(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141164
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】液晶装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20241003BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20241003BHJP
G02F 1/1345 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02F1/13 101
G02F1/133 505
G02F1/1345
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052655
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】藤川 紳介
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H193
【Fターム(参考)】
2H088FA12
2H088HA06
2H088HA08
2H088KA27
2H088MA20
2H092GA33
2H092GA34
2H092GA35
2H092JA24
2H092JB21
2H092NA30
2H193ZA04
2H193ZE40
2H193ZH21
2H193ZH49
2H193ZK02
2H193ZK09
2H193ZK14
2H193ZK16
(57)【要約】
【課題】液晶中の可動性イオンが急増する前において、可動性イオンが徐々に増えていく状況を観測できる液晶装置を提供する。
【解決手段】液晶装置は、第1基板と液晶層との間に配置される第1電極と、第2基板と液晶層との間に配置される第2電極と、第1電極と電気的に接続される電極引出線と、平面視で電極引出線と交差する第1駆動信号線を含む複数の駆動信号線と、電極引出線と第1駆動信号線との間に配置され、第2電極と電気的に接続される第1導電層と、測定回路と、を備え、測定回路は、第1期間において第1電極と第2電極との電位差が第1電位差となり、第2期間において電位差が第2電位差となるように、第1電極と第2電極との夫々に電位を供給し、第3期間において、第1電極への電位の供給を停止すると共に第2電極に第2期間と同じ電位を供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
液晶層と、
前記液晶層を介して前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1電極と、
前記第2基板と前記液晶層との間に配置される第2電極と、
前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極と電気的に接続される電極引出線と、
前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で前記電極引出線と交差する第1駆動信号線を含む複数の駆動信号線と、
前記電極引出線と前記第1駆動信号線との間に配置され、前記第2電極と電気的に接続される第1導電層と、
前記第1電極と前記第2電極との夫々に電気的に接続される測定回路と、
を備え、
前記測定回路は、
第1期間において、前記第1電極と前記第2電極との電位差が第1電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、
前記第1期間後の第2期間において、前記電位差が、前記第1電位差と異なる極性を有する第2電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、
前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極への電位の供給を停止すると共に前記第2電極に前記第2期間と同じ電位を供給する、
液晶装置。
【請求項2】
前記複数の駆動信号線は、平面視で前記第1電極と重ならない、請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記複数の駆動信号線の電位を制御する第1制御回路をさらに備え、
前記第1制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記複数の駆動信号線の電位を変化させる、
請求項1に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第3期間は、通常駆動時において前記複数の駆動信号線の電位が最大値又は最小値に保持される期間より長い、請求項3に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極を含む電極層と、
前記第1基板と前記電極層との間に配置され、前記第1駆動信号線を含む第1配線層と、
前記第1配線層と前記電極層との間に配置され、前記第1導電層を含む第2配線層と、
前記第2配線層と前記電極層との間に配置され、前記電極引出線を含む第3配線層と、
をさらに備える、請求項1に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極及び前記電極引出線を含む電極層と、
前記第1基板と前記電極層との間に配置され、前記第1駆動信号線を含む第1配線層と、
前記第1配線層と前記電極層との間に配置され、前記第1導電層を含む第2配線層と、
前記第2配線層と前記電極層との間に配置される第3配線層と、
をさらに備える、請求項1に記載の液晶装置。
【請求項7】
第1基板と、
液晶層と、
前記液晶層を介して前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1電極と、
前記第2基板と前記液晶層との間に配置される第2電極と、
前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で少なくとも一部が前記第1電極と重なる第2駆動信号線を含む複数の駆動信号線と、
前記第1電極と前記第2電極との夫々に電気的に接続される測定回路と、
前記複数の駆動信号線の電位を制御する第1制御回路と、
を備え、
前記測定回路は、
第1期間において、前記第1電極と前記第2電極との電位差が第1電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、
前記第1期間後の第2期間において、前記電位差が、前記第1電位差と異なる極性を有する第2電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、
前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極への電位の供給を停止すると共に前記第2電極に前記第2期間と同じ電位を供給し、前記第1制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記第2駆動信号線の電位を定電位に制御する、
液晶装置。
【請求項8】
前記第2電極と電気的に接続される第2導電層をさらに備え、
前記複数の駆動信号線は、平面視で少なくとも一部が前記第1電極と重なる第3駆動信号線を含み、
前記第2導電層は、前記第1電極と前記第3駆動信号線との間に配置され、
前記第1制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記第3駆動信号線の電位を変化させるか、又は定電位に制御する、
請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
複数の信号線と、
前記複数の信号線と1対1で電気的に接続される複数のスイッチング素子を含む信号線駆動回路と、
前記複数のスイッチング素子のゲート電極の電位と、前記複数のスイッチング素子を介して前記複数の信号線に供給される電位とを制御する第2制御回路と、
をさらに備え、
前記複数の信号線の少なくとも一部と、前記複数のスイッチング素子の前記ゲート電極の少なくとも一部とは、平面視で前記第1電極と重なり、
前記第2制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記複数のスイッチング素子の前記ゲート電極の電位を、前記複数のスイッチング素子がオンになる電位に制御すると共に、前記複数の信号線に供給される電位を定電位に制御する、
請求項7に記載の液晶装置。
【請求項10】
前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極と電気的に接続される電極引出線と、
前記第2電極と電気的に接続される第1導電層と、
をさらに備え、
前記複数の駆動信号線は、平面視で前記電極引出線と交差する第1駆動信号線を含み、
前記第1導電層は、前記電極引出線と前記第1駆動信号線との間に配置される、
請求項7に記載の液晶装置。
【請求項11】
複数の走査線と、
前記複数の走査線を順次選択する走査線駆動回路と、
をさらに備え、
前記複数の駆動信号線は、前記走査線駆動回路と電気的に接続される、請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項12】
表示領域に配置される複数の画素電極をさらに備え、
前記第1電極は、前記表示領域の外側に配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項13】
前記測定回路は、前記第1期間と前記第2期間との間の第4期間において、前記電位差が、前記第1電位差と同じ極性を有し、且つ前記第1電位差の絶対値より小さい絶対値を有する第3電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項14】
前記測定回路は、
前記第3期間後の第5期間において、前記電位差が、前記第1電位差と異なる極性を有し、且つ前記第1電位差の絶対値と同じ絶対値を有する第4電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、
前記第5期間後の第6期間において、前記電位差が、前記第4電位差と異なる極性を有する第5電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、
前記第6期間後の第7期間において、前記第1電極への電位の供給を停止すると共に前記第2電極に前記第6期間と同じ電位を供給する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項15】
前記測定回路は、前記第5期間と前記第6期間との間の第8期間において、前記電位差が、前記第4電位差と同じ極性を有し、且つ前記第4電位差の絶対値より小さい絶対値を有する第6電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給する、
請求項14に記載の液晶装置。
【請求項16】
前記測定回路は、
前記第1電極と電気的に接続される第1ノードと、
前記第2電極と電気的に接続される第2電極線と、
グランド電位が印加されるグランド電位線と、
前記第1ノードと前記グランド電位線との間に電気的に接続される第1コンデンサーと、
前記第2電極線と前記グランド電位線との間に電気的に接続される第2コンデンサーと、
第1スイッチと、
第2スイッチと、
第3スイッチと、
第4スイッチと、
参照電圧に対応する測定電位を出力する測定電位生成回路と、
前記参照電圧を前記測定電位生成回路に出力し、前記第1スイッチから前記第4スイッチを制御する第3制御回路と、
前記第1ノードの電位を前記第1電極の電位として測定して前記第3制御回路に出力する電位測定回路と、
を備え、
前記第1ノードは、前記第1スイッチを介して前記グランド電位線と電気的に接続され、
前記第1ノードは、前記第2スイッチを介して前記測定電位生成回路の出力端子と電気的に接続され、
前記第2電極線は、前記第3スイッチを介して前記グランド電位線と電気的に接続され、
前記第2電極線は、前記第4スイッチを介して前記測定電位生成回路の出力端子と電気的に接続される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項17】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、第1電圧によってオン状態に制御され、
前記第3スイッチ及び前記第4スイッチは、前記第1電圧よりも高い第2電圧によってオン状態に制御される、
請求項16に記載の液晶装置。
【請求項18】
請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置に用いられる液晶は、長時間のDC電圧成分の印加によって劣化する。また、液晶装置をプロジェクターのライトバルブとして使用する場合では、液晶は高強度の光入射と熱による化学的作用によっても劣化する。液晶の劣化とは、例えば、液晶中に陰イオン、陽イオンからなる可動性イオンが増加し、それによって、液晶の絶縁性が低下する現象である。絶縁性の低下は、例えば、液晶の電圧保持率の低下として現れ、液晶パネルではシミ、ムラ等の表示不良となって視認される。特許文献1には、このような液晶の劣化現象を加速評価する方法が開示されている。この方法では、液晶パネルの表示領域外に一対の劣化評価用電極を設け、当該液晶パネルに100時間の加速試験を行った後、当該劣化評価用電極間に、5Vの電圧を50μ秒印加し、その後、16.7m秒後の電圧保持率を測定することによって、液晶の劣化評価を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人の研究によれば、例えば、液晶パネルを用いて高強度の光入射を伴う加速試験を実施すると、液晶中の可動性イオンが比較的穏やかに増加する段階と、その後、液晶中の可動性イオンが急激に増加する段階があることが判っている。また、可視光以外の、例えば、UV光を液晶パネルに入射させる場合には、UV光の高エネルギーによって化学的作用が強まり、液晶の劣化が早く進行する。
【0005】
そして、液晶中の可動性イオン量が顕著になると、液晶パネルの表示品位の低下などの不具合の発生が避けられないため、予防保全の観点から液晶パネルが寿命に達する前に、液晶パネルの寿命が近いことを知りたい、という要望があった。
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、予防保全を行うことは困難であるという課題があった。詳しくは、本出願人の検証結果によれば、特許文献1の方法では、液晶中の可動性イオンが比較的穏やかに増加する段階において、可動性イオンが徐々に増加していく状況を観測することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様の液晶装置は、第1基板と、液晶層と、前記液晶層を介して前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1電極と、前記第2基板と前記液晶層との間に配置される第2電極と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極と電気的に接続される電極引出線と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で前記電極引出線と交差する第1駆動信号線を含む複数の駆動信号線と、前記電極引出線と前記第1駆動信号線との間に配置され、前記第2電極と電気的に接続される第1導電層と、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電気的に接続される測定回路と、を備え、前記測定回路は、第1期間において、前記第1電極と前記第2電極との電位差が第1電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第1期間後の第2期間において、前記電位差が、前記第1電位差と異なる極性を有する第2電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極への電位の供給を停止すると共に前記第2電極に前記第2期間と同じ電位を供給する。
【0008】
本発明の一つの態様の液晶装置は、第1基板と、液晶層と、前記液晶層を介して前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1電極と、前記第2基板と前記液晶層との間に配置される第2電極と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で少なくとも一部が前記第1電極と重なる第2駆動信号線を含む複数の駆動信号線と、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電気的に接続される測定回路と、前記複数の駆動信号線の電位を制御する第1制御回路と、を備え、前記測定回路は、第1期間において、前記第1電極と前記第2電極との電位差が第1電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第1期間後の第2期間において、前記電位差が、前記第1電位差と異なる極性を有する第2電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極への電位の供給を停止すると共に前記第2電極に前記第2期間と同じ電位を供給し、前記第1制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記第2駆動信号線の電位を定電位に制御する。
【0009】
本発明の一つの態様の電子機器は、上記態様の液晶装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の液晶装置に用いられる液晶パネルの概略的な構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示される領域W10のB-B’線に沿った断面図である。
【
図3】第1実施形態の液晶装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図4】液晶層の物性測定方法を示す概略的なフローチャートである。
【
図5】第1実施形態における検出電極及び共通電極のそれぞれの電位の時間的な変化を示す図である。
【
図6】第1実施形態における第1測定処理及び第2測定処理の実行時における検出電極と共通電極との電位差の時間的な変化を示す図である。
【
図7】使用時間と放電特性との関係を示す図である。
【
図11】液晶層の規格化透過率と電圧との関係を示す図である。
【
図13】液晶層の劣化の進行を追跡した結果を示す第1図である。
【
図14】液晶層の劣化の進行を追跡した結果を示す第2図である。
【
図15】測定再現性を検証した結果を示す第1図である。
【
図16】測定再現性を検証した結果を示す第2図である。
【
図17】第2実施形態の液晶装置に用いられる液晶パネルの概略的な構成を示す平面図である。
【
図18】
図17に示される領域W20のC-C’線に沿った断面図である。
【
図19】第3実施形態の液晶装置に用いられる液晶パネルの概略的な構成を示す平面図である。
【
図20】
図19に示される領域W30のD-D’線に沿った断面図である。
【
図21】非測定期間及び測定期間における各信号の波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図22】電子機器として投射型表示装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図23】投射型表示装置の設定メニュー画面例を示す説明図である。
【
図24】液晶層の劣化状況を表示する表示画面例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせている場合がある。また、以下の各図において、必要に応じて、相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各図において、軸に沿った各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.液晶パネル100の構成の概要
図1は、第1実施形態の液晶装置1000に用いられる液晶パネル100の概略的な構成を示す平面図である。なお、
図1において、+X方向を右又は右側、-X方向を左又は左側ということがある。また、+Y方向を上又は上側、-Y方向を下又は下側ということがある。さらに、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的という。
【0013】
例えば、本実施形態における液晶パネル100は、TFT(Thin Film Transistor)等の画素スイッチング素子8を有する複数の画素Pが表示領域Eに配置されるアクティブ駆動型の液晶パネルである。この液晶パネル100は、後述の測定回路200と組み合わされて液晶装置1000を構成するとともに、電子機器としての投射型表示装置などにおいて、光変調装置として好適に用いることができるものである。
【0014】
液晶パネル100は、素子基板1と、対向基板2と、を備える。素子基板1と対向基板2とは、シール材3を介して互いに接着される。シール材3は、対向基板2の外縁に沿って枠状に設けられている。シール材3は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、素子基板1と対向基板2との間のギャップを所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材を含む。なお、
図1では、シール材3の一部のみを図示し、シール材3の残りの部分は適宜省略している。
【0015】
図1では図示を省略するが、素子基板1と対向基板2とで挟まれ、且つシール材3で囲まれた領域に、液晶層4が配置される。液晶層4については、後で
図2を用いて説明する。例えば、液晶層4は、液晶を滴下する液晶滴下法によって形成される。液晶層4が液晶滴下法によって形成される場合、液晶パネル100には、液晶を封入するための液晶封入口が存在しない。液晶層4は、例えば、負の誘電異方性を有する液晶から構成される。
【0016】
素子基板1は、シール材3で囲まれた領域に表示領域Eを備える。表示領域Eには、複数の画素Pがマトリクス状に配置される。表示領域Eには、Y軸方向に延在する複数の信号線5が、X軸方向に一定の間隔で配置される。表示領域Eには、X軸方向に延在する複数の走査線6が、Y軸方向に一定の間隔で配置される。信号線5と走査線6とが交差する位置のそれぞれに対応して、各画素Pが配置される。
【0017】
図1では図示を省略するが、各画素Pは、光透過性を有する画素電極7と、画素電極7に対応して配置された画素スイッチング素子8と、を備える。画素電極7及び画素スイッチング素子8については、後で
図2を用いて説明する。画素電極7は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料によって形成された透明電極である。画素スイッチング素子8は、例えば、Nチャネル型TFTである。
【0018】
例えば、各信号線5は、各信号線5に対応する各画素Pの画素スイッチング素子8のソースと電気的に接続される。各走査線6は、各走査線6に対応する各画素Pの画素スイッチング素子8のゲートと電気的に接続される。各画素Pにおいて、画素スイッチング素子8のドレインは、画素電極7と電気的に接続される。
【0019】
素子基板1は、信号線駆動回路9及び走査線駆動回路10を備える。表示領域Eとシール材3との間の領域において、表示領域Eの下側に信号線駆動回路9が配置され、表示領域Eの左側に走査線駆動回路10が配置される。各信号線5の下端は、信号線駆動回路9と電気的に接続される。各走査線6の左端は、走査線駆動回路10と電気的に接続される。
【0020】
例えば、信号線駆動回路9は、複数のデマルチプレクサーを備える。例えば、各デマルチプレクサーは、4つのスイッチング素子11を備える。
図1では、信号線駆動回路9に含まれる複数のデマルチプレクサーのうち、最も右側に位置するデマルチプレクサーに含まれる4つのスイッチング素子11のみを図示している。例えば、スイッチング素子11は、画素スイッチング素子8と同様に、Nチャネル型TFTである。
【0021】
各スイッチング素子11のドレイン(D)は、各スイッチング素子11に対応する信号線5と電気的に接続される。各スイッチング素子11のソース(S)は、映像信号端子12と電気的に接続される。映像信号端子12は、素子基板1の下側端部に配置された複数の実装端子の1つであり、映像信号VIDの入力端子として使用される。
【0022】
4つのスイッチング素子11のうち、最も右側に位置するスイッチング素子11のゲート(G)は、第1選択信号端子13と電気的に接続される。第1選択信号端子13は、複数の実装端子の1つであり、第1選択信号SEL1の入力端子として使用される。
【0023】
4つのスイッチング素子11のうち、右から2番目に位置するスイッチング素子11のゲートは、第2選択信号端子14と電気的に接続される。第2選択信号端子14は、複数の実装端子の1つであり、第2選択信号SEL2の入力端子として使用される。
【0024】
4つのスイッチング素子11のうち、右から3番目に位置するスイッチング素子11のゲートは、第3選択信号端子15と電気的に接続される。第3選択信号端子15は、複数の実装端子の1つであり、第3選択信号SEL3の入力端子として使用される。
【0025】
4つのスイッチング素子11のうち、最も左側に位置するスイッチング素子11のゲートは、第4選択信号端子16と電気的に接続される。第4選択信号端子16は、複数の実装端子の1つであり、第4選択信号SEL4の入力端子として使用される。
【0026】
第1選択信号SEL1から第4選択信号SEL4によって、1つのデマルチプレクサーに含まれる4つのスイッチング素子11がオン又はオフに制御される。1水平期間において各スイッチング素子11が排他的にオンに制御され、各スイッチング素子11のオンタイミングに同期して映像信号VIDが分配されて映像信号端子12に入力されることにより、所望の映像信号VIDが各信号線5に供給される。
【0027】
液晶パネル100の高速駆動に適した書き込み能力を確保するために、各スイッチング素子11のチャネル幅は大きい。従って、典型的には、各スイッチング素子11のゲート電極がY軸方向に延在する配置が多用される。信号線駆動回路9は、上記のような4つのスイッチング素子11を有する複数のデマルチプレクサーによって構成される。言い換えれば、信号線駆動回路9は、複数の信号線5と1対1で電気的に接続される複数のスイッチング素子11を含む。
【0028】
例えば、液晶パネル100がFHD(Full-High Definition)パネルである場合、信号線駆動回路9は、1920/4=480個のデマルチプレクサーによって構成される。例えば、各デマルチプレクサーが8個のスイッチング素子11を有する場合には、信号線駆動回路9は、1920/8=240個のデマルチプレクサーによって構成される。
【0029】
例えば、走査線駆動回路10は、シフトレジスターのような順次選択回路によって構成される。従って、典型的には、クロック信号CLYの主配線であるクロック信号主線17がY軸方向に延在し、各シフトレジスターの単位回路にクロック信号CLYを供給するための複数のクロック信号支線18が、クロック信号主線17から右側に向かって延在する構成となる。クロック信号主線17は、クロック信号端子19と電気的に接続される。クロック信号端子19は、複数の実装端子の1つであり、クロック信号CLYの入力端子として使用される。
【0030】
図1では、クロック信号端子19に入力されるクロック信号CLYが、走査線駆動回路10に直接供給される構成を例示したが、クロック信号端子19に入力されるクロック信号CLYを低振幅信号とし、素子基板1に配置されたレベルシフト回路によって高振幅信号に変換して走査線駆動回路10に供給する構成を採用してもよい。
【0031】
また、
図1では、1つのクロック信号CLYが走査線駆動回路10に供給される構成を例示したが、クロック信号CLYの反転信号CLYBを、クロック信号CLYとともに走査線駆動回路10に供給する構成を採用してもよい。この場合、これら2つのクロック信号CLY及びCLYBは、位相差補正回路によって位相差が調整された後に、バッファー回路を経由してシフトレジスターに供給される。
【0032】
走査線駆動回路10には、Y軸方向に延在する出力制御信号線20を介して、走査線選択波形を整形するための出力制御信号ENBYが供給される。出力制御信号線20は、出力制御信号端子21と電気的に接続される。出力制御信号端子21は、複数の実装端子の1つであり、出力制御信号ENBYの入力端子として使用される。例えば、出力制御信号ENBYは、シフトレジスターの各段の出力信号とともにAND回路に入力され、AND回路の出力信号が、画素スイッチング素子8をオンにするための走査信号として、適時バッファー回路を経由して走査線6に供給される。
【0033】
上記の説明から理解されるように、走査線駆動回路10は、表示領域Eに配置される複数の走査線6を、クロック信号CLYに同期して順次選択する。より具体的には、走査線駆動回路10は、クロック信号CLYに同期して、各走査線6に順番に走査信号を供給する。1本の走査線6が選択されている期間、すなわち1本の走査線6に走査信号が供給されている期間が、1水平期間に含まれる。
【0034】
素子基板1は、表示領域Eとシール材3との間の領域に配置された検出電極22を備える。例えば、検出電極22は、画素電極7と同様に、ITOなどの透明導電材料によって形成される。検出電極22は、表示領域Eの外側に配置される。検出電極22は、表示領域Eを囲む枠状に配置される。検出電極22は、いわゆるベタ膜パターンで形成されてもよいし、複数の画素電極7を連結させることにより形成されてもよい。ベタ膜パターンとは、例えば、表示領域Eとシール材3との間の領域の全部又は一部を連続的に覆う電極パターンである。
【0035】
素子基板1は、検出電極22と電気的に接続される電極引出線23を備える。例えば、電極引出線23は、検出電極22の左下隅から左側に向かってX軸方向に延在する。検出電極22は、電極引出線23を介して、第1電極接続端子24と電気的に接続される。第1電極接続端子24は、複数の実装端子の1つであり、後述の測定回路200と電気的に接続される。
【0036】
図1に示すように、クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20は、平面視で検出電極22と重ならない。クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20は、複数の駆動信号線の一例である。すなわち、第1実施形態において、複数の駆動信号線は、平面視で検出電極22と重ならない。上述したように、クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20は、走査線駆動回路10と電気的に接続される。すなわち、複数の駆動信号線は、走査線駆動回路10と電気的に接続される。出力制御信号は、クロック信号が入力されるシフトレジスターよりも後段のAND回路に入力されるので、出力制御信号線20はクロック信号主線17よりも表示領域E側に配置される構成が多用される。
【0037】
上記のように、複数の駆動信号線は、平面視で検出電極22と重ならないが、検出電極22と電気的に接続される電極引出線23は、平面視で、クロック信号主線17及び出力制御信号線20と交差する。すなわち、複数の駆動信号線は、平面視で電極引出線23と交差する第1駆動信号線として、クロック信号主線17及び出力制御信号線20を含む。本実施形態では、電極引出線23と第1駆動信号線との間の結合容量を抑制するために、電極引出線23が第1駆動信号線と交差する領域に、X軸方向に延在する第1導電層25が配置される。第1導電層25は、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置される。
【0038】
クロック信号主線17、出力制御信号線20、電極引出線23、及び第1導電層25を含む断面の構造については、後で
図2を用いて説明する。なお、
図1では図示を省略するが、素子基板1は、検出電極22及び画素電極7を覆って配置された第1配向膜26を備える。第1配向膜26については、後で
図2を用いて説明する。
【0039】
対向基板2は、遮光性を有する遮光部材27と、光透過性を有する共通電極28と、共通電極28を覆って配置された第2配向膜29と、を備える。
図1では、共通電極28及び第2配向膜29の図示を省略している。共通電極28及び第2配向膜29については、後で
図2を用いて説明する。
【0040】
遮光部材27は、平面視で表示領域Eを囲むように配置される。検出電極22は、遮光部材27によって覆われている。
図1では、遮光部材27の一部のみを図示し、遮光部材27の残りの部分は適宜省略している。共通電極28は、例えば、ITOなどの透明導電材料によって形成される。共通電極28は、対向基板2の四隅に対応して配置されたトランスファー30を介して、素子基板1の2つの第2電極接続端子31と電気的に接続される。
【0041】
2つの第2電極接続端子31は、それぞれ、素子基板1の下側端部に配置された複数の実装端子の1つであり、共通電位Vcomの入力端子として使用される。第2電極接続端子31に入力される共通電位Vcomは、4つのトランスファー30を介して共通電極28に供給される。また、上記の第1導電層25は、第2電極接続端子31と電気的に接続される。すなわち、第1導電層25は、共通電極28と電気的に接続される。従って、第2電極接続端子31に入力される共通電位Vcomは、第1導電層25にも供給される。
【0042】
図示は省略するが、第2電極接続端子31に入力される共通電位Vcomは、素子基板1に配置された画素回路に含まれる補助コンデンサーの一端にも供給される。共通電位Vcomは、共通電極28と補助コンデンサーとのそれぞれに、別系統で供給されてもよい。
図1では、表示領域Eの左側に1つの走査線駆動回路10が配置される構成を例示したが、実際には、高速駆動に対応するために、表示領域Eの左側と右側との両方に走査線駆動回路10が配置される構成が多用される。
【0043】
図2は、
図1に示される領域W10のB-B’線に沿った断面図である。なお、
図2においては、+Z方向を上又は上側、-Z方向を下又は下側ということがある。また、
図1と同様に、
図2において、+X方向を右又は右側、-X方向を左又は左側ということがある。なお
図2においては遮光部材27(遮光膜82)の図示は説明のために簡略化しており、領域W10の全域にあるものとしている。
【0044】
図2に示すように、素子基板1と対向基板2との間に液晶層4が配置される。素子基板1は、第1基板51と、画素スイッチング素子8と、第1絶縁膜52と、第1配線層53と、第2絶縁膜54と、第2配線層55と、第3絶縁膜56と、第3配線層57と、第4絶縁膜58と、透明電極層59と、第1配向膜26と、を備える。対向基板2は、第2基板81と、遮光膜82と、共通電極28と、第2配向膜29と、を備える。
【0045】
第1基板51及び第2基板81は、透光性を有する基板である。例えば、第1基板51及び第2基板81は、ガラス基板又は石英基板などである。遮光膜82は、第2基板81の液晶層側下面に配置され、遮光部材27及びブラックマトリクス等を構成する。共通電極28は、遮光膜82の液晶層側に配置される透明電極であり、ITOなどの透明導電材料によって形成される。第2配向膜29は、共通電極28の液晶層側に配置され、酸化シリコンなどの無機材料で形成される。既に述べたように、対向基板2の共通電極28は、トランスファー30を介して、素子基板1の第2電極接続端子31と電気的に接続される。
【0046】
第1基板51の上面に、各画素Pに対応する画素スイッチング素子8が配置される。画素スイッチング素子8は、半導体層61、ゲート絶縁膜62、及びゲート電極層63から構成される。例えば、画素スイッチング素子8がNチャネル型TFTである場合、典型的には、半導体層61は、第1高濃度領域61aと、第2高濃度領域61bと、チャネル領域61cと、第1低濃度領域61dと、第2低濃度領域61eと、を有する。
【0047】
第1高濃度領域61a及び第2高濃度領域61bは、半導体層61における高濃度のN型領域である。第1高濃度領域61aは、画素スイッチング素子8のソースに対応する領域であり、第2高濃度領域61bは、画素スイッチング素子8のドレインに対応する領域である。第1低濃度領域61dは、第1高濃度領域61aとチャネル領域61cとの間の領域であって、且つ低濃度のN型領域である。第2低濃度領域61eは、第2高濃度領域61bとチャネル領域61cとの間の領域であって、且つ低濃度のN型領域である。
【0048】
ゲート絶縁膜62は、半導体層61を覆って配置される。ゲート電極層63は、ゲート絶縁膜62の上面において、チャネル領域61cと対向するように配置される。
図2では図示を省略するが、ゲート電極層63は、各画素Pに対応する走査線6と電気的に接続される。第1絶縁膜52は、第1基板51の上面において、上記のように構成された画素スイッチング素子8を覆って配置される。
【0049】
なお、実際には、各画素Pの画素回路は、画素スイッチング素子8だけでなく、補助コンデンサーを構成する導電層及び誘電体膜なども有するが、
図2では、補助コンデンサーの図示を適宜省略している。また、
図2では、ゲート絶縁膜62の一部のみを図示し、ゲート絶縁膜62の残りの部分を適宜省略している。
【0050】
第1配線層53は、第1絶縁膜52の上面に配置される。第1配線層53は、検出電極線53aと、共通電位線53bと、クロック信号主線17と、出力制御信号線20と、信号線5と、第1ドレイン中継線53cと、を含む。
【0051】
検出電極線53aは、
図1に示される第1電極接続端子24と電気的に接続される。共通電位線53bは、検出電極線53aの右側に配置され、
図1に示される第2電極接続端子31と電気的に接続される。すなわち、共通電位線53bは、トランスファー30を介して、対向基板2の共通電極28とも電気的に接続される。クロック信号主線17は、共通電位線53bの右側に配置され、
図1に示されるクロック信号端子19と電気的に接続される。出力制御信号線20は、クロック信号主線17の右側に配置され、
図1に示される出力制御信号端子21と電気的に接続される。
【0052】
信号線5は、コンタクトホール64を介して、半導体層61の第1高濃度領域61a、すなわち、画素スイッチング素子8のソースと電気的に接続される。第1ドレイン中継線53cは、コンタクトホール65を介して、半導体層61の第2高濃度領域61b、すなわち、画素スイッチング素子8のドレインと電気的に接続される。
【0053】
第2絶縁膜54は、第1絶縁膜52の上面において、上記のように構成された第1配線層53を覆って配置される。第2配線層55は、第2絶縁膜54の上面に配置される。第2配線層55は、検出電極中継線55aと、第2ドレイン中継線55bと、第1導電層25と、を含む。
【0054】
検出電極中継線55aは、コンタクトホール66を介して、検出電極線53aと電気的に接続される。第2ドレイン中継線55bは、コンタクトホール67を介して、第1ドレイン中継線53cと電気的に接続される。第1導電層25は、コンタクトホール68を介して、共通電位線53bと電気的に接続される。すなわち、第1導電層25は、共通電位線53bを介して、共通電極28及び第2電極接続端子31と電気的に接続される。
【0055】
第3絶縁膜56は、第2絶縁膜54の上面において、上記のように構成された第2配線層55を覆って配置される。第3配線層57は、第3絶縁膜56の上面に配置される。第3配線層57は、第3ドレイン中継線57aと、電極引出線23と、を含む。
【0056】
第3ドレイン中継線57aは、コンタクトホール69を介して、第2ドレイン中継線55bと電気的に接続される。電極引出線23は、コンタクトホール70を介して、検出電極中継線55aと電気的に接続される。すなわち、電極引出線23は、検出電極中継線55a及び検出電極線53aを介して、第1電極接続端子24と電気的に接続される。
【0057】
第4絶縁膜58は、第3絶縁膜56の上面において、上記のように構成された第3配線層57を覆って配置される。透明電極層59は、第4絶縁膜58の上面に配置される。透明電極層59は、ITOなどの透明導電材料によって形成された電極層である。透明電極層59は、表示領域Eに配置される画素電極7と、表示領域Eの外側に配置される検出電極22と、を含む。
【0058】
画素電極7は、コンタクトホール71を介して、第3ドレイン中継線57aと電気的に接続される。すなわち、画素電極7は、第3ドレイン中継線57a、第2ドレイン中継線55b、及び第1ドレイン中継線53cを介して、画素スイッチング素子8のドレインと電気的に接続される。検出電極22は、コンタクトホール72を介して、電極引出線23と電気的に接続される。すなわち、検出電極22は、電極引出線23、検出電極中継線55a、及び検出電極線53aを介して、第1電極接続端子24と電気的に接続される。
【0059】
第1配向膜26は、第4絶縁膜58の上面において、上記のように構成された透明電極層59を覆って配置される。例えば、第1配向膜26は、第2配向膜29と同様に、酸化シリコンなどの無機材料で形成される。
【0060】
第3配線層57に含まれる電極引出線23は、検出電極22の直下の位置から左側に向かってX軸方向に延在する。第1配線層53に含まれるクロック信号主線17及び出力制御信号線20は、Y軸方向に延在し、且つ平面視で検出電極22と重ならない。このような配線構造により、検出電極22と電気的に接続される電極引出線23は、平面視で、クロック信号主線17及び出力制御信号線20を含む第1駆動信号線と交差する。電極引出線23が第1駆動信号線と交差する領域において、第1駆動信号線の直上を通過するようにX軸方向に延在する第1導電層25が、第2配線層55に配置される。すなわち、第1導電層25は、電極引出線23が第1駆動信号線と交差する領域において、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置される。
【0061】
上記の説明から理解されるように、第1実施形態の液晶パネル100は、少なくとも、第1基板51と、液晶層4と、第2基板81と、検出電極22と、共通電極28と、電極引出線23と、複数の駆動信号線(クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20)と、第1導電層25と、を備える。第2基板81は、液晶層4を介して第1基板51に対向する。検出電極22は、第1基板51と液晶層4との間に配置される。共通電極28は、第2基板81と液晶層4との間に配置される。電極引出線23は、第1基板51と液晶層4との間に配置され、検出電極22と電気的に接続される。複数の駆動信号線は、第1基板51と液晶層4との間に配置され、平面視で電極引出線23と交差する第1駆動信号線(クロック信号主線17及び出力制御信号線20)を含む。第1導電層25は、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置され、共通電極28と電気的に接続される。検出電極22は、第1電極の一例である。共通電極28は、第2電極の一例である。
【0062】
また、第1実施形態の液晶パネル100は、少なくとも、透明電極層59と、第1配線層53と、第2配線層55と、第3配線層57と、を備える。透明電極層59は、第1基板51と液晶層4との間に配置され、検出電極22を含む電極層である。第1配線層53は、第1基板51と透明電極層59との間に配置され、第1駆動信号線を含む配線層である。第2配線層55は、第1配線層53と透明電極層59との間に配置され、第1導電層25を含む配線層である。第3配線層57は、第2配線層55と透明電極層59との間に配置され、電極引出線23を含む配線層である。
【0063】
1-2.液晶装置1000の構成の概要
図3は、液晶装置1000の概略的な構成を示す説明図である。液晶装置1000は、液晶パネル100と、測定回路200と、COF(Chip on Film)300と、を備える。液晶パネル100は、COF300を介して、測定回路200と電気的に接続される。より具体的には、液晶パネル100の素子基板1に配置された各実装端子が、COF300を介して、測定回路200と電気的に接続される。また図示しているように、クロック信号CLY、出力制御信号ENBY、選択信号SEL、映像信号VID等は、駆動IC(Integrated Circuit)310から供給される。また、第1電極接続端子24と電気的に接続されるCOF300上の配線は、駆動IC310を避けて配置される。このように構成されているため、第1基板51における第1電極接続端子24から検出電極22に至る配線は、クロック信号CLY、出力制御信号ENBY等と交差することになる。
【0064】
測定回路200は、測定電位生成回路40と、共通電位生成回路41と、レベルシフター42と、増幅回路43と、A/Dコンバーター44と、中央制御回路45と、測定値記憶回路46と、表示情報生成回路47と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、第4スイッチSW4と、第5スイッチSW5と、第1コンデンサーC1と、第2コンデンサーC2と、共通電極線L1と、グランド電位線L2と、第1ノードN1と、を備える。COF300は、駆動IC310を備える。
【0065】
共通電極線L1は、COF300を介して、
図1に示される第2電極接続端子31と電気的に接続される。すなわち、共通電極線L1は、第2電極接続端子31を介して、共通電極28及び第1導電層25と電気的に接続される。共通電極線L1は、第2電極線の一例である。
【0066】
グランド電位線L2は、グランド電位が印加される配線である。グランド電位線L2は、液晶装置1000内のデジタル回路系のグランドと1点で電気的に接続される。このように構成することで、後述する測定時において、デジタル回路系がもたらす測定ノイズを抑制する効果を奏する。グランド電位線L2は、第2コンデンサーC2を介して、共通電極線L1と電気的に接続される。つまり、第2コンデンサーC2は、共通電極線L1とグランド電位線L2との間に電気的に接続される。例えば、第2コンデンサーC2は、0.1μF以上の容量値を有する。第2コンデンサーC2によって共通電極28の電位が安定する。従って後述する測定時において、共通電極28との間で主に液晶層4による結合容量を持つ検出電極22がうける測定ノイズを抑制する。また、液晶装置1000において、液晶パネル100は、導体で構成されたホルダー110によって保持されており、グランド電位線L2は、ホルダー110と電気的に接続される。グランド電位線L2をホルダー110と電気的に接続することで、後述する測定時において、検出電極22がうける測定ノイズを抑制する効果を奏する。
【0067】
測定回路200内における第1ノードN1は、COF300を介して、
図1に示される第1電極接続端子24と電気的に接続される。つまり、第1ノードN1は、第1電極接続端子24を介して、検出電極22と電気的に接続される。このように、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との夫々に電気的に接続される。
【0068】
第1ノードN1は、第1スイッチSW1を介して、グランド電位線L2と電気的に接続される。第1ノードN1は、第2スイッチSW2を介して、測定電位生成回路40の出力端子と電気的に接続される。第1ノードN1は、第1コンデンサーC1を介して、グランド電位線L2と電気的に接続される。つまり、第1コンデンサーC1は、第1ノードN1とグランド電位線L2との間に電気的に接続される。例えば、第1コンデンサーC1は、1nFから10nF程度の容量値を有する。第1コンデンサーC1によって、後述する測定時における検出電極22がうける測定ノイズを抑制する。また、第1コンデンサーC1の容量値によって、可動性イオン85の増加に対する検出感度を調整できる。
【0069】
第1スイッチSW1の状態は、中央制御回路45から出力される第1制御信号S1によって制御される。例えば、第1制御信号S1として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力され、論理「H」のときに第1スイッチSW1はオン状態になる。第2スイッチSW2の状態は、中央制御回路45から出力される第2制御信号S2によって制御される。例えば、第2制御信号S2として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力され、論理「H」のときに第2スイッチSW2はオン状態になる。つまり、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、第1電圧(5V)によってオン状態に制御される。
【0070】
共通電極線L1は、第3スイッチSW3を介して、グランド電位線L2と電気的に接続される。共通電極線L1は、第4スイッチSW4を介して、測定電位生成回路40の出力端子と電気的に接続される。共通電極線L1は、第5スイッチSW5を介して、共通電位生成回路41の出力端子と電気的に接続される。
【0071】
第3スイッチSW3の状態は、中央制御回路45からレベルシフター42を介して出力される第3制御信号S3によって制御される。例えば、第3制御信号S3として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力されるが、この論理信号は、レベルシフター42によって、例えば、15Vの振幅を有する論理信号に変換される。つまり、レベルシフター42から15Vの振幅を有する第3制御信号S3が出力され、論理「H」のときに第3スイッチSW3はオン状態になる。
【0072】
第4スイッチSW4の状態は、中央制御回路45からレベルシフター42を介して出力される第4制御信号S4によって制御される。例えば、第4制御信号S4として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力されるが、この論理信号は、レベルシフター42によって、例えば、15Vの振幅を有する論理信号に変換される。つまり、レベルシフター42から15Vの振幅を有する第4制御信号S4が出力され、論理「H」のときに第4スイッチSW4はオン状態になる。
【0073】
第5スイッチSW5の状態は、中央制御回路45からレベルシフター42を介して出力される第5制御信号S5によって制御される。例えば、第5制御信号S5として、5Vの振幅を有する論理信号が中央制御回路45から出力されるが、この論理信号は、レベルシフター42によって、例えば、15Vの振幅を有する論理信号に変換される。つまり、レベルシフター42から15Vの振幅を有する第5制御信号S5が出力され、論理「H」のときに第5スイッチSW5はオン状態になる。
上記のように、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、及び第5スイッチSW5は、第1電圧(5V)よりも高い第2電圧(15V)によってオン状態に制御される。
【0074】
測定電位生成回路40は、中央制御回路45から出力される参照電圧Vsrefに対応する測定電位Vsを出力する。例えば、測定電位生成回路40は、参照電圧Vsrefと同じ極性及び絶対値を有する測定電位Vsを出力する。すなわち、測定電位生成回路40から出力される測定電位Vsは、中央制御回路45によって可変制御される。このような測定電位生成回路40は、例えば、参照電圧Vsrefが入力されるボルテージフォロワーによって実現できる。
【0075】
共通電位生成回路41は、所定の共通電位Vcomを出力する。例えば、共通電位Vcomは、液晶パネル100の通常駆動時において、5Vである。
【0076】
増幅回路43は、検出電極22と電気的に接続された第1ノードN1の電位を増幅する。以下の説明では、第1ノードN1の電位を第1ノード電位と呼称する場合がある。増幅回路43は、増幅された第1ノード電位をA/Dコンバーター44に出力する。A/Dコンバーター44は、増幅回路43によって増幅された第1ノード電位をデジタル値に変換する。A/Dコンバーター44は、第1ノード電位のデジタル値を、検出電極22の電位の測定値として、中央制御回路45に出力する。以下の説明では、検出電極22の電位を検出電極電位Vdと呼称する場合がある。
【0077】
このように、本実施形態において、増幅回路43及びA/Dコンバーター44は、第1ノードN1の電位を検出電極電位Vdとして測定し、検出電極電位Vdの測定値を中央制御回路45に出力する電位測定回路の一例である。
【0078】
例えば、増幅回路43は、オペアンプを用いた非反転増幅回路である。増幅回路43のグランド端子は、ホルダー110、第1コンデンサーC1、及び第2コンデンサーC2が電気的に接続されたグランド電位線L2と電気的に接続される。このように、増幅回路43のグランド端子をグランド電位線L2と電気的に接続することにより、検出電極電位Vdの測定値に、測定回路200を構成するデジタル回路系の動作に伴うノイズ成分が重畳することを抑制できる。
なお、上記の増幅回路43の構成から理解されるように、A/Dコンバーター44から得られる検出電極電位Vdの測定値は、第1ノード電位、すなわち検出電極22の電位と、グランド電位との電位差に応じた値である。
【0079】
中央制御回路45は、液晶層4の劣化状況の測定時において、測定回路200に含まれる各回路を制御する。具体的には、中央制御回路45は、参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。中央制御回路45は、第1制御信号S1を第1スイッチSW1に出力するとともに、第2制御信号S2を第2スイッチSW2に出力する。中央制御回路45は、第3制御信号S3から第5制御信号S5を、レベルシフター42を介して、第3スイッチSW3から第5スイッチSW5に出力する。このように、本実施形態における中央制御回路45は、参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力し、第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御する第3制御回路の一例である。
【0080】
中央制御回路45は、A/Dコンバーター44から出力される検出電極電位Vdの測定値を、測定値記憶回路46に記憶させる。測定値記憶回路46は、中央制御回路45による制御に従って、検出電極電位Vdの測定値を記憶する。中央制御回路45は、判定回路45aを含む。判定回路45aは、測定値記憶回路46に記憶された測定値に基づいて、液晶層4の劣化状況を判定する。表示情報生成回路47は、測定値および判定結果に基づいて、液晶層4の劣化状況の表示用情報を生成する。
【0081】
中央制御回路45は、液晶パネル100の通常駆動時において、駆動IC310を制御することにより、液晶パネル100の駆動に必要な各種信号を駆動IC310から出力させる。駆動IC310は、中央制御回路45による制御に従って、クロック信号CLYと、出力制御信号ENBYと、映像信号VIDと、選択信号SELとを液晶パネル100に出力する。選択信号SELは、第1選択信号SEL1から第4選択信号SEL4を含む。駆動IC310が出力する信号には、上記以外にも走査線駆動回路10へのスタートパルス信号や、走査方向指定信号等も含まれる。
【0082】
図1を参照して説明したように、クロック信号端子19に入力されるクロック信号CLYは、クロック信号主線17と、クロック信号支線18とを介して、走査線駆動回路10に供給される。出力制御信号端子21に入力される出力制御信号ENBYは、出力制御信号線20を介して、走査線駆動回路10に供給される。
【0083】
映像信号端子12に入力される映像信号VIDは、信号線駆動回路9に含まれる全デマルチプレクサーの各スイッチング素子11のソースに供給される。例えば、選択信号SELのうち、第1制御信号端子13から第4制御信号端子16に入力される第1選択信号SEL1から第4選択信号SEL4は、信号線駆動回路9の最も右側に位置するデマルチプレクサーに含まれる4つのスイッチング素子11のゲート電極に供給される。
【0084】
信号線駆動回路9に映像信号VID及び選択信号SELが供給され、走査線駆動回路10にクロック信号CLY及び出力制御信号ENBYが供給されることにより、各画素Pの画素スイッチング素子8をオン状態に切り替える走査信号が各走査線6に順次供給されるとともに、各画素Pの画素電極7に印加される電位が各信号線5に供給される。その結果、各画素Pの光透過率は、画素電極7と共通電極28との電位差によって決定される値となる。このように、各画素Pの光透過率が制御されることにより、液晶パネル100が光変調装置として動作して映像を表示している状態を液晶パネル100の通常駆動時と呼ぶこととする。また、各画素Pでは、映像を表示している通常駆動時には交流駆動が実施され、表示領域Eに含まれる画素Pの透過率の状態の更新が終わる1フレーム周期毎に各画素Pの液晶層4に対する印可電圧の極性が反転する。
【0085】
液晶パネル100の通常駆動時において、測定回路200の中央制御回路45は、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第4スイッチSW4をオフ状態に制御し、第2スイッチSW2及び第5スイッチSW5をオン状態に制御する。これにより、液晶パネル100の通常駆動時において、測定回路200の共通電位生成回路41から出力される共通電位Vcomが、液晶パネル100の共通電極28に供給される。同時に検出電極22がVs=VcomとなるようにVsrefが調整される。
【0086】
なお、測定回路200を構成する各回路は、各回路が実現する機能の一部ないし全部を、例えば、中央制御回路45の制御プログラムで実現する構成としてもよい。また、測定回路200は、1つのIC(Integrated Circuit)であっても、複数のICに分割されていてもよい。
【0087】
上記の説明から理解されるように、中央制御回路45及び駆動IC310は、連携して、クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYを液晶パネル100に供給する。クロック信号CLYは、クロック信号主線17及びクロック信号支線18の電位を規定する信号である。出力制御信号ENBYは、出力制御信号線20の電位を規定する信号である。従って、中央制御回路45及び駆動IC310は、クロック信号主線17、クロック信号支線18及び出力制御信号線20を含む複数の駆動信号線の電位を制御する第1制御回路の一例である。
【0088】
また、中央制御回路45及び駆動IC310は、連携して、映像信号VID及び選択信号SELを液晶パネル100に供給する。選択信号SELは、複数の信号線5と1対1で電気的に接続される複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位を規定する信号である。映像信号VIDは、複数のスイッチング素子11を介して複数の信号線5に供給される電位を規定する信号である。従って、中央制御回路45及び駆動IC310は、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位と、複数のスイッチング素子11を介して複数の信号線5に供給される電位とを制御する第2制御回路の一例である。
【0089】
上記のように、本実施形態では、中央制御回路45及び駆動IC310が、第1制御回路としての機能と、第2制御回路としての機能との両方を有する形態を例示するが、第1制御回路としての機能を有する制御回路と、第2制御回路としての機能を有する制御回路とを、別々に設けても良い。
【0090】
1-3.液晶層4の物性測定方法の概要
図4は、液晶パネル100の液晶層4の物性測定方法を示す概略的なフローチャートである。以下では、
図4を参照しながら、液晶層4の物性測定方法について説明する。
【0091】
図4に示すように、ステップS10では、所定のイベントが発生すると、液晶装置1000は、通常駆動を行う通常駆動モードから液晶層4の物性測定を行う測定モードに移行し、液晶層4の物性測定を開始する。ここで、所定のイベントには、液晶装置1000を用いた投射型表示装置の電源オンおよび電源オフ、液晶装置1000を用いた投射型表示装置における保全メニュー選択からの測定指示などがあり、これらのイベントの発生により投射型表示装置からの測定開始コマンドが送信される。測定回路200の中央制御回路45は、投射型表示装置から測定開始コマンドを受信すると、液晶層4の物性測定を開始する。
【0092】
なお、ステップS10は、測定モード移行イベントの概念を示している。実際には、例えば、保全メニュー選択からの指示は割り込み処理的なものであり、液晶装置1000を用いた投射型表示装置は電源が投入されている。また、測定モード移行イベントは、例示した「保全メニュー選択」、「電源オン」および「電源オフ」の全てを強制するものでもない。また、本発明において、液晶層4の物性測定は、例えば、投射型表示装置の光源が非点灯の状態で実施する。あるいは、機械的な遮光機構によって光源からの光が遮蔽される構成として実施する。液晶層4の物性測定時において、投射型表示装置の光源が非点灯の状態であれば、投射型表示装置における表示上の問題は発生しない。
【0093】
また、液晶装置1000を用いた投射型表示装置の電源がオンにされると、画素電極7の状態を確定させるために、クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYが、走査線駆動回路10に供給される。すなわち、液晶装置1000が通常駆動モードで動作する非測定期間と、液晶装置1000が測定モードで動作する測定期間とのそれぞれにおいて、クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYが、走査線駆動回路10に供給される。
【0094】
クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYは、15V程度の高い振幅と、優にkHzオーダーを超える高い周波数とを有する矩形波信号である。すなわち、中央制御回路45及び駆動IC310を含む第1制御回路は、非測定期間及び測定期間において、複数の駆動信号線の電位を矩形波状に変化させる。一般的な液晶パネルでの第1制御回路は、解析用にいくつかの動作モードを有しているが、通電後には、例えば、クロック信号CLYは常時出力される仕様となっており、任意に停止させることは想定されていない。従って、既存液晶パネルを改修して、安価に液晶層4の物性測定機能を搭載するためには、常時動作してしまうクロック信号等への対応策が必要となる。後述するように、測定期間は、少なくとも第1放電期間T4を含む。従って、第1制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、複数の駆動信号線の電位を矩形波状に変化させる。なお、既に説明したように、複数の駆動信号線は、クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20を含む。なお、走査線駆動回路10が必要とする信号としては、スタートパルス信号、走査方向指定信号等があるが、信号の動作周波数等から考えると、クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYに対する対処を第一に考えるべきである。これは第1実施形態と第2実施形態で述べる。同様に信号線駆動回路9の選択信号SELに対する対処を考えるべきである。これは第3実施形態で述べる。
【0095】
中央制御回路45は、測定開始コマンドを受信すると、まず、後述の測定処理の実行回数を示すカウント値Kを「0」にリセットする(ステップS11)。続いて、中央制御回路45は、カウント値Kに「1」を加算する(ステップS12)。続いて、中央制御回路45は、カウント値Kが奇数か否かを判定する(ステップS13)。
【0096】
中央制御回路45は、カウント値Kが奇数である場合(ステップS13:Yes)、第1測定処理を実行する(ステップS14)。一方、中央制御回路45は、カウント値Kが偶数である場合(ステップS13:No)、第2測定処理を実行する(ステップS15)。第1測定処理及び第2測定処理の具体的な内容については後述する。
【0097】
中央制御回路45は、第1測定処理または第2測定処理を実行した後に、カウント値Kが上限値Kmaxと等しいか否かを判定する(ステップS16)。中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しくない場合(ステップS16:No)、ステップS12に戻る。一方、中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しい場合(ステップS16:Yes)、後述のステップS17に移行する。なお、上限値Kmaxは予め、測定回路200の制御プログラムに設定されているものである。あるいは、図示を省略した入力手段によって数値を設定できるようにしてもよい。入力手段は、例えば、測定回路200が備える入力キーや、液晶装置1000を用いた投射型表示装置に対して有線もしくは無線接続されたPC(Personal Computer)などである。上限値Kmaxが2以上に設定されていれば、第1測定処理もしくは第2測定処理の複数回の測定結果について平均値を計算して、再現性の良いデータを得ることができる。後述する詳細な測定例では、上限値Kmax=20であり、10回の第1測定処理の平均値を計算している。
【0098】
上記のステップS11からステップS16までの処理の説明から理解されるように、中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しくなるまで、第1測定処理と第2測定処理とを交互に実行する。例えば、上限値Kmaxが「10」である場合、第1測定処理と第2測定処理とが、それぞれ5回ずつ実行される。以下では、
図5及び
図6を参照しながら、第1測定処理及び第2測定処理について詳細に説明する。
【0099】
図5は、第1測定処理及び第2測定処理の実行時における検出電極22及び共通電極28のそれぞれの電位の時間的な変化を示す図である。
図5において、横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
図5では、説明の便宜上、各電極の電位表示は実際とは異ならしめている。例えば、縦軸の1.2Vの値は5Vのおよそ半値の部分に描かれている。
図5において、検出電極22の電位である検出電極電位Vdは一部を除いて実線によって示され、共通電極28の電位である共通電極電位Vcは点線によって示される。
【0100】
図6は、第1測定処理及び第2測定処理の実行時における検出電極22と共通電極28との電位差の時間的な変化を示す図である。
図6において、横軸は時間であり、縦軸は共通電極28を基準とした際の検出電極22の電圧である。換言すれば、検出電極22における液晶層4の印可電圧である。
図6では、共通電極電位Vcに対して、検出電極電位Vdが大きいときの電位差の極性を正極性としている。
【0101】
図5及び
図6において、時刻t1から時刻t5までの期間T10において第1測定処理が実行される。以下の説明では、第1測定処理が実行される期間T10を第1測定期間T10と呼称する場合がある。第1測定期間T10は、第1逆掃引期間T1と、第1緩和期間T2と、第1充電期間T3と、第1放電期間T4とを含む。第1逆掃引期間T1は、時刻t1から時刻t2までの期間である。第1緩和期間T2は、時刻t2から時刻t3までの期間である。第1充電期間T3は、時刻t3から時刻t4までの期間である。第1放電期間T4は、時刻t4から時刻t5までの期間である。
【0102】
第1逆掃引期間T1において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が第1電位差Vp1となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給する。
【0103】
具体的には、第1逆掃引期間T1において、中央制御回路45は、例えば+5Vの参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。これにより、測定電位生成回路40から+5Vの測定電位Vsが出力される。また、第1逆掃引期間T1において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0104】
第1逆掃引期間T1において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、測定電位生成回路40の出力端子が検出電極22と電気的に接続され、グランド電位線L2が共通電極28と電気的に接続される。これにより、第1逆掃引期間T1において、検出電極22に+5Vの測定電位Vsが供給され、共通電極28にグランド電位、すなわち0Vが供給される。その結果、
図5に示すように、第1逆掃引期間T1において、検出電極電位Vdは+5Vとなり、共通電極電位Vcは0Vとなる。また、
図6に示すように、第1逆掃引期間T1において、検出電極22と共通電極28との電位差は、第1電位差Vp1、すなわち+5Vとなる。
【0105】
このように、第1逆掃引期間T1において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が+5Vの第1電位差Vp1となるように、検出電極22に+5Vの測定電位Vsを供給すると共に、共通電極28にグランド電位を供給する。本実施形態において、第1逆掃引期間T1は、第1期間に対応する。
【0106】
第1逆掃引期間T1と第1充電期間T3との間の第1緩和期間T2において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第1電位差Vp1と同じ極性を有し、且つ第1電位差Vp1の絶対値より小さい絶対値を有する第3電位差Vp3となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給する。
【0107】
具体的には、第1緩和期間T2において、中央制御回路45は、例えば+1.2Vの参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。これにより、測定電位生成回路40から+1.2Vの測定電位Vsが出力される。また、第1緩和期間T2において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0108】
第1緩和期間T2において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、測定電位生成回路40の出力端子が検出電極22と電気的に接続され、グランド電位線L2が共通電極28と電気的に接続される。これにより、第1緩和期間T2において、検出電極22に+1.2Vの測定電位Vsが供給され、共通電極28にグランド電位が供給される。その結果、
図5に示すように、第1緩和期間T2において、検出電極電位Vdは+1.2Vとなり、共通電極電位Vcは0Vとなる。また、
図6に示すように、第1緩和期間T2において、検出電極22と共通電極28との電位差は、第3電位差Vp3、すなわち+1.2Vとなる。
【0109】
このように、第1緩和期間T2において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第1電位差Vp1と同じ極性を有し、且つ第1電位差Vp1の絶対値より小さい絶対値を有する第3電位差Vp3(+1.2V)となるように、検出電極22に+1.2Vの測定電位Vsを供給すると共に、共通電極28にグランド電位を供給する。本実施形態において、第1緩和期間T2は、第4期間に対応する。
【0110】
第1逆掃引期間T1後であって、且つ第1緩和期間T2後の第1充電期間T3において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第1電位差Vp1と異なる極性を有する第2電位差Vp2となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給する。
【0111】
具体的には、第1充電期間T3において、中央制御回路45は、例えば+1.2Vの参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。これにより、測定電位生成回路40から+1.2Vの測定電位Vsが出力される。また、第1充電期間T3において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0112】
第1充電期間T3において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、測定電位生成回路40の出力端子が共通電極28と電気的に接続され、グランド電位線L2が検出電極22と電気的に接続される。これにより、第1充電期間T3において、検出電極22にグランド電位が供給され、共通電極28に+1.2Vの測定電位Vsが供給される。その結果、
図5に示すように、第1充電期間T3において、検出電極電位Vdは+0Vとなり、共通電極電位Vcは+1.2Vとなる。また、
図6に示すように、第1充電期間T3において、検出電極22と共通電極28との電位差は、第2電位差Vp2、すなわち-1.2Vとなる。
【0113】
このように、第1充電期間T3において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第1電位差Vp1と異なる極性を有する第2電位差Vp2(-1.2V)となるように、共通電極28に+1.2Vの測定電位Vsを供給すると共に、検出電極22にグランド電位を供給する。本実施形態において、第1充電期間T3は、第2期間に対応する。
【0114】
第1充電期間T3後の第1放電期間T4において、測定回路200は、検出電極22への電位の供給を停止すると共に共通電極28に第1充電期間T3と同じ電位を供給し、少なくとも1回、例えば、第1放電期間T4の終了時に検出電極電位Vdを測定する。
【0115】
具体的には、第1放電期間T4において、中央制御回路45は、例えば+1.2Vの参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。これにより、測定電位生成回路40から+1.2Vの測定電位Vsが出力される。また、第1放電期間T4において、中央制御回路45は、第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0116】
第1放電期間T4において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、測定電位生成回路40の出力端子が共通電極28と電気的に接続され、グランド電位線L2が検出電極22と電気的に切断される。これにより、第1放電期間T4において、共通電極28には+1.2Vの測定電位Vsが供給され続けるが、検出電極22への電位供給が停止するため、液晶層4は、第1充電期間T3に充電された電荷を放電する。その結果、
図5に示すように、第1放電期間T4において、検出電極電位Vd1は、グランド電位である0Vから共通電極28に与えられた電位(+1.2V)に向かって緩やかに変化し、時刻t5において電位Vd1に到達する。検出電極電位Vd1の値は、
図2に示されるような液晶層4に含まれる可動性イオン85の量に依存する。従って、後述するように、第1放電期間T4の終了時の検出電極電位Vd1を測定することにより、液晶層4の劣化状況を判定することができる。
なお、
図6に示すように、第1放電期間T4の終了時の検出電極電位Vd1は、共通電極28を基準とする電位差V3に対応する。
【0117】
中央制御回路45は、例えば、第1放電期間T4が終了する時刻t5における検出電極電位Vd1を測定する。具体的には、検出電極電位Vd1は増幅回路43によって増幅され、増幅回路43の出力がA/Dコンバーター44に入力される。中央制御回路45は、時刻t5にA/Dコンバーター44から出力されるデジタル値を、検出電極電位Vd1の測定値として取得する。中央制御回路45は、時刻t5に得られた検出電極電位Vd1の測定値を測定値記憶回路46に記憶させる。
【0118】
このように、第1放電期間T4において、測定回路200は、検出電極22への電位の供給を停止すると共に、共通電極28に第1充電期間T3と同じ+1.2Vの測定電位Vsを供給し、少なくとも1回、例えば、第1放電期間T4の終了する時刻t5に検出電極電位Vd1を測定する。本実施形態において、第1放電期間T4は、第3期間に対応する。
【0119】
以上が第1測定処理の説明である。
第1逆掃引期間T1は、表示領域Eにおける1フレーム期間より長いことが好ましい。例えば、1フレーム期間が約16m秒である場合、第1逆掃引期間T1は、20m秒以上である。また、上記の説明では、第1逆掃引期間T1における第1電位差Vp1が+5Vである場合を例示したが、第1電位差Vp1の絶対値は、通常駆動における画素Pの液晶層4の最大印加電圧以上であることが好ましい。言い換えれば、第1電位差Vp1の絶対値は、表示領域Eにおける液晶層4の最大印加電圧以上であることが好ましい。第1逆掃引期間T1の長さと、第1電位差Vp1の絶対値とを上記のように設定する理由は後述する。
【0120】
第1充電期間T3は、表示領域Eにおける1フレーム期間より短いことが好ましい。例えば、1フレーム期間が約16m秒である場合、第1充電期間T3は、5m秒である。また、上記の説明では、第1充電期間T3における第2電位差Vp2の絶対値が1.2Vである場合を例示したが、このように第2電位差Vp2の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層4の閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。例えば、VA(Vertical Alignment)液晶パネル100において、ギャップが2.6μm程度のとき、液晶層4の閾値電圧Vthは約2.1Vである。なお、液晶層4の閾値電圧Vthは、液晶層4の透過率または明るさが、その最大階調比で約10%となるような駆動電圧であり、より好ましくは、液晶分子が動きはじめる直前の電圧、または、液晶分子の配向状態が変化しだす直前の電圧である。本実施形態では、ノーマリーブラック型の液晶パネル100としているために上記のような液晶層4の閾値電圧Vthを定義した。ノーマリーホワイト型の液晶パネル100とする場合には、例えば、液晶層4の閾値電圧Vthは、液晶層4の透過率または明るさが、その最大階調比で約90%となる駆動電圧のように定義できる。第1充電期間T3の長さと、第2電位差Vp2の絶対値とを上記のように設定する理由は後述する。
【0121】
さらに、上記の説明では、第1緩和期間T2における第3電位差Vp3の絶対値が、第2電位差Vp2の絶対値と同じ1.2Vである場合を例示したが、このように第3電位差Vp3の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層4の閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。第3電位差Vp3の絶対値を上記のように設定する理由は後述する。なお、必ずしも、第3電位差Vp3の絶対値が、第2電位差Vp2の絶対値と同じである必要はない。また、電位差が第1電位差Vp1から第3電位差Vp3に変化する過程で、電位差が例えば、時間に対して漸次変化するようにしてもよい。
【0122】
第1放電期間T4は、表示領域Eにおける1フレーム期間より長いことが好ましい。一般的に、液晶の保持率は、ホールド期間(フレーム期間)における電位保持率で評価される。従って、第1放電期間T4の長さが、1フレーム期間と同程度である場合、検出電極電位Vd1の測定値が小さくなり過ぎることに起因して、液晶層4の初期劣化の程度を正確に判別することが困難となる。例えば、第1放電期間T4は、100m秒、または、200m秒である。
【0123】
続いて、第2測定処理について説明する。
図5及び
図6において、時刻t5から時刻t9までの期間T20において第2測定処理が実行される。以下の説明では、第2測定処理が実行される期間T20を第2測定期間T20と呼称する場合がある。第2測定期間T20は、第2逆掃引期間T5と、第2緩和期間T6と、第2充電期間T7と、第2放電期間T8とを含む。第2逆掃引期間T5は、時刻t5から時刻t6までの期間である。第2緩和期間T6は、時刻t6から時刻t7までの期間である。第2充電期間T7は、時刻t7から時刻t8までの期間である。第2放電期間T8は、時刻t8から時刻t9までの期間である。
【0124】
第1放電期間T4後の第2逆掃引期間T5において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第1電位差Vp1と異なる極性を有し、且つ第1電位差Vp1の絶対値と同じ絶対値を有する第4電位差Vp4となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給する。
【0125】
具体的には、第2逆掃引期間T5において、中央制御回路45は、例えば+5Vの参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。これにより、測定電位生成回路40から+5Vの測定電位Vsが出力される。また、第2逆掃引期間T2において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0126】
第2逆掃引期間T5において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、測定電位生成回路40の出力端子が共通電極28と電気的に接続され、グランド電位線L2が検出電極22と電気的に接続される。これにより、第2逆掃引期間T5において、共通電極28に+5Vの測定電位Vsが供給され、検出電極22にグランド電位が供給される。その結果、
図5に示すように、第2逆掃引期間T5において、検出電極電位Vdは0Vとなり、共通電極電位Vcは+5Vとなる。また、
図6に示すように、第2逆掃引期間T5において、検出電極22と共通電極28との電位差は、第4電位差Vp4、すなわち-5Vとなる。
【0127】
このように、第2逆掃引期間T5において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第1電位差Vp1と異なる極性を有し、且つ第1電位差Vp1の絶対値と同じ絶対値を有する第4電位差Vp4(-5V)となるように、共通電極28に+5Vの測定電位Vsを供給すると共に、検出電極22にグランド電位を供給する。本実施形態において、第2逆掃引期間T5は、第5期間に対応する。
【0128】
第2逆掃引期間T5と第2充電期間T7との間の第2緩和期間T6において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第4電位差Vp4と同じ極性を有し、且つ第4電位差Vp4の絶対値より小さい絶対値を有する第6電位差Vp6となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給する。
【0129】
具体的には、第2緩和期間T6において、中央制御回路45は、例えば+1.2Vの参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。これにより、測定電位生成回路40から+1.2Vの測定電位Vsが出力される。また、第2緩和期間T6において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1及び第4スイッチSW4をオン状態に制御するとともに、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0130】
第2緩和期間T6において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、測定電位生成回路40の出力端子が共通電極28と電気的に接続され、グランド電位線L2が検出電極22と電気的に接続される。これにより、第2緩和期間T6において、共通電極28に+1.2Vの測定電位Vsが供給され、検出電極22にグランド電位が供給される。その結果、
図5に示すように、第2緩和期間T6において、検出電極電位Vdは0Vとなり、共通電極電位Vcは+1.2Vとなる。また、
図6に示すように、第2緩和期間T6において、検出電極22と共通電極28との電位差は、第6電位差Vp6、すなわち-1.2Vとなる。
【0131】
このように、第2緩和期間T6において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第4電位差Vp4と同じ極性を有し、且つ第4電位差Vp4の絶対値より小さい絶対値を有する第6電位差Vp6(-1.2V)となるように、共通電極28に+1.2Vの測定電位Vsを供給すると共に、検出電極22にグランド電位を供給する。本実施形態において、第2緩和期間T6は、第8期間に対応する。
【0132】
第2逆掃引期間T5後であって、且つ第2緩和期間T6後の第2充電期間T7において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第4電位差Vp4と異なる極性を有する第5電位差Vp5となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給する。
【0133】
具体的には、第2充電期間T7において、中央制御回路45は、例えば+1.2Vの参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。これにより、測定電位生成回路40から+1.2Vの測定電位Vsが出力される。また、第2充電期間T7において、中央制御回路45は、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0134】
第2充電期間T7において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、測定電位生成回路40の出力端子が検出電極22と電気的に接続され、グランド電位線L2が共通電極28と電気的に接続される。これにより、第2充電期間T7において、共通電極28にグランド電位が供給され、検出電極22に+1.2Vの測定電位Vsが供給される。その結果、
図5に示すように、第2充電期間T7において、検出電極電位Vdは+1.2Vとなり、共通電極電位Vcは0Vとなる。また、
図6に示すように、第2充電期間T7において、検出電極22と共通電極28との電位差は、第5電位差Vp5、すなわち+1.2Vとなる。
【0135】
このように、第2充電期間T7において、測定回路200は、検出電極22と共通電極28との電位差が、第4電位差Vp4と異なる極性を有する第5電位差Vp5(+1.2V)となるように、検出電極22に+1.2Vの測定電位Vsを供給すると共に、共通電極28にグランド電位を供給する。本実施形態において、第2充電期間T7は、第6期間に対応する。
【0136】
第2充電期間T7後の第2放電期間T8において、測定回路200は、検出電極22への電位の供給を停止すると共に共通電極28に第2充電期間T7と同じ電位を供給し、少なくとも1回、例えば、第2放電期間T8の終了時に検出電極電位Vdを測定する。
【0137】
具体的には、第2放電期間T8において、中央制御回路45は、例えば+1.2Vの参照電圧Vsrefを測定電位生成回路40に出力する。これにより、測定電位生成回路40から+1.2Vの測定電位Vsが出力される。また、第2放電期間T8において、中央制御回路45は、第3スイッチSW3をオン状態に制御するとともに、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第4スイッチSW4及び第5スイッチSW5をオフ状態に制御する。
【0138】
第2放電期間T8において、中央制御回路45が、上記のように第1スイッチSW1から第5スイッチSW5を制御することにより、測定電位生成回路40の出力端子が検出電極22と電気的に切断され、グランド電位線L2が共通電極28と電気的に接続される。これにより、第2放電期間T8において、共通電極28にはグランド電位が供給され続けるが、検出電極22への電位供給が停止するため、液晶層4は、第2充電期間T7に充電された電荷を放電する。その結果、
図5に示すように、第2放電期間T8において、検出電極電位Vdは、+1.2Vから共通電極28に与えられた電位(0V)に向かって緩やかに変化し、時刻t9において電位Vd2に到達する。電位Vd2の値は、液晶層4に含まれる可動性イオン85の量に依存する。従って、後述するように、第2放電期間T8の終了時の検出電極電位Vd2を測定することにより、液晶層4の劣化状況を判定することができる。
なお、
図6に示すように、第2放電期間T8の終了時の検出電極電位Vd2は、共通電極28を基準とする電位差V4に対応する。
【0139】
中央制御回路45は、例えば、第2放電期間T8が終了する時刻t9における検出電極電位Vd2を測定する。具体的には、検出電極電位Vd2は増幅回路43によって増幅され、増幅回路43の出力がA/Dコンバーター44に入力される。なお、測定回路20の駆動電源電圧(例えば5V)を鑑みると大幅な増幅は困難である。例えば、Vd2として、+1.2Vから0.1V降下した+1.1Vを得た場合、設定可能な増幅率は4倍程度に限られる。一方、Vd1として、0Vから0.1V上昇した+0.1Vを得た場合、可能な増幅率を20倍以上とすることができる。従って、第1測定処理による検出電極電位Vd1を液晶層4の劣化判定に用いることが検出感度の観点で好ましい。中央制御回路45は、時刻t9にA/Dコンバーター44から出力されるデジタル値を、検出電極電位Vd2の測定値として取得する。中央制御回路45は、時刻t9に得られた検出電極電位Vd2の測定値を測定値記憶回路46に記憶させる。
【0140】
このように、第2放電期間T8において、測定回路200は、検出電極22への電位の供給を停止すると共に、共通電極28に第2充電期間T7と同じグランド電位を供給し、少なくとも1回、例えば、第2放電期間T8が終了する時刻t9に検出電極電位Vd2を測定する。本実施形態において、第2放電期間T8は、第7期間に対応する。なお、上記の説明では第1測定処理と第2測定処理の夫々において検出電極電位Vd(Vd1、Vd2)を測定するとしたが、少なくとも一方で測定が実施されていればよい。
【0141】
以上が第2測定処理の説明である。
第2逆掃引期間T5は、表示領域Eにおける1フレーム期間より長いことが好ましい。例えば、1フレーム期間が約16m秒である場合、第2逆掃引期間T5は、20m秒以上である。また、上記の説明では、第2逆掃引期間T5における第4電位差Vp4が-5Vである場合を例示したが、第4電位差Vp4の絶対値は、通常駆動における画素Pの液晶層4の最大印加電圧以上であることが好ましい。言い換えれば、第4電位差Vp4の絶対値は、表示領域Eにおける液晶層4の最大印加電圧以上であることが好ましい。第2逆掃引期間T5の長さと、第4電位差Vp4の絶対値とを上記のように設定する理由は後述する。
【0142】
第2充電期間T7は、表示領域Eにおける1フレーム期間より短いことが好ましい。例えば、1フレーム期間が約16m秒である場合、第2充電期間T7は、5m秒である。また、上記の説明では、第2充電期間T7における第5電位差Vp5の絶対値が1.2Vである場合を例示したが、このように第5電位差Vp5の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層4の閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。第2充電期間T7の長さと、第5電位差Vp5の絶対値とを上記のように設定する理由は後述する。
【0143】
さらに、上記の説明では、第2緩和期間T6における第6電位差Vp6の絶対値が、第5電位差Vp5の絶対値と同じ1.2Vである場合を例示したが、このように第6電位差Vp6の絶対値は、0Vより大きく、且つ液晶層4の閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。第6電位差Vp6の絶対値を上記のように設定する理由は後述する。なお、必ずしも、第6電位差Vp6の絶対値が、第5電位差Vp5の絶対値と同じである必要はない。また、第4電位差Vp4から第6電位差Vp6に変化する過程で、電位差が例えば、時間に対して漸次変化するようにしてもよい。
【0144】
第1放電期間T4と同じ理由により、第2放電期間T8は、表示領域Eにおける1フレーム期間より長いことが好ましい。例えば、第2放電期間T8は、100m秒、または、200m秒である。なお、第1放電期間T4や第2放電期間T8の長さは、上記に限るものではない。例えば、第2電位差Vp2(第5電位差Vp5)の絶対値や、測定対象の液晶の劣化生成物である可動性イオンの移動度等によって調整され得る。より具体的に言えば、例えば、第2電位差Vp2(第5電位差Vp5)の絶対値が実施例の1.2Vより小さい0.8Vであれば、可動性イオンの移動に伴う検出電極電位変動の時刻が遅れるため、長時間の第1放電期間T4(第2放電期間T8)が適する場合がある。例えば、400m秒以上である。
【0145】
図6から理解されるように、上記のような第1測定処理と第2測定処理とが交互に繰り返されることにより、検出電極22の領域における液晶層4は交流駆動される。これにより、液晶層4の物性測定時において、液晶層4に直流電圧が印加されることに起因して液晶層4が劣化することを抑制できる。
【0146】
以下、
図4に戻って説明を続ける。
既に述べたように、中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しくなるまで、第1測定処理と第2測定処理とを交互に実行する。そして、中央制御回路45は、カウント値Kが上限値Kmaxと等しい場合(ステップS16:Yes)、後述のステップS17に移行する。全ての測定処理が終了したら、例えば、中央制御回路45は、第5スイッチSW5をオン状態に制御し、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4をオフ状態に制御する。この結果、共通電位Vcomが共通電極28に印可される。さらに中央制御回路45は、参照電圧Vsrefとして共通電位Vcomを出力する。また、第2スイッチSW2をオンに制御し、第1スイッチSW1をオフ状態に制御する。この結果、共通電位Vcomが第1ノードN1、つまり検出電極22に印可される。
【0147】
ステップS17では、表示情報生成回路47は、測定値記憶回路46に記憶された検出電極電位Vd1及びVd2の測定値に基づいて、液晶層4の劣化状況を示す表示用データを作成する。そして、液晶パネル100の通常駆動時に、中央制御回路45は、表示情報生成回路47が生成した表示データを、パネル制御回路を介して、液晶パネル100の表示領域Eに表示する。なお、液晶層4の劣化状況の表示は、液晶パネル100が寿命に近づいて、検出電極電位Vd1及びVd2の測定値が、予め設定された閾値Vd_thに達した時など、使用者への通知が必要な時にのみ行うようにしてもよい。
【0148】
また、液晶層4の劣化状況を示す表示は、後述するように液晶装置1000を用いた投射型表示装置が行ってもよい。例えば、投射型表示装置が、RGBに対応した3個の液晶装置1000を備えた3板式の投射型表示装置の場合は、液晶装置1000が個別に、液晶層4の劣化状況を表示するのではなく、投射型表示装置が3個の液晶装置1000の液晶パネル100の劣化状況を統合して、表示する構成としてもよい。
【0149】
ステップS18では、中央制御回路45は、測定結果に関するデータを、液晶装置1000を用いた投射型表示装置へ送信する。投射型表示装置は、液晶層4の劣化状況を示すデータに基づいて、例えば、音声装置や警告灯などの報知手段を用いた報知処理など必要な処理を行う。なお、ステップS18は、液晶装置1000を用いた投射型表示装置の仕様によっては、省略することができる。
【0150】
液晶層4の劣化状況の測定結果は、液晶装置1000を用いた投射型表示装置の保全メニューからも表示させることができる。保全メニューは、例えば、投射型表示装置における設定メニューの一部として実装される。ステップS10では、中央制御回路45は、液晶装置1000を用いた投射型表示装置から、測定結果の表示指示コマンドを受信すると、ステップS17に進み、測定結果を液晶パネル100の表示領域Eに表示する。
【0151】
1-4.液晶パネル100の使用時間と放電特性との関係の概要
図7は、液晶パネル100の使用時間と放電特性との関係を示すグラフである。使用時間とは、例えば、累積の使用時間である。投射型表示装置では、例えば、累積の点灯時間に相当する。この累積の使用時間(点灯時間)を実験で検証するためには膨大な時間を必要とするので、実使用条件よりも入射光強度や温度を上げた連続加速試験を行った場合に得られるデータとして説明する。放電特性とは具体的には、例えば、
図5に示される第2放電期間T8における検出電極電位Vdの時間的な変化である。
図7の縦軸は、第2放電期間T8における検出電極電位Vdを示す。
図7の横軸は、第2放電期間T8における時刻を示す。
図7において、時刻t8は、
図5に示される時刻t8、すなわち第2放電期間T8の開始時刻に対応する。また、
図7において、時刻t9は、
図5に示される時刻t9、すなわち第2放電期間T8の終了時刻に対応する。例えば、時刻t9は、時刻t8から150ms後の時刻である。従って、横軸を放電開始からの経過時間とするならば時刻t8は0となり、時刻t9は150となる。
【0152】
図7において、放電曲線G0は、液晶パネル100の使用開始時、つまり、使用時間がゼロである使用時間h0における放電曲線を示し、放電曲線G3は、液晶パネル100が寿命に達する直前の使用時間h3における放電曲線を示す。放電曲線G1は、液晶パネル100の使用開始からの使用時間h1が経過した時点での放電曲線を示し、放電曲線G2は、液晶パネル100の使用開始からの使用時間h2が経過した時点での放電曲線を示している。ここで、使用時間の関係は、h0<h1<h2<h3である。
【0153】
各放電曲線において、時刻t8における検出電極電位Vdは、+1.2Vに近しいが、時刻t9における検出電極電位Vd、すなわち検出電極電位Vd2は異なる。即ち、連続加速試験下では、試験経過と共に検出電極電位Vd2は低下していく挙動となる。
【0154】
このように、液晶パネル100の使用時間が長くなるほど、時刻t9における検出電極電位Vd2は低下する。これは、液晶パネル100の使用時間に伴って、高強度光入射による化学反応によって液晶層4の可動性イオン85が増加し、放電曲線を変化させた結果である。そして、本実施形態では、判定回路45aが、測定値記憶回路46に記憶された検出電極電位Vd2の測定値に基づいて、液晶層4の劣化状況を判定する。
【0155】
図8は、液晶パネル100の使用時間と時刻t9における検出電極電位Vd2との関係を示したグラフである。縦軸は、時刻t9における検出電極電位Vd2を示し、横軸は液晶パネル100の使用時間である。
【0156】
図8に示すように、時刻t9における検出電極電位Vd2の値は、液晶パネル100の使用時間h0、h1、h2、h3の長さに応じて変化し、例えば、推移線W1に沿って推移する。典型的には使用時間の増加に伴って推移線W1が示す値は漸減していく。すなわち、検出電極電位Vd2は、Vd2_h0、Vd2_h1、Vd2_h2、Vd2_h3の順で徐々に低下していく。そして、推移線W1が示す値は、使用時間h3を超えた辺りから、使用時間の増加に対して測定値Vd2の低下する割合が、急激に大きくなり、使用時間h3を超えると、液晶層4の可動性イオン85の量が急激に増えて、液晶パネル100が寿命に達する。このように推移線W1は、液晶パネル100の使用時間に対して非線形的に変化する。そして、表示品位でも、使用時間h3を超えて矢印ARで示した時間以降では、表示画面上におけるシミ・ムラの発生が顕著になり、それに伴い輝度の低下も起きて、表示品位が低下することが確認されている。
【0157】
判定回路45aは、検出電極電位Vd2の測定値が、閾値Vd_thより低下した場合に、液晶パネル100の寿命が近いことを使用者ないし管理者に報知するように中央制御回路45の制御プログラムが組まれている。あるいは後述するように、これまでの液晶パネル100使用時間と、検出電極電位Vd2との関係を確認できる中央制御回路45の制御プログラムが組まれている。
【0158】
なお、閾値Vd_thと比較される検出電極電位Vd2の測定値は、複数の測定値の平均値でもよい。また、液晶パネル100が使われる状況に応じて、閾値Vd_thは変更してもよい。例えば、より高い表示品位が求められる場合、或いは液晶パネル100のメンテナンスに時間がかかる場合には、早めに報知できるように、閾値Vd_thを、使用時間h2に対応する検出電極電位Vd2_h2に設定してもよい。
【0159】
また、判定回路45aは、第1放電期間T4の終了時に得られた検出電極電位Vd1の測定値に基づいて、液晶パネル100の劣化状況を判定してもよい。この場合、第1放電期間T4の終了時に得られた検出電極電位Vd1の測定値と比較される閾値Vd_thは、第2放電期間T8の終了時に得られた検出電極電位Vd2の測定値と比較される閾値Vd_thと異なる値に設定されてもよい。
【0160】
1-5.第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5の作用効果
上記のように、本実施形態では、第1測定期間T10の先頭に第1逆掃引期間T1が挿入され、第2測定期間T20の先頭に第2逆掃引期間T5が挿入される。これにより、第1測定期間T10の開始直後と、第2測定期間T20の開始直後とのそれぞれにおいて、液晶層4に含まれる可動性イオン85を、共通電極28及び検出電極22のいずれか一方に効果的に初期配置できる。このように可動性イオン85の初期配置が整えられることにより、測定再現性を得られやすくなる。可動性イオン85による内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオン85の増加が測定値の変化として現れやすくなる。
【0161】
第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5は、それぞれ、1フレーム期間よりも長いことが好ましい。例えば、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5は、それぞれ、20m秒以上である。これにより、液晶層4に含まれる可動性イオン85のうち、移動度の小さい可動性イオン85も効果的に初期配置できる。移動度の小さい可動性イオン85は、液晶層4内を移動し難い。そのため、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5が通常のフレーム期間である場合には、移動度の小さい可動性イオン85の初期配置を通常のフレーム期間内で制御することは困難である。このように移動度の小さい可動性イオン85の初期配置を制御できない状態で測定値を得たとしても、十分な測定再現性を得られないことがある。
【0162】
図9は、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5の効果を示す図である。
図9以降に示す詳細な実測データは、基本的には
図6に示す電圧を液晶層4に印可して得た結果であり、第1逆掃引期間T1等の作用を説明する上で支障はない。
図9は、第1逆掃引期間T1が20m秒のケースと、第1逆掃引期間T1が100m秒のケースと、第1逆掃引期間T1が500m秒のケースとのそれぞれについて、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを測定した結果を示す。より詳細には、
図9に示される結果は、液晶パネル100の劣化試験の極初期において、上記3つのケースのそれぞれについて、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを11倍に増幅して測定した結果である。
【0163】
図9において、横軸は、第1放電期間T4の放電開始からの時刻を示し、縦軸は、第1放電期間T4における検出電極電位Vdの測定値を示す。第1放電期間T4は200m秒である。また、
図9において、縦軸は、検出電極電位Vdの測定値を、A/Dコンバーター44から出力されるデジタル値で表している。この測定ではA/Dコンバーター52として、10ビット仕様のA/Dコンバーターを使用し、測定値1023は約2.5Vに相当する。
【0164】
図9に示されるように、第1逆掃引期間T1が長いほど、第1放電期間T4の終了時の測定値が大きくなる。この理由は、第1測定期間T10の先頭に第1逆掃引期間T1を挿入することにより、特に移動度の小さい可動性イオン85が、共通電極28及び検出電極22のいずれか一方に効果的に初期配置された結果と考えられる。このような結果は、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5を長くすることにより、液晶パネル100の使用初期から、液晶層4の劣化の進行を感度良く追跡できることを示唆する。また、
図9は連続加速試験の極初期における差異を例示したが、試験終盤の測定においても第1逆掃引期間T1の効果を確認できた。第1逆掃引期間T1が20m秒のケースと100m秒のケースとでは、明らかに放電特性が変化した。具体的には、第1逆掃引期間T1を100m秒とした場合、第1逆掃引期間T1を20m秒とした場合よりも検出電極電位Vdの測定値が明らかに大きくなった。
【0165】
図10は、液晶層4の電気特性図を示す。横軸は液晶層4への印可電圧であり、縦軸は電流である。この電気特性は、例えば、液晶層4に対して0.1Hzの±5Vの三角波電圧を印可した際の電流を測定して得ることができる。この手法は一般的にはサイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)と呼ばれる測定方法である。
図10において符号Aで示されるように、典型的には、可動性イオン85による電流は、液晶層4の充電電流に対して増分電流として出現し、比較的小さい電圧においてピーク電流を示す。このピーク電流は、液晶層4の劣化の進行に伴って、例えば破線で示されるような大きなピークとなって現れる。上記のような方法では、専用の精密測定機器を用いれば、可動性イオン85の存在を定量的に評価できるが、液晶装置1000を用いた投射型表示装置にこのような機能を実装することはコスト的に現実的ではない。しかるに本願の構成によれば、比較的簡便な回路構成で液晶層4の劣化状態を定量化できる。
【0166】
第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5において液晶層4に印加される電圧は、液晶パネル100の通常駆動時の最大印可電圧以上であることが好ましい。言い換えれば、第1逆掃引期間T1における第1電位差Vp1の絶対値と、第2逆掃引期間T5における第4電位差Vp4の絶対値とは、それぞれ、液晶パネル100の通常駆動時の最大印可電圧以上であることが好ましい。これにより、測定を実施する前の液晶パネル100の表示状態の影響が抑制された状態で、測定を実施できる。検出電極22は表示領域Eの外縁に沿っており、表示領域Eから基板面に沿って拡散してくる可動性イオン85を観測している。ところで、各画素Pにおいて、可動性イオン85の移動は駆動電圧によって制限を受け得る。つまり、可動性イオン85が共通電極28側に存在するのか、検出電極22側に存在するのかは、画素Pの駆動電圧に依存し未制御である。しかるに第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5において、検出電極21における液晶層4に印加される電圧を、各画素Pにおける通常駆動時の液晶層4に印可する最大印可電圧以上とすれば、通常駆動では動かしきれない可動性イオン85を制御して初期配置できる。さらに第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5を1フレームよりも長くすれば、通常駆動時よりも可動性イオン85の移動距離は長くなるので、初期配置に効果を奏す。第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5において液晶層4に印加される電圧は、液晶層4の閾値電圧Vth以上の電圧であってもよい。
【0167】
図11は、液晶層4の規格化透過率と印加電圧との関係を示す図である。液晶層4のギャップ及び液晶材料によって透過率の特性は異なるが、例えば、液晶パネル100がノーマリーブラック型のVA液晶パネルであり、液晶層4のギャップが約2.6μmである場合、
図11に示すように、4V弱の電圧が印加されたときに、液晶層4の透過率は最大となる。従って、液晶パネル100の通常駆動時の保持状態にある画素Pにおいて、液晶層4の最大印可電圧は、4V弱に設定される。この場合、例えば、液晶パネル100の通常駆動時の1フレーム期間、換言すれば画素Pの極性保持期間に液晶層4の印可電圧の4V程度で動く可動性イオン85が、共通電極28及び検出電極22のどちらに位置しているかは不明である。しかしながら、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5において、液晶パネル100の通常駆動時の最大印可電圧以上の+5Vの電圧を、1フレーム期間よりも長く液晶層4に印加することにより、4V程度で動く可動性イオン85も、共通電極28及び検出電極22のいずれか一方に効果的に初期配置させることができる。なお、上記の最大印可電圧はデータ線に供給される電位を観測すれば判る。例えば、共通電極28を固定電位として表示駆動されている場合には、最大印可電圧は液晶パネル100を最大階調表示とした際のデータ線供給電位の振幅のおよそ半値である。別の例では、共通電極28の電位を表示極性に応じて反転駆動としている場合には、最大印可電圧は液晶パネル100を最大階調表示とした際のデータ線供給電位の振幅とおよそ近しい。
【0168】
また、
図9から、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5の効果があまり反映されない測定値を拾い上げることができる。具体的には、
図9に示されるように、第1放電期間T4の開始時点から50m秒付近までの期間では、3つのケースのそれぞれで得られた測定値に差がほとんどない。つまり、第1放電期間T4には、第1放電期間T4の開始時点から50m秒付近までの第1ステージと、50m秒付近から第1放電期間T4の終了時点までの第2ステージとの2つのステージが存在する。第1ステージにおける測定値は、比較的移動度の大きい可動性イオン85の挙動を反映しており、第2ステージにおける測定値は、比較的移動度の小さい可動性イオン85の挙動を反映していると考察できる。
【0169】
従って、比較的移動度の大きい可動性イオン85に焦点を当てる場合には、第1ステージにおける測定値を採用すればよい。一方、比較的移動度の小さい可動性イオン85に焦点を当てる場合には、第2ステージにおいて異なる2つの時点に得られた測定値の差を採用すればよい。例えば、第1放電期間T4の開始時点から50m秒経過した時点に得られた測定値と、第1放電期間T4の終了時点に得られた測定値との差である。従って、測定値については、第1放電期間T4や第2放電期間T8の終了時の測定値でなくてもよい。
【0170】
1-6.第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6の効果
上記のように、本実施形態では、第1測定期間T10において第1逆掃引期間T1と第1充電期間T3との間に第1緩和期間T2が挿入され、第2測定期間T20において第2逆掃引期間T5と第2充電期間T7との間に第2緩和期間T6が挿入される。これにより、液晶層4の誘電異方性の影響を回避し、かつ集積した可動性イオン85を動かさずに測定できる。
【0171】
上記のように、例えば、液晶層4の閾値電圧Vthは、2.1V程度である。つまり、第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6において液晶層4に印加される電圧が、閾値電圧Vthより小さければ、液晶層4の誘電異方性の影響を抑制して測定できる。言い換えれば、第1緩和期間T2における第3電位差Vp3の絶対値と、第2緩和期間T6における第6電位差Vp6の絶対値とが、それぞれ、0Vより大きく、且つ閾値電圧Vthより小さければ、第1緩和期間~第1放電期間における液晶層4の誘電異方性の影響を抑制して測定できる。第2緩和期間~第2放電期間も同様である。加えて第1充電期間T3及び第2充電期間T7において、移動度の大きい可動性イオン85の移動を抑制することができる。また、小さい電圧で液晶層4の充放電を行うと、移動度の大きい可動性イオン85を効率よく捕捉して測定できる。
【0172】
上記のように、本実施形態では、第1逆掃引期間T1から第1緩和期間T2に移行するときに、液晶層4の印加電圧は、極性が変わることなく、+5Vから+1.2Vへ切り替えられる。また、第2逆掃引期間T5から第2緩和期間T6に移行するときに、液晶層4の印加電圧は、極性が変わることなく、-5Vから-1.2Vへ切り替えられる。そのため、第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6の長さは、液晶層4の応答時間を考慮して設定される。液晶層4の応答時間を考慮すると、第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6は、1フレーム期間よりも長く設定されることが好ましい。例えば、第1緩和期間T2及び第2緩和期間T6は、20m秒、或いは50m秒等である。応答の早い液晶材料であれば、20m秒よりも短い値としてもよい。
【0173】
1-7.第1充電期間T3及び第2充電期間T7の効果
基本的に、第1充電期間T3及び第2充電期間T7は、短いほうがよい。この理由は、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くすると、移動度の大きい可動性イオン85の作用を測定値の変化として捕えやすくなるからである。例えば、第1充電期間T3及び第2充電期間T7は、液晶パネル100の通常駆動時の1フレーム期間より短いことが好ましい。
【0174】
本実施形態では、測定回路200によって、共通電極28及び検出電極22のそれぞれに供給される電位が制御される。共通電極28に電気的に接続される第2コンデンサーC2は、比較的大きな容量値を有する。また、共通電極線L1には第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4が電気的に接続される。第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4のオン抵抗が大きい場合、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くすることが難しい。例えば、市販のスイッチICでは、5V駆動時のオン抵抗は1kΩ程度である。例えば、第2コンデンサーC2の容量値が0.2μFである場合、5τは1m秒である。第1充電期間T3及び第2充電期間T7の長さを5τ程度とし、検出電極電位Vdを10倍程度増幅する増幅回路43を用いる場合、この時定数τは測定値に影響を与えてしまうほど大きい。
【0175】
一方、第1放電期間T4及び第2放電期間T8においては、検出電極22と電気的に接続される第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオフ抵抗を、充分に大きい値にする必要がある。これら第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオフ抵抗が小さい場合、第1ノードN1の電位、すなわち検出電極電位Vdの保持に影響を与えてしまう。また、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオフ抵抗のばらつきが大きい場合、測定値に影響を与える可能性がある。
【0176】
そこで、本実施形態では、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4のオン抵抗を小さくするために、例えば15Vという比較的大きな第2電圧を第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4に与える構成を採用した。一方、本実施形態では、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオフ抵抗を大きくするために、例えば5Vという比較的小さな第1電圧を第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2に与える構成を採用した。なお、5Vの第1電圧によって第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を駆動することは、夫々のスイッチにおけるオン抵抗が大きくなることを意味する。しかし検出電極22のノードに電気的に接続された第1コンデンサーC1は、共通電極28のノードに電気的に接続された第2コンデンサーC2よりも容量値が小さいので時定数的には問題なく対応できる。
【0177】
なお、本実施形態では、液晶パネル100の通常駆動時における共通電極28の応答性を考慮し、第5スイッチSW5にも、15Vという比較的大きな第2電圧を与える構成を採用した。第1スイッチSW1から第5スイッチSW5として、例えば、市販されているスイッチICを使用できる。すなわち、第1スイッチSW1から第5スイッチSW5として使用されるスイッチICに、5V、あるいは15Vの駆動電圧が与えられる。この場合、各スイッチICに、5V、あるいは15Vの電源電圧が供給される。
【0178】
図12は、第1充電期間T3及び第2充電期間T7の効果を示す図である。
図12は、第1充電期間T3が1m秒のケースと、第1充電期間T3が5m秒のケースとのそれぞれについて、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを測定した結果を示す。より詳細には、液晶パネル100の劣化試験の極初期において、上記2つのケースのそれぞれについて、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを11倍に増幅して測定した結果である。
【0179】
図12において、横軸は、第1放電期間T4の放電開始からの時刻を示し、縦軸は、第1放電期間T4における検出電極電位Vdの測定値を示す。一例として、第1放電期間T4は200m秒である。また、
図12において、縦軸は、検出電極電位Vdの測定値を、A/Dコンバーター44から出力されるデジタル値で表している。この測定ではA/Dコンバーター52として、10ビット仕様のA/Dコンバーターを使用し、測定値1023は約2.5Vに相当する。
【0180】
図12に示されるように、第1充電期間T3が短いほど、第1放電期間T4の終了時の測定値が大きくなる。この理由は、第1充電期間T3が短縮されることで、第1充電期間T3中の可動性イオン85の移動が抑制され、移動度の大きい可動性イオン85の作用を効率的に反映した結果と考えられる。このような結果は、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くすることにより、液晶パネル100の使用初期から、液晶層4の劣化の進行を感度良く追跡できることを示唆する。
【0181】
なお、
図12に示される結果を詳細に観察すると、第1放電期間T4の開始時点から50m秒が経過した後は、2つのケースのそれぞれで得られた測定値は、互いにほぼ平行に移動しているように見える。つまり、前述したように、比較的移動度の大きい可動性イオン85の作用によって、このような測定値の差が生じたものと考えられる。このように、第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5の長さと、第1充電期間T3及び第2充電期間T7が、測定値に及ぼす作用は異なる。
【0182】
1-8.第1導電層25の効果
既に述べたように、液晶装置1000が測定モードで動作する測定期間において、クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYが液晶パネル100に供給される。そのため、第1放電期間T4及び第2放電期間T8においても、クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYは、クロック信号線17及び出力制御信号線20に供給され続ける。クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYは、15V程度の高い振幅と、優にkHzオーダーを超える周波数とを有する矩形波信号である。一方、第1放電期間T4及び第2放電期間T8は、数100m秒であり、クロック信号CLY及び出力制御信号ENBYのハイレベル期間またはローレベル期間よりも長い。すなわち、第1放電期間T4及び第2放電期間T8は、通常駆動時において、複数の駆動信号線の電位が最大値又は最小値に保持される期間より長い。言い換えれば、第1放電期間T4及び第2放電期間T8において、クロック信号主線17及び出力制御信号線20を含む第1駆動信号線の電位は、定電位とならない。
【0183】
そのため、検出電極22と電気的に接続される電極引出線23が、平面視で第1駆動信号線と交差する構成を採用せざるを得ない場合、それらの間に生じる結合容量を介して、第1駆動信号線における高振幅且つ高周波の電位変動が、検出電極22の電位を変動させる。第1放電期間T4及び第2放電期間T8では、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極22に現れる数10mV程度の微弱な電位変化を観測する必要がある。そのため、第1放電期間T4及び第2放電期間T8において、電極引出線23と第1駆動信号線との間の結合容量に起因して、検出電極22に電位変動が発生すると、液晶層4の劣化進行度を正確に判別することが困難となる。
【0184】
そこで、本実施形態では、平面視で電極引出線23が第1駆動信号線と交差する領域において、電極引出線23と第1駆動信号線との間に、共通電極28と電気的に接続される第1導電層25が配置される。第1放電期間T4及び第2放電期間T8において、共通電極28には定電位が供給されるため、第1導電層25にも共通電極28と同じ定電位が供給される。このような構成により、第1放電期間T4及び第2放電期間T8において、電極引出線23と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第1放電期間T4及び第2放電期間T8において、第1駆動信号線の電位変動が検出電極22の電位に及ぼす影響が抑制され、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極22に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになるため、液晶層4の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。
【0185】
1-9.複数の駆動信号線が平面視で検出電極22と重ならない構成の効果
本実施形態では、複数の駆動信号線、すなわちクロック信号主線17、クロック信号支線18及び出力制御信号線20が、平面視で検出電極22と重ならない構成が採用される。このような構成を採用することにより、検出電極22と、複数の駆動信号線との間に結合容量が生じることを回避できる。その結果、第1放電期間T4及び第2放電期間T8において、複数の駆動信号線の電位変動が検出電極22の電位に及ぼす影響がより抑制され、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極22に現れる微弱な電位変化をより正確に捕捉できるようになるため、液晶層4の劣化進行度をより正確に判別することが可能となる。
【0186】
1-10.液晶層4の劣化進行の追跡
図13は、液晶層4の劣化の進行を追跡した結果を示す第1図である。
図14は、液晶層4の劣化の進行を追跡した結果を示す第2図である。詳細には、液晶パネル100が約65℃の条件になるように冷却しながら、12W/Cm
2の青色光を表示領域Eに所定時間照射する連続加速試験を行った。
図13及び
図14は、照射時間が0時間(初期)のケースと、照射時間が166時間のケースと、照射時間が326時間のケースとのそれぞれについて、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを測定した結果を示す。また、
図13に示される結果は、第1逆掃引期間T1が500m秒に設定され、第1充電期間T3が1m秒に設定された条件下で、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを測定した結果である。
図14に示される結果は、第1逆掃引期間T1が100m秒に設定され、第1充電期間T3が5m秒に設定された条件下で、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを測定した結果である。
【0187】
図13及び
図14において、横軸は、第1放電期間T4の放電開始からの時刻を示し、縦軸は、第1放電期間T4における検出電極電位Vdの測定値を示す。第1放電期間T4は200m秒である。また、
図13及び
図14において、縦軸は、検出電極電位Vdを11倍に増幅した測定値を、A/Dコンバーター44から出力されるデジタル値で表している。この測定ではA/Dコンバーター52として、10ビット仕様のA/Dコンバーターを使用し、測定値1023は約2.5Vに相当する。
【0188】
図13及び
図14に示されるように、本実施形態によれば、液晶パネル100に対する青色光の照射を開始してから、すなわち液晶パネル100の使用初期から、液晶層4の劣化の進行を感度良く追跡できることがわかる。また、実験に使用された液晶パネル100は、周辺回路等の電源配線等も実製品を反映して配置されているため、
図13及び
図14に示される実験結果は、検出電極22の寄生容量による影響が加味された実験結果である。従って、
図13及び
図14に示される実験結果から、本実施形態の液晶装置1000は、液晶層4の劣化進行を電圧値の変化として検知できる十分な実用性を備えていると言える。
【0189】
1-11.測定再現性の検証
図15は、測定再現性を検証した結果を示す第1図である。
図16は、測定再現性を検証した結果を示す第2図である。詳細には、詳細には、
図15は
図13に示した実験において、連続加速試験が326時間経過した際に取得した結果である。同様に、
図16は
図14に示した実験において、連続加速試験が326時間経過した際に取得した結果である。
図15及び
図16は、それぞれの測定条件において、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを2回測定した結果を示す。
図15及び
図16において、測定1は、1回目の測定結果を示し、測定2は、2回目の測定結果を示す。2回目の測定は、1回目の測定から所定時間が経過した後に実施された。
【0190】
また、
図15に示される結果は、第1逆掃引期間T1が500m秒に設定され、第1充電期間T3が1m秒に設定された条件下で、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを測定した結果である。
図16に示される結果は、第1逆掃引期間T1が100m秒に設定され、第1充電期間T3が5m秒に設定された条件下で、第1放電期間T4における検出電極電位Vdを測定した結果である。
【0191】
図15及び
図16において、横軸は、第1放電期間T4の放電開始からの時刻を示し、縦軸は、第1放電期間T4における検出電極電位Vdの測定値を示す。第1放電期間T4は200m秒である。また、
図15及び
図16において、縦軸は、検出電極電位Vdを11倍に増幅した測定値を、A/Dコンバーター44から出力されるデジタル値で表している。この測定ではA/Dコンバーター52として、10ビット仕様のA/Dコンバーターを使用し、測定値1023は約2.5Vに相当する。
【0192】
図15及び
図16に示されるように、本実施形態によれば、充分な再現性を持って測定できていることがわかる。第1逆掃引期間T1及び第2逆掃引期間T5が無い場合、測定前に、液晶パネル100の液晶層4に対して電気的に何をしていたかによって、このような測定再現性を得られない可能性がある。例えば、検出電極22において±1.2Vの充放電(-1.2Vで行う第1充電期間T3、第1放電期間T4、+1.2Vで行う第2充電期間T7、第2放電期間T8)で構成される測定を行う場合、
図11の表示領域Eの電圧-透過率などの光学特性を測定する前後で測定値が変わってしまう現象が発生したりする。
【0193】
(第1実施形態の効果)
以上説明したように、第1実施形態の液晶装置1000は、第1基板51と、液晶層4と、液晶層4を介して第1基板51に対向する第2基板81と、第1基板51と液晶層4との間に配置される検出電極22と、第2基板81と液晶層4との間に配置される共通電極28と、第1基板51と液晶層4との間に配置され、検出電極22と電気的に接続される電極引出線23と、第1基板51と液晶層4との間に配置され、平面視で電極引出線23と交差する第1駆動信号線(クロック信号主線17及び出力制御信号線20)を含む複数の駆動信号線(クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20)と、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置され、共通電極28と電気的に接続される第1導電層25と、検出電極22と共通電極28との夫々に電気的に接続される測定回路200と、を備える。測定回路200は、第1逆掃引期間T1において、検出電極22と共通電極28との電位差が第1電位差Vp1となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給し、第1充電期間T3において、電位差が、第1電位差Vp1と異なる極性を有する第2電位差Vp2となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給し、第1放電期間T4において、検出電極22への電位の供給を停止すると共に共通電極28に第1充電期間T3と同じ電位を供給し、検出電極電位Vdを少なくとも1回測定する。
【0194】
上記のように、本実施形態では、第1充電期間T3及び第1放電期間T4の前に、第1逆掃引期間T1が挿入される。これにより、第1逆掃引期間T1において、液晶層4に含まれる可動性イオン85を、共通電極28及び検出電極22のいずれか一方に効果的に初期配置できる。例えば、陽イオンは、共通電極28及び検出電極22のうち負極性の電位が供給される電極に初期配置され、陰イオンは、共通電極28及び検出電極22のうち正極性の電位が供給される電極に初期配置される。このように第1充電期間T3が始まる前に、可動性イオン85の初期配置が整えられることにより、第1放電期間T4に得られる検出電極電位Vdの測定値に関して測定再現性を得ることができる。また、可動性イオン85による内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオン85の増加が測定値の変化として現れやすくなる。その結果、液晶パネル100の使用初期から、液晶層4の劣化の進行を感度良く追跡できる。
【0195】
また、電極引出線23と第1駆動信号線との間に第1導電層25が配置され、共通電極28と電気的に接続されている。従って、第1放電期間T4において、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置される第1導電層25にも、+1.2Vの定電位が供給される。これにより、第1放電期間T4において、平面視で互いに交差する電極引出線23と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第1放電期間T4において、第1駆動信号線の電位変動が検出電極22の電位に及ぼす影響が抑制され、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極22に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになるため、液晶層4の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。また、第1駆動信号線の電位が変化しても測定可能となるので、クロック信号等を静止させる必要がなく、第1制御回路のレジスター設定を増大させることを抑制できる。
【0196】
第1実施形態の液晶装置1000において、複数の駆動信号線は、平面視で検出電極22と重ならない。
このような構成を採用することにより、検出電極22と、複数の駆動信号線との間に結合容量が生じることを回避できる。その結果、第1放電期間T4及び第2放電期間T8において、複数の駆動信号線の電位変動が検出電極22の電位に及ぼす影響がより抑制され、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極22に現れる微弱な電位変化をより正確に捕捉できるようになるため、液晶層4の劣化進行度をより正確に判別することが可能となる。
【0197】
第1実施形態の液晶装置1000は、複数の駆動信号線の電位を制御する第1制御回路(中央制御回路45及び駆動IC310)をさらに備え、第1制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、複数の駆動信号線の電位を矩形波状に変化させる。
このように、第1放電期間T4において、複数の駆動信号線の電位が矩形波状に変化する場合、平面視で互いに交差する電極引出線23と第1駆動信号線との間に生じる結合容量を介して、第1駆動信号線における矩形波状の電位変動が、検出電極22の電位を変動させる。しかしながら、第1放電期間T4において、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置される第1導電層25に定電位が供給されることにより、電極引出線23と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第1放電期間T4において、第1駆動信号線の電位変動が検出電極22の電位に及ぼす影響が抑制され、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極22に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになるため、液晶層4の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。
【0198】
第1実施形態の液晶装置1000において、第1放電期間T4は、通常駆動時において複数の駆動信号線の電位が最大値又は最小値に保持される期間より長い。
第1放電期間T4が、通常駆動時において、複数の駆動信号線の電位が最大値又は最小値に保持される期間より長い場合、第1放電期間T4において、クロック信号主線17及び出力制御信号線20を含む第1駆動信号線の電位は、定電位とならない。この場合、平面視で互いに交差する電極引出線23と第1駆動信号線との間に生じる結合容量を介して、第1駆動信号線における矩形波状の電位変動が、検出電極22の電位を変動させる。しかしながら、第1放電期間T4において、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置される第1導電層25に定電位が供給されることにより、電極引出線23と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第1放電期間T4において、第1駆動信号線の電位変動が検出電極22の電位に及ぼす影響が抑制され、第1放電期間を長く設定することができる。従って、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極22に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになるため、液晶層4の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。
【0199】
第1実施形態の液晶装置1000は、第1基板51と液晶層4との間に配置され、検出電極22を含む透明電極層59と、第1基板51と透明電極層59との間に配置され、第1駆動信号線を含む第1配線層53と、第1配線層53と透明電極層59との間に配置され、第1導電層25を含む第2配線層55と、第2配線層55と透明電極層59との間に配置され、電極引出線23を含む第3配線層57と、をさらに備える。
上記実施形態によれば、液晶パネル100の典型的な配線構造を利用して、検出電極22、電極引出線23、及び第1導電層25を配置できるため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0200】
第1実施形態の液晶装置1000は、複数の走査線6と、複数の走査線6を順次選択する走査線駆動回路10と、をさらに備え、複数の駆動信号線は、走査線駆動回路10と電気的に接続される。
一般的に、走査線駆動回路10と電気的に接続される複数の駆動信号線には、高振幅且つ高周波の電位変動が生じる。従って、このような複数の駆動信号線が、平面視で電極引出線23と交差する第1駆動信号線を含む場合、電極引出線23と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、特に大きな問題となる。しかしながら、本実施形態では、走査線駆動回路10と電気的に接続される第1駆動信号線と、電極引出線23との間に第1導電層25が配置されるため、高振幅且つ高周波の電位変動が生じる第1駆動信号線と、電極引出線23との間に生じる結合容量を、無視できるほどに小さくできる。
【0201】
第1実施形態の液晶装置1000は、表示領域Eに配置される複数の画素電極7をさらに備え、検出電極22は、表示領域Eの外側に配置される。
この場合、検出電極22の面積が大きいほど、検出可能な可動性イオン85の量が増加するため、可動性イオン85の増加に対する感度を向上させることができる。
ただし、検出電極22の面積が大きくなると、複数の駆動信号線の少なくとも一部が、平面視で検出電極22と重なる場合がある。この場合、複数の駆動信号線と検出電極22との間に生じる結合容量が問題となるが、この問題は、後述の第3実施形態により解決される。
【0202】
第1実施形態の液晶装置1000において、測定回路200は、第1逆掃引期間T1と第1充電期間T3との間の第1緩和期間T2において、電位差が、第1電位差Vp1と同じ極性を有し、且つ第1電位差Vp1の絶対値より小さい絶対値を有する第3電位差Vp3となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給する。
このように、第1逆掃引期間T1と第1充電期間T3との間に第1緩和期間T2が挿入されることにより、第1逆掃引期間T1に初期配置された可動性イオン85を移動させることなく、第1逆掃引期間T1から第1充電期間T3へ移行させることができる。
従って、上記実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層4の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0203】
第1実施形態の液晶装置1000において、測定回路200は、第1放電期間T4後の第2逆掃引期間T5において、電位差が、第1電位差Vp1と異なる極性を有し、且つ第1電位差Vp1の絶対値と同じ絶対値を有する第4電位差Vp4となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給し、第2逆掃引期間T5後の第2充電期間T7において、電位差が、第4電位差Vp4と異なる極性を有する第5電位差Vp5となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給し、第2充電期間T7後の第2放電期間T8において、検出電極22への電位の供給を停止すると共に共通電極28に第2充電期間T7と同じ電位を供給し、少なくとも1回検出電極電位Vdを測定する。
【0204】
上記のように、本実施形態では、第2充電期間T7及び第2放電期間T8の前に、第2逆掃引期間T5が挿入される。これにより、第2逆掃引期間T5において、液晶層4に含まれる可動性イオン85を、共通電極28及び検出電極22のいずれか一方に効果的に初期配置できる。このように第2充電期間T7が始まる前に、可動性イオン85の初期配置が整えられることにより、第2放電期間T8に得られる検出電極電位Vdの測定値に関して測定再現性を得ることができる。また、可動性イオン85による内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオン85の増加が測定値の変化として現れやすくなる。その結果、液晶パネル100の使用初期から、液晶層4の劣化の進行を感度良く追跡できる。
さらに、上記実施形態によれば、液晶層4が交流駆動されるため、検出電極電位Vdの測定時において、液晶層4に直流電圧が印加されることに起因して液晶層4が劣化することを抑制できる。
【0205】
第1実施形態の液晶装置1000において、測定回路200は、第2逆掃引期間T5と第2充電期間T7との間の第2緩和期間T6において、電位差が、第4電位差Vp4と同じ極性を有し、且つ第4電位差Vp4の絶対値より小さい絶対値を有する第6電位差Vp6となるように、検出電極22と共通電極28との夫々に電位を供給する。
このように、第2逆掃引期間T5と第2充電期間T7との間に第2緩和期間T6が挿入されることにより、第2逆掃引期間T5に初期配置された可動性イオン85を移動させることなく、第2逆掃引期間T5から第2充電期間T7へ移行させることができる。
従って、上記実施形態によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネル100の使用初期から、液晶層4の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0206】
第1実施形態の液晶装置1000において、測定回路200は、検出電極22と電気的に接続される第1ノードN1と、共通電極28と電気的に接続される共通電極線L1と、グランド電位が印加されるグランド電位線L2と、第1ノードN1とグランド電位線L2との間に電気的に接続される第1コンデンサーC1と、共通電極線L1とグランド電位線L2との間に電気的に接続される第2コンデンサーC2と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、第4スイッチSW4と、参照電圧Vsrefに対応する測定電位Vsを出力する測定電位生成回路40と、参照電圧Vsを測定電位生成回路40に出力し、第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御する第3制御回路(中央制御回路45)と、第1ノードN1の電位を検出電極電位Vdとして測定し、検出電極電位Vdの測定値を中央制御回路45に出力する電位測定回路(増幅回路43及びA/Dコンバーター44)と、を備える。
第1ノードN1は、第1スイッチSW1を介してグランド電位線L2と電気的に接続される。第1ノードN1は、第2スイッチSW2を介して測定電位生成回路40の出力端子と電気的に接続される。共通電極線L1は、第3スイッチSW3を介してグランド電位線L2と電気的に接続される。共通電極線L1は、第4スイッチSW4を介して測定電位生成回路40の出力端子と電気的に接続される。
上記の構成を有する測定回路200を用いることにより、シンプルな回路構成で測定回路200に要求される機能を実現できるとともに、検出電極電位Vdの測定値に含まれるノイズ成分を低減することができる。
【0207】
第1実施形態の液晶装置1000において、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、第1電圧(5V)によってオン状態に制御され、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4は、第1電圧よりも高い第2電圧(15V)によってオン状態に制御される。
このように、共通電極線L1と電気的に接続される第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4が、比較的高い第2電圧によってオン状態に制御されることにより、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4のオン抵抗を小さくできるため、共通電極線L1の応答性を向上させることができ、且つ、検出電極22からのリーク電流を抑制できる。
その結果、第1充電期間T3及び第2充電期間T7を短くできるため、移動度の大きい可動性イオン85の作用を測定値の変化として捕えることができるとともに、各スイッチ部品の特性バラツキが測定値に与える影響を抑制できる。また、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、中央制御回路45とは非一体型とすることが好ましい。例えば、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は第1の集積回路チップとして実装され、中央制御回路45は第2の集積回路チップとして実装される。中央制御回路45は高速で駆動される回路系を含む場合があり、発熱して高温化することがある。従って、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を、中央制御回路45とは非一体型とすれば、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の高温化は低減され、各スイッチを通じたリーク電流は抑制される。その結果、第1放電期間T4や第2放電期間T8おける検出電極22の電位変化は可動性イオン85の作用がより支配的になり、より測定に適したものとなる。
【0208】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する第2実施形態において、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態で使用した符号と同じ符号を付し、詳細な説明を適宜省略する。
【0209】
第2実施形態の液晶装置1000は、液晶パネル100Aと、測定回路200と、COF300と、を備える。液晶パネル100Aは、第1実施形態の液晶パネル100とは異なる構成を備える。測定回路200及びCOF300の構成は、第1実施形態と同じである。従って、以下では、主に液晶パネル100Aの構成について説明する。
【0210】
2-1.液晶パネル100Aの構成の概要
図17は、第2実施形態の液晶装置1000に用いられる液晶パネル100Aの概略的な構成を示す平面図である。なお、
図17において、+X方向を右又は右側、-X方向を左又は左側ということがある。また、+Y方向を上又は上側、-Y方向を下又は下側ということがある。さらに、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的という。
【0211】
図17に示すように、液晶パネル100Aは、第1実施形態で説明した電極引出線23の代わりに、電極引出線87を備える。より具体的には、液晶パネル100Aの素子基板1は、検出電極22と電気的に接続される電極引出線87を備える。例えば、電極引出線87は、検出電極22の左下隅から左側に向かってX軸方向に延在する。検出電極22は、電極引出線87を介して、第1電極接続端子24と電気的に接続される。
【0212】
第1実施形態と同様に、クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20を含む複数の駆動信号線は、平面視で検出電極22と重ならないが、検出電極22と電気的に接続される電極引出線87は、平面視で、クロック信号主線17及び出力制御信号線20と交差する。すなわち、第1実施形態と同様に、複数の駆動信号線は、平面視で電極引出線87と交差する第1駆動信号線として、クロック信号主線17及び出力制御信号線20を含む。第2実施形態では、電極引出線87と第1駆動信号線との間の結合容量を抑制するために、電極引出線87が第1駆動信号線と交差する領域に、X軸方向に延在する第1導電層25が配置される。第1導電層25は、電極引出線87と第1駆動信号線との間に配置される。
【0213】
図18は、
図17に示される領域W20のC-C’線に沿った断面図である。なお、
図18においては、+Z方向を上又は上側、-Z方向を下又は下側ということがある。また、
図17と同様に、
図18において、+X方向を右又は右側、-X方向を左又は左側ということがある。
【0214】
図18に示すように、第2実施形態において、素子基板1の透明電極層59は、検出電極22及び画素電極7だけでなく、電極引出線87も含む。つまり、電極引出線87は、検出電極22及び画素電極7と同様に、ITOなどの透明導電材料によって形成される。電極引出線87の右側端部は、検出電極22と電気的に接続される。電極引出線87の左側端部は、コンタクトホール73を介して、第3配線層57に含まれる検出電極中継線57bと電気的に接続される。
【0215】
検出電極中継線57bは、コンタクトホール70を介して、第2配線層55に含まれる検出電極中継線55aと電気的に接続される。第1実施形態で説明したように、検出電極中継線55aは、コンタクトホール66を介して、検出電極線53aと電気的に接続され、検出電極線53aは、第1電極接続端子24と電気的に接続される。従って、第2実施形態の液晶パネル100Aでは、検出電極22は、検出電極22と同じく透明電極層59に形成された電極引出線87を介して、第1電極接続端子24と電気的に接続される。
【0216】
透明電極層59に含まれる電極引出線87は、検出電極22の左端から左側に向かってX軸方向に延在する。第1配線層53に含まれるクロック信号主線17及び出力制御信号線20は、Y軸方向に延在し、且つ平面視で検出電極22と重ならない。このような配線構造により、検出電極22と電気的に接続される電極引出線87は、平面視で、クロック信号主線17及び出力制御信号線20を含む第1駆動信号線と交差する。電極引出線87が第1駆動信号線と交差する領域において、第1駆動信号線の直上を通過するようにX軸方向に延在する第1導電層25が、第2配線55に配置される。すなわち、第1導電層25は、電極引出線87が第1駆動信号線と交差する領域において、電極引出線87と第1駆動信号線との間に配置される。
【0217】
上記のように、第2実施形態の液晶パネル100Aは、透明電極層59が検出電極22及び電極引出線87を含み、且つ第3配線層57が電極引出線23を含まない点で、第1実施形態の液晶パネル100と異なる。
【0218】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の液晶装置1000は、第1基板51と液晶層4との間に配置され、検出電極22及び電極引出線87を含む透明電極層59と、第1基板51と透明電極層59との間に配置され、第1駆動信号線を含む第1配線層53と、第1配線層53と透明電極層59との間に配置され、第1導電層25を含む第2配線層55と、第2配線層55と透明電極層59との間に配置される第3配線層57と、を備える。
第1実施形態と比較すると、第2実施形態では、電極引出線87と第1駆動信号線とが交差する領域において、第3配線層57に配線パターンを自由に形成可能な領域が生じるため、第3配線層57を利用して、回路構成に必要な信号配線、及び電源配線の交差部などを容易に配置することができる。
【0219】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する第3実施形態において、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態で使用した符号と同じ符号を付し、詳細な説明を適宜省略する。
【0220】
第3実施形態の液晶装置1000は、液晶パネル100Bと、測定回路200と、COF300と、を備える。液晶パネル100Bは、第1実施形態の液晶パネル100とは異なる構成を備える。測定回路200及びCOF300の構成は、第1実施形態と同じである。従って、以下では、主に液晶パネル100Bの構成について説明する。
【0221】
3-1.液晶パネル100Bの構成の概要
図19は、第3実施形態の液晶装置1000に用いられる液晶パネル100Bの概略的な構成を示す平面図である。なお、
図19において、+X方向を右又は右側、-X方向を左又は左側ということがある。また、+Y方向を上又は上側、-Y方向を下又は下側ということがある。さらに、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的という。
【0222】
図19に示すように、液晶パネル100Bは、第1実施形態の検出電極22よりも大きな面積を有する検出電極88を備える。その結果、液晶パネル100Bにおいて、クロック信号支線18の少なくとも一部と、出力制御信号線20の少なくとも一部とが、平面視で検出電極88と重なる。液晶パネル100Bにおいて、クロック信号主線17は、平面視で検出電極88と重ならない。出力制御信号線20は、平面視で少なくとも一部が検出電極88と重なる第2駆動信号線の一例である。クロック信号支線18は、平面視で少なくとも一部が検出電極88と重なる第3駆動信号線の一例である。
【0223】
第1実施形態と同様に、液晶パネル100Bにおいて、検出電極88と電気的に接続される電極引出線23は、平面視で、クロック信号主線17及び出力制御信号線20を含む第1駆動信号線と交差する。第1実施形態と同様に、液晶パネル100Bにおいて、電極引出線23が第1駆動信号線と交差する領域に、X軸方向に延在する第1導電層25が、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置される。
【0224】
液晶パネル100Bでは、クロック信号支線18が平面視で検出電極88と重なる領域に、Y軸方向に延在する第2導電層89が、検出電極88とクロック信号支線18との間に配置される。すなわち、液晶パネル100Bは、第1導電層25に加えて、第2導電層89を備える。なお、後述するように、液晶パネル100Bにおいて、出力制御信号線20が平面視で検出電極88と重なる領域には、導電パターンは配置されない。
【0225】
第2導電層89は、不図示の配線を介して第2電極接続端子31と電気的に接続される。すなわち、第2導電層89は、共通電極28と電気的に接続される。従って、液晶パネル100Bでは、第2電極接続端子31に入力される共通電位Vcomは、第1導電層25だけでなく、第2導電層89にも供給される。
【0226】
図20は、
図19に示される領域W30のD-D’線に沿った断面図である。なお、
図20においては、+Z方向を上又は上側、-Z方向を下又は下側ということがある。また、
図19と同様に、
図20において、+X方向を右又は右側、-X方向を左又は左側ということがある。
【0227】
図20に示すように、第1実施形態と同様に、液晶パネル100Bにおいて、第1配線層53は、クロック信号主線17及び出力制御信号線20を含み、透明電極層59は、検出電極88及び画素電極7を含む。クロック信号支線18は、ゲート絶縁膜62を介して第1基板51の上面に配置される。クロック信号支線18は、X軸方向に延在する。クロック信号支線18の左側端部は、コンタクトホール74を介して、クロック信号主線17と電気的に接続される。クロック信号支線18の右側端部は、走査線駆動回路10に含まれるシフトレジスターを構成するスイッチング素子90のゲート電極層91と電気的に接続される。ただし、
図20においては、クロック信号支線18とスイッチング素子90のゲート電極層91との接続については作図上の理由で図示省略している。例えば、スイッチング素子90は、Nチャネル型TFTである。スイッチング素子90の構造は、画素スイッチング素子8と同じであるので、説明は省略する。
【0228】
図20に示される領域W40において、クロック信号支線18は、平面視で検出電極88と重なる。このように、クロック信号支線18が平面視で検出電極88と重なる領域W40において、第2導電層89が、第3絶縁層56の上面に配置される。すなわち、液晶パネル100Bの第3配線層57は、第2導電層89を含む。このような配線構造により、平面視でクロック信号支線18と検出電極88とが重なる領域W40において、第2導電層89が、検出電極88とクロック信号支線18との間に配置される。第2導電層89は、平面視でスイッチング素子90と重なるが、出力制御信号線20とは重ならない。すなわち、出力制御信号線20が平面視で検出電極88と重なる領域には、第2導電層89は配置されない。出力制御信号ENBYは走査線6の選択波形を整形するために、不要な寄生容量を小さくして時定数を小さくしたほうが好ましい。ただし、出力制御信号線20が平面視で検出電極88と重なる領域に第2導電層89の配置を禁止するものではない。
【0229】
3-2.第3実施形態における液晶装置1000の動作
以下、
図21を参照しながら、第3実施形態における液晶装置1000の動作について説明する。
図21は、非測定期間T30及び測定期間T40におけるクロック信号CLY、出力制御信号ENBY、第1選択信号SEL1から第4選択信号SEL4、及び映像信号VIDの波形の一例を示すタイミングチャートである。既に説明したように、非測定期間T30とは、液晶装置1000が通常駆動モードで動作する期間であり、測定期間T40とは、液晶装置1000が測定モードで動作する期間である。
図21において、「1H」は、1水平期間を表す。
図21における時刻t20から測定が開始される。
【0230】
図21に示すように、非測定期間T30において、中央制御回路45及び駆動IC310は、連携して、矩形波状のクロック信号CLY及び出力制御信号ENBYを液晶パネル100Bに供給する。すなわち、非測定期間T30において、中央制御回路45及び駆動IC310を含む第1制御回路は、複数の駆動信号線の電位を矩形波状に変化させる。複数の駆動信号線は、クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20を含む。
【0231】
また、非測定期間T30において、中央制御回路45及び駆動IC310は、連携して、矩形波状の第1選択信号SEL1から第4選択信号SEL4及び映像信号VIDを液晶パネル100Bに供給する。すなわち、非測定期間T30において、中央制御回路45及び駆動IC310を含む第2制御回路は、信号線駆動回路9に含まれる複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位と、複数のスイッチング素子11を介して複数の信号線5に供給される電位とを変化させる。
【0232】
なお、第1実施形態で説明したように、非測定期間T30において、中央制御回路45は、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第4スイッチSW4をオフ状態に制御し、第2スイッチSW2及び第5スイッチSW5をオン状態に制御する。これにより、非測定期間T30において、共通電位生成回路41から出力される共通電位Vcomが、液晶パネル100Bの共通電極28に供給される。同時に検出電極22がVs=VcomとなるようにVsrefが調整される。
【0233】
測定期間T40において、中央制御回路45は、第5スイッチSW5をオフ状態に維持しながら、第1スイッチSW1から第4スイッチSW4を制御することにより、第1測定処理及び第2測定処理を繰り返し実行する。第1測定処理及び第2測定処理については第1実施形態で説明したため、ここでは繰り返し説明しない。
【0234】
また、測定期間T40において、中央制御回路45及び駆動IC310は、連携して、矩形波状のクロック信号CLYと、ローレベルの出力制御信号ENBYを液晶パネル100Bに供給する。測定期間T40には、第1放電期間T4が含まれる。従って、中央制御回路45及び駆動IC310を含む第1制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、出力制御信号線20の電位をローレベルに制御し、クロック信号支線18の電位を矩形波状に変化させる。
【0235】
さらに、測定期間T40において、中央制御回路45及び駆動IC310は、連携して、ハイレベルの第1選択信号SEL1から第4選択信号SEL4と、共通電極28に供給される電位と同じ電位を有する映像信号VIDとを液晶パネル100Bに供給する。すなわち、中央制御回路45及び駆動IC310を含む第2制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位を、複数のスイッチング素子11がオンになる電位に制御すると共に、複数の信号線5に供給される電位を、共通電極28と同じ電位に制御する。
【0236】
以上のように、中央制御回路45及び駆動IC310を含む第1制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、出力制御信号線20の電位をローレベルに制御する。その結果、少なくとも第1放電期間T4において、出力制御信号線20の電位は定電位となる。出力制御信号線20が平面視で検出電極88と重なる領域には、共通電極28と電気的に接続される第2導電層89は配置されないため、検出電極88と出力制御信号線20との間に結合容量が生じる。しかしながら、少なくとも第1放電期間T4において、出力制御信号線20の電位は定電位であるため、出力制御信号線20の電位が検出電極88の電位に及ぼす影響を抑制できる。
【0237】
また、第1放電期間T4において、出力制御信号線20の電位がローレベルである場合、走査線駆動回路10から各走査線6に供給される走査信号もローレベルとなる。従って、平面視で走査線6の少なくとも一部が検出電極88と重なっていたとしても、第1放電期間T4において、走査線6の電位が検出電極88の電位に及ぼす影響を抑制できる。
【0238】
中央制御回路45及び駆動IC310を含む第1制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、クロック信号支線18の電位を矩形波状に変化させる。クロック信号支線18が平面視で検出電極88と重なる領域W40において、共通電極28と電気的に接続される第2導電層89が、検出電極88とクロック信号支線18との間に配置される。第1放電期間T4において、共通電極28には定電位が供給されるため、第2導電層89にも共通電極28と同じ定電位が供給される。このような構成により、第1放電期間T4において、クロック信号支線18と検出電極88との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第1放電期間T4において、クロック信号支線18の電位変動が検出電極88の電位に及ぼす影響を抑制できる。
【0239】
一般的には、液晶パネルの電源投入時以降は、走査線駆動回路等へのクロック信号は矩形波信号として供給され続けることが想定されている。そこで、中央制御回路45からの指令により上記クロック信号の供給停止モードを備える構成を採用することもよい。具体的には、
図21において点線で示すように、中央制御回路45及び駆動IC310を含む第1制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、クロック信号支線18の電位をローレベルなどの定電位に制御してもよい。
【0240】
中央制御回路45及び駆動IC310を含む第2制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位を、複数のスイッチング素子11がオンになる電位に制御すると共に、複数の信号線5に供給される電位を、共通電極28と同じ電位に制御する。その結果、少なくとも第1放電期間T4において、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位は定電位となり、複数の信号線5の電位は、共通電極28と同じ電位となる。
図20に示すように、複数の信号線5の少なくとも一部と、複数のスイッチング素子11のゲート電極の少なくとも一部とは、平面視で検出電極88と重なる。そのため、複数の信号線5と検出電極88との間と、複数のスイッチング素子11のゲート電極と検出電極88との間とに、結合容量が生じる。しかしながら、少なくとも第1放電期間T4において、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位は定電位であり、複数の信号線5の電位は、共通電極28と同じ電位であるため、これらの電位が検出電極88の電位に及ぼす影響を抑制できる。
図21において一点鎖線で示すように、中央制御回路45及び駆動IC310を含む第2制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、複数の信号線5に供給される電位をローレベルなどの定電位に制御してもよい。
【0241】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態の液晶装置1000は、第1基板51と、液晶層4と、液晶層4を介して第1基板51に対向する第2基板81と、第1基板51と液晶層4との間に配置される検出電極88と、第2基板81と液晶層4との間に配置される共通電極28と、第1基板51と液晶層4との間に配置され、平面視で少なくとも一部が検出電極88と重なる第2駆動信号線(出力制御信号線20)を含む複数の駆動信号線(クロック信号主線17、クロック信号支線18、及び出力制御信号線20)と、検出電極88と共通電極28との夫々に電気的に接続される測定回路200と、複数の駆動信号線の電位を制御する第1制御回路(中央制御回路45及び駆動IC310)と、を備える。測定回路200は、第1逆掃引期間T1において、検出電極88と共通電極28との電位差が第1電位差Vp1となるように、検出電極88と共通電極28との夫々に電位を供給し、第1充電期間T3において、電位差が、第1電位差Vp1と異なる極性を有する第2電位差Vp2となるように、検出電極88と共通電極28との夫々に電位を供給し、第1放電期間T4において、検出電極88への電位の供給を停止すると共に共通電極28に第1充電期間T3と同じ電位を供給し、検出電極電位Vdを少なくとも1回測定する。第1制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、出力制御信号線20の電位を非アクティブレベルに制御する。
【0242】
上記の第3実施形態によれば、少なくとも第1放電期間T4において、出力制御信号線20の電位は、ローレベル、すなわち定電位となる。出力制御信号線20が平面視で検出電極88と重なる領域には、共通電極28と電気的に接続される導電パターンが配置されないため、検出電極88と出力制御信号線20との間に結合容量が生じる。しかしながら、少なくとも第1放電期間T4において、出力制御信号線20の電位は定電位であるため、出力制御信号線20の電位が検出電極88の電位に及ぼす影響を抑制できる。従って、第3実施形態によれば、第1放電期間T4において、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極88に現れる微弱な電位変化を捕捉できるため、液晶層4の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。
また、第3実施形態によれば、複数の駆動信号線が平面視で検出電極88と重なることを許容できるため、第1実施形態と比較して、検出電極88の面積を大きくすることができる。検出電極88の面積が大きいほど、検出可能な可動性イオン85の量が増加するため、可動性イオン85の増加に対する感度を向上させることができる。
【0243】
第3実施形態の液晶装置1000は、共通電極28と電気的に接続される第2導電層89をさらに備え、複数の駆動信号線は、平面視で少なくとも一部が検出電極88と重なる第3駆動信号線(クロック信号支線18)をさらに含み、第2導電層89は、検出電極88とクロック信号支線18との間に配置され、第1制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、クロック信号支線18の電位を、矩形波状に変化させるか、又は定電位に制御する。
【0244】
上記の第3実施形態によれば、第1放電期間T4において、共通電極28には定電位が供給されるため、検出電極88とクロック信号支線18との間に配置される第2導電層89にも共通電極28と同じ定電位が供給される。このような構成により、第1放電期間T4において、クロック信号支線18と検出電極88との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第1放電期間T4において、クロック信号支線18の電位変動が検出電極88の電位に及ぼす影響を抑制できる。
【0245】
第3実施形態の液晶装置1000は、複数の信号線5と1対1で電気的に接続される複数のスイッチング素子11を含む信号線駆動回路9と、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位と、複数のスイッチング素子11を介して複数の信号線5に供給される電位とを制御する第2制御回路(中央制御回路45及び駆動IC310)と、をさらに備え、複数の信号線5の少なくとも一部と、複数のスイッチング素子11のゲート電極の少なくとも一部とは、平面視で検出電極88と重なり、第2制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位を、複数のスイッチング素子11がオンになる電位に制御すると共に、複数の信号線5に供給される電位を、共通電極28と同じ電位に制御する。
【0246】
上記の第3実施形態によれば、第2制御回路は、少なくとも第1放電期間T4において、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位を、複数のスイッチング素子11がオンになる電位に制御すると共に、複数の信号線5に供給される電位を、共通電極28と同じ電位に制御する。その結果、少なくとも第1放電期間T4において、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位は定電位となり、複数の信号線5の電位は、共通電極28と同じ電位となる。複数の信号線5の少なくとも一部と、複数のスイッチング素子11のゲート電極の少なくとも一部とは、平面視で検出電極88と重なる。そのため、複数の信号線5と検出電極88との間と、複数のスイッチング素子11のゲート電極と検出電極88との間とに、結合容量が生じる。しかしながら、少なくとも第1放電期間T4において、複数のスイッチング素子11のゲート電極の電位は定電位であり、複数の信号線5の電位は、共通電極28と同じ電位であるため、これらの電位が検出電極88の電位に及ぼす影響を抑制できる。
【0247】
第3実施形態の液晶装置1000は、第1基板51と液晶層4との間に配置され、検出電極88と電気的に接続される電極引出線23と、共通電極28と電気的に接続される第1導電層25と、をさらに備え、複数の駆動信号線は、平面視で電極引出線23と交差する第1駆動信号線(クロック信号主線17及び出力制御信号線20)を含み、第1導電層25は、電極引出線23と第1駆動信号線との間に配置される。
【0248】
上記の第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、第1放電期間T4において、平面視で互いに交差する電極引出線23と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第1放電期間T4において、第1駆動信号線の電位変動が検出電極88の電位に及ぼす影響が抑制され、液晶層4の劣化進行度に応じて検出電極88に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになる。
【0249】
4.電子機器の概要
図22は、本実施形態に係る電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略構成図である。以下では、第1実施形態の液晶装置1000を備えた電子機器として、投射型表示装置10000を例に挙げて説明する。
【0250】
投射型表示装置10000は、3板式の投射型表示装置であって、光源としてのランプユニット1001と、色分離光学系としてのダイクロイックミラー1011及び1012と、青色光Bに対応する液晶装置1000Bと、緑色光Gに対応する液晶装置1000Gと、赤色光Rに対応する液晶装置1000Rと、3個の反射ミラー1111、1112及び1113と、3個のリレーレンズ1121、1122及び1123と、色合成光学系としてのダイクロイックプリズム1130と、投射光学系としての投射レンズ1140と、を備えている。投射光学系によって映像がスクリーン1200に投影される。なお、リレーレンズ1121、1122及び1123と、反射ミラー1112及び1113とは、リレーレンズ系1120を構成する。
【0251】
また、投射型表示装置10000は、液晶装置1000B、1000G及び1000Rから送信される液晶層4の劣化状況の測定データを受信し、受信した測定データに基づいて、所定の制御を行うパネル制御回路1230を備える。
【0252】
パネル制御回路1230は、液晶装置1000B、1000G及び1000Rから夫々の液晶層4の劣化状況のデータを受信すると、液晶装置1000B、1000G及び1000R毎に、液晶層4の劣化状況に関する表示情報を作成し、表示する。
【0253】
なお、パネル制御回路1230は、液晶層4の劣化状況の測定データに基づいて、液晶パネル100の寿命が近いことをパイロットランプ1240の点灯によって報知することができる。例えば、青色に対応する液晶装置1000Bの液晶パネル100の寿命が近い場合は、青色のパイロットランプ1240を点灯する。また、パネル制御回路1230は、スピーカー1250を用いて、液晶パネル100の液晶層4の劣化状態を音声で報知してよい。また、パネル制御回路1230は、液晶パネル100の液晶層4の劣化状態を、リモートコントローラー1260または不図示の携帯端末の画面に報知してもよい。上記のように液晶装置1000B、1000G及び1000Rへの表示以外に、液晶パネル100の液晶層4の劣化状態を報知する手段を設けてもよい。
【0254】
また、パネル制御回路1230は、受信した測定データから液晶パネル100の寿命が近いことを検知すると、液晶層4の劣化を遅らせるために、液晶装置1000B、1000G及び1000Rの制御に関する制御値を変更する。例えば、制御値を修正して、液晶装置1000B、1000G及び1000Rに照射するランプユニット1001の輝度を下げる、或いは、液晶装置1000B、1000G及び1000Rの階調電圧をランプユニット1001の輝度の低下に応じた電圧値に変える、などを行うことによって液晶パネル100の使用可能時間の延長を図ることができる。
【0255】
5.測定結果の表示画面例の概要
図23は、投射型表示装置10000の設定メニュー画面例を示す説明図であり、
図24は、液晶層4の劣化状況を表示する表示画面例を示す説明図である。
【0256】
図23において、スクリーン1200に投射表示された設定メニュー画面D1の中から保全Mを選択すると、保全メニューが表示され、その中の液晶パネル100の状態の表示を選択すると、パネル制御回路1230は、液晶装置1000B、1000G及び1000Rに対して、液晶層4の劣化状況の測定データの送信要求を送信し、受信した液晶装置1000B、1000G及び1000Rの液晶層4の劣化状況の測定データに基づいて、
図24に示したような表示画面D2を表示する。
【0257】
図24の表示画面D2は、液晶装置1000Bの液晶層4の劣化状況を示す画面である。なお、液晶装置1000G及び1000Rの液晶層4の劣化状況を示す画面は、画面切り替えによって個別に表示されてもよい。
【0258】
表示画面D2には、液晶装置1000Bの使用開始から現在までの測定値の履歴を示す推移線W2と、標準的使用条件下における予想推移線W3と、液晶パネル100の寿命が近いことを示す閾値Vd_thのラインが表示されている。なお、表示画面D2に、液晶装置1000G及び1000Rの情報も一緒に表示してもよい。推移線W2と予想推移線W3との比較によって、使用条件が想定より過酷であるかどうかを判断することができるから、液晶装置1000B、1000G及び1000Rに照射するランプユニット1001の輝度を制限するなどの予防保全を施すことができる。そして、推移線W2が予想推移線W3に改善したら、ランプユニット1001の輝度の制限を解除するようにしてもよい。
【0259】
測定値の履歴を示す推移線W2については、その変化トレンドを判別しやすくするために、複数の測定値を平均化して得ることのできる平滑線を表示できるようにしてもよい。また、測定値の履歴を示す推移線W2を示す以外に、単に測定値を数値として表示するようにしてもよい。このとき、測定値の表示色を閾値Vd_thと照らし合わせて変化させてもよい。例えば、閾値Vd_thより大きい状態では緑色で表示し、閾値Vd_thに近づいたら黄色で表示し、閾値Vd_th以下になったら赤色で表示するようにしてもよい。
【0260】
また、測定値は任意の値で規格化した指標値として表示してもよい。この場合、例えば、第2放電期間T8に得られた測定値から指標値を計算すると、使用開始から間もない時期において表示される指標値は、例えば、「1」に近しい値である。この値は液晶層4の劣化の進行に応じて減少していく。典型的には投射型表示装置10000の使用時間の増加に応じて減少傾向となる。
【0261】
あるいは百分率で表示するならば、例えば、「100」に近しい値である。この値は液晶層4の劣化に応じて減少していく。典型的には投射型表示装置10000の使用時間の増加に応じて減少傾向となる。あるいは、第1放電期間T4に得られた測定値から指標値を計算すると、使用開始から間もない時期において表示される指標値は、例えば、「0」に近しい値である。この値は液晶層4の劣化に応じて増加していく。典型的には投射型表示装置10000の使用時間の増加に応じて増加傾向となる。このような指標値を用いて、液晶パネル100の劣化状態を、例えば、棒グラフや、円グラフ等を用いて表示してもよい。
【0262】
パネル制御回路1230は、投射型表示装置10000の電源をオンした場合、電源をオフした場合、および、保全メニューから液晶層4の劣化状況の測定を指示した場合、液晶層4の劣化状況の測定指示コマンドを、液晶装置1000B、1000G及び1000Rに送信する。
図4のフローチャートのステップS10で説明したように、液晶装置1000B、1000G及び1000Rは、パネル制御回路1230から液晶層4の劣化状況の測定指示コマンドを受信すると、測定を開始する。
【0263】
一般的には、予防保全は機器を安定して稼働させるために、計画的なメンテナンスを施すことを意味する。その際の部品交換等の目安の決定には、部品の使用時間で区切る方法と、部品の劣化程度を評価する方法がある。本発明による液晶パネル100を使用すれば、液晶パネル100の液晶層4の劣化指標となる可動性イオン85の増加状況を測定値として得ることができる。測定値の変化は、液晶パネル100の表示異常が発現する前から感度良く観測できるので、予防保全を実施できる。また、多数の個体における測定値の推移の傾向と比較し、機械学習を用いた解析によって、シミ及びムラ等の発生しやすい測定値の挙動を察知して予兆保全を行うこともできる。
【0264】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0265】
例えば、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態において、測定値を第1測定処理と第2測定処理の一方からのみ得る場合、測定対象外とした放電期間(第1放電期間T4または第2放電期間T8)では、充電期間(第1充電期間T3または第2充電期間T7)の電位を検出電極22に供給し続けていてもよい。また、第1導電層25や第2導電層89を共通電極28に電気的に接続した実施例としたが、例えば、グランド電位等の定電位線を電気的に接続する態様としてもよい。また、信号線駆動回路9はデマルチプレクサーを使用した実施形態としたが、相展開駆動方式(ブロック順次駆動方式)の液晶パネルに適用することも可能である。この場合、信号線駆動回路におけるクロック信号線、出力制御信号線については、各実施形態における走査線駆動回路10のクロック信号線(クロック信号主線17、クロック信号支線18)、出力制御信号線20等に対する扱いを適用できる。なお相展開駆動方式では、別途プリチャージ回路を備える態様がある。従って、プリチャージ回路が備え、信号線5とプリチャージ電源線とを電気的に接続するスイッチをオンとすれば容易に信号線5の電位を制御することもできる。
【0266】
第1実施形態では、液晶パネル100と、液晶パネル100の外部に設けられた測定回路200と、を備える液晶装置1000を例示したが、液晶パネル100の内部に測定回路200が設けられた構成を採用してもよい。すなわち、素子基板1上に、信号線駆動回路9及び走査線駆動回路10等と共に測定回路200が配置されてもよい。第2実施形態及び第3実施形態についても同様である。また、各実施形態において、液晶層4の物性測定時に第1電極と第2電極の電位を適時変化させる構成としたが、これを強制するものではない。例えば、第2電極の電位を5Vの定電位として、第1電極の電位を適時変化させる態様としてもよい。
【0267】
本実施形態では、電子機器として投射型表示装置10000を例示したが、液晶装置1000が適用される電子機器はこれに限定されない。例えば、液晶パネル100から出る光を使ってレジン液を硬化させる3Dプリンター、HUD(Head-Up Display)、HMD(Head Mounted Display)、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ、液晶テレビなどの電子機器に適用されてもよい。例えば、液晶パネル100を用いた3DプリンターにはUV光を用いるものがあり、液晶パネル100の劣化が課題である。液晶パネル100の寿命到達が近いことに気づかずに造形を開始すると、造形途中からレジン液の硬化不良を生じ、造形が終わるまで気づかないことがあり得る。ここで本発明による液晶パネル100を使用すれば、液晶パネル100の劣化状態が判る。従って、造形を開始する前にレジン液の硬化不良等が発生することを事前に予期して、予防保全として液晶パネル100を適切な時期に交換することができる。
【0268】
上記実施形態では、液晶装置1000として、透過型の液晶装置を例示したが、液晶装置1000としては、反射型の液晶装置またはLCOS(Liquid crystal on silicon)型の液晶装置としてもよい。
【0269】
〔本開示のまとめ〕
以下、本開示のまとめを付記する。
【0270】
(付記1)第1基板と、液晶層と、前記液晶層を介して前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1電極と、前記第2基板と前記液晶層との間に配置される第2電極と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極と電気的に接続される電極引出線と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で前記電極引出線と交差する第1駆動信号線を含む複数の駆動信号線と、前記電極引出線と前記第1駆動信号線との間に配置され、前記第2電極と電気的に接続される第1導電層と、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電気的に接続される測定回路と、を備え、前記測定回路は、第1期間において、前記第1電極と前記第2電極との電位差が第1電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第1期間後の第2期間において、前記電位差が、前記第1電位差と異なる極性を有する第2電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極への電位の供給を停止すると共に前記第2電極に前記第2期間と同じ電位を供給する、液晶装置。
【0271】
上記のように、第2期間及び第3期間の前に、第1期間が挿入される。これにより、第1期間において、液晶層に含まれる可動性イオンを、第1電極及び第2電極のいずれか一方に効果的に初期配置できる。このように第2期間が始まる前に、可動性イオンの初期配置が整えられることにより、第3期間に得られる第1電極の電位の測定値に関して測定再現性を得ることができる。また、可動性イオンによる内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオンの増加が測定値の変化として現れやすくなる。その結果、第1電極、第2電極及び液晶層を有する液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行を感度良く追跡できる。
【0272】
また、第3期間において、第2期間と同じ電位が第2電極に供給される。従って、第3期間において、電極引出線と第1駆動信号線との間に配置される第1導電層に、第2電極と同じ定電位が供給される。これにより、第3期間において、平面視で互いに交差する電極引出線と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第3期間において、第1駆動信号線の電位変動が第1電極の電位に及ぼす影響が抑制され、液晶層の劣化進行度に応じて第1電極に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになるため、液晶層の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。
【0273】
(付記2)前記複数の駆動信号線は、平面視で前記第1電極と重ならない、付記1に記載の液晶装置。
【0274】
付記2の構成を採用することにより、第1電極と、複数の駆動信号線との間に結合容量が生じることを回避できる。その結果、第3期間において、複数の駆動信号線の電位変動が第1電極の電位に及ぼす影響がより抑制され、液晶層の劣化進行度に応じて第1電極に現れる微弱な電位変化をより正確に捕捉できるようになるため、液晶層の劣化進行度をより正確に判別することが可能となる。
【0275】
(付記3)前記複数の駆動信号線の電位を制御する第1制御回路をさらに備え、前記第1制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記複数の駆動信号線の電位を変化させる、付記1または2に記載の液晶装置。
【0276】
付記3のように、第3期間において、複数の駆動信号線の電位が変化する場合、平面視で互いに交差する電極引出線と第1駆動信号線との間に生じる結合容量を介して、第1駆動信号線における電位変動が、第1電極の電位を変動させる。しかしながら、第3放電期間において、電極引出線と第1駆動信号線との間に配置される第1導電層に定電位が供給されることにより、電極引出線と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第3期間において、第1駆動信号線の電位変動が第1電極の電位に及ぼす影響が抑制され、液晶層の劣化進行度に応じて第1電極に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになるため、液晶層の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。また、第1駆動信号線の電位が変化しても測定可能となるので、クロック信号等を静止させる必要がなく、第1制御回路のレジスター設定を増大させることを抑制できる。
【0277】
(付記4)前記第3期間は、通常駆動時において前記複数の駆動信号線の電位が最大値又は最小値に保持される期間より長い、付記3に記載の液晶装置。
【0278】
付記4のように、第3期間が、複数の駆動信号線の電位が最大値又は最小値に保持される期間より長い場合、第3期間において、第1駆動信号線の電位は、定電位とならない。この場合、平面視で互いに交差する電極引出線と第1駆動信号線との間に生じる結合容量を介して、第1駆動信号線における矩形波状の電位変動が、第1電極の電位を変動させる。しかしながら、第3期間において、電極引出線と第1駆動信号線との間に配置される第1導電層に定電位が供給されることにより、電極引出線と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第3期間において、第1駆動信号線の電位変動が第1電極の電位に及ぼす影響が抑制され、第1放電期間を長く設定することができる。従って、液晶層の劣化進行度に応じて第1電極に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになるため、液晶層の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。
【0279】
(付記5)前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極を含む電極層と、前記第1基板と前記電極層との間に配置され、前記第1駆動信号線を含む第1配線層と、前記第1配線層と前記電極層との間に配置され、前記第1導電層を含む第2配線層と、前記第2配線層と前記電極層との間に配置され、前記電極引出線を含む第3配線層と、をさらに備える、付記1から4のいずれか一つに記載の液晶装置。
【0280】
付記5によれば、液晶パネルの典型的な配線構造を利用して、第1電極、電極引出線、及び第1導電層を配置できるため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0281】
(付記6)前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極及び前記電極引出線を含む電極層と、前記第1基板と前記電極層との間に配置され、前記第1駆動信号線を含む第1配線層と、前記第1配線層と前記電極層との間に配置され、前記第1導電層を含む第2配線層と、前記第2配線層と前記電極層との間に配置される第3配線層と、をさらに備える、付記1から4のいずれか一つに記載の液晶装置。
【0282】
付記6によれば、電極引出線と第1駆動信号線とが交差する領域において、第3配線層に配線パターンを自由に形成可能な領域が生じるため、第3配線層を利用して、回路構成に必要な信号配線、及び電源配線の交差部などを容易に配置することができる。
【0283】
(付記7)第1基板と、液晶層と、前記液晶層を介して前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1電極と、前記第2基板と前記液晶層との間に配置される第2電極と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で少なくとも一部が前記第1電極と重なる第2駆動信号線を含む複数の駆動信号線と、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電気的に接続される測定回路と、前記複数の駆動信号線の電位を制御する第1制御回路と、を備え、前記測定回路は、第1期間において、前記第1電極と前記第2電極との電位差が第1電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第1期間後の第2期間において、前記電位差が、前記第1電位差と異なる極性を有する第2電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第2期間後の第3期間において、前記第1電極への電位の供給を停止すると共に前記第2電極に前記第2期間と同じ電位を供給し、前記第1制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記第2駆動信号線の電位を定電位に制御する、液晶装置。
【0284】
付記7によれば、少なくとも第3期間において、第2駆動信号線の電位は定電位となる。第2駆動信号線が平面視で第1電極と重なる領域には、第2電極と電気的に接続される導電パターンが配置されないため、第1電極と第2駆動信号線との間に結合容量が生じる。しかしながら、少なくとも第3期間において、第2駆動信号線の電位は定電位であるため、第2駆動信号線の電位が第1電極の電位に及ぼす影響を抑制できる。従って、付記7によれば、第3期間において、液晶層の劣化進行度に応じて第1電極に現れる微弱な電位変化を捕捉できるため、液晶層の劣化進行度を正確に判別することが可能となる。
【0285】
(付記8)前記第2電極と電気的に接続される第2導電層をさらに備え、前記複数の駆動信号線は、平面視で少なくとも一部が前記第1電極と重なる第3駆動信号線をさらに含み、前記第2導電層は、前記第1電極と前記第3駆動信号線との間に配置され、前記第1制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記第3駆動信号線の電位を変化させるか、又は定電位に制御する、付記7に記載の液晶装置。
【0286】
付記8によれば、第3期間において、第2電極には定電位が供給されるため、第1電極と第3駆動信号線との間に配置される第2導電層にも第2電極と同じ定電位が供給される。このような構成により、第3期間において、第3駆動信号線と第1電極との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第3期間において、第3駆動信号線の電位変動が第1電極の電位に及ぼす影響を抑制できる。
【0287】
(付記9)複数の信号線と、前記複数の信号線と1対1で電気的に接続される複数のスイッチング素子を含む信号線駆動回路と、前記複数のスイッチング素子のゲート電極の電位と、前記複数のスイッチング素子を介して前記複数の信号線に供給される電位とを制御する第2制御回路と、をさらに備え、前記複数の信号線の少なくとも一部と、前記複数のスイッチング素子の前記ゲート電極の少なくとも一部とは、平面視で前記第1電極と重なり、前記第2制御回路は、少なくとも前記第3期間において、前記複数のスイッチング素子の前記ゲート電極の電位を、前記複数のスイッチング素子がオンになる電位に制御すると共に、前記複数の信号線に供給される電位を定電位に制御する、付記7または8に記載の液晶装置。
【0288】
付記9によれば、第2制御回路は、少なくとも第3期間において、複数のスイッチング素子のゲート電極の電位を、複数のスイッチング素子がオンになる電位に制御すると共に、複数の信号線に供給される電位を、第2電極と同じ電位に制御する。その結果、少なくとも第3期間において、複数のスイッチング素子のゲート電極の電位は定電位となり、複数の信号線の電位は、第2電極と同じ電位となる。複数の信号線の少なくとも一部と、複数のスイッチング素子のゲート電極の少なくとも一部とは、平面視で第1電極と重なる。そのため、複数の信号線と第1電極との間と、複数のスイッチング素子のゲート電極と第1電極との間とに、結合容量が生じる。しかしながら、少なくとも第3期間において、複数のスイッチング素子のゲート電極の電位は定電位であり、複数の信号線の電位は、共通電極と同じ電位であるため、これらの電位が第1電極の電位に及ぼす影響を抑制できる。
【0289】
(付記10)前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、前記第1電極と電気的に接続される電極引出線と、前記第2電極と電気的に接続される第1導電層と、をさらに備え、前記複数の駆動信号線は、平面視で前記電極引出線と交差する第1駆動信号線を含み、前記第1導電層は、前記電極引出線と前記第1駆動信号線との間に配置される、付記7から9のいずれか一つに記載の液晶装置。
【0290】
付記10によれば、第3期間において、平面視で互いに交差する電極引出線と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、無視できるほどに小さくなる。その結果、第3期間において、第1駆動信号線の電位変動が第1電極の電位に及ぼす影響が抑制され、液晶層の劣化進行度に応じて第1電極に現れる微弱な電位変化を捕捉できるようになる。
【0291】
(付記11)複数の走査線と、前記複数の走査線を順次選択する走査線駆動回路と、をさらに備え、前記複数の駆動信号線は、前記走査線駆動回路と電気的に接続される、付記1から10のいずれか一つに記載の液晶装置。
【0292】
一般的に、走査線駆動回路と電気的に接続される複数の駆動信号線には、高振幅且つ高周波の電位変動が生じる。従って、このような複数の駆動信号線が、平面視で電極引出線と交差する第1駆動信号線を含む場合、電極引出線と第1駆動信号線との間に生じる結合容量は、特に大きな問題となる。しかしながら、付記11の構成では、走査線駆動回路と電気的に接続される第1駆動信号線と、電極引出線との間に第1導電層が配置されるため、高振幅且つ高周波の電位変動が生じる第1駆動信号線と、電極引出線との間に生じる結合容量を、無視できるほどに小さくできる。
【0293】
(付記12)表示領域に配置される複数の画素電極をさらに備え、前記第1電極は、前記表示領域の外側に配置される、付記1から11のいずれか一つに記載の液晶装置。
【0294】
付記12によれば、第1電極が表示領域の外側に配置されるため、表示領域における画素電極の面積を十分に確保しながら、第1電極の面積を大きくすることができる。第1電極の面積が大きいほど、検出可能な可動性イオンの量が増加するため、可動性イオンの増加に対する感度を向上させることができる。
【0295】
(付記13)前記測定回路は、前記第1期間と前記第2期間との間の第4期間において、前記電位差が、前記第1電位差と同じ極性を有し、且つ前記第1電位差の絶対値より小さい絶対値を有する第3電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給する、付記1から12のいずれか一項に記載の液晶装置。
【0296】
付記13のように、第1期間と第2期間との間に第4期間が挿入されることにより、第1期間に初期配置された可動性イオンを移動させることなく、第1期間から第2期間へ移行させることができる。従って、付記13によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0297】
(付記14)前記測定回路は、前記第3期間後の第5期間において、前記電位差が、前記第1電位差と異なる極性を有し、且つ前記第1電位差の絶対値と同じ絶対値を有する第4電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第5期間後の第6期間において、前記電位差が、前記第4電位差と異なる極性を有する第5電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給し、前記第6期間後の第7期間において、前記第1電極への電位の供給を停止すると共に前記第2電極に前記第6期間と同じ電位を供給する、付記1から13のいずれか一つに記載の液晶装置。
【0298】
付記14のように、第6期間及び第7期間の前に、第5期間が挿入される。これにより、第5期間において、液晶層に含まれる可動性イオンを、第1電極及び第2電極のいずれか一方に効果的に初期配置できる。このように第6期間が始まる前に、可動性イオンの初期配置が整えられることにより、第7期間に得られる第1電極の電位の測定値に関して測定再現性を得ることができる。また、可動性イオンによる内部電場の影響も測定値に反映されるので、可動性イオンの増加が測定値の変化として現れやすくなる。その結果、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行を感度良く追跡できる。
さらに、付記14によれば、液晶層が交流駆動されるため、第1電極の電位の測定時において、液晶層に直流電圧が印加されることに起因して液晶層が劣化することを抑制できる。
【0299】
(付記15)前記測定回路は、前記第5期間と前記第6期間との間の第8期間において、前記電位差が、前記第4電位差と同じ極性を有し、且つ前記第4電位差の絶対値より小さい絶対値を有する第6電位差となるように、前記第1電極と前記第2電極との夫々に電位を供給する、付記14に記載の液晶装置。
【0300】
付記15のように、第5期間と第6期間との間に第8期間が挿入されることにより、第5期間に初期配置された可動性イオンを移動させることなく、第5期間から第6期間へ移行させることができる。従って、付記15によれば、より高い測定再現性を持って、液晶パネルの使用初期から、液晶層の劣化の進行をより感度良く追跡できる。
【0301】
(付記16)前記測定回路は、前記第1電極と電気的に接続される第1ノードと、前記第2電極と電気的に接続される第2電極線と、グランド電位が印加されるグランド電位線と、前記第1ノードと前記グランド電位線との間に電気的に接続される第1コンデンサーと、前記第2電極線と前記グランド電位線との間に電気的に接続される第2コンデンサーと、第1スイッチと、第2スイッチと、第3スイッチと、第4スイッチと、参照電圧に対応する測定電位を出力する測定電位生成回路と、前記参照電圧を前記測定電位生成回路に出力し、前記第1スイッチから前記第4スイッチを制御する第3制御回路と、前記第1ノードの電位を前記第1電極電位として測定し、前記第1電極電位の測定値を前記制御回路に出力する電位測定回路と、を備え、前記第1ノードは、前記第1スイッチを介して前記グランド電位線と電気的に接続され、前記第1ノードは、前記第2スイッチを介して前記測定電位生成回路の出力端子と電気的に接続され、前記第2電極線は、前記第3スイッチを介して前記グランド電位線と電気的に接続され、前記第2電極線は、前記第4スイッチを介して前記測定電位生成回路の出力端子と電気的に接続される、付記1から15のいずれか一つに記載の液晶装置。
【0302】
付記16の構成を有する測定回路を用いることにより、シンプルな回路構成で測定回路に要求される機能を実現できるとともに、第1電極の電位の測定値に含まれるノイズ成分を低減することができる。
【0303】
(付記17)前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、第1電圧によってオン状態に制御され、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチは、前記第1電圧よりも高い第2電圧によってオン状態に制御される、付記16に記載の液晶装置。
【0304】
付記17のように、第2電極線と電気的に接続される第3スイッチ及び第4スイッチが、比較的高い第2電圧によってオン状態に制御されることにより、第3スイッチ及び第4スイッチのオン抵抗を小さくできるため、第2電極線の応答性を向上させることができ、且つ、第1電極からのリーク電流を抑制できる。その結果、第2期間及び第6期間を短くできるため、移動度の大きい可動性イオンの作用を測定値の変化として捕えることができるとともに、各スイッチ部品の特性バラツキが測定値に与える影響を抑制できる。
【0305】
(付記18)付記1から付記17のいずれか一つに記載の液晶装置を備える電子機器。
【符号の説明】
【0306】
1000…液晶装置、100、100A、100B…液晶パネル、200…測定回路、300…COF(Chip on Film)、310…駆動IC(Integrated Circuit)、10000…投射型表示装置、1…素子基板、2…対向基板、4…液晶層、22…検出電極、23…電極引出線、17…クロック信号主線、18…クロック信号支線、20…出力制御信号線、25…第1導電層、28…共通電極、51…第1基板、81…第2基板、T1…第1逆掃引期間、T2…第1緩和期間、T3…第1充電期間、T4…第1放電期間、T5…第5逆掃引期間、T6…第2緩和期間、T7…第2充電期間、T8…第2放電期間