(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141175
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20241003BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 Z
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052671
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】越智 恵介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲明
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】本発明は、研磨中における、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できる研磨パッド、当該研磨パッドの製造方法、及び当該研磨パッドを使用した光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 研磨層を有する研磨パッドであって、
前記研磨層が、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤を含む、前記研磨パッド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層を有する研磨パッドであって、
前記研磨層が、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤を含む、前記研磨パッド。
【請求項2】
前記蓄熱剤の融点が20~37℃である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記蓄熱剤が、蓄熱用物質を含むコア部と、シェル部とを有する蓄熱粒子を含む、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記蓄熱粒子の平均粒径(D50)が2~20μmである、請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記研磨層が微小球体を更に含む、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記微小球体の平均粒径(D50)が10~20μmである、請求項5に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨層がポリウレタン樹脂を更に含む、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、及び前記蓄熱剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物である、請求項7に記載の研磨パッド。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造方法であって、
(a)前記蓄熱剤を含む硬化性樹脂組成物を準備する工程、
(b)前記硬化性樹脂組成物を型に注入する工程、及び
(c)前記型内において前記硬化性樹脂組成物を硬化させる工程
を含む、前記研磨パッドの製造方法。
【請求項10】
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、
蓄熱剤を含む研磨層を有する研磨パッドを使用して、前記蓄熱剤の融点以上の温度条件下において光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む、前記方法。
【請求項11】
前記研磨パッドが、請求項1又は2に記載の研磨パッドである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法に関する。本発明の研磨パッドは、光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板等の研磨に用いられ、特に半導体ウエハの上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを研磨するのに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の研磨は、いわゆる化学機械研磨法(CMP)で行われるのが一般的である。CMPとは、研磨剤(以下、スラリーという)に含まれる化学成分による作用と、被研磨物と研磨パッドとの相対運動による機械的作用とを利用して、平滑な研磨面を得る技術である。
【0003】
このような研磨操作では、被研磨物に研磨パッドを押し付けた状態でスラリーが供給されて研磨されることから、研磨進行に伴い、研磨層の研磨面に加工熱(化学反応熱や摩擦熱)が蓄熱し、研磨面温度が上昇することが知られている。研磨面温度が上昇すると、スラリーが温められ、化学的作用が大きくなり、研磨レートが高くなりすぎる(過研磨される)不具合がある。また、研磨層の研磨面温度が上昇すると、研磨パッドの物性が変化し、研磨レートが変化する不具合がある。
【0004】
また、半導体デバイス等の研磨に用いられる研磨パッドは、ポリウレタン等の合成樹脂から形成された研磨層を有しており、当該研磨層の内部には空隙が形成されている。当該空隙は研磨層の表面で開孔しており、研磨時に、スラリーに含まれる砥粒が研磨層表面の開孔内に保持されることで、研磨対象物の研磨が進行する。研磨層の内部に空隙を形成する方法の1つとして、樹脂中に微小球体を混在させる方法が公知であり、近年、より精密な研磨を実現するために空隙(開孔)の小径化や均一化の検討がなされている。
【0005】
特許文献1には、機械発泡法による研磨パッドの製造方法において、原料に融解点が70~110℃かつ水酸基又はウレタン基を有する蓄熱剤を混合することで、気泡径を均一に制御できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の研磨パッドの製造方法においては、水酸基又はウレタン基を有する非被覆タイプ(非カプセルタイプ)の蓄熱剤を原料に混入することで、製造工程中の機械発泡法による気泡膨張を防いでいる。したがって、特許文献1の当該蓄熱剤は、研磨パッドの製造工程でイソシアネート化合物又は活性水素含有化合物と反応してしまうため、研磨の際の研磨面温度の上昇を抑制することは期待できないものであった。
以上のように、研磨中における、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できる研磨パッドが望まれている。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、研磨中における、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できる研磨パッド、当該研磨パッドの製造方法、及び当該研磨パッドを使用した光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、研磨中における、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できることに加え、研磨中における研磨レートを維持できる(研磨レートの変動を抑制できる)研磨パッド等を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、研磨層に特定の蓄熱剤を添加することにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
【0010】
[1] 研磨層を有する研磨パッドであって、
前記研磨層が、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤を含む、前記研磨パッド。
[2] 前記蓄熱剤の融点が20~37℃である、[1]に記載の研磨パッド。
[3] 前記蓄熱剤が、蓄熱用物質を含むコア部と、シェル部とを有する蓄熱粒子を含む、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4] 前記蓄熱粒子の平均粒径(D50)が2~20μmである、[3]に記載の研磨パッド。
[5] 前記研磨層が微小球体を更に含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[6] 前記微小球体の平均粒径(D50)が10~20μmである、[5]に記載の研磨パッド。
[7] 前記研磨層がポリウレタン樹脂を更に含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[8] 前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、及び前記蓄熱剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物である、[7]に記載の研磨パッド。
[9] [1]~[8]のいずれか1つに記載の研磨パッドの製造方法であって、
(a)前記蓄熱剤を含む硬化性樹脂組成物を準備する工程、
(b)前記硬化性樹脂組成物を型に注入する工程、及び
(c)前記型内において前記硬化性樹脂組成物を硬化させる工程
を含む、前記研磨パッドの製造方法。
[10] 光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、
蓄熱剤を含む研磨層を有する研磨パッドを使用して、前記蓄熱剤の融点以上の温度条件下において光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む、前記方法。
[11] 前記研磨パッドが、[1]~[8]のいずれか1つに記載の研磨パッドである、[10]に記載の方法。
【0011】
(定義)
本明細書において、「X~Y」を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値であるX及びYを含むものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の研磨パッドは、研磨中における、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できる。また、場合によっては、本発明の研磨パッドは、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できることに加え、研磨中における研磨レートを維持できる(研磨レートの変動を抑制できる)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、蓄熱粒子の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法における研磨層の断面の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(作用)
本発明者らは、研磨層の組成と、研磨中における、研磨層の研磨面温度の上昇との関係について鋭意研究した結果、予想外にも、研磨層に、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤を添加することにより、研磨面温度の上昇を抑制できることを見出した。このような特性が得られる理由の詳細は明らかではないが、上記蓄熱剤は、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性であり、研磨層に含まれる他の成分(例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤)と反応しないため、蓄熱剤の構造や運動性が損なわれることなく研磨層中に存在できると考えられる。そのため、研磨層中の上記蓄熱剤が、研磨中に発生する研磨熱を吸収し蓄熱剤の相変化のエネルギーに変換でき、研磨層の研磨面温度を一定に保つことができると推察される。後述するシェル部を有するタイプの蓄熱剤については、研磨層中において、ポリマー成分に分散する粒子の内部に蓄熱用物質が存在する。一方、シェル部を有さない非被覆タイプの蓄熱剤については、研磨層中において、上記蓄熱剤が島成分、ポリマー成分等が海成分となり、海島構造を形成していると推察される。
【0015】
以下、本発明の研磨パッド、及び研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法について、説明する。
【0016】
1.研磨パッド
本発明の研磨パッドは、
研磨層を有する研磨パッドであって、
前記研磨層が、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤を含む。
【0017】
(イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤)
蓄熱剤(潜熱蓄熱剤)とは、相変化(固体から液体、液体から固体等)する際に熱エネルギーを吸収又は放出する物質を意味する。相変化が起こっている間は、熱のエネルギーが温度では現れない状態(潜熱)となり、物質の温度は一定となる。例えば、固体の蓄熱剤が液体へと相変化(融解)する場合、周囲のエネルギーを吸収する。蓄熱剤を利用することにより、周囲の温度変化を抑制し周囲の温度を一定に維持することができる。
【0018】
本発明における蓄熱剤は、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である(非反応性である)。そのため、上述のように、上記蓄熱剤は、研磨層に含まれる他の成分(例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤)と反応しないため、蓄熱剤の構造や運動性が損なわれることなく研磨層中に存在できると考えられる。
【0019】
蓄熱剤の融点(融解点、相変化温度ともいう)は、特に限定されないが、-5~42℃が好ましく、10~40℃がより好ましく、20~37℃が最も好ましい。蓄熱剤の融点が研磨層の研磨面温度以下であると、研磨時に蓄熱剤が融解して液体となり、研磨層の開孔から流れ出て研磨に悪影響を及ぼさないため好ましい。好ましい研磨面温度は研磨プロセスによっても異なるが、室温(20℃)~40℃程度のことが多いため、蓄熱剤の融点を20~37℃とすることが最も好ましい。
【0020】
蓄熱剤の種類は、特に限定されないが、ノルマルパラフィン、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコール、脂肪族エーテルなどが挙げられる。これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
代表的な蓄熱剤としてノルマルパラフィン等のパラフィンがある。パラフィンは一般式CnH2n+2をもつ飽和炭化水素の総称である。上記炭化水素の炭素数を変化させることで相変化温度を制御可能である。上記炭化水素は直鎖でも分岐でもどちらでも良いが、潜熱量が大きい点で直鎖のほうが好ましい。
本実施形態の研磨パッドでは、研磨の際に研磨パッド表面から蓄熱剤が漏出することがあるので、蓄熱剤の成分として、研磨の化学反応に影響しない成分が好ましい。
【0021】
研磨層全体又は後述の硬化性樹脂組成物の硬化物全体に対する蓄熱剤の含有量は、特に限定されないが、0.1~20重量%が好ましく、1~10重量%がより好ましく、2~5重量%が最も好ましい。蓄熱剤の含有量が上記数値範囲内であると、研磨中の研磨層の温度上昇を抑制できる。蓄熱剤の含有量が0.1重量%未満だと十分な吸熱効果が得られず、含有量が20重量%より大きいと蓄熱材の成分が研磨性能に悪影響を与える恐れがある。
研磨層全体又は後述の硬化性樹脂組成物の硬化物全体に対する蓄熱剤の含有量は、未硬化の硬化性樹脂組成物全体に対する蓄熱剤の含有量と等しいとみなすことができる。
【0022】
<蓄熱粒子>
蓄熱剤は、特に限定されないが、蓄熱用物質を含むコア部と、シェル部とを有する蓄熱粒子を含む又はからなることができる。
研磨進行に伴い研磨パッドの表面に生じる加工熱を、研磨パッドの研磨層中に存在する蓄熱粒子が吸収することで、研磨面温度の上昇が抑制される。
一方、研磨面に露出した蓄熱用物質は、融点以上の温度に達した場合は、液体となってスラリーと共に外部へ排出される。この場合、蓄熱用物質が排出された後の蓄熱粒子の部分(シェル部の部分)は、スラリーを保持する表面凹部として機能する。
【0023】
上記蓄熱粒子は、シェル内に蓄熱用物質等を封入したカプセル型の粒子である。
図1は、蓄熱粒子の一例を示す断面図である。蓄熱粒子10は、蓄熱用物質を含むコア部12と、コア部12を被覆するシェル部14とを有する。蓄熱粒子は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてシェル部の外側に最外層を有してもよい。
【0024】
蓄熱粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、0.5~200μmが好ましく、1~20μmがより好ましく、2~10μmが最も好ましい。
蓄熱粒子の平均粒径(D50)が上記数値範囲の下限値以上であれば、蓄熱粒子の蓄熱量が充分に大きくなる。また、加熱と冷却とを繰り返してもコア部の蓄熱用物質が滲出しにくい。また、シェル部の機械的強度が高くなり、圧縮等によってシェル部が破損しにくい。
蓄熱粒子の平均粒径(D50)が上記数値範囲の上限値以下であれば、研磨中に蓄熱用物質が流れ出た後に研磨スラリーを保持する開孔部として機能する。
上記平均粒径(D50、メディアン径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザー2000)を使用して測定することができる。
【0025】
蓄熱粒子の形状としては、真球状、一部が歪んだ球状、だるま形状、円柱状、錘形状、直方体状等が挙げられる。
蓄熱粒子における蓄熱用物質の含有量は、シェル部の機械的強度およびコア部の蓄熱量の点から、蓄熱粒子の100質量%のうち、30~99.9質量%が好ましく、50~99質量%がより好ましく、70~99質量%がさらに好ましい。
シェル部の厚さは、シェル部の機械的強度および熱伝導性の点から、0.1~20μmが好ましく、0.5~10μmがより好ましい。
【0026】
(コア部)
コア部は、蓄熱用物質を含む。コア部は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
【0027】
蓄熱用物質としては、(i)蓄熱材の使用温度範囲において液体から固体またはその逆の状態変化(相転移)を起こす物質、(ii)蓄熱材の使用温度範囲において比熱(物質を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量)が大きい物質、(iii)蓄熱材の使用温度範囲において熱の出入りを伴う化学変化を起こす物質、等が挙げられる。
【0028】
(i)の蓄熱用物質を用いた蓄熱粒子を含む研磨層は、相転移に伴う潜熱(転移熱)を利用した潜熱蓄熱材となり、転移熱を熱エネルギーとして蓄えたり、熱エネルギーを転移熱として取り出したりすることができる。
(ii)の蓄熱用物質を用いた蓄熱粒子を含む研磨層は、物質の比熱を利用した顕熱蓄熱材となり、物質の温度変化に必要な熱量を蓄えたり、取り出したりすることができる。
(iii)の蓄熱用物質を用いた蓄熱粒子を含む研磨層は、物質の化学変化に伴う熱の出入りを利用した化学蓄熱材となる。
【0029】
蓄熱用物質としては、顕熱蓄熱材に比べて蓄熱密度が高く、熱の供給や吸収の温度が一定であり、化学蓄熱材に比べて熱の供給や吸収を制御しやすく、安定で安全である潜熱蓄熱材を得ることができる点から、(i)の蓄熱用物質が好ましい。
蓄熱用物質としては、後述する製造方法によって蓄熱粒子を製造しやすい点から、有機化合物が好ましく、製造時の温度において液状の有機物質がより好ましい。
蓄熱用物質としては、蓄熱量が大きい潜熱蓄熱材を得ることができ、かつ蓄熱粒子を製造しやすい点から、飽和炭化水素(パラフィン)、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、脂肪族ケトンおよび脂肪族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0030】
飽和炭化水素としては、相転移の温度が蓄熱材の使用温度として有用である点から、炭素数が7~60の飽和炭化水素が好ましい。
飽和炭化水素としては、潜熱量が大きい点から、直鎖状の飽和炭化水素が好ましい。
飽和炭化水素は、比較的低分子量の飽和炭化水素(a)と、比較的高分子量の石油ワックス(b)とに分類される。
【0031】
飽和炭化水素(a)の炭素数は、相転移の温度が蓄熱材の使用温度として有用である点から、7~24が好ましく、11~20がより好ましい。飽和炭化水素(a)の炭素数は、蓄熱材の使用温度に応じて、前記範囲から適宜に選択すればよい。
飽和炭化水素(a)は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、潜熱量が大きい点から、直鎖状の飽和炭化水素が好ましい。
飽和炭化水素(a)としては、蓄熱材の使用温度範囲を広げる点から、-20~50℃の温度範囲に融点を有するものが好ましい。
融点は、JIS K 7121に準拠して示差走査熱量計(DSC)によって測定した際の結晶融解ピークにおける補外融解開始温度(Tim)である。
飽和炭化水素(a)としては、n-ウンデカン(-21℃)、n-ドデカン(-12℃)、n-トリデカン(-5℃)、n-テトラデカン(6℃)、n-ペンタデカン(9℃)、n-ヘキサデカン(18℃)、n-ヘプタデカン(21℃)、n-オクタデカン(28℃)、n-ノナデカン(32℃)、n-イコサン(37℃)、n-ヘンイコサン(41℃)、n-ドコサン(46℃)が好ましい。括弧内の温度は、融点である。
【0032】
石油ワックス(b)としては、潜熱量および入手性の点から、炭素数が20以上のものが好ましい。
石油ワックス(b)としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
パラフィンワックスは、石油または天然ガスを原料として減圧蒸留の留出物から分離精製して製造される、常温において固体の飽和炭化水素である。
パラフィンワックスとしては、潜熱量および入手性の点から、炭素数が20~40のものが好ましい。
パラフィンワックスの市販品としては、日本精蝋社製のHNP-9、HNP-51、FNP-0090、FT115等が挙げられる。
マイクロクリスタリンワックスは、石油を原料として減圧蒸留残渣油または重質留出油から分離精製して製造される、常温において固体の飽和炭化水素である。
マイクロクリスタリンワックスとしては、潜熱量および入手性の点から、炭素数が30~60のものが好ましい。
【0033】
脂肪酸としては、相転移の温度が蓄熱材の使用温度として有用である点から、炭素数が8~30の脂肪酸が好ましい。
脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸および分岐不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、潜熱量が大きい点から、直鎖飽和脂肪酸が好ましい。
直鎖飽和脂肪酸としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸等が挙げられる。
脂肪酸金属塩としては、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、2-エチルヘキサン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0034】
脂肪酸エステルとしては、乳酸ブチル、乳酸エチル、オレイン酸メチル、コハク酸ジエチル、デカン酸エチル、デカン酸メチル、テトラデカン酸メチル、ヘキサデカン酸メチル、オクタデカン酸メチル、エイコサン酸メチル、ベヘン酸メチル、ドデカン酸ブチル、パルミチン酸n-ヘキサデシル、ステアリン酸ステアリル等が挙げられる。
脂肪族エーテルとしては、相転移の温度が蓄熱材の使用温度として有用である点から、炭素数が14~60の脂肪酸エーテルが好ましい。
脂肪族エーテルとしては、ヘプチルエーテル、オクチルエーテル、テトラデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル等が挙げられ、潜熱量が大きく、合成が容易である点から、酸素原子数が1つであり、対称構造を有するエーテルが好ましい。
脂肪族ケトンとしては、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、3-ノナノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、相転移の温度が蓄熱材の使用温度として有用である点から、炭素数が8~60の脂肪族アルコールが好ましい。
脂肪族アルコールとしては、潜熱量が大きい点から、1級アルコールが好ましい。
脂肪族アルコールとしては、2-ドデカノール、1-テトラデカノール、7-テトラデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、1,10-デカンジオール等が挙げられる。
【0035】
蓄熱用物質としては、飽和炭化水素からなるもの;または、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸もしくは脂肪酸金属塩との組み合わせが好ましい。
蓄熱用物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特定の温度における潜熱量を大きくする点からは、1種を単独で用いるまたは2種を併用することが好ましく、蓄熱材の使用温度範囲を広げる点からは、2種以上を併用することが好ましく、3種以上を併用することがより好ましい。
【0036】
コア部に含まれてもよい他の成分としては、樹脂、ゴム、フィラー、機能付与剤、不可避不純物等が挙げられる。
フィラーとしては、金属、金属化合物、炭素材料、ガラス、鉱物等が挙げられる。
機能付与剤としては、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、難燃化剤、加硫剤、加硫助剤、防菌・防カビ剤、分散剤、着色防止剤、発泡剤、防錆剤、重金属不活性化剤、融点調整剤(凝固点降下剤)等が挙げられる。
他の成分の含有量は、蓄熱用物質の100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、0質量部が特に好ましい。
【0037】
(シェル部)
シェル部は、特に限定されないが、ポリマーを含む又はからなることができる。シェル部は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
シェル部は、原料混合から硬化までの間で形状を維持する観点より、耐熱温度100℃以上が好ましく、耐熱温度150℃以上がさらに好ましい。ここで、耐熱温度とは、JIS規格(JIS S 2029)による耐熱性試験で得られる温度を示し、機能の異常又は著しい変形が生じた温度から10℃を引いた温度を意味する。
【0038】
上記シェル部を形成するポリマーとしては、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを含む又はからなることができる。
【0039】
シェル部に含まれてもよい上記ポリマー以外の他の成分としては、ゴム、フィラー、機能付与剤、不可避不純物等が挙げられる。
他の成分の含有量は、ポリマー100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、0質量部が特に好ましい。
【0040】
(最外層)
蓄熱粒子が有してもよい最外層は、蓄熱粒子に耐熱性、耐溶剤性、耐水性等の機能を付与する層である。
最外層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂の硬化物、無機化合物等が
挙げられる。
【0041】
(微小球体)
研磨層は、微小球体を更に含むことができる。
微小球体は、中空粒子とすることができる。微小球体は、上記蓄熱剤以外の成分とすることができる。
微小球体としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と当該外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未膨張の加熱膨張性微小球体、当該未膨張の加熱膨張性微小球体を、加熱膨張させた球体、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
微小球体の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、5~40μmが好ましく、7~30μmがより好ましく、10~20μmが最も好ましい。微小球体の平均粒径(D50)が上記数値範囲内であると、被研磨物をより精密に研磨することができる。上記平均粒径(D50、メディアン径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザー2000)を使用して測定することができる。
【0043】
上記ポリマー殻を形成するポリマーとしては、熱可塑性樹脂、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエーテルアクリライト、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及び有機シリコーン系樹脂、並びにそれらの樹脂を構成する単量体を2種以上組み合わせた共重合体(例えば、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体等)を用いることができる。これらのうち、本明細書に記載の効果を奏する点で、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体を用いることが好ましい。
また、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0044】
研磨層全体又は後述の硬化性樹脂組成物の硬化物全体に対する微小球体の含有量は、特に限定されないが、0.1~10重量%が好ましく、1~5重量%がより好ましく、2~4重量%が最も好ましい。微小球体の含有量が上記数値範囲内であると、研磨層の密度が均一化される。
研磨層全体又は後述の硬化性樹脂組成物の硬化物全体に対する微小球体の含有量は、未硬化の硬化性樹脂組成物全体に対する微小球体の含有量と等しいとみなすことができる。
【0045】
(開孔)
本実施形態の研磨パッドにおいて、研磨層の表面には、開孔が存在することができる。
研磨層の表面に存在する開孔は、特に限定されないが、上記蓄熱剤に起因する開孔、上記微小球体に起因する開孔、化学的発泡及び/又は機械的発泡により形成された開孔、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせとすることができる。これらのうちでも、上記蓄熱剤に起因する開孔と上記微小球体に起因する開孔との組み合わせとすることにより、研磨スラリーの保持能力が向上する。
研磨工程における温度条件が、蓄熱剤(蓄熱性物質)の融点以上であると、研磨時に、蓄熱剤が液状となり流れ出て、蓄熱剤により形成された開孔(上記カプセル型の蓄熱粒子を使用した場合は、残存するシェル部に対応する開孔)が残る。当該蓄熱剤により形成された開孔を蓄熱剤に起因する開孔とすることができる。
上記化学的発泡としては、例えば、水の添加によりイソシアネート化合物からの二酸化炭素の発生させる方法が挙げられる。上記機械的発泡としては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを発泡硬化性組成物に機械的に撹拌・混合する方法が挙げられる。
【0046】
研磨層の表面における平均開孔径は、特に限定されないが、5~20μmが好ましく、8~18μmがより好ましく、10~15μmが最も好ましい。平均開孔径が上記数値範囲内であることで、被研磨物をより精密に研磨することができる。
研磨層の表面における平均開孔径は、上記蓄熱剤の平均粒径(D50)、又は上記蓄熱剤の平均粒径(D50)及び上記微小球体の平均粒径(D50)の両方に対応したものとすることができる。
【0047】
上記の研磨層の表面における平均開孔径は、レーザーマイクロスコープを用いて得られた画像を、画像処理ソフトを用いて二値化処理することにより算出することができる。
【0048】
(研磨層)
本発明の研磨パッドは、研磨層を有する。研磨層は被研磨材料に直接接する位置に配置され、研磨パッドのその他の部分は、研磨パッドを支持するための材料、例えば、ゴムなどの弾性に富む材料で構成されてもよい。研磨パッドの剛性によっては、研磨層を研磨パッドとすることができる。
【0049】
本発明の研磨パッドは、研磨中における、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できることを除けば、一般的な研磨パッドと形状に大きな差異は無く、一般的な研磨パッドと同様に使用することができ、例えば、研磨パッドを回転させながら研磨層を被研磨材料に押し当てて研磨することもできるし、被研磨材料を回転させながら研磨層に押し当てて研磨することもできる。
【0050】
本発明の研磨パッドは、一般に知られたモールド成形、スラブ成形等の製造法より作製できる。
まずは、それらの製造法によりポリウレタン樹脂等の成形物として研磨層を直接成形し、支持体などに貼り合わせることによって製造される。または、それらの製造法によりポリウレタン樹脂等のブロックを形成し、ブロックをスライス等によりシート状として研磨層を成形し、支持体などに貼り合わせることによって製造される。あるいは支持体上に直接研磨層を成形することもできる。
【0051】
より具体的には、研磨層は、研磨層の研磨面とは反対の面側に両面テープが貼り付けられ、所定形状にカットされて、研磨パッドとなる。両面テープに特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープの中から任意に選択して使用することが出来る。また、研磨パッドは、研磨層のみからなる単層構造であってもよく、研磨層の研磨面とは反対の面側に他の層(下層、支持層)を貼り合わせた複層からなっていてもよい。
【0052】
研磨層は、ポリウレタン樹脂を更に含むことができる。
上記ポリウレタン樹脂は、特に限定されないが、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、及び上記蓄熱剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。
研磨層は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、及び上記蓄熱剤を含む硬化性樹脂組成物を調製し、当該硬化性樹脂組成物を発泡硬化させることによって成形することができる。
硬化性樹脂組成物は、例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含むA液と、硬化剤成分を含むB液とを混合して調製する2液型の組成物とすることもできる。それ以外の成分はA液に入れても、B液に入れてもよいが、不具合が生じる場合はさらに複数の液に分割して3液以上の液を混合して構成される組成物とすることができる。
【0053】
(イソシアネート末端ウレタンプレポリマー)
上記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られる生成物とすることができる。
【0054】
(ポリオール成分)
ポリオール成分としては、低分子量ポリオール、高分子量ポリオール、又はこれらの組み合わせを使用することができる。本明細書において、低分子量ポリオールとは数平均分子量が30~300であるポリオールであり、高分子量ポリオールとは数平均分子量が300を超えるポリオールである。
上記高分子量ポリオール及び上記低分子量ポリオールの数平均分子量は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に基づいてポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド(PEG/PEO)換算の分子量として測定することができる。
<測定条件>
カラム:Ohpak SB-802.5HQ(排除限界10000)+SB-803HQ (排除限界 100000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速:0.3ml/min (26kg/cm2)
オーブン:60℃
検出器:RI 40℃
試料量:20μl
【0055】
上記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0056】
上記高分子量ポリオールとしては、例えば、
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール;
エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール;
ポリカーボネートポリオール;
ポリカプロラクトンポリオール;又はそれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0057】
(ポリイソシアネート成分)
ポリイソシアネート成分としては、例えば、
m-フェニレンジイソシアネート、
p-フェニレンジイソシアネート、
2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、
2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、
ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、
ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、
3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、
3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、
キシリレン-1,4-ジイソシアネート、
4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、
プロピレン-1,2-ジイソシアネート、
ブチレン-1,2-ジイソシアネート、
シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、
シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、
p-フェニレンジイソチオシアネート、
キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、
エチリジンジイソチオシアネート、又はそれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。
この中でも、研磨特性の観点から、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)等のトリレンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0058】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのNCO当量(g/eq)としては、600未満が好ましく、350~550がより好ましく、400~500が最も好ましい。NCO当量(g/eq)が上記数値範囲内であることにより、研磨層が適切な硬度を示すことができる。なお、NCO当量(g/eq)とは、“(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]”で求められ、NCO基1個当たりのプレポリマーの分子量を示す数値である。
【0059】
(硬化剤)
硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤としては、例えば、以下に説明するアミン系硬化剤が挙げられる。
アミン系硬化剤を構成するポリアミンとしては、例えば、ジアミンが挙げられ、これには、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの脂肪族環を有するジアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)などの芳香族環を有するジアミン;2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン、特にヒドロキシアルキルアルキレンジアミン;又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。また、3官能のトリアミン化合物、4官能以上のポリアミン化合物も使用可能である。
【0060】
特に好ましいアミン系硬化剤は、上述したMOCAであり、このMOCAの化学構造は、以下のとおりである。
【0061】
【0062】
硬化剤全体の量は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのNCOのモル数に対する、硬化剤の活性水素基(NH2など)のモル数の比率(活性水素基のモル数/NCOのモル数)が、好ましくは0.70~1.10、より好ましくは0.80~1.00、最も好ましくは0.85~0.95となる量を用いる。
【0063】
(その他の成分)
その他に当業界で一般的に使用される触媒などを硬化性樹脂組成物に添加しても良い。
また、上述したポリイソシアネート成分を硬化性樹脂組成物に後から追加で添加することもでき、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと追加のポリイソシアネート成分との合計重量に対する追加のポリイソシアネート成分の重量割合は、0.1~10.0重量%が好ましく、0.5~8.0重量%がより好ましく、1.0~5.0重量%が特に好ましい。
ポリウレタン樹脂硬化性組成物に追加で添加するポリイソシアネート成分としては、上述のポリイソシアネート成分を特に限定なく使用することができるが、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)が好ましい。
【0064】
2.研磨パッドの製造方法
本発明の研磨パッドの製造方法は、
上記1.に記載の研磨パッドの製造方法であって、
(a)前記蓄熱剤を含む硬化性樹脂組成物を準備する工程、
(b)前記硬化性樹脂組成物を型に注入する工程、及び
(c)前記型内において前記硬化性樹脂組成物を硬化させる工程
を含む、前記研磨パッドの製造方法。
【0065】
上記蓄熱剤、硬化性樹脂組成物の組成、含有量等の各特徴は、上記の1.に記載の各特徴と同様のものとすることができる。
【0066】
工程(a)は、上記蓄熱剤、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、及び硬化剤を混合する工程を含むことができる。上記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤は、上記1.で述べたイソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤と同様のものとすることができる。
【0067】
工程(b)の際の型の温度は、注型する前に硬化性樹脂組成物が硬化することを防ぐために、100℃以下又は90℃以下とすることが好ましい。
【0068】
後述する実施例1~3のように、工程(b)を型の内部で行う一次硬化の工程とすることができ、また、当該一次硬化の工程の後、形成した樹脂発泡体を型から抜き出し、当該樹脂発泡体を二次硬化させることもできる。この場合でも、得られる研磨パッドの開孔は工程(b)(一次硬化)において形成されるため、工程(b)における条件により研磨パッドの開孔の特徴が主に決まる。
【0069】
上記一次硬化の工程の温度条件は、特に限定されないが、75~100℃が好ましく、75~95℃がより好ましく、75~92℃が最も好ましい。上記一次硬化の工程の時間は、特に限定されないが、5分~1時間が好ましく、5分~40分がより好ましく、10分~30分が最も好ましい。
上記二次硬化の工程の温度条件は、特に限定されないが、80~140℃が好ましく、90~130℃がより好ましく、100~120℃が最も好ましい。上記二次硬化の工程の時間は、特に限定されないが、1~6時間が好ましく、1~5時間がより好ましく、1~4時間が最も好ましい。なお、二次硬化の際には、蓄熱粒子は硬化された樹脂中に存在するため、二次硬化の温度がシェル部の耐熱温度を超えても蓄熱粒子に変形等生じる可能性は低いが、二次硬化の温度をシェル部の耐熱温度以下とするのがより好ましい。
【0070】
工程(c)において、型内において硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られた硬化物をそのまま研磨層として使用してもよい。この場合、型の形状を研磨層に対応させたものとする必要があり、本実施形態の方法は、硬化性樹脂組成物の硬化物を加工して研磨層を成形する工程を含まない。このような研磨層を成形する工程を含まないものとすることにより、後述のように当該工程の実施中に蓄熱剤が液状になって漏出する恐れがなくなるため、好ましい。
一方、工程(c)は、型内での硬化により得られた硬化性樹脂組成物の硬化物を加工して研磨層を成形する工程を更に含むこともできる。このような成形工程の例として、ブロック形状の硬化物をスライス(切断)して研磨層を得る成形方法(スライス工程)が挙げられる。このような硬化物を加工して研磨層を成形する工程を実施する場合、蓄熱剤が液状になって漏出しないように、蓄熱剤の融点未満の温度で行うことが好ましい。
【0071】
本発明の研磨パッドの製造方法により、上述の1.の研磨パッドを得ることができる。
【0072】
3.光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
本発明の光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法は、
蓄熱剤を含む研磨層を有する研磨パッドを使用して、前記蓄熱剤の融点以上の温度条件下において光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む。
【0073】
上記蓄熱剤の組成、含有量、融点、研磨層、研磨パッド等の各特徴は、上記の1.に記載の各特徴と同様のものとすることができる。
【0074】
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程における温度条件は、蓄熱剤の融点以上である。これにより、研磨時に、蓄熱剤が液状となり、研磨層表面の開孔からスラリーと共に流れ出るために、研磨へ悪影響を及ぼさずに精密な研磨が可能となる。また、上記温度条件が蓄熱剤の融点以上であることにより、研磨時に、蓄熱剤が液状となり流れ出て、蓄熱剤により形成された開孔(上記カプセル型の蓄熱粒子を使用した場合は、残存するシェル部に対応する開孔)が残り、当該開孔によってより精密な研磨が可能となる。
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程における温度条件は、特に限定されないが、0~50℃が好ましく、15~45℃がより好ましく、25~40℃が最も好ましい。温度条件が上記数値範囲内であることにより、研磨へ悪影響を及ぼさずに精密な研磨が可能となる。
【0075】
本実施形態の光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法において、研磨パッドとして上記1.に記載の研磨パッドを使用できる。
【0076】
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法における研磨層の断面の状態を示す模式図の一例を
図2に示す。
研磨層には、蓄熱性物質22をその内部に含むマイクロカプセル21及び微小球体(中空粒子)30が含まれる。
【0077】
図2(a)は、マイクロカプセル21が研磨面に露出する前の状態を示し、
図2(b)は、マイクロカプセル21が研磨面に露出した直後の状態を示し、
図2(c)は、マイクロカプセル21が研磨面に露出したから十分に時間が経過した後の状態を示す。被研磨物を研磨パッドにより研磨していくと研磨層の表面が摩耗していくため、研磨が進むにつれ、
図2(a)、(b)、及び
図2(c)の順に研磨層の状態は変化していく。
【0078】
図2(b)に示すように、研磨の進行により、研磨面に発生した研磨熱は、マイクロカプセル21内の蓄熱性物質22に吸熱される(
図2(b)及び(c)のA)。研磨する工程における温度条件が、蓄熱剤(蓄熱性物質)の融点以上であると、研磨時に、蓄熱剤が液状となり、研磨層表面の開孔からスラリーと共に流れ出るために、研磨へ悪影響を及ぼさずに精密な研磨が可能となり、また、蓄熱剤により形成された開孔(上記カプセル型の蓄熱粒子を使用した場合は、残存するシェル部に対応する開孔)が残り、当該開孔によってより精密な研磨が可能となる(
図2(b)のB)。
本実施形態の光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法において、上記の光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程は、研磨を進行させて研磨層の表面に蓄熱剤又は上記蓄熱粒子を露出させる工程、蓄熱剤又は上記蓄熱粒子中の蓄熱性物質を溶融させて液状とし蓄熱剤に起因する開孔又は上記シェル部に対応する開孔を研磨層に形成する工程、蓄熱剤に起因する開孔又は上記シェル部に対応する開孔により研磨を行う工程、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせを含む又はからなることができる。
【0079】
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法は、特に限定されないが、研磨パッドの表面、光学材料若しくは半導体材料の表面、又はそれらの両方にスラリーを供給する工程を更に含むことができる。
【0080】
(スラリー)
スラリーに含まれる液体成分としては、特に限定されないが、水(純水)、酸、アルカリ、有機溶剤、又はそれらの組み合わせが挙げられ、被研磨物の材質や所望の研磨条件等によって選択される。スラリーは、水(純水)を主成分とすることが好ましく、スラリー全体に対して、水を80重量%以上含むことが好ましい。スラリーに含まれる砥粒成分としては、特に限定されないが、シリカ、珪酸ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。スラリーは、液体成分に可溶な有機物やpH調整剤等、その他の成分を含有していてもよい。
【実施例0081】
本発明を以下の例により実験的に説明するが、以下の説明は、本発明の範囲が以下の例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0082】
(材料)
後述の実施例1~3及び比較例1で使用した材料を以下に列挙する。
【0083】
・イソシアネート末端ウレタンプレポリマー:
プレポリマー(1)・・・ポリイソシアネート成分として、2,4-トリレンジイソシアネートを含み、高分子量ポリオール成分として、数平均分子量が650であるポリテトラメチレンエーテルグリコール及び数平均分子量が1000であるポリテトラメチレンエーテルグリコールを含み、低分子量ポリオール成分として、ジエチレングリコールを含む、NCO当量455のウレタンプレポリマー
【0084】
・硬化剤:
MOCA・・・3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(MOCA)(NH2当量=133.5)
【0085】
・蓄熱剤:
蓄熱剤(1)・・・PMCD-28(三木理研工業株式会社)(蓄熱用物質を含むコア部と、シェル部とを有する蓄熱粒子、蓄熱用物質:パラフィン、シェル部:メラミン、蓄熱用物質の融点:約28℃、平均粒径(D50):2~10μm、スラリー状、蓄熱成分:約30重量%、イオン性:アニオン)
蓄熱剤(2)・・・AMC-28SP(三木理研工業株式会社)(蓄熱用物質を含むコア部と、シェル部とを有する蓄熱粒子、蓄熱用物質:パラフィン、シェル部:アクリル、蓄熱用物質の融点:約28℃、平均粒径(D50):約5μm、パウダー状、蓄熱成分:約65重量%)
【0086】
・微小球体:
微小球体(1)・・・Expancel(登録商標)461DU20(日本フィライト株式会社)(未膨張タイプ、未膨張の状態での平均粒径(D50):6~9μm、膨張開始温度:100~106℃、最大膨張温度:143~151℃、シェル組成:アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体)
【0087】
(実施例1)
A成分としてプレポリマー(1)を100g、B成分として、硬化剤であるMOCAを26.3g、C成分として蓄熱剤(1)を4.0g、D成分として微小球体(1)を2.7g、それぞれ準備した。なお、各成分の比率を示すためにg表示として記載しているが、成形物の大きさに応じて必要な重量(部)を準備すれば良い。以下同様にg(部)表記で記載する。
A成分、C成分、及びD成分を混合し、得られたA成分、C成分、及びD成分の混合物を減圧脱泡した。また、B成分であるMOCAを減圧脱泡した。脱泡したA成分、C成分、及びD成分の混合物及び脱泡したB成分を混合機に供給し、成分A~Dの混合液を得た。
なお、得られた成分A~Dの混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNH2のモル数の比率(NH2のモル数/NCOのモル数)は0.9である。また、上記混合液全体に対するC成分である蓄熱剤(1)の含有量は3重量%であり、上記混合液全体に対するD成分である微小球体(1)の含有量は2重量%である。
得られた成分A~Dの混合液を、80℃に加熱した型枠(直径800mmの円形の形状、深さ1.3mm)に注型した。注型後、95℃で20分の条件にて、型枠内の上記混合液を一次硬化させ、樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体を型枠から抜き出し、オーブンにて100℃で4時間、二次硬化した。得られた樹脂発泡体(直径800mmの円形の形状、厚さ1.3mm)(研磨層に相当)の裏面に両面テープを貼り付け、研磨パッドとした。
【0088】
(実施例2)
C成分として蓄熱剤(1)4.0gの代わりに蓄熱剤(2)4.0gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂発泡体を作製し、実施例2の研磨パッドを得た。
なお、得られた成分A~Dの混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNH2のモル数の比率(NH2のモル数/NCOのモル数)は0.9である。また、上記混合液全体に対するC成分である蓄熱剤(2)の含有量は3重量%であり、上記混合液全体に対するD成分である微小球体(1)の含有量は2重量%である。
【0089】
(実施例3)
C成分である蓄熱剤(2)4.0g及びD成分である微小球体(1)2.7gの代わりに、C成分である蓄熱剤(2)3.9gのみを使用した以外は、実施例2と同様にして、樹脂発泡体を作製し、実施例3の研磨パッドを得た。
なお、得られた成分A、B、及びCの混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNH2のモル数の比率(NH2のモル数/NCOのモル数)は0.9である。また、上記混合液全体に対するC成分である蓄熱剤(2)の含有量は3重量%である。
【0090】
(比較例1)
C成分である蓄熱剤(1)4.0g及びD成分である微小球体(1)2.7gの代わりに、D成分である微小球体(1)3.9gのみを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂発泡体を作製し、比較例1の研磨パッドを得た。
なお、得られた成分A、B、及びDの混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNH2のモル数の比率(NH2のモル数/NCOのモル数)は0.9である。また、上記混合液全体に対するD成分である微小球体(1)の含有量は3重量%である。
【0091】
(評価方法)
実施例1~3及び比較例1それぞれの研磨パッドについて、以下の(1)研磨レート変動率、及び(2)研磨面温度の各測定を行った。測定結果を以下の表1に示す。
【0092】
(1)全ウエハの平均研磨レート及び研磨レート変動率
研磨パッドについて、下記の(研磨試験)に記載の研磨条件に基づいて、被研磨物であるTEOS付きシリコンウエハ100枚の研磨を行い、ウエハごとに研磨レート(Å)を以下のように測定した。
<研磨レートの測定>:研磨試験前後のTEOS付きシリコンウエハについて、ウエハ上の直径方向で測定を実施し、それらの箇所における研磨試験前後の厚みを測定した。測定した厚みに基づいて、研磨試験前の厚みの平均値及び研磨試験後の厚みの平均値を算出し、これらの平均値の差をとることにより研磨された厚みの平均値を算出し、当該平均値をウエハごとの平均研磨レート(Å)とした。また、ウエハごとの平均研磨レート(Å)(100個)を平均することにより、全ウエハの平均研磨レート(Å)(Rave)を算出した。さらに、ウエハごとの平均研磨レート(Å)(100個)のうちから最大値(Rmax)及び最小値(Rmin)を選定した。なお、厚み測定は、4探針シート抵抗測定装置(KLAテンコール社製、商品名「RS-200」、測定:DBSモード)にて測定した。
そして、以下の式(1)に基づいて、研磨レート変動率(%)を算出した。
【0093】
【0094】
(研磨試験)
使用研磨機:F-REX300X(荏原製作所社製)
Disk:A188(3M社製)
リテーナリング:リテーナリングGXKD(荏原製作所製)
研磨定盤回転数:90rpm
研磨ヘッド回転数:81rpm
研磨圧力:3.2psi
研磨スラリー:PL-6115(フジミコーポレーション製)
研磨スラリー流量:200ml/min
研磨時間:60秒
被研磨物:TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)付きシリコンウエハ(直径300mmの円盤状)
パッドブレーク:32N 20分
コンディショニング: In-situ 18N 16スキャン、Ex-situ 32N 4スキャン
【0095】
(2)研磨面温度
上記「(1)研磨レート」におけるTEOS付きシリコンウエハ100枚の研磨を行う際に、研磨機に備え付けられた放射温度計(荏原製作所社製)により、研磨パッドの研磨層の表面温度を継続して測定した。そして、得られた研磨層の表面温度の平均値を算出し、研磨層の研磨面温度とした。
【0096】
【0097】
実施例1~3は、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤を含む研磨層を有する研磨パッドに関する。一方、比較例1は、イソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤を含まない研磨層を有する研磨パッドに関する。
表1の結果より、実施例1~3の研磨パッドは、研磨レート変動率が小さく、研磨面温度が低いことがわかった。
一方、比較例1の研磨パッドは、研磨レート変動率が大きく、研磨面温度が高いことがわかった。
上記の結果は実施例1~3の研磨パッドの研磨層に含まれる蓄熱剤の吸熱効果によるものと考えられ、吸熱効果により研磨面温度の上昇が抑制され、結果として比較例1の研磨パッドと比較して研磨レート変動率の変動幅を小さく抑えることができた。
また、実施例1~3の研磨パッドの全ウエハの平均研磨レートは、比較例1の研磨パッドの全ウエハの平均研磨レートと大きく変わらない値となっており、蓄熱剤がスラリー中に流れ出すことによる研磨レートへの影響はほとんどないことが分かった。
【0098】
以上の結果より、本発明のイソシアネート基、水酸基、及びアミノ基に対して不活性である蓄熱剤を含む研磨層を有する研磨パッドは、研磨中における、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できることがわかった。また、当該研磨パッドは、研磨層の研磨面温度の上昇を抑制できることに加え、研磨中における研磨レートを維持できる(研磨レートの変動を抑制できる)ことがわかった。