生成部4eが、立ち上がり信号Supに基づいて電圧切替信号QHを生成し、QL信号生成部4fが、立ち下がり信号Sdownに基づいて電圧切替信号QLを生成する(S21)。立ち上がり信号Sup、及び立ち下がり信号Sdownが期間外にあるときには、遅延部4dは、電圧レベルの信号を所定の遅延時間だけ遅延させる(S22)。
【0144】
S22の後、立ち上がり信号Sup、及び立ち下がり信号Sdownが期間内となるまで、S16~S20の工程を繰り返す。遅延部4dの遅延時間は、電圧レベルの信号のタイミングをずらすためであるため、任意に定めることができる。
【0145】
(3c)第3の構成例及び制御例
制御部4の第3の構成例及び制御例について
図11(b),
図13を用いて説明する。
【0146】
第2の構成例は、電圧レベルの信号を遅延させる構成であるのに対して、第3の構成例は、供給切替信号QP1、回生切替信号QP2を遅延させる構成である。第3の構成例は、電圧レベルが変化する時点と、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が発生する時点とを比較し、電圧レベルが変化する時点が回生切替信号QP2と供給切替信号QP1との間の期間内に有るか否かを判定し、電圧レベルが変化する時点が期間外であるときには、供給切替信号QP1、回生切替信号QP2を遅延させる。これにより、電圧レベルが変化する時点が、回生切替信号QP2と供給切替信号QP1との間の期間内となるように制御する。
【0147】
第3の構成例の制御部4Cは、パルス信号生成部4a、QP1信号生成部4b、QP2信号生成部4c、遅延部4d1、遅延部4d2、QH信号生成部4e、QL信号生成部4f、立ち上がり検出部4g、立ち下がり検出部4h、及び期間判定部4iを備える。
【0148】
パルス信号生成部4aは、図示しない外部装置あるいは内蔵装置からクロック信号を導入してパルス信号を生成し、QP1信号生成部4b及びQP2信号生成部4cにパルス信号を出力する。
【0149】
QP1信号生成部4b及びQP2信号生成部4cは、パルス信号生成部4aで生成されたパルス信号を用いて、双方向スイッチSW1のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御する供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2を生成する。供給切替信号QP1は、共振回路の共振動作において供給動作を制御する制御信号であり、回生切替信号QP2は、共振回路の共振動作において回生動作を制御する制御信号である。供給切替信号QP1と回生切替信号QP2との時間間隔は、共振回路の共振周波数に依存して定められる。
【0150】
また、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2の信号自体の時間幅は、共振回路の立ち上がり時間Tr及び立ち下がり時間Trに依存し立ち上がり及び立ち下がりが十分に完了する時間内となるように設定される。
【0151】
電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧V1から電圧V2への切り替え動作の時点tC1は、出力コンデンサ32に蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作の時点t4と、出力コンデンサ32に直流電圧を供給する供給動作の時点t5との間の期間T12内に設定し、電源コンデンサ31の電圧Vcの直流電圧V2から直流電圧V1への切り替え動作の時点tC2は、出力コンデンサ32に蓄積される静電エネルギーを回生する回生動作の時点t14と、出力コンデンサ32に直流電圧を供給する供給動作の時点t15との間の期間T21内に設定する。
【0152】
遅延部4d1,4d2は、切り替え動作の時点tC1を回生動作の動作時点と供給動作の動作時点との間の期間T12内に設定し、切り替え動作の時点tC2を回生動作の動作時点と供給動作の動作時点との間の期間T21内に設定するために、回生動作の動作時点からの遅延時間を定める。遅延時間tdは図示しない外部装置、あるいは制御部4C内の記憶装置(図示していない)に格納しておいたデータを読み込むことで取得することができる。遅延時間tdは、切り替え動作の時点tC1の設定では期間T12の時間幅に設定され、切り替え動作の時点tC2の設定では期間T21の時間幅に設定される。
【0153】
遅延部4d1は、電圧レベルが変化する時点が供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が発生する時点と間の期間外にあるときに遅延時間を生成し、電圧レベルが変化する時点が、供給切替信号QP1に対して所定時間だけ進んだ関係となるように供給切替信号QP1を遅延させる制御を行う。供給切替信号QP1の時点に対して電圧レベルの変化時点が所定時間だけ進んだ関係とすることにより、電圧レベルの変化時点を回生切替信号QP2が発生する時点と供給切替信号QP1が発生する時点との間の期間内に設定する。
【0154】
遅延部4d2は、電圧レベルが変化する時点が供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が発生する時点と間の期間外にあるときに遅延時間を生成し、電圧レベルが変化する時点が回生切替信号QP2に対して所定時間だけ遅れた関係となるように、回生切替信号QP2を進める制御を行う。回生切替信号QP2の時点に対して、電圧レベルの変化時点が所定時間だけ遅れた関係とすることにより、電圧レベルの変化時点を回生切替信号QP2が発生する時点と供給切替信号QP1が発生する時点の間の期間内に設定する。なお、遅延部4d2では、所定時間だけ進ませる制御は、一周期の遅れ分を含む遅延制御に相当するとして遅延の用語を用いている。
【0155】
立ち上がり検出部4g、立ち下がり検出部4hは、電圧レベルの信号を入力し、その信号の立ち上がり時点及び立ち下がり時点を検出する。
【0156】
QH信号生成部4eは、立ち上がり検出部4gからの信号を受けて電圧切替信号QHを生成する。QL信号生成部4fは、立ち下がり検出部4hからの信号を受けて電圧切替信号QLを生成する。
【0157】
電圧切替前の電圧が電圧レベルV1である場合には、電圧切替信号QHをHighレベルからLowレベルに切り替えると共に、電圧切替信号QLをLowレベルからHighレベルに切り替え、直流電源部2のスイッチング素子SW2を切り替える。これにより、直流電源22の電圧レベルV2が出力される。
【0158】
一方、電圧切替前の電圧が電圧レベルV2である場合には、電圧切替信号QHをLowレベルからHighレベルに切り替えると共に、電圧切替信号QLをHighレベルからLowレベルに切り替え、直流電源部2のスイッチング素子SW2を切り替え、これにより、直流電源21の電圧レベルV1が出力される。
【0159】
期間判定部4iは、QP1信号生成部4bの供給切替信号QP1と、QP2信号生成部4cの回生切替信号QP2と、立ち上がり検出部4gの検出信号と、立ち下がり検出部4hの検出信号とを入力する。
【0160】
期間判定部4iにおいて、立ち上がり検出部4gの検出信号と立ち下がり検出部4hの検出信号の両方の信号あるいは何れか一方の信号によって電圧レベルの変化時点を検出し、回生切替信号QP2と供給切替信号QP1との間から電圧レベルを変化させるに適した期間を求め、電圧レベルの変化時点がこの期間内にあるか否かを判定する。
【0161】
電圧レベルの変化時点が期間内にあると判定したときには、QH信号生成部4eから電圧切替信号QHを出力させ、QL信号生成部4fから電圧切替信号QLを出力させる。一方、電圧レベルの変化時点が期間外にあると判定したときには、遅延部4d1において供給切替信号QP1を所定時間分だけ遅延又は進行させるとともに、遅延部4d2において回生切替信号QP2を所定時間分だけ遅延又は進行させることにより、電圧レベルの信号を供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2に対して相対的に遅延又は進行させて、電圧レベルの変化時点が期間内となるようにする。
【0162】
図13は、
図11(b)に示した第3の構成例の制御例を示すためのフローチャートである。S31~S34は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2を生成する工程であり、S35~S39が、電圧レベルの変化時点を検出する工程であり、S40~S42は、電圧レベルの変化時点が所定期間内であるか否かを判定し、判定結果に基づいて必要に応じて電圧レベルの信号を遅延させて、電圧切替信号QH、QLを生成する工程である。
【0163】
パルス信号生成部4aは、クロック信号を受け(S31)、パルス信号を生成する(S32)。QP1信号生成部4bは、パルス信号を供給切替信号QP1として出力する(S33)。QP2信号生成部4cは、パルス信号生成部4aから入力する次のパルス信号を回生切替信号QP2として出力する(S34)。
【0164】
立ち上がり検出部4g及び立ち下がり検出部4hは、電圧レベルの信号を入力する(S35)。立ち上がり検出部4gは、電圧レベルの信号が立ち上がる時点を検出し(S36)、立ち上がり信号Supを生成する(S37)。立ち下がり検出部4hは、電圧レベルの信号が立ち下がる時点を検出し(S38)、立ち下がり信号Sdownを生成する(S39)。
【0165】
期間判定部4iは、供給切替信号QP1、回生切替信号QP2、立ち上がり信号Sup、及び立ち下がり信号Sdownを入力し、回生切替信号QP2と供給切替信号QP1との間の期間内に立ち上がり信号Sup、立ち下がり信号Sdownが有るか否かを判定する(S40)。
【0166】
立ち上がり信号Sup、及び立ち下がり信号Sdownが期間内にあるときには、QH信号生成部4eが、立ち上がり信号Supに基づいて電圧切替信号QHを生成し、QL信号生成部4fが、立ち下がり信号Sdownに基づいて電圧切替信号QLを生成する(S41)。立ち上がり信号Sup、及び立ち下がり信号Sdownが期間外にあるときには、遅延部4d1が供給切替信号QP1を所定時間分だけ遅延又は進行させ、遅延部4d2が回生切替信号QP2を所定時下分だけ遅延又は施行させる。これにより、電圧レベルの信号を供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2に対して相対的に遅延又は進行させて、電圧レベルの変化時点が期間内となるようにする(S42)。
【0167】
S42の後、立ち上がり信号Sup、及び立ち下がり信号Sdownが期間内となるまでS40,S42の工程を繰り返す。遅延部4dの遅延時間は電圧レベルの信号と供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2との関係が期間内と成るようにタイミングをずらすためであるためであり、任意に定めることができる。
【0168】
(4)誤制御時における各部信号、電圧波形、及び動作例
以下、制御部による電圧レベルの切替動作が誤制御されて場合を説明する。
【0169】
(4a)誤制御時の各部信号、電圧波形
図14を用いて誤制御時の各部信号、及び電圧波形を説明する。
図14は、多レベル直流パルス電源が正常に制御されずに誤制御された時の各部信号、及び電圧波形を示している。なお、構成部分に付した番号は
図1に基づいている。
【0170】
図14(a)は、電源コンデンサ31の電圧Vcの電圧波形を示し、電源コンデンサ31の電圧Vcは、電圧V1と電圧V2との間で交互に間隔Tvcで周期変化する電圧波形の例を示している。この間隔Tvcは、多レベル直流パルス電源1が出力する高周波パルスの電圧波高値が変化する周期間隔となる。
【0171】
図14(b)は、電圧切替信号QHの信号波形を示し、スイッチング素子SW2の直流電源21に接続される側をオン状態に切り替え、負方向に高電圧の電圧V1を共振部3に供給し、電源コンデンサ31を電圧V1に充電する。
【0172】
図14(c)は、電圧切替信号QLの信号波形を示し、スイッチング素子SW2の直流電源22に接続される側をオン状態に切り替え、負方向に低電圧の電圧V2を共振部3に供給し、電源コンデンサ31を電圧V2に充電する。
【0173】
図14(d)は、供給切替信号QP1の信号波形を示し、双方向スイッチSW1のダイオードD1が接続される側をオン状態に切り替え、電源コンデンサ31をリアクトル33を介して出力コンデンサ32に接続してπ型LC共振回路を構成する。この接続によるπ型LC共振回路では、ダイオードD1は、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31に向かう方向が順方向であるため、電源コンデンサ31の電圧Vcが、出力コンデンサ32に印加される供給動作となる。
【0174】
図14(e)は、回生切替信号QP2の信号波形を示し、双方向スイッチSW1のダイオードD2が接続される側をオン状態に切り替え、電源コンデンサ31をリアクトル33を介して出力コンデンサ32に接続してπ型LC共振回路を構成する。この接続によるπ型LC共振回路では、ダイオードD1は、電源コンデンサ31からに出力コンデンサ32向かう方向が順方向であるため、出力コンデンサ32の出力電圧Voutが、電源コンデンサ31に戻される回生動作となる。
【0175】
図14(f)は、多レベル直流パルス電源1の出力電圧Voutの電圧波形を示している。正常に制御されている場合には、出力コンデンサ32には、供給切替信号QP1の供給動作によって負電圧が発生し、回生切替信号QP2の回生動作によって零電圧が発生する。
【0176】
多レベル直流パルス電源の共振部3の出力端の出力電圧Voutは出力コンデンサ32の電圧であり、供給切替信号QP1による供給動作で生じる負電圧と回生切替信号QP2による回生動作で生じる零電圧との間を共振部3による共振動作によって周期的に変化する高周波パルス電圧となる。この高周波パルス電圧の負電圧の電圧値は直流電圧V1,V2であり、直流電源部2の切り替え動作に応じて変化する。
【0177】
誤制御によって電圧切替信号QH,QLの切替時点と、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2の発生時点との関係がずれた場合には、出力電圧Voutに誤電圧が発生する。
図14(f)の“P”で示す電圧波形は、回生時において出力電圧Voutに正のピーク電圧が発生する誤動作状態を示し、
図14(f)の“Q”で示す電圧波形は、回生時において回生動作とならず出力電圧Voutが零電圧に戻らない誤動作状態を示している。
【0178】
【0179】
区間A、区間B、区間C、区間D、及び区間Eは、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2の信号状態の組み合わせで区分される区間を示している。区間Aは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態からLowレベルの状態となった後に回生切替信号QP2がHighレベルの状態となるまでの区間を示し、区間Bは、回生切替信号QP2がHighレベルの状態である区間を示し、区間Cは、回生切替信号QP2がHighレベルの状態から供給切替信号QP1がLowレベルの状態となるまでの区間を示し、区間Dは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態である区間を示し、区間Eは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態からLowレベルの状態となった後に回生切替信号QP2がHighレベルの状態となるまでの区間を示している。
【0180】
前記したように、区間Cは、この区間内で電圧レベルを切替えることにより正常に制御が行われる区間である。これに対して、区間A、区間B、区間D、及び区間Eは、この区間内において電圧レベルの切替えが行われると正常な制御が行われずに誤動作となる区間である。以下、区間A、区間B、区間D、及び区間Eについて説明する。
【0181】
(区間Aにおける電圧レベル切替)
区間Aは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態からLowレベルの状態となった後に回生切替信号QP2がHighレベルの状態となるまでの区間である。
区間Aにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作について、
図15及び
図16を用いて説明する。なお、
図15では時点tA、t3~t6について示している。
【0182】
図15(b)、(c)は電圧切替信号QH、QLを示し、
図15(a)は電圧切替信号QH、QLによって切替えられた電源コンデンサ31の電圧Vcを示している。
図15(f)において、実線で示す出力電圧Voutは、区間Aにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作状態を示し、破線で示す出力電圧Voutは、正常動作状態を示している。
【0183】
区間A内の時点tAにおいて、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる。これにより、区間Bの時点t3において、回生切替信号QP2がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると、出力電圧Voutは、電圧(2×V1)から立ち上がって正のピーク電圧が発生する。ここで、図中の符号P1はピーク電圧の発生時点を示している。多レベル直流パルス電源1が容量性負荷に電力を供給する場合には、供給する電圧は負電圧であることが求められる。そのため、正電圧の発生は望ましく誤動作となる。
【0184】
出力電圧Voutは、区間B内を時定数Trで零電圧に向かって減少する。回生切替信号QP2がHighレベルの状態であるt3からt4までの時間幅は、正のピーク電圧が零電圧に減少するまでの時間幅である時定数Trによって設定される。
【0185】
区間Cの間において、出力電圧Voutは零電圧に保持される。区間Dの時点t5において、供給切替信号QP1がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると、出力電圧Voutは電圧V2に向かって降圧し、区間Eにおいて電圧V2が保持される。
【0186】
図16は、時点t1,t2,tA,t3,t4での動作状態を示している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0187】
図16(a)は、時点t1における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源21の電圧レベルV1によって充電された電圧V1である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって電源コンデンサ31から出力コンデンサ32への充電電流の供給が行われる。ここでは、電圧V1は負電圧であるため、リアクトル33を流れる電流方向は、出力コンデンサ32側から電源コンデンサ31側に向かう方向である。
【0188】
共振動作により、出力電圧Voutは、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VL(=2×V1-V1)を加算した電圧(V1+VL)となる。インダクタ電圧VLはV1となるため、出力電圧Voutは電圧(2×V1)となる。なお、リアクトル33を流れる電流方向が出力コンデンサ32側から電源コンデンサ31側に向かう方向であることから、出力電圧Voutは負電圧である。出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)に充電される。
【0189】
図16(b)は、時点t2における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V1)に保持される。
【0190】
図16(c)は、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる時点tAにおける動作状態を示している。スイッチング素子SW2の切り替わりにより、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる。直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2となる。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態であり共振動作が停止しているため、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V1)に保持されている。
【0191】
図16(d)は、時点t3における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、出力コンデンサ32の電圧が電圧(2×V1)であり、電源コンデンサ31の電圧が電圧V2であり、共に負電圧であって2×V1<V2の関係にあるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0192】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V2-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V1-V2)となるため、出力電圧Voutは、電圧(V2-(2×V1-V2))=2(V1-V2)となる。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V1)から電圧(2×(V1-V2))に向けて放電される。
【0193】
ここで、リアクトル33を流れる電流方向が電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向であることから、出力電圧Voutは正電圧となり、正のピーク電圧が発生する。ここで、図中の符号P1はピーク電圧の発生時点を示している。その後、出力電圧Voutは、零電圧に向かって共振回路の時定数Trで減少する。
【0194】
図16(e)は、時点t4における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧Voutも零電圧に保持される。
【0195】
したがって、区間Aにおいて電圧レベルが切り替わった場合には、回生動作時に正のピーク電圧が発生するという誤動作が発生する。
【0196】
(区間Bにおける電圧レベル切替)
区間Bは、回生切替信号QP2がHighレベルの状態となっている区間である。区間Bにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作について、
図17及び
図18を用いて説明する。なお、
図18では時点tB、t1~t6について示している。
【0197】
図17(b)、(c)は、電圧切替信号QH、QLを示し、
図17(a)は、電圧切替信号QH、QLによって切替えられた電源コンデンサ31の電圧Vcを示している。
図17(f)において、実線で示す出力電圧Voutは、区間Bにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作状態を示し、破線で示す出力電圧Voutは、正常動作状態を示している。
【0198】
区間B内の時点tBにおいて、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる。これにより、区間Bの時点t3において、回生切替信号QP2がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図17(d))、出力電圧Voutは電圧(2×V1)から零電圧に向かって時定数Trで上昇し始める。しかしながら、時点tBにおいて電源コンデンサ31の電圧がV2に切り替わるため、時点tBにおいて出力コンデンサ32の電圧が電圧Vαまで上昇し、出力電圧Voutは電圧(2×V2-Vα)となる(
図17(f))。なお、電圧Vαは時点t3から時点tBまでの間に時定数Trで上昇したときの出力コンデンサ32の電圧値を示している。
【0199】
ここで、出力コンデンサ32の電圧Vαが電圧V2と同程度まで上昇したとすると、出力電圧Voutは、電圧V2(=2×V2-Vα=2×V2-V2)となる。出力電圧Voutは、回生状態によって零電圧となるまで上昇することが求められるが、図中のP2で示す時点において、電圧V2で回生動作が停止するという誤動作が生じる。
【0200】
区間Cにおいて、出力電圧Voutは電圧Vαに保持される。区間Dの時点t5において、供給切替信号QP1がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図17(e))、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32の電圧は、共に電圧V2であることから電圧V2に保持され、区間Eにおいても電圧V2が保持される(
図17(f))。図中のP3で示す時点において、電圧V2で回生動作が停止するという誤動作が生じる。
【0201】
図18は、時点t1~t6、tBでの動作状態を示している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0202】
図18(a)は、時点t1における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源21の電圧レベルV1によって充電された電圧V1である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって電源コンデンサ31から出力コンデンサ32への充電電流の供給が行われる。ここでは、電圧V1は負電圧であるため、リアクトル33を流れる電流方向は、出力コンデンサ32側から電源コンデンサ31側に向かう方向である。
【0203】
共振動作により、出力電圧Voutは、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VL(=2×V1-V1)を加算した電圧(V1+VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧V1となるため、出力電圧Voutは電圧(2×V1)となる。なお、リアクトル33を流れる電流方向が、出力コンデンサ32側から電源コンデンサ31側に向かう方向であることから、出力電圧Voutは負電圧である。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V1)に充電される。
【0204】
図18(b)は、時点t2における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V1)に保持される。
【0205】
図18(c)は、時点t3における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、出力コンデンサ32の電圧が電圧(2×V1)であり、電源コンデンサ31の電圧が電圧V1であり、共に負電圧であって2×V1<V1の関係にあるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0206】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V1-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V1-V1)となるため、出力電圧Voutは零電圧(=(V1-V1))となる。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V1)から零電圧に向けて共振回路の時定数Trで放電される。
【0207】
図18(d)は、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる時点tBにおける動作状態を示している。スイッチング素子SW2の切り替わりにより、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる。直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2となる。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1がオフ信号であり、回生切替信号QP2がオン信号であることから、出力電圧Voutは電圧(2×V1)から零電圧に向かって時定数Trで上昇し始める。
【0208】
区間Bの時点tBにおいて、電源コンデンサ31の電圧が電圧V2に切り替わるため、時点tBにおいて電圧Vαまで上昇した後、インダクタ電圧(Vα-V2)と電源コンデンサ31の電圧V2により電圧((V2-(Vα-V2)=(2×V2-Vα))となる。電圧Vαが電圧V2であるときには出力電圧Voutは電圧V2となる。以下、出力電圧Voutが電圧V2であるとして説明する。
【0209】
図18(e)は、時点t4における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧V2に保持され、出力電圧Voutも電圧V2に保持される。
【0210】
図18(f)は、時点t5における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源22の電圧レベルV2によって充電された電圧V2である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成される。しかしながら、電源コンデンサ31と出力コンデンサは共に電圧V2であるため、共振動作による電源コンデンサ31から出力コンデンサ32への充電電流の供給は行われない。
【0211】
図18(g)は、時点t6における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧V2に保持され、出力電圧Voutも電圧V2に保持される。
【0212】
(区間Dにおける電圧レベル切替)
区間Dは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態となっている区間である。区間Dにおいて、電圧レベルが切り替わった場合の誤動作について、
図19及び
図20を用いて説明する。なお、
図20では時点tD、t3~t6について示している。
【0213】
図19(b)、(c)は、電圧切替信号QH、QLを示し、
図19(a)は、電圧切替信号QH、QLによって切り替えられた電源コンデンサ31の電圧Vcを示している。
図19(f)において、実線で示す出力電圧Voutは、区間Dにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作状態を示し、破線で示す出力電圧Voutは、正常動作状態を示している。
【0214】
区間Bの時点t3において、回生切替信号QP2が、Lowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図19(d))、出力電圧Voutは、電圧(2×V1)から零電圧に向かって時定数Trで上昇を始め、時点t4で零電圧となる。回生切替信号QP2がHighレベルの状態であるt3からt4までの時間幅は、共振回路の時定数Trによって設定することによって時点t4で零電圧とすることができる(
図19(f))。
【0215】
区間Cの間において、出力電圧Voutは零電圧に保持される。区間Dの時点t5において、供給切替信号QP1がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図19(e))、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1であり、出力コンデンサ32の電圧は零電圧であるため、出力電圧Voutは零電圧から電圧(2×V1)に向かって時定数Trで降下する(
図19(f))。区間D内の時点tDにおいて、電圧レベルが電圧V1から電圧V2に切り替わると、出力電圧Voutは時点tDにおいて電圧Vβまで降下する(
図19(f))。電圧Vβは、時点t5から時点tDまでの間に時定数Trで降下した電圧値を示している。
【0216】
電圧Vβまで降下した時点では、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2となっている。電圧Vβが電圧V2よりも低電圧であるときには、出力コンデンサ32と電源コンデンサ31との電圧差は、ダイオードD2に対して逆電圧とするために、出力電圧Voutは電圧Vβに保持される。また、電圧Vβが電圧V2よりも高電圧であるときには、インダクタ電圧は電圧(Vβ-V2)となるため、出力電圧Voutは電圧Vβ(=(Vβ-V2)+V2)となり、出力電圧Voutは電圧Vβに保持される(
図19(f))。図中のP4で示す時点において、電圧Vβで回生動作が停止するという誤動作が生じる。
【0217】
区間Eの時点t6において、供給切替信号QP1はHighレベルの状態からLowレベルの状態に変化する。双方向スイッチSW1はオフ状態となり、出力電圧Voutは電圧Vβに保持される(
図19(f))。
【0218】
上記したように、区間D内の時点tDにおいて、電圧レベルが電圧V1から電圧V2に切り替わると正常に動作せずに誤動作となり、供給状態で得られる出力電圧Voutは電圧(2×V2)とならず電圧Vβとなる。
【0219】
図20は、時点t3~t6,tDでの動作状態を示し、時点t1,t2は省略している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0220】
図20(a)は、時点t3における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、出力コンデンサ32の電圧が電圧(2×V1)であり電源コンデンサ31の電圧が電圧V1であり、共に負電圧であって2×V1<V1の関係にあるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0221】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V1-VL)となる。インダクタ電圧VLは、電圧(2×V1-V1)となるため、出力電圧Voutは零電圧(=(V1-V1))となる。出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)から零電圧に向けて共振回路の時定数Trで放電される。
【0222】
図20(b)は、時点t4における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることからオフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧outも零電圧に保持される。
【0223】
図20(c)は、時点t5における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源21の電圧レベルV1によって充電された電圧V1である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成される。
【0224】
このとき、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1であり、出力コンデンサ32の電圧は零電圧であり、インダクタ電圧VLが電圧V1となるため、出力電圧Voutは、零電圧から電圧(2×V1)に向かって時定数Trで降下する。電圧降下は、直流電圧の切り替わり時点tDまで進み、切り替わり時点tDにおいて電圧Vβとなる。
【0225】
図20(d)は、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる時点tDにおける動作状態を示している。スイッチング素子SW2の切り替わりにより、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる。直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2となる。双方向スイッチSW1は供給切替信号QP1がオフ信号であり、回生切替信号QP2がオン信号である。
【0226】
電圧Vβが電圧V2よりも低電圧であるときには、ダイオードD2に対する印加電圧は逆電圧となるため、出力電圧Voutは電圧Vβに保持される。また、電圧Vβが電圧V2よりも高電圧であるときには、インダクタ電圧は電圧(Vβ-V2)となるため、出力電圧Voutは電圧Vβ(=(Vβ-V2)+V2)となり、出力電圧Voutは電圧Vβに保持される。
【0227】
図20(e)は、時点t6における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧Vβに保持され、出力電圧Voutも電圧Vβに保持される。
【0228】
(区間Eにおける電圧レベル切替)
区間Eは、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にLowレベルの状態となっている区間である。区間Eにおいて、電圧レベルが切り替わった場合の誤動作について、
図21及び
図22を用いて説明する。なお、
図22では時点tE、t3~t6について示している。
【0229】
図21(b)、(c)は、電圧切替信号QH、QLを示し、
図21(a)は、電圧切替信号QH、QLによって切替えられた電源コンデンサ31の電圧Vcを示している。
図21(f)において、実線で示す出力電圧Voutは、区間Eにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作状態を示し、破線で示す出力電圧Voutは、正常動作状態を示している。
【0230】
区間Bの時点t3において、回生切替信号QP2がLowレベルの状態からHighレベル状態に切り替わると(
図21(d))、出力電圧Voutは、電圧(2×V1)から零電圧に向かって時定数Trで上昇を始め、時点t4で零電圧となる。回生切替信号QP2がHighレベルの状態であるt3からt4までの時間幅は、共振回路の時定数Trによって設定することによって、時点t4で零電圧とすることができる(
図21(f))。
【0231】
区間Cの間において、出力電圧Voutは零電圧に保持される。区間Dの時点t5において、供給切替信号QP1がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図21(e))、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1であり、出力コンデンサ32の電圧は零電圧であるため、出力電圧Voutは零電圧から電圧(2×V1)に向かって時定数Trで降下する(
図21(f))。
【0232】
区間Eの時点t6において、供給切替信号QP1は、Highレベルの状態からLowレベルの状態に変化する。双方向スイッチSW1はオフ状態となり、出力電圧Voutは電圧(2×V1)に保持される(
図21(f))。区間E内の時点tEにおいて、電圧レベルが電圧V1から電圧V2に切り替わるが、双方向スイッチSW1がオフ状態であるため、出力電圧Voutは、電圧(2×V1)に保持される(
図21(f))。
【0233】
上記したように、区間E内の時点tEにおいて、電圧レベルが電圧V1から電圧V2に切り替わると、図中のP5で示す時点で正常に動作せずに誤動作となり、供給状態で得られる出力電圧Voutは、電圧(2×V2)とならず電圧(2×V1)となる。
【0234】
図22は、時点t3~t6での動作状態を示し、時点t1,t2は省略している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0235】
図22(a)は、時点t3における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、出力コンデンサ32の電圧が電圧(2×V1)であり電源コンデンサ31の電圧が電圧V1であり、共に負電圧であって2×V1<V1の関係にあるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0236】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V1とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V1-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V1-V1)となるため、出力電圧Voutは零電圧(=(V1-V1))となる。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V1)から零電圧に向けて共振回路の時定数Trで放電される。
【0237】
図22(b)は、時点t4における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧Voutも零電圧に保持される。
【0238】
図22(c)は、時点t5における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源21の電圧レベルV1によって充電され電圧V1である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成される。
【0239】
このとき、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1であり、出力コンデンサ32の電圧は零電圧であり、インダクタ電圧VLが電圧V1となるため、出力電圧Voutは零電圧から電圧(2×V1)に向かって時定数Trで降下する。
【0240】
図22(d)は、時点t6における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V1)に保持される。
【0241】
図22(e)は、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる時点tEにおける動作状態を示している。スイッチング素子SW2の切り替わりにより、直流電源部2の直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わる。直流電圧が電圧V1から電圧V2に切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2となる。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であるため、出力電圧Voutは電圧(2×V1)に保持される。
【0242】
(4c)電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様
電圧レベルV2から電圧レベルV1への切り替え時の誤制御の態様について、
図23~
図30を用いて説明する。ここで、
図23、
図25、
図27、及び
図29は各部信号、電圧波形の要部を示し、
図24、
図26、
図28、及び
図30は動作状態を示している。また、区間1A、区間1B、区間1C、区間1D、及び区間1Eは、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2の信号状態の組み合わせで区分される区間を示している。
【0243】
区間1Aは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態からLowレベルの状態となった後に、回生切替信号QP2がHighレベルの状態となるまでの区間を示し、区間1Bは、回生切替信号QP2がHighレベルの状態である区間を示し、区間1Cは、回生切替信号QP2がHighレベルの状態から供給切替信号QP1がLowレベルの状態となるまでの区間を示し、区間1Dは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態である区間を示し、区間1Eは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態からLowレベルの状態となった後に、回生切替信号QP2がHighレベルの状態となるまでの区間を示している。
【0244】
前記したように、区間1Cは、この区間内で電圧レベルを切替えることにより正常に制御が行われる区間である。これに対して、区間1A、区間1B、区間1D、及び区間1Eは、この区間内において電圧レベルの切替えが行われると正常な制御が行われずに誤動作となる区間である。以下、区間1A、区間1B、区間1D、及び区間1Eについて説明する。
【0245】
(区間1Aにおける電圧レベル切替)
区間1Aは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態からLowレベルの状態となった後に回生切替信号QP2がHighレベルの状態となるまでの区間である。
区間1Aにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作について、
図23及び
図24を用いて説明する。なお、
図23では時点t1A、t13~t16について示している。
【0246】
図23(b)、(c)は電圧切替信号QH、QLを示し、
図23(a)は、電圧切替信号QH、QLによって切替えられた電源コンデンサ31の電圧Vcを示している。
図23(f)において、実線で示す出力電圧Voutは、区間1Aにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作状態を示し、破線で示す出力電圧Voutは、正常動作状態を示している。
【0247】
区間1A内の時点t1Aにおいて、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる。これにより、区間1Bの時点t13において、回生切替信号QP2がLowレベルの状態からHighレベル状態に切り替わるとき、出力電圧Voutは電圧(2×V2)のまま保持され、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への回生は行われず、図中のP6で示す時点で誤動作となる。
【0248】
区間1Cの間において、出力電圧Voutは電圧(2×V2)に保持される。区間1Dの時点t15において、供給切替信号QP1がLowレベル状態からHighレベルの状態に切り替わっても、出力電圧Voutは電圧(2×V2)が保持されて回生は行われず、図中のP7で示す時点で誤動作となる。区間1Eにおいて電圧(2×V2)が保持される。
【0249】
図24は、時点t12~t16,t1Aでの動作状態を示している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0250】
供給時の時点t12における動作状態の出力電圧Voutは、共振動作により、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V2とリアクトル33のインダクタ電圧VL(=2×V2-V2)を加算した電圧(V2+VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧V2となるため、出力電圧Voutは電圧(2×V2)となる。なお、リアクトル33を流れる電流方向が出力コンデンサ32側から電源コンデンサ31側に向かう方向であることから、出力電圧Voutは負電圧である。出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V2)に充電される。
【0251】
図24(a)は、時点t12における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V2)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V2)に保持される。
【0252】
図24(b)は、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる時点t1Aにおける動作状態を示している。スイッチング素子SW2の切り替わりにより、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる。直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1となる。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態であり共振動作は停止しているため、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V2)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V2)に保持されている。
【0253】
図24(c)は、時点t13における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成される。出力コンデンサ32の電圧が電圧(2×V2)であり、電源コンデンサ31の電圧が電圧V1であり、共に負電圧であって2×V2=V1の関係があるときには、共振回路の共振動作による出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生は行われず、図中のP6で示す時点で誤動作となる。
【0254】
図24(d)は、時点t14における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作は行われない。共振動作が行われないため、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧V1(=2×V2)に保持され、出力電圧Voutも電圧V1(=2×V2)に保持される。
【0255】
図24(e)は、時点t15における供給時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は供給切替信号QP1がオン信号であり、回生切替信号QP2がオフ信号であることから、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31に向かう方向を順方向とするダイオードD1が接続される。このとき、電源コンデンサ31の電圧と出力コンデンサ32の電圧は共に電圧V1であるため、共振動作による供給動作は行われず、図中のP7で示す時点で誤動作となる。
【0256】
図24(f)は、時点t16における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作は行われない。共振動作が行われないため、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧V1に保持され、出力電圧Voutも電圧V1に保持される。
【0257】
(区間1Bにおける電圧レベル切替)
区間1Bは、回生切替信号QP2がHighレベルの状態となっている区間である。区間1Bにおいて、電圧レベルが切り替わった場合の誤動作について、
図25及び
図26を用いて説明する。なお、
図26では時点t1B、t12~t16について示している。
【0258】
図25(b)、(c)は、電圧切替信号QH、QLを示し、
図25(a)は、電圧切替信号QH、QLによって切替えられた電源コンデンサ31の電圧Vcを示している。
図25(f)において、実線で示す出力電圧Voutは、区間1Bにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作状態を示し、破線で示す出力電圧Voutは、正常動作状態を示している。
【0259】
区間1B内の時点t1Bにおいて、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる。これにより、区間1Bの時点t13において、回生切替信号QP2がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図25(d))、出力電圧Voutは電圧(2×V2)から零電圧に向かって時定数Trで上昇し始めるが、電圧Vγまで上昇した時点で時点t1Bにおいて、電源コンデンサ31の電圧が電圧V1に切り替わる。
【0260】
ここで、電圧Vγが電圧V2と同程度まで上昇したとすると、電源コンデンサ31の電圧と出力コンデンサ32の電圧の差が小さくなるため、電圧Vγは電圧V2で変化しなくなる。出力電圧Voutは回生状態によって、零電圧となるまで上昇することが求められるが、図中のP8で示す時点において回生動作が停止するという誤動作が生じる。
【0261】
区間1Cにおいて、出力電圧Voutは電圧Vγに保持される。区間1Dの時点t15において、供給切替信号QP1がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図25(e))、電源コンデンサ31の電圧が電圧V1であり、出力コンデンサ32に電圧が電圧Vγであることから、電圧(2×V1-Vγ)に向かって時定数Trで降下する。降下後の出力電圧Voutは電圧(2×V1-Vγ)となり電圧(2×V1)までは降下せず、図中のP9で示す時点で十分な回生動作は行われないという誤動作が生じる(
図25(f))。
【0262】
図26は、時点t12~t16,t1Bでの動作状態を示している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0263】
図26(a)は、時点t12における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V2)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V2)に保持される。
【0264】
図26(b)は、時点t13における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、出力コンデンサ32の電圧が電圧(2×V2)であり、電源コンデンサ31の電圧がV2であり、共に負電圧であって2×V2<V2の関係にあるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0265】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V2とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V2-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V2-V2)となるため、回生動作が完了した際には、出力電圧Voutは零電圧(=(V2-V2))となる。したがって、出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V2)から零電圧に向けて共振回路の時定数Trで放電される。
【0266】
図26(c)は、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる時点t1Bにおける動作状態を示している。スイッチング素子SW2の切り替わりにより、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる。直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1となる。
【0267】
時点t13での回生動作時には、出力電圧Voutは電圧(2×V2)から零電圧に向かって時定数Trで上昇し始めるが、区間1B内の時点t1Bにおいて、電源コンデンサ31の電圧が電圧V1に切り替わるため、時点t1Bにおいて電圧Vγまで上昇した後、インダクタ電圧(Vγ-V1)と電源コンデンサ31の電圧V1により、電圧((V1-(Vγ-V1)=(2×V1-Vγ))となる。電圧Vγが電圧V1であるときには、出力電圧Voutは電圧V1となる。
【0268】
図26(d)は、時点t14における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧Vγに保持され、出力電圧Voutも電圧Vγに保持される。
【0269】
図26(e)は、時点t15における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源21の電圧レベルV1によって充電された電圧V1である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成される。このとき、インダクタ電圧VLは電圧(V1-Vγ)であるため、出力電圧Voutは電圧(2×V1-Vγ)となる。電圧Vγが電圧V1であるときには、出力電圧Voutは電圧V1となる。
【0270】
図26(f)は、時点t16における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V1-Vr)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V1-Vr)に保持される。
【0271】
(区間1Dにおける電圧レベル切替)
区間1Dは、供給切替信号QP1がHighレベルの状態となっている区間である。区間1Dにおいて、電圧レベルが切り替わった場合の誤動作について、
図27及び
図28を用いて説明する。なお、
図28では時点t1D、t13~t16について示している。
【0272】
図27(b)、(c)は、電圧切替信号QH、QLを示し、
図27(a)は、電圧切替信号QH、QLによって切り替えられた電源コンデンサ31の電圧Vcを示している。
図27(f)において、実線で示す出力電圧Voutは、区間1Dにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作状態を示し、破線で示す出力電圧Voutは、正常動作状態を示している。
【0273】
区間1Bの時点t13において、回生切替信号QP2がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図27(d))、出力電圧Voutは、電圧(2×V2)から零電圧に向かって時定数Trで上昇を始め、時点t14で零電圧となる。回生切替信号QP2がHighレベルの状態であるt13からt14までの時間幅は、共振回路の時定数Trに基づいて設定することによって、時点t14で零電圧とすることができる(
図27(f))。
【0274】
区間1Cの間において、出力電圧Voutは零電圧に保持される。区間1Dの時点t15において、供給切替信号QP1がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図27(e))、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2であり、出力コンデンサ32の電圧は零電圧であるため、出力電圧Voutは、零電圧から電圧(2×V2)に向かって時定数Trで降下する(
図27(f))。
【0275】
区間1D内の時点t1Dにおいて、電圧レベルが電圧V2から電圧V1に切り替わると、出力電圧Voutは、時点t1Dにおいて電圧Vδまで降下する(
図27(f))。電圧Vδは、時点t15から時点t1Dまでの間に時定数Trで降下した電圧値を示している。
【0276】
電圧Vδまで降下した時点では、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1となっている。電圧Vδが電圧V1よりも低電圧であるときには、出力コンデンサ32と電源コンデンサ31との電圧差は、ダイオードD2に対して逆電圧とするため、出力電圧Voutは電圧Vδに保持される。また、電圧Vδが電圧V1よりも高電圧であるときには、インダクタ電圧は電圧(Vδ-V1)となるため、出力電圧Voutは電圧Vδ(=(Vδ-V1)+V1)となり、出力電圧Voutは電圧Vδに保持される(
図27(f))。図中のP10で示す時点において電圧Vδで回生動作が停止するという誤動作が生じる。
【0277】
区間1Eの時点t16において、供給切替信号QP1は、Highレベル状態からLowレベル状態に変化する。双方向スイッチSW1はオフ状態となり、出力電圧Voutは電圧Vδに保持される(
図27(f))。
【0278】
上記したように、区間1D内の時点t1Dにおいて、電圧レベルが電圧V2から電圧V1に切り替わると、正常に動作せずに誤動作となり、供給状態で得られる出力電圧Voutは、電圧(2×V1)とならず電圧Vδとなる。
【0279】
図28は、時点t13~t16,t1Dでの動作状態を示し、時点t11,t12は省略している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0280】
図28(a)は、時点t13における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、出力コンデンサ32の電圧が電圧(2×V2)であり、電源コンデンサ31の電圧がV2であり、共に負電圧であって2×V2<V2の関係にあるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0281】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V2とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V2-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V2-V2)となるため、出力電圧Voutは零電圧(=(V2-V1))となる。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V2)から零電圧に向けて共振回路の時定数Trで放電される。
【0282】
図28(b)は、時点t14における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧Voutも零電圧に保持される。
【0283】
図28(c)は、時点t15における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源22の電圧レベルV2によって充電された電圧V2である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成される。
【0284】
このとき、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2であり、出力コンデンサ32の電圧は零電圧であり、インダクタ電圧VLが電圧V2となるため、出力電圧Voutは零電圧から電圧(2×V2)に向かって時定数Trで降下する。電圧降下は、後述する直流電圧の切り替わり時点t1Dまで進み、切り替わり時点t1Dにおいて電圧Vδとなる。
【0285】
図28(d)は、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる時点t1Dにおける動作状態を示している。スイッチング素子SW2の切り替わりにより、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる。直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1となる。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1がオフ信号であり、回生切替信号QP2がオン信号である。
【0286】
電圧Vδが出力コンデンサ32の電圧V1よりも低電圧であるときには、ダイオードD2に対する印加電圧は逆電圧となるため、出力電圧Voutは電圧Vδに保持される。また、電圧Vδが出力コンデンサ32の電圧V1よりも高電圧であるときには、インダクタ電圧は電圧(Vδ-V1)となるため、出力電圧Voutは電圧Vδ(=(Vδ-V1)+V1)となり、出力電圧Voutは電圧Vδに保持される。
【0287】
図28(e)は、時点t16における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧Vδに保持され、出力電圧Voutも電圧Vδに保持される。
【0288】
(区間1Eにおける電圧レベル切替)
区間1Eは、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にLowレベルの状態となっている区間である。区間1Eにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作について、
図29及び
図30を用いて説明する。なお、
図30では時点t1E、t13~t16について示している。
【0289】
図29(b)、(c)は、電圧切替信号QH、QLを示し、
図29(a)は、電圧切替信号QH、QLによって切替えられた電源コンデンサ31の電圧Vcを示している。
図29(f)において、実線で示す出力電圧Voutは、区間1Eにおいて電圧レベルが切り替わった場合の誤動作状態を示し、破線で示す出力電圧Voutは、正常動作状態を示している。
【0290】
区間1Bの時点t13において、回生切替信号QP2がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図29(d))、出力電圧Voutは、電圧(2×V2)から零電圧に向かって時定数Trで上昇を始め、時点t14で零電圧となる。回生切替信号QP2がHighレベルの状態であるt13からt14までの時間幅は、共振回路の時定数Trによって設定することによって、時点t14で零電圧とすることができる(
図29(f))。
【0291】
区間1Cの間において、出力電圧Voutは零電圧に保持される。区間1Dの時点t15において、供給切替信号QP1がLowレベルの状態からHighレベルの状態に切り替わると(
図29(e))、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2であり、出力コンデンサ32の電圧は零電圧であるため、出力電圧Voutは、零電圧から電圧(2×V2)に向かって時定数Trで降下する(
図29(f))。
【0292】
区間1Eの時点t16において、供給切替信号QP1はHighレベル状態からLowレベル状態に変化する。双方向スイッチSW1はオフ状態となり、出力電圧Voutは電圧(2×V2)に保持される(
図29(f))。区間1E内の時点t1Eにおいて、電圧レベルが電圧V2から電圧V1に切り替わるが、双方向スイッチSW1がオフ状態であるため、出力電圧Voutは電圧(2×V2)に保持されるため電圧(2×V1)に至らず、図中のP11で示す時点で供給動作が達成されない誤動作となる(
図29(f))。
【0293】
上記したように、区間1E内の時点t1Eにおいて、電圧レベルが電圧V2から電圧V1に切り替わると、正常に動作せずに誤動作となり、供給状態で得られる出力電圧Voutは、電圧(2×V1)とならず電圧(2×V2)となる。
【0294】
図30は、時点t13~t16,t1Eでの動作状態を示し、時点t11,t12は省略している。ここでは、LC共振回路としてπ型LC共振回路の例を示している。
【0295】
図30(a)は、時点t13における回生時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオフ信号及び回生切替信号QP2のオン信号によって、ダイオードD2が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成され、共振動作によって、出力コンデンサ32から電源コンデンサ31への放電電流の回生が行われる。ここでは、出力コンデンサ32の電圧が電圧(2×V2)であり、電源コンデンサ31の電圧が電圧V2であり、共に負電圧であって2×V2<V2の関係にあるため、リアクトル33を流れる電流方向は、電源コンデンサ31側から出力コンデンサ32側に向かう方向である。
【0296】
共振動作による回生により、出力電圧Voutは、ダイオードD2の順方向を考慮すると、電源コンデンサ31の充電電圧である電圧V2とリアクトル33のインダクタ電圧VLを加算した電圧(V2-VL)となる。インダクタ電圧VLは電圧(2×V2-V2)となるため、出力電圧Voutは零電圧(=(V2-V2))となる。出力コンデンサ32の充電電圧は、電圧(2×V2)から零電圧に向けて共振回路の時定数Trで放電される。
【0297】
図30(b)は、時点t14における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は零電圧に保持され、出力電圧Voutも零電圧に保持される。
【0298】
図30(c)は、時点t15における供給時の動作状態を示している。電源コンデンサ31の電圧Vcは、直流電源22の電圧レベルV2によって充電された電圧V2である。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1のオン信号及び回生切替信号QP2のオフ信号によって、ダイオードD1が導通する方向に切り替わり、電源コンデンサ31と出力コンデンサ32とリアクトル33のπ型LC共振回路が形成される。
【0299】
このとき、電源コンデンサ31の電圧は電圧V2であり、出力コンデンサ32の電圧は零電圧であり、インダクタで電圧VLが電圧V2となるため、出力電圧Voutは零電圧から電圧(2×V2)に向かって時定数Trで降下する。電圧降下は、後述する直流電圧の切り替わり時点t1Eまで進み、切り替わり時点tEにおいて電圧(2×V2)となる。
【0300】
図30(d)は、時点t16における保持時の動作状態を示している。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であることから、オフ状態となり共振動作が停止する。共振動作が停止することにより、出力コンデンサ32の充電電圧は電圧(2×V2)に保持され、出力電圧Voutも電圧(2×V2)に保持される。
【0301】
図30(e)は、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる時点t1Eにおける動作状態を示している。スイッチング素子SW2の切り替わりにより、直流電源部2の直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わる。直流電圧が電圧V2から電圧V1に切り替わることにより、電源コンデンサ31の電圧は電圧V1となる。双方向スイッチSW1は、供給切替信号QP1及び回生切替信号QP2が共にオフ信号であるため、出力電圧outは電圧(2×V2)に保持される。
【0302】
(5)多レベル直流パルス電源の他の構成例
以下、多レベル直流パルス電源1の構成例として第2構成例~第4構成例を示す。
【0303】
(5a)第2構成例
第2構成例について、
図31を用いて説明する。第2構成例の多レベル直流パルス電源1は、第1構成例と同様に、直流電源部2、共振部3B、及び制御部4を備える。第2構成例の共振部3Bは第1構成例の共振部3と異なる構成である。
【0304】
共振部3Bは、抵抗素子35とスイッチング素子36との直列回路が出力コンデンサ32に対して並列接続された構成を備える。スイッチング素子36をオン状態とすることにより、出力コンデンサ32に抵抗素子35が並列接続される。スイッチング素子36のオン/オフ制御は、制御回路からの制御信号QRによって行われる。スイッチング素子36をオン状態とする制御信号QRは回生動作時に出力され、回生切替信号QP2が終了する前の時点で出力される。共振回路の回生動作において、出力コンデンサ32からの放電電流の一部は抵抗素子35を流れる。これにより、回生時における出力コンデンサ32の電圧を強制的に零電圧に誘導する。
【0305】
(5b)第3構成例
第3構成例について、
図32を用いて説明する。第3構成例の多レベル直流パルス電源1は、第1構成例及び第2構成例と同様に、直流電源部2、共振部3C、及び制御部4を備える。第3構成例の共振部3Cは第1構成例の共振部3及び第2構成例の共振部3Bと異なる構成を備える。
【0306】
共振部3Cは、第2構成例と同様に抵抗素子35とスイッチング素子36との直列回路を備えると共に、双方向スイッチSW1の2つのスイッチング素子は、それぞれ直列接続されたリアクトル33a、33bを備える。
【0307】
第3構成例の双方向スイッチSW1は、スイッチング素子とダイオードD1とリアクトル33aの直列回路と、スイッチング素子とダイオードD2とリアクトル33bの直列回路の2つの直列回路の並列接続によって構成される。
【0308】
この第3構成例において、スイッチング素子とダイオードD1とリアクトル33aの直列回路は、スイッチング素子をオン状態とした際の共振状態において供給電流が流れ、スイッチング素子とダイオードD2とリアクトル33bの直列回路は、スイッチング素子をオン状態とした際の共振状態において回生電流が流れる。このとき、各リアクトル33a,33bのインダクタンス値は、電源コンデンサ31及び出力コンデンサ32のキャパシタンス値と共に時定数を定めるパラメータとなる。
【0309】
第3構成例において、リアクトル33aのインダクタンス値L1とリアクトル33bのインダクタンス値L2とをそれぞれ設定することにより、供給動作における時定数と回生動作における時定数を個別に設定することができる。
【0310】
(5c)第4構成例
第4構成例について
図33を用いて説明する。第4構成例の多レベル直流パルス電源1は、第1構成例~第3構成例と同様に、直流電源部2、共振部3D、及び制御部4を備える。第4構成例の共振部3Dは、第1構成例~第3構成例の共振部3、3B,3Cと異なる構成を備える。
【0311】
第1構成例~第3構成例の共振部3~3Cは、電源コンデンサ31を備える構成であるのに対して、第4構成例の共振部3Dは、電源コンデンサ31を備えない構成である点で相違する。共振部3Dの双方向スイッチSW1は、電源コンデンサ31を並列接続することなく直流電源部2の出力端に接続される。第4構成例の共振部3Dは、リアクトル33と出力コンデンサ32の直列LC回路によって構成される。
【0312】
第1構成例~第3構成例のπ型LC回路による共振部3、3B,3Cでは、回生電流を電源コンデンサ31に回生するのに対して、第4構成例の共振部3Dの直列LC回路においては、回生電流を直流電源部2の直流電源21,22に回生する。
【産業上の利用可能性】
【0313】
本発明の多レベル直流パルス電源、及び多レベル直流パルス電源の制御方法は、成膜処理、エッチング処理、アッシング処理など用いられるプラズマ処理装置など、半導体デバイスの製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0314】
1 多レベル直流パルス電源
2 直流電源部
3,3B,3C,3D 共振部
4,4A,4B,4C 制御部
4a パルス信号生成部
4b QP1信号生成部
4c QP2信号生成部
4d,4d1,4d2 遅延部
4e QH信号生成部
4f QL信号生成部
4g 立ち上がり検出部
4h 立ち下がり検出部
4i 期間判定部
5 負荷
21,22 直流電源
31 電源コンデンサ
32 出力コンデンサ
33,33a,33b リアクトル
35 抵抗素子
36 スイッチング素子
D1,D2 ダイオード
QH,QL 電圧切替信号
QP1 供給切替信号
QP2 回生切替信号
QR 制御信号
RES LC共振回路
SW1 双方向スイッチ
SW2 スイッチング素子
Sdown 立ち下がり信号
Sup 立ち上がり信号
T12,T21 期間
Tr 時定数
Tvc 時間間隔
V1,V2 電圧レベル
VL インダクタ電圧
Vout 出力電圧
td 遅延時間