(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141169
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】射出ミキシングノズル
(51)【国際特許分類】
B29C 45/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B29C45/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052661
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】594160119
【氏名又は名称】河田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】河田 剛
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JD01
4F206JL02
4F206JQ51
4F206JQ53
4F206JQ55
(57)【要約】
【課題】従来品に比べ簡易な構成で十分な混錬をすること、樹脂材料を変更するときの作業を容易にすること、ができる射出ミキシングノズルを提供すること。
【解決手段】射出ミキシングノズル100は、ノズルボディ110と、圧力低減部材150と、を備え、圧力低減部材150は、ノズルボディ110の樹脂通路122を上流側と下流側とに仕切る第1壁部151を有し、樹脂通路122内に配設されることによって、上流側から第1壁部151の下流側に溶融樹脂が送出されるための第1樹脂通路181と、第1樹脂通路181を通過した溶融樹脂が混錬される空間V1と、を形成し、第1樹脂通路181は、溶融樹脂が空間V1に送出されるとき、空間V1の溶融樹脂において、圧力低減部材150の中心軸に沿って上流側から下流側に向かって見たときに右方向の回転で対流するような旋回流を発生させるように形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図3-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機における加熱シリンダの先端部分に取付けられ、前記加熱シリンダから送られる溶融樹脂を通過させる樹脂通路、及び前記樹脂通路の先端に形成され前記溶融樹脂を射出させる放出口を有するノズルボディと、
前記ノズルボディの前記樹脂通路内に配設され、前記加熱シリンダ側から加えられる前記溶融樹脂の圧力を低減する圧力低減部材と、を備え、
前記圧力低減部材は、
前記樹脂通路内に配設された場合、前記樹脂通路を上流側と下流側とに仕切る第1壁部を有し、
前記樹脂通路内に配設されることによって、
上流側から前記第1壁部の下流側に前記溶融樹脂が送出されるための第1壁通路と、
前記第1壁部の下流側に形成された空間であって、前記第1壁通路を通過した前記溶融樹脂が混錬される第1混錬空間と、を形成し、
前記第1壁通路は、前記溶融樹脂が前記第1混錬空間に送出されるとき、前記第1混錬空間の前記溶融樹脂において、前記第1壁部の中心軸に対して第1方向の旋回流を発生させるように形成されている射出ミキシングノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の射出ミキシングノズルにおいて、
前記圧力低減部材は、
前記樹脂通路内に配設された場合、前記第1壁部に比べて前記樹脂通路の上流側に配設され、前記樹脂通路を上流側と下流側とに仕切る第2壁部を有し、
前記樹脂通路内に配設されることによって、
上流側から前記第2壁部の下流側に前記溶融樹脂が送出されるための第2壁通路と、
前記第1壁部と前記第2壁部とに挟まれた空間であって、前記第2壁通路を通過した前記溶融樹脂が混錬される第2混錬空間と、を形成し、
前記第2壁通路は、前記溶融樹脂が前記第2壁部の下流側に送出されるとき、前記第2壁部の下流側の前記溶融樹脂において、前記第2壁部の中心軸に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向の旋回流を発生させるように形成されている射出ミキシングノズル。
【請求項3】
請求項2に記載の射出ミキシングノズルにおいて、
前記圧力低減部材は、前記第1壁部に近い部分の外周が前記第2壁部に近い部分の外周に比べて長くなるように形成されており、前記第1壁部と前記第2壁部とを連結する連結部を有する射出ミキシングノズル。
【請求項4】
請求項1に記載の射出ミキシングノズルにおいて、
前記ノズルボディは、
前記樹脂通路を形成するボディ通路部と、
前記ボディ通路部に対して着脱可能に設けられ、前記ボディ通路部から連通されることで前記樹脂通路を形成するとともに前記放出口が形成された放出口部と、を有し、
前記圧力低減部材は、前記樹脂通路内に配設されることによって、前記第1壁部が前記放出口部の内周面に当接する射出ミキシングノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出ミキシングノズルに関するものであり、特に、樹脂の射出成形機に用いられる射出ミキシングノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出ミキシングノズルとしては、筒状に形成され一端側に流体が導入される導入口が設けられ、他端側に導入された流体を導出する導出口が設けられたノズル本体と、ノズル本体の導入口と導出口との間に配置され導入口からノズル本体内に導入された流体を複数のエレメント穴から導入して混錬する複数のエレメントを備えたものがある。そして、このような複数のエレメントを備えた射出ミキシングノズルであれば、複数種類の樹脂材料(溶融樹脂)の混錬を十分に行うことができるものとして好適なものとされている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような従来の射出ミキシングノズルでは、十分な混錬を行うための複数のエレメントを備えるため、精密な部品点数が多く、複雑な構成となっている。そのため、例えば、エレメント穴に樹脂材料が目詰まりしてしまい、期待するような性能を発揮できなくなってしまう問題がある。また、このような射出ミキシングノズルは、上述のような目詰まりが発生したときや、樹脂材料を変更するときに、射出ミキシングノズルを分解して清掃する必要がある。このとき、部品点数が多く複雑な構成となっているため、清掃作業に手間が生じたり、分解清掃が出来ないノズルであったり、といった問題もある。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、射出ミキシングノズルであって、従来品に比べ簡易な構成で十分な混錬を行うことができるとともに、目詰まりが発生したときや樹脂材料を変更するときの作業を容易にすることができる射出ミキシングノズルの提供を目的とする。また、糸引き等の不具合の発生を抑制可能な射出ミキシングノズルの提供も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
本発明の適用例の一つである射出ミキシングノズル(100,200)は、射出成形機(1)における加熱シリンダ(2,4)の先端部分に取付けられ、加熱シリンダから送られる溶融樹脂(Y)を通過させる樹脂通路(122,132)、及び樹脂通路の先端に形成され溶融樹脂を射出させる放出口(131)を有するノズルボディ(110)と、ノズルボディの樹脂通路内に配設され、加熱シリンダ側から加えられる溶融樹脂の圧力(樹脂圧)を低減する圧力低減部材(150,250)と、を備え、圧力低減部材は、樹脂通路内に配設された場合、樹脂通路を上流側と下流側とに仕切る第1壁部(151,251)を有し、樹脂通路内に配設されることによって、上流側から第1壁部の下流側に溶融樹脂が送出されるための第1壁通路(181,281)と、第1壁部の下流側に形成された空間であって、第1壁通路を通過した溶融樹脂が混錬される第1混錬空間(V1)と、を形成し、第1壁通路は、溶融樹脂が第1混錬空間に送出されるとき、第1混錬空間の溶融樹脂において、第1壁部の中心軸に対して第1方向(圧力低減部材150,250の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに右方向)の旋回流を発生させるように形成されていることを要旨とする。
【0008】
また、上述の適用例の射出ミキシングノズル(100,200)において、圧力低減部材は、樹脂通路内に配設された場合、第1壁部に比べて樹脂通路の上流側に配設され、樹脂通路を上流側と下流側とに仕切る第2壁部(152,252)を有し、樹脂通路内に配設されることによって、上流側から第2壁部の下流側に溶融樹脂が送出されるための第2壁通路(182,282)と、第1壁部と第2壁部とに挟まれた空間であって、第2壁通路を通過した溶融樹脂が混錬される第2混錬空間(V2)と、を形成し、第2壁通路は、溶融樹脂が第2壁部の下流側に送出されるとき、第2壁部の下流側の溶融樹脂において、第2壁部の中心軸に対して第1方向とは反対方向である第2方向(圧力低減部材150,250の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに左方向)の旋回流を発生させるように形成されていてもよい。さらに、上述の適用例の射出ミキシングノズル(100,200)において、圧力低減部材は、第1壁部に近い部分の外周が第2壁部に近い部分の外周に比べて長くなるように形成されており、第1壁部と第2壁部とを連結する連結部(161,261)を有するように構成されていてもよい。そして、上述の適用例の射出ミキシングノズル(100,200)において、ノズルボディは、樹脂通路を形成するボディ通路部(120)と、ボディ通路部に対して着脱可能に設けられ、ボディ通路部から連通されることで樹脂通路を形成するとともに放出口(131)が形成された放出口部(130)と、を有し、圧力低減部材は、樹脂通路内に配設されることによって、第1壁部が放出口部の内周面(137a)に当接するように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の射出成型機1の概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態の射出成型機1の各工程の説明を示す図であり、(A)は計量・貯留工程の説明を示す図であり、(B)は計量・貯留工程の説明を示す図であり、(C)は射出工程の説明を示す図である。
【
図3-1】第1実施形態の射出ミキシングノズル100の全体構成を示す断面図である。
【
図3-2】第1実施形態の圧力低減部材150の外観図であり、(A)は圧力低減部材150の斜視図であり、(B)は圧力低減部材150の側面図である。
【
図4】第2実施形態の射出ミキシングノズル200の概略構成を示す図であり、(A)は射出ミキシングノズル200の全体構成を示す断面図であり、(B)は第2実施形態の圧力低減部材250の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0011】
[第1実施形態]
<射出成型機1の説明>
図1を参照して、まず、本実施形態の射出成型機1の全体構成について説明する。
図1は、第1実施形態の射出成型機1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の射出成型機1は、シリンダ2、ヒータ4、ホッパ5、スクリュ6、射出ミキシングノズル100、を備えている。シリンダ2は、樹脂通路2aを内部に有する略円筒状に形成されている。ヒータ4は、シリンダ2の外周面に巻かれている。ホッパ5は、シリンダ2の根元側の上部に貫通された状態で接続されている。スクリュ6は、シリンダ2の樹脂通路2aに配設されている。射出ミキシングノズル100は、シリンダ2の先端部分に取付金具2cを介して取付けられており、詳細については後述する。
【0012】
ヒータ4は、樹脂通路2aを通過する樹脂材料Kを外部から加熱するものであり、シリンダ2と組合せることにより本実施形態の加熱シリンダとして機能している。なお、樹脂材料Kには、ヒータ4の熱だけではなく、スクリュ6の回転に伴う摩擦熱、及びシリンダ2の内周面との間で発生するせん断熱も加えられ、これらの熱により樹脂材料Kは溶融されながら溶融樹脂Yとして送られる。ホッパ5は、固形状の樹脂材料K(例えば、樹脂ペレット)を貯えるとともに、底面に設けられた供給口(図示しない)からシリンダ2の根元側に、重力を利用して樹脂材料Kを供給するものである。つまり、ホッパ5の下方の樹脂通路2aに空隙が生じると、その部分に対して樹脂材料Kを落とし込むことにより、樹脂通路2a内に樹脂材料Kを充填させる。スクリュ6は、表面に螺旋溝が形成されており、樹脂通路2aの略全域に亘って配置される長さに設定されている。また、スクリュ6は、回転可能で且つ軸方向に移動可能(進退可能)に支持されており、スクリュ6を回転させることで、ホッパ5から供給された樹脂材料Kをシリンダ2の先端部2bに送ることが可能な構成となっている。さらに、スクリュ6を前進させることで、先端部2bに貯留された樹脂材料(溶融樹脂Y)を射出ミキシングノズル100から所定の圧力で射出させることが可能な構成となっている。なお、スクリュ6には、射出ミキシングノズル100側に向かって所定の圧力(すなわち背圧)が加えられており、スクリュ6を回転させたときに、スクリュ6の推進力によってスクリュ6が後退しないように構成されている。
【0013】
ここで、射出成型機1は、スクリュ6を回転させる手段としての回転用モータ9及び回転伝達機構10と、スクリュ6を軸方向に移動させる手段としての進退用モータ15及び軸方向移動機構16と、を備えている。スクリュ6を回転させる手段である回転用モータ9は、その出力軸9aを一定方向に回転させるサーボモータからなり、第1モータ駆動回路(図示しない)によって回転制御される。また、回転伝達機構10は、回転用モータ9の回転をスクリュ6に伝達するものであり、スクリュ6の軸6cに接続された従動プーリ11と、回転用モータ9の出力軸9aに連結された駆動プーリ12と、駆動プーリ12及び従動プーリ11を繋ぐ無端ベルト13とから構成されている。スクリュ6を軸方向に移動させる手段である進退用モータ15は、サーボモータからなり、第2モータ駆動回路(図示しない)によって、回転数及び回転方向が制御される。また、軸方向移動機構16は、進退用モータ15の回転運動をスクリュ6の軸方向への直線運動に変換するものであり、シリンダ2の根元部分に固定された第1ベース板17aと、これに対向して配設された第2ベース板17bと、二枚のベース板17a,17bを繋ぐ一対のガイド部材18と、ガイド部材18によってスクリュ6の軸方向に摺動可能に案内されるとともに内部に雌ネジ(図示しない)が形成されたスライド部材19と、この雌ネジに螺合されるとともに第2ベース板17bに対して回動可能に支持された送りネジ20と、送りネジ20の一端側に接続された従動プーリ21と、進退用モータ15の出力軸15aに接続された駆動プーリ22と、従動プーリ21及び駆動プーリ22を繋ぐ無端ベルト23とから構成されている。なお、回転伝達機構10の従動プーリ11は、スライド部材19に対して回動可能に連結されており、スライド部材19がガイド部材18に沿って直線運動すると、それに従って回転伝達機構10及び回転用モータ9も移動するように構成されている。このため、進退用モータ15を一定方向に回転させると、送りネジ20によってスライド部材19及び従動プーリ11が前進し、スクリュ6が射出ミキシングノズル100側に向かって移動する。
【0014】
また、スクリュ6の先端側には、小径の頸部7が形成されており、この頸部7にチェックリング8が遊嵌されている。チェックリング8は、スクリュ6の頸部7に対して回動可能で、且つスクリュ6の軸方向に頸部7の長さ分だけ移動可能な状態で支持されている。さらに、チェックリング8の内周面と頸部7の間には、溶融樹脂Yを通過させ得る溝Sが形成されており、樹脂通路2aにおいて、螺旋溝が形成されたスクリュ本体6a側の圧力が先端部2bの圧力よりも高い状態(すなわちスクリュ6が回転している状態)では、この圧力差によって、チェックリング8が先端部2b側に移動することで溝Sが開放され(
図2(A)参照)、溶融樹脂Yを先端部2bに送ることが可能となる。一方、先端部2bに溶融樹脂Yが貯留された状態でスクリュ6の回転が停止すると、スクリュ本体6a側の圧力が先端部2bの圧力よりも低くなるため、その圧力差によってチェックリング8がスクリュ本体6a側に移動し、スクリュ本体6aに当接する(
図2(c)参照)。これにより、溝Sが閉鎖され、先端部2bに貯留された溶融樹脂Yの逆流が防止される。
【0015】
<射出成型機1における計量・貯留工程、および射出工程の説明>
図2を参照して、次に、射出成型機1における計量・貯留工程、および射出工程について説明する。
図2は、第1実施形態の射出成型機1の各工程の説明を示す図であり、(A)は計量・貯留工程の説明を示す図であり、(B)は計量・貯留工程の説明を示す図であり、(C)は射出工程の説明を示す図である。
【0016】
図2(A)に示すように、まず、計量・貯留工程では、ホッパ5から樹脂材料Kを供給しつつ、回転用モータ9(
図1を参照。)及び回転伝達機構10によってスクリュ6を一定方向(矢印の方向)に回転させる。すると、ホッパ5から供給された樹脂材料Kは、シリンダ2の周囲に巻かれたヒータ4からの熱、スクリュ6の回転に伴う摩擦熱、及びせん断熱によって加熱されながら、シリンダ2の先端部2bに向かって送られる。
【0017】
図2(B)に示すように、次に、計量・貯留工程では、先端部2bにおいて蓄積される溶融樹脂Yの樹脂圧がスクリュ6の背圧よりも高くなると、その樹脂圧によってスクリュ6が後退する。このため、スクリュ6の位置を検出することにより、先端部2bにおいて溶融樹脂Yを計量しながら貯留させることが可能になる。
【0018】
図2(C)に示すように、そして、射出工程では、進退用モータ15(
図1を参照。)及び軸方向移動機構16によってスクリュ6を軸方向に前進させる。すると、シリンダ2の先端部2bに貯留されている溶融樹脂Yが射出ミキシングノズル100から所定の圧力で射出され、型締めされた金型(図示しない)に対して所定の圧力で溶融樹脂Yを注入することが可能となる。そして、これらの計量・貯留工程、および射出工程を順次繰返し行うことにより、金型に対して溶融樹脂Yを所定量ずつ供給し、複数の成形品を連続的に成形することが可能となる。
【0019】
<射出ミキシングノズル100の説明>
図3-1および
図3-2を参照して、次に、本実施形態の射出ミキシングノズル100について説明する。
図3-1は、第1実施形態の射出ミキシングノズル100の全体構成を示す断面図である。
図3-2は、第1実施形態の圧力低減部材150の外観図であり、(A)は圧力低減部材150の斜視図であり、(B)は圧力低減部材150の側面図である。
【0020】
図3-1に示すように、本実施形態の射出ミキシングノズル100は、シリンダ2の先端部分に取付金具2cを介して着脱可能に取付けられるノズルボディ110と、ノズルボディ110の内部に配設される圧力低減部材150と、を備える。ノズルボディ110は、通路部120と、先端部130と、から構成されており、先端部130が通路部120に対して着脱可能に螺合するように構成されている。通路部120は、溶融樹脂Yを通過させる樹脂通路122が中心部分を貫通して設けられた中空の略円筒形に形成された部材であって、一端にシリンダ2の取付金具2cに取付けられるフランジ121が形成されており、他端の内面に先端部130が装着されるように螺子溝125が形成されている。また、通路部120の樹脂通路122は、一端から他端に亘って略一定の内径となるように形成されている。先端部130は、溶融樹脂Yを通過させる樹脂通路132が中心部分を貫通して設けられた略円錐台形の部材(先端側に向かって僅かに縮径するように形成された部材)であって、先端に溶融樹脂Yを射出する放出口131が形成されており、他端の外面に通路部120に装着できるように螺子溝135が形成されている。先端部130の樹脂通路132は、他端から先端に向かって漸次内径が小さくなるようにテーパ状に形成されたテーパ部137aと、テーパ部137aから放出口131までテーパ部137aの先端側の内径と略同じ内径で貫通された貫通部137bと、が形成されている。このように構成された通路部120の樹脂通路122と先端部130の樹脂通路132とを通過して、シリンダ2の先端部2bから供給された溶融樹脂Yが放出口131から射出される。
【0021】
また、圧力低減部材150は、樹脂通路122、132内に着脱可能に配設されることによって、シリンダ2側から加えられる溶融樹脂Yの樹脂圧を低減する部材である。つまり、圧力低減部材150の上流側の溶融樹脂Yにはスクリュ6(
図2を参照。)の背圧に応じた圧力が加わるが、圧力低減部材150が抵抗となって圧力(樹脂圧)を降下させることで下流側の圧力(樹脂圧)を低くする。さらに、圧力低減部材150は、先端部130のテーパ部137aの内周面に嵌合するような形状であり、下流側(放出口131に向かう方向)への移動が規制されている。
【0022】
図3-2(A)に示すように、圧力低減部材150は、ノズルボディ110の内部に配設された場合、下流側に配設される第1壁部151と、第1壁部151に対して上流側に配設される円柱形状の第2壁部152と、第2壁部152に対して上流側に配設される円柱形状の第3壁部153と、第3壁部153に対して上流側に配設される円柱形状の第4壁部154と、第4壁部154に対して上流側に配設される円柱形状の第5壁部155と、第1壁部151と第2壁部152とを連結する第1連結部161と、第2壁部152と第3壁部153とを連結する第2連結部162と、第3壁部153と第4壁部154とを連結する第3連結部163と、第4壁部154と第5壁部155とを連結する第4連結部164と、が一体成型された部材である。第1壁部151は、円柱形状の壁本体部170aと、壁本体部170aの上流側に形成された円錐台形状の嵌合部170bと、から構成されており、詳細については後述するが、嵌合部170bがノズルボディ110の先端部130のテーパ部137aに嵌合する部分である。
【0023】
また、第1壁部151には、側面の上流側から下流側に亘った6つの第1溝部171が、外周面において均等の間隔となるように形成されている。第2壁部152には、側面の上流側から下流側に亘った6つの第2溝部172が、外周面において均等の間隔で形成されている。第3壁部153には、側面の上流側から下流側に亘った6つの第3溝部173が、外周面において均等の間隔となるように形成されている。第4壁部154には、側面の上流側から下流側に亘った6つの第4溝部174が、外周面において均等の間隔で形成されている。第5壁部155には、上流側から下流側に亘って穿設された6つの貫通部175が、均等の間隔で形成されている(
図3-1を参照。)。なお、詳細については後述するが、第1壁部151、第2壁部152、第3壁部153、第4壁部154、および第5壁部155は、樹脂通路122を通過して流れてくる溶融樹脂Yが当接することによって、抵抗となって圧力(樹脂圧)を低減させるための壁として機能する部分である。
【0024】
図3-2(B)に示すように、圧力低減部材150は、第1壁部151、第2壁部152、第3壁部153、第4壁部154、および第5壁部155の各々が中心軸Xに対して垂直をなすともに、各々の断面の中心が中心軸X上となるように形成されている。第1連結部161は、第1壁部151から第2壁部152に向かって円形状の断面の径(中心軸Xと垂直をなす方向の長さ)が漸次小さくなるようなテーパ状に形成されており、第1壁部151側の端部の断面の径が第1壁部151の断面の径と同じ大きさであり、第2壁部152側の端部の断面の径が第2壁部152の断面の径よりも小さくなっている。第2連結部162は、第2壁部152から第3壁部153に向かって円形状の断面の径(中心軸Xと垂直をなす方向の長さ)が漸次小さくなるようなテーパ状に形成されており、第2壁部152側の端部の断面の径が第2壁部152の断面の径と同じ大きさであり、第3壁部153側の端部の断面の径が第3壁部153の断面の径よりも小さくなっている。第3連結部163は、第3壁部153から第4壁部154に向かって円形状の断面の径(中心軸Xと垂直をなす方向の長さ)が漸次小さくなるようなテーパ状に形成されており、第3壁部153側の端部の断面の径が第3壁部153の断面の径と同じ大きさであり、第4壁部154側の端部の断面の径が第4壁部154の断面の径よりも小さくなっている。第4連結部164は、第4壁部154から第5壁部155に向かって円形状の断面の径(中心軸Xと垂直をなす方向の長さ)が漸次小さくなるようなテーパ状に形成されており、第4壁部154側の端部の断面の径が第4壁部154の断面の径と同じ大きさであり、第5壁部155側の端部の断面の径が第5壁部155の断面の径よりも小さくなっている。
【0025】
また、第1壁部151における6つの第1溝部171の各々は、中心軸Xに対して所定の角度をなすように右巻き螺旋状に同じ間隔で形成されており、第2壁部152における6つの第2溝部172の各々は、中心軸Xに対して所定の角度をなすように左巻き螺旋状に同じ間隔で形成されており、第3壁部153における6つの第3溝部173の各々は、中心軸Xに対して所定の角度をなすように右巻き螺旋状に同じ間隔で形成されており、第4壁部154における6つの第4溝部174の各々は、中心軸Xに対して所定の角度をなすように左巻き螺旋状に同じ間隔で形成されている。さらに、第5壁部155における6つの貫通孔部175は、第4連結部164および第4壁部154側(圧力低減部材150がノズルボディ110の内部に配設された場合の下流側)に向かって内径が小さくなるようなテーパ状に形成されている。なお、本実施形態における第1溝部171、第2溝部172、第3溝部173、および第4溝部174が中心軸Xに対してなす所定の角度は、10度~30度であり、より好ましくは30度である。
【0026】
図3-1を参照して、ここで、本実施形態の射出ミキシングノズル100において、ノズルボディ110の内部に圧力低減部材150が配設された状態について説明する。ノズルボディ110の内部に圧力低減部材150が配設されると、圧力低減部材150は、第1壁部151の嵌合部170bが先端部130のテーパ部137aに嵌合するとともに、第1壁部151の壁本体部170aと第1連結部161と第2壁部152と第2連結部162と第3壁部153と第3連結部163と第4壁部154と第4連結部164と第5壁部155とが、通路部120の樹脂通路122内に配設される。このような状態であると、圧力低減部材150の第1壁部151、第2壁部152、第3壁部153、第4壁部154、および第5壁部155は、各々の外径が樹脂通路122の内径と略同じ長さであるため、樹脂通路122、132を仕切ることになる。また、このようにノズルボディ110の内部に圧力低減部材150が配設されると、テーパ部137aの壁面と貫通部137bの壁面と第1壁部151とに囲まれた空間V1と、第1壁部151と第1連結部161と第2壁部152と樹脂通路122の壁面(内周面)とに囲まれた空間V2と、第2壁部152と第2連結部162と第3壁部153と樹脂通路122の壁面(内周面)とに囲まれた空間V3と、第3壁部153と第3連結部163と第4壁部154と樹脂通路122の壁面(内周面)とに囲まれた空間V4と、第4壁部154と第4連結部164と第5壁部155と樹脂通路122の壁面(内周面)とに囲まれた空間V5と、が形成される。さらに、樹脂通路122の壁面と6つの第1溝部171とによる右巻き螺旋状の6つの第1樹脂通路181と、樹脂通路122の壁面と6つの第2溝部172とによる左巻き螺旋状の6つの第2樹脂通路182と、樹脂通路122の壁面と6つの第3溝部173とによる右巻き螺旋状の6つの第3樹脂通路183と、樹脂通路122の壁面と6つの第4溝部174とによる左巻き螺旋状の6つの第4樹脂通路184と、が形成される。なお、圧力低減部材150は、中心軸Xが樹脂通路122、132における溶融樹脂Yの流れる方向と鉛直をなす断面の中心と略一致するように配設されているため、第1樹脂通路181は第1壁部151の周囲に亘って形成され、第2樹脂通路182は第2壁部152の周囲に亘って形成され、第3樹脂通路183は第3壁部153の周囲に亘って形成され、第4樹脂通路184は第4壁部154の周囲に亘って形成される。
【0027】
図3-1を参照して、次に、本実施形態の射出ミキシングノズル100において、溶融樹脂Yの流れる状態について説明する。まず、樹脂通路122の上流側から流れてきた溶融樹脂Yは、圧力低減部材150の第5壁部155に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、第5壁部155の6つの貫通孔部175を通過して下流側の空間V5に送出され流れ込む。このとき、6つの貫通孔部175は上述のように上流側から下流側に向かって漸次狭まるような形状であるため、6つの貫通孔部175を通過した溶融樹脂Yは、貫通孔部175に進入したときに比べて流速が増した状態で空間V5に流れ込むこととなる。このように空間V5に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V5を形成している面(第4壁部154、第4連結部164の側面、樹脂通路122の壁面)に当接することで対流し温度が均一にされつつ混錬されることとなる。
【0028】
次に、空間V5に流れ込んできた溶融樹脂Yは、圧力低減部材150の第4壁部154に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、6つの第4樹脂通路184を通過して下流側の空間V4に送出され流れ込む。また、6つの第4樹脂通路184は上述のように左巻き螺旋状に形成されているため、6つの第4樹脂通路184を通過して空間V4に送出された溶融樹脂Yは、空間V4内において、圧力低減部材150の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに左方向の回転で対流するような旋回流を発生させながら混錬される。このとき、空間V5内において、第4連結部164は第5壁部155から第4壁部154に向かって円形状の断面の径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されているため、樹脂通路122が第4壁部154に近づくにつれて狭まることとなり、溶融樹脂Yは空間V5内の第5壁部155近傍で対流しているときに比べて流速が増した状態で空間V4に流れ込むこととなる。このように空間V4に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V4を形成している面(第3壁部153、第3連結部163の側面、樹脂通路122の壁面)に当接することで対流し混錬されることとなる。
【0029】
次に、空間V4に流れ込んできた溶融樹脂Yは、圧力低減部材150の第3壁部153に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、6つの第3樹脂通路183を通過して下流側の空間V3に送出され流れ込む。また、6つの第3樹脂通路183は上述のように右巻き螺旋状に形成されているため、6つの第3樹脂通路183を通過して空間V3に送出された溶融樹脂Yは、空間V3内において、圧力低減部材150の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに右方向の回転で対流するような旋回流を発生させながら混錬される。このとき、空間V4内において、第3連結部163は第4壁部154から第3壁部153に向かって円形状の断面の径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されているため、樹脂通路122が第3壁部153に近づくにつれて狭まることとなり、溶融樹脂Yは空間V4内の第4壁部154近傍で対流しているときに比べて流速が増した状態で空間V3に流れ込むこととなる。このように空間V3に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V3を形成している面(第2壁部152、第2連結部162の側面、樹脂通路122の壁面)に当接することで対流し混錬されることとなる。
【0030】
次に、空間V3に流れ込んできた溶融樹脂Yは、圧力低減部材150の第2壁部152に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、6つの第2樹脂通路182を通過して下流側の空間V2に送出され流れ込む。また、6つの第2樹脂通路182は上述のように左巻き螺旋状に形成されているため、6つの第2樹脂通路182を通過して空間V2に送出された溶融樹脂Yは、空間V2内において、圧力低減部材150の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに左方向の回転で対流するような旋回流を発生させながら混錬される。このとき、空間V3内において、第2連結部162は第3壁部153から第2壁部152に向かって円形状の断面の径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されているため、樹脂通路122が第2壁部152に近づくにつれて狭まることとなり、溶融樹脂Yは空間V3内の第3壁部153近傍で対流しているときに比べて流速が増した状態で空間V2に流れ込むこととなる。このように空間V2に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V2を形成している面(第1壁部151、第1連結部161の側面、樹脂通路122の壁面)に当接することで対流し混錬されることとなる。
【0031】
そして、空間V2に流れ込んできた溶融樹脂Yは、圧力低減部材150の第1壁部151に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、6つの第1樹脂通路181を通過して下流側の空間V1に送出され流れ込む。また、6つの第1樹脂通路181は上述のように右巻き螺旋状に形成されているため、6つの第1樹脂通路181を通過して空間V1に送出された溶融樹脂Yは、空間V1内において、圧力低減部材150の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに右方向の回転で対流するような旋回流を発生させる。このとき、空間V2内において、第1連結部161は第2壁部152から第1壁部151に向かって円形状の断面の径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されているため、樹脂通路122が第1壁部151に近づくにつれて狭まることとなり、溶融樹脂Yは空間V2内の第2壁部152近傍で対流しているときに比べて流速が増した状態で空間V1に流れ込むこととなる。このように空間V1に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V1を形成している面(テーパ部137aの壁面、貫通部137bの壁面)に当接することで対流し混錬され、さらに下流側の放出口131から射出される。また、放出口131から射出される溶融樹脂Yにおいては、圧力低減部材150により樹脂圧が低減されているため、放出口131から溶融樹脂Yが漏れ出ること、所謂、糸引きが抑制されている。
【0032】
以上のような構成の射出ミキシングノズル100において、樹脂材料を変更したり洗浄したりするときの分解作業について説明する。まず、先端部130は通路部120に対して着脱可能に螺合されているため、先端部130を回転させると通路部120から取外すことができる。そして、圧力低減部材150は、通路部120の先端部130が取付けられていた側(下流側)から抜き出すことができる。このとき、先端部130を取外した状態でスクリュ6を回転させることによって、上流側から下流側に向かう方向の溶融樹脂Yによる樹脂圧を圧力低減部材150に作用させて、圧力低減部材150を下流側に押し込んで通路部120から抜き出すようにすることができる。なお、圧力低減部材150は、上流側から下流側に向かう方向の溶融樹脂Yからの樹脂圧によって、先端部130のテーパ部137aに対して第1壁部151(嵌合部170b)が圧着されることとなり、先端部130と圧力低減部材150とが一体となるように取外される場合もある。
【0033】
[第2実施形態]
図4を参照して、次に、第2実施形態の射出ミキシングノズル200について説明する。
図4は、第2実施形態の射出ミキシングノズル200の概略構成を示す図であり、(A)は射出ミキシングノズル200の全体構成を示す断面図であり、(B)は第2実施形態の圧力低減部材250の斜視図である。なお、第2実施形態における射出成型機は、第1実施形態と同様のものであるため、本実施形態における<射出成型機1の全体構成について>の説明、および<計量・貯留工程、および射出工程について>の説明は省略する。
【0034】
図4(A)に示すように、射出ミキシングノズル200は、ノズルボディ110と、圧力低減部材250と、を備える。つまり、ノズルボディ110は、上述の第1実施形態と同様の構成である。したがって、ノズルボディ110の構成についての説明は省略する。圧力低減部材250は、第1実施形態の圧力低減部材150と同様に、樹脂通路122、132内に着脱可能に配設されることによって、シリンダ2側から加えられる溶融樹脂Yの樹脂圧を低減する部材である。また、圧力低減部材250は、第1実施形態の圧力低減部材150と同様に、先端部130のテーパ部137aの内周面に嵌合するような形状であり、下流側(放出口131に向かう方向)への移動が規制されている。
【0035】
図4(B)に示すように、圧力低減部材250は、下流側から順に配設される第1壁部251、第2壁部252、第3壁部253と、第1壁部251と第2壁部252とを連結する第1連結部261、第2壁部252と第3壁部253とを連結する第2連結部262と、が一体成型された部材である。なお、第1壁部251、第2壁部252、第1連結部261、第2連結部262は、各々が第1実施形態の圧力低減部材150における第1壁部151、第2壁部152、第1連結部161、第2連結部162と同様の形状であって、第1壁部251には6つの第1溝部271が形成されており、第2壁部252には6つの第2溝部272が形成されており、これらの形状に関する詳細な説明を省略する。また、第3壁部253は、第1実施形態の圧力低減部材150における第5壁部155と同様の形状であって、第3壁部253には6つの貫通孔273が形成されており、これらの形状に関する詳細な説明も省略する。つまり、本実施形態の圧力低減部材250は、第1実施形態の圧力低減部材150とは異なる形状であって、樹脂通路122を通過して流れてくる溶融樹脂Yの樹脂圧を低減させるための3つの壁で構成されたものである。
【0036】
図4(A)を参照して、ここで、第2実施形態の射出ミキシングノズル200において、ノズルボディ110の内部に圧力低減部材250が配設された状態について説明する。ノズルボディ110の内部に圧力低減部材250が配設されると、圧力低減部材250は、第1壁部251の嵌合部が先端部130のテーパ部137aに嵌合するとともに、第1壁部251の壁本体部と第1連結部261と第2壁部252と第2連結部262と第3壁部253とが、通路部120の樹脂通路122内に配設される。このような状態であると、圧力低減部材250の第1壁部251、第2壁部252、および第3壁部253は、各々の外径が樹脂通路122の内径と略同じ長さであるため、樹脂通路122を仕切ることになる。また、このようにノズルボディ110の内部に圧力低減部材250が配設されると、テーパ部137aの壁面と貫通部137bの壁面と第1壁部251とに囲まれた空間V1と、第1壁部251と第1連結部261と第2壁部252と樹脂通路122の壁面(内周面)とに囲まれた空間V2と、第2壁部252と第2連結部262と第3壁部253と樹脂通路122の壁面(内周面)とに囲まれた空間V3と、が形成される。さらに、樹脂通路122の壁面と6つの第1溝部271とによる右巻き螺旋状の6つの第1樹脂通路281と、樹脂通路122の壁面と6つの第2溝部272とによる左巻き螺旋状の6つの第2樹脂通路282と、が形成される。なお、圧力低減部材250は、中心軸Xが樹脂通路122、132における溶融樹脂Yの流れる方向と鉛直をなす断面の中心と略一致するように配設されているため、第1樹脂通路281は第1壁部251の周囲に亘って形成され、第2樹脂通路282は第2壁部252の周囲に亘って形成される。
【0037】
図4(A)を参照して、次に、第2実施形態の射出ミキシングノズル200において、溶融樹脂Yの流れる状態について説明する。まず、樹脂通路122の上流側から流れてきた溶融樹脂Yは、圧力低減部材250の第3壁部253に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、第3壁部253の6つの貫通孔部273を通過して下流側の空間V3に送出され流れ込む。このとき、6つの貫通孔部273は上述のように上流側から下流側に向かって漸次狭まるような形状であるため、6つの貫通孔部273を通過した溶融樹脂Yは、貫通孔部273に進入したときに比べて流速が増した状態で空間V3に流れ込むこととなる。このように空間V3に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V3を形成している面(第2壁部252、第2連結部262の側面、樹脂通路122の壁面)に当接することで対流し温度が均一にされつつ混錬されることとなる。
【0038】
次に、空間V3に流れ込んできた溶融樹脂Yは、圧力低減部材250の第2壁部252に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、6つの第2樹脂通路282を通過して下流側の空間V2に送出され流れ込む。また、6つの第2樹脂通路282は上述のように左巻き螺旋状に形成されているため、6つの第2樹脂通路282を通過して空間V2に送出された溶融樹脂Yは、空間V2内において、圧力低減部材250の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに左方向の回転で対流するような旋回流を発生させながら混錬される。このとき、空間V3内において、第2連結部262は第3壁部253から第2壁部252に向かって円形状の断面の径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されているため、樹脂通路122が第2壁部252に近づくにつれて狭まることとなり、溶融樹脂Yは空間V3内の第3壁部253近傍で対流しているときに比べて流速が増した状態で空間V2に流れ込むこととなる。このように空間V2に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V2を形成している面(第1壁部251、第1連結部261の側面、樹脂通路122の壁面)に当接することで対流し混錬されることとなる。
【0039】
そして、空間V2に流れ込んできた溶融樹脂Yは、圧力低減部材250の第1壁部251に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、6つの第1樹脂通路281を通過して下流側の空間V1に送出され流れ込む。また、6つの第1樹脂通路281は上述のように右巻き螺旋状に形成されているため、6つの第1樹脂通路281を通過して空間V1に送出された溶融樹脂Yは、空間V1内において、圧力低減部材250の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに右方向の回転で対流するような旋回流を発生させながら混錬される。このとき、空間V2内において、第1連結部261は第2壁部252から第1壁部251に向かって円形状の断面の径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されているため、樹脂通路122が第1壁部251に近づくにつれて狭まることとなり、溶融樹脂Yは空間V2内の第2壁部252近傍で対流しているときに比べて流速が増した状態で空間V1に流れ込むこととなる。このように空間V1に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V1を形成している面(テーパ部137aの壁面、貫通部137bの壁面)に当接することで対流し混錬され、さらに下流側の放出口131から射出される。また、放出口131から射出される溶融樹脂Yにおいては、圧力低減部材250により樹脂圧が低減されているため、放出口131から溶融樹脂Yが漏れ出ること、所謂、糸引きが抑制されている。
【0040】
以上のような構成の射出ミキシングノズル200において、樹脂材料を変更したり洗浄したりするときの分解作業について説明する。まずは、第1実施形態の射出ミキシングノズル100と同様に、先端部130を回転させると通路部120から取外すことができ、圧力低減部材250を通路部120の先端部130が取付けられていた側(下流側)から抜き出すことができる。このときも、第1実施形態の射出ミキシングノズル100と同様に、先端部130を取外した状態でスクリュ6を回転させることによって、圧力低減部材250を下流側に押し込んで通路部120から抜き出すようにすることができる。なお、圧力低減部材250は、上流側から下流側に向かう方向の溶融樹脂Yからの樹脂圧によって、先端部130のテーパ部137aに対して第1壁部251(嵌合部)が圧着されることとなり、先端部130と圧力低減部材250とが一体となるように取外される場合もある。
【0041】
[第1実施形態および第2実施形態の特徴]
上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200によれば、圧力低減部材150,250は、ノズルボディ110の樹脂通路122,132内に配設された場合、樹脂通路122,132を上流側と下流側とに仕切る第1壁部151,251を有し、樹脂通路122,132内に配設されることによって、上流側から第1壁部151,251の下流側に溶融樹脂Yが送出されるための第1樹脂通路181,281と、第1壁部151,251の下流側に形成された空間であって、第1樹脂通路181,281を通過した溶融樹脂Yが混錬される空間V1と、を形成し、第1樹脂通路181,281は、溶融樹脂Yが空間V1に送出されるとき、空間V1の溶融樹脂Yにおいて、圧力低減部材150,250(第1壁部151,251)の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに右方向の回転で対流するような旋回流を発生させるように形成されている。
【0042】
このような射出ミキシングノズル100,200であれば、圧力低減部材150,250をノズルボディ110の樹脂通路122,132に配設させる、といった簡易な構成で、溶融樹脂Yが混錬される空間V1が形成されるため、このような空間が形成されていない従来品に比べて、複数の種類の溶融樹脂を空間V1にて十分に混錬することができる。特に、溶融樹脂Yが空間V1に送出されるとき、空間V1の溶融樹脂Yにおいて、圧力低減部材150,250(第1壁部151,251)の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに右方向の回転で対流するような旋回流が発生しているため、このような旋回流が発生しない従来品に比べて、より十分に溶融樹脂Yを空間V1にて混錬することができる。また、このような射出ミキシングノズル100,200であれば、樹脂通路122,132内に圧力低減部材150,250が配設されると、ノズルボディ110の樹脂通路122,132を仕切る第1壁部151,251によって加熱シリンダ2側から加えられる溶融樹脂Yの樹脂圧が低減されるため、金型から成形品を取出すときに、背圧によって圧力低減部材150,250の下流側に位置する放出口131から溶融樹脂Yが漏れ出ること、所謂、糸引きを抑制することができる。
【0043】
また、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200によれば、圧力低減部材150,250は、ノズルボディ110の樹脂通路122,132内に配設された場合、第1壁部151,251に比べて樹脂通路122,132の上流側に配設され、樹脂通路122,132を上流側と下流側とに仕切る第2壁部152,252を有し、樹脂通路122,132内に配設されることによって、上流側から第2壁部152,252の下流側に溶融樹脂Yが送出されるための第2樹脂通路182,282と、第1壁部151,251と第2壁部152,252とに挟まれた空間であって、第2樹脂通路182,282を通過した溶融樹脂Yが混錬される空間V2と、を形成し、第2樹脂通路182,282は、溶融樹脂Yが第2壁部152,252の下流側に送出されるとき、第2壁部152,252の下流側の溶融樹脂Yにおいて、圧力低減部材150,250(第2壁部152,252)の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに左方向の回転で対流するような旋回流を発生させるように形成されている。
【0044】
このような射出ミキシングノズル100,200であれば、ノズルボディ110の樹脂通路122,132内に圧力低減部材150,250が配設されると、樹脂通路122,132を仕切る第1壁部151,251だけでなく第2壁部152,252によって、加熱シリンダ2側から加えられる溶融樹脂Yの樹脂圧をより十分に低減することができる。また、このような射出ミキシングノズル100,200であれば、圧力低減部材150,250をノズルボディ110の樹脂通路122,132に配設させる、といった簡易な構成で、溶融樹脂Yが混錬される空間V1だけでなくさらに空間V2も形成されるため、複数の種類の溶融樹脂を空間V1と空間V2とでより十分に混錬することができる。特に、溶融樹脂Yが空間V2に送出されるとき、空間V2の溶融樹脂Yにおいて、圧力低減部材150,250(第2壁部152,252)の中心軸Xに沿って上流側から下流側に向かって見たときに空間V1での旋回流とは逆方向の左方向の回転で対流するような旋回流が発生しているため、隣り合う空間V1と空間V2とで互いに異なる方向の旋回流が発生することとなる。このような射出ミキシングノズル100,200であれば、先に混錬された空間V2における旋回流とは逆回転の旋回流によって次の空間V1で混錬されることとなり、例えば、隣り合う2つの空間における各々の旋回流が同じ方向の回転であって、連続して同じ方向の旋回流による対流の混錬となってしまう場合に比べて、溶融樹脂Yを空間V1と空間V2で十分に混錬することができる。
【0045】
さらに、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200によれば、圧力低減部材150,250は、第1壁部151,251に近い部分の外周が第2壁部152,252に近い部分の外周に比べて長くなるように形成されており、第1壁部151,251と第2壁部152,252とを連結する第1連結部161,261を有するように構成されている。このような射出ミキシングノズル100,200であれば、第1連結部161,261は上流側の第2壁部152,252から下流側の第1壁部151,251に向かって径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されているため、溶融樹脂Yが混錬される空間V2は上流側から下流側に向かって狭くなるような形状となる。そのため、例えば連結部の外周が一定となるように形成されている圧力低減部材が配設されて形成される空間に比べて、連結部のテーパ状の面によって、空間V2内において、下流側の第1壁部151,251(第1樹脂通路181,281)に近づくにつれて溶融樹脂Yの流速が増すこととなる。つまり、第1樹脂通路181,281から空間V1に送出された溶融樹脂Yによる旋回流が強いものとなって、溶融樹脂Yを空間V1内で十分に混錬することができる。
【0046】
そして、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200によれば、ノズルボディ110は、樹脂通路122を形成する通路部120と、通路部120に対して着脱可能に設けられ、通路部120から連通されることで樹脂通路122,132を形成するとともに放出口131が形成された先端部130と、を有し、圧力低減部材150,250は、樹脂通路122,132内に配設されることによって、第1壁部151,251が先端部130のテーパ部137aに当接するように構成されている。このような射出ミキシングノズル100,200であれば、目詰まりが発生したときや樹脂材料を変更するときには、先端部130を取外して圧力低減部材150,250を通路部120の先端部130が取付けられていた側(下流側)から抜き出すことができる。つまり、目詰まりが発生したときや樹脂材料を変更するときに、射出ミキシングノズル100,200を容易に分解できるため、従来に比べて交換作業や清掃作業を容易に行うことができる。
【0047】
[その他の実施形態]
ここで、圧力低減部材の壁部における溝部の数と溶融樹脂の樹脂圧の低減との関係について説明する。まず、圧力低減部材の各壁部における溝部が多ければ多いほど射出ミキシングノズルでの当該壁部が配設された部分における溝部で構成された樹脂通路の数も多くなるため、当該樹脂通路を通過する樹脂材料の量が多くなるとともに、通過後の樹脂材料による旋回流が強くなって空間内での混錬を十分にすることができる。一方で、圧力低減部材の各壁部における溝部が少なければ少ないほど射出ミキシングノズルでの当該壁部が配設された部分における溝部で構成された樹脂通路の数も少なくなり、当該樹脂通路を通過する樹脂材料の量も少なくなるものの、当該壁部による樹脂材料の樹脂圧を当該壁部によってより低減させることができる。そこで、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100、200において、圧力低減部材150、250の第1壁部151、251の第1溝部171、271等といった溝部は各壁部で6つとしたが、例えば、2つ以上の溝部が形成されていればよく、各壁部における溝部の数が異なるように形成されていてもよい。例えば、射出ミキシングノズルに配設された圧力低減部材において、最も下流側に配設される壁部よりも上流側に配設される壁部によって十分に溶融樹脂の樹脂圧が低減されていれば、最も下流側に配設される壁部にて樹脂圧を低減させる必要性を低くすることができ、最も下流側に配設される壁部は上流側に配設される壁部よりも少ない樹脂通路を形成するようなものであってもよい。具体的には、第1壁部において2つの第1溝部が形成されているとともに、第1壁部よりも上流側に配設される第2壁部等の各壁部においては6つの溝部が形成されたような圧力低減部材であってもよい。また、各壁部において形成されている溝部の数が各々で異なるようなものであって、より具体的には、第1壁部には2つの第1溝部が形成され、第2壁部には4つの第2溝部が形成され、第3壁部には6つの第3溝部が形成され、第4壁部には8つの第4溝部が形成されているような上流側に配設される壁部から順に形成された溝部の数が少なくなるような圧力低減部材であってもよい。これらのような射出ミキシングノズルであっても、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100、200と同様の作用および効果を奏することができる。
【0048】
また、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100、200において、圧力低減部材150,250における第1連結部161等の形状は、下流側に配設される壁部から上流側に配設される壁部に向かって断面の径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されているものとしたが、例えば、連結部の断面の径が一定のものであって、ノズルボディに配設された場合、下流側に配設される壁部と上流側に配設される壁部との間の空間が上述の圧力低減部材150,250よりも大きく形成されるような圧力低減部材であってもよい。このような射出ミキシングノズルであっても、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100、200と同様の作用および効果を奏することができる。
【0049】
さらに、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100、200において、圧力低減部材150、250は、第1壁部151、251等の複数の壁部と、第1連結部161、261等の複数の連結部と、が一体成型されたものとして説明したが、各壁部と連結部とが各々成型されたものであって、組み合されて一体として構成されたものであってもよい。そして、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100、200において、圧力低減部材150は、ノズルボディ110の樹脂通路122,132内に配設されることによって、5つの壁部と5つの空間とを形成するものの、圧力低減部材250は、3つの壁部と3つの空間とを形成するものであった。圧力低減部材においては、ノズルボディに配設されたときに、多くの壁部と多くの空間を形成するものであればあるほど壁による樹脂圧をより低減することができるとともに空間での混錬を十分にすることができるため、圧力低減部材250よりも圧力低減部材150の方が十分に混錬することができる。しかしながら、溶融樹脂の種類に応じて粘度等の特性が異なるため、使用する樹脂に応じて適切な数の壁部と空間とを形成できる圧力低減部材を選択して、ノズルボディに配設することが望ましいため、圧力低減部材250も有用なものである。つまり、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100、200において、圧力低減部材における壁部の数はこれに限定されず、樹脂材料や射出成型機等に応じて、4つまたは6つ以上であってもよい。
【0050】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1… 射出成型機、2…シリンダ(加熱シリンダ)、4…ヒータ(加熱シリンダ)、100,200…射出ミキシングノズル、110…ノズルボディ、120…通路部(ボディ通路部)、122,132…樹脂通路、130…先端部(放出口部)、131…放出口、150,250…圧力低減部材、151,251…第1壁部、161,261…第1連結部(連結部)、152,252…第2壁部、161,261…第1連結部(連結部)、181,281…第1樹脂通路(第1壁通路)、182,282…第2樹脂通路(第2壁通路)、V1,V2…空間(混錬空間)、Y…溶融樹脂。