(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141178
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】軒樋取付具の取付構造、軒樋取付具、及び軒樋取付具用調整板
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04D13/072 501R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052675
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】高木 慎一
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏秀
(57)【要約】
【課題】位置決めが容易で、簡便な構造で、軒樋吊り具と調整板を一体化できる軒樋取付具の取付構造、軒樋取付具、及び軒樋取付具用調整板を提供する。
【解決手段】屋根1の勾配に対して垂下した傾斜鼻隠し板2に固定される軒樋取付具3の取付構造であって、軒樋取付具3は、軒樋4を吊り下げる軒樋吊り具本体5と、傾斜鼻隠し板2に固定されると共に傾斜鼻隠し板2に沿って傾斜した傾斜固定板部6とを有する軒樋吊り具7、及び、傾斜固定板部6と傾斜鼻隠し板2との間に介在されて勾配誤差を調整するための調整板8を備え、調整板8の中間部の左右にある弾性突起片9を傾斜固定板部6の中間部の左右にある挿入孔10に係合させて、軒樋吊り具7と調整板8とが一体化した状態において、傾斜鼻隠し板2への取り付けがされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根勾配に対して垂下した傾斜鼻隠し板に固定される軒樋取付具の取付構造であって、前記軒樋取付具は、軒樋を吊り下げる軒樋吊り具本体と、前記傾斜鼻隠し板に固定されると共に傾斜鼻隠し板に沿って傾斜した傾斜固定板部とを有する軒樋吊り具、及び、前記傾斜固定板部と前記傾斜鼻隠し板との間に介在されて勾配誤差を調整するための調整板を備え、前記調整板の中間部の左右にある弾性突起片を前記傾斜固定板部の中間部の左右にある挿入孔に係合させて、前記軒樋吊り具と前記調整板とが一体化した状態において、前記傾斜鼻隠し板への取り付けがされていることを特徴とする軒樋取付具の取付構造。
【請求項2】
前記調整板は、前後方向の厚みが一端部側を厚く且つ他端部側ほど次第に薄くなるように、後面に対して前面が傾斜しており、前記調整板の厚肉側の一端部を上、薄肉側の他端部を下にすることでマイナス勾配誤差を吸収する使用状態を特徴とする、請求項1に記載の軒樋取付具の取付構造。
【請求項3】
軒樋を吊り下げる軒樋吊り具本体と、傾斜鼻隠し板に固定されると共に傾斜鼻隠し板に沿って傾斜した傾斜固定板部とを有する軒樋吊り具、及び、前記傾斜固定板部と前記傾斜鼻隠し板との間に介在されて勾配誤差を調整するための調整板を備えた軒樋取付具であって、前記調整板の中間部の左右にある弾性突起片を前記傾斜固定板部の中間部の左右にある挿入孔に係合させて、前記軒樋吊り具と前記調整板とを一体化させることを特徴とする軒樋取付具。
【請求項4】
軒樋取付具に設けられた軒樋吊り具の傾斜固定板部と、傾斜鼻隠し板との間に介在されて勾配誤差を調整するための軒樋取付具用調整板であって、前記調整板は、前後方向の厚みが一端部側を厚く且つ他端部側ほど次第に薄くなるように、後面に対して前面が傾斜しており、前記調整板の中間部の左右に、前記傾斜固定板部の中間部の左右にある挿入孔に係合可能な弾性突起片が突設されていることを特徴とする軒樋取付具用調整板。
【請求項5】
前記調整板の弾性突起片の形状をテーパー状としたことを特徴とする請求項4に記載の軒樋取付具用調整板。
【請求項6】
前記調整板の弾性突起片の先端に係合用突起を設けたことを特徴とする請求項4又は5に記載の軒樋取付具用調整板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の軒先に軒樋を吊り下げるために用いる軒樋取付具の取付構造、軒樋取付具、及び勾配誤差を調整するための軒樋取付具用調整板に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の軒先には、屋根面から流れ落ちる雨水を受けるための軒樋が軒先に沿って敷設されている。
その軒樋を吊り下げるための軒樋取付具は、建物の軒先に配設された鼻隠し板の表面に当接して釘などの固定具により固定される固定板部の表面に、軒樋の前壁および後壁の上端に設けられた耳部などに係合して軒樋を支持する吊り具本体が突設されたものが一般的である。このような軒樋取付具は、金属製のものばかりでなく、ポリカーボネートなどの耐候性の高い樹脂などから形成され、軽量化が図られている。
【0003】
しかしながら、軒樋取付具は材料的にも強固であり、軒樋吊り具本体と固定板部との角度を変えることはできない。鼻隠し板は、鉛直方向またはほぼ鉛直と見なすことのできる略鉛直方向に配置されるばかりでなく、屋根勾配に対して直角または略直角に垂下し、勾配が付いて配置されることもあり、このように勾配が付いている鼻隠し板の場合、軒樋を軒先に沿って水平に取り付けるためには、軒樋吊り具本体と固定板部との角度を変え、調整する必要があるが、施工現場において軒樋吊り具本体と固定板部との角度を変えることはできない。
【0004】
そこで、鼻隠し板に勾配が付いている場合、軒樋吊り具本体において軒樋を軒先に沿って水平に取り付けるために、軒樋吊り具とは別に、傾斜鼻隠し板の勾配に対応して厚みが上端から下端に向かって漸増する補助部材を設けることにより、裏面を鼻隠し板の表面に当接させて、補助部材の表面を鉛直または略鉛直方向に配置させて、軒樋吊り具の固定部を鉛直または略鉛直に配置することが行われている(特許文献1~3参照)。
【0005】
特許文献1には、「鉛直または略鉛直方向に配置される固定部の表面に、軒樋と係合して軒樋を支持する吊部が突設された吊具本体と、この吊具本体とは別体とされた、板状の補助部材を有する軒樋支持具であって、吊具本体の固定部には挿入孔が形成され、補助部材は、鉛直または略鉛直方向に配置可能な表面と鼻隠し板表面に当接可能な裏面とを有し、厚みが上端から下端に向かって漸増する形状であるとともに長孔が形成され、補助部材の上端に、吊具本体の固定部上端部に弾性的に係合可能な弾性保持片が突設され、吊具本体の固定部上端部に補助部材の弾性保持片が固定部の厚み方向に弾性的に係合し、吊具本体が補助部材に保持されて一体化され、吊具本体と補助部材とが一体化した状態において、吊具本体の固定部の挿入孔と補助部材の長孔とが対向し、この挿入孔と長孔とを貫通する固定具によって鼻隠し板への取り付けが可能とされていることを特徴とする軒樋支持具。」(請求項1)が記載されている。
【0006】
特許文献2には、「・・・補助部材上端部の左右両側端に、吊具本体の固定部の側端部に弾性的に係合可能な弾性保持片が突設され、吊具本体の固定部上端部の左右両側端部に補助部材の弾性保持片が弾性的に係合し、吊具本体が補助部材に保持されて一体化するとともに、吊具本体と補助部材とが一体化した状態において、吊具本体の固定部の挿入孔と補助部材の長孔とを貫通する固定具によって鼻隠し板への取り付けが可能とされていることを特徴とする軒樋支持具。」(請求項1)が記載されている。
【0007】
特許文献3には、「・・・補助部材の上下両端部の左右両側端に、吊具本体の固定部の側端部に弾性的に係合可能な弾性保持片が突設され、吊具本体の固定部上端部の左右両側端部に補助部材の弾性保持片が弾性的に係合し、吊具本体が補助部材に保持されて一体化し、補助部材の上下反転配置によっても弾性保持片が弾性的に係合し、吊具本体が補助部材に保持されて一体化するとともに、吊具本体と補助部材とが一体化した状態において、吊具本体の固定部の挿入孔と補助部材の長孔とを貫通する固定具によって鼻隠し板への取り付けが可能とされていることを特徴とする軒樋支持具。」(請求項1)が記載されている。
【0008】
一方、屋根勾配や傾斜鼻板(鼻隠し板)等に勾配誤差が生じている場合において、軒樋を水平姿勢で施工するために、1種類の角度調整用座板(補助部材)を利用してプラス誤差又はマイナス誤差を選択して吸収する軒樋保持具の取付構造が公知である(特許文献4)。
特許文献4には、「屋根勾配に対して直角に垂下した傾斜鼻板に対して軒樋吊り具が固定され、軒樋吊り具は、軒樋を水平姿勢で吊り下げる軒樋吊り具本体と、上記傾斜鼻板に固定されると共に傾斜鼻板と平行に傾斜した傾斜固定板部と、傾斜固定板部と傾斜鼻板との間に介在されて屋根勾配や傾斜鼻板等の勾配誤差を調整するための角度調整用座板とを備え、上記角度調整用座板は、前後方向の厚みを一端部側が厚く且つ他端部側ほど次第に薄くなるように、後面に対して前面が傾斜しており、角度調整用座板の厚肉側の一端部を上、薄肉側の他端部を下にすることでマイナス誤差を吸収する第1の使用状態と、角度調整用座板を上下反転して薄肉側の他端部を上、厚肉側の一端部を下にすることでプラス誤差を吸収する第2の使用状態とを選択可能としたことを特徴とする軒樋保持具の取付構造。」(請求項1)、「上記角度調整用座板の前面の対角方向に位置する2つのコーナー部に一対の嵌合凹部を設けると共に、上記軒樋吊り具の傾斜固定板部の外周部に、傾斜固定板部を角度調整用座板の前面中心と直交する軸廻りに回転させることで上記一対の嵌合凹部に各々嵌合する一対の嵌合凸部を設けたことを特徴とする請求項1記載の軒樋保持具の取付構造。」(請求項2)、「上記角度調整用座板の前面の上下両端部に、横方向に開口し且つ互いに対向する一対の嵌合溝を設け、上記軒樋吊り具の傾斜固定板部の上下両端部を横方向から上下一対の嵌合溝にスライド嵌合させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の軒樋保持具の取付構造。」(請求項3)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5107734号公報
【特許文献2】特許第5275636号公報
【特許文献3】特許第5129590号公報
【特許文献4】特許第4735553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3に記載された軒樋支持具(軒樋取付具)は、軒樋吊具本体において軒樋を軒先に沿って水平に取り付けることができるが、補助部材の上端に弾性保持片を突設して、吊具本体の固定部上端部に補助部材の弾性保持片を係合するか、補助部材上端部の左右両側端、又は、補助部材の上下両端部の左右両側端に弾性保持片を突設して、吊具本体の固定部上端部の左右両側端部に補助部材の弾性保持片を係合するものであり、位置決めが難しいという課題があった。
また、特許文献4に記載された軒樋保持具(軒樋取付具)は、角度調整用座板(調整板)により、プラス誤差又はマイナス誤差を選択して吸収することができるが、角度調整用座板を、軒樋吊り具の傾斜固定板部に対して、上下反転させるために、角度調整用座板の対角コーナー部に嵌合凹部を設けるか、角度調整用座板の上下両端部に開口した嵌合溝を設けるといった複雑な構造を採用しなければならないという課題があった。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、位置決めが容易で、簡便な構造で、軒樋吊り具と調整板(補助部材)を一体化できる軒樋取付具の取付構造、軒樋取付具、及び軒樋取付具用調整板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)屋根勾配に対して垂下した傾斜鼻隠し板に固定される軒樋取付具の取付構造であって、前記軒樋取付具は、軒樋を吊り下げる軒樋吊り具本体と、前記傾斜鼻隠し板に固定されると共に傾斜鼻隠し板に沿って傾斜した傾斜固定板部とを有する軒樋吊り具、及び、前記傾斜固定板部と前記傾斜鼻隠し板との間に介在されて勾配誤差を調整するための調整板を備え、前記調整板の中間部の左右にある弾性突起片を前記傾斜固定板部の中間部の左右にある挿入孔に係合させて、前記軒樋吊り具と前記調整板とが一体化した状態において、前記傾斜鼻隠し板への取り付けがされていることを特徴とする軒樋取付具の取付構造。
(2)前記調整板は、前後方向の厚みを一端部側が厚く且つ他端部側ほど次第に薄くなるように、後面に対して前面が傾斜しており、前記調整板の厚肉側の一端部を上、薄肉側の他端部を下にすることでマイナス勾配誤差を吸収する使用状態を特徴とする、前記(1)の軒樋取付具の取付構造。
(3)軒樋を吊り下げる軒樋吊り具本体と、傾斜鼻隠し板に固定されると共に傾斜鼻隠し板に沿って傾斜した傾斜固定板部とを有する軒樋吊り具、及び、前記傾斜固定板部と前記傾斜鼻隠し板との間に介在されて勾配誤差を調整するための調整板を備えた軒樋取付具であって、前記調整板の中間部の左右にある弾性突起片を前記傾斜固定板部の中間部の左右にある挿入孔に係合させて、前記軒樋吊り具と前記調整板とを一体化させることを特徴とする軒樋取付具。
(4)軒樋取付具に設けられた軒樋吊り具の傾斜固定板部と、傾斜鼻隠し板との間に介在されて勾配誤差を調整するための軒樋取付具用調整板であって、前記調整板は、前後方向の厚みが一端部側を厚く且つ他端部側ほど次第に薄くなるように、後面に対して前面が傾斜しており、前記調整板の中間部の左右に、前記傾斜固定板部の中間部の左右にある挿入孔に係合可能な弾性突起片が突設されていることを特徴とする軒樋取付具用調整板。
(5)前記調整板の弾性突起片の形状をテーパー状としたことを特徴とする前記(4)の軒樋取付具用調整板。
(6)前記調整板の弾性突起片の先端に係合用突起を設けたことを特徴とする前記(4)又は(5)の軒樋取付具用調整板。
【発明の効果】
【0013】
本発明の軒樋取付具とその取付構造においては、軒樋吊り具と勾配誤差を調整するための調整板を一体化するために、前記調整板の中間部の左右にある弾性突起片を、軒樋吊り具の傾斜固定板部の中間部の左右にある挿入孔に係合させる構造であるから、位置決めが容易で、簡便な構造にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る軒樋取付具の取付構造を示す概略図である
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る軒樋取付具の主要部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る軒樋取付具用調整板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る軒樋取付具の取付構造、軒樋取付具、及び軒樋取付具用調整板について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0016】
(軒樋取付具の取付構造)
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る軒樋取付具3の取付構造は、屋根1の勾配に対して垂下した傾斜鼻隠し板2に固定され、軒樋4を吊り下げる軒樋吊り具本体5と、傾斜鼻隠し板2に固定されると共に傾斜鼻隠し板2に沿って傾斜した傾斜固定板部6とを有する軒樋吊り具7、及び、傾斜固定板部6と傾斜鼻隠し板2との間に介在されて勾配誤差を調整するための調整板8を備える。
【0017】
本実施形態においては、
図1に示されるように、傾斜鼻隠し板2は、屋根1の勾配に対して略直角に垂下したものであり、鉛直に対して大きく傾斜しているが、上記のように略直角に垂下させる代わりに、鉛直に近い形で垂下させる場合もあり得る。
傾斜固定板部6は、傾斜鼻隠し板2に沿って傾斜したものであるが、略平行に傾斜したものである。傾斜固定板部6と傾斜鼻隠し板2との間には、屋根1の勾配や傾斜鼻隠し板6等の勾配誤差を調整するための調整板8が介在し、後述するように、調整板は、通常、前後方向の厚みが一端部8a側を厚く且つ他端部8b側ほど次第に薄くなるように傾斜しているから、傾斜した分だけ平行からずれている。
【0018】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る軒樋取付具3の取付構造は、調整板8の中間部の左右にある弾性突起片9を傾斜固定板部6の中間部の左右にある挿入孔10に係合させて、軒樋吊り具7と調整板8とが一体化した状態において、傾斜鼻隠し板2への取り付けがされている。
【0019】
前記軒樋取付具3の取付構造は、調整板8が、前後方向の厚みが一端部8a側を厚く且つ他端部8b側ほど次第に薄くなるように、後面8dに対して前面8cが傾斜しており、調整板8の厚肉側の一端部8aを上、薄肉側の他端部8bを下にすることでマイナス勾配誤差を吸収する使用状態とすることが好ましい。
調整板8の一端部8aと他端部8bを逆に取り付けることで、プラス勾配誤差を吸収する使用状態とすることもできる。
【0020】
上記のような構成とすることで、屋根1の勾配や傾斜鼻板2に、軒樋4を軒樋吊り具7により水平姿勢で取り付けられないような勾配誤差が生じている場合に、調整板8によるプラス勾配誤差を吸収する使用状態とマイナス勾配誤差を吸収する使用状態とを選択することにより、プラス、マイナスの勾配誤差に対応でき、軒樋4を水平姿勢で取り付けることができる。
【0021】
(軒樋取付具の取付方法)
本実施形態においては、
図3に示すように、調整板8には、上部及び下部の左右両側に4個、上部の中央に1個、釘、ビスなどの固定具の挿入孔11が表裏を貫通して形成されている。
図2に一部が示されているように、軒樋吊り具7の傾斜固定板部6には、調整板8に形成された挿入孔11に対向する上部及び下部の左右両側、上部の中央に、挿入孔12が表裏を貫通して形成されている。
固定具の挿入孔の数は、適宜設定することができ、挿入孔12を通じて挿入される釘、ビスなどの固定具は、挿入孔11を通じて、傾斜鼻隠し板2に向けて貫通可能にされている。
【0022】
上記のように、軒樋取付具3は、別体とされた軒樋吊り具7と調整板8とを備えながらも、一体化した状態において鼻隠し板2に釘、ビスなどの固定具を用いて固定し、取り付けることができる。
【0023】
(軒樋取付具)
本実施形態に係る軒樋取付具3は、
図1に示すように、軒樋4を吊り下げる軒樋吊り具本体5と、傾斜鼻隠し板2に固定されると共に傾斜鼻隠し板2に沿って傾斜した傾斜固定板部6とを有する軒樋吊り具7、及び、傾斜固定板部6と傾斜鼻隠し板2との間に介在されて勾配誤差を調整するための調整板8を備えたものである。
【0024】
前記軒樋吊り具7は、傾斜固定板部6の表面に、軒樋吊り具本体5が突設されたものである。軒樋吊り具本体5は、傾斜固定板部6の表面に突設された軒樋吊り具本体の上側部材5aの下部に、軒樋4の前壁および後壁の上端に設けられた耳部などに係合する係合部を有する軒樋吊り具本体の下側部材5bがネジにより一体化されたものとすることもできる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、前記軒樋取付具3は、前記調整板8の中間部の左右にある弾性突起片9を傾斜固定板部6の中間部の左右にある挿入孔10に係合させて、軒樋吊り具7と調整板8とを一体化させることを特徴とする。
調整板8の弾性突起片9の先端に、
図3に示されるような係合用突起9aを設けて、傾斜固定板部6の挿入孔10に係合させることにより、外れることが防止され、軒樋吊り具7と調整板8とを確実に一体化することができる。
【0026】
(軒樋取付具用調整板)
本実施形態に係る軒樋取付具用の調整板8は、
図3に示すように、軒樋取付具3に設けられた軒樋吊り具7の傾斜固定板部6と、傾斜鼻隠し板2との間に介在されて勾配誤差を調整するための軒樋取付具用の調整板8であって、調整板8は、前後方向の厚みが一端部8a側を厚く且つ他端部8b側ほど次第に薄くなるように、後面8dに対して前面8cが傾斜しており、調整板8の中間部の左右に、傾斜固定板部6の中間部の左右にある挿入孔10に係合可能な弾性突起片9が突設されている。
【0027】
図3において、調整板8の縦方向の中間部の左右にある弾性突起片9は、縦方向の中央よりもやや上部にあるが、中央部としてもよい。傾斜固定板部6の縦方向の中間部の左右にある挿入孔10は、調整板8の縦方向の中間部の左右にある弾性突起片9を挿入するために、対応する位置に設ける。
調整板の弾性突起片9、傾斜固定板部6の挿入孔10を、縦方向の中央部の左右に設けた場合は、調整板8の厚肉側の一端部8aを上、薄肉側の他端部8bを下にすることでマイナス勾配誤差を吸収する使用状態とすることができ、また、逆にして、すなわち、調整板8の薄肉側の他端部8bを上、厚肉側の一端部8aを下にすることでプラス勾配誤差を吸収する使用状態とすることもできる。
【0028】
図3に示すように、調整板8の弾性突起片9の形状をテーパー状とすることが好ましい。弾性突起片9の形状をテーパー状とすることにより、傾斜固定板部6の挿入孔10に挿入し易くなる。
【0029】
図3に示すように、調整板8の弾性突起片9の先端に係合用突起9aを設けることが好ましい。弾性突起片9の先端に係合用突起9aを設けることにより、弾性突起片9を、傾斜固定板部6の挿入孔10に係合させた場合、外れることが防止される。
【0030】
(軒樋吊り具及び調整板の材料)
軒樋吊り具7及び調整板8は、プラスチック製とすることが好ましい。
軒樋吊り具7は、ポリカーボネート製とすることが好ましい。
調整板8本体は、ポリカーボネート製とすることもできるが、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリスチレン(PS樹脂)などの他の弾性変形するプラスチック製とすることが好ましい。
弾性突起片9は、調整板8本体と同じ上記の弾性変形するプラスチック製とすることが好ましいが、調整板8本体とは異なる材料にすることもできる。
調整板8本体と弾性突起片9を同じ材料にすれば、一体成形することが可能である。例えば、ASA樹脂を用いて、調整板8本体と弾性突起片9を一体成形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明においては、調整板の中間部の左右にある弾性突起片を、軒樋吊り具の傾斜固定板部の中間部の左右にある挿入孔に係合させることにより、軒樋吊り具と調整板とが一体化した状態において、傾斜鼻隠し板への取り付けをすることができ、位置決めが容易で、簡便な構造であるから、建築分野に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 屋根
2 傾斜鼻隠し板
3 軒樋取付具
4 軒樋
5 軒樋吊り具本体
5a 軒樋吊り具本体の上側部材
5b 軒樋吊り具本体の下側部材
6 傾斜固定板部
7 軒樋吊り具
8 調整板
8a 調整板の一端部
8b 調整板の他端部
8c 調整板の前面
8d 調整板の後面
9 弾性突起片
9a 係合用突起
10 弾性突起片9の挿入孔
11 固定具の挿入孔(調整板)
12 固定具の挿入孔(傾斜固定板部)