(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141157
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】クリップ接続構造
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20241003BHJP
F16B 2/22 20060101ALI20241003BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241003BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16B19/00 E
F16B2/22 C
F16B19/00 Q
H02G3/30
H02G3/04 062
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052648
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 昇平
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 紀夫
【テーマコード(参考)】
3J022
3J036
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA15
3J022EA15
3J022EB02
3J022EC13
3J022FA05
3J022FB03
3J022FB08
3J022FB12
3J022HB06
3J036AA03
3J036BA01
3J036DA03
3J036DA13
3J036DB04
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G363AA12
5G363BA02
5G363DA13
(57)【要約】
【課題】クリップの剛性を高めるクリップ接続構造を提供する。
【解決手段】例えばプロテクタ2である被取付体に形成されているクリップ20を取付部としての構造部100に形成されている孔部101に挿入させることで、被取付体を取付部に取り付けるクリップ接続構造1であって、クリップ20は、被取付体の本体構造部2aから第1方向に突出し、第1方向に垂直な第2方向での厚さがクリップ20の第2方向での厚さTの寸法に設定される支持部21と、第1方向及び第2方向の双方に垂直な第3方向で支持部21を挟む第1領域R1と第2領域R2とのうち第1領域R1に配置される第1係合部26aと、第2領域R2に配置される第2係合部26bとを有する。第1係合部26aと第2係合部26bとは、被取付体が取付部に取り付けられたとき、第2方向に沿って互いに反対方向で孔部101に係合する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付体に形成されているクリップを取付部に形成されている孔部に挿入させることで、前記被取付体を前記取付部に取り付けるクリップ接続構造であって、
前記クリップは、
前記被取付体の本体構造部から第1方向に突出し、当該第1方向に垂直な第2方向での厚さが前記クリップの前記第2方向での厚さの寸法に設定される支持部と、
前記第1方向及び前記第2方向の双方に垂直な第3方向で前記支持部を挟む第1領域と第2領域とのうち前記第1領域に配置される第1係合部と、
前記第2領域に配置される第2係合部と、を有し、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記被取付体が前記取付部に取り付けられたとき、前記第2方向に沿って互いに反対方向で前記孔部に係合する、クリップ接続構造。
【請求項2】
前記クリップは、
前記第1領域で前記本体構造部から前記第1方向に突出する第1側部と、
前記第2領域で前記本体構造部から前記第1方向に突出する第2側部と、を有し、
前記第1係合部は、
前記第1側部を前記第2方向で貫通する第1開口部と、
前記第1開口部において前記本体構造部から最も離間している第1支持端で支持され、前記第1開口部の空間領域内で撓む第1係合爪と、を有し、
前記第2係合部は、
前記第2側部を前記第2方向で貫通する第2開口部と、
前記第2開口部において前記本体構造部から最も離間している第2支持端で支持され、前記第2開口部の空間領域内で撓む第2係合爪と、を有する、請求項1に記載のクリップ接続構造。
【請求項3】
前記支持部は、前記第2方向での両端部である第1側端部と第2側端部とを有し、
前記第1側部は、前記第1側端部と連続し、
前記第2側部は、前記第2側端部と連続する、請求項2に記載のクリップ接続構造。
【請求項4】
前記クリップは、
前記第1領域で前記本体構造部から前記第1方向に突出し、かつ、前記第1側部と連続する第1補強部と、
前記第2領域で前記本体構造部から前記第1方向に突出し、かつ、前記第2側部と連続する第2補強部と、を有し、
前記第1補強部及び前記第2補強部は、それぞれ、前記クリップの前記第3方向での両端部に配置される、請求項3に記載のクリップ接続構造。
【請求項5】
前記第1補強部及び前記第2補強部は、それぞれ、前記第2方向での厚さが前記クリップの前記厚さの寸法に設定される、請求項4に記載のクリップ接続構造。
【請求項6】
前記被取付体は、ワイヤーハーネスを収容するプロテクタであり、
前記プロテクタは、少なくとも一部が前記第3方向に延伸し、かつ、当該第3方向で互いに離間する複数の前記クリップを有する、請求項1又は2に記載のクリップ接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内部には、各種のワイヤーハーネスが配索されている。特許文献1は、いわゆるスナップ止めとして機能する羽根部としての弾性係止片を有するクリップを介して車両内にワイヤーハーネスを取り付ける構造に関する技術を開示している。このクリップでは、2つの弾性係止片が結合軸としての柱部を基準として互いに対称に設置されている。一方、車両内の一部である壁部には、クリップ接続用の孔部が予め設けられており、各々の羽根部が孔部に挿入されて変形した後に壁部を貫通して元の形状に戻ることで、クリップが孔部に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているクリップ接続構造では、クリップにおいて2つの羽根部の各々の撓み方向が結合軸を挟んで1つの方向で並ぶので、特に2つの羽根部が並ぶ方向では、結合軸の寸法が小さくなるため、クリップの剛性の確保に懸念がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、クリップの剛性を高めるクリップ接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、被取付体に形成されているクリップを取付部に形成されている孔部に挿入させることで、被取付体を取付部に取り付けるクリップ接続構造であって、クリップは、被取付体の本体構造部から第1方向に突出し、第1方向に垂直な第2方向での幅がクリップの第2方向での厚さの寸法に設定される支持部と、第1方向及び第2方向の双方に垂直な第3方向で支持部を挟む第1領域と第2領域とのうち第1領域に配置される第1係合部と、第2領域に配置される第2係合部と、を有し、第1係合部と第2係合部とは、被取付体が取付部に取り付けられたとき、第2方向に沿って互いに反対方向で孔部に係合する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリップの剛性を高めるクリップ接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るクリップ接続構造を適用したプロテクタの斜視図である。
【
図2】
図1とは別方向から見たプロテクタの斜視図である。
【
図5】
図4中のV-V断面に対応した第1クリップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて一実施形態に係るクリップ接続構造について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るクリップ接続構造1を適用した被取付体としてのプロテクタ2の斜視図である。
図2は、
図1とは別方向から見たプロテクタ2の斜視図である。
【0011】
クリップ接続構造1は、被取付体に形成されているクリップ20を取付部に形成されている孔部に挿入させることで、被取付体を取付部に取り付ける。本実施形態では、クリップ接続構造1が自動車等の車両の内部に配索されるワイヤーハーネス200を車両内の所定の設置位置に取り付けるための構造として採用される場合を例示する。具体的には、本実施形態での被取付部は、少なくとも一部がワイヤーハーネス200を収容するプロテクタ2である。一方、本実施形態での取付部は、車両内においてワイヤーハーネス200の配索域に存在する構造部100(
図3及び
図5参照)である。構造部100には、クリップ20が係合される孔部101が予め形成されている。
【0012】
プロテクタ2は、例えば合成樹脂を材料として、金型を用いて一体成形される部材である。プロテクタ2は、本体構造部2aと、複数のクリップ20とを有する。
【0013】
以下、クリップ接続構造1に関する各部の形状等を説明するために、プロテクタ2の形状を参照して、各方向を次のように規定する。Z方向は、プロテクタ2の本体構造部2aからクリップ20が突出する方向として規定される第1方向である。X方向は、Z方向に対して垂直な第2方向である。Y方向は、Z方向及びX方向の双方に対して垂直な第3方向である。この場合、プロテクタ2全体に関して、Z方向は高さ方向に、X方向は幅方向に、Y方向は延伸方向にそれぞれ対応する。一方、クリップ20に関して、Z方向は長さ方向に、X方向は厚さ方向に、Y方向は幅方向にそれぞれ対応する。
【0014】
本体構造部2aは、ワイヤーハーネス200の配索経路に合わせてY方向に延伸する収容空間Sを形成し、収容空間S内にワイヤーハーネス200の一部を収容する。本体構造部2aは、それぞれ平板状である、底壁10と、上壁11と、側壁12と、カバー13とを有する。
【0015】
底壁10は、収容空間Sに面する内面側とはZ方向で反対側の外面側で各々のクリップ20を支持する。上壁11は、底壁10とZ方向で対向する。側壁12は、底壁10及び上壁11に対して垂直な第1側壁である。側壁12のZ方向での一方の側端部は、上壁11のX方向での一方の側端部と連続する。側壁12のZ方向での他方の側端部は、底壁10のX方向での一方の側端部と連続する。カバー13は、閉じた状態で、側壁12とX方向で対向する第2側壁である。カバー13のZ方向での一方の側端部は、上壁11のX方向での他方の側端部とヒンジ部14を介して連続する固定端である。カバー13のZ方向での他方の側端部は、底壁10のX方向での他方の側端部と接続可能な自由端である。
【0016】
また、カバー13は、底壁10の側端部と接続される側の側端部に、カバー係合部15を有する。一方、底壁10は、カバー13の側端部と接続される側の側端部に、カバー係合部15を係合させるカバー係止部16を有する。この場合、カバー係合部15がカバー係止部16に係合していないとき、カバー13は、ヒンジ部14を基軸として回転し、開いた状態になることができる。カバー13が開いているとき、本体構造部2aにおける側壁12とX方向で対向する領域は、外部に向けて開放される。作業者は、当該開放領域からワイヤーハーネスを収容空間S内に収容させることができる。一方、カバー係合部15がカバー係止部16に係合しているとき、カバー13は、閉じた状態になる。カバー13が閉じているとき、上記開放領域が覆われることで、本体構造部2aは、ワイヤーハーネスが配置される収容空間Sを有する筒体となる。本実施形態では、本体構造部2aは、一例として、幅寸法が高さ寸法よりも小さくなるような平形の筒体である。
【0017】
また、本実施形態では、後述のとおり、プロテクタ2は、Y方向で互いに離間した2つのクリップ20を有する。そこで、カバー係合部15とカバー係止部16との組み合わせは、クリップ20の配置に合わせて、以下のように3つ設けられてもよい。まず、2つのクリップ20の間の領域に、第1カバー係合部15aと第1カバー係止部16aとの組み合わせが設けられる。一方、Y方向で各々のクリップ20よりも本体構造部2aの端側の各々の領域に、第2カバー係合部15bと第2カバー係止部16bとの組み合わせと、第3カバー係合部15cと第3カバー係止部16cとの組み合わせとが設けられる。また、各々のカバー係合部15とカバー係止部16との組み合わせは、底壁10において、クリップ20が支持される外面側で係合するように配置される。これにより、本体構造部2aの幅寸法が大きくなることを抑えつつ、カバー13の閉状態をより確実に維持させることができる。
【0018】
クリップ20は、本体構造部2aからZ方向に突出する柱状の構造部である。本実施形態では、一例として、プロテクタ2は、Y方向で互いに離間した、第1クリップ20aと第2クリップ20bとを有する。第1クリップ20aと第2クリップ20bとでは、基本形状が同一であり、外形寸法が異なる。そこで、以下、第1クリップ20aに着目して、クリップ20の基本形状について説明する。
【0019】
図3は、X方向視での第1クリップ20aの側面図である。
図4は、Z方向視での第1クリップ20aの底面図である。
図5は、
図4中のV-V断面に対応し、第1係合部26aを通るように切断された第1クリップ20aの断面図である。
図3及び
図5では、構造部100と、第1クリップ20aが挿入される孔部101とが二点鎖線で示されている。また、
図4では、
図3中のA-A断面に対応する断面部分が破線で示されている。
【0020】
第1クリップ20aは、支持部21と、第1補強部22aと、第2補強部22bと、第1側部23aと、第2側部23bと、先端壁部24とを有する。
【0021】
支持部21は、本体構造部2aからZ方向に突出する。本実施形態では、支持部21は、X方向の寸法がY方向の寸法よりも長く設定された板状の壁部である。また、支持部21は、X方向での両端部として、第1側端部21aと第2側端部21bとを有する。第1側端部21aの最外面と第2側端部21bの最外面とを結んだ支持部21のX方向での厚さは、第1クリップ20aのX方向での厚さTの寸法に設定される。なお、第1クリップ20aの厚さTには、各々後述する、第1側部23a又は第2側部23bからの第1係合部26a又は第2係合部26bのX方向での突出部分は除かれる。また、第1クリップ20aでは、支持部21を基準として、Y方向で支持部21を互いに挟む第1領域R1と第2領域R2との2つの領域が規定される。
【0022】
第1補強部22aは、第1領域R1に配置される側の補強部22であり、本体構造部2aから第1方向に突出する。本実施形態では、第1補強部22aは、X方向の寸法がY方向の寸法よりも長く設定された板状の壁部である。また、第1補強部22aは、第1クリップ20aのY方向での一方の端部に配置される。本実施形態では、第1補強部22aのX方向での厚さは、支持部21のX方向での厚さと同様に、第1クリップ20aの厚さTの寸法に設定される。
【0023】
第2補強部22bは、第2領域R2に配置される側の補強部22であり、本体構造部2aから第1方向に突出する。本実施形態では、第2補強部22bは、X方向の寸法がY方向の寸法よりも長く設定された板状の壁部である。また、第2補強部22bは、第1クリップ20aのY方向での他方の端部に配置される。本実施形態では、第2補強部22bのX方向での厚さは、支持部21のX方向での厚さと同様に、第1クリップ20aの厚さTの寸法に設定される。なお、第1補強部22a及び第2補強部22bのY方向での各々の幅は、互いに同一とする。
【0024】
また、第1補強部22aと第2補強部22bとは、それぞれ、支持部21から同一間隔で離間する。つまり、第1クリップ20aでは、X方向の寸法を各々厚さTとした、第1補強部22a、支持部21及び第2補強部22bが、Y方向に沿って等間隔で並ぶ。この場合、第1クリップ20aのY方向での幅は、
図4に示すように、第1補強部22aの最外面と第2補強部22bの最外面とを結んだ幅Wで規定される。つまり、第1クリップ20aのXY平面での最大断面範囲は、幅Wと厚さTとで規定される矩形状となる。
【0025】
第1側部23aは、第1領域R1に配置される側の側部23であり、本体構造部2aからZ方向に突出する。本実施形態では、第1側部23aは、Y方向の寸法がX方向の寸法よりも長く設定された板状の壁部である。また、第1側部23aでは、Y方向の一方の側端部が支持部21と連続し、Y方向の他方の側端部が第1補強部22aと連続する。このとき、第1側部23aは、支持部21の第1側端部21aと連続して、X方向での一方の最外面を有するように配置される。更に、第1側部23aは、第1領域R1に配置される側の係合部26として、第1係合部26aを有する。
【0026】
第1係合部26aは、第1開口部25aと、第1係合爪28aとを有する。第1開口部25aは、第1係合部26aに設けられる側の開口部25であり、第1側部23aをX方向で貫通する。第1係合爪28aは、第1係合部26aに設けられる側の係合爪28である。ここで、第1開口部25aは、本体構造部2aから最も離間し、第1開口部25aの側に設けられる支持端27としての第1支持端27aを有する。第1係合爪28aは、第1支持端27aで支持され、第1クリップ20aが孔部101に挿入されるときには、
図5に示すように、孔部101と接触して第1開口部25aの空間領域内で撓む。
【0027】
第2側部23bは、第2領域R2に配置される側の側部23であり、本体構造部2aからZ方向に突出する。本実施形態では、第2側部23bは、Y方向の寸法がX方向の寸法よりも長く設定された板状の壁部である。また、第2側部23bでは、Y方向の一方の側端部が支持部21と連続し、Y方向の他方の側端部が第2補強部22bと連続する。このとき、第2側部23bは、支持部21の第2側端部21bと連続して、X方向での他方の最外面を有するように配置される。更に、第2側部23bは、第2領域R2に配置される側の係合部26として、第2係合部26bを有する。なお、第1側部23a及び第2側部23bのX方向での各々の厚さは、互いに同一とする。
【0028】
第2係合部26bは、第2開口部25bと、第2係合爪28bとを有する。第2開口部25bは、第2係合部26bに設けられる側の開口部25であり、第2側部23bをX方向で貫通する。第2係合爪28bは、第2係合部26bに設けられる側の係合爪28である。ここで、第2開口部25bは、本体構造部2aから最も離間し、第2開口部25bの側に設けられる支持端27としての第2支持端27bを有する。第2係合爪28bは、第2支持端27bで支持され、第1クリップ20aが孔部101に挿入されるときには、孔部101と接触して第2開口部25bの空間領域内で撓む。なお、第1係合部26aと第2係合部26bとの形状自体は、互いに同一である。
【0029】
また、第1係合部26aと第2係合部26bとは、それぞれ、支持部21から同一間隔で離間する。更に、第1係合部26aと第2係合部26bとは、プロテクタ2が車両内の構造部100に取り付けられたとき、X方向に沿って互いに反対方向で孔部101に係合する。
【0030】
先端壁部24は、第1クリップ20aにおいて本体構造部2aから最も離間した部分に配置され、XY平面に沿った主平面を有する壁部である。先端壁部24は、支持部21、第1補強部22a、第2補強部22b、第1側部23a及び第2側部23bのすべての先端部と連続する。ここで、本実施形態では、支持部21、第1補強部22a、第2補強部22b、第1側部23a及び第2側部23bの各々の先端部は、第1クリップ20aのXY平面での断面範囲が先端壁部24に向かうにつれて徐々に狭くなるようなテーパー部29を構成する。つまり、先端壁部24のXY平面での断面形状は、幅Wと厚さTとで規定される第1クリップ20aのXY平面での最大断面範囲よりも小さくなる。第1クリップ20aは、先端部をテーパー部29とすることで、構造部100の孔部101に挿入されやすくなる。そして、第1クリップ20aのZ方向での長さは、本体構造部2aから先端壁部24の最外面までの長さLとして規定される。
【0031】
一方、第2クリップ20bの形状は、第1クリップ20aと基本形状は同一としつつ、第2クリップ20bが挿入される孔部101の形状、又は、構造部100において孔部101が形成されている位置などの各種条件に基づいて、各部の寸法を相違させ得る。本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、第2クリップ20bの厚さTの寸法は、第1クリップ20aの厚さTの寸法と同一である。一方、第2クリップ20bの幅Wの寸法は、第1クリップ20aの幅Wの寸法よりも小さい。また、第2クリップ20bの長さLの寸法は、第1クリップ20aの長さLの寸法よりも大きい。なお、第1係合部26a及び第2係合部26bの配置は、第1クリップ20aと第2クリップ20bとで同一である。
【0032】
次に、クリップ接続構造1の作用及び効果について説明する。
【0033】
クリップ接続構造1は、被取付体に形成されているクリップ20を取付部に形成されている孔部に挿入させることで、被取付体を取付部に取り付ける。クリップ20は、被取付体の本体構造部から第1方向に突出し、第1方向に垂直な第2方向での厚さがクリップ20の第2方向での厚さTの寸法に設定される支持部21を有する。また、クリップ20は、第1方向及び第2方向の双方に垂直な第3方向で支持部21を挟む第1領域R1と第2領域R2とのうち第1領域R1に配置される第1係合部26aと、第2領域R2に配置される第2係合部26bとを有する。第1係合部26aと第2係合部26bとは、被取付体が取付部に取り付けられたとき、第2方向に沿って互いに反対方向で孔部に係合する。
【0034】
ここで、上記例示では、被取付体は、プロテクタ2に相当し、本体構造部は、本体構造部2aに相当する。取付部は、車両内の構造部100に相当し、孔部は、孔部101に相当する。また、上記例示では、第1方向はZ方向に、第2方向はX方向に、第3方向はY方向にそれぞれ相当する。
【0035】
まず、クリップ20は、第1方向に突出する支持部21を幹部とし、一方、クリップ20が101に進入したときに第2方向に沿って互いに反対方向で孔部101に係合する第1係合部26aと第2係合部26bとを有する。したがって、クリップ20は、孔部101に確実に保持されることになるので、クリップ接続構造1によれば、被取付体を取付部に対して確実に取り付けることができる。
【0036】
また、クリップ20では、第3方向で支持部21を挟んで第1領域R1と第2領域R2とが規定され、第1係合部26aが第1領域R1に配置されつつ、第2係合部26bが第2領域R2に配置される。つまり、第1係合部26aと第2係合部26bとは、第3方向で互いにずれて配置される。したがって、第1係合部26aと第2係合部26bとの間の領域にある支持部21は、少なくとも第2方向では係合部26の配置に干渉されることがなく、自身の厚さ寸法を大きく設定することができるので、クリップ20の剛性を高めることができる。また、支持部21の第2方向での厚さは、クリップ20の第2方向での厚さTの寸法に設定されるので、支持部21の大きさをクリップ20の外形に関する制限内で最も大きくすることができるので、クリップ20の剛性をより高めることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、クリップ20の剛性を高めるクリップ接続構造1を提供することができる。
【0038】
また、クリップ接続構造1によれば、次のような効果も期待できる。
【0039】
一般的な2つの羽根部を有するクリップでは、長穴タイプ又は真円タイプとして、当該クリップが挿入される孔部の寸法が標準値として予め決定されているので、クリップの形状に関しても、変更し得る寸法範囲が狭い。これに対して、本実施形態におけるクリップ20では、支持部21の第2方向での厚さがクリップ20の第2方向での厚さTの寸法に設定される。つまり、第1方向での長さL及び第3方向での幅Wの寸法と併せて、クリップ20の各方向に係る寸法は、自在に設定され得る。したがって、クリップ接続構造1によれば、例えば、孔部101の形状に合わせてクリップ20の各方向に係る寸法を適切に設定することができるので、クリップ20の孔部101に対するガタつきをより抑えることができる。
【0040】
ここで、クリップ20の各方向に係る寸法に関して、クリップ20における厚さT又は幅Wを変更することにより、折れに対する強度を容易に高めることができる。具体的には、第1方向についての強度を高めるためには、厚みTをより厚くすればよい。また、第1方向に延伸する軸周りの回転方向についての強度を高めるためには、幅Wをより広げればよい。更に、被取付体が上記例示のような第2方向に薄い形状のプロテクタ2である場合、クリップ20における長さLを適宜変更することにより、狭いスペースに設けられた孔部101に対するクリップ20の挿入をより容易にすることができる。
【0041】
また、一般的な羽形状のクリップでは、2つの羽根部の各々の撓み方向が結合軸を挟んで1つの方向で並ぶため、孔部101の形状等によっては、被取付体において第1方向に延伸する軸周りに90°回転させた配置となる。その結果、被取付体を成形する金型が、金型スライド構造を採用するものとなる場合がある。金型スライド構造を採用する場合、型抜きの方向との関係から、クリップの一部の形状を簡略化させる必要が生じ、クリップの剛性が弱まるおそれがある。ここで、クリップの一部の形状を簡略化させるとは、クリップにおいて剛性を高めるために設けられていた補強部を一部廃止するような場合をいう。これに対して、本実施形態におけるクリップ20では、第1係合部26aと第2係合部26bとが第3方向で互いにずれて配置される。そのため、クリップ20を有する被取付体を成形する金型は、
図4に示すように、予め第2方向に沿った方向を金型抜き方向Dに設定することで、金型スライド構造を採用する必要がない。したがって、クリップ接続構造1によれば、クリップ20の剛性を低下させづらく、また、被取付体を成形する金型に金型スライド構造を採用させないことで、金型費を抑制させることができる。
【0042】
また、クリップ接続構造1では、クリップ20は、第1領域R1で本体構造部から第1方向に突出する第1側部23aと、第2領域R2で本体構造部から第1方向に突出する第2側部23bとを有してもよい。第1係合部26aは、第1側部23aを第2方向で貫通する第1開口部25aと、第1開口部25aにおいて本体構造部から最も離間している第1支持端27aで支持され、第1開口部25aの空間領域内で撓む第1係合爪28aとを有してもよい。第2係合部26bは、第2側部23bを第2方向で貫通する第2開口部25bと、第2開口部25bにおいて本体構造部から最も離間している第2支持端27bで支持され、第2開口部25bの空間領域内で撓む第2係合爪28bとを有してもよい。
【0043】
このクリップ接続構造1によれば、第1係合部26a及び第2係合部26bが、クリップ20において第3方向で互いにずれて配置される構成として具現化される。また、このような係合部26の構成によれば、開口部25が第2方向で貫通し、開口部25の空間領域に係合爪28が配置される構成となることから、被取付体を成形する金型において、第2方向に沿った方向を金型抜き方向Dと設定されることに支障を来さない。したがって、クリップ接続構造1によれば、被取付体を成形する金型に対して金型スライド構造を採用させないクリップ20の形状が具現化される。
【0044】
また、クリップ接続構造1では、支持部21は、第2方向での両端部である第1側端部21aと第2側端部21bとを有してもよい。第1側部23aは、第1側端部21aと連続し、第2側部23bは、第2側端部21bと連続してもよい。
【0045】
このクリップ接続構造1によれば、第1係合部26aを有する第1側部23aと、第2係合部26bを有する第2側部23bとが、係合部26を孔部101へ確実に係合させつつ支持部21と連続するので、クリップ20の剛性をより高めることができる。
【0046】
また、クリップ接続構造1では、クリップ20は、第1領域R1で本体構造部から第1方向に突出し、第1側部23aと連続する第1補強部22aを有してもよい。クリップ20は、第2領域R2で本体構造部から第1方向に突出し、第2側部23bと連続する第2補強部22bを有してもよい。第1補強部22a及び第2補強部22bは、それぞれ、クリップ20の第3方向での両端部に配置されてもよい。
【0047】
このクリップ接続構造1によれば、第1補強部22aが第1側部23aと連続し、第2補強部22bが第2側部23bと連続するので、クリップ20の剛性をより高めることができる。また、第1補強部22a及び第2補強部22bは、それぞれ、クリップ20の第3方向での両端部に配置されるので、側部23における係合部26の形成を阻害しない。したがって、クリップ接続構造1によれば、被取付体を成形する金型に対して金型スライド構造を採用させなることなく、クリップ20の剛性をより高めることができる。
【0048】
また、クリップ接続構造1では、第1補強部22a及び第2補強部22bは、それぞれ、第2方向での厚さがクリップ20の厚さTの寸法に設定されてもよい。
【0049】
このクリップ接続構造1によれば、補強部22の第2方向での厚さがクリップ20の厚さTの寸法に設定されるので、補強部22の大きさをクリップ20の外形に関する制限内で最も大きくすることができるので、クリップ20の剛性をより高めることができる。
【0050】
また、クリップ接続構造1では、被取付体は、ワイヤーハーネス200を収容するプロテクタ2であってもよい。プロテクタ2は、少なくとも一部が第3方向に延伸し、かつ、第3方向で互いに離間する複数のクリップ20を有してもよい。
【0051】
ここで、上記例示では、複数のクリップ20は、第1クリップ20a及び第2クリップ20bに相当する。
【0052】
このクリップ接続構造1によれば、プロテクタ2においてクリップ20の剛性を高めることができる。また、各々のクリップ20では、上記のとおり、金型に金型スライド構造を採用させることなく、厚さT、幅W及び長さLを変更することができる。そのため、プロテクタ2が有する複数のクリップ20のうちのいずれかのクリップ20を第1方向に延伸する軸周りに90°回転させる必要がない。したがって、クリップ接続構造1によれば、プロテクタ2が有する複数のクリップ20を、上記例示のように第3方向に沿って同一姿勢で配置させることができる。これにより、プロテクタ2を上記例示のような第2方向に薄い形状とし、その結果、狭いスペースに設置し得るものとすることができる。
【0053】
なお、上記説明では、クリップ20のXY平面での断面形状がおおよそ矩形となる場合を例示した。しかしながら、本実施形態におけるクリップ20は、このような断面形状に限定されるものではなく、例えば、第1補強部22a及び第2補強部22bの形状又は配置を変更することで、円形又は楕円形等の断面形状とすることもあり得る。
【0054】
以上、一実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 クリップ接続構造
2 プロテクタ
2a 本体構造部
20 クリップ
20a 第1クリップ
20b 第2クリップ
21 支持部
21a 第1側端部
21b 第2側端部
22a 第1補強部
22b 第2補強部
23a 第1側部
23b 第2側部
25a 第1開口部
25b 第2開口部
26a 第1係合部
26b 第2係合部
27a 第1支持端
27b 第2支持端
28a 第1係合爪
28b 第2係合爪
R1 第1領域
R2 第2領域
T クリップの厚さ
100 構造部
101 孔部
200 ワイヤーハーネス