(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141154
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】表皮部材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052645
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小畑 美空
(72)【発明者】
【氏名】諏訪間 貴博
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BC01
3D023BD12
3D023BD27
3D023BE14
3D023BE21
3D023BE31
(57)【要約】
【課題】縫製の自由度と外観品質とを両立できる表皮部材を提供する。
【解決手段】表皮部材3は、複数の基布7と、基布7を接合する複数の縫製部8と、を備えて基材2に貼り付けられて用いられる。基布7は、湾曲する第一曲線部15と、第一曲線部15を切り欠いて形成された複数のノッチ部16と、を端縁に備え、第一曲線部15及びノッチ部16を含む端末部25が裏側に折り返される第一基布11と、第一基布11の端末部25が表側に重ねられた状態で第一基布11と縫製部8により接合されて端末部25を挟み込む第二基布12と、を有する。縫製部8は、第一基布11の端末部25に少なくとも一部が沿うようにそれぞれ形成され、少なくともいずれかの縫製部8が、ノッチ部16と交差する位置にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基布と、これら基布を接合する複数の縫製部と、を備えて基材に貼り付けられて用いられる表皮部材であって、
前記基布は、
湾曲する第一曲線部と、この第一曲線部を切り欠いて形成された複数のノッチ部と、を端縁に備え、これら第一曲線部及びノッチ部を含む端末部が裏側に折り返される第一基布と、
この第一基布の前記端末部が表側に重ねられた状態で前記第一基布と前記縫製部により接合されて前記端末部を挟み込む第二基布と、を有し、
前記縫製部は、前記第一基布の前記端末部に少なくとも一部が沿うようにそれぞれ形成され、
少なくともいずれかの前記縫製部が、前記ノッチ部と交差する位置にある
ことを特徴とする表皮部材。
【請求項2】
縫製部は、
第一基布の端末部と第二基布とに亘り形成される第一縫製部と、
前記第一基布と前記第二基布とに亘りノッチ部と交差して形成される第二縫製部と、を有する
ことを特徴とする請求項1記載の表皮部材。
【請求項3】
第二基布は、第一基布の第一曲線部に沿って湾曲する第二曲線部と、この第二曲線部に形成された複数のスリットと、を端縁に備え、これら第二曲線部及びスリットを含む端末部の表側に前記第一基布の端末部が重ねられる
ことを特徴とする請求項1または2記載の表皮部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に貼り付けられて用いられる表皮部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のインストルメントパネルなどの内装部品において、合成樹脂製の基材に対して皮革などの表皮部材を貼り付けたものがある。表皮部材は、複数の基布の端末部を互いに一次縫製して接合し、その縫製代を開いてさらに基布の基材側となる面に対して二次縫製することで、ステッチ状の意匠を形成し、見栄えを向上することがある。
【0003】
一次縫製が円弧状などの曲線状に配置されている構成の場合、その内周側の基布の縫製代には余りが生じ、波打った状態となるため、基材に表皮部材を貼り付けたとしても、波打った縫製代が基材に密着できず、波打った状態のままとなり、見栄えが悪い。
【0004】
そこで、曲率が大きい内周側の布の端縁をジグザグ状に切り欠いてピンキング部を形成することで、基布の余りを削り、波打ちを解消する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-69843号公報 (第3-5頁、
図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法を用いても、一次縫製が所定の曲率より大きく(所定の曲率半径より小さく)なる場合には、基布間の内外周差により、波打ちを解消することが困難となり、基材への貼り付け後も波打ちが解消されず、外観上の不良による品質の低下が懸念される。そのため、外観品質の確保と縫製の自由度との両立が困難である。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、縫製の自由度と外観品質とを両立できる表皮部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の表皮部材は、複数の基布と、これら基布を接合する複数の縫製部と、を備えて基材に貼り付けられて用いられる表皮部材であって、前記基布は、湾曲する第一曲線部と、この第一曲線部を切り欠いて形成された複数のノッチ部と、を端縁に備え、これら第一曲線部及びノッチ部を含む端末部が裏側に折り返される第一基布と、この第一基布の前記端末部が表側に重ねられた状態で前記第一基布と前記縫製部により接合されて前記端末部を挟み込む第二基布と、を有し、前記縫製部は、前記第一基布の前記端末部に少なくとも一部が沿うようにそれぞれ形成され、少なくともいずれかの前記縫製部が、前記ノッチ部と交差する位置にあるものである。
【0009】
請求項2記載の表皮部材は、請求項1記載の表皮部材において、縫製部は、第一基布の端末部と第二基布とに亘り形成される第一縫製部と、前記第一基布と前記第二基布とに亘りノッチ部と交差して形成される第二縫製部と、を有するものである。
【0010】
請求項3記載の表皮部材は、請求項1または2記載の表皮部材において、第二基布は、第一基布の第一曲線部に沿って湾曲する第二曲線部と、この第二曲線部に形成された複数のスリットと、を端縁に備え、これら第二曲線部及びスリットを含む端末部の表側に前記第一基布の端末部が重ねられるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の表皮部材によれば、ノッチ部と交差する縫製部が仮にノッチ部内に落ちても、第一基布または第二基布がノッチ部内に位置するので、糸落ちに伴う糸撚れや縫製ピッチの異常が発生しにくく、例えば縫製部により第一基布の端末部が第二基布に対して曲率半径が小さい湾曲状に接合されても、ノッチ部により吸収しきれない第一曲線部の内外周差を含む第一基布の端末部の波打ちを縫製部によって抑え込むことができる。したがって、縫製部が曲率半径に起因する制限を受けにくく、かつ、端末部の波打ちに起因する外観不良を防止できるので、縫製の自由度と外観品質とを両立できる。
【0012】
請求項2記載の表皮部材によれば、請求項1記載の表皮部材の効果に加えて、第一縫製部による縫製の後に第二縫製部による縫製を行うことにより、第一基布と第二基布とを容易に接合できる。
【0013】
請求項3記載の表皮部材によれば、請求項1または2記載の表皮部材の効果に加えて、スリットによって、端末部の波打ちをより確実に抑制でき、外観の品質をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の表皮部材を示し、(a)は表皮部材の断面図、(b)は表皮部材の平面図、(c)は表皮部材の非縫製状態での第一基布及び第二基布の例を示す平面図である。
【
図2】(a)は同上表皮部材の縫製状態での裏側からの平面図、(b)は表皮部材の縫製状態での意匠側からの平面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態の表皮部材を示し、(a)は表皮部材の断面図、(b)は表皮部材の平面図、(c)は表皮部材の非縫製状態での第一基布及び第二基布の例を示す平面図である。
【
図4】(a)は同上表皮部材の縫製状態での裏側からの平面図、(b)は表皮部材の縫製状態での意匠側からの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)において、1は内装部品を示す。内装部品1は、例えば自動車などの車両の車室に用いられる。本実施の形態において、内装部品1は、例えばインストルメントパネル、ガーニッシュ、あるいはエアバッグカバーなどとして用いられる車両用の内装部品を例に挙げる。
【0017】
内装部品1は、基材2に対し、表皮部材3が貼り付けられて構成されている。
【0018】
基材2は、例えば合成樹脂などの部材により形成されている。基材2は、所定の面積を有する被覆面部5を有する。本実施の形態では、被覆面部5は、例えば第一部分5aと第二部分5bとが段差状に形成されている。
【0019】
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)に示す表皮部材3は、被覆面部5の少なくとも一部を覆って配置され、内装部品1の意匠性を高めるものである。表皮部材3は、複数の基布7が複数の縫製部8により縫製されて接合されて構成されている。
【0020】
基布7としては、例えば天然皮革、合成皮革などの皮革、あるいは布などが用いられる。基布7は、少なくとも2つ設定され、これらの基布が互いに縫製されて接合されている。本実施の形態では、基布7には、第一基布11と、第二基布12と、が設定されている。なお、基布7が3つ以上の場合には、互いに接合される基布7の一方が第一基布、他方が第二基布となる。
【0021】
図1(c)に示すように、第一基布11は、湾曲する第一曲線部15と、この第一曲線部15に切り欠き形成された複数のノッチ部16と、を端縁に有する。なお、第一基布11の全体の形状は、第一曲線部15とノッチ部16とを除き、基本的に被覆面部5の少なくとも一部を覆う任意の形状としてよい。
【0022】
第一曲線部15は、例えば第一基布11の外側に向かって凸状に形成されている。図示される例では、第一曲線部15は、円弧状に形成されている。
【0023】
ノッチ部16は、第一基布11の端縁の余剰分を削除する部分である。ノッチ部16は、第一曲線部15の端縁に三角形状に切り欠き形成されている。本実施の形態において、ノッチ部16は、例えば二等辺三角形状となっている。ノッチ部16は、第一曲線部15に沿って互いに連なって並んでいる。そのため、ノッチ部16が配置されている部分において、第一曲線部15の端縁は、凹頂点である頂点部16aと、凸頂点である先端部16bと、が交互に並ぶジグザグ形状のピンキング部となっている。
図1(b)に示すように、ノッチ部16の形状は、頂点部16aと先端部16bとの間の距離(ピッチ)D1が例えば3mm、切り込み深さD2がそれぞれ例えば3mmに設定されている。また、本実施の形態では、ノッチ部16の頂点部16a及び先端部16bは、それぞれ曲線状に湾曲され、尖りまたは角部を有さない形状となっている。頂点部16a及び先端部16bは、例えばそれぞれ半径0.3mmの円弧状となっている。
【0024】
図1(c)に示すように、第二基布12は、湾曲する第二曲線部21を端縁に有する。好ましくは、第二基布12は、第二曲線部21に複数のスリット22を有する。なお、第二基布12の全体の形状は、第二曲線部21とスリット22とを除き、基本的に第一基布11とともに被覆面部5(
図1(a))の少なくとも一部を覆う任意の形状としてよい。また、本実施の形態では、第二基布12の端縁近傍に第一基布11の端縁近傍を縫製する例を示すが、これに限らず、第一基布11の端縁近傍を縫製する第二基布12の位置は任意である。
【0025】
第二曲線部21は、例えば第二基布12の内側に向かって凸状に形成されている。つまり、第二曲線部21は、第二基布12の端縁に凹設されている。図示される例では、第二曲線部21は、円弧状に形成されている。第二曲線部21は、第一基布11の第一曲線部15に沿って湾曲されている。本実施の形態において、第二曲線部21は、第一基布11の第一曲線部15よりも曲率が大きい(曲率半径が小さい)円弧状となっている。
【0026】
スリット22は、第二曲線部21の端縁に、この第二曲線部21の湾曲と交差または直交する方向に沿って直線状に形成されている。これらスリット22は、第二曲線部21に沿って互いに並んで位置する。スリット22の切り込み深さD3は、例えば3mmに設定され、スリット22間の距離D4は、例えば4.5mmに設定されている。すなわち、スリット22の切り込み深さD3は、ノッチ部16の切り込み深さD2と等しく設定されている。
【0027】
そして、
図1(a)に示すように、第一基布11と第二基布12とが縫製部8により縫製されて接合された状態で、第一基布11の第一曲線部15及びノッチ部16を含む帯状の端末部25がそれ以外の第一基布本体部26の裏側に折り返され、第二基布12の第二曲線部21及びスリット22を含む帯状の端末部27に重ねられて、第一基布11の第一曲線部15及びノッチ部16を含む端末部25が第一基布11の第一基布本体部26の裏側と第二基布12の端末部27の表側との間に挟み込まれている。また、第一基布11の端末部25の端縁と、第二基布12の端末部27の端縁と、は、互いに揃えられて並んでいる。そのため、第二基布12の第二曲線部21の曲率に合わせて、第一基布11の端末部25の周長が、非縫製状態よりもノッチ部16によって縮められて大きく湾曲されている。そこで、第一基布11の第一基布本体部26と、第二基布12の端末部27以外の第二基布本体部28と、が端末部25,27を基準として一方側と他方側とに面状に拡がって位置する。
【0028】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第一基布11と第二基布12とを縫製する縫製部8は、少なくとも一部が第一基布11の端末部25に沿うようにそれぞれ形成される。本実施の形態では、第一基布11の端末部25は、第二基布12の端末部27の第二曲線部21の湾曲形状に合わせて湾曲されるため、縫製部8も第二基布12の第二曲線部21の湾曲形状に沿っている。
【0029】
本実施の形態において、縫製部8には、一次縫製部である第一縫製部31と、二次縫製部である第二縫製部32と、が設定されている。
【0030】
図1(a)、
図1(b)、及び
図2(b)に示すように、第一縫製部31は、第一基布11の端末部25と第二基布12とに亘り形成される。本実施の形態では、第一縫製部31は、第一基布11の端末部25と第二基布12の端末部27とに亘り形成される。第一縫製部31は、第一基布11の端末部25の第一基布本体部26からの折り返し部に位置する。第一縫製部31は、ノッチ部16の頂点部16aに対して離れた位置にあり、第一基布本体部26の裏側に位置するため、表側である意匠側からは見えず、裏側からのみ見える位置にある。例えば、第一縫製部31は、端末部25の先端部である先端部16bからの距離D5が6mmに設定されている。また、第一縫製部31は、端末部25,27の湾曲に応じた湾曲部分での曲率半径が25mm以上60mm以下となっている。本実施の形態において、第一縫製部31は、ミシンなどの縫製装置により形成される。
【0031】
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第二縫製部32は、第一基布11と第二基布12とに亘りノッチ部16と交差して形成される。本実施の形態では、第二縫製部32は、第一基布11の第一基布本体部26、端末部25及び第二基布12の端末部27に亘り形成される。そのため、第二縫製部32は、第一基布本体部26の表側に表出し、意匠側から見える位置にある。第二縫製部32は、第一縫製部31よりも端末部25,27の先端部側に位置する。第二縫製部32は、第一縫製部31に対して一定または略一定の間隔を置いて端末部25,27の先端側に離れた位置にあり、例えば第一縫製部31との間の距離D6が4mmに設定されている。したがって、本実施の形態では、第二縫製部32は、ノッチ部16の深さ方向の中央部よりも頂点部16a寄りにあり、第二基布12のスリット22とも交差する位置にある。本実施の形態において、第二縫製部32は、ミシンなどの縫製装置により形成され、ステッチ状の意匠(
図2(b))を表皮部材3の意匠側に呈する。
【0032】
そして、表皮部材3を製造する際には、まず、予め形成した第一基布11と第二基布12とを、端末部25,27の位置で互いに重ねる。このとき、第一基布11は、ノッチ部16により端末部25の曲率を大きくして第二基布12の端末部27に沿わせる。この状態で、第一基布11と第二基布12とを第一縫製部31により縫製して接合する。
【0033】
次いで、第一縫製部31による縫製代である端末部25に対して第一基布本体部26を重ね、第一基布11と第二基布12とに亘り第二縫製部32により縫製して接合する。このとき、第二縫製部32は、ノッチ部16及びスリット22と交差する位置にて、端末部25,27の湾曲形状に沿って縫製する。
【0034】
そして、製造された表皮部材3は、基材2の被覆面部5の少なくとも一部を覆って基材2に貼り付けられる。このとき、互いに重ねられた端末部25,27は、第一部分5aと第二部分5bとの段差部分に配置することで、例えば第一部分5aを第一基布11(第一基布本体部26)により覆い、第二部分5bを第二基布12(第二基布本体部28)により覆って内装部品1が製造される。
【0035】
このように、第1の実施の形態では、第一基布11の第一曲線部15及びノッチ部16を含む端末部25が裏側に折り返されて第二基布12の表側に重ねられた状態で第一基布11と第二基布12とを、第一基布11の端末部25に少なくとも一部が沿う複数の縫製部8により縫製して端末部25が挟み込み、少なくともいずれかの縫製部8、本実施の形態では第二縫製部32を、ノッチ部16と交差する位置に形成する。そのため、ノッチ部16と交差する縫製部8の第二縫製部32が仮にノッチ部16内に落ちても、第一基布11または第二基布12がノッチ部16内に位置するので、糸落ちに伴う糸撚れや縫製ピッチの異常が発生しにくく、例えば縫製部8(第一縫製部31)により第一基布11の端末部25が第二基布12に対して曲率半径が小さい湾曲状に接合されても、ノッチ部16により吸収しきれない第一曲線部15の内外周差を含む第一基布11の端末部25の波打ちを縫製部8(第二縫製部32)によって抑え込むことができる。したがって、縫製部8が曲率半径に起因する制限を受けにくく、特に第一縫製部31による縫製の曲率半径が60mm以下の場合でも波打ちを生じさせることなく対応可能であり、かつ、端末部の波打ちに起因する外観不良を防止できるので、縫製の自由度と外観品質とを両立できる。
【0036】
縫製部8は、第一基布11の端末部25と第二基布12とに亘り形成される第一縫製部31と、第一基布11と第二基布12とに亘りノッチ部16と交差して形成される第二縫製部32と、を設定することで、第一縫製部31による縫製の後に第二縫製部32による縫製を行うことにより、第一基布11と第二基布12とを容易に接合できる。
【0037】
第二基布12の第二曲線部21及びスリット22を含む端末部27の表側に第一基布11の端末部25が重ねられるので、スリット22によって、端末部25,27の波打ちをより確実に抑制できる。
【0038】
次に、第2の実施の形態について、
図3及び
図4を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
本実施の形態の表皮部材3は、第二縫製部32が複数、例えば2つ設定されているものである。
【0040】
図3(a)、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第二縫製部32は、端末部25,27において、一定または略一定の間隔を置いて互いに離れて並んでいる。そのため、第二縫製部32により、表皮部材3の意匠側に、2つのステッチが並行する、いわゆるダブルステッチ状の意匠を呈する。また、第一縫製部31と第二縫製部32との縫製代を確保するために、端末部25,27は、第1の実施の形態よりも幅広に設定されている。本実施の形態では、端末部25,27の幅Wが例えばそれぞれ9mmに設定され、第一部分5aと第二部分5bとの段差部分から端末部25,27の端部までの距離D7が例えば10mmに設定されている。また、第二縫製部32,32間の距離D8が例えば3mmに設定され、第二縫製部32から端末部25,27の端部までの距離D9が例えば3mmに設定されている。そのため、第二縫製部32,32は、それぞれノッチ部16と交差する位置にある。
【0041】
さらに、
図3(b)に示すように、第一基布11のノッチ部16において、頂点部16aと先端部16bとの間の距離(ピッチ)D1が例えば3mm、切り込み深さD2がそれぞれ例えば6mmに設定されている。また、
図3(c)に示すように、第二基布12のスリット22において、スリット22の切り込み深さD3は、例えば4mmに設定され、スリット22間の距離D4は、例えば4.5mmに設定されている。そのため、第二縫製部32は、一方がスリット22と交差し、他方がスリット22と交差しない位置にある。
【0042】
そして、表皮部材3を製造する際には、まず、第1の実施の形態と同様に第一基布11と第二基布12とを第一縫製部31により縫製して接合した後、第一縫製部31による縫製代である端末部25に対して第一基布本体部26を重ね、第一基布11と第二基布22とに亘り第二縫製部32,32により縫製して接合する。このとき、第二縫製部32は、ノッチ部16及びスリット22と交差する位置にて、端末部25,27の湾曲形状に沿って縫製する。
【0043】
このように、ノッチ部16のピッチ及び切り込み深さを適宜設定することにより、幅広の端末部25,27に対しても複数の第二縫製部32,32による縫製が可能になり、縫製の自由度と外観品質とを両立できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
また、表皮部材3は、第二縫製部32,32によりダブルステッチ状の意匠を呈する(
図4(b))ので、見栄えが向上する。
【0045】
なお、各実施の形態において示されている数値については、それぞれ固定のものではなく、基布7の種類や端末部25,27の幅(折り返し寸法)などに応じて任意に設定してよい。
【0046】
また、第一曲線部15及び第二曲線部21は、それぞれ円弧状としたが、これに限らず、例えば楕円弧状などでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば自動車などの車両の内装部品の表皮部材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
2 基材
3 表皮部材
7 基布
8 縫製部
11 第一基布
12 第二基布
15 第一曲線部
16 ノッチ部
21 第二曲線部
22 スリット
25,27 端末部
31 第一縫製部
32 第二縫製部