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特開2024-141155移動体設定システムおよび移動体設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141155
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】移動体設定システムおよび移動体設定方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/037 20060101AFI20241003BHJP
   B60R 25/24 20130101ALN20241003BHJP
【FI】
B60R16/037
B60R25/24
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052646
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松儀 良広
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直生
(72)【発明者】
【氏名】橋本 耕志
(72)【発明者】
【氏名】臼井 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】加持 将平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 太也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智裕
(57)【要約】
【課題】ユーザ管理機能を有する車載装置と連動して車両環境を自動調整する車両用制御システムに関し、車両の利便性を向上させるために、車載装置と電子キーをより適切に連携させること。
【解決手段】移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムであって、設定装置は、前記機器の設定情報を記憶する記憶部であって、前記設定情報を移動体の利用者に紐づけて管理する記憶部と、移動体の利用者を特定する特定部と、移動体の利用者が移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知する検知部と、特定部により特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を記憶部から取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行う設定部と、を備え、特定部は、検知部が特定行為を検知してから所定の操作が行われるまでの間において、前記利用者の選択操作を受け付ける、移動体設定システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムであって、
前記設定装置は、
前記機器の設定情報を記憶する記憶部であって、前記設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理する記憶部と、
前記移動体の利用者を特定する特定部と、
前記移動体の利用者が前記移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知する検知部と、
前記特定部により特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を前記記憶部から取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行う設定部と、
を備え、
前記特定部は、前記検知部が前記特定行為を検知してから所定の操作が行われるまでの間において、前記利用者の選択操作を受け付ける、
移動体設定システム。
【請求項2】
前記所定の操作は、前記移動体を起動する操作である、
請求項1に記載の移動体設定システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記所定の操作が行われたことに応じて前記利用者を確定し、確定された前記利用者に紐づけられた設定情報に基づいて前記機器の設定を行う、
請求項2に記載の移動体設定システム。
【請求項4】
前記特定部は、利用者の端末装置から受信された利用者情報をもとに前記移動体の利用者を特定するものであり、前記利用者の選択操作を受け付けた場合、前記端末装置に記憶されている変更前利用者の利用者情報を、変更後利用者の利用者情報で上書きさせる、
請求項1に記載の移動体設定システム。
【請求項5】
前記設定部は、前記特定行為が検知されてから前記所定の操作が行われるまでの間では前記利用者の設定情報に基づいて前記移動体のシートの位置の設定を行い、前記所定の操作が行われた後に前記シート以外の機器の設定を行う、
請求項1に記載の移動体設定システム。
【請求項6】
前記設定部は、前記利用者の選択操作が行われなかった場合、前記端末装置から受信された設定情報に基づいて前記移動体のシートの位置を設定する、
請求項1に記載の移動体設定システム。
【請求項7】
前記記憶部は、前記移動体の前回利用者の設定情報を記憶しているものであり、
前記設定部は、前記利用者の選択操作が行われなかった場合、前記前回利用者の設定情報に基づいて前記シート以外の機器の設定を行う、
請求項6に記載の移動体設定システム。
【請求項8】
前記特定部は、前記設定装置に登録されている利用者の一覧を表示する表示部と、前記表示部に表示された利用者のうち一の利用者を選択する操作を受け付ける入力部とを備えたディスプレイ装置である、
請求項1に記載の移動体設定システム。
【請求項9】
前記特定部は、利用者の選択操作を促す音声を出力する音声出力部を備える、
請求項1に記載の移動体設定システム。
【請求項10】
移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムであって、
前記設定装置は、
前記機器の設定情報を記憶する記憶部であって、前記設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理する記憶部と、
前記移動体の利用者を特定する特定部と、
前記移動体の利用者が前記移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知する検知部と、
前記特定部により特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を前記記憶部から取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行う設定部と、
を備え、
前記端末装置は、前記移動体の利用者のうちのいずれかに対応する設定情報を記憶するものであり、前記特定部によって前記移動体の利用者が特定された場合、予め記憶していた前記設定情報を前記特定された利用者の設定情報で上書きする、
移動体設定システム。
【請求項11】
移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムによる前記移動体の設定方法であって、
前記設定装置が、
前記機器の設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理し、
前記移動体の利用者を特定し、
前記移動体の利用者が前記移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知し、
前記特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行うものであり、
前記特定行為が検知されてから所定の操作が行われるまでの間において、前記利用者の選択操作を受け付ける、
移動体設定方法。
【請求項12】
移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムによる前記移動体の設定方法であって、
前記設定装置が、
前記機器の設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理し、
前記移動体の利用者を特定し、
前記移動体の利用者が前記移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知し、
前記特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行い、
前記端末装置が、
前記移動体の利用者のうちのいずれかに対応する設定情報を記憶し、前記移動体の利用者が特定された場合、予め記憶していた前記設定情報を前記特定された利用者の設定情報で上書きする、
移動体設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体設定システムおよび移動体設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キー等の携帯機ごとに固有な情報であるキーID(携帯機固有情報)を照合することにより、携帯機を取り出すことなく、車両ドアを施錠及び解錠することのできるいわゆるスマートエントリー機能が知られている。このようなスマートエントリー機能に関し、利用者の電子キーに記憶された個人情報を無線通信により車両側装置に送信し、車両側装置が受信された個人情報に対応付けられた設定情報を読み出し、当該設定情報に基づいて車両環境(シート位置など)を自動調整する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。従来のスマートエントリー機能には、複数の電子キーに異なる設定情報を紐づけることができるものも存在する。また近年では、車両環境を自動調整する技術として、車両ECU(Electronic Control Unit)に接続された車載装置でユーザ管理を行い、ログインしたユーザの設定情報をもとに車両環境を自動調整する技術も開発されている。この場合、利用者はログインユーザを変更することによって車両環境の設定内容を柔軟に変更することができるので車両の利便性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-214972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、利用者によっては必ずしも車両環境を細かく設定したいものとは限らず、車載装置を操作することなく電子キーの操作のみで車両の利用を開始したい場合もある。そのため、車載装置と電子キーをより適切に連携させることにより、車両の利便性を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ユーザ管理機能を有する車載装置と連動して車両環境を自動調整する車両用制御システムに関し、車両の利便性を向上させるために、車載装置と電子キーをより適切に連携させることができる移動体設定システムおよび移動体設定方法を提供することを目的の一つとする。そして、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1):この発明の一態様に係る移動体設定システムは、移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムであって、前記設定装置は、前記機器の設定情報を記憶する記憶部であって、前記設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理する記憶部と、前記移動体の利用者を特定する特定部と、前記移動体の利用者が前記移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知する検知部と、前記特定部により特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を前記記憶部から取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行う設定部と、を備え、前記特定部は、前記検知部が前記特定行為を検知してから所定の操作が行われるまでの間において、前記利用者の選択操作を受け付けるものである。
【0007】
(2):上記の(1)の態様において、前記所定の操作は、前記移動体を起動する操作である。
【0008】
(3):上記の(2)の態様において、前記設定部は、前記所定の操作が行われたことに応じて前記利用者を確定し、確定された前記利用者に紐づけられた設定情報に基づいて前記機器の設定を行うものである。
【0009】
(4):上記の(1)の態様において、前記特定部は、利用者の端末装置から受信された利用者情報をもとに前記移動体の利用者を特定するものであり、前記利用者の選択操作を受け付けた場合、前記端末装置に記憶されている変更前利用者の利用者情報を、変更後利用者の利用者情報で上書きさせるものである。
【0010】
(5):上記の(1)の態様において、前記設定部は、前記特定行為が検知されてから前記所定の操作が行われるまでの間では前記利用者の設定情報に基づいて前記移動体のシートの位置の設定を行い、前記所定の操作が行われた後に前記シート以外の機器の設定を行うものである。
【0011】
(6):上記の(1)の態様において、前記設定部は、前記利用者の選択操作が行われなかった場合、前記端末装置から受信された設定情報に基づいて前記移動体のシートの位置を設定するものである。
【0012】
(7):上記の(6)の態様において、前記記憶部は、前記移動体の前回利用者の設定情報を記憶しているものであり、前記設定部は、前記利用者の選択操作が行われなかった場合、前記前回利用者の設定情報に基づいて前記シート以外の機器の設定を行うものである。
【0013】
(8):上記の(1)の態様において、前記特定部は、前記設定装置に登録されている利用者の一覧を表示する表示部と、前記表示部に表示された利用者のうち一の利用者を選択する操作を受け付ける入力部とを備えたディスプレイ装置である。
【0014】
(9):上記の(1)の態様において、前記特定部は、利用者の選択操作を促す音声を出力する音声出力部を備えるものである。
【0015】
(10):この発明の一態様に係る移動体設定システムは、移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムであって、前記設定装置は、前記機器の設定情報を記憶する記憶部であって、前記設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理する記憶部と、前記移動体の利用者を特定する特定部と、前記移動体の利用者が前記移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知する検知部と、前記特定部により特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を前記記憶部から取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行う設定部と、を備え、前記端末装置は、前記移動体の利用者のうちのいずれかに対応する設定情報を記憶するものであり、前記特定部によって前記移動体の利用者が特定された場合、予め記憶していた前記設定情報を前記特定された利用者の設定情報で上書きするものである。
【0016】
(11):この発明の一態様に係る移動体設定方法は、移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムによる前記移動体の設定方法であって、前記設定装置が、前記機器の設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理し、前記移動体の利用者を特定し、前記移動体の利用者が前記移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知し、前記特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行うものであり、前記特定行為が検知されてから所定の操作が行われるまでの間において、前記利用者の選択操作を受け付けるものである。
【0017】
(12):この発明の一態様に係る移動体設定方法は、移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムによる前記移動体の設定方法であって、前記設定装置が、前記機器の設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理し、前記移動体の利用者を特定し、前記移動体の利用者が前記移動体に搭乗する際に行う特定行為を検知し、前記特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行い、前記端末装置が、前記移動体の利用者のうちのいずれかに対応する設定情報を記憶し、前記移動体の利用者が特定された場合、予め記憶していた前記設定情報を前記特定された利用者の設定情報で上書きするものである。
【発明の効果】
【0018】
(1)~(12)によれば、ユーザ管理機能を有する車載装置と連動して車両環境を自動調整する車両用制御システムに関し、車両の利便性を向上させるために、車載装置と電子キーをより適切に連携させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の車両用制御システム1の構成例を示す図である。
図2】アカウント管理情報92の内容の一例を示す図である。
図3】制御部70により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施形態の車両用制御システム1の動作例を示す図(その1)である。
図5】実施形態の車両用制御システム1の動作例を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の移動体設定システムおよび移動体設定方法の実施形態について説明する。
【0021】
[1.車両用制御システムの全体構成]
図1は、実施形態の車両用制御システム1の構成例を示す図である。車両用制御システム1は、複数の携帯無線端末10と、制御対象の車両(以下「自車両」という。)に搭載される車載装置30と、を備える。携帯無線端末10は車両用の「電子キー」の一例である。携帯無線端末10と車載装置30とは無線通信によって互いに通信可能であり、車載装置30は携帯無線端末10との通信を契機として自車両に所定の動作を行わせる。このような機構により、利用者は携帯無線端末10を利用して、自車両にドアロックの開錠やエンジンスタートなどの動作を行わせることができるものである。車両用制御システム1は「移動体設定システム」の一例であり、車載装置30は「設定装置」の一例である。自車両は移動体の一例であり、移動体設定システムにおける設定の対象は船舶や航空機など車両以外の移動体であってもよい。
【0022】
携帯無線端末10Aおよび10Bは複数の携帯無線端末10の一例であり、同様の機能構成を有有するものである。ここではメインキーおよびスペアキーを想定して2つの携帯無線端末10を例示するが、携帯無線端末10の数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。以下、特に区別しない場合、携帯無線端末10Aおよび10Bを総称して携帯無線端末10と記載する。また以下では、上記同様の機能構成について携帯無線端末10Aおよび10Bを区別して説明する必要がある場合、各機能部の符号に「A」または「B」を付加して区別する場合がある。例えば「通信部12A」は携帯無線端末10Aの通信部12を意味するものとする。携帯無線端末10は「端末装置」の一例である。
【0023】
[2.携帯無線端末の構成]
携帯無線端末10は、例えば、いわゆるFOBキー(key fob)や薄型のカードキーなどである。これらの携帯無線端末10は、例えば、財布に収容可能な大きさである。携帯無線端末10は、例えば、縦数cm~10cm、横数cm~10cm、厚さ数mm~数cm程度の大きさである。以下の実施形態では、携帯無線端末10は、一例としてFOBキーであるものとして説明するが、その他の電子キーであってもよい。また、携帯無線端末10は、スマートフォンなどの携帯電話、タブレット端末などにアプリケーションプログラムがインストールされることで上述した機能が付与されたものであってもよい。
【0024】
携帯無線端末10は、例えば、通信部12と、集積回路等を含むコントロールユニット14と、記憶部16と、受電部18と、電源20と、機械式キー22とを筐体11内に収納している。通信部12は、例えば受信した電波に対して増幅や復調等の所定の処理を行ったり、送信する電波を生成したりする。記憶部16は予め自車両の利用者のうちのいずれかの利用者の識別情報(後述のユーザID)と、当該識別情報に対応づけて車両環境設定情報を記憶している。
【0025】
コントロールユニット14は、通常、携帯無線端末10を省電力の状態であるスリープ状態に制御する。コントロールユニット14は、車載装置30からリクエスト信号を受信すると、携帯無線端末10をスリープ状態から起動状態に制御する。コントロールユニット14は、車載装置30から送信された(車室外または車室内)リクエスト信号の受信に応じた応答信号である(車室外または車室内)レスポンス信号を通信部12に送信させる。
【0026】
電源20は、例えばボタン電池などである。携帯無線端末10は、電源20から供給された電力によって作動する。電源20に蓄えられた電力量(残存電力量)が不足している場合、携帯無線端末10は、作動しない。この場合、利用者は、例えばボタン電池を交換する必要がある。電源20は、例えば、USB(Universal Serial Bus)給電により充電可能な電池であってもよい。
【0027】
機械式キー22は、機械的にドアのロック(ドアロック)の開錠または施錠を行うための鍵である。利用者が自車両のドアの鍵穴に機械式キー22を挿入して所定の操作を行うことで、自車両のドアロックは開錠または施錠状態に遷移する。
【0028】
[3.車載装置の構成]
車載装置30は、自車両に搭載される。車載装置30は、自車両の各部を制御して所定の動作を行わせることができる。所定の動作は、自車両の車両環境を利用者に応じた態様に調整するための動作である。本実施形態では、車載装置30は、シート位置と、シート位置以外の車両環境のうち少なくとも1つ以上と、を調整可能であるものとする。なお、以下では、シート位置を第1の車両環境と位置づけ、特に区別する必要がない場合には、シート位置以外の車両環境のうち少なくとも1つ以上を総称して「第2の車両環境」という場合がある。本実施形態において、第2の車両環境は、特定のものに限定されるものではない。
【0029】
例えば、第2の車両環境は、各種車載機器の状態のうちシート位置以外のものであってよい。例えば、第2の車両環境は、フェンダーミラーの角度やシートの傾き、ステアリングホイールの位置や角度などであってよい。また、第2の車両環境は、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)やHCS(Heated Cooled Seat)、MID(Multi-meter Information Display)、HUD(Head-Up Display)などの動作状態であってもよい。
【0030】
また、第2の車両環境は、自車両の動作制御に関する設定であってもよい。例えば、第2の車両環境は、ドアロックの解錠または施錠のタイミング設定、FCW(Forward Collision Warning:前方車衝突警報)における距離設定、RDM(路外逸脱抑制)のタイミング設定、ACC(Adaptive cruise control)やLKAS(Lane Keep Assist System)、BSI(後側方衝突防止支援システム)などの各種運転支援機能におけるアラート設定であってもよい。また、第2の車両環境は、自車両において利用可能なインフォテインメント機器に関する設定であってもよい。
【0031】
車載装置30は、ユーザアカウントの管理機能(ユーザ管理機能)を有し、ユーザアカウントごとに自車両の車両環境を切り替えることができる。より具体的には、車載装置30は車両環境の設定情報をユーザアカウントごとに管理しており、選択されたユーザアカウントについて、当該ユーザアカウントの設定情報に基づく処理を実行することにより車両環境を切り替えることができる。例えば、ユーザ管理機能は、オペレーティングシステムによって実現され得る。この場合、車両環境の切り替えは、ユーザアカウントのログイン処理として実現されてもよい。また、シート位置の自動調整機能は、オペレーティングシステムの機能として実現されてもよいし、当該オペレーティングシステム上で動作するアプリケーションプログラムの機能として実現されてもよい。
【0032】
車載装置30が搭載される車両は、例えば、三輪や、四輪等の自動車であり、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車や、電動機を動力源とした電気自動車、内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車等を含む。また、上述の電気自動車は、例えば、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池等の電池により放電される電力を使用して駆動される。
【0033】
車載装置30は、例えば、エンジンスイッチ部32と、給電ユニット34と、情報出力部36と、ドアロック制御部38と、ドアセンサ40と、シート制御部42と、車室外通信ユニット50と、車室内通信ユニット60と、制御部70と、エンジンECU82と、車載側記憶部90とを備える。
【0034】
エンジンスイッチ部32は、例えば、自車両の利用者が操作可能な位置に設けられたスイッチである。エンジンスイッチ部32は、例えば機械的スイッチである。エンジンスイッチ部32は、利用者に操作されると、操作されたことを示す操作信号を制御部70に出力する。エンジンスイッチ部32は「検知部」の一例である。
【0035】
給電ユニット34は、例えば、エンジンスイッチ部32付近に設けられる。給電ユニット34は、エンジンスイッチ部32が操作された場合に、制御部70の制御に基づいて、エンジンスイッチ部32から所定の範囲内に存在する携帯無線端末10に電力を供給する。例えば、給電ユニット34と携帯無線端末10の受電部18とは、電磁誘導の原理を用いて電力を送受電する。
【0036】
情報出力部36は、制御部70の指示に従って所定の情報を出力する。情報出力部36は、インジケータや情報を画像として表示する表示部である。表示部は、例えば、自車両の状態(速度等)を表示するインストルメントパネルの表示部である。また、表示部は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や、有機EL(Electroluminescence)表示装置等であってもよい。表示部は、自車両のウィンドウに画像を反射させるヘッドアップディスプレイであってもよいし、ナビゲーション装置が備える表示部等であってもよい。また、情報出力部36は、タッチパネルなどの、表示部と入力部とが一体に構成されたディスプレイ装置であってもよい。また、情報出力部36は、音声を出力するスピーカであってもよい。
【0037】
ドアロック制御部38およびシート制御部42は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムを実行することで実現される。ドアロック制御部38は、不図示のドアロックアクチュエータ、ドアセンサ40、および制御部70と接続されている。ドアロック制御部38は、例えば制御部70から自車両のドアロックの施錠または解錠を指示する信号を受信した場合、ドアロックアクチュエータを制御し、ドアロックの施錠または解錠を実行する。ドアロックアクチュエータは、自車両に設けられたドアのロック機構を駆動させることにより、ドアロックを開放状態または閉止状態に制御する。なお、ドアロック制御部38は、制御部70の一部であってもよい。
【0038】
ドアセンサ40は、例えば利用者がドアハンドルに触れると静電容量が変化する静電容量変化型のタッチセンサである。ドアセンサ40は、通常、オフ状態である。ドアセンサ40は、利用者がドアハンドルに触れ、静電容量が所定値以上に変化した場合、オン状態となってドアロックを解錠させるための指示信号を、ドアロック制御部38を介して制御部70に出力する。
【0039】
シート制御部42は、不図示のシート駆動用アクチュエータ、および制御部70と接続されている。シート制御部42は、例えば制御部70から自車両内のシートの位置変更を指示する信号を受信した場合、シート駆動用アクチュエータを制御し、シートを前後に移動させる。シート制御部42の制御対象は、典型的には運転席および/または助手席のシートであるが、他のシートが電動制御可能である場合には他のシートも制御対象とされてよい。シート駆動用アクチュエータは、自車両に設けられたスライド機構を駆動してシートを前後移動させることにより、シートを指定された位置に移動させる。シートが電動制御可能なリクライニングシートである場合、シート制御部42は、シート位置に加えて、シートの傾きを制御するように構成されてもよい。なお、シート制御部42は、制御部70の一部であってもよい。
【0040】
車室外通信ユニット50は、車室外アンテナ52と、車室外アンテナ52に電気的に接続された車室外通信部54を備える。車室外アンテナ52は、例えば自車両の運転席側のドアミラーや、ドアハンドル等に設けられる。車室外通信部54は、例えばインストルメントパネル表面下に設けられる。車室外通信ユニット50は、制御部70からドアロックを開錠させる指示信号、またはドアロックを施錠させる指示信号を受信したことに応じて、車室外の携帯無線端末10に対してユーザIDの送信を要求する車室外リクエスト信号を送信する。車室外アンテナ52は、携帯無線端末10から送信された車室外レスポンス信号を受信する。車室外通信部54は、車室外アンテナ52により受信された車室外レスポンス信号を取得し、取得した車室外レスポンス信号に対して増幅や復号等の処理を行って、車室外レスポンス信号に含まれる情報を制御部70に出力する。
【0041】
車室内通信ユニット60は、例えばインストルメントパネル表面下に設けられる。車室内通信ユニット60は、車室内アンテナ62と、車室内アンテナ62に電気的に接続された車室内通信部64を備える。車室内アンテナ62は、車室内の携帯無線端末10に車室内リクエスト信号を送信する。車室内アンテナ62は、車室内の携帯無線端末10から車室内レスポンス信号を受信する。車室内通信部64は、車室内アンテナ62により受信された車室内レスポンス信号を取得し、取得した車室内信号に対して増幅や復号等の処理を行って、車室内レスポンス信号に含まれる情報を制御部70に出力する。
【0042】
制御部70は、例えば、給電制御部72と、通信制御部74と、利用許可部76と、ユーザ管理部78と、を備える。給電制御部72、通信制御部74、利用許可部76、およびユーザ管理部78は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。プログラムは、例えば、自車両の制御機能を有する車両用オペレーティングシステムとして実装されてもよいし、車両用オペレーティングシステム上で動作するアプリケーションプログラムとして実装されてもよい。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。車載側記憶部90は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶装置によって実現される。
【0043】
給電制御部72は、給電ユニット34を制御して、携帯無線端末10に電力を供給し、携帯無線端末10が供給された電力を用いてユーザIDを自車両に対して送信することを可能にする。
【0044】
通信制御部74は、車室外通信ユニット50、または車室内通信ユニット60を制御して、携帯無線端末10と通信する。通信制御部74は、給電ユニット34が電磁誘導により携帯無線端末10に電力を供給した際に、利用許可部76が自車両の発進を許可した場合に、車室内通信ユニット60に車内に対して車室内リクエスト信号を送信させ、送信させた車室内リクエスト信号に対する携帯無線端末10の応答である車室内レスポンス信号を検出する。
【0045】
利用許可部76は、利用者による自車両の利用について許可または不許可を決定する。ここでいう自車両の利用許可とは、例えば、自車両のドアロックの開錠を許可することや、自車両の発進を許可することなどである。例えば、利用許可部76は、携帯無線端末10から車室外通信ユニット50を用いて受信したユーザIDを予め車載側記憶部90に登録されたユーザIDと照合し、照合結果に基づいて自車両のドアロックの開錠を許可する。例えば、利用許可部76は、受信したユーザIDと予め車載側記憶部90に登録されたユーザIDとが一致した場合に、車両のドアロックの開錠を許可する。このユーザIDは、車室外レスポンス信号に含まれる。
【0046】
また、例えば、利用許可部76は、携帯無線端末10から車室内通信ユニット60を用いて受信したユーザIDを予め車載側記憶部90に登録されたユーザIDと照合し、照合結果に基づいて車両の発進を許可する。利用許可部76は、受信したユーザIDと予め車載側記憶部90に登録されたユーザIDとが一致した場合に、車両の発進を許可する。このユーザIDは、車室内レスポンス信号に含まれる。また、車室内レスポンス信号には、電源20の残存電力量を示す情報が含まれている。車両の発進を許可するとは、エンジンの始動や、モータの始動、ステアリングホイールのロックの解除など任意の状態に制御することを許可することをいう。
【0047】
ユーザ管理部78は、自車両の利用者について車載装置30に登録されるユーザアカウントの管理を行う。ユーザアカウントには、シート位置の自動調整のための設定情報(以下「シート位置設定情報」という。)が対応づけられる。ユーザアカウントは必ずしも利用者と一対一に対応するものでなくてもよい。例えば、利用者はシート位置設定情報について設定内容が異なるユーザアカウントを複数作成しておき、利用状況や用途などに応じて使い分けてもよい。以下では簡単のため、車載装置30には利用者ごとに1つのユーザアカウントが登録されるものとする。ユーザアカウントの管理情報(以下「アカウント管理情報」という。)は例えば車載側記憶部90に保存される。
【0048】
ユーザ管理部78は、設定対象として指定されたユーザアカウント(以下「対象アカウント」という。)に応じてシート位置の自動調整を行う。より具体的には、ユーザ管理部78は、アカウント管理情報を参照して対象ユーザアカウントのシート位置設定情報を取得し、取得したシート位置設定情報に基づいてシート位置の自動調整を行う。なお、対象アカウントは、利用者が車載装置30に登録されているユーザアカウントの中から対象アカウントとして使用するユーザアカウントを選択する操作を行うことによって指定されてもよい。また、対象アカウントは、携帯無線端末10からユーザIDが送信された際に、携帯無線端末10との紐づけにより機械的に決定されてもよい。ユーザ管理部78は「特定部」および「設定部」の一例である。
【0049】
図2は、アカウント管理情報の一具体例を示す図である。アカウント管理情報92は、例えば、ユーザIDに対応端末IDと、車両環境設定情報とが対応付けられたテーブルとして管理される。ユーザIDはユーザアカウントの識別情報である。対応端末IDは、ユーザアカウントと携帯無線端末10との紐づけを表すものである。本実施形態では2つの携帯無線端末10Aおよび10Bを想定しているのでいずれか2つのユーザIDに対応端末IDが紐づけられる。図2の例において対応端末ID“1”は携帯無線端末10Aを表し、対応端末ID“2”は携帯無線端末10Bを表すものである。また、図2の例は、携帯無線端末10A(ここでは対応端末ID“1”)が“既定ユーザ#1”に紐づけられ、携帯無線端末10B(ここでは対応端末ID“2”)が“既定ユーザ#2”に紐づけられた場合を表すものである。
【0050】
車両環境設定情報は、第1の車両環境としてのシート位置の設定情報と、第2の車両環境の設定情報とを含む。シート位置設定情報は、例えば、制御対象のシートの識別情報と目的とするシート位置の情報(例えば基準位置からの変位量)との組で表される。図2の例において、“既定ユーザ#1”のシート位置設定情報は、“S1”で識別されるシートをシート位置“aaa”に制御することを表すものである。また、図2の例において、“既定ユーザ#2”のシート位置設定情報は、“S1”で識別されるシートをシート位置“bbb”に制御するとともに、“S2”で識別されるシートをシート位置“ccc”に制御することを表すものである。このように、シート位置設定情報は、複数シートの設定情報を含んでもよい。
【0051】
また、図2の例は、“一般ユーザ#1”のシート位置設定情報として、複数の設定パターン(ここではパターン1~4)が登録された場合を表すものである。なお、上述の“既定ユーザ#1”および“既定ユーザ#2”のシート位置設定情報はいずれも1つの設定パターンが登録された場合の例である。複数の設定パターンのうちどれを採用するかは、デフォルト値によって決定されてもよいし、利用者の選択操作によって決定されてもよい。また、複数の設定パターンは、利用者の切り替え操作によって変更されてもよいし、前回使用されたものが自動的に引き継がれるようにしてもよい。
【0052】
また、図2の例における“既定ユーザ#1”および“既定ユーザ#2”は初期状態の車載装置30に予め登録されている既定のユーザアカウントであり、利用者の携帯無線端末10に対応づけられたユーザアカウントである。ここでは携帯無線端末10Aおよび10Bの2台を想定して、2つの既定のユーザアカウントが作成されている。例えば、既定のユーザアカウントは、自車両のメーカーや車載装置のメーカー、自車両や車載装置を販売するカーディーラーなどによって車載装置30に登録される。また、既定のユーザアカウントに設定されるシート位置設定情報は、登録者(例えばメーカーやカーディーラーなど)が一律に決定したものであってもよいし、登録者が利用者の要望を反映するように決定したものであってもよい。
【0053】
[4.乗車および発進する際の処理]
[4.1.乗車する際の処理;通信によりドアのロックが開錠される場合]
利用者が、自車両に乗車する際、以下の処理が行われる。例えば、所定の条件を満たした場合(例えば、制御部70がドアのロックを解錠させるための指示信号を取得した場合)、制御部70の通信制御部74は、車室外通信ユニット50に車室外リクエスト信号を送信させる。
【0054】
携帯無線端末10は、車室外リクエスト信号を受信すると、車室外リクエスト信号の応答である車室外レスポンス信号を車室外通信ユニット50に送信する。
【0055】
制御部70のユーザ管理部78は、車室外通信ユニット50により受信された車室外レスポンス信号に含まれるユーザIDと、車載側記憶部90に記憶されたユーザIDとが一致するか否かを判定する。ユーザIDが一致する場合、ユーザ管理部78は、ドアロック制御部38に自車両のドアロックを開錠させる。これにより、利用者は、自車両に乗車(搭乗)することができる。
【0056】
[4.2.発進する際の処理;通常時の処理]
例えば、上述したように通信によりドアロックが開錠され、エンジン始動操作が行われると、通信制御部74は、車室内通信ユニット60に車室内リクエスト信号を送信させる。エンジン始動操作とは、例えば、ブレーキペダルが踏まれた状態でエンジンスイッチ部32が押下された操作である。携帯無線端末10は、車室内リクエスト信号を受信すると、車室内リクエスト信号の応答である車室内レスポンス信号を車室内通信ユニット60に送信する。
【0057】
制御部70のユーザ管理部78は、車室内通信ユニット60により受信された車室内レスポンス信号に含まれるユーザIDと、車載側記憶部90に記憶されたユーザIDとが一致するか否かを判定する。ユーザIDが一致する場合、ユーザ管理部78は、エンジンECU82にエンジンを稼働させる。これにより、利用者は、自車両のエンジンを始動させることができる。
【0058】
[5.車両環境の自動調整機能]
図3は、車載装置30が車両環境の自動調整に関して実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。また、図4は、図3のフローチャートが実行される状況を模式的に示した図である。以下、適宜図4を参照しながら、図3のフローチャートの流れを説明する。
【0059】
(ドアロック解錠)
まず、フローチャートの開始時点において、利用者は自車両の利用を開始するために、携帯無線端末10Aを所持した状態で自車両に接近している状況である。この状況において、車載装置30が携帯無線端末10Aを検知してリクエスト信号を送信することにより携帯無線端末10AからユーザIDを受信する(S101)。続いて、車載装置30は、受信したユーザIDを予め車載側記憶部90に登録されたユーザIDと照合し(S102)、両者が一致した場合に自車両のドアロックを解錠する(S103)。車載装置30は、ドアロックを解錠したことに応じて、シート位置の自動調整を行う(S104)。より具体的には、車載装置30は、携帯無線端末10Aに紐づけられたシート位置設定情報を取得してシート位置の自動調整を行う。ここでは例えばシートは登録済みのエントリポジションに移動される。
【0060】
(ドアオープンおよびユーザアカウントの選択画面表示)
続いて、利用者が、ドアロックが解錠された自車両に対してドアを開ける操作を行う。車載装置30は、ドアセンサ40によりこの操作を検知すると(S105)、省電力状態から通常状態に遷移する(S106)。車載装置30は、起動状態に遷移すると、ユーザアカウントの選択を促す画面を表示し(S107)、ユーザアカウントの選択操作を受け付け可能な状態となる。例えば、車載装置30は起動状態において図4に例示するようなユーザアカウント選択画面G10を表示させる。ユーザアカウント選択画面G10は、選択可能なユーザアカウントの一覧L1として“既定ユーザ#1”、“一般ユーザ#1”、“ゲストユーザ”を表示するとともに、新規ユーザの追加操作を受け付けるためのボタンインタフェースBT1を表示したものである。なお、車載装置30が省電力状態から通常状態に復帰するのに要する時間は短時間(数秒程度)であり、ドアオープンの検知タイミングと車載装置30の通常状態への復帰タイミングとはほぼ同タイミングとみなすことができる。ユーザ管理部78は、ユーザアカウント選択画面を表示する際、音声によってユーザアカウントの選択操作を促す音声出力部を備えるように構成されてもよい。
【0061】
また、車載装置30は、起動後の初期状態において自車両の前回利用時に選択されたユーザアカウント(以下「前回選択ユーザ」という。)が選択された状態でユーザアカウント選択画面G10を表示するものである。図4の例は、前回選択ユーザが“既定ユーザ#1”である場合を表したものである。このような表示をするために、車載装置30のユーザ管理部78は、前回選択ユーザの情報を車載側記憶部90に保存しているものとする。この状態において、利用者は、初期状態で選択されていない他のユーザアカウントを選択することもできるし、他のユーザアカウントを選択することなく次のエンジンスタート操作に進むことも可能である。後者の場合、初期状態で選択されているユーザアカウント(前回選択ユーザ)が使用されることとなる。
【0062】
(エンジンスタート)
車載装置30は、いずれかのユーザアカウントが選択された状態で、エンジンスタート操作が行われたことを検知すると(S108)、選択されているユーザアカウントの車両環境設定情報または前回選択ユーザの車両環境設定情報に基づいて、シート位置をはじめとする車両環境の自動調整を行う(S109)。ここで、いずれかのユーザアカウントが選択された状態とは、初期状態で前回選択ユーザが自動的に選択されている状態と、前回選択ユーザと異なるユーザアカウントが選択された状態とを含む。このとき、車載装置30は、自動調整にどのユーザアカウントの車両環境設定情報を使用するかを、エンジンスタート操作前の状況に応じて決定するものである。
【0063】
図5は、車両環境の自動調整についての動作例を示す図である。ここでは車載装置30に“既定ユーザ#1”、“既定ユーザ#2”、および“一般ユーザ#1”が登録済みであり、利用者が携帯無線端末10Aを使用して自車両を利用する場合を想定する。まず、第1の動作例は、携帯無線端末10Aの使用者が“既定ユーザ#1”の利用者であり、携帯無線端末10Aに紐づけられているユーザアカウントが“既定ユーザ#1”であり、前回利用時に選択されたユーザアカウント(前回選択ユーザ)が“既定ユーザ#1”であり、利用者が初期状態のユーザアカウントから変更を行わずにエンジンスタート操作を行った場合の動作例である。この場合、車載装置30は、シート位置および第2の車両環境の自動調整を、初期状態で選択されている“既定ユーザ#1”の車両環境設定情報に基づいて行う。この場合、利用者はユーザアカウントの選択操作(変更操作)を行うことなく自車両の車両環境を自分用に設定した/設定された内容で調整することができる。そして、この場合、ユーザアカウントが初期の選択状態から変更されていないので、車載装置30は、携帯無線端末10Aとユーザアカウントの紐づけを変更しない。
【0064】
続いて、第2の動作例は、携帯無線端末10Aの使用者が“既定ユーザ#1”の利用者であり、携帯無線端末10Aに紐づけられているユーザアカウントが“既定ユーザ#1”であり、前回選択ユーザが“一般ユーザ#1”であり、利用者が初期状態のユーザアカウントから変更を行わずにエンジンスタート操作を行った場合の動作例である。この場合、車載装置30は、シート位置の自動調整を、初期状態で選択されている“既定ユーザ#1”の車両環境設定情報に基づいて行う。一方、第2の車両環境については、車載装置30は、前回選択ユーザである“一般ユーザ#1”の車両環境設定情報に基づいて自動調整を行う。この場合、利用者は、エンジンスタート操作前にユーザアカウントの変更操作を行わない場合であっても、少なくともシート位置については自分用に設定した/設定された内容で調整することができる。そして、この場合、ユーザアカウントが初期の選択状態から変更されていないので、車載装置30は、携帯無線端末10Aとユーザアカウントの紐づけを変更しない。なお、この場合、次回利用時には今回利用者のユーザアカウントが前回選択ユーザとなるので、今回利用者は次回利用時においてユーザアカウントの変更操作を行うことなく、自車両について、第1の車両環境(シート位置)および第2の車両環境の両方を自分用に設定した/設定された内容で調整することができる。
【0065】
続いて、第3の動作例は、携帯無線端末10Aの使用者が“既定ユーザ#2”の利用者であり、携帯無線端末10Aに紐づけられているユーザアカウントが“一般ユーザ#1”であり、前回選択ユーザが“一般ユーザ#1”であり、利用者が初期状態のユーザアカウントから“既定ユーザ#2”に変更した上でエンジンスタート操作を行った場合の動作例である。この場合、車載装置30は、シート位置および第2の車両環境の自動調整を、変更後の“既定ユーザ#2”の車両環境設定情報に基づいて行う。そして、この場合、ユーザアカウントが初期の選択状態から変更されたので、車載装置30は、携帯無線端末10Aに対するユーザアカウントの紐づけを、“一般ユーザ#1”から“既定ユーザ#2”に変更する。この場合、携帯無線端末10Aは、変更後の利用者情報(ユーザIDおよび車両環境設定情報)を車載装置30から取得し、記憶している変更前の利用者情報を変更後の利用者情報で上書きする。このように、携帯無線端末10Aの使用者と、携帯無線端末10Aとユーザアカウントの紐づけが整合していない場合、車載装置30は、変更後のユーザアカウントの車両環境設定情報で車両環境の自動調整を行うとともに、携帯無線端末10Aとユーザアカウントの紐づけを更新するものである。この場合、次回利用時には今回利用者のユーザアカウントが前回選択ユーザアカウントとなるので、今回利用者は次回利用時においてユーザアカウントの変更操作を行うことなく、自車両について、第1の車両環境(シート位置)および第2の車両環境の両方を自分用に設定した/設定された内容で調整することができる。
【0066】
以上説明した実施形態の車両用制御システム1によれば、ユーザ管理機能を有する車載装置と連動して車両環境を自動調整する車両用制御システム1に関し、車載装置と電子キーをより適切に連携させ、車両の利便性を向上させることができる。
【0067】
上述のとおり実施形態の車載装置30は、ユーザ管理機能を有し、車両環境の自動調整をユーザアカウントごとに管理することができるものであるが、このような機能を有さない従来型の車載装置を搭載した車両では、車両環境の自動調整を携帯無線端末に紐づけて管理することが行われていたが、このような従来車両の利用者の中には、車両環境の自動調整について従来方式での操作感や操作性を好む者も少なからず存在する。一方で、情報機器の高度化が進んでおり、車載装置についても、実施形態の車載装置30のように、ユーザ管理機能を有し、車両に関する各種設定をユーザアカウントごとに管理することができるものが今後一般的になっていくことも想定される。実施形態の車載装置30によれば、このような車載装置の高度化に対応しつつも、車両環境の自動調整については従来方式と同様の操作感や操作性を実現することができるものである。
【0068】
上記の実施形態では、ドアオープン(特定行為の一例)が検知されてからエンジンスタート操作が行われるまでの期間にユーザアカウントの変更操作を受け付ける場合について説明したが、この期間の開始タイミングは、ドアオープンの検知タイミングに代えて、ドアロックが解除されたタイミングであってもよいし、利用者の接近が検知されたタイミング(例えばリクエスト信号を送信したタイミングなど)であってもよい。
【0069】
また、上記の実施形態では、利用許可部76による自車両の利用許可がユーザ管理機能から独立して実行される場合について説明したが、利用許可部76は、ユーザ管理機能と連携して自車両の利用許可を行うように構成されてもよい。例えば、車載側記憶部90に登録されたユーザIDをアカウント管理情報92で管理するようにしてもよい。この場合、利用許可部76は、アカウント管理情報92を参照してユーザIDの照合を行うことにより、対象アカウントと対応ユーザIDを認識するように構成されてもよい。この場合、利用許可部76が、自車両の利用許可に続けて、車両環境の自動調整処理を行うように構成されてもよい。
【0070】
また、車載装置30のユーザ管理部78は、ユーザアカウントについてログイン処理を行ってもよい。例えば、ユーザ管理部78は、ユーザIDごとにパスワードを管理し、利用者が入力したユーザIDおよびパスワードが車載装置30で管理されているものと一致した場合にログイン状態に遷移するように構成されてもよい。この場合、車両環境の自動調整は、ログイン状態に遷移する処理の一環として行われてもよい。
【0071】
また、ユーザ管理部78は、スイッチやボタン等の入力装置に対する操作に応じて、シート位置設定情報の設定パターンを切り替えるように構成されてもよい。例えば、このような入力装置は、ドアスイッチとして実現されてもよい。例えば、各設定パターンに対応する個数のドアスイッチを設け、操作されたドアスイッチに対応づけられた設定パターンが選択されてもよい。また、ユーザ管理部78は、この選択に応じて、車両環境の自動調整を行ってもよい。また、ユーザ管理部78は、複数のドアスイッチを設ける代わりに1つのドアスイッチを設け、操作があるごとに設定パターンを切り替えたり、操作の態様(例えばボタン操作の回数やボタン押下の長さなど)で選択すべき設定パターンを認識したりするように構成されてもよい。
【0072】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…車両用制御システム、10,10A,10B…携帯無線端末、11…筐体、12…通信部、14…コントロールユニット、16…記憶部、18…受電部、20…電源、22…機械式キー、30…車載装置、32…エンジンスイッチ部、34…給電ユニット、36…情報出力部、38…ドアロック制御部、40…ドアセンサ、42…シート制御部、50…車室外通信ユニット、52…車室外アンテナ、54…車室外通信部、60…車室内通信ユニット、62…車室内アンテナ、64…車室内通信部、70…制御部、72…給電制御部、74…通信制御部、76…利用許可部、78…ユーザ管理部、82…エンジンECU、90…車載側記憶部、92…アカウント管理情報
図1
図2
図3
図4
図5